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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241001BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021169738
(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公開番号】P2023059630
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】松岡 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】出口 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 慶徳
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-238651(JP,A)
【文献】特開2014-236661(JP,A)
【文献】特開2017-184376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の上下アーム回路(10)を備える電力変換回路(5)を構成し、電源端子(24、26D、27S)および前記上下アーム回路の中点を形成するための中点端子(23、26S、27D)をそれぞれ有する複数の半導体モジュール(20)と、
共通する相の前記中点端子を電気的に接続する複数の中点導体(30)と、
を備え、
複数の前記半導体モジュールは、第1相の前記上下アーム回路を構成し、第1列(201)の一部をなすように第1方向に連続して並ぶ複数の第1モジュール(20U、20UH、20UL)と、第2相の前記上下アーム回路を構成し、前記第1方向に直交する第2方向において前記第1モジュールと対向しつつ第2列(202)の一部をなすように前記第1方向に連続して並ぶ複数の第2モジュール(20W、20WH、20WL)と、第3相の前記上下アーム回路を構成し、一部が前記第1列の一部をなし、残りが前記第2列の一部をなすように、前記第2方向に並ぶ複数の第3モジュール(20V、20VH、20VL)と、を含み、
複数の前記中点導体は、複数の前記第1モジュールの中点端子を電気的に接続する第1導体(30U)と、複数の前記第2モジュールの中点端子を電気的に接続する第2導体(30W)と、複数の前記第3モジュールの中点端子を電気的に接続する第3導体(30V)と、を含み、
前記第1列をなす前記半導体モジュールの中点端子は、前記第2列との対向面から突出し、
前記第2列をなす前記半導体モジュールの中点端子は、前記第1列との対向面から突出し、
複数の前記中点導体のそれぞれは、対応する前記中点端子の接続部分から、前記第1方向において前記第1モジュールおよび前記第2モジュールに対する前記第3モジュールの配置側とは反対側に延びている、電力変換装置。
【請求項2】
前記第3導体における前記第1方向の延設部分は、前記第2方向において前記第1導体と前記第2導体との間に配置されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
複数の前記中点導体は、前記第2方向において板面同士が対向するように配置されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電源端子は、前記半導体モジュールのそれぞれにおいて、前記中点端子とは反対の面から突出している、請求項1~3いずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
複数の前記半導体モジュールに対して前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に配置され、複数の前記半導体モジュールのそれぞれを冷却する冷却器(60)をさらに備え、
前記冷却器は、各列の前記半導体モジュールを一体的に冷却するように配置されている、請求項1~4いずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記冷却器は、前記第1列をなす複数の前記半導体モジュールを冷却する第1冷却器(61)と、前記第2列をなす複数の前記半導体モジュールを冷却する第2冷却器(62)と、を含む、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の平面視において、複数の前記半導体モジュールの少なくとも一部と重なるように配置されたコンデンサ(70)と、
前記コンデンサと前記半導体モジュールの前記電源端子とを電気的に接続する電源導体(31)と、をさらに備える請求項1~6いずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
コンデンサ(70)と、
前記コンデンサと前記半導体モジュールの前記電源端子とを電気的に接続する電源導体(31)と、をさらに備え、
各相の前記上下アーム回路は、複数の直列回路が互いに並列接続されて構成され、
前記半導体モジュールのそれぞれは、前記直列回路を提供し、
前記中点導体は、対応する相の前記半導体モジュールを並列接続しており、
前記冷却器は、前記第3方向において前記中点導体それぞれの少なくとも一部と対向するように、前記コンデンサと前記半導体モジュールとの間に配置された第3冷却器(63)を含む、請求項5または請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
各相の前記上下アーム回路は、複数の直列回路が互いに並列接続されて構成され、
前記半導体モジュールのそれぞれは、前記直列回路を提供し、
前記中点導体は、対応する相の前記半導体モジュールを並列接続している、請求項1~7いずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1モジュール、前記第2モジュール、および前記第3モジュールのそれぞれは、対応する相の前記上下アーム回路の上アーム(10H)を構成する上アームモジュール(20UH、20VH、20WH)と、前記上下アーム回路の下アーム(10L)を構成する下アームモジュール(20UL、20VL、20WL)と、を含み、
前記中点導体は、対応する相の前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールを直列接続している、請求項1~7いずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。この電力変換装置は、3相インバータを構成する6つのパワーモジュールを備えている。6つのパワーモジュールは、3つずつ、2列で配置されている。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3910383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、各列において、パワーモジュールがU相、V相、W相の順に並んでいる。各相の上アームを構成するパワーモジュールが第1列に配置され、各相の下アームを構成するパワーモジュールが第2列に配置されている。各列のパワーモジュールは、第1方向に並んでいる。共通する相の上アームモジュールのエミッタ端子と下アームモジュールのコレクタ端子とが、第1方向に直交する第2方向において、所定の間隔を有して向き合っている。そして、コレクタ端子およびエミッタ端子は、対応する相の出力導体によって電気的に接続されている。互いに電気的に分離しつつ同一方向に引き出すために、3相の出力導体は、第1方向および第2方向に直交する第3方向に延びている。このため、第3方向において体格を小型化する、つまり電力変換装置を低背化することが困難である。
【0005】
なお、ひとつのパワーモジュールがひとつの直列回路を提供し、複数の直列回路が並列接続されて各相の上下アーム回路が構成される場合にも、同様の課題が生じる。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、電力変換装置にはさらなる改良が求められている。
【0006】
開示されるひとつの目的は、低背化できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された電力変換装置は、
3相の上下アーム回路(10)を備える電力変換回路(5)を構成し、電源端子(24、26D、27S)および上下アーム回路の中点を形成するための中点端子(23、26S、27D)をそれぞれ有する複数の半導体モジュール(20)と、
共通する相の中点端子を電気的に接続する複数の中点導体(30)と、
を備え、
