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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電源監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/10 20060101AFI20241001BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02J1/10
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
B60R16/03 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021205405
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2023090443
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲生
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168538(JP,A)
【文献】特開2020-109731(JP,A)
【文献】特開2018-57179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/10
H02J 7/00
B60R 16/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源(10)を有する第1系統(ES1)と、第2電源(16)を有する第2系統(ES2)とを備え、前記第1系統及び前記第2系統が系統間スイッチ(SWA)により互いに接続可能となっており、システム稼働状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して、前記各系統に接続されている電気負荷に対する電力供給を行う電源システム(100)に適用され、
前記第1電源は、前記電気負荷の動作電圧を生成する電圧生成部(12)を有し、
前記第2電源は、前記電圧生成部により充電可能な蓄電装置(16)を有し、
システム稼働状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して前記電圧生成部により前記蓄電装置の充電を行わせる充電制御部(25)と、
システム停止状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して前記蓄電装置から前記電気負荷に暗電流供給を行わせる暗電流供給部(24)と、
を備える、電源監視装置(21)。
【請求項2】
前記充電制御部は、
システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記電気負荷の電源バックアップが可能な容量である下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせる第1充電部(25A)と、
システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記下限容量よりも小さく且つ前記電気負荷の暗電流供給が可能な容量である容量閾値まで低下した場合に、当該蓄電装置の充電を行わせる第2充電部(25B)と、
を有する、請求項1に記載の電源監視装置。
【請求項3】
車両に搭載された電源システムであって、
前記電気負荷は、前記車両において運転支援機能を実施する負荷であり、
前記第1充電部は、システム稼働状態下において、前記運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量を前記下限容量とし、前記蓄電装置の残存容量が前記下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせ、
前記第2充電部は、システム停止状態下において、前記下限容量よりも小さい容量を前記容量閾値とし、前記蓄電装置の残存容量が前記容量閾値まで低下した場合に当該蓄電装置の充電を行わせる、請求項2に記載の電源監視装置。
【請求項4】
システム停止状態からシステム稼働状態への移行後に前記運転支援が開始される開始タイミングを予測する予測部(26)を備え、
前記第2充電部は、前記開始タイミングに基づいて前記容量閾値を設定する、請求項3に記載の電源監視装置。
【請求項5】
前記第2充電部は、システム停止状態下での前記蓄電装置の放電に伴う残存容量の変化率に基づいて前記容量閾値を設定する、請求項2~4までのいずれか一項に記載の電源監視装置。
【請求項6】
前記第1充電部は、システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量の上限を第1上限値として当該蓄電装置の充電を行わせ、
前記第2充電部は、システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量の上限を、前記第1上限値よりも小さい第2上限値として当該蓄電装置の充電を行わせる、請求項2~5のいずれか一項に記載の電源監視装置。
【請求項7】
車両に搭載された電源システムであって、
前記電気負荷は、前記車両において運転支援機能を実施する負荷であり、
前記充電制御部は、
システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量である下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせる第1充電部(25A)と、
システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量が前記下限容量まで低下した場合に当該蓄電装置の充電を行わせる第2充電部(25B)と、
を有する、請求項1に記載の電源監視装置。
【請求項8】
前記電気負荷は、前記システム停止状態下において暗電流供給が必要な供給負荷と、暗電流供給が不要な供給不要負荷とを含み、前記各系統において、前記供給不要負荷に繋がる通電経路に系統内スイッチ(SWC)が設けられており、
前記暗電流供給部は、システム停止状態下において、前記系統内スイッチを開放し、且つ前記系統間スイッチを閉鎖して前記蓄電装置から前記供給負荷に暗電流供給を行わせる、請求項1~7のいずれか一項に記載の電源監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両に適用され、この車両の各種装置に電力を供給する電源システムが知られている。また、電源システムにおいて、車両の運転時に、例えば電動ブレーキ装置や電動ステアリング装置など、車両の運転に必要な機能を実施する電気負荷に異常が生じた場合でも、その機能が失われないようにするために、電気負荷に電力を供給する電源として第1電源及び第2電源を有する電源システムが知られている。
【0003】
