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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】内燃機関の過給装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/007 20060101AFI20241001BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20241001BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20241001BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F02B37/007
F02B37/16 B
F02B37/00 400C
F02B37/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021150809
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043289
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 知史
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-305322(JP,A)
【文献】特開2007-291960(JP,A)
【文献】特開2009-114991(JP,A)
【文献】特開2016-084737(JP,A)
【文献】特開2020-016202(JP,A)
【文献】特開2020-084856(JP,A)
【文献】特開2018-017179(JP,A)
【文献】特開2021-127688(JP,A)
【文献】特開2001-280144(JP,A)
【文献】国際公開第2009/130792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/007
F02B 37/16
F02B 37/00
F02B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けた第1過給機および第2過給機と、
前記第2過給機で過給された吸気を前記第1過給機の上流の前記吸気通路に迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するバイパスバルブと、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量センサと、
前記第1過給機によって吸気を過給するシングルモードから、前記第2過給機の助走運転を行う助走モードを経て、前記第1過給機と前記第2過給機の両方によって吸気を過給するツインモードへ過給モードを切り替える制御を実行する制御装置と、を備え、
前記第1過給機および前記第2過給機は、前記内燃機関の排気ガスにより駆動されるターボチャージャーであり、
前記制御装置は、所定周期毎の前記吸入空気量の値を比較することにより脈動を検出し、前記吸入空気量の前回値と今回値の差が第1設定値以上のとき、前記脈動が所定値以上であると判定し、
前記制御装置は、前記助走モード中に前記吸入空気量の前記脈動が前記所定値以上になったときに、前記助走モードの開始時に閉弁状態である前記バイパスバルブを開弁し、
前記第1過給機および前記第2過給機は、排気ガス流路面積を変更可能な可変ノズルを備えた可変ノズル式ターボチャージャーであり、
前記制御装置は、前記助走モードのとき、前記第2過給機の可変ノズルの開度を最小値にするとともに、前記第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動する、内燃機関の過給装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記吸入空気量の前記前回値と前記今回値の差が前記第1設定値以上であり、かつ、前記前回値における前記吸入空気量の微分値の符号と前記今回値における前記吸入空気量の微分値の符号が異なるとき、前記脈動が前記所定値以上であると判定する、請求項に記載の内燃機関の過給装置。
【請求項3】
内燃機関の吸気通路に設けた第1過給機および第2過給機と、
前記第2過給機で過給された吸気を前記第1過給機の上流の前記吸気通路に迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するバイパスバルブと、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量センサと、
前記第1過給機によって吸気を過給するシングルモードから、前記第2過給機の助走運転を行う助走モードを経て、前記第1過給機と前記第2過給機の両方によって吸気を過給するツインモードへ過給モードを切り替える制御を実行する制御装置と、を備え、
前記第1過給機および前記第2過給機は、前記内燃機関の排気ガスにより駆動されるターボチャージャーであり、
前記制御装置は、所定期間における前記吸入空気量の最大値と最小値の差が第2設定値以上のとき、脈動が所定値以上であると判定し、
前記制御装置は、前記助走モード中に前記吸入空気量の前記脈動が前記所定値以上になったときに、前記助走モードの開始時に閉弁状態である前記バイパスバルブを開弁し、
前記第1過給機および前記第2過給機は、排気ガス流路面積を変更可能な可変ノズルを備えた可変ノズル式ターボチャージャーであり、
前記制御装置は、前記助走モードのとき、前記第2過給機の可変ノズルの開度を最小値にするとともに、前記第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動する、内燃機関の過給装置。
【請求項4】
内燃機関の吸気通路に設けた第1過給機および第2過給機と、
前記第2過給機で過給された吸気を前記第1過給機の上流の前記吸気通路に迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するバイパスバルブと、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量センサと、
前記第1過給機によって吸気を過給するシングルモードから、前記第2過給機の助走運転を行う助走モードを経て、前記第1過給機と前記第2過給機の両方によって吸気を過給するツインモードへ過給モードを切り替える制御を実行する制御装置と、を備え、
前記第1過給機および前記第2過給機は、前記内燃機関の排気ガスにより駆動されるターボチャージャーであり、
前記制御装置は、前記吸入空気量の脈動の振幅が第3設定値以上であり、かつ、前記吸入空気量の脈動の周期が所定周期以下のとき、前記脈動が所定値以上であると判定し、
