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特許7563341無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法及び無菌充填機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法及び無菌充填機
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/24 20060101AFI20241001BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20241001BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20241001BHJP
   B67C 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   B67C 3/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65B55/24
B65B55/04 C
B65B55/10 A
B67C7/00
B67C3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021144266
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037483
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】早川 睦
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 高明
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135134(JP,A)
【文献】特開2008-093511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/24
B65B 55/04
B65B 55/10
B67C 7/00
B67C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される容器を殺菌し、
殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填し、
前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する無菌充填機において、
前記無菌充填機の稼働前に、前記無菌充填機の各部を遮蔽するチャンバー内を洗浄又は殺菌するときに使用した洗浄液、殺菌液及び無菌水である洗浄殺菌流体を回収し、回収洗浄殺菌流体貯留タンクに貯留し、
貯留された洗浄剤又は殺菌剤を含まない無菌水を密封された前記容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置に供給し、前記密封容器外面洗浄装置に備えられる密封容器洗浄噴射ノズルから前記密封容器外面洗浄装置に噴射し、前記密封容器外面洗浄装置を洗浄し、
前記洗浄に使用する前記洗浄殺菌流体を、温度が60℃以上、100℃以下の洗浄殺菌流体とする無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法において、
前記密封容器外面洗浄装置に備えられる前記密封容器洗浄噴射ノズルから回収された前記洗浄殺菌流体を吹き付ける無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1に記載の無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法おいて、
前記殺菌液が過酢酸を含む無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法。
【請求項4】
容器を搬送する搬送装置、
搬送される容器を殺菌する殺菌装置、
殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置、
前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封装置、
密封された前記容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置、
前記殺菌装置、前記充填装置及び前記密封装置を遮蔽するチャンバー、
前記チャンバー内を洗浄又は殺菌するために前記チャンバー内に吹き付ける洗浄液、殺菌液及び無菌水である洗浄殺菌流体を回収する洗浄殺菌流体回収装置、
回収された前記洗浄殺菌流体を貯留する回収洗浄殺菌流体貯留タンク、
貯留された前記洗浄殺菌流体を前記密封容器外面洗浄装置に供給する回収洗浄殺菌流体供給装置、及び
供給される洗浄剤又は殺菌剤を含まない無菌水を前記密封容器外面洗浄装置に噴射する密封容器洗浄噴射ノズルを備え、
前記密封容器外面洗浄装置に供給する前記洗浄殺菌流体を、温度が60℃以上、100℃以下の洗浄殺菌流体とするように構成される無菌充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PETボトル等の容器に飲料を充填する無菌充填機において、無菌充填機の稼働前に行う無菌充填機を構成する各チャンバー内の洗浄又は殺菌に使用する洗浄液又は殺菌液である洗浄殺菌流体を回収し、回収された洗浄殺菌流体を密封された容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置の洗浄に再使用する、無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法及び該方法を実施する無菌充填機に関する
【背景技術】
【0002】
従来、飲料の無菌充填機において、ボトル等の容器に充填する飲料の種類を、例えば今まで茶飲料であったものをミルクコーヒーに切り替える際は、この無菌充填機の飲料供給系配管内を、まずCIP(Cleaning in Place)を行い、次にSIP(Sterilizing in Place)を行っている(特許文献1参照)。
【0003】
CIPは、飲料充填経路の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料充填流路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
