(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20241001BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20241001BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/204 401D
H01M50/284
H01M50/569
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2021164908
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖 厚志
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117688(JP,A)
【文献】特開2021-072200(JP,A)
【文献】特開2004-017808(JP,A)
【文献】特開2014-013722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20 - 50/298
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け面を有する電池スタックと、
前記取付け面に固定されており、機器部品を保持可能な保持部材と、
前記保持部材に保持された前記機器部品と、
前記電池スタックに固定されており、前記機器部品を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記機器部品と対向する対向壁を有し、
前記保持部材は、
前記取付け面に固定された一対の固定部と、
前記取付け面から離間した位置で前記機器部品を保持する保持部と、
前記一対の固定部及び前記保持部の双方と交差しており、かつ、前記固定部と前記保持部とを連結する一対の連結部と、を有し、
前記保持部材は、前記対向壁が前記機器部品に向かって膨出するように当該対向壁を変形させる荷重が前記対向壁に作用したときに、前記機器部品が前記対向壁から離間する向きに変位するように変形
し、
前記一対の固定部は、
前記取付け面に固定された第1固定部と、
前記取付け面のうち前記第1固定部から離間した部位に固定された第2固定部と、を有し、
前記対向壁及び前記第2固定部間の距離は、前記対向壁及び前記第1固定部間の距離よりも大きく、
前記一対の連結部は、
前記第1固定部と前記保持部とを連結する第1連結部と、
前記第2固定部と前記保持部とを連結する第2連結部と、を有し、
前記保持部材は、前記対向壁に前記荷重が作用したときに、前記第1連結部と前記第1固定部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第1連結部と前記第1固定部とのなす角よりも大きくなるとともに前記第1連結部と前記保持部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第1連結部と前記保持部とのなす角よりも大きくなり、かつ、前記第2連結部と前記第2固定部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第2連結部と前記第2固定部とのなす角よりも小さくなるとともに前記第2連結部と前記保持部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第2連結部と前記保持部とのなす角よりも小さくなるように変形する、電池パック。
【請求項2】
前記対向壁は、前記機器部品の上方に配置されており、
前記第1固定部及び前記第2固定部を結ぶ方向は、前記対向壁と交差している、請求項
1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記第1固定部及び前記第2固定部を結ぶ方向と前記対向壁とのなす角は、鋭角である、請求項
2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記保持部材の曲げ剛性は、前記対向壁の曲げ剛性よりも小さい、請求項1から
3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記機器部品は、前記電池スタックの電圧及び温度を監視する監視ユニットを含む、請求項1から
4のいずれかに記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2019-162895号公報には、フロアパネルと、フロアパネルに固定部材を介して固定された電池パックと、固定部材を介してフロアパネルに固定された筐体と、を備える電池パック取付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-162895号公報に記載されるような構造において、電池パックに機器部品が取り付けられ、その機器部品がケースで覆われる場合がある。この場合において、ケースに対して荷重が入力された場合、ケースが機器部品に接触することによって機器部品が破損する懸念がある。
【0005】
本開示の目的は、ケースに対して荷重が入力された場合における機器部品の破損を抑制可能な電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った電池パックは、取付け面を有する電池スタックと、前記取付け面に固定されており、機器部品を保持可能な保持部材と、前記保持部材に保持された前記機器部品と、前記電池スタックに固定されており、前記機器部品を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記機器部品と対向する対向壁を有し、前記保持部材は、前記取付け面に固定された一対の固定部と、前記取付け面から離間した位置で前記機器部品を保持する保持部と、前記一対の固定部及び前記保持部の双方と交差しており、かつ、前記固定部と前記保持部とを連結する一対の連結部と、を有し、前記保持部材は、前記対向壁が前記機器部品に向かって膨出するように当該対向壁を変形させる荷重が前記対向壁に作用したときに、前記機器部品が前記対向壁から離間する向きに変位するように変形する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケースに対して荷重が入力された場合における機器部品の破損を抑制可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の電池パックを概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線での断面図である。
