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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ターボ式流体機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/02 20060101AFI20241001BHJP
   F16C 37/00 20060101ALI20241001BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F16C27/02 A
F16C37/00 A
F04D29/056
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021164480
(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公開番号】P2023055282
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文博
(72)【発明者】
【氏名】楳山 亮
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0105752(KR,A)
【文献】国際公開第2020/130124(WO,A1)
【文献】特開2014-070730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 27/02
F16C 37/00
F04D 29/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心周りの一方向に回転する回転軸と、
周面から径方向へ延在するよう前記回転軸に設けられ、前記回転軸と一体回転可能である板状のスラストカラーと、
前記回転軸と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、
前記回転軸及び前記作動体を収容するハウジングと、
前記回転軸を前記ハウジングに対して回転可能に前記回転軸の軸心方向に支持するスラストフォイル軸受と、を備えるターボ式流体機械であって、
前記スラストフォイル軸受は、前記回転軸が挿通される挿通孔を有するとともに前記スラストカラーと前記軸心方向に対向する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの前記スラストカラー側の端面に前記挿通孔の周囲に並べて取り付けられた複数のバンプフォイルと、一方の面が前記スラストカラーに対向する軸受面を有するとともに他方の面が各前記バンプフォイルに弾性的に支持された弾性薄板よりなる複数のトップフォイルと、を備え、
前記バンプフォイルは、前記スラストカラー側に突出する山部の稜線が前記回転軸の周方向に並ぶ波板形状の弾性薄板からなり、
各前記バンプフォイルは、外周側に配置された外周側フォイルと、内周側に配置された内周側フォイルとに、前記回転軸の径方向に分割され、
各前記外周側フォイルにおける前記稜線は、前記外周側フォイルの内周側の端縁から外周側に進むに従って前記軸心周りの他方向に進むよう傾いて延び、
各前記内周側フォイルにおける前記稜線は、前記内周側フォイルの外周側の端縁から内周側に進むに従って前記軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びていることを特徴とするターボ式流体機械。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記スラストフォイル軸受を冷却するための冷却流体を流通させる冷却通路を有し、
前記冷却通路は、前記軸受ハウジングと各前記トップフォイルとの間を、前記トップフォイルの内周側から外周側に向かって、もしくは外周側から内周側に向かって、前記冷却流体が流通するように形成されている請求項1記載のターボ式流体機械。
【請求項3】
前記外周側フォイルの径方向幅Woutと、前記内周側フォイルの径方向幅Winとの関係が、Wout>Winを満足する請求項1又は2記載のターボ式流体機械。
【請求項4】
前記外周側フォイルにおける前記稜線が前記径方向に対してなす鋭角θoutと、前記内周側フォイルにおける前記稜線が前記径方向に対してなす鋭角θinとの関係が、θout>θinを満足する請求項1乃至3のいずれか1項記載のターボ式流体機械。
【請求項5】
前記外周側フォイルは、外周側に配置された第1外周側フォイルと、内周側に配置された第2外周側フォイルとに、前記径方向に分割され、
前記第1外周側フォイルにおける前記稜線が前記径方向に対してなす鋭角θout1と、前記第2外周側フォイルにおける前記稜線が前記径方向に対してなす鋭角θout2との関係が、θout1>θout2を満足する請求項1乃至4のいずれか1項記載のターボ式流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターボ式流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のターボ式流体機械が開示されている。このターボ式流体機械は、回転軸と、回転軸と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、回転軸及び作動体を収容するハウジングと、回転軸をハウジングに対して回転可能に回転軸の軸心方向に支持するスラストフォイル軸受とを備えている。
【0003】
回転軸には、周面から径方向へ延在するように板状のスラストカラー一体的に設けられている。スラストカラーは、回転軸と一体回転可能とされている。スラストフォイル軸受は、軸受ハウジングと、複数のバンプフォイルと、複数のトップフォイルとを備えている。
【0004】
軸受ハウジングは、回転軸が挿通される挿通孔を有し、スラストカラーと回転軸の軸心方向に対向している。複数のバンプフォイルは、軸受ハウジングのスラストカラー側の端面に、挿通孔の周囲に並べて取り付けられている。各バンプフォイルは波板形状の弾性薄板よりなる。各トップフォイルは、スラストカラーに対向する軸受面を有する弾性薄板よりなり、各バンプフォイルにその背面が弾性的に支持されている。スラストカラーのトップフォイル側の端面が、トップフォイルの軸受面と軸心方向に対向する被軸受面となっている。
【0005】
