(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】身体機能検査装置、身体機能検査方法及び身体機能検査用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241001BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20241001BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241001BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241001BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20241001BHJP
【FI】
G16H10/00
B60R11/04
B60W40/08
B60W60/00
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2021192075
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】村上 涼
(72)【発明者】
【氏名】下川 真之介
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
(72)【発明者】
【氏名】余 淑芬
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健作
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-185985(JP,A)
【文献】特開2015-120419(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0139030(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
B60R 11/04
B60W 40/08
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択する対象者選択部と、
前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出する挙動検出部と、
前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価する評価部と
、
前記車両の動作を制御する車両制御部と、
を備
え、
前記車両制御部は、前記対象者の挙動又は前記対象者による入力に応じて、該対象者の身体機能検査が実施されるときの前記車両の揺れ具合を変更する、
身体機能検査装置。
【請求項2】
前記挙動検出部は、前記車両に設けられた荷重センサの出力に基づいて前記乗員の挙動を検出する、請求項1に記載の身体機能検査装置。
【請求項3】
前記荷重センサは前記車両の座席の座面に設けられている、請求項2に記載の身体機能検査装置。
【請求項4】
前記荷重センサは前記車両の吊革に設けられている、請求項2に記載の身体機能検査装置。
【請求項5】
前記荷重センサは前記車両の床に設けられている、請求項2に記載の身体機能検査装置。
【請求項6】
前記挙動検出部は、前記車両に設けられた車内カメラによって生成された画像に基づいて前記対象者の挙動を検出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の身体機能検査装置。
【請求項7】
前記車両制御部は、前記車両の加速及び減速を制御し、該車両の加減速度の上限値を変更することによって該車両の揺れ具合を変更する、請求項
1から6のいずれか1項に記載の身体機能検査装置。
【請求項8】
前記車両制御部は、前記車両に設けられた減衰力可変ダンパによって生成される減衰力を変更することによって該車両の揺れ具合を変更する、請求項
1から6のいずれか1項に記載の身体機能検査装置。
【請求項9】
身体機能検査に関する情報を通知する通知部を更に備える、請求項1から
8のいずれか1項に記載の身体機能検査装置。
【請求項10】
前記通知部は身体機能の評価結果を前記対象者に通知する、請求項
9に記載の身体機能検査装置。
【請求項11】
前記通知部は前記対象者を通知する、請求項
9又は10に記載の身体機能検査装置。
【請求項12】
前記通知部は身体機能検査の開始を前記対象者に通知する、請求項
9から11のいずれか1項に記載の身体機能検査装置。
【請求項13】
コンピュータにより実行される身体機能検査方法であって、
車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択することと、
前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出することと、
前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価することと
、
前記対象者の挙動又は前記対象者による入力に応じて、該対象者の身体機能検査が実施されるときの前記車両の揺れ具合を変更するように、前記車両の動作を制御することと、を含む、身体機能検査方法。
【請求項14】
車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択することと、
前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出することと、
前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価することと
