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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241001BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241001BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241001BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241001BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655A
H01L21/28 301S
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021164344
(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公開番号】P2023055162
(43)【公開日】2023-04-17
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186458(JP,A)
【文献】特開2006-229181(JP,A)
【文献】特開2005-116649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0083099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/28
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造の半導体素子を有する炭化珪素半導体装置であって、
炭化珪素で構成された第1または第2導電型の基板(1)と、
前記基板の上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)と、
前記ドリフト層の上に形成され、表層部にコンタクト領域(3a)が形成された第2導電型のチャネル層(3)と、
前記チャネル層の上における前記コンタクト領域と異なる位置に形成され、前記ドリフト層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型領域(4)と、
前記第1導電型領域および前記チャネル層を貫通するゲートトレンチ(6)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(7)および前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(8)と、を有する前記トレンチゲート構造と、
前記ゲートトレンチ内において前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜(9)と、
前記コンタクト領域および前記第1導電型領域に電気的に接続された第1電極(10)と、
前記基板の裏面側に形成された第2電極(11)と、を含み、
前記層間絶縁膜の上面と前記第1導電型領域の上面との間には段差が形成されることで凹部(12)が形成され、
前記第1電極は、前記コンタクト領域および前記第1導電型領域の表面上に形成された金属層(10a)と、前記金属層の上および前記凹部内に形成されたバリアメタル(10b)と、前記バリアメタルの上に形成された電極層(10c)と、を有し、前記バリアメタルのうち前記凹部内に形成された第1バリアメタル(10ba)と前記金属層の上に形成された第2バリアメタル(10bb)との間に段差が形成され、前記第2バリアメタルに前記ゲートトレンチの幅方向内側に突き出して構成された突出部(10bc)が形成されると共に該突出部の下方に前記電極層の一部が入り込んでいて、前記ゲートトレンチの幅方向両側それぞれの前記突出部の先端同士の間の寸法(W1)が前記突出部の下方において前記電極層が入り込む部分の寸法(W2)より狭くなっている、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記金属層は、金属シリサイド層(10a)である、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1バリアメタルと前記第2バリアメタルとの間が分離しており、
前記凹部の深さ(D1)の方が前記第1バリアメタルの厚み(D2)より大きくされている、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1バリアメタルと前記第2バリアメタルとの間が繋がっており、