複数の半導体モジュールは、第1相の上下アーム回路を構成し、第1列(201)の一部をなすように第1方向に連続して並ぶ複数の第1モジュール(20U、20UH、20UL)と、第2相の上下アーム回路を構成し、第1方向に直交する第2方向において第1モジュールと対向しつつ第2列(202)の一部をなすように第1方向に連続して並ぶ複数の第2モジュール(20W、20WH、20WL)と、第3相の上下アーム回路を構成し、一部が第1列の一部をなし、残りが第2列の一部をなすように、第2方向に並ぶ複数の第3モジュール(20V、20VH、20VL)と、を含み、
複数の中点導体は、複数の第1モジュールの中点端子を電気的に接続する第1導体(30U)と、複数の第2モジュールの中点端子を電気的に接続する第2導体(30W)と、複数の第3モジュールの中点端子を電気的に接続する第3導体(30V)と、を含み、
第1列をなす半導体モジュールの中点端子は、第2列との対向面から突出し、
第2列をなす半導体モジュールの中点端子は、第1列との対向面から突出し、
複数の中点導体のそれぞれは、対応する中点端子の接続部分から、第1方向において第1モジュールおよび第2モジュールに対する第3モジュールの配置側とは反対側に延びている。
【0008】
開示された電力変換装置によれば、第1相の上下アーム回路を構成する複数の第1モジュールを第1列に配置し、第2相の上下アーム回路を構成する複数の第2モジュールを第2列に配置している。そして、第3相の上下アーム回路を構成する複数の第3モジュールの一部を第1列に配置し、残りを第2列に配置している。これにより、複数の中点導体を、第1方向および第2方向に直交する方向ではなく、第1方向において互いに同じ側に引き出すことができる。この結果、低背化できる電力変換装置を提供することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成および駆動システムを示す図である。
図2】電力変換装置を示す平面図である。
図3】半導体モジュールを示す平面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】第2実施形態に係る電力変換装置を示す平面図である。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】第3実施形態に係る電力変換装置を示す平面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9】第4実施形態に係る電力変換装置を示す断面図である。
図10】第5実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図11】電力変換装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
本実施形態の電力変換装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)などの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0014】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0015】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、有機ラジカル電池などである。モータジェネレータ3は、3相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0016】
<電力変換装置の回路構成>
図1は、電力変換装置4の回路構成を示している。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。電力変換装置4は、少なくとも電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換回路は、インバータ5である。電力変換装置4は、平滑コンデンサ6、駆動回路7などをさらに備えてもよい。
【0017】
平滑コンデンサ6は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ6は、高電位側の電源ラインであるPライン8と低電位側の電源ラインであるNライン9とに接続されている。Pライン8は直流電源2の正極に接続され、Nライン9は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ6の正極は、直流電源2とインバータ5との間において、Pライン8に接続されている。平滑コンデンサ6の負極は、直流電源2とインバータ5との間において、Nライン9に接続されている。平滑コンデンサ6は、直流電源2に並列に接続されている。
【0018】
インバータ5は、DC-AC変換回路である。インバータ5は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を3相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ5は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した3相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン8へ出力する。このように、インバータ5は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0019】
インバータ5は、3相分の上下アーム回路10を備えて構成されている。上下アーム回路10は、レグと称されることがある。上下アーム回路10は、上アーム10Hと、下アーム10Lをそれぞれ有している。上アーム10Hおよび下アーム10Lは、上アーム10HをPライン8側として、Pライン8とNライン9との間で直列接続されている。
【0020】
上アーム10Hと下アーム10Lとの接続点、すなわち上下アーム回路10の中点は、出力ライン11を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。上下アーム回路10のうち、U相の上下アーム回路10Uは、出力ライン11を介してU相の巻線3aに接続されている。V相の上下アーム回路10Vは、出力ライン11を介してV相の巻線3aに接続されている。W相の上下アーム回路10Wは、出力ライン11を介してW相の巻線3aに接続されている。
【0021】
本実施形態において、上下アーム回路10(10U、10V、10W)は、複数の直列回路12が互いに並列接続されて構成されている。具体的には、上下アーム回路10のそれぞれが、2つの直列回路12を備えている。2つの直列回路12は、Pライン8とNライン9との間にそれぞれ設けられており、互いに並列接続されている。直列回路12は、上アーム10H側のスイッチング素子と下アーム10L側のスイッチング素子とを、Pライン8とNライン9との間で直列接続して構成されている。
【0022】
ひとつの直列回路12は、Pライン8側(ハイサイド側)に、互いに並列接続された2つのスイッチング素子を有し、Nライン9側(ローサイド側)に、互いに並列接続された2つのスイッチング素子を有している。つまり、2つの直列回路12におけるハイサイド側の4つのスイッチング素子が一相分の上アーム10Hをなし、ローサイド側の4つのスイッチング素子が一相分の下アーム10Lをなしている。
【0023】
本実施形態では、各スイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET13を採用している。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。並列接続されるハイサイド側の4つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。並列接続されるローサイド側の4つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。
【0024】
MOSFET13のそれぞれには、還流用のダイオード14(以下、FWD14と示す)が逆並列に接続されている。MOSFET13の場合、FWD14は、寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、外付けのダイオードでもよい。上アーム10Hにおいて、MOSFET13のドレインが、Pライン8に接続されている。下アーム10Lにおいて、MOSFET13のソースが、Nライン9に接続されている。そして、上アーム10HにおけるMOSFET13のドレインと、下アーム10LにおけるMOSFET13のドレインが相互に接続されている。FWD14のアノードは対応するMOSFET13のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0025】
