(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241001BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01M7/00 D
(21)【出願番号】P 2021191005
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】近本 正幸
(72)【発明者】
【氏名】上島 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130279(JP,A)
【文献】特開2018-139519(JP,A)
【文献】特開2020-103178(JP,A)
【文献】特開2020-022490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0316616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら薬剤散布装置(400)で薬剤を散布する作業車両であって、
航法衛星(1000)からの衛星電波信号を受信する航法衛星受信装置(500)と、
前記航法衛星受信装置(500)からの入力信号に基づいて車速を検出する航法車速検出部(200)と、
車体(101)の走行伝動機構(102)の状態を検出する走行伝動センサー(600)と、
前記走行伝動センサー(600)からの入力信号に基づいて車速を検出する走行伝動車速検出部(300)と、
を備え、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における所定の不都合がないとき、前記航法車速検出部(200)により前記検出された車速が採用され、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合があるとき、前記走行伝動車速検出部(300)により前記検出された車速が採用され、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合は、前記航法衛星受信装置(500)のオフ状態、前記航法衛星受信装置(500)の不良状態、前記衛星電波信号の不良状態、および前記衛星電波信号が所定の補正電波信号により補正されていない状態の内の少なくとも一つに起因する不都合であることを特徴とする
作業車両。
【請求項2】
前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布噴圧を検出する薬剤散布噴圧センサー(700)を備え、
薬剤散布作業の制御が、前記採用された車速、および前記検出された薬剤散布噴圧に基づいて行われ、
前記採用された車速が所定の薬剤散布作業適正車速範囲から外れているとき、外部への報知が行われることを特徴とする請求項1
に記載の作業車両。
【請求項3】
前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム伸縮量を検出するブーム伸縮量センサー(811)と、
前記薬剤散布ブーム(410)の最縮みブーム位置に設けられた最縮みブーム位置スイッチ(812)と、
を備え、
前記最縮みブーム位置スイッチ(812)がオンされたとき、前記検出されたブーム伸縮量は最新の最縮みブーム伸縮量として書換え更新で記録されることを特徴とする請求項1
または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
車体(101)のハンドル操舵量を検出するハンドル操舵量センサー(900)と、
を備え、
車体左側または車体右側への旋回開始が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量は旋回開始ブーム昇降量として記録されるとともに、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は上昇させられ、
旋回終了が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量が前記記録された旋回開始ブーム昇降量に一致するまで、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は下降させられることを特徴とする請求項1
または2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム制振を行うブーム制振装置(420)と、
を備え、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降が前記検出されたブーム昇降量に基づいて判断されたとき、前記ブーム制振は休止されることを特徴とする請求項1
または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式防除機などのような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行しながら薬剤散布装置で薬剤を散布する、自走式防除機などのような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-028611号公報
【文献】特開2021-132617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された従来の自走式防除機などのような作業車両については、正確な車速の把握が必ずしも実現されていない。
【0005】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、車速をより正確に把握することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、走行しながら薬剤散布装置(400)で薬剤を散布する作業車両であって、
航法衛星(1000)からの衛星電波信号を受信する航法衛星受信装置(500)と、
前記航法衛星受信装置(500)からの入力信号に基づいて車速を検出する航法車速検出部(200)と、