前記金属層の端部に前記突出部が形成されることで、前記ゲートトレンチの幅方向両側それぞれの前記突出部の先端同士の間の寸法が前記突出部の下方において前記電極層が入り込む部分の寸法より狭くなっている、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記バリアメタルは、TiとTiNのいずれかで構成されている、もしくは両方の積層構造とされている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)によって構成されるトレンチゲート構造の半導体素子を有するSiC半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、オン抵抗を増加させることなくセルピッチを小さくできるトレンチゲート構造のSiC半導体装置が提案されている。このSiC半導体装置は、ゲートトレンチの内部において、ゲート電極上に層間絶縁膜とバリアメタルを埋め込んで表面を平坦にし、その上に電極層を形成することで、バリアメタルおよび電極層を含むソース電極を構成している。このような構成とすることで、層間絶縁膜をSiC上面に出す必要がなくなるため、SiC上面全面にコンタクトを形成することができると共に、コンタクトホール形成時にマスク合わせずれがなくなってセルピッチの制約を受けなくなる。これにより、セルピッチを小さくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-3967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MOSFETなどの半導体素子を動作させる際には、温度の上昇、下降を繰り返す。半導体素子を構成する各構成材料は、線膨張係数が異なっているため、温度の昇降によって各構成材料の界面に繰り返し応力が加わる。これにより、トレンチゲート構造のMOSFETであれば、ソース電極が剥離する恐れがある。
【0005】
特に、特許文献1に記載されたSiC半導体装置のように、ゲートトレンチ内におけるゲート電極上に層間絶縁膜とバリアメタルを埋め込んで表面を平坦にし、その上に電極層を形成した構造とする場合、表面の凹凸が少ないためアンカー効果が少ない。つまり、表面に凹凸があればそれによる段差に引っかかることで電極層とその下地の間の横方向のずれが抑制されるが、表面の凹凸が少ないと電極層とその下地の間の横方向のずれが生じやすくなり、ソース電極の剥離が生じやすくなる。
【0006】
ソース電極の剥離が生じると、通電時の抵抗が増大するため、発熱による温度上昇が生じ、素子破壊に至ることが懸念される。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、トレンチゲート構造の上に形成される電極の剥離を抑制し、発熱による素子破壊を抑制することができるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、トレンチゲート構造の半導体素子を有するSiC半導体装置であって、SiCで構成された第1または第2導電型の基板(1)と、基板の上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)と、ドリフト層の上に形成され、表層部にコンタクト領域(3a)が形成された第2導電型のチャネル層(3)と、チャネル層の上におけるコンタクト領域と異なる位置に形成され、ドリフト層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型領域(4)と、第1導電型領域およびチャネル層を貫通するゲートトレンチ(6)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(7)およびゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(8)と、を有するトレンチゲート構造と、ゲートトレンチ内においてゲート電極を覆う層間絶縁膜(9)と、コンタクト領域および第1導電型領域に電気的に接続された第1電極(10)と、基板の裏面側に形成された第2電極(11)と、を含んでいる。
【0009】
このような構成において、層間絶縁膜の上面と第1導電型領域の上面との間には段差が形成されることで凹部(12)が形成され、第1電極は、コンタクト領域および第1導電型領域の表面上に形成された金属層(10a)と、金属層の上および凹部内に形成されたバリアメタル(10b)と、バリアメタルの上に形成された電極層(10c)と、を有し、バリアメタルのうち凹部内に形成された第1バリアメタル(10ba)と金属層の上に形成された第2バリアメタル(10bb)との間に段差が形成され、第2バリアメタルにゲートトレンチの幅方向内側に突き出して構成された突出部(10bc)が形成されると共に該突出部の下方に電極層の一部が入り込んでいて、ゲートトレンチの幅方向両側それぞれの突出部の先端同士の間の寸法(W1)が突出部の下方において電極層が入り込む部分の寸法(W2)より狭くなっている。
【0010】
このように、第1バリアメタルと第2バリアメタルとの間に段差が構成されている。つまり、電極層の下地の表面が凹凸形状になっている。また、ゲートトレンチの幅方向内側に第2バリアメタルが突き出した庇形状の突出部を備え、ゲートトレンチの幅方向両側それぞれの突出部の先端同士の間の寸法が突出部の下方において電極層が入り込む部分の寸法より狭くなるようにしている。このため、電極層にアンカー効果を発揮させることができる。したがって、半導体素子を動作させる際に温度の上昇、下降が繰り返されても、電極層が下地となるバリアメタルなどから剥がれにくくなり、ソース電極の剥離を抑制することが可能となる。これにより、通電時の抵抗の増大や発熱による温度上昇を抑制でき、素子破壊に至ることを抑制することが可能になる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の断面図である。