この電源システムとして、例えば特許文献1では、第1電源を有する第1系統と、第2電源を有する第2系統と、を備えるものが開示されている。この装置では、各系統を接続する接続経路に系統間スイッチが設けられており、一方の系統で異常が発生し、接続経路を通じて電流閾値を超える電流が流れた場合に、制御装置により系統間スイッチは開状態とされる。これにより、異常が発生していない他方の系統の負荷により車両の運転に必要な機能が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-62727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電源システムにおいて、第2電源として蓄電池を設け、その蓄電池を第1電源からの電力供給により充電する構成が考えられる。この場合、システム稼働状態下における電気負荷の電源バックアップが可能となるように蓄電池が充電される。しかしながら、いずれの系統でも異常が発生していない通常状態での使用が継続的に行われることを想定すると、第2系統側の蓄電池において単に充電と自然放電とが繰り返されるだけであり、電力効率等の観点から改善の余地があると考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電源システムにおける電源を冗長化しつつ、冗長化した各電源の電力を効率的に利用できる電源監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、第1電源を有する第1系統と、第2電源を有する第2系統とを備え、前記第1系統及び前記第2系統が系統間スイッチにより互いに接続可能となっており、システム稼働状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して、前記各系統に接続されている電気負荷に対する電力供給を行う電源システムに適用され、前記第1電源は、前記電気負荷の動作電圧を生成する電圧生成部を有し、前記第2電源は、前記電圧生成部により充電可能な蓄電装置を有し、システム稼働状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して前記電圧生成部により前記蓄電装置の充電を行わせる充電制御部と、システム停止状態下において、前記系統間スイッチを閉鎖して前記蓄電装置から前記電気負荷に暗電流供給を行わせる暗電流供給部と、を備える。
【0008】
上記構成では、電圧生成部を有する第1電源と、蓄電装置を有する第2電源とを備えており、これら各電源から電気負荷への冗長的な電力供給が可能となっている。この場合、システム稼働状態下において、系統間スイッチが閉鎖された状態で電圧生成部により蓄電装置の充電が行われるため、仮に第1系統側での電源失陥が生じても、第2系統側の蓄電装置の電力により負荷駆動の継続が可能となっている。また、システム停止状態下において、系統間スイッチが閉鎖された状態で蓄電装置から電気負荷への暗電流供給が行われる。この場合、蓄電装置は、第1系統側での電源失陥に備えて蓄電状態となっており、その蓄電装置の電力の有効利用を図りつつ、電気負荷への暗電流供給を好適に実施することができる。これにより、電源システムにおける電源冗長化と各電源の電力の効率的な利用とを適正に実現することができる。
【0009】
第2の手段では、前記充電制御部は、システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記電気負荷の電源バックアップが可能な容量である下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせる第1充電部と、システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記下限容量よりも小さく且つ前記電気負荷の暗電流供給が可能な容量である容量閾値まで低下した場合に、当該蓄電装置の充電を行わせる第2充電部と、を有する。
【0010】
上記構成では、システム停止状態下において充電が行われる容量閾値が、システム稼働状態下において電気負荷の電源バックアップが可能な容量である下限容量よりも小さい値に設定されている。ここで、電源バックアップが可能な容量とは、システム稼働状態下において第1系統側での電源失陥が生じた場合でも、第2系統に接続されている電気負荷の駆動の継続を可能とする電力容量を指す。この場合、システム停止状態下において、暗電流供給に使用可能な蓄電装置の容量範囲が拡大され、蓄電装置の残存容量がシステム稼働状態の下限容量よりも低くなっても暗電流供給が行われる。これにより、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数を少なくすることができる。
【0011】
第3の手段では、車両に搭載された電源システムであって、前記電気負荷は、前記車両において運転支援機能を実施する負荷であり、前記第1充電部は、システム稼働状態下において、前記運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量を前記下限容量とし、前記蓄電装置の残存容量が前記下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせ、前記第2充電部は、システム停止状態下において、前記下限容量よりも小さい容量を前記容量閾値とし、前記蓄電装置の残存容量が前記容量閾値まで低下した場合に当該蓄電装置の充電を行わせる。
【0012】
上記構成では、運転支援機能を実施する電気負荷を有する車両に適用される電源システムにおいて、システム停止状態下で充電が行われる容量閾値が、運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量である下限容量よりも小さい値に設定されている。これにより、運転支援の実施時における電気負荷の電源バックアップを適正に行わせつつ、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数を少なくすることができる。
【0013】
第4の手段では、システム停止状態からシステム稼働状態への移行後に前記運転支援が開始される開始タイミングを予測する予測部を備え、前記第2充電部は、前記開始タイミングに基づいて前記容量閾値を設定する。
【0014】
システム停止状態下で蓄電装置の残存容量が下限容量よりも低下すると、システム起動時において蓄電装置の残存容量が下限容量よりも低く、蓄電装置の残存容量が下限容量以上に充電されるまで運転支援の開始が待たされることがあり得る。この点、上記構成では、システム停止状態からシステム稼働状態への移行後に運転支援が開始される開始タイミングを予測し、その開始タイミングに基づいて容量閾値を設定するようにした。例えば、システム稼働状態への移行後における運転支援の開始タイミングが比較的早ければ、容量閾値が高めに設定されるとよい。これにより、電源システムの起動後において、所望のタイミングで運転支援を開始することができる。
【0015】
第5の手段では、前記第2充電部は、システム停止状態下での前記蓄電装置の放電に伴う残存容量の変化率に基づいて前記容量閾値を設定する。
【0016】
例えばシステム停止状態下において使用状態の電気負荷に対して蓄電装置からの放電が行われると、電気負荷に対する暗電流とともに駆動電流が供給されることにより、システム停止状態下における蓄電装置の残存容量の変化率が大きくなり、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数が増加することが懸念される。この点、上記構成では、システム停止状態下での蓄電装置の放電に伴う残存容量の変化率に基づいて容量閾値を設定するようにした。例えば、システム低下状態下での蓄電装置の残存容量の変化率が大きければ、容量閾値が低めに設定されるとよい。これにより、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数を好適に少なくすることができる。
【0017】
