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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車両のフューエルインレット部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20241001BHJP
   B62D 25/02 20060101ALI20241001BHJP
   B60J 10/84 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B62D25/02 Z
B60J10/84
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021145615
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038741
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出原 毅史
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069595(JP,A)
【文献】実開昭54-096933(JP,U)
【文献】特開2007-153011(JP,A)
【文献】特開2018-192925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062111(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015221869(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
B62D 25/02
B60J 10/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、
箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、
前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、
を有し、
前記シール部は、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、
前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、
前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部とを一体に連結するシール連結部と、
を備え
前記水受け部は、前記シール連結部から一体に延出されている、車両のフューエルインレット部構造。
【請求項2】
インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、
箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、
前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、
を有し、
前記シール部は、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、
前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、
を備え
前記水受け部は、その基端側から車両下方側へ向けて車室内側に傾斜すると共に先端側では前記インナシール部側とは反対側に曲げられて前記車体パネルに押し付けられている、車両のフューエルインレット部構造。
【請求項3】
インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、
箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、
前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、
を有し、
前記シール部は、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、
前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、
前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、
を備え
前記ボックス部の周壁部の外周側には、前記車体パネルの前記装着口に係合される係合部が複数設けられており、
複数の前記係合部が前記車体パネルの前記装着口に係合されることで、前記インレットボックスが前記車体パネルに取り付けられている、車両のフューエルインレット部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフューエルインレット部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インレットボックスのボックス開口付近にシール部が設けられた構成が知られている(例えば、特許文献1の図5参照)。このシール部は、インレットボックスのフランジ部と車体パネルとの間をシールするものであり、インナシール部とアウタシール部とがそれぞれ車体パネルに接触した二重シール構造になっている。このような構造では、例えば、洗車の際には、高圧水がインナシール部に直撃するのをアウタシール部によって防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-138618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には、明示されていないが、アウタシール部の一部には、アウタシール部とインナシール部との間に入った水を排出するための水抜き部が通常形成される。
【0005】