車体(101)の走行伝動機構(102)の状態を検出する走行伝動センサー(600)と、
前記走行伝動センサー(600)からの入力信号に基づいて車速を検出する走行伝動車速検出部(300)と、
を備え、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における所定の不都合がないとき、前記航法車速検出部(200)により前記検出された車速が採用され、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合があるとき、前記走行伝動車速検出部(300)により前記検出された車速が採用され、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合は、前記航法衛星受信装置(500)のオフ状態、前記航法衛星受信装置(500)の不良状態、前記衛星電波信号の不良状態、および前記衛星電波信号が所定の補正電波信号により補正されていない状態の内の少なくとも一つに起因する不都合であることを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布噴圧を検出する薬剤散布噴圧センサー(700)を備え、
薬剤散布作業の制御が、前記採用された車速、および前記検出された薬剤散布噴圧に基づいて行われ、
前記採用された車速が所定の薬剤散布作業適正車速範囲から外れているとき、外部への報知が行われることを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
第3の本発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム伸縮量を検出するブーム伸縮量センサー(811)と、
前記薬剤散布ブーム(410)の最縮みブーム位置に設けられた最縮みブーム位置スイッチ(812)と、
を備え、
前記最縮みブーム位置スイッチ(812)がオンされたとき、前記検出されたブーム伸縮量は最新の最縮みブーム伸縮量として書換え更新で記録されることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
第4の本発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
車体(101)のハンドル操舵量を検出するハンドル操舵量センサー(900)と、
を備え、
車体左側または車体右側への旋回開始が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量は旋回開始ブーム昇降量として記録されるとともに、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は上昇させられ、
旋回終了が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量が前記記録された旋回開始ブーム昇降量に一致するまで、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は下降させられることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
第5の本発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム制振を行うブーム制振装置(420)と、
を備え、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降が前記検出されたブーム昇降量に基づいて判断されたとき、前記ブーム制振は休止されることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、走行しながら薬剤散布装置(400)で薬剤を散布する作業車両であって、
航法衛星(1000)からの衛星電波信号を受信する航法衛星受信装置(500)と、
前記航法衛星受信装置(500)からの入力信号に基づいて車速を検出する航法車速検出部(200)と、
車体(101)の走行伝動機構(102)の状態を検出する走行伝動センサー(600)と、
前記走行伝動センサー(600)からの入力信号に基づいて車速を検出する走行伝動車速検出部(300)と、
を備え、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における所定の不都合がないとき、前記航法車速検出部(200)により前記検出された車速が採用され、
前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合があるとき、前記走行伝動車速検出部(300)により前記検出された車速が採用されることを特徴とする作業車両である。
【0007】
本発明に関連する第2の発明は、前記航法衛星受信装置(500)から前記航法車速検出部(200)への前記入力信号における前記所定の不都合は、前記航法衛星受信装置(500)のオフ状態、前記航法衛星受信装置(500)の不良状態、前記衛星電波信号の不良状態、および前記衛星電波信号が所定の補正電波信号により補正されていない状態の内の少なくとも一つに起因する不都合であることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0008】
本発明に関連する第3の発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布噴圧を検出する薬剤散布噴圧センサー(700)を備え、
薬剤散布作業の制御が、前記採用された車速、および前記検出された薬剤散布噴圧に基づいて行われ、
前記採用された車速が所定の薬剤散布作業適正車速範囲から外れているとき、外部への報知が行われることを特徴とする本発明に関連する第1または第2の発明の作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第4の発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム伸縮量を検出するブーム伸縮量センサー(811)と、