スラストフォイル軸受では、回転軸の低速回転時に相対回転するスラストカラーをトップフォイルが接触状態で支持する。回転軸が高速回転すれば、被軸受面と軸受面との間の軸受隙間に生じる流体膜でスラストカラーを非接触状態で支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-115021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のようなターボ式流体機械におけるスラストフォイル軸受では、軸受隙間で圧縮された流体が周囲との圧力差によって軸受隙間の内周側及び外周側の側方から漏れてしまい、流体膜圧力の低下により軸受の負荷容量が低下してしまうという問題がある。
【0008】
このような問題に対して、例えばトップフォイルの軸受面やスラストカラーの被軸受面に、V字形の頂部が回転軸の回転方向の前方側を向く、所謂へリングボーン溝を設ける対策が考えられる。この対策によれば、軸受隙間においてへリングボーン溝に案内されて導かれた流体がV字形の頂部に向かって、すなわちトップフォイルにおける外周側及び内周側から径方向の中央に向かって引き込まれるため、軸受隙間の側方からの流体漏れを抑制できる。
【0009】
ところが、上記対策では、へリングボーン溝を設けた分だけ、回転軸の低速回転時における軸受面と被軸受面との接触面積が減少して接触面圧が増大する。このため、摩耗や焼付き等によりトップフォイルの耐久性が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、トップフォイルの耐久性を低下させることなく、スラストフォイル軸受における流体膜圧力の低下を抑制してスラストフォイル軸受の負荷容量の低下を抑制することができるターボ式流体機械を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のターボ式流体機械は、
軸心周りの一方向に回転する回転軸と、
周面から径方向へ延在するよう前記回転軸に設けられ、前記回転軸と一体回転可能である板状のスラストカラーと、
前記回転軸と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、
前記回転軸及び前記作動体を収容するハウジングと、
前記回転軸を前記ハウジングに対して回転可能に前記回転軸の軸心方向に支持するスラストフォイル軸受と、を備えるターボ式流体機械であって、
前記スラストフォイル軸受は、前記回転軸が挿通される挿通孔を有するとともに前記スラストカラーと前記軸心方向に対向する軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの前記スラストカラー側の端面に前記挿通孔の周囲に並べて取り付けられた複数のバンプフォイルと、一方の面が前記スラストカラーに対向する軸受面を有するとともに他方の面が各前記バンプフォイルに弾性的に支持された弾性薄板よりなる複数のトップフォイルと、を備え、
前記バンプフォイルは、前記スラストカラー側に突出する山部の稜線が前記回転軸の周方向に並ぶ波板形状の弾性薄板からなり、
各前記バンプフォイルは、外周側に配置された外周側フォイルと、内周側に配置された内周側フォイルとに、前記回転軸の径方向に分割され、
各前記外周側フォイルにおける前記稜線は、前記外周側フォイルの内周側の端縁から外周側に進むに従って前記軸心周りの他方向に進むよう傾いて延び、
各前記内周側フォイルにおける前記稜線は、前記内周側フォイルの外周側の端縁から内周側に進むに従って前記軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びていることを特徴とする。
【0012】
スラストフォイル軸受では、回転軸と共にスラストカラーが軸心周りの一方向に回転すると、低速回転時では、トップフォイルが相対回転するスラストカラーを接触状態で支持する。このとき、スラストカラーのトップフォイル側の端面、すなわちトップフォイルの軸受面と回転軸の軸心方向に対向する面が被軸受面となる。回転軸が高速回転すれば、トップフォイルの軸受面とスラストカラーの被軸受面との間の軸受隙間における流体膜圧力が高められる。これにより、バンプフォイルに弾性支持されたトップフォイルは、バンプフォイルの弾性変形を伴いながら弾性変形してスラストカラーから浮上し、軸受隙間に生じる流体膜を介してスラストカラーを非接触状態で支持する。このとき、トップフォイルにおいては、バンプフォイルの山部で支持された部位が弾性変形する。その結果、バンプフォイルの波板形状がトップフォイルに転写され、トップフォイルもスラストカラー側に突出する山部の稜線が周方向に並ぶ波板形状となる。
【0013】
本発明のターボ式流体機械におけるスラストフォイル軸受では、バンプフォイルが、回転軸の径方向に分割され、外周側に配置された外周側フォイルと、内周側に配置された内周側フォイルとを有している。そして、外周側フォイルにおける稜線が外周側フォイルの内周側の端縁から外周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びており、かつ、内周側フォイルにおける稜線が内周側フォイルの外周側の端縁から内周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びている。すなわち、外周側フォイルにおける山部の稜線は、内周側から外周側に進むに従って回転軸の回転方向の後方側に進むよう傾いて延びており、かつ、内周側フォイルにおける山部の稜線は、外周側から内周側に進むに従って回転軸の回転方向の後方側に進むよう傾いて延びている。
【0014】
このような構成では、バンプフォイルの波板形状が転写されてトップフォイルに形成された山部の稜線は、V字形の頂部が軸心周りの一方向、すなわち回転方向の前方側を向く、所謂へリングボーン形状となる。そうすると、トップフォイルの軸受面とスラストカラーの被軸受面との間の軸受隙間においては、へリングボーン形状の稜線に案内されて導かれた流体がへリングボーン形状のV字形の頂部に向かって、すなわちトップフォイルにおける外周側及び内周側から径方向の中央に向かって引き込まれる。このため、軸受隙間で圧縮された流体が軸受隙間における外周側及び内周側の側方から漏れることを抑制でき、軸受隙間における流体膜圧力が低下することを抑制できる。
【0015】
他方、軸受面及び被軸受面の何れにも溝を形成していないため、両者が摺動する回転軸の低速回転時における軸受面と被軸受面との接触面積が、溝形成分だけ減少するようなことがない。このため、摩耗や焼付き等によりトップフォイルの耐久性が低下することもない。
【0016】
したがって、本発明のターボ式流体機械によれば、トップフォイルの耐久性を低下させることなく、スラストフォイル軸受における流体膜圧力の低下を抑制してスラストフォイル軸受の負荷容量の低下を抑制することができる。
【0017】