【
図3】電池スタック、保持部材及び機器部品の斜視図である。
【
図4】ケースの対向壁に荷重が入力されたときにおける対向壁及び保持部材の形状を概略的に示す断面図である。
【
図5】電池スタックに対する保持部材及び機器部品の取り付け位置の変形例を概略的に示す断面図である。
【
図6】ケースの対向壁に荷重が入力されたときにおける対向壁及び保持部材の形状を概略的に示す断面図である。
【
図7】比較例における電池パックを概略的に示す断面図である。
【
図8】比較例における電池パックを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態の電池パックを概略的に示す斜視図である。この電池パック1は、例えば、車両に搭載される。
図2は、
図1におけるII-II線での断面図である。
図3は、電池スタック、保持部材及び機器部品の斜視図である。
【0011】
図1~
図3に示されるように、電池パック1は、電池スタック100と、保持部材200と、機器部品300と、ケース400と、を備えている。
【0012】
電池スタック100は、一方向に並ぶように配置された複数の二次電池を含んでいる。二次電池として、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。電池スタック100は、略直方体形状を有している。電池スタック100は、取付け面100Sを有している。本実施形態では、取付け面100Sは、電池スタック100の側面で構成されている。取付け面100Sは、平坦に形成されてもよい。
【0013】
保持部材200は、取付け面100Sに固定されている。保持部材200は、機器部品300を保持可能である。保持部材200は、例えば、金属からなる。保持部材200は、一対の固定部211,212と、保持部220と、一対の連結部231,232と、を有している。
【0014】
一対の固定部211,212は、ボルト等の締結部材や溶接等によって取付け面100Sに固定されている。一対の固定部211,212は、第1固定部211と、第2固定部212と、を有している。第1固定部211は、取付け面100Sに固定されている。第2固定部212は、取付け面100Sのうち第1固定部211から離間した部位に固定されている。各固定部211,212は、平坦に形成されている。
【0015】
保持部220は、取付け面100Sから離間した位置で機器部品300を保持する。保持部220は、平坦に形成されていてもよい。保持部220の厚みは、各固定部211,212の厚みと同じである。
【0016】
一対の連結部231,232は、各固定部211,212と保持部220とを連結している。一対の連結部231,232は、第1連結部231と、第2連結部232と、を有している。第1連結部231は、第1固定部211と保持部220とを連結している。第2連結部232は、第2固定部212と保持部220とを連結している。各連結部231,232は、平坦に形成されている。一対の連結部231,232は、一対の固定部211,212及び保持部220の双方と交差している。本実施形態では、各連結部231,232は、各固定部211,212及び保持部220の双方と直交している。つまり、各連結部231,232は、取付け面100Sと直交している。各連結部231,232の厚みは、各固定部211,212の厚みと同じである。
【0017】
機器部品300は、保持部材200に保持されている。機器部品300は、保持部220に保持されている。機器部品300として、電池スタック100の電圧や温度等を監視する監視ユニットが挙げられる。
【0018】
ケース400は、電池スタック100に固定されている。ケース400は、機器部品300を収容している。ケース400は、金属等からなる。ケース400は、機器部品300と対向する対向壁410を有している。本実施形態では、対向壁410は、機器部品300の上方に配置されている。対向壁410は、平板状に形成されている。
【0019】
図2に示されるように、対向壁410及び第2固定部212間の距離は、対向壁410及び第1固定部211間の距離よりも大きい。第1固定部211と第2固定部212とを結ぶ方向は、対向壁410と交差している。本実施形態では、第1固定部211及び第2固定部212を結ぶ方向と対向壁410とのなす角αは、鋭角に設定されている。
【0020】
次に、
図4を参照しながら、対向壁410に荷重が作用した場合について説明する。
図4に示されるように、保持部材200は、対向壁410が機器部品300に向かって膨出するように当該対向壁410を変形させる荷重が対向壁410に作用したときに、機器部品300が対向壁410から離間する向き(
図4では下向き)に変位するように変形する。より詳細には、保持部材200は、対向壁410に前記荷重が作用したときに、第1連結部231と第1固定部211とのなす角θ1が対向壁410に前記荷重が作用する前における第1連結部231と第1固定部211とのなす角θ1よりも大きくなるとともに第1連結部231と保持部220とのなす角θ2が対向壁410に前記荷重が作用する前における第1連結部231と保持部220とのなす角θ2よりも大きくなり、かつ、第2連結部232と第2固定部212とのなす角θ3が対向壁410に前記荷重が作用する前における第2連結部232と第2固定部212とのなす角θ3よりも小さくなるとともに第2連結部232と保持部220とのなす角θ4が対向壁410に前記荷重が作用する前における第2連結部232と保持部220とのなす角θ4よりも小さくなるように変形する。
【0021】
これにより、保持部220及び保持部220に保持されている機器部品300は、対向壁410から離間する向き(この実施形態では下方)に変位する。この保持部220の変位量は、対向壁410の膨出量よりも大きいことが好ましい。
【0022】
上記保持部材200の変形を実現するために、保持部材200の曲げ剛性は、対向壁410の曲げ剛性よりも小さく設定されている。より詳細には、第1固定部211と第1連結部231との境界部の曲げ剛性、第1連結部231と保持部220との境界部の曲げ剛性、第2固定部212と第2連結部232との境界部の曲げ剛性、及び、第2連結部232と保持部220との境界部の曲げ剛性は、対向壁410の曲げ剛性よりも小さい。また、各境界部は、対向壁410と平行に設定されることが好ましい。