前記薬剤散布ブーム(410)の最縮みブーム位置に設けられた最縮みブーム位置スイッチ(812)と、
を備え、
前記最縮みブーム位置スイッチ(812)がオンされたとき、前記検出されたブーム伸縮量は最新の最縮みブーム伸縮量として書換え更新で記録されることを特徴とする本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の作業車両である。
【0010】
本発明に関連する第5の発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
車体(101)のハンドル操舵量を検出するハンドル操舵量センサー(900)と、
を備え、
車体左側または車体右側への旋回開始が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量は旋回開始ブーム昇降量として記録されるとともに、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は上昇させられ、
旋回終了が前記検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)の前記ブーム昇降量が前記記録された旋回開始ブーム昇降量に一致するまで、前記旋回反対側の前記薬剤散布ブーム(410)は下降させられることを特徴とする本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の作業車両である。
【0011】
本発明に関連する第6の発明は、前記薬剤散布装置(400)の薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降量を検出するブーム昇降量センサー(820)と、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム制振を行うブーム制振装置(420)と、
を備え、
前記薬剤散布ブーム(410)のブーム昇降が前記検出されたブーム昇降量に基づいて判断されたとき、前記ブーム制振は休止されることを特徴とする本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、車速をより正確に把握することが可能である。なお、本発明により、上述された本発明の効果に加えて、車速の把握における利便性を向上することが可能である。
本発明に関連する第1の発明により、車速をより正確に把握することが可能である。
【0013】
本発明に関連する第2の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、車速の把握における利便性を向上することが可能である。
【0014】
本発明に関連する第3の発明により、本発明に関連する第1または第2の発明の効果に加えて、より正確な薬剤散布制御を行うことが可能である。
【0015】
本発明に関連する第4の発明により、本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の効果に加えて、利便性が向上された薬剤散布ブーム動作制御を行うことが可能である。
【0016】
本発明に関連する第5の発明により、本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の効果に加えて、利便性が向上された薬剤散布ブーム動作制御を行うことが可能である。
【0017】
本発明に関連する第6の発明により、本発明に関連する第1から第3のいずれかの発明の効果に加えて、利便性が向上された薬剤散布ブーム動作制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明における実施の形態の自走式防除機の斜視図
【
図2】(a)本発明における実施の形態の自走式防除機の薬剤散布ブーム近傍の模式的な部分平面図(その一)、(b)本発明における実施の形態の自走式防除機の薬剤散布ブーム近傍の模式的な部分平面図(その二)
【
図3】本発明における実施の形態の自走式防除機のブロック図
【
図4】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その一)
【
図5】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その二)
【
図6】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その三)
【
図7】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その四)
【
図8】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その五)
【
図9】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その六)
【
図10】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その七)
【
図11】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その八)
【
図12】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その九)
【
図13】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その十)
【
図14】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その十一)
【
図15】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その十二)
【
図16】本発明における実施の形態の自走式防除機の制御説明図(その十三)