SIPは、例えば、上記CIPで洗浄した流路内に蒸気や熱水等を流すことによって行われる。これにより、飲料充填流路内が殺菌され無菌状態となる(特許文献1参照)。
【0005】
また、無菌充填機には、容器に飲料を自動的に充填する充填機が配置され、この充填機は、チャンバー内を無菌雰囲気に維持することができる無菌チャンバーで囲まれて外部と遮断されている。この無菌チャンバーの内部には前回の充填作業で充填した飲料の飛沫等が付着しているので、充填する飲料の種類を切り替える場合は、前回の充填作業で無菌チャンバーの内壁、無菌チャンバー内の充填機等の設備の外面に付着した飲料の飛沫等を無菌チャンバー内から除去するため、無菌チャンバー内に対してチャンバー内の洗浄が行われる。チャンバー内の洗浄は、例えば、洗浄剤を含む洗浄液を無菌チャンバー内にシャワー状に噴霧することにより行われる(特許文献4参照)。
【0006】
さらに、飲料の種類を切り替える際の各種作業中に微生物が無菌チャンバー内に侵入するおそれもあるので、無菌チャンバー内に対してチャンバー内の殺菌も行われる。チャンバー内の殺菌は、例えば、過酢酸、過酸化水素等の殺菌剤を含む殺菌液をミスト状又はシャワー状にして無菌チャンバー内に供給した後、ホットエアを無菌チャンバー内に吹き込んで残留した殺菌液を乾燥させることにより行われる(特許文献4参照)。
【0007】
チャンバー内の殺菌を行う際、使用された殺菌液を回収し、回収された殺菌液をチャンバー内の殺菌、回転体のシール及び排出コンベヤの殺菌に再利用することが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-22600号公報
【文献】特開2007-331801号公報
【文献】特開2000-153245号公報
【文献】特許第6056930号公報
【文献】特開2018-135134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無菌充填機では、プリフォームから容器を成形し、成形された容器を殺菌し、殺菌された容器に無菌雰囲気で殺菌された内容物を充填し、内容物が充填された容器を殺菌された蓋材により密封する。通常、無菌充填機の稼働前に、無菌充填機の無菌性を確保するために、内容物が充填される充填部より下流のチャンバー内の洗浄が行われ、容器を殺菌する殺菌部より下流は殺菌が行われる。
【0010】
通常、チャンバー内の洗浄で使用される洗浄液及びチャンバー内の殺菌で使用される殺菌液は、そのまま排出される。排出される洗浄液又は殺菌液は処理されて廃棄される。例えば、洗浄液はpH調整により中和され活性汚泥で処理される。過酢酸や過酸化水素を殺菌剤として含む殺菌液は、そのまま排出されると活性汚泥内の微生物を死滅させ、活性汚泥の生物処理能力を低下させる。そのため、過酢酸、過酸化水素又はその他の殺菌剤を含む殺菌液はアルカリで中和する、還元剤を添加する、カタラーゼを添加する、活性炭を通す、遷移金属触媒と接触させる等の方法により分解させてから活性汚泥処理しなければならない。
【0011】
チャンバー内の洗浄又は殺菌に使用する洗浄液又は殺菌液の廃棄には、廃棄の前処理を行う設備費用とランニングコストが多額となっている。したがって、可能な限り、洗浄液及び殺菌液を有効に使用すべきである。無菌充填機の稼働前にチャンバー内の洗浄又は殺菌を行う際に使用される洗浄液又は殺菌液をそのまま排出するのではなく、使用される洗浄液又は殺菌液を再利用する方法及び洗浄液又は殺菌液を再利用する無菌充填機が求められている。
【0012】
本開示は、PETボトル等の容器に飲料を充填する無菌充填機において、無菌充填機の稼働前に行うチャンバー内の洗浄又は殺菌に使用する洗浄液又は殺菌液を回収し、密封された容器の外面を洗浄する洗浄装置の洗浄に、回収された洗浄液又は殺菌液を再使用する、無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法及び該方法を実施する無菌充填機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法は、搬送される容器を殺菌し、殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填し、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する無菌充填機において、前記無菌充填機の稼働前に、前記無菌充填機の各部を遮蔽するチャンバー内を洗浄又は殺菌するときに使用した洗浄液殺菌液及び無菌水である洗浄殺菌流体を回収し、回収洗浄殺菌流体貯留タンクに貯留し、貯留された洗浄剤又は殺菌剤を含まない無菌水を密封された前記容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置に供給し、前記密封容器外面洗浄装置に備えられる密封容器洗浄噴射ノズルから前記密封容器外面洗浄装置に噴射し、前記密封容器外面洗浄装置洗浄し、前記洗浄に使用する前記洗浄殺菌流体を、温度が60℃以上、100℃以下の洗浄殺菌流体とする。
【0014】
また、本開示に係る無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法において、前記密封容器外面洗浄装置に備えられる前記密封容器洗浄噴射ノズルから回収された前記洗浄殺菌流体を吹き付けると好適である。
【0018】
また、本開示に係る無菌充填機により密封された容器の外面洗浄装置の洗浄方法において、前記殺菌液が過酢酸を含むと好適である。
【0019】