図2】ソース電極の詳細構造を示した断面図である。
図3】バリアメタルを積層構造とする場合のソース電極の詳細構造を示した断面図である。
図4】第1実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造およびソース電極の形成工程を示したフローチャートである。
図5A図4中のゲートトレンチの形成工程後の様子を示した断面図である。
図5B図4中のエッチバック工程後の様子を示した断面図である。
図5C図4中の層間絶縁膜の形成工程後の様子を示した断面図である。
図5D図4中の層間絶縁膜のエッチバック工程後の様子を示した断面図である。
図5E図4中の金属膜の形成工程後の様子を示した断面図である。
図5F図4中の金属膜の除去工程後の様子を示した断面図である。
図5G図4中のバリアメタルの形成工程後の様子を示した断面図である。
図5H図4中の電極層の形成工程後の様子を示した断面図である。
図6A】ゲートトレンチにおけるゲート電極上に層間絶縁膜とバリアメタルを埋め込んで表面を平坦にした場合の断面図である。
図6B】ソース電極の剥離の様子を示した断面図である。
図7】第1実施形態の変型例で説明するSiC半導体装置におけるソース電極の詳細構造を示した断面図である。
図8】第2実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造およびソース電極の形成工程を示したフローチャートである。
図9A図8中の層間絶縁膜の形成工程後の様子を示した断面図である。
図9B図8中の層間絶縁膜のエッチバック工程後の様子を示した断面図である。
図9C図8中の金属膜の形成工程後の様子を示した断面図である。
図9D図8中の金属膜の除去工程後の様子を示した断面図である。
図9E図8中のゲートコンタクトホールの形成工程後の様子を示した断面図である。
図9F図8中のバリアメタルの形成工程後の様子を示した断面図である。
図9G図8中の電極層の形成工程後の様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態にかかるSiC半導体装置について説明する。ここでは、トレンチゲート構造の半導体素子としてMOSFETが形成されたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0015】
本実施形態にかかるSiC半導体装置は、図1に示すトレンチゲート構造の縦型MOSFETを備えている。縦型MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されており、そのセル領域を囲むように外周耐圧構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されているが、ここではSiC半導体装置のうちの縦型MOSFETのみ図示してある。なお、以下の説明では、図1の左右方向をSiC半導体装置の幅方向とし、上下方向をSiC半導体装置の厚み方向もしくは深さ方向として説明を行う。
【0016】
SiC半導体装置には、SiCからなるn型基板1が半導体基板として用いられている。n型基板1の主表面上には、SiCからなるn型ドリフト層2がエピタキシャル成長させられており、n型ドリフト層2の上にチャネル層に相当するp型ベース領域3および第1導電型領域に相当するn型ソース領域4が順に形成されている。
【0017】
p型ベース領域3は、チャネル領域が形成される部分であり、n型ソース領域4が配置された場所と異なる位置の表層部にp型不純物濃度が部分的に高くされたp型コンタクト領域3aが形成されている。n型ソース領域4は、n型ドリフト層2よりも高不純物濃度とされている。
【0018】
また、p型ベース領域3およびn型ソース領域4を貫通してn型ドリフト層2に達するように、ゲートトレンチ6が形成されている。このゲートトレンチ6の側面と接するように上述したp型ベース領域3およびn型ソース領域4が配置されている。ゲートトレンチ6は、SiC半導体装置の幅方向である図1の紙面左右方向を幅方向、紙面法線方向を長手方向、SiC半導体装置の厚み方向である図1の紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。また、図1には1本しか示していないが、ゲートトレンチ6は、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置されていてストライプ状とされている。ゲートトレンチ6の幅については任意であるが、後述するバリアメタル10bの厚みの2倍以上の寸法とされるのが好ましく、0.3~1μm、例えば1μmとされる。
【0019】
p型ベース領域3のうちゲートトレンチ6の側面に位置している部分は、縦型MOSFETの作動時にn型ソース領域4とn型ドリフト層2との間を繋ぐチャネル領域とされる。このチャネル領域を含むゲートトレンチ6の内壁面に、ゲート絶縁膜7が形成されている。また、ゲート絶縁膜7の表面にはドープドポリシリコンで構成されたゲート電極8が形成されている。ゲート電極8は、n型ドープもしくはp型ドープとされる。そして、これらゲート絶縁膜7およびゲート電極8の上に層間絶縁膜9が形成されることでトレンチゲート構造が構成されている。さらに、ゲートトレンチ6は、ゲート絶縁膜7とゲート電極8および層間絶縁膜9によって埋め尽くされておらず、後述する図2に示すバリアメタル10baや電極層10cの一部が埋め込まれることで埋め尽くされている。