第6の手段では、前記充電制御部は、前記第1充電部は、システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量の上限を第1上限値として当該蓄電装置の充電を行わせ、前記第2充電部は、システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量の上限を、前記第1上限値よりも小さい第2上限値として当該蓄電装置の充電を行わせる。
【0018】
システム稼働状態下では、蓄電装置の残存容量が高容量に維持されることで電気負荷の電源バックアップを適正に行うことができる。しかし、蓄電装置の残存容量が高容量に維持される期間が長期化すると、蓄電装置が劣化しやすくなることが懸念される。この点、上記構成では、システム停止状態下における蓄電装置の充電上限値である第2上限値が、システム稼働状態下における蓄電装置の充電上限値である第1上限値よりも小さい値に設定されている。この場合、システム稼働状態下においては蓄電装置の残存容量が高容量に維持され、システム停止状態下においては蓄電装置の残存容量が低容量に維持される。これにより、システム稼働状態下における電気負荷の電源バックアップを適正に行わせつつ、蓄電装置の劣化を抑制することができる。
【0019】
第7の手段では、車両に搭載された電源システムであって、前記電気負荷は、前記車両において運転支援機能を実施する負荷であり、前記充電制御部は、システム稼働状態下において、前記蓄電装置の残存容量が、前記運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量である下限容量以上となるように当該蓄電装置の充電を行わせる第1充電部と、システム停止状態下において、前記蓄電装置の残存容量が前記下限容量まで低下した場合に当該蓄電装置の充電を行わせる第2充電部と、を有する。
【0020】
上記構成によれば、システム停止状態下において、蓄電装置の残存容量が、運転支援の実施時における電源バックアップが可能な容量である下限容量まで低下した場合に、蓄電装置の充電が行われる。この場合、システム停止状態下において蓄電装置の残存容量が下限容量よりも高い残存容量で維持されるため、電源システムの起動直後であっても蓄電装置による運転支援の電源バックアップが可能となる。これにより、システム起動直後において運転支援をいち早く開始することができる。
【0021】
第8の手段では、前記電気負荷は、前記システム停止中に暗電流供給が必要な供給負荷と、暗電流供給が不要な供給不要負荷とを含み、前記各系統において、前記供給不要負荷に繋がる通電経路に系統内スイッチが設けられており、前記暗電流供給部は、システム停止状態下において、前記系統内スイッチを開放し、且つ前記系統間スイッチを閉鎖して前記蓄電装置から前記供給負荷に暗電流供給を行わせる。
【0022】
上記構成によれば、システム停止状態下における蓄電装置から電気負荷への暗電流供給時において、系統内スイッチが開放されることで供給不要負荷に暗電流供給されることが抑制される。これにより、システム停止状態下において、蓄電装置の暗電流供給量を抑制することができ、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態における電源システムの全体構成図。
図2】制御処理の手順を示すフローチャート。
図3】第1実施形態における蓄電池のSOCの推移を示すタイムチャート。
図4】第2実施形態における蓄電池のSOCの推移を示すタイムチャート。
図5】その他の実施形態における電源システムの全体構成図。
図6】その他の実施形態における電源システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電源監視装置を車載の電源システム100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に示すように、電源システム100は、2つの電源系統を有しており、一方の電源系統である第1系統ES1には、第1電源部としての電源装置10が設けられている。また、他方の電源系統である第2系統ES2には、第2電源部としての蓄電池16が設けられている。
【0026】
電源装置10及び蓄電池16は、第1~第6負荷31~36に電力を供給する電源である。電源装置10は、高圧蓄電池11と、DCDCコンバータ(以下、単にコンバータ)12とを備える。高圧蓄電池11は、蓄電池16の定格電圧(例えば12V)よりも高い電圧(例えば数百V)を出力可能な蓄電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池である。コンバータ12は、高圧蓄電池11から供給される電力を降圧して第1~第6負荷31~36の動作電圧を生成する電圧生成部である。なお、高圧蓄電池11は、電源システム100外に設けられていてもよい。また、蓄電池16は、例えばリチウムイオン蓄電池からなる蓄電装置である。
【0027】
第1~第6負荷31~36のうち、第1~第5負荷31~35は、電源システム100のシステム停止状態下において暗電流供給が不要な負荷であり、第6負荷36は、システム停止状態下において暗電流供給が必要な負荷である。第6負荷36は、例えば蓄電池16を監視する電池監視ECU(以下、単にECU)36Aやリモコンキー装置36B等である。なお、本実施形態において、第1~第5負荷31~35が「供給不要負荷」に相当し、第6負荷36が「供給負荷」に相当する。
【0028】
第1~第5負荷31~35のうち、第1負荷31は、車両において運転に用いられない電気負荷であり、例えばエアコン、オーディオ装置、パワーウィンドウ等である。
【0029】
一方、第2~第5負荷32~35は、車両の運転に用いられる少なくとも1つの機能を実施する負荷であり、例えば車両を操舵する電動パワーステアリング装置、車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置、車両周囲の状況を監視する走行監視装置等である。
【0030】
第2~第5負荷32~35は、機能毎に冗長さが付与された構成となっており、第2負荷32及び第3負荷33を含む第1負荷群30Aと第4負荷34及び第5負荷35を含む第2負荷群30Bとを有することで、それら負荷群30A,30Bのいずれか一方に異常が生じた場合でも各機能の全てが失われないようになっている。第1負荷群30Aと第2負荷群30Bとは、機能毎に冗長に設けられており、第1負荷群30Aと第2負荷群30Bとが協働して各機能を実現するものであるが、それぞれ単独でも各機能の一部を実現可能なものである。
【0031】
例えば第2~第5負荷32~35は、電動パワーステアリング装置であり、第1ステアリングモータと第2ステアリングモータとを有しているとともに、第1ステアリングモータを制御する第1制御装置と第2ステアリングモータを制御する第2制御装置とを有している。
【0032】
この場合、第2負荷32に相当する第1制御装置及び第3負荷33に相当する第1ステアリングモータを有する第1負荷群30Aと、第4負荷34に相当する第2制御装置及び第5負荷35に相当する第2ステアリングモータを有する第2負荷群30Bとが協働して車両の操舵を実現するものであるが、それぞれ単独でも車両の自由な操舵が可能である。具体的には、第1負荷群30Aと第2負荷群30Bとは、操舵速度や操舵範囲等に一定の制限がある中で車両の操舵が可能である。
【0033】
第2~第5負荷32~35のうち、第3負荷33及び第5負荷35は、瞬間的な電力供給の停止を許容できる負荷であり、例えば各種アクチュエータである。第2負荷32及び第4負荷34は、瞬間的な電力供給の停止を許容できない負荷であり、例えば各種アクチュエータの制御装置である。
【0034】