しかしながら、このような構造の場合、例えば、洗車の際に高圧水が水抜き部から直接入ると、その高圧水がインナシール部を変形させて車室内へ浸入してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、アウタシール部の一部に水抜き部を形成しても車室内への水の浸入を防止又は抑制することができる車両のフューエルインレット部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両のフューエルインレット部構造は、インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、を有し、前記シール部は、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部とを一体に連結するシール連結部と、を備え、前記水受け部は、前記シール連結部から一体に延出されている。
請求項に記載する本発明の車両のフューエルインレット部構造は、インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、を有し、前記シール部は、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、を備え、前記水受け部は、その基端側から車両下方側へ向けて車室内側に傾斜すると共に先端側では前記インナシール部側とは反対側に曲げられて前記車体パネルに押し付けられている。
請求項に記載する本発明の車両のフューエルインレット部構造は、インレットボックス装着用の装着口が貫通形成された車体パネルと、箱状とされてボックス開口が車室外側を向くように配置されると共に底壁部に貫通孔が形成されたボックス部と、前記ボックス開口の周縁全周から張り出して前記車体パネルの前記装着口の周縁部に沿って配置されるフランジ部と、を備えて前記車体パネルに取り付けられるインレットボックスと、前記フランジ部の先端側に設けられて前記車体パネルの車両外側に配置され、前記フランジ部と前記車体パネルとの間を全周に亘ってシールするシール部と、を有し、前記シール部は、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルの前記装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触するインナシール部と、前記フランジ部の全周に対応して設けられ、前記車体パネルに対して前記インナシール部よりも前記装着口の周縁から離れた部位に接触し、前記インナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部が貫通形成されたアウタシール部と、前記シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部において前記インナシール部の基端部と前記アウタシール部の基端部との間の部分から前記水抜き部と前記インナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から前記水抜き部を通過した水を受け止める水受け部と、を備え、前記ボックス部の周壁部の外周側には、前記車体パネルの前記装着口に係合される係合部が複数設けられており、複数の前記係合部が前記車体パネルの前記装着口に係合されることで、前記インレットボックスが前記車体パネルに取り付けられている。
【0008】
請求項1~請求項3にそれぞれ記載された構成によれば、インレットボックスのフランジ部の先端側には、車体パネルの車両外側に配置されるシール部が設けられており、このシール部は、インレットボックスのフランジ部と車体パネルとの間を全周に亘ってシールする。シール部のインナシール部は、インレットボックスのフランジ部の全周に対応して設けられ、車体パネルの装着口の周縁側の部位に対して全周に亘って接触する。また、シール部のアウタシール部は、インレットボックスのフランジ部の全周に対応して設けられ、車体パネルに対してインナシール部よりも装着口の周縁から離れた部位に接触する。このため、例えば、洗車の際の高圧水がインナシール部に直撃するのをアウタシール部によって防ぐことが可能になり、インナシール部と車体パネルとの間から車室内へ水が浸入するリスクを低減することができる。
【0009】
また、アウタシール部においてインナシール部よりも車両下方側に位置する部分の一部には排水用の水抜き部が貫通形成されている。これにより、アウタシール部とインナシール部との間に入った水を水抜き部から排出することができる。また、シール部の水受け部は、シール部の全周のうちの車両上下方向の下部の一部においてインナシール部の基端部とアウタシール部の基端部との間の部分から水抜き部とインナシール部との間を含む領域に延出され、車両外側から水抜き部を通過した水を受け止める。このため、例えば、洗車の際に水抜き部を通過した高圧水がインナシール部に直撃するのを水受け部によって防ぐことが可能になり、インナシール部と車体パネルとの間から車室内へ水が浸入するリスクを一層低減することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の構成によれば、水受け部の基端側において、シール連結部との間に隙間が発生するのを防ぐことができるので、そのような隙間に起因した水の浸入を防止することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の構成によれば、水受け部がインナシール部と当接するのを避けながら、水受け部が車体パネルと接触する部分の面圧を上げることが可能になる。このため、インナシール部の機能を良好に維持しつつ、水受け部と車体パネルとの接触部の間から水が浸入してしまうのを効果的に抑制することが可能になる。
【0015】