ハウジングは、スラストフォイル軸受を冷却するための冷却流体を流通させる冷却通路を有し得る。この冷却通路は、軸受ハウジングと各トップフォイルとの間を、トップフォイルの内周側から外周側に向かって、もしくは外周側から内周側に向かって、冷却流体が流通するように形成されていることが好ましい。
【0018】
スラストフォイル軸受では、低速回転時においては、トップフォイルが相対回転するスラストカラーを接触状態で支持するため、両者の摺動によって発熱する。また、高速回転時においても、スラストカラーとトップフォイルとの間で流体膜がせん断されて発熱する。トップフォイルは熱容量の小さい弾性薄板よりなる。このため、トップフォイルは高温になりやすく、トップフォイルの耐熱性が問題となりやすい。この点、上記構成によれば、軸受ハウジングとトップフォイルとの間を冷却流体が流通するので、冷却流体によってトップフォイルを冷却することができ、トップフォイルの耐熱性の問題を抑制できる。
【0019】
他方、軸受ハウジングとトップフォイルとの間を冷却流体が流通するように冷却通路が形成されている場合、軸受隙間の側方から漏れた流体は冷却流体と共に冷却通路から外部に流出する。このため、軸受隙間の側方からの流体漏れは流体膜圧力の低下に直結する。よって、軸受隙間の側方からの漏れを抑えることがより重要となる。この点、本発明のターボ式流体機械では、トップフォイルに転写された山部の稜線によって軸受隙間の流体が側方から漏れること自体を抑制できるので、上記のような冷却通路が形成されている場合に、効果が顕著になる。
【0020】
外周側フォイルの径方向幅Woutと、内周側フォイルの径方向幅Winとの関係が、Wout>Winを満足することが好ましい。
【0021】
スラストフォイル軸受では、軸受隙間の側方からの流体漏れは、遠心力の作用により、内周側よりも外周側の方が多くなる。この点、上記構成の場合、外周側フォイルの径方向幅Woutが内周側フォイルの径方向幅Winよりも大きいので、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を径方向の中央に引き込む力が大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることを効果的に抑えることができる。
【0022】
外周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θoutと、内周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θinとの関係が、θout>θinを満足することが好ましい。
【0023】
この場合、外周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θoutを、内周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θinよりも大きいので、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を径方向の中央に引き込む力が大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることを効果的に抑えることができる。
【0024】
外周側フォイルは、外周側に配置された第1外周側フォイルと、内周側に配置された第2外周側フォイルとに、径方向に分割されていることが好ましい。そして、第1外周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θout1と、第2外周側フォイルにおける稜線が径方向に対してなす鋭角θout2との関係が、θout1>θout2を満足することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を径方向の中央に引き込む力がより大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることをより効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のターボ式流体機械によれば、トップフォイルの耐久性を低下させることなく、スラストフォイル軸受における流体膜圧力の低下を抑制してスラストフォイル軸受の負荷容量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は実施例のターボ式圧縮機の断面図である。
図2図2は実施例のターボ式圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は実施例のターボ式圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
図4図4は実施例のターボ式圧縮機に係り、バンプフォイルの形状及び配置を示す平面図である。
図5図5は実施例のターボ式圧縮機に係り、トップフォイルの形状及び配置を示す平面図である。
図6図6は実施例のターボ式圧縮機に係り、バンプフォイルの形状を示す平面図である。
図7図7は実施例のターボ式圧縮機に係り、スラストフォイル軸受の作動を説明する断面図である。
図8図8は実施例のターボ式圧縮機に係り、スラストフォイル軸受の作動を説明する断面図である。
図9図9は実施例のターボ式圧縮機に係り、バンプフォイルの変形例1を示す平面図である。
図10図10は実施例のターボ式圧縮機に係り、バンプフォイルの変形例2を示す平面図である。
図11図11は実施例のターボ式圧縮機に係り、バンプフォイルの変形例3を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例)
この実施例では、本発明のターボ式流体機械をターボ式圧縮機10に具体化した。ターボ式圧縮機10は、燃料電池システム1が搭載された燃料電池車に搭載されている。燃料電池システム1は、酸素及び水素を車載用燃料電池に供給して発電させる。ターボ式圧縮機10は、車載用燃料電池に供給される酸素を含む空気を圧縮する。
【0030】
図1に示すように、ターボ式流体機械であるターボ式圧縮機10はハウジング11を備えている。ハウジング11は金属材料製であり、例えばアルミニウム合金製である。ハウジング11は、モータハウジング12と、コンプレッサハウジング13と、タービンハウジング14と、第1プレート15と、第2プレート16と、第3プレート17とを有している。
【0031】
モータハウジング12は、板状の端壁12aと、周壁12bとを有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結され、周壁12bの開口を閉塞している。
