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特許7563372ワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241001BHJP
   G06T 7/246 20170101ALI20241001BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20241001BHJP
   B60S 1/38 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G06T7/246
G01M17/007 K
B60S1/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021207154
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092141
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸地 克弥
(72)【発明者】
【氏名】太田 俊作
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/250768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G06T 7/246
G01M 17/007
B60S 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ(W1,W2)の払拭作動時に生じ得る微小振動(σ)を、前記ワイパ自身を含む車両用ワイパ装置(10)の作動部品(Wb)を通じて測定するワイパ振動測定装置(23)であって、
動画撮影が可能なカメラ(21)にて得た作動状態の前記作動部品を含む動画データ(Da)から、都度変位する前記作動部品の測定対象部位(Wbx)のピクセル座標位置(w,h)を時間(t)と紐付けた座標データリスト(t,w,h)を取得する座標データ取得部(23a)と、
前記座標データリストにおける前記ピクセル座標位置を前記作動部品の変位軌跡上位置(x)とした座標データリスト(t,x)に変換するデータ変換部(23c)と、
前記変位軌跡上位置の時間変化(x(t))を周波数解析して前記微小振動の測定結果を得る測定結果出力部(23d)と
を備えて構成されている、ワイパ振動測定装置。
【請求項2】
測定対象の前記作動部品は、円弧状又は円弧類似形状の払拭作動を行うワイパブレード(Wb)であり、
前記データ変換部(23c)は、前記座標データリストを円弧状又は円弧類似形状の前記変位軌跡上位置に変換するものである、請求項1に記載のワイパ振動測定装置。
【請求項3】
前記作動部品の測定対象部位(Wbx)を周囲風景に対して明確化して検出する測定対象検出部(23b)を備えて構成されている、請求項1又は請求項2に記載のワイパ振動測定装置。
【請求項4】
ワイパ(W1,W2)の払拭作動時に生じ得る微小振動(σ)を、前記ワイパ自身を含む車両用ワイパ装置(10)の作動部品(Wb)を通じて測定するワイパ振動測定方法であって、
動画撮影が可能なカメラ(21)にて得た作動状態の前記作動部品を含む動画データ(Da)から、都度変位する前記作動部品の測定対象部位(Wbx)のピクセル座標位置(w,h)を時間(t)と紐付けた座標データリスト(t,w,h)を取得し、
前記座標データリストにおける前記ピクセル座標位置を前記作動部品の変位軌跡上位置(x)とした座標データリスト(t,x)に変換し、
前記変位軌跡上位置の時間変化(x(t))を周波数解析して前記微小振動の測定結果を得るものである、ワイパ振動測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭作動時に生じ得るワイパの微小振動の測定を行うためのワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイパの払拭作動時には、払拭面との関係でびびりと呼ばれる微小振動が生じ得る。このようなワイパの払拭作動時の微小振動を測定するワイパ振動測定技術としては、例えば特許文献1等に開示がある。同文献においては、ワイパアームの支持及び駆動を行うためのピボット軸を検出対象に検出器が設置されている。検出器は、ワイパの払拭作動時のピボット軸の回転角度を検出し、その検出信号を測定回路に出力する。測定回路は、入力された検出信号に基づき、払拭作動時のワイパの微小振動を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭56-34802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記開示技術のように、ピボット軸等のワイパ装置の作動部品に対して検出器を設置するということは、電気信号を出力する電子機器よりなる検出器を車外の被水箇所に設置するということである。