なお、スイッチング素子は、MOSFET13に限定されない。たとえばIGBTを採用してもよい。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBTの場合にも、FWD14が逆並列に接続される。また、直列回路12を構成するハイサイド側のスイッチング素子、ローサイド側のスイッチング素子それぞれの数は、2つに限定されない。ひとつでもよいし、3つ以上でもよい。
【0026】
駆動回路7は、インバータ5などの電力変換回路を構成するスイッチング素子を駆動する。駆動回路7は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するMOSFET13のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET13を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0027】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET13を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路7に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。制御回路は、上位ECU内に設けてもよい。
【0028】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電力変換装置4は、センサの少なくともひとつを備えてもよい。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ6の両端電圧を検出する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0029】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータを備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ6との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路10を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0030】
<電力変換装置の構造>
図2は、本実施形態の電力変換装置4を示す平面図である。図2では、ケースの内部が分かるように、ケースを簡素化して図示している。
【0031】
本実施形態の電力変換装置4は、複数の半導体モジュール20と、複数の出力導体30を少なくとも備えている。電力変換装置4は、図2に示すようにケース40を備えてもよい。ケース40は、電力変換装置4を構成する他の要素を収容する。ケース40は、たとえばアルミダイカストによる成形体である。ケース40は、他の要素を収容すべく開口を有している。電力変換装置4は、ケース40とともに、ケース40の開口を閉塞するカバー(蓋)を備えてもよい。ケース40およびカバーは、筐体と称されることがある。
【0032】
電力変換装置4は、図2に示すように電流センサ50を備えてもよい。電流センサ50は、相電流を検出する。電流センサ50は、ケース40内に配置されている。
【0033】
以下において、列をなす半導体モジュール20の並び方向をX方向とする。X方向に直交し、V相の上下アーム回路10Vを構成する半導体モジュール20(20V)の並び方向をY方向とする。X方向およびY方向の両方向に直交する方向をZ方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する位置関係にある。X方向が第1方向、Y方向が第2方向、Z方向が第3方向に相当する。
【0034】
<半導体モジュール>
図3は、半導体モジュール20を示す平面図である。図3では、一例として、U相の上下アーム回路10Uを構成する半導体モジュール20を示している。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図4では、便宜上、封止体内に配置された要素を省略している。また、ケース40や電流センサ50を省略している。
【0035】
複数の半導体モジュール20は、上記した上下アーム回路10、つまりインバータ5(電力変換回路)を構成する。本実施形態では、ひとつの半導体モジュール20がひとつの直列回路12を提供する。複数の半導体モジュール20は、2つの半導体モジュール20Uと、2つの半導体モジュール20Vと、2つの半導体モジュール20Wを含んでいる。2つの半導体モジュール20Uは、U相の上下アーム回路10Uを構成する。2つの半導体モジュール20Vは、V相の上下アーム回路10Vを構成する。2つの半導体モジュール20Wは、W相の上下アーム回路10Wを構成する。
【0036】
すべての半導体モジュール20は、互いに共通の構造を有している。図2図3、および図4に示すように、各半導体モジュール20は、半導体素子21と、封止体22と、出力端子23と、電源端子24を備えている。
【0037】
半導体素子21は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。スイッチング素子は、半導体基板の板厚方向に主電流を流すように縦型構造をなしている。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンドがある。半導体素子21は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0038】
本実施形態の半導体素子21は、SiCを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のMOSFET13およびFWD14が形成されてなる。MOSFET13は、半導体素子21(半導体基板)の板厚方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子21は、自身の板厚方向の両面に、図示しない主電極を有している。具体的には、スイッチング素子の主電極として、表面にソース電極を有し、裏面にドレイン電極を有している。ソース電極は、表面の一部分に形成されている。ドレイン電極は、裏面のほぼ全域に形成されている。
【0039】
主電流は、ドレイン電極とソース電極との間に流れる。半導体素子21は、ソース電極の形成面に、信号用の電極である図示しないパッドを有している。半導体素子21は、その板厚方向がZ方向に略平行となるように配置されている。本実施形態の半導体素子21は、直列回路12のハイサイド側のスイッチング素子を提供する半導体素子21Hと、直列回路12のローサイド側のスイッチング素子を提供する半導体素子21Lを含んでいる。半導体素子21H、21Lは、Y方向に並んで配置されている。半導体素子21は、半導体素子21H、21Lをそれぞれ2つ含んでいる。2つの半導体素子21Hは、X方向に並んで配置されている。同様に、2つの半導体素子21Lは、X方向に並んで配置されている。
【0040】
4つの半導体素子21は、ひとつの直列回路12の4つのスイッチング素子を提供する。半導体モジュール20は、ひとつの直列回路12を構成するスイッチング素子の数に応じた半導体素子21を備える。直列回路12を構成するスイッチング素子が2つの場合、半導体モジュール20は、半導体素子21H、21Lをそれぞれひとつ備える。
【0041】
封止体22は、半導体モジュール20を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体22の外に露出している。封止体22は、たとえば樹脂を材料とする。封止体22は、たとえばエポキシ系樹脂を材料としてトランスファモールド法により成形されている。封止体22は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。
【0042】
封止体22は、たとえば平面略矩形状をなしている。封止体22は、外郭をなす表面として、一面22aと、Z方向において一面22aとは反対の面である裏面22bを有している。一面22aおよび裏面22bは、たとえば平坦面である。また、一面22aと裏面22bとをつなぐ面である側面22c、22d、22e、22fを有している。側面22cは、Y方向において側面22dとは反対の面である。側面22eは、X方向において側面22fとは反対の面である。
【0043】
出力端子23および電源端子24は、半導体素子21の主電極に電気的に接続された外部接続端子である。出力端子23および電源端子24は、主端子と称されることがる。出力端子23は、半導体素子21Hのソース電極と半導体素子21Lのドレイン電極との接続点、つまり直列回路12の接続点に電気的に接続されている。出力端子23が、中点端子に相当する。電源端子24は、P端子24Pと、N端子24Nを含んでいる。P端子24Pは、半導体素子21Hのドレイン電極に電気的に接続されている。N端子24Nは、半導体素子21Lのソース電極に電気的に接続されている。