【0020】
より詳しくは、ゲートトレンチ6の入口を構成しているn型ソース領域4の上面に対してゲート電極8の上面が低くなっており、これらの間に段差が構成されてゲート電極8が凹んだリセス形状とされている。そして、この段差を埋めるようにリセス形状内に層間絶縁膜9とバリアメタル10baおよび電極層10cの一部が配置されることで、ゲートトレンチ6内が埋め込まれている。ゲート電極8の上に層間絶縁膜9が形成された状態でもリセス形状が残っていて、40~300nm、例えば200nm程度の深さの凹部12が形成されている。このため、バリアメタル10baおよび電極層10cの一部が、そのリセス形状を構成する凹部12内に埋め込まれるように形成されている。つまり、バリアメタル10baの下面はn型ソース領域4やp型コンタクト領域3aで構成されるSiC表面よりも下方に位置した状態になっている。また、バリアメタル10baが凹部12内を埋め込むように形成され、尚かつ、バリアメタル10baの上面がSiC表面よりも下方に位置した状態になっている。そして、バリアメタル10baおよび電極層10cの一部が凹部12内に入り込んだ状態になっている。
【0021】
また、層間絶縁膜9の上には第1電極に相当するソース電極10や図示しないゲート配線層などが形成されている。ソース電極10は、層間絶縁膜9のコンタクトホールを通じて、n型ソース領域4およびp型コンタクト領域3aと接触させられている。ゲート配線部は、図1とは別断面において、ゲート電極8と接触させられている。
【0022】
ソース電極10は、図2に示すように、金属シリサイド層10a、バリアメタル10bおよび電極層10c等を有した構成とされている。
【0023】
金属シリサイド層10aは、SiCとの間においてシリサイド化反応させられたオーミックコンタクト層である。この金属シリサイド層10aが形成されていることにより、ソース電極10とSiCとの間がコンタクト抵抗の低いオーミックコンタクトとされている。金属シリサイド層10aは、例えばNi(ニッケル)シリサイド、Ti(チタン)シリサイド、Ta(タンタル)シリサイド、W(タングステン)シリサイド、Mo(モリブデン)などの高融点金属系もしくは貴金属系のシリサイドによって構成されている。金属シリサイド層10aを構成する金属は1種類であっても良いし、複数種類とされていても良い。例えば、n型SiCとp型SiCとで金属シリサイド層10aを構成する金属の種類が異なっていても良い。ここでは、例えば金属シリサイド層10aをNiシリサイドによって構成している。金属シリサイド層10aの膜厚は任意であるが、10~100nm、例えば50nm程度とされている。
【0024】
バリアメタル10bは、層間絶縁膜9上に形成された第1バリアメタルに相当するバリアメタル10baと金属シリサイド層10a上に形成された第2バリアメタルに相当するバリアメタル10bbを有した構成とされている。バリアメタル10baは、ソース電極10側から層間絶縁膜9およびゲート電極8への金属元素の拡散などを抑制する。バリアメタル10bbは、ソース電極10中における金属シリサイド層10aから電極層10cへの金属元素の拡散などを抑制する。金属シリサイド層10aがNiシリサイドとされる場合であれば、バリアメタル10baによりNiの層間絶縁膜9およびゲート電極8への拡散を抑制し、バリアメタル10bbによりNiの電極層10cへの拡散を抑制する。バリアメタル10bは、これらの役割を果たす金属、例えばTiもしくはTiN(窒化チタン)によって構成されている。バリアメタル10bについては、図2では単層構造として図示しているが、図3に示すように、複数の金属、例えばTiとTiNの積層構造とされていても良い。
【0025】
バリアメタル10baおよびバリアメタル10bbについては、同時に形成しているが、平面状には形成されずに両者の間に段差が形成されていて、バリアメタル10baの上面よりもバリアメタル10bbの上面が上方に位置した状態になっている。さらに、バリアメタル10baとバリアメタル10bbとが分離した状態になっている。バリアメタル10bの厚みは任意であるが、凹部12の深さ以下とされている。バリアメタル10bをTiとTiNの積層構造で構成する場合、Tiを30~100nm、例えば50nmとし、TiNを50~100nm、例えば100nmとしている。
【0026】
そして、バリアメタル10bが凹部12の深さ以下とされていることから、バリアメタル10baがSiC表面よりも下方に位置していて、バリアメタル10baが配置された状態でも凹部12の凹みが残った状態になっている。つまり、凹部12の深さD1の方がバリアメタル10baの厚みD2よりも大きくなっている。このため、SiC表面の凹凸が存在した状態で電極層10cが形成されており、電極層10cの一部が凹部12内に入り込んだ状態になっている。また、本実施形態の場合、ゲートトレンチ6の側面側の上端位置においてSiCが露出しており、電極層10cの一部がSiCに接している。
【0027】