第2負荷32及び第4負荷34は、協働してLKA(Lane Keeping Assist)、ACC(Adaptive Cruise Control)、PCS(Pre-Crash Safety)等の運転支援機能を実施可能である。第2負荷32及び第4負荷34は、車両の走行モードを、運転支援制御を用いる支援モードと、運転支援制御を用いない通常モードとに切り替え可能であり、車両は各走行モードによる走行が可能となっている。
【0035】
第1系統ES1では、電源装置10が、第1系統内経路LA1を介して第1~第3,第6負荷31~33,36に接続されている。本実施形態では、第1系統内経路LA1により接続された電源装置10及び第1~第3,第6負荷31~33,36により、第1系統ES1が構成されている。なお、本実施形態では、第1系統ES1内において、コンバータ12の低圧側に蓄電池等の蓄電装置が接続されていない。
【0036】
また、第2系統ES2では、蓄電池16が、第2系統内経路LA2を介して第4,第5負荷34,35に接続されている。本実施形態では、第2系統内経路LA2により接続された蓄電池16及び第4,第5負荷34,35により、第2系統ES2が構成されている。
【0037】
各系統内経路LA1,LA2は、接続経路LBにより互いに接続されており、その接続経路LBに系統間スイッチSWAが設けられている。接続経路LBの一端は、第1系統内経路LA1の接続点PAに接続され、接続経路LBの他端は、第2系統内経路LA2の接続点PBに接続されている。また、第2系統内経路LA2において、接続点PBと蓄電池16との間に電源スイッチSWBが設けられている。本実施形態では、系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBとして、NチャネルMOSFET(以下、単にMOSFET)が用いられている。
【0038】
第1系統内経路LA1には、第1~第3,第6負荷31~33,36が並列に接続されており、それら各電気負荷に繋がる第1分岐経路LC1に系統内スイッチSWCがそれぞれ設けられている。系統内スイッチSWCは、例えばMOSFETである。各第1分岐経路LC1は、分岐する前の第1本経路LD1に接続されており、第1本経路LD1を介して電源装置10に接続されている。なお、本実施形態において、第1分岐経路LC1が「通電経路」に相当する。
【0039】
第2系統内経路LA2には、第4,第5負荷34,35が並列に接続されており、それら各電気負荷に繋がる第2分岐経路LC2に系統内スイッチSWCがそれぞれ設けられている。各第2分岐経路LC2は、分岐する前の第2本経路LD2に接続されており、第2本経路LD2を介して蓄電池16に接続されている。
【0040】
接続経路LBには、接続点PAの電圧を検出する電圧センサ28が設けられている。
【0041】
ECU36Aは、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。CPUは、ROM内の演算プログラムや制御データを参照して、手動運転及び自動運転するための種々の機能を実現する。具体的には、ECU36Aは、高圧蓄電池11及びコンバータ12の動作状態と停止状態とを切り替える。
【0042】
なお、手動運転とは、ドライバの操作によって車両を運転制御する状態を表す。また、自動運転とは、ドライバの操作によらず制御装置40による制御内容で車両を運転制御する状態を表す。具体的には、自動運転とは、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって定められたレベル0からレベル5までの自動運転レベルのうち、レベル3以上の自動運転のことをいう。手動運転では、車両は通常モードによる走行が可能であり、自動運転では、車両は支援モードによる走行が可能である。
【0043】
また、ECU36Aは、IGスイッチ45及び入力部46に接続されている。IGスイッチ45は、車両の起動スイッチである。ECU36Aは、IGスイッチ45のオンオフ状態を監視する。入力部46は、ドライバの操作を受け付ける装置であり、例えばハンドル操作入力装置、シフトレバー操作入力装置、アクセルペダル操作入力装置、ブレーキペダル操作入力装置、及び音声入力装置である。
【0044】
電源システム100は、電源監視装置としてのスイッチ制御装置21を備えている。スイッチ制御装置21は、監視部22及びスイッチ制御部23を有する。監視部22は、電圧センサ28に接続されており、電圧センサ28により検出された電圧値に基づいて、第1系統ES1での電源失陥が生じたことを判定する。
【0045】
スイッチ制御部23は、監視部22及び各スイッチSWA~SWC等に接続されており、監視部22の判定結果等に基づいて、各スイッチSWA~SWCの開閉状態を切り替える。例えばスイッチ制御部23は、監視部22により第1系統ES1での電源失陥が生じたと判定された場合に、系統間スイッチSWAを開放して第1系統ES1と第2系統ES2とを電気的に絶縁するとともに、電源スイッチSWBを閉鎖して蓄電池16から第2系統ES2の負荷34,35に電力供給を行う。
【0046】
ところで、IGスイッチ45がオン状態とされる電源システム100のシステム稼働状態下においては、スイッチ制御部23により系統間スイッチSWA及び系統内スイッチSWCが閉鎖され、各系統ES1,ES2に接続されている負荷31~36に対する電力供給が行われる。また、スイッチ制御部23により電源スイッチSWBが閉鎖され、電源装置10により蓄電池16が充電される。これにより、仮に第1系統ES1で電源失陥が生じ、スイッチ制御部23により系統間スイッチSWAが開放されても、蓄電池16の電力により第2系統ES2の負荷34,35の駆動を継続すること、つまり第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップが可能となる。
【0047】
しかし、いずれの系統でも電源失陥が生じていない通常状態では、蓄電池16が充電された後は、スイッチ制御部23により電源スイッチSWBが開放され、蓄電池16が自然放電される。このように、通常状態において蓄電池16で単に充電と自然放電とが繰り返されるだけでは、蓄電池16に蓄えられた電力を有効に利用することができず、電力効率等の観点から改善の余地がある。
【0048】
本実施形態では、IGスイッチ45がオフ状態とされ、コンバータ12による電圧生成が停止している電源システム100のシステム停止状態下において、スイッチ制御部23により系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBが閉鎖された状態で蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われる。
【0049】
蓄電池16の充放電におけるスイッチ制御部23の対応について説明する。スイッチ制御部23は、スイッチ操作部24、充電制御部25、予測部26及び充電検出部27を含むハード回路である。
【0050】
スイッチ操作部24は、システム停止状態下において、系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBを閉鎖する。これにより、蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われる。システム稼働状態からシステム停止状態への移行時には、電源システム100における全ての系統内スイッチSWCが閉鎖されている。この状態において蓄電池16から暗電流供給が行われると、システム停止状態下において暗電流供給が必要な第6負荷36だけでなく、暗電流供給が不要な第1~第5負荷31~35にも暗電流供給が行われ、蓄電池16の電力が無用に消費される。そこで、スイッチ操作部24は、システム停止状態に切り替わったことを検知した場合に、第6負荷36に対応する系統内スイッチSWC以外の系統内スイッチSWCを開放する。なお、本実施形態において、スイッチ操作部24が「暗電流供給部」に相当する。