【0044】
出力端子23、P端子24P、およびN端子24Nは、Y方向に延びる部分をそれぞれ有している。出力端子23は、Y方向において電源端子24とは反対向きに延びている。出力端子23は、上記したように封止体22の側面22cから外部に突出している。出力端子23の突出部分は、板厚方向がZ方向に略平行な部分を含む。電源端子24であるP端子24PおよびN端子24Nは、封止体22の側面22dから外部に突出している。P端子24Pの突出部分とN端子24Nの突出部分は、X方向に並んでいる。
【0045】
ひとつの半導体モジュール20が備える出力端子23、P端子24P、N端子24Nの本数は、特に限定されない。それぞれ1本でもよいし、すくなくともひとつが複数本でもよい。たとえば出力端子23、P端子24P、N端子24Nをそれぞれ2本備えてもよい。並列接続される半導体素子21の電流偏りを抑制するために、並列接続される半導体素子21に対して対称性を有するように配置するとよい。本実施形態では、便宜上、出力端子23、P端子24P、N端子24Nを1本で示している。
【0046】
半導体モジュール20は、上記した要素以外に、図示しない配線部材や信号端子を備えている。配線部材は、半導体素子21の主電極と主端子とを電気的に接続する配線機能を提供する。配線部材は、半導体素子21の熱を半導体モジュール20の外部に放熱する放熱機能も提供する。配線部材は、たとえばZ方向において半導体素子21を挟むように配置される。配線部材としては、絶縁基材の両面に金属体が配置された基板を用いてもよいし、金属部材であるヒートシンクを採用してもよい。ヒートシンクは、たとえばリードフレームの一部として提供される。配線部材の一部を封止体22の一面22aおよび裏面22bの少なくとも一方から露出させることで、放熱性を高めることができる。
【0047】
信号端子は、半導体素子21のパッドに電気的に接続された外部接続端子である。信号端子も、封止体22から外部に突出している。たとえば半導体素子21Hのパッドに接続された信号端子は、封止体22の側面22dから突出している。半導体素子21Lのパッドに接続された信号端子は、封止体22の側面22cから突出している。外部接続端子は、封止体22の側面22e、22fから突出していない。
【0048】
<複数の半導体モジュールの配置>
図2に示すように、6つの半導体モジュール20は、3つずつ、2列で配置されている。U相の上下アーム回路10Uを構成する2つの半導体モジュール20Uは、第1列201をなすようにX方向に連続して並んでいる。W相の上下アーム回路10Wを構成する2つの半導体モジュール20Wは、第2列202をなすようにX方向に連続して並んでいる。半導体モジュール20Wは、Y方向において半導体モジュール20Uと対向するように配置されている。V相の上下アーム回路10Vを構成する2つの半導体モジュール20Vは、Y方向に並んでいる。半導体モジュール20Vのひとつは第1列201をなし、他のひとつは第2列202をなしている。
【0049】
このように、半導体モジュール20VのみがY方向に並んで配置されており、半導体モジュール20U、20WはX方向に並んで配置されている。第1列201をなす3つの半導体モジュール20は、半導体モジュール20U、半導体モジュール20U、半導体モジュール20Vの順に並んでいる。第2列202をなす3つの半導体モジュール20は、半導体モジュール20W、半導体モジュール20W、半導体モジュール20Vの順に並んでいる。
【0050】
共通する相の2つの半導体モジュール20をひとつの片とみなすと、6つの半導体モジュール20はZ方向の平面視において略コの字状(略U字状)をなしている。U相が第1相、W相が第2相、V相が第3相に相当する。半導体モジュール20Uが第1モジュール、半導体モジュール20Wが第2モジュール、半導体モジュール20Vが第3モジュールに相当する。
【0051】
第1列201をなす半導体モジュール20と、第2列202をなす半導体モジュール20とは、側面22c同士が所定の間隔を有して対向するように配置されている。第2列202をなす半導体モジュール20は、第1列201をなす半導体モジュール20に対してZ軸周りに180度回転させた配置となっている。第1列201をなす半導体モジュール20の出力端子23は、第2列202との対向面である側面22cから突出している。第2列202をなす半導体モジュール20の出力端子23は、第1列201との対向面である側面22cから突出している。つまり、すべての出力端子23は、内側面から突出している。すべての電源端子24は、外側面から突出している。
【0052】
第1列201において、X方向端部に位置する半導体モジュール20Uの側面22fと、真ん中に位置する半導体モジュール20Uの側面22eとが、所定の間隔を有して対向している。真ん中に位置する半導体モジュール20Uの側面22fと、X方向端部に位置する半導体モジュール20Vの側面22eとが、所定の間隔を有して対向している。第2列202において、X方向端部に位置する半導体モジュール20Wの側面22eと、真ん中に位置する半導体モジュール20Wの側面22fとが、所定の間隔を有して対向している。真ん中に位置する半導体モジュール20Wの側面22eと、X方向端部に位置する半導体モジュール20Vの側面22fとが、所定の間隔を有して対向している。X方向において隣り合う半導体モジュール20の間隔は、Y方向において隣り合う半導体モジュール20の間隔よりも狭い。
【0053】
<出力導体>
図2に示すように、複数の出力導体30は、半導体モジュール20の出力端子23に電気的に接続された配線部材である。出力導体30は、対応する相の出力端子23を電気的に接続している。出力導体30は、対応する相の半導体モジュール20を並列接続している。出力導体30は、上記した出力ライン11の一部をなしている。出力導体30は、たとえば板状の金属部材として提供される。出力導体30は、出力バスバーと称されることがある。出力導体30が、中点導体に相当する。出力導体30は、はんだ接合、抵抗溶接、レーザ溶接などにより、対応する出力端子23に接続されている。
【0054】
複数の出力導体30は、出力導体30Uと、出力導体30Vと、出力導体30Wを含んでいる。出力導体30Uは、2つの半導体モジュール20Uの出力端子23を電気的に接続している。出力導体30Uは、X方向に延びる部分を有している。出力導体30Uは、X方向に並ぶU相の2つの出力端子23を電気的に接続している。出力導体30Wは、2つの半導体モジュール20Wの出力端子23を電気的に接続している。出力導体30Wは、X方向に延びる部分を有している。出力導体30Wは、X方向に並ぶW相の2つの出力端子23を電気的に接続している。出力導体30Wは、Y方向において出力導体30Uとの間に所定の間隔を有している。
【0055】
出力導体30Vは、2つの半導体モジュール20Vの出力端子23を電気的に接続している。出力導体30Vは、接続部301と、延設部302を有している。接続部301は、Y方向に延びる部分を含み、出力端子23を電気的に接続している。延設部302は、接続部301からX方向に延びている。出力導体30Uが第1導体、出力導体30Wが第2導体、出力導体30Vが第3導体に相当する。
【0056】
複数の出力導体30(30U、30V、30W)のそれぞれは、対応する出力端子23の接続部分から、X方向において半導体モジュール20U、20Wに対する半導体モジュール20Vの配置側とは反対側に延びている。つまり、半導体モジュール20Vから遠ざかる方向に延びている。出力導体30Vの延設部302は、Y方向において出力導体30U、30Wの間に配置されている。3つの出力導体30は、Y方向において出力導体30U、出力導体30V、出力導体30Wの順に並んでいる。出力導体30Wは、出力導体30U、30Vの間の隙間から引き出されている。電流センサ50は、出力導体30の延設先に配置されている。これにより、電流センサ50までの出力導体30の長さを短くすることができる。電流センサ50は、半導体モジュール20に対してX方向に並んでいる。電流センサ50は、出力導体30の途中に設けられており、相電流を検出する。
【0057】
図4に示すように、本実施形態の出力導体30は、X方向延設部分において板面同士が対向するように配置されている。各出力導体30の板厚方向は、Y方向に略平行である。つまり、延設方向に直交する板幅方向が、Z方向に略平行である。出力導体30V(延設部302)の板面のうち、一面が出力導体30Uの板面と対向し、裏面が出力導体30Wの板面と対向している。3つの出力導体30は、所定の間隔で配置されている。
【0058】