【0032】
モータハウジング12の端壁12aの内面121a、周壁12bの内周面121b、及び第1プレート15におけるモータハウジング12側の端面15aによってモータ室S1が区画されている。モータ室S1内には、電動モータ18が収容されている。
【0033】
第1プレート15は第1軸受保持部20を有している。第1軸受保持部20は、第1プレート15の端面15aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第1軸受保持部20は円筒状である。
【0034】
第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面15bには、底面15dを有する凹部15cが形成されている。凹部15cは円孔状である。第1軸受保持部20の筒内は、第1プレート15を貫通して凹部15cの底面15dに開口している。凹部15cの軸心と第1軸受保持部20の軸心とは一致している。凹部15cの内周面15eは、端面15bと底面15dとを接続している。
【0035】
モータハウジング12は第2軸受保持部22を有している。第2軸受保持部22は、モータハウジング12の端壁12aの内面121aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第2軸受保持部22は円筒状である。第2軸受保持部22の筒内は、モータハウジング12の端壁12aを貫通して端壁12aの外面122aに開口している。第1軸受保持部20の軸心と第2軸受保持部22の軸心とは一致している。
【0036】
図2に示すように、第2プレート16は、第1プレート15の端面15bに連結されている。第2プレート16の中央部にはシャフト挿通孔16aが形成されている。シャフト挿通孔16aは凹部15c内に連通している。シャフト挿通孔16aの軸心は、凹部15cの軸心及び第1軸受保持部20の軸心と一致している。第2プレート16における第1プレート15側の端面16bと第1プレート15の凹部15cとによって、スラスト軸受収容室S2が区画されている。
【0037】
コンプレッサハウジング13は、空気が吸入される円孔状の吸入口13aを有する筒状である。コンプレッサハウジング13は、第2プレート16における第1プレート15とは反対側の端面16cに連結されている。コンプレッサハウジング13の吸入口13aの軸心と、第2プレート16のシャフト挿通孔16aの軸心と、第1軸受保持部20の軸心とは一致している。吸入口13aは、コンプレッサハウジング13における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。
【0038】
コンプレッサハウジング13と第2プレート16の端面16cとの間には、第1羽根車室13bと、吐出室13cと、第1ディフューザ流路13dとが形成されている。第1羽根車室13bは吸入口13aに連通している。吐出室13cは、第1羽根車室13bの周囲で吸入口13aの軸心周りに延びている。第1ディフューザ流路13dは、第1羽根車室13bと吐出室13cとを連通している。第1羽根車室13bは、第2プレート16のシャフト挿通孔16aに連通している。
【0039】
図3に示すように、第3プレート17は、モータハウジング12の端壁12aの外面122aに連結されている。第3プレート17の中央部にはシャフト挿通孔17aが形成されている。シャフト挿通孔17aは、第2軸受保持部22の筒内に連通している。シャフト挿通孔17aの軸心は第2軸受保持部22の軸心と一致している。
【0040】
タービンハウジング14は、空気を吐出する円孔状の吐出口14aを有する筒状である。タービンハウジング14は、第3プレート17におけるモータハウジング12とは反対側の端面17bに連結されている。タービンハウジング14の吐出口14aの軸心と、第3プレート17のシャフト挿通孔17aの軸心と、第2軸受保持部22の軸心とは一致している。吐出口14aは、タービンハウジング14における第3プレート17とは反対側の端面に開口している。
【0041】
タービンハウジング14と第3プレート17の端面17bとの間には、第2羽根車室14bと、吸入室14cと、第2ディフューザ流路14dとが形成されている。第2羽根車室14bは吐出口14aに連通している。吸入室14cは、第2羽根車室14bの周囲で吐出口14aの軸心周りに延びている。第2ディフューザ流路14dは、第2羽根車室14bと吸入室14cとを連通している。第2羽根車室14bは、第3プレート17のシャフト挿通孔17aに連通している。
【0042】
図1に示すように、ハウジング11内には回転体24が収容されている。回転体24は、軸部としての回転軸24aと、第1支持部24bと、第2支持部24cと、第3支持部24dとを有している。回転軸24aは、コンプレッサハウジング13側の端部である第1端部24eと、タービンハウジング14側の端部である第2端部24fとを有している。第1支持部24bは、回転軸24aの外周面240aにおける第1端部24e寄りの部位に設けられるとともに第1軸受保持部20の筒内に配置されている。第1支持部24bは、回転軸24aに一体的に形成されるとともに回転軸24aの外周面240aから環状に突出している。
【0043】
第2支持部24cは、回転軸24aの外周面240aにおける第2端部24f寄りの部位に設けられるとともに第2軸受保持部22の筒内に配置されている。第2支持部24cは、円筒状をなし、回転軸24aの外周面240aから環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。第2支持部24cは、回転軸24aと一体的に回転可能である。
【0044】
第3支持部24dはスラスト軸受収容室S2に配置されている。第3支持部24dは、円板状をなし、回転軸24aの外周面240aから径方向に延在して環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。第3支持部24dは、回転軸24aと一体的に回転可能である。第3支持部24dは、電動モータ18に対して回転軸24aの軸心方向で離隔した位置に配置されている。第3支持部24dは、本発明におけるスラストカラーに相当する。
【0045】
以下の説明において、軸心方向、周方向、径方向とは、回転軸24aの軸心方向、周方向、径方向をそれぞれ意味する。周方向の一方は回転軸24aの軸心周りの一方向と一致し、周方向の他方は回転軸24aの軸心周りの他方向と一致する。また、回転軸24aの第1端部24e側を軸心方向の一方側とし、回転軸24aの第2端部24f側を軸心方向の他方側とする。
【0046】