【0051】
充電検出部27は、蓄電池16の蓄電状態、つまり蓄電池16の残存容量を示すSOC(State Of Charge)を検出する。充電制御部25は、充電検出部27により検出された蓄電池16のSOCが所定容量まで低下した場合に、スイッチ操作部24に対して充電信号を出力する。スイッチ操作部24は、充電制御部25から充電信号が出力されると、系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBを閉鎖する。その結果、電源装置10により蓄電池16が充電される。
【0052】
充電制御部25は、第1充電部25A及び第2充電部25Bを備えている。第1充電部25Aは、システム稼働状態下において、蓄電池16のSOCが所定の下限容量SC以上となるように、スイッチ操作部24に対して充電信号を出力する。ここで下限容量SCは、蓄電池16において、第1~第6負荷31~36の電源バックアップが可能な容量であり、詳細には、運転支援の実施時である支援モードによる車両の走行時において、第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップが可能な容量である。
【0053】
ここで、電源バックアップが可能な容量とは、車両走行中に第1系統ES1に異常が生じ、その機能が失われた場合でも、車両を安全な状態にするまで第2系統ES2の負荷34,35の駆動の継続を可能とする電力容量を指す。例えば、走行中の車両をその走行車線内で安全に停車させる、つまりレーンキープしながらブレーキを掛けて車両を停止させるまでに必要な電力容量である。また例えば、走行中の車両を路肩に安全に停車させる、つまり並走車を確認しながら車線変更して路肩に移動し、ブレーキを掛けて車両を停止させるまで必要な電力容量である。また例えば、走行中の車両を駐車可能なエリアである待避所やパーキングエリアに停車させるまで必要な電力容量である。
【0054】
第1充電部25Aは、システム稼働状態下において、蓄電池16のSOCが下限容量SCまで低下した場合に、スイッチ操作部24に対して充電信号を出力する。第1充電部25Aは、蓄電池16のSOCが所定の第1上限値SAとなるまで充電信号を出力し、蓄電池16のSOCが第1上限値SAまで上昇すると、充電信号の出力を停止する。スイッチ操作部24は、第1充電部25Aからの充電信号の出力が停止されると、系統間スイッチSWAを閉状態に維持するとともに、電源スイッチSWBを開放する。
【0055】
第2充電部25Bは、システム停止状態下において、蓄電池16のSOCが所定の容量閾値SDまで低下した場合に、スイッチ操作部24に対して充電信号を出力する。ここで容量閾値SDは、下限容量SCよりも小さい容量であり、且つ第6負荷36への暗電流供給が可能な容量である。
【0056】
また、第2充電部25Bは、システム停止状態下において、蓄電池16のSOCが容量閾値SDまで低下した場合に、ECU36Aに対して高圧蓄電池11及びコンバータ12を起動させるための起動信号を出力する。これにより、高圧蓄電池11及びコンバータ12が起動し、コンバータ12により蓄電池16が充電されるとともに、その動作電圧により第6負荷36への暗電流供給が行われる。第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが所定の第2上限値SBとなるまで充電信号を出力する。ここで第2上限値SBは、第1上限値SAよりも小さい容量であり、且つ下限容量SCよりも大きい容量である。
【0057】
第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが第2上限値SBまで上昇すると、充電信号の出力を停止するとともに、ECU36Aに対して、高圧蓄電池11及びコンバータ12を停止させるための停止信号を出力する。これにより、高圧蓄電池11及びコンバータ12が停止すると、蓄電池16への充電が停止され、蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われる。なお、スイッチ操作部24は、システム停止状態下において、第1充電部25Aからの充電信号の出力が停止されても、系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBを閉状態に維持する。
【0058】
本実施形態において、容量閾値SDは、下限容量SCよりも小さい容量に設定されている。しかし、容量閾値SDが下限容量SCよりも小さい容量に設定されていると、システム起動時において蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも低く、蓄電池16のSOCが下限容量SC以上に充電されるまで支援モードによる車両の走行が待たされることがあり得る。そこで、予測部26は、システム停止状態からシステム稼働状態への移行後に運転支援が開始される開始タイミングを予測する。予測部26は、ECU36Aから過去の車両運転パターンを取得し、この車両運転パターンに基づいて開始タイミングを予測する。車両運転パターンは、例えば運転支援機能の使用頻度、カーナビゲーション装置の使用頻度、及びカーナビゲーション装置を使用する場合における設定期間である。第2充電部25Bは、予測部26により予測された開始タイミングに基づいて容量閾値SDを設定する。具体的には、第2充電部25Bは、IGスイッチ45のオン状態への切り替えから開始タイミングまでの期間が短ければ、容量閾値SDを高めに設定する。
【0059】
次に、蓄電池16の充放電におけるECU36Aの対応について説明する。図2に、ECU36Aが実施するシステム稼働状態下及びシステム停止状態下における制御処理のフローチャートを示す。
【0060】
制御処理を開始すると、まずステップS11では、電源システム100がシステム稼働状態であるか否かを判定する。ECU36Aは、例えばIGスイッチ45のオンオフ状態に基づいてシステム稼働状態であるか否かを判定する。システム稼働状態であると判定した場合、ステップS12に進む。システム停止状態であると判定した場合、ステップS21に進む。
【0061】
ステップS12では、車両の走行モードが通常モードであるか否かを判定する。通常モードであると判定した場合、ステップS13に進む。支援モードであると判定した場合、本処理を一旦終了する。
【0062】
ステップS13では、蓄電池16の初期充電が完了したか否かを判定する。具体的には、蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも大きいか否かを判定する。ECU36Aは、第1充電部25Aからの信号に基づいて、蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも大きいか否かを判定する。蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも小さいと判定した場合、ステップS14において、支援モードへの切り替えを禁止し、本処理を一旦終了する。蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも大きいと判定した場合、ステップS15において、支援モードへの切り替えを許可し、本処理を一旦終了する。なお、支援モードへの切り替えは、入力部を介したドライバからの指示に基づいて行われる。