また、請求項3に記載の構成によれば、インレットボックスのフランジ部及び車体パネルの装着口の周囲部に締結孔を貫通形成する必要がない。このため、インレットボックスの正面視でインナシール部の位置をアウタシール部の位置に対して前記締結孔を挟んだ反対側に設定する、といったことをする必要がなく、アウタシール部とインナシール部との離間距離を全周に亘って狭くすることが可能になる。一方、アウタシール部とインナシール部との離間距離を全周に亘って狭くすると、例えば、洗車の際に高圧水が水抜き部を通過してアウタシール部とインナシール部との間に浸入した場合、一次的に水を溜められる量も減るので、車室内側への水の浸入を抑えるうえで不利になる。しかしながら、本発明では、水受け部が設けられているため、洗車の際の高圧水が水抜き部を通過してインナシール部に直撃するのを水受け部によって防ぐことで、車室内側への水の浸入を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明における車両のフューエルインレット部構造によれば、アウタシール部の一部に水抜き部を形成しても車室内への水の浸入を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両のフューエルインレット部構造が適用された自動車の後部を簡略化して示す側面図である。
図2図1のサイドアウタパネルからシール部付きインレットボックスを分離した状態を示す分解斜視図である。
図3図2のシール部付きインレットボックスを図2とは別の方向から見た状態で示す斜視図である。
図4図3のインレットボックスに設けられた係合部を拡大して図3とは別の方向から見た状態で示す斜視図である。
図5】インレットボックスがサイドアウタパネルに取り付けられた状態での係合部及びその周囲部を図3の5-5線に相当する切断位置で切断した状態で示す拡大断面図である。
図6】インレットボックスがサイドアウタパネルに取り付けられた状態での水抜き部及びその周囲部を図3の6-6線に相当する切断位置で切断した状態で示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る車両のフューエルインレット部構造について図1図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0019】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る車両のフューエルインレット部構造が適用された車両としての自動車10の後部10Rが簡略化された側面図で示されている。図1に示されるように、自動車10は、車体パネルとしてのサイドアウタパネル12を有している。サイドアウタパネル12は、車体の外側部分を構成している。サイドアウタパネル12の一部にはフューエルインレット部14が設けられている。フューエルインレット部14における車両幅方向外側には、リッド16が開閉可能に設けられている。
【0020】
図2には、フューエルインレット部14においてサイドアウタパネル12からシール部付きインレットボックス20を分離した状態が分解斜視図で示されている。図2に示されるように、フューエルインレット部14において、サイドアウタパネル12は、車両幅方向外側を向く一般面12Aに対して一段凹んだ凹部12Bを備えている。凹部12Bは、段差部12B1と底壁部12B2とを有し、底壁部12B2には、インレットボックス装着用の装着口12Hが貫通形成されている。
【0021】
図3には、シール部付きインレットボックス20を図2とは別の方向から見た状態の斜視図が示されている。図2及び図3に示されるように、シール部付きインレットボックス20は、樹脂製のインレットボックス22とゴム製のシール部30とを含んで構成されている。
【0022】
インレットボックス22は、箱状とされてボックス開口24Aが車室外側を向くように配置されるボックス部24を備えている。ボックス部24は、ボックス開口24Aを含んで構成された周壁部24Bと、周壁部24Bの車室内側の端部に連続して形成された底壁部24Cと、を有している。底壁部24Cには貫通孔24Hが形成されている。貫通孔24Hには、図示しない燃料タンクに接続された図示しないフィラーパイプが配置される。また、インレットボックス22は、ボックス開口24Aの周縁全周から張り出したフランジ部26を備えている。フランジ部26は、図2に示されるサイドアウタパネル12の装着口12Hの周縁部に沿って配置される。
【0023】
図3に示されるように、ボックス部24の周壁部24Bの外周側には、係合部28Aが複数(一例として四個)設けられている。なお、係合部28Aは、嵌合爪として把握することも可能な要素である。図4には、インレットボックス22に設けられた係合部28Aを拡大して図3とは別の方向から見た状態の斜視図が示されている。また、図5には、インレットボックス22がサイドアウタパネル12に取り付けられた状態での係合部28A及びその周囲部が図3の5-5線に相当する切断位置で切断された状態の拡大断面図で示されている。
【0024】
図4及び図5に示されるように、係合部28Aは、周壁部24Bの外面側に一体に形成された基台部28Bに片持ち支持されている。図4に示されるように、基台部28Bは、周壁部24Bの外面から突出する一対の側壁部28B1と、一対の側壁部28B1の突出方向の先端部同士の一部を連結する連結壁部28B2と、を備えている。一対の側壁部28B1は、フランジ部26の内面と直交する方向に沿って延在されると共に、一例としてフランジ部26と一体に連続して形成されている。連結壁部28B2は、フランジ部26から離間した位置に設定されている。
【0025】
係合部28Aは、フランジ部26の内面と直交する方向に沿って延在され、連結壁部28B2と一体に連続して形成されている。係合部28Aは、周壁部24Bの外面と対向するように配置される基板部28A1と、基板部28A1において周壁部24B側とは反対側に突出された突出部28A2と、を備えている。突出部28A2は、基板部28A1の幅方向中央部(延出方向と直交する短手方向の中央部)に設けられ、フランジ部26側へ向かうに従って徐々に突出量が大きくなっている。図5に示されるように、突出部28A2の突出先端側の部分のうちフランジ部26側を向く端面28AXは、突出部28A2が基板部28A1から突出する方向へ向けてフランジ部26側とは反対側に若干傾斜している。
【0026】