前記制御装置は、前記助走モード中に前記吸入空気量の前記脈動が前記所定値以上になったときに、前記助走モードの開始時に閉弁状態である前記バイパスバルブを開弁し、
前記第1過給機および前記第2過給機は、排気ガス流路面積を変更可能な可変ノズルを備えた可変ノズル式ターボチャージャーであり、
前記制御装置は、前記助走モードのとき、前記第2過給機の可変ノズルの開度を最小値にするとともに、前記第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動する、内燃機関の過給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の過給装置に関し、特に、並列に接続された複数の過給機を備えた内燃機関の過給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気を過給する過給装置として、たとえば、第1過給機と第2過給機とを有する構成が公知である。たとえば、特開2020-16202号公報(特許文献1)には、並列に接続された第1過給機および第2過給機を備えるシーケンシャルツインターボが記載されており、第1過給機のみを用いて内燃機関の吸気を過給する過給モード(以下、「シングルモード」とも称する)と、第1過給機および第2過給機の両方を用いて内燃機関の吸気を過給する過給モード(以下、「ツインモード」とも称する)とを切り替える制御を行っている。
【0003】
シーケンシャルツインターボにおいては、過給モードをシングルモードからツインモードに切り替える際には、シングルモードにおいて停止していた第2過給機の運転が開始されてから、第2過給機の過給圧が十分高くなるまでの間に過給圧の段差が生じて、ドライバビリティの悪化が生じる可能性がある。こうした過給圧の段差を抑制するために、第2過給機の助走運転を行なう助走モードを採用し、過給モードをシングルモードから直接ツインモードに切り替えるのではなく、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ切り替える制御が行なわれることがある。助走モードでは、第2過給機による過給圧が過大となり発生するサージングを抑制しながら第2過給機の過給圧を上昇させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-16202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
助走モードにおいて第2過給機のサージングを抑制しようとすると、第2過給機の運転が開始されてから第2過給機の過給圧が十分高くなるまでの時間(以下、「助走時間」とも称する)が長くなるという問題が生じ得る。特許文献1に記載の技術では、第2過給機で過給された吸気を第1過給機の上流の吸気通路へ迂回するバイパス通路と、当該バイパス通路に設けた吸気バイパスバルブ(ABV)とを設け、ABVの開度が中間開度である状態で助走モードを開始し、第2過給機の動作点がサージング領域内にある場合には、ABVの開度を大きくすることにより、第2過給機のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることができるとされている。
【0006】
特許文献1では、第2過給機の動作点を、第2過給機の圧力比と、第2過給機に吸入される空気量と、第2過給機のコンプレッサの回転速度とのうちの少なくとも2つのパラメータによって特定することにより、第2過給機の動作点がサージング領域内にあるか否かを求めている。このため、第2過給機に吸入される空気量を検出する空気量センサや、コンプレッサの回転速度を検出する回転速度センサ等の特別なセンサを備えない場合には、第2過給機の動作点を特定することができず、特許文献1に記載された技術を採用することができない。
【0007】
本開示は、内燃機関の過給装置において、特別なセンサを設けることなく、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の内燃機関の過給装置は、内燃機関の吸気通路に設けた第1過給機および第2過給機と、第2過給機で過給された吸気を第1過給機の上流の吸気通路に迂回するバイパス通路と、バイパス通路を開閉するバイバスバルブと、内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量センサと、第1過給機によって吸気を過給するシングルモードから、第2過給機の助走運転を行う助走モードを経て、第1過給機と第2過給機の両方によって吸気を過給するツインモードへ過給モードを切り替える制御を実行する制御装置と、を備える内燃機関の過給装置である。制御装置は、助走モード中に吸入空気量の脈動が所定値以上になったときに、助走モードの開始時に閉弁状態であるバイパスバルブを開弁する。
【0009】
この構成によれば、助走モード中に、吸入空気量センサで検出した吸入空気量の脈動が所定値以上になったとき、助走モードの開始時に閉弁状態であるバイパスバルブを開弁する。助走モードの開始時には、バイパスバルブは閉弁状態であるので、助走モードにおける第2過給機の過給圧の上昇速度を速めることができる。第2過給機のサージングが発生する直前には、吸入空気量の脈動が所定値以上になるので、吸入空気量の脈動が所定値以上になったときに、バイパスバルブを開弁して、第2過給機の過給圧(吐出圧力)を低下させることにより、第2過給機のサージングを抑制することができる。したがって、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮の両立を図ることができる。吸入空気量センサは、内燃機関の燃料噴射量や排気ガス再循環量等を制御するために設けられた吸入空気量センサであってよい。
【0010】
好ましくは、制御装置は、所定周期毎の吸入空気量の値を比較することにより脈動を検出し、吸入空気量の前回値と今回値の差が第1設定値以上のとき、脈動が所定値以上であると判定してもよい。
【0011】
第2過給機のサージングが発生する直前における吸入空気量の脈動の周期は、予め実験等によって求めることができる。したがって、予め実験等で求めた脈動の周期に基づいて設定した所定周期毎に吸入空気量を検出し、検出した吸入空気量の前回値と今回値の差が第1設定値以上のとき、脈動が所定値以上であると判定することができる。
【0012】
好ましくは、制御装置は、吸入空気量の前回値と今回値の差が第1設定値以上であり、かつ、前回値における吸入空気量の時間微分値の符号と今回値における吸入空気量の時間微分値の符号が異なるとき、脈動が所定値以上であると判定してよい。
【0013】
吸入空気量の時間微分値が正の場合は、吸入空気量が増加している状態であり、時間微分値が負の場合は、吸入空気量が減少している状態である。したがって、吸入空気量の前回値と今回値の差が第1設定値以上であるとの条件に、前回値における吸入空気量の時間微分値の符号と今回値における吸入空気量の時間微分値の符号が異なるとの条件を加えることにより、脈動が所定値以上であることをより精度良く判定することができる。