本開示に係る無菌充填機は、容器を搬送する搬送装置、搬送される容器を殺菌する殺菌装置、殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封装置、密封された前記容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置、前記殺菌装置、前記充填装置及び前記密封装置を遮蔽するチャンバー、前記チャンバー内を洗浄又は殺菌するために前記チャンバー内に吹き付ける洗浄液、殺菌液及び無菌水である洗浄殺菌流体を回収する洗浄殺菌流体回収装置、回収された前記洗浄殺菌流体を貯留する回収洗浄殺菌流体貯留タンク、貯留された前記洗浄殺菌流体を前記密封容器外面洗浄装置に供給する回収洗浄殺菌流体供給装置、及び供給される洗浄剤又は殺菌剤を含まない無菌水を前記密封容器外面洗浄装置に噴射する密封容器洗浄噴射ノズルを備え、前記密封容器外面洗浄装置に供給する前記洗浄殺菌流体を、温度が60℃以上、100℃以下の洗浄殺菌流体とするように構成される。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、無菌充填機においてチャンバー内の洗浄又は殺菌に使用された洗浄液又は殺菌液である洗浄殺菌流体を回収し、回収された洗浄殺菌流体を密封された容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置に供給し、供給された洗浄殺菌流体により密封容器外面洗浄装置を洗浄することにより、チャンバー内の洗浄又は殺菌に使用された洗浄液又は殺菌液を無駄に排出することがなく、密封容器外面洗浄装置の洗浄に再利用することにより、水の使用量を削減できる。さらに、洗浄液や殺菌液を含む無菌水を廃棄するための処理を行う設備費用とランニングコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の概略を示す平面図である。
図2A】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の加熱部及び成形部の工程に供給されるプリフォームを示す。
図2B】上記無菌充填機の加熱部及び成形部の工程のうち、プリフォーム加熱工程を示す。
図2C】上記無菌充填機の加熱部及び成形部の工程のうち、ブロー成形工程を示す。
図2D】上記無菌充填機の加熱部及び成形部の工程のうち、容器取り出し工程を示す。
図2E-1】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の殺菌部、リンス部及び充填部の工程のうち、容器をトンネルにより遮蔽して行う殺菌剤ガス吹き付け工程を示す。
図2E-2】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の殺菌部、リンス部及び充填部の工程のうち、殺菌剤ガス吹き付けノズルを容器に挿入して行う殺菌剤ガス吹き付け工程を示す。
図2F-1】容器が正立状態での無菌水リンス工程を示す。
図2F-2】容器が倒立状態での無菌水リンス工程を示す。
図2G】充填工程を示す。
図2H】密封工程を示す。
図3】本開示の実施の形態に係るチャンバー内の洗浄又は殺菌に使用する洗浄殺菌流体の回収装置を示す。
図4】本開示の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる、密封された容器の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置の平面図を示す。
図5】本開示の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる、密封容器外面洗浄装置の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に本開示に係る実施の形態の無菌充填機を示す。供給されたプリフォーム1を加熱するプリフォームの加熱装置6、加熱されたプリフォーム1を容器2に成形する成形装置10、成形された容器2の検査装置15、容器2を殺菌する殺菌装置17、殺菌された容器2を無菌水によりリンスするリンス装置19、リンスされた容器2に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置21、内容物が充填された容器2を殺菌された蓋材3により無菌雰囲気で密封する密封装置24及び密封された容器2を排出する排出装置28からなる無菌充填機である。さらに、各装置を遮蔽するチャンバー内を洗浄又は殺菌するための洗浄液又は殺菌液である洗浄殺菌流体を供給する洗浄殺菌流体供給装置33、チャンバー内に洗浄殺菌流体を供給する洗浄殺菌流体供給配管36、チャンバー内に供給された洗浄殺菌流体を回収し、回収された洗浄殺菌流体を供給する回収洗浄殺菌流体供給配管37及び回収された洗浄殺菌流体を密封容器外面洗浄装置52に供給する回収洗浄殺菌流体供給装置35を備える無菌充填機の概要を図1により説明し、各装置の詳細を図2Aから図2H図3図4及び図5により説明する。この実施の形態によれば、無菌充填機の稼働前にチャンバー内を洗浄又は殺菌のために供給された洗浄殺菌流体を回収し、回収された洗浄殺菌流体を密封容器外面洗浄装置に供給し、密封容器外面洗浄装置の洗浄に再利用することにより、エネルギー消費を減少させることができる。
【0024】
(実施の形態の概要)
図1に示すように、本実施の形態に係る無菌充填機は、プリフォーム1を供給するプリフォーム供給装置4、プリフォーム1を容器2に成形する温度に加熱する加熱装置6、加熱されたプリフォーム1を容器2に成形する成形装置10、成形された容器2を検査する検査ホイール14、成形された容器2を殺菌する殺菌装置17、殺菌された容器2をリンスするリンス装置19、リンスされた容器2に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置21、密封部材である蓋材3を殺菌する蓋材殺菌装置31、内容物が充填された容器2を殺菌された蓋材3により無菌雰囲気で密封する密封装置24、密封された容器2を排出コンベヤ30に載置する排出装置28及び排出コンベヤ30により容器2を非無菌雰囲気に排出する出口部を備える。ここで、検査ホイール14は備えなくても構わない。
【0025】
排出コンベヤ30により排出される密封された容器2は、非無菌雰囲気で密封容器外面洗浄装置52により水が吹き付けられて洗浄される。
【0026】
加熱装置6は加熱装置チャンバー7、成形装置10及び検査ホイール14は成形装置チャンバー11、殺菌装置17は殺菌装置チャンバー18、リンス装置19はリンス装置チャンバー20、充填装置21は充填装置チャンバー23、密封装置24は密封装置チャンバー25、排出装置28は排出装置チャンバー29により各々遮蔽されている。殺菌装置17で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形装置10に流入しないように、成形装置チャンバー11と殺菌装置チャンバー18の間には雰囲気遮断チャンバー16が設けられている。殺菌装置チャンバー18で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、雰囲気遮断チャンバー16から排気される。このため、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形装置チャンバー11内に流入することはない。ここで、加熱装置6と成形装置10は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、蓋材殺菌装置31と密封装置24も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。さらに、密封装置24と排出装置28も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