、
前記対象者の挙動又は前記対象者による入力に応じて、該対象者の身体機能検査が実施されるときの前記車両の揺れ具合を変更するように、前記車両の動作を制御することと、
をコンピュータに実行させる、身体機能検査用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体機能検査装置、身体機能検査方法及び身体機能検査用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員の属性情報に基づいて乗員の転倒リスクを判定し、転倒リスクに応じて車両の走行制限を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗員の属性情報が乗員の転倒リスクを正確に反映していない可能性がある。また、バスのような車両の乗員は乗車中に時間を持て余すことが多く、乗車時間を有効活用するニーズが存在する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、乗車時間を利用して車両の乗員の身体機能を検査することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択する対象者選択部と、前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出する挙動検出部と、前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価する評価部とを備える、身体機能検査装置。
【0008】
(2)前記挙動検出部は、前記車両に設けられた荷重センサの出力に基づいて前記乗員の挙動を検出する、上記(1)に記載の身体機能検査装置。
【0009】
(3)前記荷重センサは前記車両の座席の座面に設けられている、上記(1)又は(2)に記載の身体機能検査装置。
【0010】
(4)前記荷重センサは前記車両の吊革に設けられている、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0011】
(5)前記荷重センサは前記車両の床に設けられている、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0012】
(6)前記挙動検出部は、前記車両に設けられた車内カメラによって生成された画像に基づいて前記対象者の挙動を検出する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0013】
(7)前記車両の動作を制御する車両制御部を更に備え、前記車両制御部は、前記対象者の挙動又は前記対象者による入力に応じて、該対象者の身体機能検査が実施されるときの前記車両の揺れ具合を変更する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0014】
(8)前記車両制御部は、前記車両の加速及び減速を制御し、該車両の加減速度の上限値を変更することによって該車両の揺れ具合を変更する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0015】
(9)前記車両制御部は、前記車両に設けられた減衰力可変ダンパによって生成される減衰力を変更することによって該車両の揺れ具合を変更する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0016】
(10)身体機能検査に関する情報を通知する通知部を更に備える、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0017】
(11)前記通知部は身体機能の評価結果を前記対象者に通知する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0018】
(12)前記通知部は前記対象者を通知する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0019】
(13)前記通知部は身体機能検査の開始を前記対象者に通知する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の身体機能検査装置。
【0020】
(14)コンピュータにより実行される身体機能検査方法であって、車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択することと、前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出することと、前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価することとを含む、身体機能検査方法。
【0021】