【0014】
好ましくは、制御装置は、所定期間における吸入空気量の最大値と最小値の差が第2設定値以上のとき、脈動が所定値以上であると判定するようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、吸入空気量の変動のピークツーピークに基づいて、脈動が所定値以上であると判定することができる。
【0016】
好ましくは、第1過給機および第2過給機は、前記内燃機関の排気ガスにより駆動されるターボチャージャーであってよい。
【0017】
この構成によれば、内燃機関の過給装置として多く採用されているターボチャージャーにおいて、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮の両立を図ることができる。
【0018】
好ましくは、第1過給機および第2過給機は、排気ガス流路面積を変更可能な可変ノズルを備えた可変ノズル式ターボチャージャーであり、制御装置は、助走モードのとき、第2過給機の可変ノズルの開度を最小値にするとともに、第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動するようにしてもよい。
【0019】
助走モードのとき、第2過給機の可変ノズルの開度を最小値にすることにより、第2過給機の過給圧の上昇速度を速めることができる。助走モードのとき、第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動することにより、ツインモードに切り替わった際に、第1過給機の過給圧を確保することができる。助走モードのとき、第1過給機の可変ノズルを閉じ方向に駆動することに起因して、第2過給機のサージングの発生するタイミングが変化しても、吸入空気量の脈動が所定値以上になったときにバイパスバルブを開弁して、第2過給機のサージングの発生を抑制できるので、確実に第2過給機のサージングを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態における内燃機関の過給装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る過給装置1のシングルモードにおける状態を示す図である。
図3】本実施の形態に係る過給装置1の助走モードにおける状態を示す図である。
図4】本実施の形態に係る過給装置1のツインモードにおける状態を示す図である。
図5】助走モードにおける、吸入空気量Gaの変化を示す図である。
図6】制御装置200により実行される過給モード切替制御の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態におけるタイムチャートである。
図8】変形例1における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。
図9】変形例2における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。
図10】変形例3における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0023】
図1は、本実施の形態における内燃機関の過給装置1の概略構成の一例を示す図である。図1を参照して、過給装置1は、内燃機関100を過給するものである。内燃機関100は、たとえば走行のための動力発生装置として車両(たとえば、4輪自動車)に搭載される。本実施の形態では、内燃機関100がV型6気筒ディーゼルエンジン(圧縮自己着火内燃機関)であるが、過給対象となる内燃機関は、こうしたディーゼルエンジンに限られない。過給対象となる内燃機関は、ガソリンエンジン(火花点火式内燃機関)であってもよいし、V型以外の気筒レイアウト(たとえば直列型あるいは水平型)の内燃機関であってもよい。また、バンクや気筒の数も任意に変更できる。
【0024】
本実施の形態に係る過給装置1は、内燃機関100と、内燃機関100の吸気を過給する第1過給機30および第2過給機40と、制御装置200とを含む。制御装置200は、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、各種信号を入出力するための入出力ポートと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、保存用ストレージ(ROM(Read Only Memory)、および書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。制御装置200は、入力ポートに接続された各種機器および各種センサから信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続された各種機器を制御する。記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。ただし、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0025】
内燃機関100は、バンク10A、10Bと、吸気通路(エアクリーナ20、インタークーラ25、吸気マニホールド28A、28B等)と、排気通路(排気マニホールド50A、50Bと排気処理装置81等)とを含む。バンク10Aに設けた複数の気筒12A、および、バンク10Bに設けた複数の気筒12Bには、ピストン(図示せず)と気筒の内壁によって燃焼室が形成されており、吸気通路を介して燃焼室内に供給された空気が圧縮される。圧縮された高温高圧の空気中に、インジェクタ(図示せず)から燃料を噴射して自着火燃焼を行い、燃焼後の排気ガスが排気通路を介して排出される。
【0026】
第1過給機30は、第1コンプレッサ31と第1タービン32とを含むターボチャージャーである。第1過給機30の第1コンプレッサ31は、内燃機関100の吸気通路に設けられ、吸気(空気)を過給する。吸気通路は、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A、28Bまでの通路である。第1過給機30の第1タービン32は、内燃機関100の排気通路に設けられる。排気通路は、排気マニホールド50A、50Bから排気処理装置81までの通路である。
【0027】
第1コンプレッサ31内には、コンプレッサホイール33が回転自在に収納される。第1タービン32内には、タービンホイール34と可変ノズル機構35とが設けられる。タービンホイール34は、回転自在に第1タービン32内に収納される。コンプレッサホイール33と、タービンホイール34とは、回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール33は、タービンホイール34に供給される排気ガスのエネルギー(排気エネルギー)によって回転駆動される。
【0028】