【0027】
無菌充填機を稼働する前に、各チャンバー内の洗浄を行い、さらに各チャンバー内の殺菌を行う。洗浄又は殺菌は、各チャンバー内に洗浄液又は殺菌液である洗浄殺菌流体を供給することで行われる。洗浄殺菌流体として、洗浄には洗浄液、殺菌には殺菌液が使用され、各チャンバー内に噴霧される。噴霧された洗浄液又は殺菌液を洗い流すために各チャンバー内に洗浄殺菌流体としての無菌水が供給される。図1に示すように、各チャンバー内に洗浄殺菌流体である洗浄液、殺菌液及び無菌水が、洗浄殺菌流体供給装置33から供給されることで各チャンバー内の洗浄又は殺菌が行われる。
【0028】
洗浄殺菌流体供給装置33から殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25及び排出装置チャンバー29に洗浄殺菌流体が供給される。各チャンバーに供給される洗浄殺菌流体は、洗浄効果及び殺菌効果を高めるために洗浄殺菌流体供給配管36に備えられる加熱装置(図示せず。)により加熱されることが好ましい。
【0029】
殺菌装置チャンバー18及びリンス装置チャンバー20は内容物により汚染の懸念がないため、チャンバー内の洗浄を行わなくても構わない。また、洗浄後の洗浄液の洗い流しは無菌水によらなくても構わない。
【0030】
無菌充填機稼働時に無菌雰囲気を保持しなければならない殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25及び排出装置チャンバー29内は無菌充填機の稼働前に殺菌される。殺菌装置チャンバー18は無菌充填機稼働中に殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が噴霧されるため、無菌充填機の稼働前に殺菌されなくても構わない。
【0031】
洗浄殺菌流体が各チャンバーに供給され、チャンバー内の洗浄又は殺菌が行われた後、使用された洗浄殺菌流体を回収する洗浄殺菌流体回収装置34が設けられ、回収された洗浄殺菌流体は回収洗浄殺菌流体供給装置35により密封容器外面洗浄装置52に供給される。
【0032】
チャンバー内の殺菌が完了した殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25及び排出装置チャンバー29は、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内の圧力を陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧に保持する圧力は、充填装置チャンバー23内が最も高く、リンス装置チャンバー20、殺菌装置チャンバー18と上流に行くほど低く設定される。また、密封装置チャンバー25、排出装置チャンバー29と下流に行くにほど低く設定される。雰囲気遮断チャンバー16が排気されることで、雰囲気遮断チャンバー16内の圧力は、大気圧とほぼ同一に保持される。例えば、充填装置チャンバー23内の圧力を20Pa以上、40Pa以下とすると、他のチャンバー内の圧力は充填装置チャンバー23内の圧力よりも低い。
【0033】
(実施の形態の詳細)
図2Aに示すプリフォーム1が、図1に示すプリフォーム供給装置4から、プリフォーム供給コンベヤ5により所望の速度で連続的に加熱装置6に搬送される。
【0034】
本実施の形態におけるプリフォーム1は試験管状の有底筒状体であり、図2Dに示した容器2と同様な口部1aがその成形当初に付与される。この口部1aにはプリフォーム1の成形と同時に雄ネジが形成される。また、プリフォーム1には口部1aの下部に搬送のためのサポートリング1bが形成される。プリフォーム1又は容器2はこのサポートリング1bを介してグリッパ32により把持され、無菌充填機内を走行する。プリフォーム1は射出成形、圧縮成形等によって成形される。プリフォーム1の材質はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、これらの樹脂単体又は混合物であっても構わないし、リサイクルされた熱可塑性樹脂を含んでも構わない。また、バリア性を付与するために、エチレン-ビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミンのような芳香族アミンをモノマーとするポリアミド等の熱可塑性樹脂を層として、又は混合物として含んでも構わない。
【0035】
加熱装置6に供給されたプリフォーム1は、一定ピッチで多数のグリッパ32が設けられたホイールにより搬送される。ここで、図2Bのようにグリッパ32から解放され、プリフォーム1の口部1aにスピンドル9が挿入されて搬送される。
【0036】
プリフォーム1は、図2Bに示すように、赤外線ヒータ8又はその他の加熱手段によって、後のブロー成形に適した温度まで加熱される。この温度は90℃以上、130℃以下であると好適である。
【0037】
なお、プリフォーム1の口部1aの温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
【0038】
プリフォーム1は図2Bに示すように、口部1aにスピンドル9が挿入され、赤外線ヒータ8により加熱され、回転しながら無端チェーンにより搬送される。スピンドル9は無端チェーンに一定間隔で設けられている。無端チェーンはプーリにより回転する。プリフォーム1をスピンドル9に倒立させて嵌合させることで、プリフォーム1を倒立状態で回転させつつ搬送することも可能である。
【0039】