さらに、バリアメタル10bbは、金属シリサイド層10aよりもゲートトレンチ6の幅方向内側に突き出した状態の突出部10bcを有している。そして、ゲートトレンチ6の幅方向両側それぞれの突出部10bcの先端同士の間の寸法W1は、突出部10bcの下方において電極層10cが入り込む部分の寸法W2よりも狭くなっている。突出部10bcの寸法については、バリアメタル10bの成膜条件によって調整可能であり、バリアメタル10baのうち金属シリサイド層10a上に形成された部分の厚みと同程度まで突き出させることができ、ここではその厚みの半分以上としている。
【0028】
電極層10cは、ソース電極10におけるパッド部を構成する部分である。ここでは、電極層10cを例えばAlSi等のAlを含む金属によって構成している。電極層10cは、金属シリサイド層10aやバリアメタル10bよりも厚く形成されている。電極層10cは、寸法W1の隙間を通じて突出部10bcの下方を含めてゲートトレンチ6内に入り込んだ状態になっている。このように、電極層10cが突出部10bcの下方まで入り込んでアンカー効果を発揮することが可能になる。
【0029】
なお、ここでは電極層10cを単層構造で記載しているが、表面にNi(ニッケル)やAu(金)めっきなどが施されることで積層構造とされていても良い。
【0030】
さらに、n型基板1の裏面側にはn型基板1と電気的に接続された第2電極に相当するドレイン電極11が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでセル領域が構成されている。そして、このような縦型MOSFETが形成されたセル領域を囲むように図示しないガードリングなどによる外周耐圧構造が構成されることでSiC半導体装置が構成されている。
【0031】
続いて、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について、図4に示すフローチャートおよび図5A図5Hに示す製造工程中の断面図を参照して説明する。ただし、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法のうちゲート電極8の形成工程以外については、公知となって工程など、どのような工程によって行われても良いため、ここではゲート電極8の形成工程について主に説明し、他の工程については簡略して説明する。
【0032】
まず、半導体基板として、SiCで構成されるウェハ状のn型基板1を用意したのち、n型基板1の主表面上にn型ドリフト層2をエピタキシャル成長させる。そして、n型ドリフト層2の上に、p型ベース領域3およびn型ソース領域4をエピタキシャル成長もしくはイオン注入によって形成する。また、n型ソース領域4の表面に図示しないマスクを形成し、p型不純物をイオン注入することでp型コンタクト領域3aを形成する。続いて、p型ベース領域3およびn型ソース領域4の表面に図示しないマスクを配置し、マスクのうちのトレンチゲート構造の形成予定領域を開口させる。
【0033】
その後、図4に示すゲートトレンチ6の形成工程を行う。例えば、上記したマスクを用いてRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性エッチングを行うことにより、図5Aのようにゲートトレンチ6を形成している。そして、マスクを除去した後、図4に示すゲート絶縁膜7の形成工程を行う。例えば、CVD(chemical vapor deposition)によってシリコン酸化膜を形成したり、熱酸化を行って熱酸化膜を形成したりすることによってゲート絶縁膜7を形成している。
【0034】
次に、ゲート電極8の形成工程として、図4に示すポリシリコン膜の形成工程とエッチバック工程を順に行うことで、図5Bのように、ゲートトレンチ6内にゲート電極8を形成する。すなわち、CVDなどによってゲートトレンチ6内を埋め込むようにゲート絶縁膜7の表面にポリシリコン膜を成膜したのち、ポリシリコン膜をドライエッチングによりエッチバックしてゲートトレンチ6の外側に形成された部分を除去する。このとき、ゲートトレンチ6内がゲート電極8によって埋め尽くされないように、ゲートトレンチ6内が凹んだ状態となるまでポリシリコン膜をエッチバックしている。
【0035】
続いて、図4に示す層間絶縁膜9の形成工程を行うことで、図5Cのように、ゲート電極8上にゲートトレンチ6内を埋め込むように層間絶縁膜9を形成する。例えば、減圧CVD等によって層間絶縁膜9を形成することができる。そして、図4に示す層間絶縁膜9のエッチバック工程を行う。すなわち、図5Dのように、ゲート電極8上に層間絶縁膜9を残しつつSiC面を露出させ、かつ、凹部12が残ったリセス形状が構成されるように層間絶縁膜9をドライエッチングなどでエッチバックする。このときの凹部12の深さについては任意であるが、例えば凹部12の深さを200nm程度にしている。
【0036】
そして、図4に示す金属膜の成膜工程および熱処理によるシリサイド形成工程を行う。具体的には、図5Eのように、金属シリサイド層10aを形成するための金属膜20を成膜する。ここでは、Niスパッタを行うことでNi膜を成膜している。このとき、ゲートトレンチ6内に凹部12が残っているため、金属膜20を成膜したときに、ゲートトレンチ6上とその外側とで金属膜20に段差が形成された状態になる。
【0037】