可変ノズル機構35は、第1タービン32を作動させる排気の流速を変化させる。可変ノズル機構35は、タービンホイール34の外周側に配置され、排気流入口から供給される排気をタービンホイール34に導く複数のノズルベーン(図示せず)と、複数のノズルベーンの各々を回転させることによって隣接するノズルベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間をVN開度と記載する)を変化させる駆動装置(図示せず)とを含む。可変ノズル機構35は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN1に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
【0029】
第2過給機40は、第2コンプレッサ41と第2タービン42とを含むターボチャージャーである。第2過給機40の第2コンプレッサ41は、内燃機関100の吸気通路において、第1コンプレッサ31に並列して設けられ、吸気を過給する。第2過給機40の第2タービン42は、内燃機関100の排気通路において、第1タービン32に並列して設けられる。
【0030】
第2コンプレッサ41内には、コンプレッサホイール43が回転自在に収納される。第2タービン42内には、タービンホイール44と可変ノズル機構45とが設けられる。タービンホイール44は、回転自在に第2タービン42内に収納される。コンプレッサホイール43と、タービンホイール44とは、回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール43は、タービンホイール44に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。
【0031】
可変ノズル機構45は、可変ノズル機構35と同様の構成を有するため、その詳細な説明は繰り返さない。可変ノズル機構45は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN2に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。なお、本実施の形態において、第1過給機30および第2過給機40は、互いに同じ容量(サイズ)を有するターボチャージャーである。
【0032】
エアクリーナ20は、吸気口(図示せず)から吸入された空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、吸気通路23が接続されており、吸気通路23の下流側は、吸気通路21および吸気通路22に分岐している。
【0033】
吸気通路21は、第1過給機30の第1コンプレッサ31の吸気流入口31Aに接続される。第1過給機30の第1コンプレッサ31の吸気流出口31Bは、吸気通路37を介してインタークーラ25に接続される。第1コンプレッサ31は、コンプレッサホイール33の回転によって吸気通路21を通じて吸入される空気を過給して吸気通路37に供給する。
【0034】
吸気通路22は、第2過給機40の第2コンプレッサ41の吸気流入口41Aに接続される。第2過給機40の第2コンプレッサ41の吸気流出口41Bは、吸気通路47を介して吸気通路37の途中の接続部K3に接続される。第2コンプレッサ41は、コンプレッサホイール43の回転によって吸気通路22を通じて吸入される空気を過給して吸気通路47に供給する。
【0035】
エアクリーナ20下流の吸気通路23には内燃機関100の吸入空気量Gaを検出する吸入空気量センサ70が設けられている。吸入空気量センサ70は、たとえば、ホットワイヤ(熱線)式エアフローメータであってよく、内燃機関100に供給される空気の質量流量を検出するものであってよい。
【0036】
また、内燃機関100には、制御弁が設けられている。本実施形態では、制御弁は、ACV62、ABV64、およびECV66を含む。吸気通路47の途中にはACV62が設けられている。ACV62は、エアコントロールバルブである。ACV62は、たとえば、ON(開)/OFF(閉)されるノーマリークローズのVSV(Vacuum Switching Valve)であり、制御装置200によって制御される。ACV62は、吸気通路47(第1コンプレッサ31の吸気流出口31Bと、第2コンプレッサ41の吸気流出口41Bとを結ぶ経路)に設けられている。
【0037】
また、吸気通路47においてACV62よりも上流側(第2コンプレッサ41側)に位置する接続部K4に、バイパス通路48の一方端が接続されており、バイパス通路48の他方端は吸気通路21に接続されている。バイパス通路48は、吸気通路47を流れる空気の少なくとも一部を第1過給機30の第1コンプレッサ31よりも上流の吸気通路に迂回させるための通路である。バイパス通路48を介して吸気通路21に迂回した空気は、第1コンプレッサ31に流入する。
【0038】
バイパス通路48にはABV64が設けられている。ABV64は、エアバイパスバルブである。ABV64は、たとえば、ソレノイドによってON(開)/OFF(閉)駆動されるノーマリークローズのバルブであり、制御装置200によって制御される。ABV64は、本開示の「バイパスバルブ」に相当し、バイパス通路を開閉する。
【0039】
接続部K3には、第1コンプレッサ31によって過給された空気と、第2コンプレッサ41によって過給され、ACV62を通過した空気とが供給される。これらの空気は、接続部K3で合流してインタークーラ25に流入する。
【0040】
インタークーラ25は、流入した空気を冷却する。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。インタークーラ25には、2カ所の吸気流出口が設けられる。インタークーラ25の一方の出口は、吸気通路27Aを介して吸気マニホールド28Aに接続される。インタークーラ25の他方の出口は、吸気通路27Bを介して吸気マニホールド28Bに接続される。
【0041】
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結される。一方、排気マニホールド50A、50Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの排気ポート(図示せず)に連結される。
【0042】
各気筒12A、12Bの燃焼室から排気ポートを通じて気筒外に排出された排気(燃焼後のガス)は、内燃機関100の排気通路を経由して車外に排出される。上記の排気通路は、排気マニホールド50A、50B、排気通路51A、51Bと、接続部K1と、排気通路52A、52B、53A、53Bと、接続部K2とを含む。排気マニホールド50Aに接続された排気通路51Aと、排気マニホールド50Bに接続された排気通路51Bは、接続部K1において一旦合流した後に、排気通路52Aと排気通路52Bに分岐する。
【0043】