加熱されたプリフォーム1は、スピンドル9から解放され、グリッパ32に把持されて、成形装置10の成形ホイール12に搬送される。成形ホイール12に備えられた金型13により、図2Cに示すように、プリフォーム1は容器2にブロー成形される。金型13及びブローノズルは、成形ホイール12の周りに複数個配置され、成形ホイール12の回転とともに成形ホイール12の周りを一定速度で旋回する。加熱されたプリフォーム1が到来すると、金型13はプリフォーム1を挟み込む。続いてブローノズルがプリフォーム1に接合され、図示しない延伸ロッドがブローノズルに設けられた孔に導かれ、プリフォーム1内に挿入される。挿入される延伸ロッドがプリフォーム1の底部を伸ばすことによりプリフォーム1は縦延伸され、同時にブローノズルからプリフォーム1内に高圧の空気等の気体が吹きこまれ横延伸される。プリフォーム1は金型13内で縦延伸及び横延伸され、容器2が成形される。成形された容器2は、図2Dに示すように、金型13から取り出され、検査ホイール14に設けられたグリッパ32によりサポートリング1bを把持され、検査ホイール14に受け渡される。
【0040】
成形された容器2は、検査ホイール14の周辺に備えられた検査装置15により、容器温度、容器胴部、サポートリング1b、容器口部天面、容器底部等が検査され、異常と判断された場合は、図示しない排出装置により、無菌充填機の外部に排出される。容器の検査は成形装置チャンバー11内で行われるが、検査装置として別個のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
【0041】
容器2の温度検査は、容器2の表面温度を検査して、容器2の良否を判断する。温度センサは、例えば赤外線放射温度計であるが、他の温度計を使用することも可能である。容器成形時の余熱が容器2に残存することが、容器2を適正に殺菌するために必要である。温度センサにより検出される温度は50℃以上であることが好ましい。
【0042】
また、容器胴部、サポートリング1b、容器口部天面、容器底部はカメラにより撮像され、各箇所の状態が検査される。撮像された画像は画像処理装置により処理され、傷、異物、変形、変色等の異常の存否について判断される。許容範囲を超えた容器2は異常と判断される。
【0043】
検査装置15による検査により異常と判断されなかった容器2は、殺菌装置17で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形装置10に流入しないように、成形装置10と殺菌装置17の間に設けられた雰囲気遮断チャンバー16内のホイールを経て、殺菌装置17に搬送される。
【0044】
殺菌装置17に搬送された容器2は殺菌される。容器2を殺菌するための容器2への殺菌剤のガス吹き付け工程を図2E-1に示す。容器2に殺菌剤のガスを吹き付けるため、殺菌剤ガス吹き付けノズル38が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38は、その先端のノズル孔が直下を走行する容器2の口部1aの開口に正対し得るように固定される。また、必要に応じて殺菌剤ガス吹き付けノズル38の下方に容器2の走行路に沿って、図2E-1に示すように殺菌剤ガス吹き付けトンネル39が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38は一本であっても複数本であっても構わない。容器2に吹き付けられた殺菌剤のガスが容器2の内部に流入し、容器2の内面を殺菌する。このとき、容器2が殺菌剤ガス吹き付けトンネル39内を走行することで、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が、容器2の外面にも流れて、容器2の外面が殺菌される。
【0045】
また、図2E-2に示すように、殺菌剤ガス吹き付けノズル38を容器2の搬送に追従させ、殺菌剤ガス吹き付けノズル38を容器2の内部に挿入して、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物を容器2の内面に直接吹き付けても構わない。容器2から溢れた出た殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、殺菌剤ガス吹き付けノズル38を囲繞して設けた案内部材38aに衝突し、容器2の外面に流れ容器2の外面に接触する。案内部材38aには殺菌剤ガス吹き付けノズル38と同軸のフランジ部とフランジ部から外周に突出する環状壁部が設けられている。
【0046】
殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、殺菌剤ガス生成器によりガス化される殺菌剤若しくはガス化された殺菌剤が凝結したミスト又はこれらの混合物である。殺菌剤ガス生成器は、殺菌剤を滴状にして供給する二流体スプレーノズルである殺菌剤供給部と、この殺菌剤供給部から供給された殺菌剤を分解温度以下に加熱して気化させる気化部とを備える。殺菌剤供給部は、殺菌剤供給路及び圧縮空気供給路からそれぞれ殺菌剤と圧縮空気を導入して殺菌剤を気化部内に噴霧するようになっている。気化部は、内外壁間にヒータを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた殺菌剤を加熱し気化させる。気化した殺菌剤のガスは殺菌剤ガス吹き付けノズル38から気化部外に噴出する。ヒータに換えて誘導加熱により気化部を加熱しても構わない。
【0047】
殺菌剤ガス生成器は上述のような構造に限定されず、液状の殺菌剤をガス化できるものであれば、どのようなものでも構わない。
【0048】
殺菌剤のガスは、図2E-1、図2E-2に示すように殺菌剤ガス吹き付けノズル38から容器2に吹き付けられる。殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物の吹き付け量は任意であるが、吹き付け量は、殺菌剤ガス生成器に供給される殺菌剤の量と吹き付け時間により決まる。殺菌剤ガス生成器は複数備えても構わない。吹き付け量は容器2の大きさによっても変動する。
【0049】
殺菌剤は少なくとも過酸化水素を含有することが好ましい。その含有量は0.5質量%以上、65質量%以下の範囲が適当である。0.5質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。また、さらに好適なのは0.5質量%以上、40質量%以下であり、40質量%以下では扱いがより容易であり、低濃度となるために殺菌後の容器2への殺菌剤の残留量を低減できる。
【0050】