【0063】
ステップS21では、第2充電部25Bから起動信号が入力されたか否かを判定する。起動信号が入力されたと判定した場合、ステップS22において、高圧蓄電池11及びコンバータ12を起動させ、ステップS23に進む。起動信号が入力されていないと判定した場合、ステップS23に進む。
【0064】
ステップS23では、第2充電部25Bから停止信号が入力されたか否かを判定する。停止信号が入力されたと判定した場合、ステップS24において、高圧蓄電池11及びコンバータ12を停止させ、本処理を一旦終了する。停止信号が入力されていないと判定した場合、本処理を一旦終了する。
【0065】
図3は、システム稼働状態下及びシステム停止状態下における蓄電池16のSOCの推移を示す。図3において、(A)は、IGスイッチ45のオンオフ状態の推移を示し、(B)は、支援モードへの切り替えの許可又は禁止の推移を示し、(C)は、走行モードの推移を示し、(D)は、コンバータ12の動作状態の推移を示す。また、(E)は、系統間スイッチSWAの開閉状態の推移を示し、(F)は、電源スイッチSWBの開閉状態の推移を示し、(G)は、第1負荷31に対応する系統内スイッチSWCである特定スイッチSWTの開閉状態の推移を示し、(H)は、蓄電池16のSOCの推移を示す。
【0066】
図3に示すように、時刻t1までのIGスイッチ45の閉期間、つまり電源システム100のシステム稼働状態下では、電源スイッチSWBが開放されており、蓄電池16のSOCが第1上限値SAに維持されている。
【0067】
時刻t1にIGスイッチ45が開放されると、コンバータ12が停止状態に切り替わり、スイッチ操作部24により電源スイッチSWBが閉鎖される。これにより、蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われる。なお、本実施形態では、時刻t1にスイッチ操作部24により特定スイッチSWTが開放されるため、システム停止状態下において暗電流供給が不要な第1負荷31に暗電流供給が行われることを抑制することができる。
【0068】
時刻t1から時刻t4までのシステム停止状態下では、蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われるとともに、コンバータ12による蓄電池16の充電が行われる。具体的には、時刻t1から時刻t2までの期間では、スイッチ操作部24により蓄電池16からの暗電流供給が行われ、時刻t2に蓄電池16のSOCが容量閾値SDまで低下すると、第2充電部25Bにより蓄電池16の充電が行われる。その後、時刻t3に蓄電池16のSOCが第2上限値SBまで上昇すると、第2充電部25Bにより蓄電池16の充電が停止され、再び蓄電池16からの暗電流供給が行われる。
【0069】
本実施形態では、システム停止状態下において第2充電部25Bが充電を開始する容量閾値SDが、システム稼働状態下において第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップが可能な容量である下限容量SCよりも小さい値に設定されている。そのため、システム停止状態下において、暗電流供給に使用可能な蓄電池16の容量範囲が拡大され、蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも低くなっても暗電流供給が行われる。
【0070】
また、システム停止状態下において第2充電部25Bが充電を終了する第2上限値SBが、システム稼働状態下において第1充電部25Aが充電を終了する第1上限値SAよりも小さい値に設定されている。そのため、システム停止状態下において、蓄電池16のSOCが第2上限値SBよりも低容量に維持され、第1上限値SAのように高容量となることが抑制される。
【0071】
そして、本実施形態では、第2上限値SBから容量閾値SDまでの容量範囲、つまりシステム停止状態下において第2充電部25Bが充電を行う容量範囲が、第1上限値SAから下限容量SCまでの容量範囲、つまりシステム稼働状態下において第1充電部25Aが充電を行う容量範囲よりも広くなるように設定されている。これにより、図3(D),(H)に一点鎖線で示すように、システム停止状態下において第2充電部25Bが充電を行う容量範囲が、第1上限値SAから下限容量SCまでの容量範囲に設定されている場合に比べて、システム停止状態下における蓄電装置の充電回数を少なくすることができる。
【0072】
時刻t4にIGスイッチ45が閉鎖されると、コンバータ12が動作状態に切り替わり、スイッチ操作部24により特定スイッチSWTが閉鎖される。また、第1充電部25Aにより系統間スイッチSWA及び電源スイッチSWBが閉状態に維持される。これにより、電源装置10による蓄電池16の充電が行われる。この充電により時刻t5に蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも上昇すると、支援モードへの切り替えが許可される。その後、時刻t6に車両の走行モードが支援モードへと切り替えられる。
【0073】
本実施形態では、予測部26により車両の走行モードが支援モードへと切り替えられる開始タイミングである時刻t6が予測されており、この時刻t6よりも前に、支援モードへの切り替えが許可されるように、容量閾値SDが設定されている。これにより、電源システム100の起動後において、蓄電池16の充電のために支援モードへの切り替えが待たされることがなく、所望のタイミングで支援モードによる車両の走行を開始することができる。
【0074】
その後、時刻t7に蓄電池16のSOCが第2上限値SBまで上昇すると、第1充電部25Aにより電源スイッチSWBが閉鎖され、蓄電池16の充電が停止される。
【0075】
システム稼働状態下では、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれか一方で異常が発生したか否かが判定される。図3では、時刻t8に第1負荷31で地絡が発生する。これにより、第1系統ES1で電源失陥が生じると、時刻t9にスイッチ操作部24により系統間スイッチSWAが開放されるとともに、電源スイッチSWBが閉鎖される。これにより、蓄電池16による第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップが行われる。なお、第1系統ES1で電源失陥が生じると、ECU36Aは動作を停止する。
【0076】
その後、ECU36A以外の制御装置により第1負荷31で地絡が発生したことが判定されると、時刻t10にスイッチ操作部24により特定スイッチSWTが開放される。これにより、コンバータ12が再び動作状態に切り替えられると、第1系統ES1の負荷32,33の動作が可能となるとともに、起動のためのイニシャル処理後にECU36Aによる蓄電池16の監視が再開される。
【0077】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0078】