排気通路52Aは、第1タービン32の排気流入口に接続される。第1タービン32の排気流出口には、排気通路53Aの一方端が接続される。排気通路52Bは、第2タービン42の排気流入口に接続される。第2タービン42の排気流出口には、排気通路53が接続される。
【0044】
排気通路52BにはECV66が設けられる。ECV66は、エキゾーストコントロールバルブである。ECV66は、たとえば、ON(開)/OFF(閉)されるノーマリーオープンのVSVであり、制御装置200によって制御される。
【0045】
排気通路53Aと排気通路53Bとは、接続部K2において合流し、排気処理装置81に接続される。排気処理装置81は、たとえば、SCR触媒、酸化触媒、あるいは、PM除去フィルタ等によって構成され、排気通路53Aおよび排気通路53Bから流通する排気を浄化する。
【0046】
排気通路には、吸気通路47の接続部K4における圧力Ps(ACV62より上流側の吸気通路47の圧力Ps)を検出する、圧力センサ80が設けられている。圧力センサ80は、過給圧Psを示す信号を制御装置200に送信する。過給圧Psは、第2過給機40の過給圧である。なお、図1には一部のセンサしか示していないが、内燃機関100の状態等を検出して制御装置200へ出力する各種センサ(たとえば、内燃機関100の回転速度NEを検出する回転数センサ、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)APを検出するアクセル開度センサ等)がさらに設けられている。
【0047】
本実施形態において、第1過給機30、第2過給機40、および制御装置200などによって過給装置が構成される。制御装置200は、ACV62、ABV64およびECV66を制御することにより、複数のモードのうちいずれかのモードに制御する。複数のモードは、シングルモードと、ツインモードとを含む。シングルモードは、第1過給機30を用いて吸気(空気)を内燃機関100に過給する。ツインモードは、第1過給機30および第2過給機40を用いて吸気を内燃機関100に過給するモードである。したがって、本実施の形態の過給装置は、所謂、シーケンシャルツインターボである。
【0048】
ところで、シーケンシャルツインターボにおいて、過給モードをシングルモードからツインモードに切り替える際には、シングルモードにおいて停止していた第2過給機40の運転が開始されてから、第2過給機40の過給圧が十分高くなるまでの間に過給圧の段差が生じ、ドライバビリティの悪化を招く可能性がある。
【0049】
こうした過給圧の段差を抑制するためには、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ切り替える制御を行なうことが望ましい。過給圧の段差を小さくするため、助走モードでは、第2過給機40の過給圧が十分に高くなるまで、吸気通路47に設けたACV62の閉弁を維持することが望ましいが、第2過給機40の下流の吸気通路47の圧力(第2過給機40の過給圧)が過大になり、第2過給機40のサージングが発生し易くなる。このサージングを抑制するために、たとえば、第2過給機40の過給通路(第1コンプレッサ31の吐出側の通路)を流れる空気(吸気)の少なくとも一部を第1過給機30の吸入通路(第1コンプレッサ31の吸気流入側の通路)に迂回(還流)させるバイパス通路48に設けたABV64を開くことで、第2過給機40吐出圧力(過給圧)が低下し、第2過給機のサージングが抑制される。
【0050】
しかしながら、助走モードの開始と同時にABV64を開くと、第2過給機40の助走時間(第2過給機40の運転が開始されてから第2過給機40の過給圧が十分高くなるまでの時間)が長くなり、加速の遅延(ひいては、ドライバビリティの悪化)につながることがある。
【0051】
本実施の形態では、吸入空気量センサ70で検出した吸入空気量Gaを用いて、助走モードにおける第2過給機40のサージングの発生を予測し、ABV64の開閉を制御することにより、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮を図る。
【0052】
以下、図2図6を用いて、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ過給モードを切り替える制御について説明する。
【0053】
図2は、本実施の形態に係る過給装置1のシングルモードにおける状態を示す図である。図2を参照して、シングルモードでは、ACV62、ABV64、およびECV66の全てが閉じた状態(ACV:閉、ABV:閉、ECV:閉)で第1コンプレッサ31(第1過給機30)のみで内燃機関100の吸気が過給される。図2の矢印に示すように、排気マニホールド50A、50Bを流通する排気は、排気通路52Aを経由して第1過給機30の第1タービン32に流れ、排気通路53Aを経由して排気処理装置81に流れる。
【0054】
第1タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転駆動されることによりコンプレッサホイール33が駆動され、エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気通路23および吸気通路21を経由して第1コンプレッサ31で過給(圧縮)される。第1コンプレッサ31から過給された吸気は、吸気通路37からインタークーラ25に流入して冷却され、吸気通路27A、27Bから各バンク10A、10Bの燃焼室に供給される。
【0055】
図3は、本実施の形態に係る過給装置1の助走モードにおける状態を示す図である。図3を参照して、助走モードでは、ACV62が閉じABV64およびECV66の各々が開いた状態(ACV62:閉、ABV64:開、ECV:開)で第2過給機40の助走運転(より特定的には、第2過給機40の過給圧を上昇させる運転)が行なわれる。図3の矢印に示すように、排気マニホールド50A、50Bを流通する排気は、接続部K1で一旦合流した後に排気通路52A、52Bに分岐し、第1過給機30の第1タービン32、および第2過給機40の第2タービン42の両方に流れ、排気通路53A、53Bを経由して排気処理装置81に流通する。
【0056】
第1タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転駆動されることによりコンプレッサホイール33が駆動される。第2タービン42に供給された排気によって、タービンホイール44が回転駆動されることによりコンプレッサホイール43が駆動される。
【0057】