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態、および本発明に関連する発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0021】
(A)はじめに、
図1から3を参照しながら、本発明における実施の形態の自走式防除機100の構成および動作について具体的に説明する。
【0022】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の自走式防除機100の斜視図であり、
図2(a)および2(b)は本発明における実施の形態の自走式防除機100の薬剤散布ブーム410近傍の模式的な部分平面図(その一および二)であり、
図3は本発明における実施の形態の自走式防除機100のブロック図である。
【0023】
自走式防除機100の動作について説明しながら、コントローラー150などにより実現される、本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法についても説明する。
【0024】
自走式防除機100は、車体101の操縦装置120における手動操縦操作または自動操縦操作のためのコントローラー150の制御に応じて、左右一対の前輪111および後輪112を有する走行装置110で走行しながら、薬剤散布装置400により圃場への薬剤散布を行うための自走式防除機である。
【0025】
自走式防除機100は、走行しながら薬剤散布装置400で薬剤を散布する作業車両であって、本発明における作業車両の例である。
【0026】
航法衛星受信装置500は、航法衛星1000からの衛星電波信号を受信する装置である。
【0027】
航法車速検出部200は、航法衛星受信装置500からの入力信号に基づいて車速を検出する検出部である。
【0028】
走行伝動センサー600は、車体101の走行伝動機構102の状態を検出するセンサーである。
【0029】
走行伝動車速検出部300は、走行伝動センサー600からの入力信号に基づいて車速を検出する検出部である。
【0030】
たとえば、走行車体である車体101の車速を検出する、衛星測位または回転センサーである走行伝動センサー600などのような車速検出手段と、GNSSなどの衛星である航法衛星1000との通信装置である航法衛星受信装置500とを有する作業車両において、車速検出手段は、座標二点間の距離/所要時間である、衛星の測位情報に基づき車速を検出する第1車速センサーである航法車速検出部200と、走行伝動系の回転数に基づき車速を検出する第2車速センサーである走行伝動車速検出部300と、を有する。
【0031】
薬剤散布噴圧センサー700は、薬剤散布装置400の薬剤散布噴圧を検出するセンサーである。
【0032】
たとえば、圃場に薬剤を散布する、薬剤タンクおよびブームスプレーヤーを有する薬剤散布装置400と、薬剤散布装置400の噴圧を検出する圧力センサーである薬剤散布噴圧センサー700と、車速および圧力から薬剤の散布量を制御する散布制御装置であるコントローラー150と、が利用される。
【0033】
ブーム伸縮量センサー811は、薬剤散布装置400の薬剤散布ブーム410のブーム伸縮量を検出するセンサーである。
【0034】
最縮みブーム位置スイッチ812は、薬剤散布ブーム410の最縮みブーム位置に設けられたスイッチである。
【0035】
主駆動モーター413のスプロケット413sにはチェーン413cが巻回されており、補助駆動モーター414のローラー414rにはケーブル414cが巻回されている。チェーン413cおよびケーブル414cはプレート415を介してスライド体416と連結されており、スライド体416がスライドすることにより、伸縮ブーム412が基本ブーム411に沿ってスライドする。
【0036】
たとえば、薬剤散布装置400の散布ブームである薬剤散布ブーム410のサイドブーム構成としては、機体基部側の固定ブームに、摺動可能なスライドブームが装着されており、モーターによりワイヤを動かすことで長さが所定範囲で調節可能である、ブーム伸縮可能構成が採用される。スライドブームの伸縮量を検出する伸縮センサーであるブーム伸縮量センサー811と、スライドブームの最縮み位置に端部検知スイッチである最縮みブーム位置スイッチ812と、が利用される。
【0037】
ブーム昇降量センサー820は、薬剤散布装置400の薬剤散布ブーム410のブーム昇降量を検出するセンサーである。
【0038】
ハンドル操舵量センサー900は、車体101のハンドル操舵量を検出するセンサーである。
【0039】
たとえば、走行車体である車体101を操舵操作する操舵ハンドルの操舵量と操舵方向を検出するポテンショメーターであるハンドル操舵量センサー900と、走行車体の左右両側に設ける散布ブームをそれぞれ昇降させるブーム昇降機構と、が利用される。ブーム昇降機構には、各散布ブームの上下動角度を検出するブーム角度センサーであるブーム昇降量センサー820が設けられる。
【0040】
ブーム制振装置420は、薬剤散布ブーム410のブーム制振を行う装置である。
【0041】
たとえば、散布ブームを昇降させる昇降リンク機構に散布ブームである薬剤散布ブーム410の上下振動を吸収するブーム制振装置420と、が利用される。ブーム制振装置420は、アキュムレーターと、アキュムレーターの効力を変更する制振ソレノイドと、を有する。
【0042】
(B)つぎに、本発明における実施の形態の自走式防除機100の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0043】
(B1)はじめに、
図3および4から11を主として参照しながら、説明する。
【0044】
ここに、
図4から11は、本発明における実施の形態の自走式防除機100の制御説明図(その一から八)である。
【0045】
航法衛星受信装置500から航法車速検出部200への入力信号における所定の不都合がないとき、航法車速検出部200により検出された車速が採用される。
【0046】
航法衛星受信装置500から航法車速検出部200への入力信号における所定の不都合があるとき、走行伝動車速検出部300により検出された車速が採用される。