殺菌剤を過酸化水素水とした場合、過酸化水素水のガスの吹き付け量は以下の通りとなる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38から容器2の内面に吹き付けられる過酸化水素水のガスにより、容器2の内面に付着する過酸化水素の量は、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水の量として、30μL/容器以上、150μL/容器以下が好ましく、より好ましくは50μL/容器以上、100μL/容器以下である。また、容器2に吹き付けられる過酸化水素水のガスの過酸化水素濃度は、2mg/L以上、20mg/L以下が好ましく、より好ましくは5mg/L以上、10mg/L以下である。
【0051】
また、殺菌剤は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル類等の1種又は2種以上を含んでも構わない。
【0052】
さらに、殺菌剤は過酢酸、酢酸等の有機酸、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物、オゾン等の殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、リン酸化合物等の添加剤を含んでも構わない。
【0053】
殺菌剤が吹き付けられた容器2は必要に応じて、無菌エアが吹き付けられる。無菌エアは、ブロワによるエアを無菌フィルタに通したものであり、エアは40℃以上、170℃以下に加熱されていることが好ましい。加熱されたエアを吹き付けることにより殺菌剤が活性化し、殺菌効果が高まる。エアを吹き付けることにより、容器2に残存する余剰の殺菌剤は除去される。
【0054】
殺菌装置17で殺菌された容器2は図1に示すように、リンス装置19に搬送される。容器2は、図2F-1に示すように容器リンスノズル40により正立状態の容器2に無菌水が吹き付けられる。無菌水は無菌水製造装置により製造され、リンス装置チャンバー20に供給される。無菌水は常温でも構わないが、加熱されることが好ましい。無菌水は、容器2の内部に残存する殺菌剤を排出し、残存する殺菌剤を分解してさらに殺菌効果を高め、容器2の内部に異物が存在する場合は排除する効果もある。容器2の内部に吹き付けられた無菌水はグリッパ32を回転させ、容器2を転倒させることで排出される。
【0055】
図2F-2に示すように容器2を倒立状態にして無菌水を容器2内に吹き付けても構わない。この場合、異物の排除には正立状態よりも効果的である。容器リンスノズル40は上下動可能として、無菌水を容器2内に吹き込んでも構わない。
【0056】
リンス装置チャンバー20に供給される無菌水は図2F-1又は図2F-2に示すように、殺菌された容器2に吹き付けられる。容器2に吹き付けられた無菌水は無菌水回収装置により回収され、再利用されても構わない。殺菌された容器2のリンスに使用された無菌水は、リンス装置チャンバー20内で容器2から排出され、チャンバーの床面に設けられる無菌水回収溝56に集められ、無菌水回収溝56からバルブを経て無菌水回収ポンプ57により無菌水回収配管に回収された無菌水を送液する。
【0057】
無菌水回収配管に送液される無菌水は、排出コンベヤ30に設けられる、密封された容器2の外面を洗浄する密封容器外面洗浄装置52に供給され、密封された容器2の外面を洗浄するために使用されても構わない。回収された無菌水は密封容器外面洗浄装置52により、容器の外面に噴射され、密封された容器2の外面を洗浄する。特に、密封された容器2の口部1aと蓋材3の間に内容物が付着していることがあり、密封された容器2の口部1aと蓋材3の間を洗浄しなければならない。
【0058】
リンス装置19でリンスされた容器2は図1に示すように、充填装置21に搬送される。充填装置21では、図1に示す充填ホイール22にて、図2Gに示す充填工程のように、充填ノズル41により容器2に内容物が充填される。内容物はあらかじめ殺菌されており、容器2と同期的に走行する充填ノズル41により、容器2内に一定量の飲料等の内容物が充填される。
【0059】
調合装置で調合され、内容物殺菌装置で殺菌された内容物はアセプティックサージタンクに貯留され、さらに充填装置21の近傍に備えられるヘッドタンクに送液され、ヘッドタンクから充填ノズル41に供給されて容器2に充填される。
【0060】
内容物が充填された容器2は、図1に示す充填ホイール22を経て密封装置24に搬送される。密封装置24に設けられた密封ホイール26では、図2Hに示す密封工程のように、蓋材殺菌装置31により殺菌された密封部材である蓋材3が、蓋材供給ホイールを経て、密封ホイール26に供給され、図示しないキャッパーにより、容器2の口部1aに巻き締められ、容器2は密封される。
【0061】
密封された容器2は、密封ホイール26のグリッパ32から排出装置28の排出ホイール27のグリッパ32に受け渡される。排出ホイール27に受け渡された容器2は排出コンベヤ30に載置される。排出コンベヤ30に載置された容器2は無菌充填機の外部に排出される。
【0062】
排出コンベヤ30に載置された密封された容器2は、非無菌雰囲気に設けられる密封容器外面洗浄装置52により外面が洗浄される。密封容器外面洗浄装置52は、図4に示すように、排出コンベヤ30により搬送される蓋材3により密封された容器2の外面に水又は回収された無菌水を噴射し、密封された容器2の外面を洗浄する。
【0063】
蓋材3と容器2の口部1aの間に、回収された無菌水を噴射し、蓋材3と容器2の口部1aの間を洗浄し、残存する内容物を洗い流す。密封容器外面洗浄装置52に供給される回収された無菌水は、搬送される容器2の口部に向かって、搬送方向に対して直交するように噴射される。回収された無菌水を容器2の口部に向かって噴射する密封容器洗浄噴射ノズル53が搬送される容器2に向かって排出コンベヤ30の両側に多数設けられる。密封容器洗浄噴射ノズル53は蓋材3と容器2の口部1aの間を洗浄するために回収された無菌水を噴射するだけでなく、密封された容器2の外面を洗浄するために水を噴射しても構わない。
【0064】
図5に示すように、密封容器洗浄噴射ノズル53は容器2の両側面の高さ方向に複数設けられる。容器2の容量により容器2の口部1aの位置が相異するためである。容器2の容量に合わせて回収された無菌水を噴射する密封容器洗浄噴射ノズル53を選択するが、洗浄する容器2に吹き付けることができれば、口部1aに吹き付けない密封容器洗浄噴射ノズル53から吹き付けても構わない。また、口部1a以外の容器2の箇所に吹き付けることができる密封容器洗浄噴射ノズル53を設けても構わない。密封容器洗浄噴射ノズル53と容器2の距離は容器2の容量に合わせて調整できるように構成される。