エアクリーナ20から吸入される吸気(空気)は、第1コンプレッサ31および第2コンプレッサ41の両方で過給(圧縮)される。第2コンプレッサ41で過給された吸気は、吸気通路47から接続部K4を経由してバイパス通路48に流れ、第1コンプレッサ31の上流側の吸気通路21に迂回(還流)する。第1コンプレッサ31で過給された吸気は、吸気通路37からインタークーラ25に流入して冷却され、吸気通路27A、27Bにから各バンク10A、10Bの燃焼室に供給される。助走モード中においては、第1過給機30によって燃焼室に供給される吸気を過給しつつ、第2過給機40の回転数を上昇させる。第2過給機40の回転数が上昇するにつれて第2過給機40(第2コンプレッサ41)の過給圧が上昇する。
【0058】
図4は、本実施の形態に係る過給装置1のツインモードにおける状態を示す図である。図4を参照して、ツインモードでは、ACV62およびECV66の各々が開きABV64が閉じた状態(ACV62:開、ABV64:閉、ECV:開)で第1過給機30および第2過給機40の両方を用いて内燃機関100の吸気が過給される。助走モード時においては、第2過給機40(第2コンプレッサ41)で過給された吸気がバイパス通路48を経由して吸気通路21に迂回(還流)していたのに対して、ツインモード時においては、図4の矢印に示すように、第2過給機40(第2コンプレッサ41)で過給された吸気は、吸気通路47から吸気通路37を経由してインタークーラ25に流入し、第1過給機30(第1コンプレッサ31)で過給された吸気とともに、吸気通路27A、27Bにから各バンク10A、10Bの燃焼室に供給される。
【0059】
図5は、助走モードにおける、吸入空気量Gaの変化を示す図である。縦軸は吸入空気量Gaであり、横軸は時間である。図5において、実線は、助走モードにおいてABV64を閉弁状態に維持した場合の吸入空気量Gaの変化を表している。時刻t1で助走モードを開始しABV64を閉弁状態に維持していると、実線に示すよう、吸入空気量Gaに周期Tの脈動(振動)が発生し、その後、時刻t10において第2過給機40のサージングが生じ、吸入空気量Gaが大きく変化し異音が発生する。図5において、破線は、周期Tの脈動が発生したときに、ABV64を開弁して、第2過給機40で過給された吸気をバイパス通路48を経由して吸気通路21に迂回させ、第2過給機40の過給圧を低下させた場合の吸入空気量Gaの変化を表している。この場合、時刻t10において第2過給機40のサージングによる異音は発生していない。
【0060】
本実施の形態では、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上になったとき、助走モードの開始時に閉弁状態であるABV64を開弁することにより、第2過給機40の過給圧(吐出圧力)を低下させることにより、第2過給機のサージングの抑制と助走時間の短縮を両立する。
【0061】
図6は、制御装置200により実行される過給モード切替制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、過給モードがシングルモードである状況においてツインモードへの切替要求(以下、「モード切替要求」とも称する)が発生したときに実行される。すなわち、図6の処理が実行されるタイミングでは、過給モードがシングルモードになっており、ACV62、ABV64、およびECV66の全てが閉じた状態になっている。
【0062】
モード切替要求の発生条件は任意に設定できる。たとえば、内燃機関100の運転状態が所定の状態(たとえば、高負荷状態や高回転速度状態)になったときにモード切替要求が発生するようにしてもよい。また、第1過給機30が所定の状態(たとえば、高回転速度の状態)になったときにモード切替要求が発生するようにしてもよい。また、第1過給機30、第2過給機40の効率および車両のドライバビリティなどの観点からモード切替要求の発生条件を設定してもよい。
【0063】
ステップ(以下、ステップを「S」と記載する)11にて、制御装置200は、制御装置200は、ECV66を開弁する。これにより、過給モードが助走モード(図3参照)になり、助走モード(すなわち、第2過給機40の助走運転)が開始される。ECV66が開弁されることによって、第2過給機40(第2コンプレッサ41)が駆動され、助走モードの開始から時間が経過するにつれて第2過給機40の過給圧が上昇する。この時点においては、ABV64は閉弁されているので、第2過給機40(第2コンプレッサ41)で過給された吸気は、ACV62の上流の吸気通路47内に留まり、第2過給機40の過給圧の上昇速度を速めることができる。
【0064】
続くS12では、ABV64が閉弁状態であるか否かを判定する。最初のこのステップが処理されるときには、ABV64へ閉弁されているので肯定判定されS13へ進む。
【0065】
S13では、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上か否かを判定する。たとえば、吸入空気量センサ70でサンプリングタイミング毎に取得した吸入空気量Gaの値を制御装置200のメモリ(記憶装置)に記憶して、吸入空気量Gaの軌跡(変動)を求め、吸入空気量Gaの軌跡から、吸入空気量Gaの軌跡に設定周期以下の脈動が発生しているとき、所定値以上の脈動であると判定してよい。また、吸入空気量Gaの軌跡から、吸入空気量Gaの軌跡に所定振幅以上の脈動が発生しているとき、所定値以上の脈動であると判定してよい。なお、設定周期および所定振幅は、予め実験等によって求められ、メモリに記憶しておく。
【0066】
S13において、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であると判定されたとき、肯定判定されS14に進すすむ。S13において、所定値以上の脈動が発生していないと判定されたとき、否定判定されS15へ進む。
【0067】
S14では、ABV64を開弁しS15へ進む。S15では、第2過給機40(第2コンプレッサ41)の過給圧が所定値以上か否かを判定する。たとえば、所定値は、第1過給機30の過給圧(吸気通路37の圧力)であってよく、圧力センサ80で検出した過給圧Psが、第1過給機30の過給圧に一致したとき、第2過給機40の過給圧が所定値以上であると判定してよい。第1過給機30の過給圧は、吸気通路37における圧力を検出する圧力センサから取得してよく、内燃機関100の運転状態から推定してもよい。第2過給機40の過給圧が所定値以上に場合には、S15で肯定判定されS16へ進む。
【0068】
S16では、ACV62を開弁するとともにABV64を閉弁して、過給モードをツインモードへ切り替え、今回のルーチンを終了する。
【0069】
第2過給機40の過給圧が所定値未満の場合には、S15で否定判定され、S12に戻る。前回の処理においてS14が実行されている場合には、S12で肯定判定されるので、S15へ進み、前回の処理においてS14が実行されていない場合には、S12で否定判定されるので、S13に進む。
【0070】
図7は、本実施の形態におけるタイムチャートである。図7において、時刻t0からt1の期間は、過給装置1はシングルモードで運転されている。シングルモードにおいて、第2過給機40のVN開度VN2は、最も閉じ側とされている。また、第1過給機30のVN開度VN1は、内燃機関100の負荷と回転速度NEに応じた値に制御され、たとえば、回転速度NEの上昇に伴い、VN開度VN1が開き側へ制御される。