係合部28Aは、弾性変形可能とされ、自由端側が上下に変位可能とされている。インレットボックス22のボックス部24が車両外側からサイドアウタパネル12の装着口12Hの中に挿入されて突出部28A2の突出先端28ATが上下に変位しながらサイドアウタパネル12の装着口12Hよりも車両内側に入り込むことで、係合部28Aは、サイドアウタパネル12の装着口12Hに係合されるようになっている。そして、本実施形態では、複数の係合部28Aがサイドアウタパネル12の装着口12Hに係合されることで、インレットボックス22がサイドアウタパネル12に取り付けられている。
【0027】
インレットボックス22のフランジ部26の先端側には、サイドアウタパネル12の車両外側に配置されるシール部30が設けられている。シール部30は、インレットボックス22と一体成形(二色成形)されており、インレットボックス22のフランジ部26とサイドアウタパネル12との間を全周に亘ってシールする。図3及び図5に示されるように、シール部30は、インナシール部32とアウタシール部34とを備えることで二重シール構造を有する。インナシール部32及びアウタシール部34は、いずれもフランジ部26の全周に対応して設けられている。
【0028】
インナシール部32は、サイドアウタパネル12の装着口12Hの周縁側の部位に対して全周に亘って接触している。図5に示されるように、インナシール部32は、その基端部32Aからサイドアウタパネル12の凹部12Bにおける底壁部12B2側へ向けて装着口12H側とは反対側に傾斜すると共に先端側で装着口12H側とは反対側に曲げられてサイドアウタパネル12の凹部12Bにおける底壁部12B2に押し付けられている。
【0029】
また、アウタシール部34は、サイドアウタパネル12に対してインナシール部32よりも装着口12Hの周縁から離れた部位に接触している。アウタシール部34は、その基端部34Aからサイドアウタパネル12の段差部12B1側へ向けて底壁部12B2側とは反対側に若干傾斜すると共に先端側で底壁部12B2側とは反対側に曲げられてサイドアウタパネル12の段差部12B1に押し付けられている。
【0030】
図3に示されるように、アウタシール部34には、インナシール部32よりも車両下方側に位置する部分の一部に排水用の水抜き部34Hが貫通形成されている。水抜き部34Hの車両前後方向における形成位置は、一例として、アウタシール部34の車両前後方向中央位置を含む部分とされている。水抜き部34Hは、車両下方側に開放されて正面視で略半円状の切欠部とされている。
【0031】
図6には、インレットボックス22がサイドアウタパネル12に取り付けられた状態での水抜き部34H及びその周囲部が図3の6-6線に相当する切断位置で切断された状態の拡大断面図で示されている。図5及び図6に示されるように、シール部30は、インナシール部32の基端部32Aとアウタシール部34の基端部34Aとを一体に連結するシール連結部36を備えている。
【0032】
図3に示されるように、シール部30の全周のうちの車両上下方向の下部30Aの一部には、水受け部38が設けられている。図6に示されるように、水受け部38は、インナシール部32の基端部32Aとアウタシール部34の基端部34Aとの間の部分であるシール連結部36から水抜き部38とインナシール部32との間を含む領域に延出されている。水受け部38は、図3に示されるインレットボックス22の正面側から見て水抜き部34Hに対応する左右方向の範囲を含む範囲に配置され、車両外側から水抜き部34Hを通過した水を受け止めることが可能になっている。インレットボックス22の正面側から見た場合の水受け部38の左右方向の配置範囲は、より具体的には、水抜き部34Hに対応する範囲と、その両側に連続する所定範囲(図中では点線で示される両側部分38Sの範囲であり、水抜き部34Hの幅の数倍の幅の範囲)と、からなる範囲である。
【0033】
図6に示されるように、水受け部38は、シール連結部36から一体に延出された板状部分とされている。水受け部38は、その基端側から車両下方側へ向けて車室内側に傾斜すると共に先端側ではインナシール部32側とは反対側に曲げられてサイドアウタパネル12に押し付けられている。言い換えれば、本実施形態の水受け部38は、インナシール部32及びアウタシール部34とは別の部分をシールする中間シール部として把握することができる要素である。
【0034】
なお、図5及び図6に示されるインナシール部32、アウタシール部34及び水受け部38は、図5に示される係合部28Aがサイドアウタパネル12の装着口12Hに係合されることによって、サイドアウタパネル12に押し付けられている。また、図5及び図6では、インナシール部32、アウタシール部34及び水受け部38においてサイドアウタパネル12に押し付けられていないと仮定した場合の形状をそれぞれ二点鎖線で示している。
【0035】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図5及び図6に示されるように、インレットボックス22のフランジ部26の先端側には、サイドアウタパネル12の車両外側に配置されるシール部30が設けられており、このシール部30は、インレットボックス22のフランジ部26とサイドアウタパネル12との間を全周に亘ってシールする。シール部30のインナシール部32は、インレットボックス22のフランジ部26の全周に対応して設けられ、サイドアウタパネル12の装着口12Hの周縁側の部位に対して全周に亘って接触している。また、シール部30のアウタシール部34は、インレットボックス22のフランジ部26の全周に対応して設けられ、サイドアウタパネル12に対してインナシール部32よりも装着口12Hの周縁から離れた部位に接触している。このため、例えば、洗車の際に高圧水がインナシール部32に直撃するのをアウタシール部34によって防ぐことが可能になり、インナシール部32とサイドアウタパネル12との間から車室内へ水が浸入するリスクを低減することができる。
【0037】
また、図3及び図6に示されるように、アウタシール部34においてインナシール部32よりも車両下方側に位置する部分の一部には排水用の水抜き部34Hが貫通形成されている。これにより、アウタシール部34とインナシール部32との間に入った水を水抜き部34Hから排出することができる。
【0038】