回転軸24aの第1端部24eには、作動体としての第1羽根車25が連結されている。第1羽根車25は、回転軸24aにおける第3支持部24dよりも第1端部24e寄りに配置されている。第1羽根車25は第1羽根車室13bに収容されている。回転軸24aの第2端部24fには、第2羽根車26が連結されている。第2羽根車26は、回転軸24aにおける第2支持部24cよりも第2端部24f寄りに配置されている。第2羽根車26は第2羽根車室14bに収容されている。ハウジング11は、第1羽根車25、第2羽根車26及び回転体24を収容している。
【0047】
第2プレート16のシャフト挿通孔16aと回転体24との間には、第1シール部材27が設けられている。第1シール部材27は、第1羽根車室13bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。第3プレート17のシャフト挿通孔17aと回転体24との間には、第2シール部材28が設けられている。第2シール部材28は、第2羽根車室14bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。第1シール部材27及び第2シール部材28は、例えばシールリングである。
【0048】
電動モータ18は、筒状のロータ31及び筒状のステータ32を備えている。ロータ31は回転軸24aに固定されている。ステータ32はハウジング11に固定されている。ロータ31は、ステータ32の径方向内側に配置されるとともに回転体24と一体的に回転する。ロータ31は、回転軸24aに止着された円筒状のロータコア31aと、ロータコア31aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ32は、ロータ31を取り囲んでいる。ステータ32は、モータハウジング12の周壁12bの内周面121bに固定された円筒状のステータコア33と、ステータコア33に巻回されたコイル34と、を有している。回転体24は、図示しないバッテリからコイル34に電流が流れることによって、ロータ31と一体的に回転する。
【0049】
燃料電池システム1は、車載用燃料電池としての燃料電池スタック100と、ターボ式圧縮機10と、供給流路L1と、吐出流路L2と、分岐流路L3とを備えている。燃料電池スタック100は、複数の燃料電池から構成されている。供給流路L1は、吐出室13cと、燃料電池スタック100とを接続する。吐出流路L2は、燃料電池スタック100と、吸入室14cとを接続する。供給流路L1から分岐する分岐流路L3の途中には、インタークーラ110が設けられている。インタークーラ110は、分岐流路L3を流れる空気を冷却する。
【0050】
回転体24がロータ31と一体的に回転すると、第1羽根車25及び第2羽根車26が回転体24と一体的に回転する。すると、吸入口13aから吸入された空気が第1羽根車室13b内で第1羽根車25によって圧縮されるとともに第1ディフューザ流路13dを通過して吐出室13cから吐出される。吐出室13cから吐出された空気は、供給流路L1を介して燃料電池スタック100に供給される。燃料電池スタック100に供給された空気は、燃料電池スタック100を発電するために使用された後、燃料電池スタック100の排気として吐出流路L2へ吐出される。燃料電池スタック100の排気は、吐出流路L2を介して吸入室14cに吸入される。吸入室14cに吸入された燃料電池スタック100の排気は、第2ディフューザ流路14dを通じて第2羽根車室14bに吐出される。第2羽根車室14bに吐出される燃料電池スタック100の排気により第2羽根車26が回転する。回転体24は、電動モータ18の駆動による回転に加え、燃料電池スタック100の排気により回転する第2羽根車26の回転によっても回転する。よって、作動体としての第1羽根車25は回転体24と一体的に回転するとともに、外部流体としての空気を圧送する。第2羽根車室14bに吐出された燃料電池スタック100の排気は、吐出口14aから外部へ吐出される。
【0051】
ターボ式圧縮機10は、一対のスラストフォイル軸受30、30と、一対のラジアルフォイル軸受40、40とを有している。一対のスラストフォイル軸受30、30は、回転軸24aをハウジング11に対して回転可能に回転軸24aの軸心方向に支持する。一対のラジアルフォイル軸受40、40は、回転軸24aをハウジング11に対して回転可能に回転軸24aの軸心方向に直交する方向に支持する。
【0052】
一対のスラストフォイル軸受30、30は、スラスト軸受収容室S2に配置されている。一対のスラストフォイル軸受30、30は、スラストカラーとしての第3支持部24dを挟み込むように配置されている。一対のスラストフォイル軸受30、30は、第3支持部24dに対して、回転軸24aの軸心方向で対向している。一方のスラストフォイル軸受30は、第3支持部24dに対して、回転軸24aの第1端部24e側に配置されている。他方のスラストフォイル軸受30は、第3支持部24dに対して、回転軸24aの第2端部24f側に配置されている。
【0053】
第3支持部24dにおける回転軸24aの第1端部24e側の端面が、一方のスラストフォイル軸受30に軸心方向に支持される被軸受面241dとされる(図2図7参照)。同様に、第3支持部24dにおける回転軸24aの第2端部24f側の端面が、他方のスラストフォイル軸受30に軸心方向に支持される被軸受面241dとされる。
【0054】
一対のスラストフォイル軸受30、30は基本的に同様の構成を有するため、一方のスラストフォイル軸受30の構成についてのみ説明し、他方のスラストフォイル軸受30の構成についての説明を省略する。
【0055】
以下の説明においては、回転体24がロータ31と一体的に回転すると、回転軸24aが軸心周りの一方向に回転するものとする。ここでいう軸心周りの一方向とは、図4図8に回転軸24aの回転方向を矢印Rで示すように、図4における反時計回り方向のことである。
【0056】
図4及び図5に示すように、スラストフォイル軸受30は、軸受ハウジング31と、軸受ハウジング31に取り付けられた6個のバンフフォイル32と、各バンプフォイル32にそれぞれ対応する位置に軸受ハウジング31に取り付けられた6個のトップフォイル33と、を備えている。バンプフォイル32及びトップフォイル33の外形状は、いずれも平面視で略扇状をなしている。バンプフォイル32及びトップフォイル33は、ステンレス鋼などの金属製の弾性薄板を所定形状に成形して形成されている。
【0057】