【0047】
たとえば、衛星との通信が入状態で、且つ通信が可能であるときには第1車速センサーである航法車速検出部200の算出する車速を用いて他の制御、および画面表示が行われ、衛星との通信が切状態、あるいは入状態でありながら通信が機器の故障、または受信強度不足などのために途絶するときには第2車速センサーである走行伝動車速検出部300の算出する車速が用いられる。
【0048】
衛星との通信状態により、車速を第1車速センサーまたは第2車速センサーを用いて算出する構成により、衛星情報を使用しないとき、または衛星情報が十分に取得できない状況でも第2車速センサーを用いて車速を取得できるので、車速を用いる制御が中断されることや、作業者が車速を把握できなくなることが防止される。
【0049】
衛星情報が利用できるときは、実際の走行車体の移動に基づく第1車速センサーの算出する車速を利用できるので、より精度の高い作業走行が可能になる。
【0050】
図4の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1aからS3aで示されているように、GPS入り切り設定が「入り」のとき、アンテナからのCAN情報のGPS車速をメーターパネルの車速情報に送信して表示する。設定「切り」の時は、本機搭載の車速センサーのパルス数から車速を計算してメーターにCAN送信し、車速表示を行う。本機搭載の車速センサーのパルス入力で車速を指示する。GPS車速による制御が可能になり、精度向上が実現される。
【0051】
図5の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1bからS4bで示されているように、アンテナのCAN情報の測位ステータスが「ディファレンシャル補正車速を受信中」の時、GPS車速をメーターにCAN送信してGPS車速表示をし、上記以外の時は自動で本機搭載の車速センサーのパルス数から車速を計算した値に切替えて、計算車速をメーターに表示する。本機搭載の車速センサーのパルス入力で車速を指示する。GPS車速と計算車速の自動切換えができる。
【0052】
図6の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1cからS5cで示されているように、アンテナのCAN情報が断線,ショートして未受信の場合は、メーターパネルの車速表示を自動で計算車速にし、GPSマークを非表示にする。手動で切替えるのは、作業性が悪いことがあるが、このような不具合は改善される。
【0053】
図7の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1dからS4dで示されているように、自動散布モードの設定圧力の算出は、GPS入り切設定が「入り」でCAN通信の測位ステータス情報が「ディファレンシャル補正車速」受信中の時は、GPS車速を用いて算出する。制御精度が悪いことがあるが、このような不具合は改善できる。
【0054】
図8の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1eからS3eで示されているように、自動散布モードの設定圧力の算出は、アンテナのCAN通信できないときは、自動で計算車速を用いて算出する。手動切替えは作業性が悪いことがあるが、このような不具合は改善できる。
【0055】
図9のGPS車速連動範囲制御テーブルおよび
図10のGPS車速表示制御テーブルで示されているように、GPS入り切り設定が「入り」でディファレンシャル補正車速を受信中の時、GPS車速で制御する。計算車速で制御する際、精度は低下し得るが、実際の作業とはかけ離れた車速を適用して制御が行われることを防止できる。したがって、上記の不具合は改善できる。
【0056】
GPS入り切り設定が「入り」でディファレンシャル補正車速を未受信の時、GPS車速から計算車速に自動で切替えて制御する。手動で計算車速に切替えるのは、他の操作の妨げとなるので作業性が悪いことがあるが、このような不具合は改善できる。また、手動での計算車速への切替は忘れられる、あるいは作業者に無視される可能性があるので、自動変更されることにより、実態からかけ離れた車速を参考にした制御が行われ、薬剤が不足する、あるいは薬剤が過剰に散布されることが防止される。
【0057】
図11の制御フローチャートにおけるGPS車速制御取得制御ステップS1fからS4fで示されているように、設定が「入り」でアンテナの測位ステータスが「ディファレンシャル補正車速を未受信」の間は、液晶のGPSマークを点滅して表示する。GPS車速未受信のときにGPSマークを非表示にしただけでは、設定自身ができていないのか、CAN情報を受信できていないのかわかりにくいことがあるが、このような不具合は改善される。
【0058】
(B2)つぎに、
図3を主として参照しながら、説明する。
【0059】
航法衛星受信装置500から航法車速検出部200への入力信号における所定の不都合は、航法衛星受信装置500のオフ状態、航法衛星受信装置500の不良状態、衛星電波信号の不良状態、および衛星電波信号が所定の補正電波信号により補正されていない状態の内の少なくとも一つに起因する不都合である。
【0060】
たとえば、通信装置である航法衛星受信装置500が取得した衛星情報の精度を高めるべく、補正情報を発信する、DGPSの無線局、またはRTKの基地局などのような情報補正装置と、情報補正装置と通信する、走行車体の補正通信装置と、補正通信装置が情報補正装置と通信していることを表示する、メーターパネルのランプまたはアイコンなどのような表示部材と、が利用される。通信強度が十分な時は第1車速センサーである航法衛星受信装置500の算出する車速が用いられ、通信強度が弱いときは、第2車速センサーである走行伝動車速検出部300の算出する車速が用いられる。
【0061】
衛星および情報補正装置との通信が安定しているときに第1車速センサーの算出する車速を用いることにより、正確な車速に基づき作業できるので、作業精度の向上が図られる。