<第1実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態では、6つの半導体モジュール20を、3つずつ、2列で配置している。そして、U相の上下アーム回路10Uを構成する2つの半導体モジュール20U(第1モジュール)を第1列201に配置している。W相の上下アーム回路10Wを構成する2つの半導体モジュール20W(第2モジュール)を第2列202に配置している。V相の上下アーム回路10Vを構成する2つの半導体モジュール20V(第3モジュール)のうちのひとつを第1列201に配置し、他のひとつを第2列202に配置している。つまり、半導体モジュール20VのみをY方向に並んで配置し、半導体モジュール20U、20WについてはX方向に並んで配置している。
【0059】
これにより、出力導体30によって共通する相の出力端子23(中点端子)を電気的に接続した状態で、半導体モジュール20と出力導体30(中点導体)との接続構造体は略コの字状(略U字状)をなす。X方向において、接続構造体の一端は半導体モジュール20Vと出力導体30V(第3導体)の一部によって閉じており、他端は開放端である。よって、X方向において開口端側に出力導体30U、30V、30Wを引き出すことができる。XY平面において同じ方向に出力導体30を引き出すことができる。従来のようにZ方向に引き出さなくてもよいため、電力変換装置4のZ方向の体格を小型化、つまり低背化することができる。
【0060】
出力導体30U、30V、30Wのお互いの位置関係は特に限定されない。本実施形態では、出力導体30V(第3導体)の延設部302が、Y方向において出力導体30U(第1導体)と出力導体30W(第2導体)との間に配置されている。出力導体30Uは第1列201においてX方向に並ぶ半導体モジュール20Uの近傍に配置でき、出力導体30Wは第2列202においてX方向に並ぶ半導体モジュール20Wの近傍に配置できる。これにより、出力導体30Vの延設部302を、出力導体30U、30Wの間の隙間を通じて引き出すことができる。したがって、電力変換装置4をより一層低背化することができる。
【0061】
延設部302が出力導体30U、30Wの間に配置される構成では、たとえば側面同士が対向するように配置してもよい。この場合、出力導体30U、30V、30Wが板幅方向において横並びとなるため、第1列201と第2列202とを遠ざけなければならない。これにより、電力変換装置4のY方向の体格が増大する虞がある。本実施形態の出力導体30U、30V、30Wは、Y方向において板面同士が対向するように配置されている。このため、第1列201と第2列202との対向距離を短くし、ひいては電力変換装置4のY方向の体格を小型化することができる。
【0062】
電源端子24の突出位置は、特に限定されない。たとえば出力端子23と同じ面(側面22c)から突出してもよい。本実施形態の電源端子24は、出力端子23とは反対の面(側面22d)から突出している。これにより、電源端子24や電源導体31を避けた配策が不要となるため、出力導体30の引き出しを簡素化することができる。
【0063】
<変形例>
6つの半導体モジュール20の配置は、上記した例に限定されない。半導体モジュール20の位置を入れ替えてもよい。たとえば半導体モジュール20Vに代えて、半導体モジュール20UをY方向に並ぶ配置としてもよい。この場合、U相が第3相、半導体モジュール20Uが第3モジュール、出力導体30Uが第3導体に相当する。なお、半導体モジュール20V、20Wの一方が第1モジュール、他方が第2モジュールとなる。半導体モジュール20Vに代えて、半導体モジュール20WをY方向に並ぶ配置としてもよい。この場合、W相が第3相、半導体モジュール20Wが第3モジュール、出力導体30Wが第3導体に相当する。なお、半導体モジュール20U、20Vの一方が第1モジュール、他方が第2モジュールとなる。
【0064】
一相分の上下アーム回路10を構成する直列回路12の数、つまり各相の半導体モジュール20の数は、2つに限定されない。4つ以上の偶数としてもよい。たとえば4つの場合、第1列201は、連続して並ぶ4つの半導体モジュール20Uと、連続して並ぶ2つの半導体モジュール20Vを含む。第2列202は、連続して並ぶ4つの半導体モジュール20Wと、連続して並ぶ2つの半導体モジュール20Vを含む。
【0065】
出力導体30の板面同士が対向する部分を、出力端子23に対してZ方向の上側に配置する例を示したが、これに限定されない。出力端子23に対して下側に配置してもよい。
【0066】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0067】
図5は、本実施形態の電力変換装置4を示す平面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。図6では、便宜上、便宜上、封止体22内に配置された要素を省略している。また、ケース40や電流センサ50を省略している。本実施形態では、先行実施形態に記載の構成に対して、冷却器60を付け加えている。つまり、電力変換装置4が、冷却器60をさらに備えている。冷却器60を除く構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0068】
冷却器60は、熱伝導性に優れた金属材料、たとえばアルミニウム系の材料を用いて形成されている。冷却器60は、内部に流路601を有している。冷却器60の流路601には、図示しない導入管を介して冷媒602が供給される。また、冷却器60の流路601を流れた冷媒602は、図示しない排出管を介して排出される。冷媒602としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。
【0069】
冷却器60は、半導体モジュール20を冷却するように配置されている。半導体モジュール20に対する冷却器60の配置は特に限定されないが、上記した縦型構造の半導体素子21の場合、半導体モジュール20にしてZ方向に配置するとよい。本実施形態の冷却器60は、半導体モジュール20のそれぞれをZ方向から冷却するように配置されている。冷却器60は、半導体モジュール20に対して積層されている。冷却器60と半導体モジュール20との間には、必要に応じてセラミック板などの電気絶縁部材が配置される。
【0070】
冷却器60は、Z方向において封止体22の一面22a上に配置されてもよいし、裏面22b上に配置されてもよい。一面22aおよび裏面22bの両方に配置されてもよい。本実施形態の冷却器60は、封止体22の一面22a上に配置されている。
【0071】
冷却器60は、半導体モジュール20を個別に冷却するように、半導体モジュール20と同数設けられてもよい。冷却器60は、複数の半導体モジュール20をまとめて冷却するように設けられてもよい。たとえばY方向において隣り合う半導体モジュール20単位で冷却器60を設けてもよい。すべての半導体モジュール20をひとつの冷却器60で冷却してもよい。本実施形態の冷却器60は、冷却器61と、冷却器61とは別に設けられた冷却器62を含んでいる。
【0072】
冷却器61は、X方向に延設されている。冷却器61は、第1列201の3つ半導体モジュール20をまとめて冷却するように設けられている。冷却器61は、Z方向の平面視において3つの半導体モジュール20のそれぞれと重なるように設けられている。冷却器61において、冷媒は、X方向に流れる。冷却器62も、X方向に延設されている。冷却器61は、第2列202の3つ半導体モジュール20をまとめて冷却するように設けられている。冷却器62は、Z方向の平面視において3つの半導体モジュール20のそれぞれと重なるように設けられている。冷却器62において、冷媒は、X方向に流れる。冷却器61が第1冷却器に相当し、冷却器62が第2冷却器に相当する。
【0073】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4は、冷却器60を備えている。冷却器60より、半導体モジュール20(半導体素子21)を冷却することができる。特に冷却器60が、Z方向において半導体モジュール20に積層配置されている。これにより、半導体モジュール20を効果的に冷却することができる。
【0074】
本実施形態では、冷却器60が、各列の半導体モジュール20を一体的に冷却するように配置されている。具体的には、第1列201の3つの半導体モジュール20を一体的に冷却するように配置されている。第2列202の3つの半導体モジュール20を一体的に冷却するように配置されている。これによれば、半導体モジュール20に対して冷却器を個別に設けて積層する構成に較べて、部品点数を低減することができる。これにより、組付け工数も低減することができる。
【0075】
半導体モジュール20をまとめて冷却するために、Z方向の平面視においてすべての半導体モジュール20と重なるように、冷却器60を設けてもよい。この場合、出力導体30や後述する電源導体31の配策が複雑となる。また、板面同士が対向するように出力導体30を配置した場合、出力導体30との接触を避けるように冷却器60を設けなければならず、冷却器60の構造が複雑となる。なお、Y方向において隣り合う半導体モジュール20単位で冷却器60を設けた場合も同様である。