軸受ハウジング31は第2プレート16の一部によって構成されている。すなわち、軸受ハウジング31は、第2プレート16の端面16bのうちスラスト軸受収容室S2を区画する部分における第2プレート16によって構成されている。軸受ハウジング31は、第3支持部24dと回転軸24aの軸心方向に対向している。軸受ハウジング31には、回転軸24aが挿通される挿通孔31aが形成されている。なお、他方のスラストフォイル軸受30における軸受ハウジング31は、スラスト軸受収容室S2を区画する凹部15cの部分における第1プレート15によって構成されている。
【0058】
6個のバンプフォイル32は、軸受ハウジング31の第3支持部24d側の端面に、回転軸24aの周方向に等間隔に配置されつつ、挿通孔31aの周囲に並べて取り付けられている。
【0059】
各バンプフォイル32は、周方向の一方側の端部において、溶接によって軸受ハウジング31に固定されている。すなわち、バンプフォイル32の周方向の一方側の端部が固定端32aとされ、周方向の他方側の端部が自由端32bとされている。なお、バンプフォイル32は、周方向の他方側の端部が固定端とされ、周方向の一方側の端部が自由端とされてもよい。
【0060】
図7に示すように、バンプフォイル32は、山部32cと谷部32dとが回転軸24aの周方向に交互に並ぶ波板形状とされている。すなわち、山部32cの稜線32eは、回転軸24aの周方向に並んでいる。各山部32cは第3支持部24d側に突出し、トップフォイル33に当接してトップフォイル33を弾性的に支持しうる。トップフォイル33においては、バンプフォイル32により弾性的に支持される面と反対側の面が、第3支持部24dの被軸受面241dと軸心方向に対向する軸受面33cとされる。
【0061】
各バンプフォイル32は、回転軸24aの径方向に分割されている。外周側に配置された外周側フォイル321と、内周側に配置された内周側フォイル322とは、周方向の一方側の端部において連結部32fによって一体的に連結されている。外周側フォイル321と内周側フォイル322とを連結部32fによって連結するのは、取り扱いや組み付けを容易にするためである。外周側フォイル321及び内周側フォイル322が連結部32fによって連結されることによっては、互いの動作や変形が妨げられることはない。
【0062】
図4に示すように、外周側フォイル321における稜線321eは、外周側フォイル321の内周側の端縁321aから外周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びている。内周側フォイル322における稜線322eは、内周側フォイル322の外周側の端縁322aから内周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びている。
【0063】
図6に示すように、外周側フォイル321の径方向幅をWoutとし、内周側フォイル322の径方向幅をWinとしたとき、両者の関係はWout=Winとなっている。また、外周側フォイル321における稜線321eが径方向に対してなす鋭角をθoutとし、内周側フォイル322における稜線322eが径方向に対してなす鋭角をθinとしたとき、両者の関係はθout=θinとなっている。なお、外周側フォイル321における稜線321eの鋭角θoutは、外周側フォイル321における稜線321eが軸心周りの他方向に傾く傾き角と言うこともできる。同様に、内周側フォイル322における稜線322eの鋭角θinは、内周側フォイル322における稜線322eが軸心周りの他方向に傾く傾き角と言うこともできる。
【0064】
6個のトップフォイル33は、軸受ハウジング31の第3支持部24d側の端面に、各バンプフォイル32と対応するように回転軸24aの周方向に等間隔に配置されつつ、挿通孔31aの周囲に並べて取り付けられている。各トップフォイル33は、周方向の他方側の端部が軸受ハウジング31に向けて折り曲げられており、その先端部が溶接によって軸受ハウジング31に固定されている。すなわち、トップフォイル33の周方向の他方側の端部が固定端33aとされ、周方向の一方側の端部が自由端33bとされている。
【0065】
一方のラジアルフォイル軸受40は第1軸受保持部20内に配置されており、他方のラジアルフォイル軸受40は第2軸受保持部22内に配置されている。第1軸受保持部20内において、回転体24の第1支持部24bが一方のラジアルフォイル軸受40に回転可能に支持される。第1支持部24bの外周面が、一方のラジアルフォイル軸受40に軸心方向と直交する方向に支持されるラジアル被軸受面24gとされる。第2軸受保持部22内において、回転体24の第2支持部24cが他方のラジアルフォイル軸受40に回転可能に支持される。第2支持部24cの外周面が、他方のラジアルフォイル軸受40に軸心方向と直交する方向に支持されるラジアル被軸受面24gとされる。
【0066】
一対のラジアルフォイル軸受40、40は基本的に同様の構成を有するため、一方のラジアルフォイル軸受40の構成についてのみ説明し、他方のラジアルフォイル軸受40の構成についての説明を省略する。
【0067】
ラジアルフォイル軸受40は、ラジアル軸受ハウジング41と、ラジアルバンプフォイル42と、ラジアルトップフォイル43とを備えている。なお、一方のラジアルフォイル軸受40においては第1軸受保持部20がラジアル軸受ハウジング41を構成し、他方のラジアルフォイル軸受40においては第2軸受保持部22がラジアル軸受ハウジング41を構成する。
【0068】
ラジアルバンプフォイル42及びラジアルトップフォイル43は、いずれも略円筒状をなしており、ステンレス鋼などの金属製の弾性薄板を所定形状に成形して形成されている。ラジアルバンプフォイル42及びラジアルトップフォイル43は、周方向の他方側の端部が径方向外側へ折り曲げられてラジアル軸受ハウジング41に固定されている。すなわち、ラジアルバンプフォイル42及びラジアルトップフォイル43は、周方向の他方側の端部が固定端とされ、周方向の一方側の端部が自由端とされている。
【0069】
ラジアルバンプフォイル42は、ラジアルトップフォイル43側に突出する山部の稜線が回転軸24aの周方向に並ぶ波板形状をなしている。ラジアルバンプフォイル42は、隣り合う山部の間に配置される各谷部がラジアル軸受ハウジング41により支持された状態で、各山部によりラジアルトップフォイル43を弾性的に支持しうる。ラジアルトップフォイル43においては、ラジアルバンプフォイル42により弾性的に支持される面と反対側の面が、ラジアル被軸受面24gに径方向に対向するラジアル軸受面43a(図2図3参照)とされる。
【0070】
図7に示すように、一対のスラストフォイル軸受30、30においては、回転軸24aの回転数が、スラストフォイル軸受30によりスラストカラーとしての第3支持部24dが浮上する浮上回転数に達するまでは、トップフォイル33の軸受面33cと第3支持部24dの被軸受面241dとが接触した状態で回転軸24aを支持する。