つまり、検出器には設置環境の厳しい車外への設置が強いられるとともに、検出器自身等に防水構造が必要となって準備や組付けが煩雑である。したがって、上記開示技術は簡易な測定手法であるとは言えず、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、払拭作動時のワイパの微小振動の測定を簡易に行い得るワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイパ振動測定装置は、ワイパ(W1,W2)の払拭作動時に生じ得る微小振動(σ)を、前記ワイパ自身を含む車両用ワイパ装置(10)の作動部品(Wb)を通じて測定するワイパ振動測定装置(23)であって、動画撮影が可能なカメラ(21)にて得た作動状態の前記作動部品を含む動画データ(Da)から、都度変位する前記作動部品の測定対象部位(Wbx)のピクセル座標位置(w,h)を時間(t)と紐付けた座標データリスト(t,w,h)を取得する座標データ取得部(23a)と、前記座標データリストにおける前記ピクセル座標位置を前記作動部品の変位軌跡上位置(x)とした座標データリスト(t,x)に変換するデータ変換部(23c)と、前記変位軌跡上位置の時間変化(x(t))を周波数解析して前記微小振動の測定結果を得る測定結果出力部(23d)とを備えて構成されている。
【0007】
上記課題を解決するワイパ振動測定方法は、ワイパ(W1,W2)の払拭作動時に生じ得る微小振動(σ)を、前記ワイパ自身を含む車両用ワイパ装置(10)の作動部品(Wb)を通じて測定するワイパ振動測定方法であって、動画撮影が可能なカメラ(21)にて得た作動状態の前記作動部品を含む動画データ(Da)から、都度変位する前記作動部品の測定対象部位(Wbx)のピクセル座標位置(w,h)を時間(t)と紐付けた座標データリスト(t,w,h)を取得し、前記座標データリストにおける前記ピクセル座標位置を前記作動部品の変位軌跡上位置(x)とした座標データリスト(t,x)に変換し、前記変位軌跡上位置の時間変化(x(t))を周波数解析して前記微小振動の測定結果を得るものである。
【0008】
上記ワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法に構成によれば、作動状態にある車両用ワイパ装置の作動部品を含む動画データから、都度変位する作動部品の測定対象部位のピクセル座標位置を時間と紐付けた座標データリストが取得される。次いで、座標データリストにおけるピクセル座標位置が作動部品の変位軌跡上位置に変換される。そして、変位軌跡上位置の時間変化が周波数解析されて、ワイパの払拭作動時に生じ得る微小振動の測定結果が得られる。上記一連の画像処理は、近年では、入手が簡単で扱いも簡単なオープンソースの機能プログラムの測定用端末へのインストールで対応可能である。つまり、払拭作動するワイパ自身若しくはこれに伴い作動する車両用ワイパ装置の作動部品を身近なカメラで動画撮影し、オープンソースの機能プログラムによる画像処理を行うことで、払拭作動時のワイパの微小振動の測定を簡易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】測定対象とした一例の車両用ワイパ装置の概略構成図である。
図2】本実施形態のワイパ振動測定の説明に用いる説明図である。
図3】同実施形態のワイパ振動測定を行う測定用端末の機能ブロック図である。
図4】同実施形態のワイパ振動測定に係る説明図である。
図5】同実施形態のワイパ振動測定に係る説明図である。
図6】同実施形態のワイパ振動測定に係る説明図である。
図7】同実施形態のワイパ振動測定に係る説明図である。
図8】同実施形態のワイパ振動測定に係るフロー図である。
図9】同実施形態のワイパ振動測定に係るフロー図である。
図10】同実施形態のワイパ振動測定に係るフロー図である。
図11】同実施形態のワイパ振動測定に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ワイパ振動測定装置及びワイパ振動測定方法の一実施形態について説明する。
[車両用ワイパ装置の構成]
図1に示すように、車両用ワイパ装置10は、例えば車両前方のウインドシールドWSの外表面上に付着する雨滴等の異物を一対のワイパW1,W2にて払拭するものである。各ワイパW1,W2は、それぞれワイパアームWaとワイパブレードWbとを備えている。各ワイパアームWaの先端部にそれぞれ連結される各ワイパブレードWbは、ウインドシールドWSの外表面に接触して配置されている。