【0023】
以上に説明したように、本実施形態の電池パック1では、保持部材200は、対向壁410を変形させる荷重が当該対向壁410に作用したときに、機器部品300が対向壁410から離間する向きに変位するように変形するため、対向壁410が機器部品300に接触すること及びそれに伴う機器部品300の破損が抑制される。
【0024】
なお、上記実施形態では、第1固定部211及び第2固定部212を結ぶ方向と対向壁410とのなす角が鋭角である例が示されたが、第1固定部211及び第2固定部212を結ぶ方向は、対向壁410と直交していてもよい。つまり、第1固定部211及び第2固定部212を結ぶ方向が鉛直方向となる姿勢で保持部材200が取付け面100Sに固定されてもよい。
【0025】
また、
図5に示されるように、取付け面100Sは、電池スタック100の上面で構成されてもよい。この場合、各連結部231,232が取付け面100Sから起立する姿勢で保持部材200が取付け面100Sに取り付けられる。
【0026】
この態様では、
図6に示されるように、対向壁410に対して側方から前記荷重が作用した場合、機器部品300が前記荷重の作用方向と同方向に変位する。よって、機器部品300の破損が抑制される。
【0027】
次に、
図7及び
図8を参照しながら、上記実施形態に対する比較例について説明する。
【0028】
(比較例1)
図7に示されるように、対向壁410に対して下向きの荷重が作用した場合においても、対向壁410の変形を抑制できる程度にケース400の対向壁410及び側壁420の厚みを増大することや、対向壁410の上面に補強材500を設けることが考えられる。しかしながら、この例では、ケース400の大型化や、補強材500の設置スペースの確保が必要となる。
【0029】
(比較例2)
図8に示されるように、対向壁410と機器部品300との間の空間を確保するために、対向壁410及び機器部品300間の距離を増大することが考えられる。しかしながら、この例では、ケース400の大型化が不可避となる。
【0030】
これに対し、上記実施形態では、ケース400の大型化を回避しつつ、ケース400に対して荷重が入力された場合における機器部品300の破損を抑制することが可能となる。
【0031】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0032】
上記実施形態における電池パックは、取付け面を有する電池スタックと、前記取付け面に固定されており、機器部品を保持可能な保持部材と、前記保持部材に保持された前記機器部品と、前記電池スタックに固定されており、前記機器部品を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記機器部品と対向する対向壁を有し、前記保持部材は、前記取付け面に固定された一対の固定部と、前記取付け面から離間した位置で前記機器部品を保持する保持部と、前記一対の固定部及び前記保持部の双方と交差しており、かつ、前記固定部と前記保持部とを連結する一対の連結部と、を有し、前記保持部材は、前記対向壁が前記機器部品に向かって膨出するように当該対向壁を変形させる荷重が前記対向壁に作用したときに、前記機器部品が前記対向壁から離間する向きに変位するように変形する。
【0033】
この電池パックでは、保持部材は、対向壁を変形させる荷重が対向壁に作用したときに、機器部品が対向壁から離間する向きに変位するように変形するため、対向壁が機器部品に接触すること及びそれに伴う機器部品の破損が抑制される。
【0034】
また、前記一対の固定部は、前記取付け面に固定された第1固定部と、前記取付け面のうち前記第1固定部から離間した部位に固定された第2固定部と、を有し、前記対向壁及び前記第2固定部間の距離は、前記対向壁及び前記第1固定部間の距離よりも大きく、前記一対の連結部は、前記第1固定部と前記保持部とを連結する第1連結部と、前記第2固定部と前記保持部とを連結する第2連結部と、を有していてもよい。前記保持部材は、前記対向壁に前記荷重が作用したときに、前記第1連結部と前記第1固定部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第1連結部と前記第1固定部とのなす角よりも大きくなるとともに前記第1連結部と前記保持部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第1連結部と前記保持部とのなす角よりも大きくなり、かつ、前記第2連結部と前記第2固定部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第2連結部と前記第2固定部とのなす角よりも小さくなるとともに前記第2連結部と前記保持部とのなす角が前記対向壁に前記荷重が作用する前における前記第2連結部と前記保持部とのなす角よりも小さくなるように変形することが好ましい。
【0035】
また、前記対向壁は、前記機器部品の上方に配置されていてもよい。この場合において、前記第1固定部及び前記第2固定部を結ぶ方向は、前記対向壁と交差していることが好ましい。
【0036】
この態様では、対向壁に対して下向きの荷重が作用した場合、保持部材の変形により、機器部品は、対向壁から離間する向き、すなわち、下向きに変位する。よって、機器部品の破損が抑制される。
【0037】
また、前記第1固定部及び前記第2固定部を結ぶ方向と前記対向壁とのなす角は、鋭角であることが好ましい。
【0038】
このようにすれば、上下方向における保持部材の取り付けに必要な長さが短縮される。
【0039】
また、前記保持部材の曲げ剛性は、前記対向壁の曲げ剛性よりも小さいことが好ましい。
【0040】
また、前記機器部品は、前記電池スタックの電圧及び温度を監視する監視ユニットを含んでいてもよい。
【0041】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 電池パック、100 電池スタック、100S 取付け面、200 保持部材、211 第1固定部、212 第2固定部、220 保持部、231 第1連結部、232 第2連結部、300 機器部品、400 ケース、410 対向壁。