【0071】
図8に示すように、回転軸24aの回転数が浮上回転数に達すると、第3支持部24dとトップフォイル33との間に生じる流体膜圧力によって、第3支持部24dがスラストフォイル軸受30に対して浮上する。これにより、スラストフォイル軸受30は、第3支持部24dと非接触の状態で回転軸24aを支持する。
【0072】
一対のラジアルフォイル軸受40、40においても、同様に、回転軸24aの回転数が、ラジアルフォイル軸受40により第1支持部24b、第2支持部24が浮上する浮上回転数に達するまでは、ラジアルトップフォイル43のラジアル軸受面43aと第1支持部24b、第2支持部24cのラジアル被軸受面24gとが接触した状態で回転軸24aを支持する。回転軸24aの回転数が浮上回転数に達すると、第1支持部24b、第2支持部24cとトップフォイル43との間に生じる流体膜圧力によって、第1支持部24b、第2支持部24cがラジアルフォイル軸受40に対して浮上する。これにより、ラジアルフォイル軸受40は、第1支持部24b、第2支持部24cと非接触の状態で回転軸24aを支持する。
【0073】
図1図3に示すように、ハウジング11には冷却通路50が形成されている。冷却通路50には流体としての空気が流れる。冷却通路50は、第2プレート16、第1プレート15、モータハウジング12、及び第3プレート17に亘って形成されている。冷却通路50は、第1通路51及び第2通路52を有している。
【0074】
第1通路51は第2プレート16に設けられている。第1通路51は、第2プレート16の側壁面に設けられた流入口51aを有している。分岐流路L3は、供給流路L1と、第1通路51の流入口51aとを接続する。第1通路51は、スラスト軸受収容室S2及び一方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に連通している。
【0075】
第2通路52は、第3プレート17に設けられている。第2通路52は、第3プレート17の側端面に設けられた排出口52aを有している。第2通路52は、他方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に連通している。
【0076】
第1通路51には、燃料電池スタック100に向かって供給流路L1を流れる空気の一部が分岐流路L3を介して流入される。なお、第1通路51に流入される空気は、分岐流路L3を流れる途中でインタークーラ110によって冷却空気とされている。第1通路51に流入した冷却空気は、スラスト軸受収容室S2に流入する。
【0077】
スラスト軸受収容室S2に流入した冷却空気は、主に一方のスラストフォイル軸受30を介して内周側から外周側に向かって流れる。詳しくは、一方のスラストフォイル軸受30のトップフォイル33と軸受ハウジング31との間を介して、トップフォイル33の内周側から外周側に向かって冷却空気が流通する。スラストカラーとしての第3支持部24dの径方向外側を通過した冷却空気は、主に他方のスラストフォイル軸受30を介して外周側から内周側に向かって流れる。詳しくは、他方のスラストフォイル軸受30のトップフォイル33と軸受ハウジング31との間を介して、トップフォイル33の外周側から内周側に向かって冷却空気が流通する。
【0078】
スラスト軸受収容室S2を通過した冷却空気は一方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に流入する。詳しくは、一方のラジアルフォイル軸受40のラジアルトップフォイル43とラジアル軸受ハウジング41との間を介して、軸心方向の一方側から他方側に向かって冷却空気が流通する。ラジアルフォイル軸受40を通過した冷却空気はモータ室S1内に流れ込む。
【0079】
モータ室S1内に流れ込んだ空気は、例えば、ロータ31とステータ32との間を通過し、他方のラジアルフォイル軸受40を介して第2通路52に流れ込み、排出口52aから排出される。
【0080】
このように、冷却空気が冷却通路50を流れることにより、電動モータ18、一対のスラストフォイル軸受30、30、及び一対のラジアルフォイル軸受40、40が冷却空気によって直接冷却される。
【0081】
このターボ式圧縮機10では、スラストフォイル軸受30におけるバンプフォイル32が回転軸24aの径方向に分割されており、外周側フォイル321と内周側フォイル322とにおいて、波板形状における山部32cの稜線32eの傾き角度を変えている。具体的には、外周側フォイル321における稜線321eは、外周側フォイル321の内周側の端縁321aから外周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びている。一方、内周側フォイル322における稜線322eは、内周側フォイル322の外周側の端縁322aから内周側に進むに従って軸心周りの他方向に進むよう傾いて延びている。すなわち、外周側フォイル321における稜線321eは、内周側から外周側に進むに従って回転方向Rの後方側に進むよう傾いて延びている。一方、内周側フォイル322における稜線322eは、外周側から内周側に進むに従って回転方向Rの後方側に進むよう傾いて延びている。
【0082】
このような構成では、回転軸24aが浮上回転数以上で回転する高速回転時に、バンプフォイル32の波板形状が転写されてトップフォイル33に形成された山部の稜線は、V字形の頂部が軸心周りの一方向、すなわち回転方向Rの前方側を向く、所謂へリングボーン形状となる。そうすると、トップフォイル33の軸受面33cとスラストカラーとしての第3支持部24dの被軸受面241dとの間の軸受隙間においては、へリングボーン形状の稜線に案内されて導かれた流体がへリングボーン形状のV字形の頂部に向かって、すなわちトップフォイル33における外周側及び内周側から径方向の中央に向かって引き込まれる。このため、軸受隙間で圧縮された流体が軸受隙間における外周側及び内周側の側方から漏れることを抑制でき、軸受隙間における流体膜圧力が低下することを抑制できる。
【0083】
他方、軸受面33c及び被軸受面241dの何れにも溝を形成していないため、回転軸24aが浮上回転数未満で回転して軸受面33c及び被軸受面241dが摺動する低速回転時において、軸受面33cと被軸受面241dとの接触面積が、溝形成分だけ減少するようなことがない。このため、摩耗や焼付き等によりトップフォイル33の耐久性が低下することもない。
【0084】