また、シール部30には、シール部30の全周のうちの車両上下方向の下部30Aの一部に水受け部38が設けられている。図6に示されるように、水受け部38は、インナシール部32の基端部32Aとアウタシール部34の基端部34Aとの間の部分から水抜き部38とインナシール部32との間を含む領域に延出されている。この水受け部38は、車両外側から水抜き部34Hを通過した水を受け止める。このため、洗車の際に水抜き部34Hを通過した高圧水がインナシール部32に直撃するのを水受け部38によって防ぐことが可能になり、インナシール部32とサイドアウタパネル12との間から車室内へ水が浸入するリスクを一層低減することができる。よって、止水性が良好に確保される。
【0039】
なお、本実施形態では、図3に示されるように、インレットボックス22の正面側から見た場合の水受け部38の左右方向の配置範囲は、水抜き部34Hに対応する範囲と、その両側に連続する所定範囲(水抜き部34Hの幅の数倍の幅の範囲)と、からなる範囲となっているので、止水性が非常に高い。一方、水受け部38は、シール部30の下部30Aのうちその長手方向の限られた範囲に設定されているので、水抜き部34Hからの排水も良好に実現することができる。
【0040】
また、本実施形態では、図6に示されるように、インナシール部32の基端部32Aとアウタシール部34の基端部34Aとは、シール連結部36によって、一体に連結されており、水受け部38は、シール連結部36から一体に延出されている。このため、水受け部38の基端側において、シール連結部36との間に隙間が発生するのを防ぐことができるので、そのような隙間に起因した水の浸入を防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、水受け部38は、その基端側から車両下方側へ向けて車室内側に傾斜すると共に先端側ではインナシール部32側とは反対側に曲げられてサイドアウタパネル12に押し付けられている。これにより、水受け部38がインナシール部32と当接するのを避けながら、水受け部38がサイドアウタパネル12と接触する部分の面圧を上げることが可能になる。このため、インナシール部32の機能を良好に維持しつつ、水受け部38とサイドアウタパネル12との接触部の間から水が浸入してしまうのを効果的に抑制することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態では、図3及び図5に示されるように、インレットボックス22のボックス部24の周壁部24Bの外周側には、サイドアウタパネル12の装着口12Hに係合される係合部28Aが複数設けられており、複数の係合部28Aがサイドアウタパネル12の装着口12Hに係合されることで、インレットボックス22がサイドアウタパネル12に取り付けられている。このような構成では、インレットボックス22のフランジ部26及びサイドアウタパネル12の装着口12Hの周囲部に締結孔を貫通形成する必要がない。このため、前記締結孔を考慮してインナシール部32の位置を設定する、といったことをする必要がなく、アウタシール部34とインナシール部32との離間距離を全周に亘って狭くすることが可能になる。
【0043】
一方、アウタシール部34とインナシール部32との離間距離を全周に亘って狭くすると、例えば、洗車の際に高圧水が図3及び図6に示される水抜き部34Hを通過してアウタシール部34とインナシール部32との間に浸入した場合、一次的に水を溜められる量も減るので、車室内側への水の浸入を抑えるうえで不利になる。しかしながら、本実施形態では、水受け部38が設けられているため、洗車の際の高圧水が水抜き部34Hを通過してインナシール部32に直撃するのを水受け部38によって防ぐことで、車室内側への水の浸入を抑えることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態における車両のフューエルインレット部構造によれば、アウタシール部34の一部に水抜き部34Hを形成しても車室内への水の浸入を防止又は抑制することができる。
【0045】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、シール部30は、インレットボックス22と一体成形されているが、上記実施形態の変形例として、シール部は、インレットボックス(22)とは別体で形成されてインレットボックス(22)のフランジ部(26)の先端側に嵌め込まれてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、水受け部38は、シール連結部36から一体に延出されているが、上記実施形態の変形例として、水受け部は、例えば、インナシール部(32)及びアウタシール部(34)の一方又は両方とは別体とされて当該一方又は両方に接合されたものでもよい。
【0047】
また、上記実施形態の変形例として、水受け部の先端部が曲げられずに車体パネル(サイドアウタパネル12)に突き当てられている、という構成も採り得る。また、他の変形例として、水受け部の先端部が車体パネル(サイドアウタパネル12)から僅かに離れている、という構成も採り得る。
【0048】
また、上記実施形態の変形例として、インレットボックスのフランジ部が締結具によって車体パネル(サイドアウタパネル12)に取り付けられている、といった構成も採り得る。
【0049】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0050】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 自動車(車両)
12 サイドアウタパネル(車体パネル)
12H 装着口
14 フューエルインレット部
22 インレットボックス
24 ボックス部
24A ボックス開口
24B 周壁部
24C 底壁部
24H 貫通孔
26 フランジ部
28A 係合部
30 シール部
30A 下部
32 インナシール部
32A インナシール部の基端部
34 アウタシール部
34A アウタシール部の基端部
34H 水抜き部
36 シール連結部(インナシール部の基端部とアウタシール部の基端部との間の部分)
38 水受け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6