【0065】
容器2の口部1aは蓋材3が覆いかぶさっているため、容器2の口部1a以外の箇所と異なり、乾燥されずに湿度の高い状態が維持されやすい。そのため、糖を含んだ内容物の場合、容器2の口部1aで菌が繁殖しやすい。回収された無菌水は少なくとも密封された蓋材3と容器2の口部1aの間に噴射されるが、密封された容器2の蓋材3の外面及び密封された容器2の蓋材3より下方のネック部、胴部及び底部に噴射されても構わない。容器2に内容物を充填するとき、容器2の口部1a以外の外面にも内容物が付着するおそれもあり、密封された容器2の蓋材3と容器2の口部1aの間以外の容器2の外面に回収された無菌水を噴射することが好ましい。
【0066】
排出コンベヤ30は無菌充填機の生産中、無菌充填機内に外部から菌が侵入しないよう排出コンベヤ30を過酢酸や過酸化水素等の殺菌剤で殺菌している。容器2を無菌充填機から排出するとき、容器2の底部に殺菌剤が付着する。底部に付着した殺菌剤を包装ラインに持ち込まないように、密封容器外面洗浄装置52で洗い流す。
【0067】
蓋材3と容器2の口部1aの間に流れ込んだ無菌水は、蓋材3の凹部と容器2の口部1aの天面が密着しているため、容器2の内部に浸入することはない。
【0068】
無菌水を噴射した後、蓋材3と容器2の口部1aの間に残存する無菌水を押し流すために高圧エアを吹き付けることが好ましい。図4に示すように密封容器外面洗浄装置52の下流に高圧エア吹き付け装置54を設ける。高圧エア吹き付け装置54は搬送される容器2の口部に向かって、搬送方向に対して直交するように高圧エアを噴射する。高圧エアを容器2の口部に向かって噴射する高圧エア噴射ノズル55が搬送される容器2に向かって排出コンベヤ30の両側に多数設けられる。
【0069】
無菌充填機により飲料を容器2に充填する連続運転の後、内容物を変更する場合、又は長時間の連続運転によりチャンバー内が内容物の飛沫により汚染された場合は、無菌充填機の運転を停止して、無菌充填機のチャンバー内の洗浄及び殺菌を行う。内容物による汚染がないチャンバー内は殺菌のみを行う。
【0070】
殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25及び排出装置チャンバー29の各チャンバー内は、無菌充填機の稼働前にチャンバー内の洗浄及びチャンバー内の殺菌が行われる。
【0071】
各チャンバー内の殺菌の前に、内容物が充填される充填装置チャンバー23から下流のチャンバーはチャンバー内の洗浄が行われる。内容物がチャンバー内に飛散して汚染が激しいチャンバー内は温水、熱水、又は苛性ソーダを主成分とするアルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液を噴射することで洗浄される。殺菌装置チャンバー18は汚染が限定的であるため、洗浄を行わなくても構わない。
【0072】
無菌充填機の稼働中には、チャンバー内を殺菌した後の各チャンバー内の無菌性を維持するために、図3に示すように、チャンバー42には無菌エア供給装置44が設けられる。無菌エア供給装置44は、ブロワ45によるエアを除菌フィルタ46を通して無菌化したエアをチャンバー42内に供給する。エアを加熱装置47により加熱しても構わない。除菌フィルタ46のチャンバー側表面は殺菌剤が噴射されることで殺菌される。また、チャンバー42内の圧力を適正に保持するために、排気装置48をチャンバー42の下部に設けても構わない。チャンバー42は洗浄又は殺菌の少なくとも一方が行われる各チャンバーである。
【0073】
洗浄殺菌流体をチャンバー内に噴射する場合、例えば、洗浄を行うために洗浄液を噴射し、洗浄液を洗い流すために無菌水を噴射し、殺菌を行うために殺菌液を噴射し、殺菌剤を洗い流すために無菌水を噴射する。洗浄液を洗い流すとき、後に殺菌を行うため、無菌水を使用しなくても構わない。しかし、菌によりチャンバー内の汚染を抑制するために無菌水を使用することが好ましい。
【0074】
図3に示すように、洗浄殺菌流体をチャンバー42内に噴射するために洗浄殺菌流体噴射ノズル43が設けられる。洗浄殺菌流体噴射ノズル43から洗浄液又は殺菌液を噴射し、チャンバー42内の洗浄又は殺菌が行なわれる。図1に示すように、洗浄殺菌流体供給装置33から洗浄殺菌流体供給配管36を通してチャンバー42の洗浄殺菌流体噴射ノズル43に洗浄殺菌流体が供給される。
【0075】
前述のように、チャンバーによって異なるが、チャンバーの機能により洗浄又は殺菌を行うためにチャンバー42内に洗浄液、殺菌液及び無菌水を洗浄殺菌流体噴射ノズル43から噴射する。洗浄殺菌流体噴射ノズル43は、一流体ノズル、二流体ノズル、回転ノズル等のスプレーノズルであり、洗浄を行うときは洗浄液を噴射し、殺菌を行うときは殺菌液を噴射する。殺菌に使用する殺菌剤として過酢酸及び過酸化水素を含む殺菌液を使用する場合は、殺菌液も液体となり、スプレーノズルは兼用できる。さらに無菌水も液体であり、無菌水も同一の液体用スプレーノズルからチャンバー42内に噴射することができる。チャンバー42内には、液体ではなくガスを噴射するノズルを設けても構わない。
【0076】
洗浄殺菌流体噴射ノズル43は、洗浄液又は殺菌液を洗浄又は殺菌が必要なチャンバー42内の全域に付着するように噴射する。噴射された洗浄液又は殺菌液により、チャンバー42内が洗浄又は殺菌される。洗浄殺菌流体噴射ノズル43はチャンバー42内の全域に洗浄液又は殺菌液が付着するように配置される。
【0077】
洗浄殺菌流体とは、洗浄液、殺菌液である。また、洗浄液又は殺菌液に含まれる洗浄成分又は殺菌成分を洗い流す水も洗浄殺菌流体として含まれる。洗浄液及び殺菌液は加熱されることもある。洗浄液としての水は、無菌水であることが好ましい。洗浄殺菌流体の温度を60℃以上、100℃以下とすることで、洗浄能力又は殺菌能力を各段に向上させることができる。
【0078】
洗浄液を50℃以上に加温すると殺菌作用も有するため、例えばアルカリ性洗浄液を50℃以上に加熱してチャンバー内にアルカリ性洗浄液の噴射を行うことで、殺菌効果も期待できる。
【0079】