【0076】
本実施形態では、第1列201をなす複数の半導体モジュール20のすべてをまとめて冷却する冷却器61と、第2列202をなす複数の半導体モジュール20のすべてをまとめて冷却する冷却器62を備えている。よって、出力導体30や電源導体31の配策を簡素化することができる。また、図5に示すように、板面同士が対向するように配置された出力導体30との干渉(接触)を防ぐことができる。これにより、冷却器60(51、52)の構造を簡素化し、電力変換装置4を低背化することができる。
【0077】
<変形例>
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態のいずれの構成とも組み合わせが可能である。
【0078】
冷却器61および冷却器62を一面22a上に配置する例を示したが、これに限定されない。裏面22b上に配置してもよい。
【0079】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0080】
図7は、本実施形態の電力変換装置4を示す平面図である。図8は、図7に示すX1方向から見た側面図である。図8では、便宜上、封止体22内に配置された要素を省略している。また、ケース40や電流センサ50を省略している。図7および図8では、コンデンサ70を簡素化して図示している。
【0081】
本実施形態では、第1実施形態に記載の構成に対して、電源導体31およびコンデンサ70を付け加えている。つまり、電力変換装置4が、電源導体31およびコンデンサ70をさらに備えている。電源導体31およびコンデンサ70を除く構成は、第1実施形態に記載の構成と同様である。
【0082】
コンデンサ70は、上記した平滑コンデンサ6を提供する。コンデンサ70は、たとえば図示しないケースと、ケースに収容されたコンデンサ素子などを備えている。電源導体31は、コンデンサ70と半導体モジュール20の電源端子24とを電気的に接続する配線部材である。電源導体31は、たとえば板状の金属部材として提供される。電源導体31は、電源バスバーと称されることがある。電源導体31は、はんだ接合、抵抗溶接、レーザ溶接などにより、対応する電源端子24に接続されている。
【0083】
電源導体31は、正極導体31Pと、負極導体31Nを含んでいる。正極導体31Pは、コンデンサ70の正極と半導体モジュール20のP端子24Pとを電気的に接続している。正極導体31Pは、正極バスバー、Pバスバーなどと称されることがある。正極導体31Pは、上記したPライン8の少なくとも一部をなしている。負極導体31Nは、コンデンサ70の負極と半導体モジュール20のN端子24Nとを電気的に接続している。負極導体31Nは、負極バスバー、Nバスバーなどと称されることがある。負極導体31Nは、上記したNライン9の少なくとも一部をなしている。
【0084】
図8では、電源導体31のうち、対応する電源端子24と接続するための端子部を図示している。正極導体31Pの端子部および負極導体31Nの端子部は、第1列201の側面22dから突出するP端子24PおよびN端子24Nと、第2列202の側面22dから突出するP端子24PおよびN端子24Nとに対応して設けられている。つまり、Y方向の両端側に、正極導体31Pの端子部および負極導体31Nの端子部がそれぞれ設けられている。なお、正極導体31Pおよび負極導体31Nのうち、図示しない部分の少なくとも一部が対向配置されてもよい。これにより、インダクタンスを低減することができる。
【0085】
半導体モジュール20に対するコンデンサ70の配置は、特に限定されない。たとえばXY面内において、半導体モジュール20と横並びとしてもよい。本実施形態では、Z方向の平面視において、複数の半導体モジュール20の少なくとも一部と重なるように配置されている。コンデンサ70は、Z方向において半導体モジュール20と並んでいる。コンデンサ70は、たとえば半導体モジュール20それぞれの少なくとも一部と重なるように配置されてもよい。コンデンサ70は、Z方向において封止体22の一面22a側に配置されてもよいし、裏面22b側に配置されてもよい。本実施形態では、裏面22b側に配置されている。
【0086】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4は、電源導体31およびコンデンサ70を備えるため、コンデンサ70を別部品とする構成に較べて、部品点数を削減することができる。
【0087】
本実施形態のコンデンサ70は、Z方向の平面視において、複数の半導体モジュール20の少なくとも一部と重なるように配置されている。これによれば、複数の半導体モジュール20が2列で配置され、内側面から出力端子23が突出し、外側面から電源端子24が突出する構成において、すべての電源端子24とコンデンサ70とが近づく。よって、電源導体31を配策しやすい。また、電源導体31の長さを短くし、インダクタンスを低減することができる。コンデンサ70を備える構成において、Z方向に直交する方向の体格を小型することもできる。
【0088】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態、第2実施形態のいずれの構成とも組み合わせが可能である。
【0089】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。
【0090】
図9は、本実施形態の電力変換装置4を示す断面図である。図9は、図8に対応している。図9では、便宜上、封止体22内に配置された要素や電流センサ50などを省略している。また、コンデンサ70を簡素化して図示している。
【0091】
本実施形態の電力変換装置4は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構成となっている。つまり電力変換装置4が、第1実施形態に記載の構成に対して、電源導体31、冷却器60、およびコンデンサ70をさらに備えている。さらに、ケース40を利用して冷却器60が提供される。
【0092】
ケース40は、電力変換装置4を構成する他の要素を収容する。本実施形態のケース40は、側壁41と、隔壁42を有している。側壁41は、Z方向に延びる筒状をなしている。側壁41は、たとえばZ方向からの平面視において略矩形状をなしている。隔壁42は、側壁41の内部に設けられている。隔壁42は、側壁41内の収容空間を2つに区分するように、側壁41の内面に連なっている。隔壁42は、たとえば平板状をなしている。ケース40は、たとえばZX面においてH状をなしている。隔壁42の一面上に半導体モジュール20が配置され、裏面にコンデンサ70が配置されている。隔壁42は、Z方向の平面視において、すべての半導体モジュール20とコンデンサ70を内包するように配置されている。隔壁42は、出力端子23との接続部を含む出力導体30の大部分を内包するように配置されている。
【0093】
隔壁42は、たとえば側壁41に連続して連なっている。このようなケース40は、アルミニウム系などの熱伝導性が良好な金属材料を用いて成形されている。たとえばアルミダイカストによる成形体である。隔壁42は、内部に流路421を有している。流路421には、図示しない導入管を介して冷媒602が供給される。流路421を流れた冷媒602は、図示しない排出管を介して排出される。流路421は、各半導体モジュール20およびコンデンサ70を効果的に冷却できるように設けられている。本実施形態の隔壁42は、2つの流路421を有している。流路421のひとつは第1列201の半導体モジュール20のそれぞれと重なるようにX方向に延び、他のひとつは第2列202の半導体モジュール20のそれぞれと重なるようにX方向に延びている。2つの流路421は、Z方向の平面視においてコンデンサ70と重なる。
【0094】
このように、ケース40の隔壁42は、冷却器63を提供する。冷却器63が、第3冷却器に相当する。本実施形態の冷却器60は、冷却器63に加えて、第2実施形態に記載の冷却器61、62を含んでいる。冷却器60は、Z方向において半導体モジュール20の両面に配置されている。冷却器61、62は封止体22の一面22a側から半導体モジュール20を冷却し、冷却器63は裏面22b側から冷却する。Z方向において、コンデンサ70、冷却器63(隔壁42)、半導体モジュール20、冷却器61、62の順に積層されている。
【0095】
隔壁42は、複数の貫通孔423を有している。貫通孔423は、Z方向に延び、隔壁42により区画された2つの収容空間に連通している。正極導体31Pは、コンデンサ70の収容された空間から、貫通孔423を通じて半導体モジュール20の収容された空間に延び、P端子24Pに接続されている。同様に、負極導体31Nは、コンデンサ70の収容された空間から、貫通孔423を通じて半導体モジュール20の収容された空間に延び、N端子24Nに接続されている。
【0096】