【0071】
時刻t1においてツインモードへの切替要求が発生すると、図6のフローチャートの処理が実行され、ECV66が開弁されて助走モードが開始される(S11)。ECV66が開弁されることによって、第2過給機40(第2コンプレッサ41)が駆動され、助走モードの開始から時間が経過するにつれて第2過給機40の過給圧が上昇する。この時点においては、ABV64は閉弁されているので、第2過給機40(第2コンプレッサ41)で過給された吸気は、ACV62の上流の吸気通路47内に留まり、第2過給機40の過給圧の上昇速度を速めることができる。(時刻t1~t2)
時刻t1において助走モードが開始すると、第1過給機30のVN開度VN1は、閉じ側に制御される。この際、VN開度VN1の値は、内燃機関100の運転状態(負荷および回転速度NE)に応じて設定される。なお、図7において、VN開度VN1の実線は制御信号VN1の値を示し、破線はVN開度の実際値を示している。助走モードにおいて、第2過給機40のVN開度VN2は、最も閉じ側に設定される。
【0072】
第2過給機40の過給圧が上昇し、第2過給機40のサージングが発生する直前に至り、時刻t2において所定値以上の吸入空気量Gaの脈動が発生すると、ABV64が開弁される(S13で肯定判定されS14へ進む)。ABV64が開弁されると、第2過給機40で過給された吸気(空気)がバイパス通路48を経由して吸気通路21に迂回するので、第2過給機40の過給圧が低下して、第2過給機40のサージングが抑制される。
【0073】
時刻t3において、第2過給機40の過給圧が所定値以上になると(S15で肯定判定されると)、ABV64を閉弁するとともにACV62を開弁することにより(S16)、助走モードが終了しツインモードに切り替えられる。ツインモードにおいて、第1過給機30のVN開度VN1および第2過給機40のVN開度VN2は、内燃機関100の運転状態に応じた値に制御される。
【0074】
本実施の形態によれば、吸入空気量センサ70で検出した吸入空気量Gaの脈動が所定値以上になったとき、助走モードの開始時に閉弁状態であるABV64を開弁する。助走モードの開始時には、ABV64は閉弁状態であるので、助走モードにおける第2過給機40の過給圧の上昇速度を速めることができる。第2過給機40のサージングが発生する直前には、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上になるので、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上になったときに、ABV64を開弁して、第2過給機40の過給圧(吐出圧力)を低下させることにより、第2過給機40のサージングを抑制することができる。したがって、助走モードにおけるサージングの抑制と助走時間の短縮の両立を図ることができる。
【0075】
吸入空気量Gaを検出する吸入空気量センサ70は、燃料噴射量や排気ガス再循環量等を制御するために、内燃機関100に設けられているものであってよく、助走モードにおけるサージングの抑制のために、新たなセンサを追加しなくともよい。
【0076】
本実施の形態では、助走モードのとき、第2過給機40の可変ノズル機構45のVN開度VN2を最も閉じ側(最小値)にするとともに、第1過給機30の可変ノズル機構35のVN開度VN1を閉じ方向に駆動している。
【0077】
助走モードのとき、第2過給機40のVN開度VN2を最小値にすることにより、第2過給機40の過給圧の上昇速度を速めることができる。助走モードのとき、第1過給機30のVN開度VN1を閉じ方向に駆動することにより、ツインモードに切り替わった際に、第1過給機30の過給圧を確保することができる。助走モードのとき、第1過給機30のVN開度VN1を閉じ方向に駆動すること起因して、第2過給機40のサージングの発生する領域が変化しても、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上になったときにABV64を開弁して、第2過給機40のサージングの発生を抑制できるので、確実に第2過給機40のサージングを抑制することができる。
【0078】
(変形例1)
上記本実施の形態では、図6のS13において、吸入空気量Gaの軌跡(変動)を求め、吸入空気量Gaの軌跡に設定周期以下の脈動が発生しているとき、所定値以上の脈動であると判定している。また、吸入空気量Gaの軌跡に所定振幅以上の脈動が発生しているとき、所定値以上の脈動であると判定している。しかし、吸入空気量Gaに所定値以上の脈動が発生しているか否かを、所定周期毎の吸入空気量Gaの値を比較することにより脈動を検出するようにしてもよい。
【0079】
図8は、変形例1における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、図6のフローチャートのS13をS20に置き換えたものであり、それ以外の処理(ステップ)は図6と同様であるので、S20について説明を行う。
【0080】
S20では、吸入空気量センサ70で検出された吸入空気量Gaの値のうち、所定周期毎に検出した吸入空気量Gaの値を比較することにより、脈動を検出する。所定周期は、図5で示した脈動(振動)の周期Tの1/2以下の周期であり、たとえば、15msであってよい。吸入空気量Ga(n)は今回検出された吸入空気量Gaの値(今回値)であり、吸入空気量Ga(n-1)は所定周期前に検出された吸入空気量Gaの値(前回値)である。S20では、前回値と今回値の差(|Ga(n-1)-Ga(n)|)が第1設定値αより大きいか否かを判定する。そして、「|Ga(n-1)-Ga(n)|>α」が所定回数、たとえば3回成立すると、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であると判定し、S14へ進む。また、「|Ga(n-1)-Ga(n)|>α」が、所定回数成立していない場合には、S20で否定判定されS15へ進む。なお、第1設定値αは、予め実験等によって設定し、メモリに記憶しておく。
【0081】
この変形例1においても、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であることを検知でき、第2過給機40のサージングを抑制することができる。なお、所定周期は、内燃機関100の回転速度NEに応じて変更するようにすることが望ましい。
【0082】
(変形例2)
変形例1では、吸入空気量センサ70で検出された吸入空気量Gaの値のうち、所定周期毎に検出した吸入空気量Gaの値を比較することにより、脈動を検出していたが、さらに、前回値Ga(n-1)における吸入空気量Gaの傾きと今回値Ga(n)における吸入空気量Gaの傾きを考慮して、脈動を検出するようにしてもよい。