(15)車両の乗員の中から身体機能検査の対象者を選択することと、前記車両が走行しているときの前記対象者の挙動を検出することと、前記対象者の挙動に基づいて該対象者の身体機能を評価することとをコンピュータに実行させる、身体機能検査用コンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乗車時間を利用して車両の乗員の身体機能を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る身体機能検査装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、車両制御システムが設けられた車両の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、車両の内部を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態におけるECUのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、第一実施形態における身体機能検査処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る身体機能検査装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態におけるECUのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態における身体機能検査処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の第三実施形態に係る身体機能検査装置を含む身体機能検査システムの概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0025】
<第一実施形態>
最初に、
図1~
図5を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る身体機能検査装置を含む車両制御システム1の概略構成図である。本実施形態では、車両制御システム1は、
図2に示されるような車両70に設けられる。車両70は複数の乗員を輸送可能なバスである。例えば、車両70は、車両70の運行計画(運行ルート及び運行スケジュール)が予め定められた路線バス、又は予約情報等に応じて運行計画が決定されるデマンド型バスである。
【0026】
図1に示されるように、車両制御システム1は、車両状態検出装置2、乗員状態検出装置3、ヒューマン・マシン・インターフェース(Human Machine Interface(HMI))4及び電子制御ユニット(Electronic Control Unit(ECU))10を備える。車両状態検出装置2、乗員状態検出装置3及びHMI4は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU10に電気的に接続される。
【0027】
車両状態検出装置2は、車両70に設けられ、車両70の状態量を検出する。車両状態検出装置2は、例えば、車両70の現在位置(例えば車両70の緯度及び経度)を検出するGNSS受信機、車両70の速度を検出する車速センサ、車両70の加速度を検出する加速度センサ等を含む。車両状態検出装置2の出力、すなわち車両状態検出装置2によって検出された車両70の状態量はECU10に送信される。
【0028】
乗員状態検出装置3は、車両70に設けられ、乗員の状態を検出する。
図3は、車両70の内部を概略的に示す図である。図には一つの座席71及び一つの吊革72が示されているが、車両70は複数の座席71及び複数の吊革72を有する。
【0029】
本実施形態では、乗員状態検出装置3は、第1荷重センサ31、第2荷重センサ32、第3荷重センサ33及び車内カメラ34を含む。第1荷重センサ31~第3荷重センサ33はそれぞれ車両70の乗員の荷重を検出する。第1荷重センサ31~第3荷重センサ33の出力、すなわち第1荷重センサ31~第3荷重センサ33によって検出された乗員の荷重はECU10に送信される。
【0030】
第1荷重センサ31は、座席71の座面に設けられ、座面に作用する荷重、すなわち座席71に着座している乗員の荷重を検出する。なお、第1荷重センサ31は複数の座席71の一部(例えば一つ)にのみ設けられていてもよい。
【0031】
第2荷重センサ32は、吊革72に設けられ、吊革72に作用する荷重、すなわち吊革72を把持している乗員の荷重を検出する。なお、第2荷重センサ32は複数の吊革72の一部(例えば一つ)にのみ設けられていてもよい。
【0032】
第3荷重センサ33は、車両70の床73に設けられ、床73に作用する荷重、すなわち床73に立っている乗員の荷重を検出する。第3荷重センサ33は、吊革72を把持している乗員の両足の下に位置するように配置される。なお、第3荷重センサ33は複数の吊革72の一部(例えば一つ)の下の床にのみ設けられていてもよい。また、第3荷重センサ33の位置を示すマーク(例えば両足の形のマーク)が床73に描かれていてもよい。
【0033】
車内カメラ34は車両70の内部を撮影して画像を生成する。車内カメラ34は車両70の乗員を撮影するように車両70の天井74等に設けられる。車内カメラ34の出力、すなわち車内カメラ34によって生成された画像はECU10に送信される。なお、車内カメラ34は、車両70内の異なる位置に配置された複数のカメラであってもよい。
【0034】
HMI4は、車両70に設けられ、車両70と車両70の乗員との間で情報の授受を行う。HMI4は、車両70の乗員に情報を出力する出力部(例えば、ディスプレイ、スピーカ等)と、車両70の乗員によって情報が入力される入力部(例えば、タッチパネル、操作ボタン、操作スイッチ、マイクロフォン等)とを有する。ECU10の出力はHMI4を介して車両70の乗員に通知され、車両70の乗員からの入力はHMI4を介してECU10に送信される。HMI4は、入力装置、出力装置又は入出力装置の一例である。なお、車両70の乗員の携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)が、有線又は無線によってECU10と通信可能に接続され、HMI4として機能してもよい。
【0035】
ECU10は車両70の各種制御を実行する。