ケース40は、Z方向の両端に開口を有している。電力変換装置4は、図9に示すようにケース40の開口を閉塞するカバー45、46を備えてもよい。カバー45は半導体モジュール20側の収容空間の開口を閉塞し、カバー46はコンデンサ70側の収容空間の開口を閉塞している。ケース40およびカバー45、46は、筐体と称されることがある。なお、カバーを備えない構成において、ケース40内にポッティング樹脂などの充填材を配置することで、ケース40内に収容した要素を液密に封止してもよい。カバー45、46を備える構成において、ケース40とカバーとの対向部分などにシール材を配置することで、筐体の内部を液密に封止してもよい。
【0097】
電力変換装置4は、図9に示すように回路基板80を備えてもよい。回路基板80は、樹脂などの絶縁基材に配線が配置された配線基板と、配線基板に実装された図示しない電子部品を備えている。配線および電子部品は、回路を構成している。回路基板80には、上記した駆動回路7が構成されている。回路基板80は、ケース40に収容されている。回路基板80は、半導体モジュール20と共通の空間に収容されている。回路基板80は、半導体モジュール20に対して、隔壁42とは反対側に配置されている。回路基板80は、冷却器61、62の上方に配置されている。回路基板80は、Z方向の平面視においてすべての半導体モジュール20と重なるように配置されている。回路基板80には、半導体モジュール20が備える信号端子25が電気的に接続されている。
【0098】
その他の構成については、先行実施形態に記載した構成と同様である。なお、回路基板80については、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態のいずれにも適用することができる。
【0099】
<第4実施形態のまとめ>
並列接続された複数のスイッチング素子を同期してオンオフする場合、スイッチングスピードが高くなると、スイッチング素子同士を接続する導体のインダクタンスが影響してくる。夫々のスイッチング素子の主電極までの導体のインダクタンスがアンバランスだと、複数のスイッチング素子の低電位側の主電極に電位差が生じてしまう。特に、低電位側の主電極とゲート電極の電位差でオンオフが定まるタイプのスイッチング素子では、低電位側の主電極に電位差が生じると、複数のスイッチング素子のゲート間で電流が流れる。ゲート間に電流が流れると低電位側の電極の電位差が逆転する。これが繰り返されると発振現象が生じる。そのような発振現象はゲート発振と呼ばれている。
【0100】
本実施形態の電力変換装置4は、半導体モジュール20とコンデンサ70との間に介在する冷却器63を備えている。冷却器63は、Z方向において出力導体30U、30V、30Wそれぞれの少なくとも一部と対向している。冷却器63を構成する隔壁42に生じる渦電流による磁束打消し効果によって、出力導体30のインダクタンスを低減することができる。これにより、一相分の上アーム10Hを構成する4つのMOSFET13において、低電位側の主電極であるソース電極の電位差を小さくすることができる。よって、ゲート発振が生じるのを抑制することができる。
【0101】
また、ひとつの冷却器63により、半導体モジュール20とコンデンサ70を冷却することができる。なお、第2実施形態に記載のように、コンデンサ70を備えない構成において、出力導体30U、30V、30Wそれぞれの少なくとも一部と対向するように冷却器60を配置してもよい。この場合にも、渦電流による磁束打消し効果によって、出力導体30のインダクタンスを低減し、ゲート発振が生じるのを抑制することができる。
【0102】
電力変換装置4は、冷却器60として、冷却器63のみを備えてもよい。つまり、半導体モジュール20を片面側から冷却する構成としてもよい。本実施形態では、冷却器60を半導体モジュール20の両面に配置する。これにより、半導体モジュール20を効果的に冷却することができる。
【0103】
冷却器63を、ケース40とは別に設けてもよい。本実施形態では、ケース40の壁内に流路421を設け、ケース40を冷却器63として機能させる。これにより、部品点数を削減することができる。また、冷却器63を別部品とする構成に較べて、低背化することができる。
【0104】
ケース40における流路421の位置は、上記した例に限定されない。たとえば一面が開口する箱状のケースの場合、底壁に流路を設けてもよい。本実施形態では、ケース40に隔壁42を設け、隔壁42に流路421を設けている。これにより、ケース40を冷却器63として機能させつつ、冷却器63の一面で半導体モジュール20を冷却し、裏面でコンデンサ70を冷却することができる。これにより、Z方向に直交する方向の体格を小型化することができる。
【0105】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ひとつの半導体モジュール20がひとつの直列回路12を提供した。これに代えて、ひとつの半導体モジュール20がひとつのアームを提供する構成において、上記した種々の配置を適用してもよい。
【0106】
図10は、本実施形態の電力変換装置4の等価回路を示している。図11は、電力変換装置4を示す平面図である。図11は、図2に対応している。
【0107】
図10に示すように、インバータ5が備える各相の上下アーム回路10(10U、10V、10W)は、それぞれ直列回路12をひとつのみ有している。直列回路12は、2つのMOSFET13が直列接続されて構成されている。一相分の上下アーム回路10において、2つのMOSFET13により構成されている。
【0108】
図11に示すように、電力変換装置4は、インバータ5を構成する6つの半導体モジュール20を備えている。先行実施形態とは異なり、ひとつの半導体モジュール20は、ひとつのアーム10H、10Lを提供する。つまり、複数の半導体モジュール20は、上アーム10Hを構成する半導体モジュール20UH、20VH、20WHと、下アーム10Lを構成する半導体モジュール20UL、20VL、20WLを含んでいる。半導体モジュール20UH、20VH、20WHが上アームモジュールに相当し、半導体モジュール20UL、20VL、20WLが下アームモジュールに相当する。
【0109】
半導体モジュール20UH、20ULが、U相の上下アーム回路10Uを構成している。半導体モジュール20VH、20VLが、V相の上下アーム回路10Vを構成している。半導体モジュール20WH、20WLが、W相の上下アーム回路10Wを構成している。ひとつの半導体モジュール20は、ひとつのアームを構成するスイッチング素子と同数の半導体素子21を備えている。図示を省略するが、本実施形態の半導体モジュール20は、ひとつの半導体素子21をそれぞれ備えている。半導体モジュール20は、封止体22から突出する主端子として、ドレイン電極に電気的に接続されたドレイン端子と、ソース電極に電気的に接続されたソース端子を備えている。
【0110】
半導体モジュール20UH、20VH、20WHは、ドレイン端子26Dと、ソース端子26Sを備えている。半導体モジュール20UL、20VL、20WLは、ドレイン端子27Dと、ソース端子27Sを備えている。ドレイン端子26Dは電源端子(P端子)として機能し、ソース端子27Sは電源端子(N端子)として機能する。ソース端子26Sおよびドレイン端子27Dは、上アーム10Hと下アーム10Lとを接続するための中点端子、つまりモータジェネレータ3への出力端子として機能する。以下では、ドレイン端子26Dおよびソース端子27Sを電源端子26D、27Sと示し、ソース端子26Sおよびドレイン端子27Dを出力端子26S、27Dと示すことがある。
【0111】
6つの半導体モジュール20は、先行実施形態同様、3つずつ、2列で配置されている。U相の上下アーム回路10Uを構成する2つの半導体モジュール20UH、20ULは、第1列201をなすようにX方向に連続して並んでいる。W相の上下アーム回路10Wを構成する2つの半導体モジュール20WH、20WLは、第2列202をなすようにX方向に連続して並んでいる。半導体モジュール20WH、20WLは、Y方向において半導体モジュール20UH、20ULと対向するように配置されている。V相の上下アーム回路10Vを構成する2つの半導体モジュール20VH、20VLは、Y方向に並んでいる。半導体モジュール20VHは第1列201をなし、半導体モジュール20VLは第2列202をなしている。
【0112】
このように、半導体モジュール20VH、20VLのみがY方向に並んで配置されている。第1列201をなす3つの半導体モジュール20は、半導体モジュール20UH、半導体モジュール20UL、半導体モジュール20VHの順に並んでいる。第2列202をなす3つの半導体モジュール20は、半導体モジュール20WL、半導体モジュール20WH、半導体モジュール20VLの順に並んでいる。
【0113】