そして、600~800℃、例えば700℃で熱処理を行うことにより、金属膜20を構成する金属とSiC中のSiとをシリサイド化反応させる。これにより、SiC面上では金属膜20のシリサイド化反応し、層間絶縁膜9上では金属膜20がシリサイド化反応しないまま残る。
【0038】
その後、図4に示す金属膜20の除去工程を行うことで、図5Fのように、層間絶縁膜9上に残った金属膜20を除去する。例えば、ウェットエッチングによって金属膜20を除去する。これにより、SiC面上にのみ金属シリサイド層10aが残った状態になる。SiC面上でも、金属膜20がすべてシリサイド化反応しているとは限らず、金属シリサイド層10aの上に金属膜20が残っている場合がある。この場合、金属シリサイド層10aの上に残った金属膜20についても、同時に除去されることになる。なお、上記の熱処理によって金属シリサイド層10aを形成しているが、このときの熱処理の温度を高くすると、層間絶縁膜9中に金属膜20を構成する金属元素が拡散してしまう可能性がある。このため、上記の熱処理については800℃以下という比較的低温で抑え、金属膜20の除去工程の後に、それよりも高い温度となる900~1000℃、例えば950℃での高温アニールを行うことも可能である。このようにすれば、金属シリサイド層10aとSiCとのコンタクト抵抗の更なる低減を図ることが可能となる。
【0039】
さらに、図4に示すバリアメタル10bの形成工程を行う。例えば、スパッタを行うと、金属シリサイド層10aや層間絶縁膜9の上に選択的にバリアメタル10bを堆積させることができる。ここではTiとTiNを順にスパッタすることでバリアメタル10bを形成しているが、例えば、TiやTiN等の単層膜や他の材料をスパッタしてバリアメタル10bを形成しても良い。これにより、図5Gのように、金属シリサイド層10aおよび層間絶縁膜9の上にバリアメタル10bが形成される。金属シリサイド層10a上のバリアメタル10bbについては、横方向にも広がってゲートトレンチ6の内側に回り込むように形成され、突出部10bcが庇形状に構成される。例えばスパッタ時のエネルギーを小さくするほどバリアメタル10bを等方的に堆積させられるため、スパッタ時のエネルギーの大きさを制御することで突出部10bcの寸法を調整できる。
【0040】
このとき、層間絶縁膜9と金属シリサイド層10aとの間に段差が形成された状態になっているため、その上に形成したバリアメタル10bも段差が引き継がれた状態になる。そして、本実施形態の場合、凹部12の深さD1の方がバリアメタル10bの厚みD2よりも大きくしている。このため、層間絶縁膜9の上のバリアメタル10baと金属シリサイド層10a上のバリアメタル10bbが分離して形成され、分離部のSiC面上にはバリアメタル10bが形成されず、突出部10bcを安定した庇形状で形成することができる。
【0041】
その後、図4に示す電極層10cの形成工程を行う。例えば、AlSi等をスパッタする。これにより、図5Hのように、バリアメタル10bの上に電極層10cが形成される。突出部10bcの下方においても、電極層10cが回り込むようにして形成され、凹部12内に電極層10cの一部が入り込んだ状態になる。そして、図示しないマスクを用いて電極層10cおよびバリアメタル10bをパターニングすることで、ソース電極10が形成される。
【0042】
最後に、n型基板1の裏面側にドレイン電極11を形成するなどの工程を行う。これにより、図1に示した本実施形態にかかる縦型MOSFETを有するSiC半導体装置が完成する。
【0043】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置では、層間絶縁膜9の表面に形成されたバリアメタル10baと、金属シリサイド層10aの上に形成されたバリアメタル10bbとの間に段差が構成されている。つまり、電極層10cの下地の表面が凹凸形状になっている。また、ゲートトレンチ6の幅方向内側にバリアメタル10bbが突き出した庇形状の突出部10bcを備えて寸法W1が寸法W2より狭くなるようにし、突出部10bcの下方に電極層10cの一部が入り込むようにしている。このため、特許文献1に記載されたSiC半導体装置とは異なり、電極層10cにアンカー効果を発揮させることができる。
【0044】
具体的には、特許文献1のSiC半導体装置では、図6Aに示すようにゲートトレンチJ1の内部において、ゲート電極J2上に層間絶縁膜J3とバリアメタルJ4を埋め込んで表面を平坦にしている。そして、バリアメタルJ4やSiC表面上にNi膜とTi膜の積層膜J5やAlSiによる電極層J6を形成することで、バリアメタルJ4や積層膜J5および電極層J6を含むソース電極を構成している。このような構造の場合、SiC表面とバリアメタルJ4の表面が凹凸の少ない平坦面となっていることから、電極層J6などが引っかかる段差が無い。このため、図6Bに示すように、例えば積層膜J5との界面で電極層J6が剥がれることでソース電極の剥離が生じる。
【0045】