図1に示されるように、ECU10は、通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13を備える。通信インターフェース11及びメモリ12は信号線を介してプロセッサ13に接続されている。なお、本実施形態では、一つのECU10が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0036】
通信インターフェース11は、ECU10を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU10は通信インターフェース11を介して他の車載機器に接続される。通信インターフェース11はECU10の通信部の一例である。
【0037】
メモリ12は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ12は、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用されるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。
【0038】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。なお、プロセッサ13は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0039】
ところで、
図2に示されるバスのような車両70の乗員は乗車中に時間を持て余すことが多い。そこで、本実施形態では、車両70のECU10によって車両70の走行中に車両70の乗員の身体機能検査が実施される。すなわち、ECU10は、車両70の乗員の身体機能を検査する身体機能検査装置として機能する。
【0040】
車両70の走行中には車両70に揺れが生じ、車両70の乗員は揺れに対して自身の姿勢を維持しようとする。このとき、身体機能の高い人ほど、姿勢の維持が容易であり、バランスを崩すことが少ない。すなわち、車両70が走行しているときの車両70の乗員の挙動は乗員の身体機能と相関関係を有する。したがって、車両70の特性を利用して、車両70の走行中に車両70の乗員の身体機能を検査することができる。
【0041】
図4は、第一実施形態におけるECU10のプロセッサ13の機能ブロック図である。本実施形態では、プロセッサ13は、対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16及び通知部17を有する。対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16及び通知部17は、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、これら機能モジュールは、それぞれ、プロセッサ13に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0042】
対象者選択部14は車両70の乗員の中から身体機能検査の対象者(以下、単に「対象者」ともいう)を選択する。次いで、挙動検出部15は、車両70が走行しているときの対象者の挙動を検出し、評価部16は対象者の挙動に基づいて対象者の身体機能を評価する。このことによって、乗車時間を利用して車両70の乗員の身体機能を検査することができる。
【0043】
一方、通知部17は、身体機能検査に関する情報を通知する。例えば、通知部17は、対象者選択部14によって選択された対象者を通知する。このことによって、対象者が誰であるかを車両70の乗員に知らせることができる。また、通知部17は身体機能検査の開始及び終了を対象者に通知する。このことによって、身体機能検査が実施されていることを対象者に知らせることができる。また、通知部17は、評価部16によって得られた身体機能の評価結果を対象者に通知する。このことによって、車両70の乗員に自身の身体機能に関する情報を提供することができる。すなわち、車両70の乗員に移動以外の付加価値を提供することができる。
【0044】
以下、
図5を参照して、上述した処理の制御フローについて詳細に説明する。
図5は、第一実施形態における身体機能検査処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムに従ってECU10のプロセッサ13によって実行される。
【0045】
最初に、ステップS101において、対象者選択部14は、車両70に乗員が存在しているか否かを判定する。例えば、対象者選択部14は乗員状態検出装置3の出力に基づいて車両70の乗員を検出する。第1荷重センサ31によって車両70の乗員が検出された場合には、第1荷重センサ31が設けられた座席71に乗員が存在すると判定される。第2荷重センサ32によって車両70の乗員が検出された場合には、第2荷重センサ32が設けられた吊革72の下に乗員が存在すると判定される。第3荷重センサ33によって車両70の乗員が検出された場合には、第3荷重センサ33が設けられた床73の上に乗員が存在すると判定される。なお、対象者選択部14は、公知の画像認識技術(機械学習モデル等)を用いて、車内カメラ34によって生成された画像に基づいて車両70の乗員を検出してもよい。
【0046】
ステップS101において乗員が存在していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS101において乗員が存在していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。ステップS102では、対象者選択部14は車両70の乗員の中から対象者を選択する。例えば、一人のみの乗員が存在している場合、その乗員が対象者として選択される。一方、複数の乗員が存在している場合、複数の乗員の中から一人の対象者がランダムに選択される。なお、対象者として複数の乗員(例えば全ての乗員)が選択されてもよい。また、対象者選択部14は、HMI4を介して身体機能検査を希望した乗員を対象者として選択してもよい。