【0062】
(B3)つぎに、
図3を主として参照しながら、説明する。
【0063】
薬剤散布作業の制御が、採用された車速、および検出された薬剤散布噴圧に基づいて行われる。
【0064】
採用された車速が所定の薬剤散布作業適正車速範囲から外れているとき、外部への報知が行われる。
【0065】
たとえば、衛星、または衛星および情報補助装置との通信強度が十分であるときには第1車速センサーである航法車速検出部200の算出する車速が用いられ、不十分であるときは第2車速センサーである走行伝動車速検出部300の算出する車速が用いられる。
【0066】
検出される車速が、時速0.85~6km/hの範囲内であって20~300リットルの散布量の設定に連動して変化する、散布作業の適正車速を超えると、ブザーおよび画面表示の変化による報知が行われる。検出される車速が適正車速を下回ると、上述された画面表示の変化とは異なる色などによる画面表示の変化で報知が行われる。
【0067】
車速が薬剤の散布に適した適正車速を超えると、画面表示に加えて音声でも報知することにより、十分な薬剤が供給されないまま走行車体が通過してしまう距離を抑えることができ、薬剤の供給不足による生育不良および病害虫の発生が防止される。
【0068】
車速が薬剤の散布に適した車速を下回ると、画面表示で報知することにより、同じ箇所に設定量以上の薬剤が供給される距離を抑えることができ、不要な薬剤の消費、および供給過多による土壌汚染が防止される。
【0069】
(B4)つぎに、
図1から3を主として参照しながら、説明する。
【0070】
最縮みブーム位置スイッチ812がオンされたとき、検出されたブーム伸縮量は最新の最縮みブーム伸縮量として書換え更新で記録される。
【0071】
たとえば、端部検知スイッチである最縮みブーム位置スイッチ812がオンになると、伸縮センサーであるブーム伸縮量センサー811の検出値は最縮み基準位置として記録される、すなわち、コントローラー150のメモリのような不揮発メモリの数値が書換えられる。
【0072】
スライドブームを最も縮めた位置を最縮み基準位置として設定することにより、送りローラー、または伸縮ワイヤのスリップなどによるスライドブームの摺動時に誤検知の原因となる挙動が生じても、伸縮センサーの検出値が、物理的な摺動ができない位置である、所定の範囲外になることが防止されでき、伸縮制御の精度低下が防止される。
【0073】
左伸縮センサー基準値設定については、ブーム左最縮み位置にリミットスイッチである最縮みブーム位置スイッチ812を設け、スイッチをオンしたときに不揮発メモリの左伸縮センサー最縮み基準を自動で書き換える。作業中のブームの伸縮動作で、伸縮センサーであるブーム伸縮量センサー811のローラーとワイヤがスリップ等を起こし、検出値が適正範囲外になる場合があり、正しく制御できず、手動設定すると作業性が悪いことがあるが、このような不具合は改善される。
【0074】
右伸縮センサー基準値設定については、ブーム右最縮み位置にリミットスイッチである最縮みブーム位置スイッチ812を設け、スイッチをオンしたときに不揮発メモリの右伸縮センサー最縮み基準を自動で書き換える。作業中のブームの伸縮動作で、伸縮センサーであるブーム伸縮量センサー811のローラーとワイヤがスリップ等を起こし、検出値が適正範囲外になる場合があり、正しく制御できず、手動設定すると作業性が悪いことがあるが、このような不具合は改善される。
【0075】
伸縮センサー割込み表示については、左右に設けた伸縮センサーであるブーム伸縮量センサー811が制御基準範囲を超えたとき、割り込み表示して報知する。作業中のブームの伸縮動作で、伸縮センサーのローラーとワイヤがスリップ等を起こし、検出値が適正範囲外になる場合があり、ユーザーにセンサー調整を促す目的でメーターパネルに割込み表示を行わなければならないことがあるが、このような不具合は改善される。ユーザーにセンサー調整を促すことができる。
【0076】
(B5)つぎに、
図1から3および12から15を主として参照しながら、説明する。
【0077】
ここに、
図12から15は、本発明における実施の形態の自走式防除機100の制御説明図(その九から十二)である。
【0078】
車体左側または車体右側への旋回開始が検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、旋回反対側の薬剤散布ブーム410のブーム昇降量は旋回開始ブーム昇降量として記録されるとともに、旋回反対側の薬剤散布ブーム410は上昇させられる。
【0079】
旋回終了が検出されたハンドル操舵量に基づいて判断されたとき、旋回反対側の薬剤散布ブーム410のブーム昇降量が記録された旋回開始ブーム昇降量に一致するまで、旋回反対側の薬剤散布ブーム410は下降させられる。
【0080】
たとえば、ポテンショメーターであるハンドル操舵量センサー900が旋回とみなし得る操舵量を検出すると、ブーム角度センサーであるブーム昇降量センサー820が検出する現在の傾斜角度を記録するとともに、記録旋回方向と反対側である旋回方向外側のブーム昇降機構が作動させられて所定高さまで上昇させられる。ポテンショメーターが旋回終了とみなし得る操舵量を検出すると、散布ブームの上昇前にブーム角度センサーが記録した傾斜角度になるまで散布ブームは下降させられる。
【0081】
旋回操作が行われると、旋回方向とは反対側の散布ブームを上昇させる構成を採用することにより、旋回位置付近の壁または坂などを確実に回避させることができ、散布ブームの破損が防止される。ハンドルの操作で旋回終了が行われるとき、旋回前の散布ブームの作業高さへの自動的な下降が行われるので、旋回終了後に散布ブームの作業高さを旋回前に合わせて戻す操作が不要となり、操作性および作業能率が向上する。
【0082】
図12の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御ステップS1gからS5gで示されているように、旋回開始と判定すると旋回方向と反対側のブーム上昇リレーをオンする。旋回方向を左旋回と判定した時は、ブーム上昇目標値を右上下角センサー収納基準値にセットし、右側ブームの上昇出力を行う。旋回方向を左旋回と判定した時、右側ブームの所定時間上昇出力を行うと、上昇開始前のブーム位置によって、上昇後のブーム位置がばらばらになることがあるが、このような不具合は改善できる。