【0083】
図9は、変形例2における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、図8のフローチャートのS20をS30に置き換えたものである。
【0084】
S30では、吸入空気量Gaの前回値Ga(n-1)および今回値Ga(n)に加えて、前回値Ga(n-1)における吸入空気量Gaの時間微分値ΔGa(n-1)と今回値Ga(n)における吸入空気量Gaの時間微分値ΔGa(n)を求める。時間微分値ΔGa(n-1)は、前回値Ga(n-1)における吸入空気量Gaの傾きであり、時間微分値ΔGa(n)、今回値Ga(n)における吸入空気量Gaである。時間微分値ΔGa(n-1)および時間微分値ΔGa(n)が正の場合には、吸入空気量Gaは増加している状態であり、時間微分値ΔGa(n-1)および時間微分値ΔGa(n)が負の場合には、吸入空気量Gaは減少している状態である。
【0085】
S30では、吸入空気量Gaの前回値と今回値の差(|Ga(n-1)-Ga(n)|)が第1設定値αより大きく(|Ga(n-1)-Ga(n)|>α)、かつ、時間微分値ΔGa(n-1)および時間微分値ΔGa(n)の積が負である(ΔGa(n-1)×ΔGa(n)<0)場合に、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であると判定し、S14へ進む。また、「|Ga(n-1)-Ga(n)|>α」、かつ、「ΔGa(n-1)×ΔGa(n)<0」でない場合には、否定判定されS15へ進む。
【0086】
変形例2では、時間微分値ΔGa(n-1)および時間微分値ΔGa(n)の積が負である(ΔGa(n-1)×ΔGa(n)<0)場合、すなわち、時間微分値ΔGa(n-1)と時間微分値ΔGa(n)の符号が異なり、前回値Ga(n-1)における吸入空気量Gaと今回値Ga(n)における吸入空気量Gaのうち、一方が増加しており、他方が減少している場合に、吸入空気量Gaの前回値と今回値の差(|Ga(n-1)-Ga(n)|)が所定値αより大きい(|Ga(n-1)-Ga(n)|>α)とき、所定値以上の脈動が発生していると判定する。したがって、所定値以上の脈動を精度よく検出することが可能になる。なお、S30において、「|Ga(n-1)-Ga(n)|>α」、かつ、「ΔGa(n-1)×ΔGa(n)<0」が所定回数成立したとき、所定値以上の脈動が発生していると判定してもよい。
【0087】
(変形例3)
図10は、変形例3における、制御装置200により実行される過給モード切替制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、図8のフローチャートのS20をS40に置き換えたものである。変形例3では、所定期間における吸入空気量Gaの最大値と最小値の差が第2設定値以上のとき、脈動が所定値以上であると判定する。
【0088】
S40では、図5で示した脈動(振動)の周期Tを所定期間に設定し、この所定期間において吸入空気量センサ70で検出された吸入空気量Gaの最大値Gamaxと最小値Gaminを求める。そして、最大値Gamaxと最小値Gaminの差(Gamax-Gamin)が第2設定値βより小さい(Gamax-Gamin>β)のとき、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であると判定し、S14へ進む。また、「Gamax-Gamin>β」でない場合には、否定判定されS15へ進む。
【0089】
この変形例3においても、所定期間における吸入空気量Gaのピークツーピークから、吸入空気量Gaの脈動が所定値以上であることを検知でき、第2過給機40のサージングを抑制することができる。なお、所定期間は、内燃機関100の回転速度NEに応じて変更するようにすることが望ましい。また、所定期間を、図5で示した脈動(振動)の周期Tより長い時間に設定してもよい。この場合、最大値Gamaxと最小値Gaminの間の時間が、たとえば、周期Tより長い場合には、所定値以上の脈動が発生していないと判定してもよい。
【0090】
上記の実施形態および変形例では、ABV64として、ソレノイドによってON(開)/OFF(閉)駆動されるノーマリークローズのバルブを採用した例を説明した。しかし、ABV64は、その開度が連続的、あるいは、段階的に変化するバルブであってもよい。この場合、S12の処理を「ABV64は全開?」に置き換えるとともに、S14の処理を「ABV64を所定開度開弁する」に置き換えてよい。これにより、S13(S20、S30、S40)で肯定判定される毎に、ABV64が所定開度ずつ段階的に開弁するようにしてもよい。また、この場合、助走モードの開始時にABV64の開度が中間開度であってもよい。
【0091】
上記の実施形態および変形例では、S15において、第2過給機40の過給圧が第1過給機30の過給圧に一致したときに第2過給機40の過給圧が所定値以上であると判定し、ツインモードに切り替えているが、これに限られない。たとえば、第2過給機40の過給圧と第2過給機の過給圧の差が所定範囲内になったとき、ツインモードに切り替えるようにしてもよい。あるいは、助走モードを開始してから、内燃機関100の運転状態に基づいて設定された所定時間経過後に、ツインモードに切り替えるようにしてもよい。
【0092】
過給装置の構成は、図1に示した構成に限られず適宜変更可能である。上記実施の形態では、第1過給機30および第2過給機40が同じ容量(サイズ)を有しているが、2つの過給機は異なる容量(サイズ)を有していてもよい。また、上記実施の形態では、2つの過給機を備える過給装置について説明したが、過給装置は3つ以上の過給機を備えていてもよい。さらに、過給機は、ターボチャージャーでなく、たとえば、電動モータで駆動される過給機であってもよく、排気エネルギー(タービン)と電力(電動モータ)を駆動源とする、電動ターボ型過給機であってもよい。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 過給装置、10A,10B バンク、12A,12B 気筒、20 エアクリーナ、21,22,23 吸気通路、25 インタークーラ、28A,28B 吸気マニホールド、30 第1過給機、31 第1コンプレッサ、32 第1タービン、33,43 コンプレッサホイール、34,44 タービンホイール、35 可変ノズル機構、37 吸気通路、40 第2過給機、41 第2コンプレッサ、42 第2タービン、45 可変ノズル機構、47 吸気通路、48 バイパス通路、50A,50B 排気マニホールド、51A,51B,52A,52B,53A,53B 排気通路、62 ACV、64 ABV、66 ECV、70 吸入空気量センサ、80 圧力センサ、100 内燃機関、200 制御装置。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10