【0047】
次いで、ステップS103において、通知部17は車両70のHMI4を介して対象者を通知する。例えば、HMI4が、座席71の背面、吊革72等に設けられ、通知部17は、対象者の近傍のHMI4に、身体機能検査の対象者であることを表示する。
【0048】
次いで、ステップS104において、通知部17は対象者に身体機能検査の開始を通知する。例えば、通知部17は、対象者の近傍のHMI4に、身体機能検査が開始されることを表示する。なお、対象者が座席71に着座している乗員である場合には、通知部17は、HMI4を介して、座席71の背もたれから体を離すように対象者に指示してもよい。
【0049】
次いで、ステップS105において、挙動検出部15は乗員状態検出装置3の出力に基づいて対象者の挙動を検出する。すなわち、挙動検出部15は、第1荷重センサ31~第3荷重センサ33及び車内カメラ34の少なくとも一つの出力に基づいて対象者の挙動を検出する。
【0050】
次いで、ステップS106において、挙動検出部15は、身体機能検査が開始されてから所定時間(例えば1分~10分)が経過したか否かを判定する。所定時間は身体機能の検査時間に相当する。所定時間が経過していないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS105に戻る。一方、所定時間が経過したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。
【0051】
ステップS107では、通知部17は対象者に身体機能検査の終了を通知する。例えば、通知部17は、対象者の近傍のHMI4に、身体機能検査が終了したことを表示する。
【0052】
次いで、ステップS108において、評価部16は、挙動検出部15によって検出された対象者の挙動に基づいて対象者の身体機能を評価する。例えば、評価部16は、車両状態検出装置2(具体的には加速度センサ)によって検出された車両70の加速度と、挙動検出部15によって検出された対象者の挙動とを比較することによって対象者の身体機能を評価する。なお、車両70が加速しているときには車両70の加速度は正の値となり、車両70が減速しているときには車両70の加速度は負の値となる。
【0053】
第1荷重センサ31の出力に基づいて対象者の挙動が検出される場合には、評価部16は、車両70の加速度の絶対値に対して、座席71の座面に作用する荷重の中心位置のずれ量が小さいほど、対象者の身体機能の評価を高くする。第2荷重センサ32の出力に基づいて対象者の挙動が検出される場合には、評価部16は、車両70の加速度の絶対値に対して、吊革72に作用する荷重が小さいほど、対象者の身体機能の評価を高くする。第3荷重センサ33の出力に基づいて対象者の挙動が検出される場合には、評価部16は、車両70の加速度の絶対値に対して、対象者の両足によって床73に作用する荷重の中心位置のずれ量が小さいほど、対象者の身体機能の評価を高くする。車内カメラ34によって生成された画像に基づいて対象者の挙動が検出される場合には、評価部16は、車両70の加速度の絶対値に対して、画像解析によって得られる対象者の動作量が小さいほど、対象者の身体機能の評価を高くする。
【0054】
なお、評価部16は、車両70の加速度及び乗員状態検出装置3(第1荷重センサ31~第3荷重センサ33及び車内カメラ34の少なくとも一つ)の出力から対象者の身体機能の評価(例えば評価値)を出力するように予め学習された識別器を用いて対象者の身体機能を評価してもよい。この場合、乗員状態検出装置3として車内カメラ34が用いられる場合には、車内カメラ34によって生成された画像の時系列データが識別器に入力される。斯かる識別器の一例として、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト等の機械学習モデルが挙げられる。
【0055】
次いで、ステップS109において、通知部17は身体機能の評価結果を対象者に通知する。例えば、通知部17は対象者の近傍のHMI4に身体機能検査の評価結果を表示する。このとき、身体機能の評価結果は、例えば、所定の評価値(例えば、スコア、ランク、体幹年齢等)によって示される。なお、通知部17は、身体機能の評価結果に加えて、身体機能検査による推定消費カロリーを対象者に通知してもよい。また、通知部17は、身体機能の評価結果の格納場所に関する情報(QRコード(登録商標)、URL等)を対象者に通知することによって身体機能の評価結果を対象者に通知してもよい。この場合、対象者が格納場所にアクセスしたときに、身体機能の評価結果に応じた健康増進方法(例えば、推奨される運動)等が対象者に提供されてもよい。ステップS109の後、本制御ルーチンは終了する。
【0056】
なお、ステップS103、S104、ステップS107及びステップS109の少なくとも一つのステップにおいて、通知部17は視覚的な情報の代わりに又は視覚的な情報に加えて聴覚的な情報を通知してもよい。すなわち、通知部17はHMI4から音声を出力することによって身体機能検査に関する情報を通知してもよい。
【0057】
また、ステップS107は省略されてもよい。この場合、対象者は、身体機能の評価結果が通知されたときに身体機能検査の終了を知ることができる。また、ステップS103及びS104が省略され、身体機能検査が抜き打ちで実施されてもよい。また、ステップS109が省略され、身体機能の評価結果を対象者に通知する代わりに、身体機能の評価結果に基づく車両70の走行制限等が行われてもよい。