本実施形態では、第1系統ES1にコンバータ12が設けられているとともに、第2系統ES2に蓄電池16が設けられており、コンバータ12及び蓄電池16から第1~第6負荷31~36への冗長的な電力供給が可能となっている。この場合、システム稼働状態下において、系統間スイッチSWAが閉鎖された状態でコンバータ12により蓄電池16の充電が行われるため、仮に第1系統ES1側での電源失陥が生じても、第2系統ES2側の蓄電池16の電力により第2系統ES2の負荷34,35の継続が可能となっている。また、システム停止状態下において、系統間スイッチSWAが閉鎖された状態で蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給が行われる。この場合、蓄電池16は、第1系統ES1側での電源失陥に備えてSOCが下限容量SC以上となっており、その蓄電池16の電力の有効利用を図りつつ、第6負荷36への暗電流供給を好適に実施することができる。これにより、電源システム100における電源冗長化とコンバータ12及び蓄電池16の電力の効率的な利用とを適正に実現することができる。
【0079】
本実施形態では、システム停止状態下において充電が行われる容量閾値SDが、システム稼働状態下において第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップが可能な容量である下限容量SCよりも小さい値に設定されている。この場合、システム停止状態下において、暗電流供給に使用可能な蓄電池16の容量範囲が拡大され、蓄電池16のSOCがシステム稼働状態の下限容量SCよりも低くなっても暗電流供給が行われる。これにより、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数を少なくすることができる。
【0080】
特に本実施形態では、支援モードによる走行が可能な車両に適用される電源システム100において、システム停止状態下において第2充電部25Bが充電を開始する容量閾値SDが、支援モードによる車両の走行時における電源バックアップが可能な容量である下限容量SCよりも小さい値に設定されている。これにより、支援モードによる車両の走行時における電源バックアップを適正に行わせつつ、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数を少なくすることができる。
【0081】
システム停止状態下で蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも低下すると、システム起動時において蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも低く、蓄電池16のSOCが下限容量SC以上に充電されるまで支援モードによる車両の走行が待たされることがあり得る。この点、本実施形態では、システム停止状態からシステム稼働状態への移行後に車両の走行モードが支援モードに切り替えられる開始タイミングを予測し、その開始タイミングに基づいて容量閾値SDを設定するようにした。これにより、電源システム100の起動後において、所望のタイミングで支援モードによる車両の走行を開始することができる。
【0082】
システム稼働状態下では、蓄電池16のSOCが高容量に維持されることで第2系統ES2の負荷34,35の電源バックアップを適正に行うことができる。しかし、蓄電池16のSOCが高容量に維持される期間が長期化すると、蓄電池16が劣化しやすくなることが懸念される。この点、本実施形態では、システム停止状態下における蓄電池16の充電上限値である第2上限値SBが、システム稼働状態下における蓄電池16の充電上限値である第1上限値SAよりも小さい値に設定されている。この場合、システム稼働状態下においては蓄電池16のSOCが高容量に維持され、システム停止状態下においては蓄電池16のSOCが低容量に維持される。これにより、システム稼働状態下における電源バックアップを適正に行わせつつ、蓄電池16の劣化を抑制することができる。
【0083】
本実施形態では、システム停止状態下における蓄電池16から第6負荷36への暗電流供給時において、第6負荷36に対応する系統内スイッチSWC以外の系統内スイッチSWCが開放されることで、暗電流供給が不要な第1~第5負荷31~35に暗電流供給されることが抑制される。これにより、システム停止状態下において、蓄電池16の暗電流供給量を抑制することができ、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数を少なくすることができる。
【0084】
(第1実施形態の変形例1)
第6負荷36に対応する系統内スイッチSWCは、第6負荷36に含まれる負荷36A,36B毎に設けられていてもよい。この場合、システム停止状態下において、第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが容量閾値SDに近づいてきたら、ECU36Aに対応する系統内スイッチSWCとリモコンキー装置36Bに対応する系統内スイッチSWCのうち、リモコンキー装置36Bに対応する系統内スイッチSWCのみを開放するようにしてもよい。これにより、システム停止状態下において、蓄電池16の暗電流供給量を好適に抑制することができ、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数を少なくすることができる。
【0085】
(第1実施形態の変形例2)
第2充電部25Bは、予測部26により予測された開始タイミングに代えて、又は予測部26により予測された開始タイミングとともに、システム停止状態下での蓄電池16のSOCの変化率(傾き)に基づいて容量閾値SDを設定するようにしてもよい。例えばシステム停止状態下において、第1負荷31に含まれるエアコンやオーディオ装置が使用されると、第6負荷36に対する暗電流とともに第1負荷31に駆動電流が供給される。この場合、第1負荷31が使用される場合の蓄電池16のSOCの変化率が、第1負荷31が使用されない場合の蓄電池16のSOCの変化率よりも大きくなり、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数が増加することが懸念される。
【0086】
本変形例では、システム停止状態下での蓄電池16の放電に伴うSOCの変化率に基づいて容量閾値SDを設定するようにした。例えば、システム停止状態下での蓄電池16のSOCの変化率が比較的大きければ、容量閾値SDが低めに設定されるとよい。これにより、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数の増加を抑制することができる。
【0087】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図4を参照しつつ説明する。
【0088】
本実施形態では、システム停止状態下において、第2充電部25Bが、蓄電池16のSOCが下限容量SCまで低下した場合に蓄電池16の充電を行う点で、第1実施形態と異なる。本実施形態では、システム停止状態下において、第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが第1上限値SAまで上昇すると、蓄電池16の充電を終了する。
【0089】
図4に、システム停止状態下における蓄電池16のSOCの推移を示す。図4において、(A)は、IGスイッチ45のオンオフ状態の推移を示し、(B)は、支援モードへの切り替えの許可又は禁止の推移を示し、(C)は、走行モードの推移を示し、(D)は、蓄電池16のSOCの推移を示す。
【0090】
本実施形態では、時刻t11にIGスイッチ45が開放されると、時刻t11から時刻t12までの期間では、スイッチ操作部24により蓄電池16からの暗電流供給が行われ、時刻t12に蓄電池16のSOCが下限容量SCまで低下すると、第2充電部25Bの制御に基づいてコンバータ12による蓄電池16の充電が行われる。その後、時刻t13に蓄電池16のSOCが第1上限値SAまで上昇すると、蓄電池16の充電が停止され、再び蓄電池16からの暗電流供給が行われる。