【0011】
車両用ワイパ装置10は、回転駆動するワイパモータ11と、ワイパモータ11の出力軸11aの一方向回転を一対のピボット軸12a,12bの往復回動に変換するリンク機構12とを備えている。各ピボット軸12a,12bには、各ワイパアームWaの基端部がそれぞれ支持されている。そして、ワイパモータ11が回転駆動すると、リンク機構12を介して各ピボット軸12a,12bが往復回動する。各ピボット軸12a,12bの駆動に基づき各ワイパアームWaが往復揺動することで、各ワイパブレードWbによるウインドシールドWSの円弧状の往復払拭が行われる。
【0012】
[ワイパの微小振動の測定について]
[測定の概要]
図2に示すように、本実施形態のワイパ振動測定は、測定対象のワイパW1,W2の作動状態をカメラ21にて動画撮影し、撮影により取得した動画データDaの画像処理が行われる。カメラ21は、例えば、動画撮影として近年普及が進んでいるGoPro(登録商標)カメラやスマートフォンに一体に備えられるカメラ、その他汎用カメラ等、動画データDaとして取出し可能なカメラである。すなわち、カメラ21は、測定者20が容易に入手可能な市販カメラで十分である。
【0013】
カメラ21による撮影は、一例として、車外のウインドシールドWSの外表面と直交する方向から行われる。カメラ21は、好ましい姿勢で不動に設置するのが好ましい。なお、カメラ21による撮影については、車外のみならず車内側から行ってもよい。
【0014】
払拭作動中のワイパW1,W2において微小振動の現れ易い部位は、運転席側のワイパW1におけるワイパブレードWbの端部、この場合円弧状の払拭を行うワイパブレードWbの径方向内側部分を払拭する端部Wbxがその一つである(図1参照)。本実施形態では更に、ワイパW1におけるワイパブレードWbの端部Wbxの作動状態を後の抽出工程で識別し易くするために、識別用テープ22の取り付けがなされる。識別用テープ22は、本実施形態では例えば真青色テープを用いるが、真赤色や真緑色等の他の色のテープを用いてもよい。識別用テープ22の色については、カメラ21により取得した周囲風景を含む動画データDaから後の工程でワイパブレードWbの端部Wbxの抽出を行うため、ワイパブレードWbの他部及び車両を含む周囲風景と大きく異なる色相を用いるのが好ましい。
【0015】
カメラ21で取得した動画データDaは、測定用端末23に取り込まれる。本実施形態の測定用端末23は、例えば汎用PC(パーソナルコンピュータ)である。測定用端末23は、取り込まれた動画データDaの周囲風景から、識別用テープ22を拠り所としてワイパW1におけるワイパブレードWbの端部Wbxを抽出する。動画データDaは、所定時間毎の静止画の連続である。そのため、測定用端末23は、動画データDaのフレームレートの取得に基づいて、所定時間毎のワイパブレードWbの端部Wbxの変位を抽出できる。測定用端末23は、抽出したワイパブレードWbの端部Wbxの変位を、ワイパブレードWbの円弧状の払拭軌跡座標に変換する。そして、測定用端末23は、ワイパブレードWbの端部Wbxの払拭軌跡座標上での変位から主たるワイパブレードWbの払拭による動作を除くことで、ワイパブレードWbの端部Wbxの微小振動を抽出する。こうして、ワイパブレードWbの端部Wbxの微小振動の抽出がなされ、その良否判断が行われる。
【0016】
測定用端末23での上記画像処理については、一例としてPython言語のOpenCV(登録商標)ライブラリが用いられる。OpenCVは、画像処理等の機能プログラムがまとめられたオープンソースライブラリである。そのため、誰でも入手が簡単であり、また扱いも簡単である。したがって、本実施形態のワイパ振動測定は、身近なカメラ21とオープンソースの画像処理プログラムとで簡易に実現できる構成である。なお、OpenCV以外のオープンソースの機能プログラムを用いてもよい。
【0017】
[測定の詳細]
本実施形態のワイパ振動測定の詳細について、図3に示す測定用端末23の機能ブロック図、図4図7に示す説明図及び図8図11に示すフロー図を用いて説明する。
【0018】
ワイパ振動測定は、OpenCVの画像処理プログラムが組み込まれた測定用端末23にて行われる。測定用端末23は、機能部として、座標データ取得部23a、測定対象検出部23b、データ変換部23c、及び測定結果出力部23dを備えている。なお、測定用端末23の各機能部は物理的に分かれていないが、説明の便宜上分けて説明する。
【0019】
[事前準備]
事前準備として、図8に示すステップS11~ステップS16が行われる。
ステップS11では、測定対象である運転席のワイパW1のワイパブレードWbの端部Wbxに識別用テープ22が測定者20により取り付けられる(図1参照)。
【0020】