【0083】
図13の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御ステップS1hからS5hで示されているように、旋回開始と判定すると旋回方向と反対側のブーム上昇リレーをオンする。旋回方向を右旋回と判定した時は、ブーム上昇目標値を左上下角センサー収納基準値にセットし、左側ブームの上昇出力を行う。旋回方向を右旋回と判定した時、左側ブームの所定時間上昇出力を行うと、上昇開始前のブーム位置によって、上昇後のブーム位置がばらばらになることがあるが、このような不具合は改善できる。
【0084】
図14の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御ステップS1iからS5iで示されているように、
図12の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御で、旋回終了判定したら旋回開始判定で上昇させた右側のブーム下降リレーを上昇開始時のセンサー角度までオンする。旋回終了と判定すると旋回開始判定で上昇させた側のブーム下降リレーをオンする制御は複雑になり、下降したブームの位置も精度よく元の位置に戻らないことがあるが、このような不具合は改善できる。
【0085】
図15の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御ステップS1jからS5jで示されているように、
図13の制御フローチャートにおける旋回時ブーム昇降制御で、旋回終了判定したら旋回開始判定で上昇させた左側のブーム下降リレーを上昇開始時のセンサー角度までオンする。旋回終了と判定すると旋回開始判定で上昇させた側のブーム下降リレーをオンする制御は複雑になり、下降したブームの位置も精度よく元の位置に戻らないことがあるが、このような不具合は改善できる。
【0086】
(B6)つぎに、
図1から3および16を主として参照しながら、説明する。
【0087】
ここに、
図16は、本発明における実施の形態の自走式防除機100の制御説明図(その十三)である。
【0088】
薬剤散布ブーム410のブーム昇降が検出されたブーム昇降量に基づいて判断されたとき、ブーム制振は休止される。
【0089】
たとえば、制振ソレノイドは制御装置であるブーム制振装置420のオンとともにオンとなり、散布ブームである薬剤散布ブーム410の上昇中または下降中の所定範囲では、制振ソレノイドは停止させられる。
【0090】
ブーム制振装置420により、昇降操作される散布ブームが慣性で上下動して機体各部を傷つけることはほとんどなく、散布中に散布ブームが上下に跳ねて薬剤の散布位置にバラつきが出ることが防止される。散布ブームの昇降途中ではアキュムレーターに制振効果を発揮させないことにより、昇降中にハンチングなどが発生することが防止されるので、昇降動作に要する時間の短縮、および散布ブームへの大きな負荷の印加が防止される。
【0091】
図16の制振制御タイミングチャートで示されているように、コントローラー150への電源オンでブーム制振装置420の制振ソレノイドをオンし、全体昇降スイッチの上昇がオンした時に所定時間ソレノイドをオフする。全体昇降シリンダーに接続されたアキュムレーター駆動ソレノイド(制振ソレノイド)をメカニカルにオンオフすることにともない、ソレノイドオンのままでブームを上昇させると、上昇タイミングが遅く感じることがあるが、このような不具合は改善できる。
【0092】
コントローラー150への電源オンでブーム制振装置420の制振ソレノイドをオンし、右開閉センサー検出値≦右開閉センサー収納基準値+A(10°(A/D値:93))を検出の間は、制振ソレノイドをオフする。全体昇降シリンダーに接続されたアキュムレーター駆動ソレノイド(制振ソレノイド)をメカニカルにオンオフすることにともない、ソレノイドオンのままだとブーム収納状態の右ブーム及び右ブーム受けに負荷がかかることがあるが、このような不具合は改善できる。
【0093】
コントローラー150への電源オンでブーム制振装置420の制振ソレノイドをオンし、左開閉センサー検出値≦左開閉センサー収納基準値+A(10°(A/D値:93))を検出の間は、制振ソレノイドをオフする。全体昇降シリンダーに接続されたアキュムレーター駆動ソレノイド(制振ソレノイド)をメカニカルにオンオフすることにともない、ソレノイドオンのままだとブーム収納状態の左ブーム及び左ブーム受けに負荷がかかることがあるが、このような不具合は改善できる。
【0094】
コントローラー150への電源オンでブーム制振装置420の制振ソレノイドをオンし、左右ブームの展開または収納制御中の間は、制振ソレノイドをオフする。全体昇降シリンダーに接続されたアキュムレーター駆動ソレノイド(制振ソレノイド)をメカニカルにオンオフすることにともない、左右ブームの展開または収納制御中は、ブームのハンチングが発生することがあるが、このような不具合は改善できる。
【0095】
(C)つぎに、本発明に関連する発明における実施の形態の自走式防除機100の構成および動作について具体的に説明する。
【0096】
<防除機および作業機の水平制御(1)>
防除タンクを搭載する際、防除タンクと車体はタンクカプラ(図示省略)等を接続し、防除タンクを取り外す際はこのタンクカプラを非接続にする。このとき、カプラの接続、非接続からタンク無し(オープン判定)とタンクあり(ショート判定)を判定する構成とする。そして、防除タンク装着判定がオープン判定の時はブーム水平制御を無効にし、ショート判定の時はブーム水平制御を有効にする。
【0097】
これにより、車体側にブーム水平制御ユニット(例:VBS-C-Box等)を装着し、防除タンクの着脱に関係なく車体にブーム水平制御ユニットが装着されたままとなる構成としても、防除タンクを外すとブームの水平制御が行われなくなる。したがって、ブームの位置を修正する操作が不要になると共に、ブームが障害物に接触して破損することが防止される。