洗浄液は、水と洗浄剤からなる。洗浄剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物、又はエタノールアミン、ジエチルアミン等の有機塩基性化合物である。この他に、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸等の金属イオン封鎖剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等の非イオン界面活性剤、クメンスルホン酸ナトリウム等の可溶化剤、ポリアクリル酸等の酸系高分子又はこれらの金属塩、腐食抑制剤、防腐剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤などを含んでも構わない。また、洗浄剤は塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸又は酢酸、蟻酸、オクタン酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸を含んでいても構わない。洗浄剤又は殺菌剤を含まない水も、洗浄液に含まれる洗浄剤又は殺菌液に含まれる殺菌剤を洗い流すために洗浄殺菌流体として使用される。
【0080】
殺菌液は水と殺菌剤からなる。殺菌剤は、過酸水素、過酢酸、酢酸等の有機酸、硝酸等の無機酸、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物、オゾン等の殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、リン酸化合物等である。
【0081】
殺菌液は殺菌剤として過酢酸を含むものが好ましく、過酢酸の濃度を500mg/L以上、5000mg/L以下に保持することが好ましい。
【0082】
殺菌液は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル類等の1種又は2種以上を含んでも構わない。
【0083】
図3に示すように、チャンバー42内に噴射される洗浄殺菌流体は、チャンバー42の底部に設けられた洗浄殺菌流体回収溝56に集められ、集められた洗浄殺菌流体は洗浄殺菌流体回収装置34により回収される。洗浄殺菌流体回収装置34は洗浄殺菌流体回収ポンプ57及び回収洗浄殺菌流体貯留タンク58を備えている。洗浄殺菌流体は、チャンバー42の底部に設けられた洗浄殺菌流体回収溝56から洗浄殺菌流体回収ポンプ57により回収洗浄殺菌流体貯留タンク58に送られて貯留される。
【0084】
回収洗浄殺菌流体貯留タンク58に貯留された洗浄殺菌流体は、回収洗浄殺菌流体供給ポンプ59により回収洗浄殺菌流体供給配管37を通して密封容器外面洗浄装置52に供給される。回収洗浄殺菌流体供給ポンプ59及び回収洗浄殺菌流体供給配管37は回収洗浄殺菌流体供給装置35を構成する。
【0085】
回収洗浄殺菌流体貯留タンク58を設けず、回収される回収洗浄殺菌流体を貯留せずに、直接密封容器外面洗浄装置52に供給しても構わない。
【0086】
充填装置チャンバー23とその他のチャンバーでは、チャンバー内の洗浄又は殺菌のタイミングが異なることもある。各チャンバーで回収される洗浄殺菌流体が相異することがあり、そのときは、密封容器外面洗浄装置52に供給する洗浄殺菌流体を選択して、密封容器外面洗浄装置52に供給しても構わない。全てのチャンバーに同時に使用される洗浄殺菌流体の全てを密封容器外面洗浄装置52に供給すると過剰となる可能性もあり、そのときは密封容器外面洗浄装置52に供給する洗浄殺菌流体の量は調節する必要がある。
【0087】
密封容器外面洗浄装置52が洗浄又は殺菌される際、供給される洗浄殺菌流体は、チャンバー42内の洗浄又は殺菌に合わせた洗浄殺菌流体が供給されることが好ましい。洗浄剤を含む洗浄液、洗浄剤を洗い流す無菌水、殺菌剤を含む殺菌液、殺菌剤を洗い流す無菌水の順で洗浄殺菌流体が供給されることにより、密封容器外面洗浄装置52内の洗浄が行われる。最後には洗浄剤又は殺菌剤を含まない回収される無菌水が供給されなければならない。無菌水は密封容器洗浄装置52に供給される段階では無菌の水でなくても構わない。
【0088】
密封容器外面洗浄装置52に供給される回収された洗浄殺菌流体は、図5に示す密封容器外面洗浄装置52に備えられる密封容器洗浄噴射ノズル53から密封容器外面洗浄装置52に噴射される。噴射される回収された洗浄殺菌流体は、密封容器外面洗浄装置52及び密封容器外面洗浄装置52を遮蔽する密封容器外面洗浄装置チャンバー49内を洗浄する。密封容器外面洗浄装置52は密封容器洗浄噴射ノズル53及びこれに接続される配管を含み、これらの外面が洗浄される。
【0089】
図5に示すように、密封容器外面洗浄装置チャンバー49の内壁に密封容器外面洗浄装置チャンバーノズル50を設け、密封容器外面洗浄装置チャンバーノズル50から回収された洗浄殺菌流体を噴射しても構わない。密封容器洗浄噴射ノズル53だけでなく、密封容器外面洗浄装置チャンバーノズル50から回収された洗浄殺菌流体を噴射することで、密封容器外面洗浄装置52の洗浄効果は向上する。
【0090】
回収された洗浄殺菌流体は、密封容器外面洗浄装置52だけでなく、高圧エア吹き付け装置54にも供給し、高圧エア吹き付け装置54の外面の洗浄を行っても構わない。高圧エア吹き付け装置54を遮蔽するチャンバーの内壁にもノズルを設け、ノズルから回収された洗浄殺菌流体をチャンバー内に噴射することで高圧エア吹き付け装置54を洗浄することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…プリフォーム
2…容器
3…蓋材
30…排出コンベヤ
33…洗浄殺菌流体供給装置
34…洗浄殺菌流体回収装置
35…回収洗浄殺菌流体供給装置
36…洗浄殺菌流体供給配管
37…回収洗浄殺菌流体供給配管
43…洗浄殺菌流体噴射ノズル
49…密封容器外面洗浄装置チャンバー
50…密封容器外面洗浄装置チャンバーノズル
52…密封容器外面洗浄装置
53…密封容器外面洗浄噴射ノズル
54…高圧エア吹き付け装置
55…高圧エア吹き付けノズル
56…洗浄殺菌流体回収溝
57…洗浄殺菌流体回収ポンプ
58…回収洗浄殺菌流体貯留タンク
59…回収洗浄殺菌流体供給ポンプ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E-1】
図2E-2】
図2F-1】
図2F-2】
図2G
図2H
図3
図4
図5