【0091】
時刻t14にIGスイッチ45が閉鎖される。本実施形態では、システム起動時において蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも高い容量で維持されているため、IGスイッチ45が閉鎖された時刻t14に支援モードへの切り替えが許可される。本実施形態では、時刻t14直後の時刻t15において、車両の走行モードが支援モードへと切り替えられる。
【0092】
以上詳述した本実施形態によれば、システム停止状態下において、蓄電池16のSOCが、支援モードによる車両の走行時における電源バックアップが可能な容量である下限容量SCまで低下した場合に、蓄電池16の充電が行われる。この場合、システム停止状態下において蓄電池16のSOCが下限容量SCよりも高い容量で維持されるため、電源システム100の起動直後であっても蓄電池16による運転支援の電源バックアップが可能となる。これにより、システム起動直後において支援モードによる車両の走行をいち早く開始することができる。
【0093】
(第2実施形態の変形例)
システム停止状態下において、第2充電部25Bが蓄電池16の充電を開始する容量を、下限容量SCと容量閾値SDとで切り替えるようにしてもよい。例えば、ドライバにより、システム起動後における支援モードの開始を遅らせる、又は支援モードによる車両の走行を行わない旨が設定されている場合、容量閾値SDを選択するようにしてもよい。システム起動後における支援モードの開始を遅らせる場合は、例えばシステム起動後における支援モードによる車両の走行が設定されているものの、ナビゲーション装置等により車両の行き先が設定されていない場合である。
【0094】
また、蓄電池16の温度に基づいて、下限容量SCと容量閾値SDとを切り替えるようにしてもよい。下限容量SCは、蓄電池16の温度が所定の閾値温度よりも低い場合でも蓄電池16が動作するように比較的高容量に設定されている。そのため、蓄電池16の温度が閾値温度よりも高い場合には、蓄電池16の温度が閾値温度よりも低い場合よりも蓄電池16が動作しやすいため、容量閾値SDを選択するようにしてもよい。
【0095】
また、ドライバにより設定された自動運転レベルに基づいて、下限容量SCと容量閾値SDとを切り替えるようにしてもよい。下限容量SCは、車両が実現可能な自動運転レベルのうち、最も高い高運転レベルに基づいて設定されている。そのため、システム起動後における支援モードによる車両の走行が設定されているものの、ドライバにより設定された自動運転レベルが高運転レベルよりも低い場合には、容量閾値SDを選択するようにしてもよい。また、システム起動後における支援モードによる車両の走行が設定されているものの、車両周辺の道路ではドライバにより設定された自動運転レベルを実施できず、支援モードによる車両の走行ができない場合には、容量閾値SDを選択するようにしてもよい。
【0096】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0097】
第2~第5各負荷32~35は、例えば以下の装置であってもよい。
【0098】
・車両に走行用動力を付与する走行用モータとその駆動回路であってもよい。この場合、第3負荷33及び第5負荷35のそれぞれは、例えば3相の永久磁石同期モータと3相インバータ装置であり、第2負荷32及び第4負荷34は、3相インバータ装置の制御装置である。
【0099】
・制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ装置であってもよい。この場合、第3負荷33及び第5負荷35のそれぞれは、例えば制動時のブレーキ油圧を独立に調整できるABSアクチュエータであり、第2負荷32及び第4負荷34は、ABSアクチュエータの制御装置である。
【0100】
・第3負荷33及び第5負荷35は、必ずしも同じ構成の組合せである必要がなく、同等の機能を異なる形式の機器で実現する組合せであってもよい。また、第3負荷33及び第5負荷35は、それぞれが異なる負荷ではなく、同一の負荷であってもよい。つまり、第3負荷33及び第5負荷35が、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2の両方から電力供給を受ける同一の負荷であってもよい。
【0101】
・システム停止状態下において、第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが容量閾値SDまで低下した場合に蓄電池16の充電を行い、蓄電池16のSOCが第1上限値SAまで上昇した場合に蓄電池16の充電を終了するようにしてもよい。また、第2充電部25Bは、蓄電池16のSOCが容量閾値SDまで低下した場合に蓄電池16の充電を行い、蓄電池16のSOCが、第1上限値SAよりも大きい値に設定された第2上限値SBまで上昇した場合に蓄電池16の充電を終了するようにしてもよい。これにより、暗電流供給に使用可能な蓄電池16の容量範囲が拡大され、システム停止状態下における蓄電池16の充電回数を少なくすることができる。
【0102】
・上記実施形態では、蓄電池16による電源バックアップが支援モードにおいて実施される例を示したが、電源バックアップは、通常モードにおいて実施されてもよい。
【0103】
・上記実施形態では、蓄電池16を、コンバータ12の動作電圧と等しい電圧に充電する例を示したが、これに限られない。例えば蓄電池16を、コンバータ12の動作電圧よりも高い電圧に充電するようにしてもよい。この場合、図5に示すように、DCDCコンバータ(以下、単にコンバータ)13が系統間スイッチSWAに並列に設けられていてもよい。以下、コンバータ12を第1コンバータとよび、コンバータ13を第2コンバータとよぶ。
【0104】
第1充電部25A及び第2充電部25Bは、蓄電池16を充電する場合に、系統間スイッチSWAを開放するとともに、第2コンバータ13を動作状態とする。第1充電部25Aは、蓄電池16を充電状態に維持する場合に、系統間スイッチSWAを開放するとともに、第2コンバータ13を停止状態とする。第2充電部25Bは、蓄電池16から暗電流供給を行う場合に、系統間スイッチSWAを閉鎖するとともに、第2コンバータ13を動作状態とする。
【0105】
・上記実施形態では、ECU36Aがスイッチ制御装置21とは別に設けられている例を示したが、これに限られない。図6に示すように、ECU36Aがスイッチ制御装置21に設けられていてもよい。これにより、スイッチ制御装置21自身により高圧蓄電池11及びコンバータ12を起動させ、または停止させることができる。
【0106】
・上記実施形態では、監視部及びスイッチ制御部が、各種回路が内蔵されたハード回路により構成されている例を示したが、これに限られない。CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなるマイクロコンピュータにより構成されていてもよい。
【0107】
・上記実施形態では、蓄電装置がリチウムイオン蓄電池である例を示したが、これに限られない。蓄電装置は、例えば他の種類の蓄電池であってもよければ、電気二重層キャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…電源装置、12…コンバータ、16…蓄電池、21…スイッチ制御装置、24…スイッチ操作部、25…充電制御部、100…電源システム、ES1…第1系統、ES2…第2系統、SWA…系統間スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6