共通する相の2つの半導体モジュール20をひとつの片とみなすと、6つの半導体モジュール20はZ方向の平面視において略コの字状(略U字状)をなしている。U相が第1相、W相が第2相、V相が第3相に相当する。半導体モジュール20UH、20ULが第1モジュール、半導体モジュール20WH、20WLが第2モジュール、半導体モジュール20VH、20VLが第3モジュールに相当する。
【0114】
第1列201をなす半導体モジュール20の出力端子26S、27Dは、封止体22の側面のうち、第2列202との対向面から突出している。第2列202をなす半導体モジュール20の出力端子26S、27Dは、封止体22の側面のうち、第1列201との対向面から突出している。つまり、すべての出力端子26S、27D(中点端子)は、内側面から突出している。第1列201をなす半導体モジュール20の電源端子26D、27Sは、出力端子26S、27Dとは反対の側面から突出している。第2列202をなす半導体モジュール20の電源端子26D、27Sは、出力端子26S、27Dとは反対の側面から突出している。つまり、すべての電源端子26D、27Sは、外側面から突出している。
【0115】
複数の出力導体30は、先行実施形態と同様に配置されている。出力導体30Uは、X方向に並ぶ半導体モジュール20UH、20ULの出力端子26S、27Dを電気的に接続している。出力導体30Uは、半導体モジュール20UH、20ULを直列接続している。出力導体30Wは、X方向に並ぶ半導体モジュール20WH、20WLの出力端子26S、27Dを電気的に接続している。出力導体30Wは、半導体モジュール20WH、20WLを直列接続している。出力導体30Vは、半導体モジュール20VH、20VLの出力端子26S、27Dを電気的に接続している。出力導体30Vは、半導体モジュール20VH、20VLを直列接続している。
【0116】
出力導体30Vは、接続部301と、延設部302を有している。接続部301は、Y方向に延びる部分を含み、出力端子23を電気的に接続している。複数の出力導体30(30U、30V、30W)のそれぞれは、対応する出力端子26S、27Dの接続部分から、半導体モジュール20VH、20VLに対して遠ざかる方向に延びている。出力導体30Vの延設部302は、Y方向において出力導体30U、30Wの間に配置されている。3つの出力導体30は、Y方向において出力導体30U、出力導体30V、出力導体30Wの順に並んでいる。出力導体30は、X方向延設部分において板面同士が対向するように配置されている。その他の構成は、第1実施形態に記載の構成と同様である。
【0117】
<第5実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態では、6つの半導体モジュール20を、3つずつ、2列で配置している。そして、U相の上下アーム回路10Uを構成する2つの半導体モジュール20UH、20ULを第1列201に配置している。W相の上下アーム回路10Wを構成する2つの半導体モジュール20WH、20WLを第2列202に配置している。V相の上下アーム回路10Vを構成する半導体モジュール20VHを第1列201に配置し、半導体モジュール20VLを第2列202に配置している。
【0118】
これにより、出力導体30によって共通する相の出力端子26S、27D(中点端子)を電気的に接続した状態で、半導体モジュール20と出力導体30(中点導体)との接続構造体は略コの字状(略U字状)をなす。X方向において、接続構造体の一端は半導体モジュール20VH、20VLと出力導体30V(第3導体)の一部によって閉じており、他端は開放端である。X方向において、開口端側に出力導体30U、30V、30Wを引き出すことができるため、電力変換装置4を低背化することができる。
【0119】
本実施形態では、先行実施形態同様、出力導体30V(第3導体)の延設部302が、Y方向において出力導体30U(第1導体)と出力導体30W(第2導体)との間に配置されている。よって、電力変換装置4をより一層低背化することができる。
【0120】
本実施形態の出力導体30U、30V、30Wは、先行実施形態同様、Y方向において板面同士が対向するように配置されている。これにより、電力変換装置4のY方向の体格を小型化することができる。
【0121】
本実施形態の電源端子26D、27Sは、先行実施形態同様、出力端子26S、27Dとは反対の面から突出している。これにより、電源端子26D、27Sおよび電源導体31を避けた配策が不要となるため、出力端子26S、27Dの引き出しを簡素化することができる。
【0122】
<変形例>
6つの半導体モジュール20の配置は、上記した例に限定されない。第1実施形態に記載したように、半導体モジュール20の位置を入れ替えてもよい。
【0123】
一相分の上下アーム回路10を構成する直列回路12の数、つまり各相の半導体モジュール20の数は、ひとつに限定されない。複数としてもよい。2つの場合、たとえば第1列201は、半導体モジュール20UH、半導体モジュール20UL、半導体モジュール20UH、半導体モジュール20UL、半導体モジュール20VH、半導体モジュール20VHの順で並ぶ。第2列202は、半導体モジュール20WL、半導体モジュール20WH、半導体モジュール20WL、半導体モジュール20WH、半導体モジュール20VL、半導体モジュール20VLの順で並ぶ。
【0124】
各アーム10H、10Lを構成するスイッチング素子の数は、ひとつに限定されない。複数のスイッチング素子が並列接続されて各アーム10H、10Lを構成してもよい。この場合、半導体モジュール20は、各アーム10H、10Lを構成するスイッチング素子と同数の半導体素子21を備える。
【0125】
出力導体30の板面同士が対向する部分を、出力端子23に対してZ方向の上側に配置する例を示したが、これに限定されない。出力端子23に対して下側に配置してもよい。
【0126】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態のいずれの構成とも組み合わせが可能である
【0127】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0128】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0129】
ある要素または相が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の相に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在相が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または相に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在相は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0130】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0131】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。
【0132】
電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ5を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。電力変換装置4は、三相の上下アーム回路を備えるコンバータを構成する。上下アーム回路の中点は、インダクタに電気的に接続される。
【符号の説明】
【0133】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…駆動回路、8…Pライン、9…Nライン、10…上下アーム回路、10H…上アーム、10L…下アーム、11…出力ライン、12…直列回路、13…MOSFET、14…FWD、20、20U、20UH、20UL、20V、20VH、20VL、20W、20WH、20WL…半導体モジュール、21、21H、21L…半導体素子、22…封止体、22a…一面、22b…裏面、22c、22d、22e、22f…側面、23…出力端子、24…電源端子、24N…N端子、24P…P端子、25…信号端子、26D、27D…ドレイン端子、26S、27S…ソース端子、30、30U、30V、30W…出力導体、301…接続部、302…延設部、31…電源導体、31P…正極導体、31N…負極導体、40…ケース、41…側壁、42…隔壁、421…流路、422…冷媒、423…貫通孔、45、46…カバー、50…電流センサ、60…冷却器、601…流路、602…冷媒、61…第1冷却器、62…第2冷却器、63…第3冷却器、70…コンデンサ、80…回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11