【0058】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る車両制御システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両制御システムと同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0059】
図6は、本発明の第二実施形態に係る身体機能検査装置を含む車両制御システム1’の概略構成図である。第二実施形態では、車両制御システム1’はアクチュエータ5及び減衰力可変ダンパ6を更に備える。アクチュエータ5及び減衰力可変ダンパ6は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU10に電気的に接続される。
【0060】
アクチュエータ5は、車両70に設けられ、車両70を動作させる。例えば、アクチュエータ5は、車両70の加速のための駆動装置(例えば内燃機関及び電動機の少なくとも一方)と、車両70の減速(制動)のためのブレーキアクチュエータと、車両70の操舵のためのステアリングモータとを含む。ECU10はアクチュエータ5を制御して車両70の挙動を制御する。すなわち、第二実施形態では、車両70は、車両70の加速、操舵及び減速(制動)の一部又は全てが自動的に実行される自動運転車両である。
【0061】
減衰力可変ダンパ6は、サスペンションスプリングと共に車両70に設けられ、路面からの衝撃によって生じるサスペンションスプリングの振動を吸収する。また、減衰力可変ダンパ6は、電磁弁を用いた公知の構成により、減衰力可変ダンパ6によって生成される減衰力を調整することができる。ECU10は減衰力可変ダンパ6を制御して減衰力を調整する。なお、減衰力可変ダンパ6は減衰力可変ショックアブソーバとも称される。
【0062】
図7は、第二実施形態におけるECU10のプロセッサ13の機能ブロック図である。第二実施形態では、プロセッサ13は、対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16及び通知部17に加えて、車両制御部18を有する。対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16、通知部17及び車両制御部18は、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、これら機能モジュールは、それぞれ、プロセッサ13に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0063】
車両制御部18は車両70の動作を制御する。例えば、車両制御部18はアクチュエータ5を用いて車両70の加速及び減速を制御する。
【0064】
上述したように、身体機能検査装置として機能するECU10は、車両70が走行しているときの車両70の乗員の挙動に基づいて、乗員の身体機能を評価する。しかしながら、身体機能の検査に適した負荷は車両70の乗員毎に異なる。また、車両70の揺れ具合が大きいほど、車両70の乗員にとって姿勢の維持が困難となる。
【0065】
このため、第二実施形態では、車両制御部18は、身体機能検査の対象者の挙動又は対象者による入力に応じて、対象者の身体機能検査が実施されるときの車両70の揺れ具合を変更する。このことによって、対象者に適切な負荷を課すことができ、対象者の身体機能をより適切に検査することができる。
【0066】
図8は、第二実施形態における身体機能検査処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムに従ってECU10のプロセッサ13によって実行される。
【0067】
ステップS201~S205は
図5のステップS101~S105と同様に実行される。ステップS205の後、ステップS206において、車両制御部18は、身体機能検査中の対象者の挙動に基づいて車両70の揺れ具合を変更する。具体的には、車両制御部18は、対象者の姿勢の安定度が高い場合には、対象者の姿勢の安定度が低い場合と比べて、車両70の揺れ具合を大きくする。
【0068】
例えば、車両制御部18は車両70の加減速度の上限値を変更することによって車両70の揺れ具合を変更する。この場合、車両70の加減速度の上限値が大きいほど、車両70の揺れ具合は大きくなる。すなわち、車両制御部18は、車両70の揺れ具合を大きくするときには車両70の加減速度の上限値を大きくし、車両70の揺れ具合を小さくするときには車両70の加減速度の上限値を小さくする。また、車両制御部18は、減衰力可変ダンパ6によって生成される減衰力を変更することによって車両70の揺れ具合を変更してもよい。この場合、減衰力が小さいほど、車両70の揺れ具合は大きくなる。すなわち、車両制御部18は、車両70の揺れ具合を大きくするときには減衰力を小さくし、車両70の揺れ具合を小さくするときには減衰力を大きくする。
【0069】
なお、車両制御部18は対象者による入力に基づいて車両70の揺れ具合を変更してもよい。この場合、対象者は負荷の増減要求等をHMI4に入力し、入力結果がECU10に送信される。車両制御部18は、負荷の増加が要求されたときには車両70の揺れ具合を大きくし、負荷の減少が要求されたときには車両70の揺れ具合を小さくする。
【0070】
ステップS206の後、ステップS207において、