これに対して、本実施形態のSiC半導体装置では、電極層10cの下地の表面が凹凸形状とされると共に電極層10cの一部が突出部10bcの下方に入り込んだ状態とされている。このため、電極層10cにアンカー効果を発揮させることが可能になる。したがって、半導体素子を動作させる際に温度の上昇、下降が繰り返されても、電極層10cが下地となるバリアメタル10bなどから剥がれにくくなり、ソース電極10の剥離を抑制することが可能となる。これにより、通電時の抵抗の増大や発熱による温度上昇を抑制でき、素子破壊に至ることを抑制することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態のSiC半導体装置においては、以下の効果を得ることもできる。
【0047】
(1)本実施形態のSiC半導体装置では、深さD1を厚みD2よりも大きくしてゲートトレンチ6の凹部12が残った状態、つまりSiC表面の凹凸が存在した状態で電極層10cが形成されるようにして、電極層10cの一部が凹部12内に入り込むようにしている。このため、より深くまで電極層10cの一部が入り込み、より高いアンカー効果を得ることができる。したがって、上記効果を更に得ることが可能となる。
【0048】
(2)層間絶縁膜9上のバリアメタル10baとSiC面上のバリアメタル10bbとを平面状とせず、これらの間に段差が設けられるようにしている。このため、バリアメタル10bの残留応力の逃げ場ができるので、残留応力の影響を抑制でき、ウェハの反りを抑制することが可能な構造のSiC半導体装置にできる。
【0049】
(3)特許文献1のSiC半導体装置では、TiまたはTiNで構成されるバリアメタル、金属シリサイドを形成するためのNi膜、Ti膜を順にスパッタにより形成することになるため、スパッタ回数が多くなる。これに対して、本実施形態のSiC半導体装置では、金属シリサイド層10aを形成するための金属膜20とバリアメタル10bをスパッタで形成するだけで済む。スパッタは通常枚葉処理で行われるため、スパッタ回数はSiC半導体装置の製造コスト増加に繋がる。このため、本実施形態のSiC半導体装置のように、スパッタ回数を少なくできれば、SiC半導体装置の製造工程の簡略化が図れ、引いては製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0050】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、バリアメタル10baとバリアメタル10bbとが分離された構造とされているが、図7に示すように、これらが繋がった構造になっていても良い。この場合、金属シリサイド層10a上の方がSiC面上よりもバリアメタル10bが形成されやすいため、金属シリサイド層10aの端部において突出部10bcが形成された構造になる。
【0051】
また、第1実施形態では、バリアメタル10baが形成されても凹部12に凹みが残った状態となるようにしたが、バリアメタル10baの表面がSiC表面と面一となっていても良いし、バリアメタル10baの表面がSiC表面より突き出ていても良い。
【0052】
つまり、バリアメタル10baとバリアメタル10bbとの間に段差があり、バリアメタル10bbに突出部10bcが形成され、電極層10cが入り込む部分の寸法W2よりも突出部10bcの先端同士の間の寸法W1より狭くなっていれば良い。このような構造であっても、第1実施形態で示した効果を得ることができる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してゲート配線部の形成工程を示したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
本実施形態では、縦型MOSFETと異なる場所に、例えばトレンチゲート構造の長手方向の先端にゲート電極8と繋がるゲート配線部を形成する場合の形成工程について、図8および図9A図9Gを参照して説明する。なお、図9A図9Gは、各工程の様子を示した断面図であるが、左図が縦型MOSFETの断面図、右図が縦型MOSFETと別の位置、例えばセル領域と外周耐圧構造との間に位置する繋ぎ領域に形成されるゲート配線部の断面図を示している。また、以下の説明において、第1実施形態と同じ名称の工程については、第1実施形態と同様の手法によって行っている。
【0055】
まず、図8に示すゲートトレンチ6の形成工程、ゲート絶縁膜7の形成工程、ポリシリコン膜の形成工程を第1実施形態と同様の手法で行う。このとき、ゲート配線部が形成される位置においても、SiC面上にゲート絶縁膜7が形成され、その上にもポリシリコン膜が形成されることになる。続いて、エッチバック工程を行うことでポリシリコン膜をパターニングし、図9Aのようにゲートトレンチ6内にゲート電極8を形成すると共に、別の位置にゲート配線部の一部を構成するゲート配線層31を形成する。そして、層間絶縁膜9の形成工程を行うことで、ゲート電極8上に、ゲートトレンチ6内を埋め込み、かつ、ゲート配線層31を覆うように層間絶縁膜9を形成する。さらに、図8に示す層間絶縁膜9のエッチバック工程を行う。このとき、縦型MOSFETが形成されるセル領域が開口し、セル領域以外を覆う図示しないマスクを層間絶縁膜9上に形成してからエッチバックを行うようにしている。これにより、図9Bのように、ゲート配線層31は層間絶縁膜9で覆われたままとしつつ、セル領域ではゲートトレンチ6内にのみ層間絶縁膜9が残るようにできる。
【0056】