ステップS12では、識別用テープ22の取り付けられたワイパブレードWbの端部Wbxが好適に撮影できるようにカメラ21の位置が決定されて不動に設置される。カメラ21による撮影は、ウインドシールドWSの外表面に対して直交する方向から行われる(図2参照)。
【0021】
ステップS13において、カメラ21による撮影の事前準備が完了となる。
ステップS14では、ワイパW1の払拭作動が行われ、カメラ21によりワイパW1の払拭作動中の動画撮影が開始される。つまり、カメラ21による動画データDaの取得が開始される。
【0022】
ステップS15では、微小振動(びびり)を含むワイパW1の払拭作動時の動画がカメラ21により行われる。カメラ21による動画撮影は、少なくとも数回のワイパW1の往復払拭動作が行われるのに十分な時間行われる。カメラ21には、所定時間分のワイパW1の作動状態の動画データDaが蓄積される。
【0023】
ステップS16では、カメラ21に蓄積された動画データDaが測定用端末23に転送される。測定用端末23は、ワイパW1の作動状態の動画データDaを取得する。こうして、測定用端末23による画像処理の事前準備が完了となる。
【0024】
[画像処理:座標データリスト取得処理]
測定用端末23による画像処理として、先ず図9に示すステップS21~ステップS28に沿って座標データリスト取得処理が行われる。座標データリスト取得処理は、測定用端末23の機能部の1つである座標データ取得部23aにて行われる。なお、座標データリスト取得処理は、図11に示すステップS41~ステップS45のブレード端検出のサブ処理を伴う。
【0025】
ステップS21では、座標データリストの取得を開始するにあたり、動画データDaが読み込まれる。
ステップS22では、読み込まれた動画データDaのフレームレートが手動入力又は自動で取得される。すなわち、フレームレートの逆数「1/fps」が動画データDaを構成する個々の静止画間の時間間隔として定義される。
【0026】
ステップS23では、開始時間が「t=0」として定義される。
ステップS24では、動画データDaの1枚目の静止画フレームが時間「t=0」として取得される。静止画フレームは、図4に示すようなピクセル座標で表される。横座標を「w」、縦座標を「h」とすると、一例として1920×1080画素であれば、座標位置(w=0~1919,h=0~1079)で表される。
【0027】
ステップS25では、取得した時間「t=0」の静止画フレームから、識別用テープ22の取り付けられたワイパブレードWbの端部Wbx(以下、単にブレード端ともいう)の検出が行われる。
【0028】
ここで、測定用端末23は、メイン処理からサブ処理の図11に示すステップS41~ステップS45に沿ったブレード端検出処理に移行する。ブレード端検出処理は、測定用端末23の機能部の1つである測定対象検出部23bにて行われる。
【0029】
ステップS41では、ブレード端の検出を開始するにあたり、ステップS25で取得した静止画「Img」がRGB色空間からHSV色空間に変換される。
ステップS42では、識別用テープ22の真青色である青色HSVの値域が定義される。
【0030】
ステップS43では、静止画「Img」全体に対し、定義した色値域によりマスク処理が行われる。マスク処理は2値化処理であり、定義した色値域の部分が「白色」、それ以外の部分が「黒色」に変換されて明確化される。つまり、白色部分に識別用テープ22の部分が含まれるが、撮影範囲内の意図しない真青色がノイズとして含まれる。
【0031】
ステップS44では、2値化処理後のブロブ情報から、面積最大の白色部分が取得される。つまり、意図した真青色の識別用テープ22の部分は、周囲風景の中の真青色よりも十分に大きく面積が最大となる。
【0032】
ステップS45では、面積最大の白色部分の重心位置が周知の手法にて特定され、重心位置のピクセル座標位置(w,h)が識別用テープ22の位置、すなわち測定対象のワイパブレードWbの端部Wbxとして取得される。このようにブレード端の抽出がなされる。ブレード端の座標位置(w,h)の取得により、ブレード端検出のサブ処理が完了し、再びメイン処理が上記ステップS25から次に進む。
【0033】
ステップS26では、ブレード端の座標位置(w,h)と時間「t=0」とが互いに紐付けされて、データリスト(0,w,h)が得られる。
ステップS27では、時間「t=t+1」として時間が進められる。
【0034】
ステップS28では、qコマンドがあったかが判定される。すなわち、動画データDaからデータリストを取得するにあたり所定時間の設定がなされ、設定時間に到達したかが判定される。qコマンドが無い場合、設定時間前として上記ステップS24に戻る。
【0035】