【0098】
<防除機および作業機の水平制御(2)>
防除タンク装着判定がタンク無し(オープン判定)の時、特殊操作、例えばブーム水平設定を手動に切り替えた状態で、左収納スイッチ押しながら手動下げ又は上げスイッチを押す、という操作で、ブームの手動操作を有効にする構成としてもよい。防除タンクを取り除いてブーム水平制御を切状態にしても、ブームを水平姿勢にする、あるいは圃場や作物の生育に合わせて傾斜させたいとき、特殊操作により手動でブームの傾斜角度を調節することができる。
【0099】
<展開および収納制御表示>
ブーム展開および収納制御中は、作業者に注意喚起する目的で、他の表示中であってもメーターパネルに割込み表示を行う。これにより、制御が行われていることを作業者に確実に報知できるので、作業者がブームの展開や収納中に不要な操作を行うことを防止できる。
【0100】
<一発収納後表示>
左右同時収納制御が終了したときは、所定時間割り込み表示を行うとともに、ブザー間欠吹鳴を行う。ブームの一発収納制御を行うと、ブーム受けまで完全に収納されないため、作業者に注意喚起する必要があり、右又は左収納制御実施時は作業中である場合が多いため、右又は左収納制御実施時に上記制御を行うと不都合が発生することがあるが、このような不具合は改善される。
【0101】
<ブーム夜間照明(1)>
左右ブームの先端に夜間照明を設ける。コンビネーションスイッチと連動する。照明がないと、ブーム展開状態での夜間作業は、ブーム先端の視認性が悪いために危険が発生し、作業ができないことがあるが、このような不具合は改善される。
【0102】
<ブーム夜間照明(2)>
左右ブームに複数個照明を設ける。コンビネーションスイッチと連動する。照明がないと、ブーム展開状態での夜間作業は、ブーム先端の視認性が悪いために危険が発生し、作業ができないことがあるが、このような不具合は改善される。
【0103】
<ブーム伸縮量表示>
噴霧コックスイッチ(左)がオン(散布状態)の時は、左ブーム伸縮量に応じてブームのバーグラフを点灯表示する。スイッチオフ(無散布状態)の時は、左ブームのバーグラフをすべて消灯表示とする。ブーム右についても同様である。従来構成では、ブーム伸縮量を手動操作に合わせて表示を切り替えると共に、散布幅データを収集しているが、手動操作量がメカロック、あるいは作業者の感覚ミスにより中途半端になっていると、無散布状態でも散布が表示されることがある。したがって、実体の作業性や精度が低下する等の問題が生じるおそれがあるが、このような不具合は改善される。
【0104】
<PTOレバー位置不適表示>
あらかじめ定められた条件が成立の間、「PTOレバー位置不適」表示してユーザーに報知する。散布モードが少量でPTO回転数を高回転にして作業すると、無駄な燃料消費と馬力不足になることがあるが、このような不具合は改善される。
【0105】
「あらかじめ定められた条件」とは、たとえば、薬剤の散布量が少量であり、且つPTOが高速回転に設定されるPTOレバー位置であり、不必要なPTO軸の回転により燃料消費の増大や、他の作業装置への出力不足が生じ得る設定が想定される。
【0106】
<操舵切換え中表示>
操舵モード切替え時のブザー鳴動条件が成立したときに、鳴動条件が成立の間ハンドルの切り方向を表示して報知する。ブザー吹鳴のみで、ハンドルの切方向がわからないと、作業者はタイヤ方向をみてハンドルの切り方向を判断する必要があるが、このような不具合は改善される。
【0107】
<展開収納制御の手動スイッチによる終了条件>
あらかじめ定められた条件の発生時、制御を終了する。展開収納制御中にすべての手動操作スイッチ押したら、制御を終了するので、実作業では、たとえば、右展開中に左ブームを操作したくても、右展開制御が終了してしまうことがあるが、このような不具合は改善される。
【0108】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0109】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0110】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0111】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0112】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0113】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0114】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0115】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明における作業車両は、車速をより正確に把握することができ、自走式防除機などのような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0117】
100 自走式防除機
101 車体
102 走行伝動機構
110 走行装置
111 前輪
112 後輪
120 操縦装置
150 コントローラー
200 航法車速検出部
300 走行伝動車速検出部
400 薬剤散布装置
410 薬剤散布ブーム
411 基本ブーム
412 伸縮ブーム
413 主駆動モーター
413s スプロケット
413c チェーン
414 補助駆動モーター
414r ローラー
414c ケーブル
415 プレート
416 スライド体
420 ブーム制振装置
500 航法衛星受信装置
600 走行伝動センサー
700 薬剤散布噴圧センサー
811 ブーム伸縮量センサー
812 最縮みブーム位置スイッチ
820 ブーム昇降量センサー
900 ハンドル操舵量センサー
1000 航法衛星