この後、図8に示す金属膜20の成膜工程および熱処理によるシリサイド形成工程、金属膜20の除去工程を行う。これにより、図9Cに示すようにSiC表面や層間絶縁膜9の上に金属膜20が形成され、シリサイド化されたのち、図9Dのように層間絶縁膜9の上の金属膜20が除去されて、SiC面上に金属シリサイド層10aが形成された状態になる。また、ゲート配線層31については、層間絶縁膜9で覆われていることから、その上の金属膜20が除去されても、層間絶縁膜9に覆われたままの状態になる。
【0057】
そして、図8に示すゲート配線部のフォトリソグラフィ工程を行う。具体的には、フォトリソグラフィ工程にて、ゲート配線層31と対応する位置が開口した図示しないマスクを形成したのち、エッチングを行って、図9Eのように層間絶縁膜9にゲート配線層31に繋がるゲートコンタクトホール9aを開口させる。続いて、図8に示すバリアメタル10bの形成工程を行う。例えば、TiとTiNを順にスパッタすることでバリアメタル10bを形成している。このとき、図9Fのように、ゲートコンタクトホール9aを形成していることから、バリアメタル10bがゲート配線層31にも接するように形成される。
【0058】
さらに、バリアメタル10bとして使用している金属がシリサイド化反応する材料である場合、図8に示す熱処理を行うと、ゲート配線層31とバリアメタル10bとの接触部にも金属シリサイドを形成してオーミックコンタクト層にできる。例えば、600~800℃、例えば700℃で熱処理を行う。これにより、バリアメタル10bを構成する金属とゲート配線層31を構成するポリシリコンとをシリサイド化反応させて金属シリサイド層を形成できる。これにより、例えばTiをバリアメタル10bの形成用と、ゲート配線層31とのオーミックコンタクト層の形成用として共用化できる。
【0059】
また、TiNは、酸化させたりアニール処理したりすることでバリア性を高めることができる。そのため、バリアメタル10bとしてTiNを用いる場合、TiNを成膜した後に、試料を大気暴露してTiNを酸化させると好ましい。酸化させる際に、大気暴露であれば工程コストを増加させることなく酸化させることができる。また、上記した熱処理を行うことでTiNのアニール処理になる。これらにより、TiNのバリア性を高めることも可能となる。
【0060】
その後、例えばAlSi等をスパッタすることで図8に示す電極層10cの形成工程を行う。これにより、図9Gのように、バリアメタル10bの上に電極層10cが形成される。そして、図示しないマスクを用いて電極層10cおよびバリアメタル10bのパターニングすることで、ソース電極10が形成されると共に、ゲート配線層31とそれに接するバリアメタル10bおよび電極層10cを含むゲート配線部が形成される。
【0061】
最後に、n型基板1の裏面側にドレイン電極11を形成するなどの工程を行う。これにより、本実施形態にかかる縦型MOSFETおよびゲート配線部を有するSiC半導体装置が完成する。
【0062】
以上説明したように、縦型MOSFETにおけるソース電極10を形成する際のバリアメタル10bや電極層10cを用いてゲート配線部を構成することができる。そして、バリアメタル10bにシリサイド化反応する金属を用いていれば、熱処理を行うことでオーミックコンタクト層を得ることができる。また、バリアメタル10bにTiNを用いていれば、大気暴露や熱処理によってバリア性を高めることが可能となる。
【0063】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0064】
(1)例えば、上記実施形態では、トレンチゲート構造の縦型MOSFETの一例を挙げて説明したが、勿論、上記した縦型MOSFETを基本構造として、他の構成が備えられていても良い。例えば、トレンチゲート構造の下方にp型ディープ層を備えることで、トレンチゲート構造への等電位線のせり上がりを抑制して耐圧向上を図る構造など、様々な構造を備えることができる。
【0065】
(2)また、上記各実施形態では、SiC面上に金属層として金属シリサイド層10aを形成し、その上にバリアメタル10bbと電極層10cを順に配置した構造としたが、金属層として金属シリサイド層10a以外の金属を配置しても良い。
【0066】
(3)また、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETとしても良い。また、上記説明では、トレンチゲート構造を有する半導体素子として縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、同様のトレンチゲート構造を有するIGBTに対しても本発明を適用することができる。nチャネルタイプのIGBTの場合、上記各実施形態に対してn型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0067】
1…n型基板、2…n型ドリフト層、3…p型ベース領域
3a…p型コンタクト領域、4…n型ソース領域、6…ゲートトレンチ
7…ゲート絶縁膜、8…ゲート電極、9…層間絶縁膜、10…ソース電極
10a…金属シリサイド層、10b、10ba、10bb…バリアメタル
10bc…突出部、10c…電極層、11…ドレイン電極、12…凹部、
20…ポリシリコン膜、31…ゲート配線層
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G