図5のステップS106と同様に、挙動検出部15は、身体機能検査が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していないと判定された場合、ステップS205及びステップS206が再び実行される。一方、所定時間が経過したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS208に進む。ステップS208~S210は
図5のステップS107~S109と同様に実行される。
【0071】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る車両制御システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両制御システムと同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0072】
図9は、本発明の第三実施形態に係る身体機能検査装置を含む身体機能検査システム100の概略的な構成図である。身体機能検査システム100はサーバ40及び車両70を備える。サーバ40はキャリア網又はインターネット網のような通信ネットワーク50と無線基地局60とを介して車両70と通信可能である。すなわち、サーバ40は広域通信を介して車両70と通信可能である。
【0073】
図10は、サーバ40の構成を概略的に示す図である。サーバ40は、通信インターフェース41、ストレージ装置42、メモリ43及びプロセッサ44を備える。通信インターフェース41、ストレージ装置42及びメモリ43は、信号線を介してプロセッサ44に接続されている。なお、サーバ40は、キーボード及びマウスのような入力装置、ディスプレイのような出力装置等を更に備えていてもよい。また、サーバ40は複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0074】
通信インターフェース41は、サーバ40を通信ネットワーク50に接続するためのインターフェース回路を有する。サーバ40は通信ネットワーク50を介してサーバ40の外部(例えば車両70)と通信する。通信インターフェース41はサーバ40の通信部の一例である。
【0075】
ストレージ装置42は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SDD)又は光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。ストレージ装置42は、各種データを記憶し、例えば、地図情報、車両70の情報(識別情報、位置情報等)、プロセッサ44が各種処理を実行するためのコンピュータプログラム等を記憶する。ストレージ装置42はサーバ40の記憶部の一例である。
【0076】
メモリ43は不揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)を有する。メモリ43は、例えばプロセッサ44によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を一時的に記憶する。メモリ43はサーバ40の記憶部の別の一例である。
【0077】
プロセッサ44は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ44は、論理演算ユニット、数値演算ユニット又はグラフィック処理ユニットのような他の演算回路を更に有していてもよい。
【0078】
第三実施形態では、サーバ40がECU10の代わりに身体機能検査装置として機能し、サーバ40のプロセッサ44が、対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16及び通知部17を有する。この場合、対象者選択部14、挙動検出部15、評価部16及び通知部17は、サーバ40のストレージ装置42に記憶されたコンピュータプログラムをサーバ40のプロセッサ44が実行することによって実現される機能モジュールである。
【0079】
したがって、第三実施形態では、
図5の身体機能検査処理の制御ルーチンがサーバ40のプロセッサ44によって実行される。このとき、必要に応じて車両状態検出装置2及び乗員状態検出装置3の出力が車両70からサーバ40に送信され、サーバ40は、車両70のECU10を介して、身体機能検査に関する情報を通知する。
【0080】
なお、ECU10及びサーバ40が身体機能検査装置として機能してもよい。この場合、例えば、ECU10のプロセッサ13が、対象者選択部14、挙動検出部15及び通知部17を有し、サーバ40のプロセッサ44が評価部16を有する。
【0081】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、車両70は、タクシー、自家用車等であってもよい。
【0082】
また、ECU10のプロセッサ13又はサーバ40のプロセッサ44が有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリである。
【0083】
また、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施可能である。第二実施形態と第三実施形態とが組み合わされる場合には、
図8の身体機能検査処理の制御ルーチンがサーバ40のプロセッサ44によって実行される。この場合、サーバ40の車両制御部18はECU10を介して車両70の揺れ具合を変更する。
【符号の説明】
【0084】
10 電子制御ユニット(ECU)
13 プロセッサ
14 対象者選択部
15 挙動検出部
16 評価部
40 サーバ
44 プロセッサ
70 車両