ステップS24では、動画データDaの2枚目の静止画フレームが時間「t=1」として取得される。以降、上記と同様の処理が繰り返し行われる。次の処理ループではデータリスト(1,w,h)が、更に次の処理ループではデータリスト(2,w,h)が取得されるというように、座標データリスト(t,w,h)が順次追加される。そして、設定時間に到達してqコマンドが生じると、座標データリスト取得処理が完了となる。
【0036】
測定対象のワイパブレードWbは、払拭作動により図1に示すウインドシールドWSの外表面における円弧状の払拭領域A1を移動する。そのため、上記のようにして得られた座標データリスト(t,w,h)は、時間「t」の経過とともにブレード端の座標位置(w,h)は変化する。また、図5に示すピクセル座標において、ブレード端(ワイパブレードWbの端部Wbx)の変位は、円弧状の払拭領域A1における円弧状の払拭軌跡L1上を移動する。ブレード端の位置ベクトル「at」は、at(w(t),h(t))で表すことができる。
【0037】
[画像処理:払拭軌跡座標及び微小振動への変換処理]
次いで、測定用端末23による画像処理として、図10に示すステップS31~ステップS36に沿って払拭軌跡座標及び微小振動への変換処理が行われる。払拭軌跡上変位及び微小振動への変換処理は、測定用端末23の機能部の1つであるデータ変換部23cにて行われる。
【0038】
ステップS31では、上記で取得した座標データリスト(t,w,h)が読み込まれる。
ステップS32では、ピクセル座標位置(w,h)が円弧状の払拭軌跡座標位置(x)に変換され、時間「t」を含む座標データリスト(t,w,h)が座標データリスト(t,x)に変換される(図5参照)。
【0039】
ステップS33では、払拭軌跡上位置「x」がピクセル値から長さ値[mm]に変換される。特定点の円弧の基準長さから変換が行われる。払拭軌跡上位置の時間変化「x(t)」は、図6に示すように時間「t」の経過とともにゼロから所定長さの範囲で上下する波形となる。すなわち、ワイパブレードWbの往復払拭作動がおおよそ反映されてのものである。
【0040】
ステップS34では、払拭軌跡上位置の時間変化「x(t)」に対してFFT(高速フーリエ変換)による周波数解析処理が行われ、ハイパスフィルタ処理が行われる。つまり、ワイパブレードWbの主たる往復払拭作動に基づく大きな変化分の除去が行われる。
【0041】
ステップS35では、更にローパスフィルタ処理、すなわちノイズ除去が行われて、図7に示す微小振動「σ」の波形が得られる。
ステップS36では、測定用端末23の機能部の1つである測定結果出力部23dにて微小振動「σ」の波形がグラフ化され、測定用端末23の表示部に表示される。こうして、払拭軌跡座標及び微小振動への変換処理が完了となる。
【0042】
そして、測定者20は、図7に示す微小振動「σ」のグラフ表示に対して例えば良否判断のしきい値thを設定する等して、微小振動「σ」が許容内であれば車両用ワイパ装置10の各種構成が適正であると判断する。一方で、微小振動「σ」が許容外であれば、車両用ワイパ装置10の各種構成にフィードバックし、簡易に設計を見直すことが期待できるものとなっている。
【0043】
更には図示しないが、車両ECUに上記機能を搭載して都度のワイパW1,W2の微小振動「σ」を計測し、間接的にウインドシールドWSの汚れ状況を都度検出することも可能である。この場合、検出した汚れ状況次第で、ウォッシャ液の噴射を伴ったワイパW1,W2の自動払拭作動を行わせることも一例として可能である。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の作用効果について説明する。
(1)作動状態にあるワイパW1のワイパブレードWbを含む動画データDaから、都度変位するワイパブレードWbの端部Wbxのピクセル座標位置(w,h)を時間tと紐付けた座標データリスト(t,w,h)が取得される。次いで、座標データリスト(t,w,h)におけるピクセル座標位置(w,h)がワイパブレードWbの円弧状の払拭軌跡上位置xに変換される。そして、払拭軌跡上位置の時間変化x(t)が周波数解析されて、ワイパW1の払拭作動時に生じ得る微小振動σの測定結果が得られる。上記一連の画像処理は、近年では、入手が簡単で扱いも簡単なオープンソースの機能プログラム、本実施形態では一例としてPython言語のOpenCVの測定用端末23へのインストールで対応できる。つまり、払拭作動するワイパW1を身近なカメラ21で動画撮影し、オープンソースの機能プログラムによる画像処理を行うことで、払拭作動時のワイパW1の微小振動σの測定を簡易に行うことができる。
【0045】