したがって、このターボ式圧縮機10によれば、トップフォイル33の耐久性を低下させることなく、スラストフォイル軸受30における流体膜圧力の低下を抑制してスラストフォイル軸受30の負荷容量の低下を抑制することができる。
【0085】
スラストフォイル軸受30では、トップフォイル33の耐熱性が問題となりやすい。この点、このターボ式圧縮機10では、軸受ハウジング31とトップフォイル33との間を冷却空気が流通するので、冷却空気によってトップフォイル33を冷却することができ、トップフォイル33の耐熱性の問題を抑制できる。
【0086】
同様に、ラジアルフォイル軸受40においても、ラジアルトップフォイル43とラジアル軸受ハウジング41との間を冷却空気が流通するので、冷却空気によってラジアルトップフォイル43を冷却することができ、ラジアルトップフォイル43の耐熱性の問題を抑制できる。
【0087】
他方、スラストフォイル軸受30において、軸受ハウジング31とトップフォイル33との間を冷却空気が流通するように冷却通路50の第1通路51が形成されている場合、軸受隙間の側方から漏れた流体は冷却空気と共に第1通路51を介してスラスト軸受収容室S2の外部に流出する。このため、軸受隙間の側方からの流体漏れは流体膜圧力の低下に直結する。よって、軸受隙間の側方からの漏れを抑えることがより重要となる。この点、このターボ式圧縮機10では、トップフォイル33に転写された山部の稜線によって軸受隙間の流体が側方から漏れること自体を抑制できるので、上記のような冷却通路50の第1通路51が形成されている場合に、効果が顕著になる。
【0088】
このターボ式圧縮機10において、スラストフォイル軸受30のバンプフォイル32の形状をそれぞれ変更した変形例1~3について、以下説明する。
【0089】
<バンプフォイルの変形例1>
図9に示すように、変形例1に係るバンプフォイル32では、外周側フォイル321の径方向幅Woutと、内周側フォイル322の径方向幅Winとの関係が、Wout>Winを満足している。なお、外周側フォイル321における稜線321eの鋭角θoutと、内周側フォイル322における稜線322eの鋭角θinとの関係は、θout=θinである。
【0090】
スラストフォイル軸受32では、軸受隙間の側方からの流体漏れは、遠心力の作用により、内周側よりも外周側の方が多くなる。この点、上記構成の場合、外周側フォイル321の径方向幅Woutが内周側フォイル322の径方向幅Winよりも大きいので、トップフォイル33において、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を効果的に径方向の中央に引き込む力が大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることを効果的に抑えることができる。
【0091】
<バンプフォイルの変形例2>
図10に示すように、変形例2に係るバンプフォイル32では、外周側フォイル321における稜線321eの鋭角θoutと、内周側フォイル322における稜線322eの鋭角θinとの関係が、θout>θinを満足している。なお、外周側フォイル321の径方向幅Woutと、内周側フォイル322の径方向幅Winとの関係は、Wout=Winである。
【0092】
この場合、トップフォイル33において、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を効果的に径方向の中央に引き込む力が大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることを効果的に抑えることができきる。
【0093】
<バンプフォイルの変形例3>
図11に示すように、変形例3に係るバンプフォイル32では、外周側フォイル321がさらに径方向に分割されている。すなわち、外周側フォイル321は、外周側に配置された第1外周側フォイル323と、内周側に配置された第2外周側フォイル324とに、径方向に分割されている。第1外周側フォイル323における稜線323eが径方向に対してなす鋭角θout1と、第2外周側フォイル324における稜線324eが径方向に対してなす鋭角θout2との関係が、θout1>θout2を満足している。なお、第1外周側フォイル323の稜線323eの鋭角θout1と、第2外周側フォイル324の稜線324eの鋭角θout2と、内周側フォイル322の稜線322eの鋭角θinとの関係は、θout1>θin>θout2である。また、第1外周側フォイル323の径方向幅Wout1と、第2外周側フォイル324の径方向幅Wout2と、内周側フォイル322の径方向幅Winとの関係は、Wout1>Wout2>Win>Winとなっている。
【0094】
上記構成によれば、トップフォイル33において、遠心力の作用により外周側の側方に漏れ出ようとする流体を中央に引き込む力がより大きくなり、流体が外周側に漏れ出ることをより効果的に抑えることができる。
【0095】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0096】
例えば、上記実施例では、スラストフォイル軸受30において、6個のバンプフォイル32及び6個のトップフォイル33としたが、バンプフォイル32及びトップフォイル33の数はこれに限らず、それぞれ同数の複数個とすることができる。
【0097】
上記実施例では、スラストフォイル軸受30において、外周側フォイル321と内周側フォイル322とを連結部32fによって連結したが、これに限らず、外周側フォイル321と内周側フォイル322とは分断されていてもよい。
【0098】
上記実施例では、一方のスラストフォイル軸受30においてはハウジング11を構成する第2プレート16の一部を軸受ハウジング31とし、また、他方のスラストフォイル軸受30においてはハウジング11を構成する第1プレート15の一部を軸受ハウジング31としたが、これに限られない。スラストフォイル軸受30の軸受ハウジング31は、ハウジング11の構成部材とは別部材によって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、燃料電池システムに用いられる空気圧縮機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
24a…回転軸
24d…第3支持部(スラストカラー)
241d…被軸受面
25…第1羽根車(作動体)
11…ハウジング
30…スラストフォイル軸受
31…軸受ハウジング
31a…挿通孔
32…バンプフォイル
32c…山部
32e…稜線
33…トップフォイル
33c…軸受面
50…冷却通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11