また本実施形態では、ワイパブレードWbにて生じ得る微小振動σをワイパブレードWbの直接的な撮影により測定するため、ピボット軸12aにて測定する従来技術等と比べても、測定精度の向上は十分に期待できる。特に、微小振動σの生じ易いワイパブレードWbの端部Wbxについても直接的な撮影による測定が可能であるため、特に有用である。また、ピボット軸12aによる測定は作動方向に限られるが、本実施形態のようなワイパブレードWbの撮影による測定は撮影方向に自由度があり、測定の自由度は高い。
【0046】
(2)測定対象の作動部品である本実施形態のワイパブレードWbは、円弧状の払拭作動を行うものである。そのため、座標データリスト(t,w,h)から作動部品への変位軌跡上位置への変換は、本実施形態では円弧状の払拭軌跡上位置xへと合理的な変換がなされている(図5参照)。
【0047】
(3)ワイパブレードWbの端部Wbxは、画像処理の過程で周囲風景に対して明確化して検出されるため(図11参照)、上記振動測定を効果的に行うことが期待できる。
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・測定対象部位であるワイパブレードWbの端部Wbxに識別用テープ22を取り付けてカメラ21にて得た動画データDaの画像処理の過程で抽出するようにしたが、測定時に着色してもよい。また、製品として着色される部分があれば、その着色部を測定対象としてもよい。また、測定対象に複数色を用いてもよい。
【0049】
・測定対象部位を後の工程で抽出し易いように色で区別したが、ワイパブレードWbの端部Wbxの特徴的形状から自動で画像認識できれば、形状にて区別するようにしてもよい。また、車両ECUにて都度のワイパW1,W2の微小振動「σ」を計測する場合等、一例として「雨の日に作動している」等という特徴量からワイパブレードWbの端部Wbxを自動で画像認識できれば、特徴量にて区別するようにしてもよい。
【0050】
・基準長さを規定するデータム定規がカメラ21の画像内に一緒に映り込むようにして撮影してもよい。画像処理の過程において払拭軌跡上位置xのピクセル値から長さ値への変換時等に利用することができる。
【0051】
・運転席側のワイパW1の払拭作動時にワイパブレードWbに生じ得る微小振動σの測定対象をワイパブレードWbの端部Wbxに設定したが、ワイパブレードWbの他の部位に測定対象を設定してもよい。また、測定対象をワイパアームWaとしてもよい。また、助手席側のワイパW2であってもよい。更に、ワイパW1,W2以外で車両用ワイパ装置10を構成する作動部品、例えばリンク機構12、ピボット軸12a,12b等であってもよい。
【0052】
・ワイパW1,W2の払拭態様が単純な円弧状をなすものであったが、これに限らない。例えば、払拭過程でワイパブレードWbが長手方向にも変位する所謂伸縮式の払拭態様のものや、払拭過程でワイパブレードWbが並行に維持される所謂パンタグラフ式の払拭態様のもの等、円弧類似形状の払拭態様をなすものであってもよい。
【0053】
・ワイパW1,W2の払拭対象は車両前方のウインドシールドWSであったが、例えば車両後方のウインドシールド、車両搭載の各種カメラやセンサ等であってもよい。
[付記]
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0054】
(イ)作動部品(Wb)の作動時に生じ得る微小振動(σ)を測定する振動測定装置(23)であって、
動画撮影が可能なカメラ(21)にて得た作動状態の前記作動部品を含む動画データ(Da)から、都度変位する前記作動部品の測定対象部位(Wbx)のピクセル座標位置(w,h)を時間(t)と紐付けた座標データリスト(t,w,h)を取得する座標データ取得部(23a)と、
前記座標データリストにおける前記ピクセル座標位置を前記作動部品の変位軌跡上位置(x)とした座標データリスト(t,x)に変換するデータ変換部(23c)と、
前記変位軌跡上位置の時間変化(x(t))を周波数解析して前記微小振動の測定結果を得る測定結果出力部(23d)と
を備えて構成されている、振動測定装置。
【0055】
上記構成は、車両用ワイパ以外への適用を考慮したものであり、上記同様の効果が期待できると推察してのものである。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用ワイパ装置、21 カメラ、23 測定用端末(ワイパ振動測定装置)、23a 座標データ取得部、23c データ変換部、23d 測定結果出力部、W1,W2 ワイパ、Wb ワイパブレード(作動部品)、Wbx 端部(測定対象部位)、Da 動画データ、w,h ピクセル座標、t 時間、t,w,h 座標データリスト、x 払拭軌跡上位置(変位軌跡上位置)、x(t) 払拭軌跡上位置の時間変化(変位軌跡上位置の時間変化)、σ 微小振動
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