(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】磁性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01F 1/26 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H01F1/26
(21)【出願番号】P 2021502346
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007871
(87)【国際公開番号】W WO2020175590
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019034882
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松村 恵理
(72)【発明者】
【氏名】林 栄一
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194099(WO,A1)
【文献】特開2010-045120(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114764(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/140367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体上に設けられた、樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、
樹脂組成物層の支持体側とは反対側の面に接合するカバーフィルム層と、を有する磁性フィルムであって、
樹脂組成物は、磁性粉体を含有し、
カバーフィルム層が、
粘着剤が塗工されていない自己粘着性フィルムであ
り、
カバーフィルム層の樹脂組成物層に対する密着強度が、0.1gf/cm以上10gf/cm以下である、磁性フィルム。
【請求項2】
磁性粉体の含有量が、樹脂組成物の不揮発分を100質量%としたとき、75質量%以上98質量%以下である、請求項1に記載の磁性フィルム。
【請求項3】
樹脂組成物層の最低溶融粘度が、50,000ポイズ以上50,000,000ポイズ以下である、請求項1又は2に記載の磁性フィルム。
【請求項4】
樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項5】
樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項6】
樹脂組成物が、硬化剤及び硬化促進剤の少なくともいずれかを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項7】
樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項8】
磁性粉体が、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の磁性フィルム。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の磁性フィルムの製造方法であって、
支持体上に樹脂組成物を含む樹脂ワニスを塗布し、樹脂組成物層を形成させる工程、及び
樹脂組成物層上にカバーフィルム層を積層する工程、を含む、磁性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉体を含む樹脂組成物層及びカバーフィルム層を有する磁性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーインダクタ、高周波帯域用インダクタ、コモンモードチョークコイルと呼ばれるインダクタは、携帯電話機、スマートフォンなどの情報端末に数多く搭載されている。従来は独立したインダクタ部品が回路基板上に実装されていたが、近年は回路基板の導体パターンによりコイルを形成し、インダクタを回路基板の内部に設ける手法が行われるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回路基板の薄型化のため、インダクタ基板を回路基板のコア基板に内蔵することが開示されており、絶縁層上に形成される複数の導体パターンによりインダクタを形成したインダクタ基板が開示されている。また絶縁層を形成する材料として、支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層を構成する樹脂組成物に磁性粉体を含有させた接着フィルムが開示されている。
【0004】
近年の情報端末のさらなる薄型化、小型化の要求を満たすため、インダクタ素子のさらなる薄型化、小型化を行うためには、コイルの巻き数を減らし、コイルを構成する配線の断面積を小さくすることが求められる。しかし、前記のような接着性の磁性フィルムにより形成された磁性層上の導体パターンで構成されるインダクタにおいて、単純にコイルの巻き数を減らし、コイルを構成する配線の断面積を小さくするとインダクタンスが低下してしまう。一方、磁性層の透磁率(μ’)を高めることができれば、インダクタ素子のL値およびQ値を向上させることができるため、高透磁率の磁性層を形成可能な磁性フィルムの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プリント基板の絶縁層用途に使用される接着フィルムは、一般に、樹脂組成物のワニスを支持体に塗布し、樹脂組成物を加熱乾燥することで、樹脂組成物層を形成して製造する。ここで樹脂組成物層の支持体側とは反対側の面には、異物の付着防止等のため、樹脂組成物層上にカバーフィルム層を設けられる場合がある。カバーフィルムとしては、専ら2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が使用されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らの鋭意研究の結果、磁性フィルムにおいては、磁性粉体を含む樹脂組成物層上にカバーフィルム層を設けると、カバーフィルム層が樹脂組成物層に貼り付きにくい傾向があることを知見した。特に、高透磁率の達成等のため、樹脂組成物中の磁性粉体の含有量を高くするほど、その傾向が顕著となる。シリカ等の無機充填材を含む樹脂組成物層を有する、プリント基板の絶縁層用途に使用される接着フィルムにおいては、カバーフィルム層が比較的容易に樹脂組成物層に貼りつくことから、前記課題は磁性粉体を含む樹脂組成物層を用いることによって生じた新たな課題である。
【0008】
磁性フィルムにカバーフィルム層を設けない場合、枚葉の製品においては、フィルムを枚葉形態に調製する際や、梱包する際などに、異物の付着リスクが増大する。一方、ロール状の製品であれば、枚葉に比べてごみの付着リスクを小さくすることが可能である。しかしこの場合も、ロール状に巻き取る際に支持体表面に存在する異物の付着リスクが存在する。またロール状であっても、磁性フィルムをスリットして使用する場合、やはり異物が付着するリスクが高くなる。
【0009】
本発明の課題は、磁性粉体を含有する樹脂組成物層上にカバーフィルム層を設けることにより、樹脂組成物層への異物の付着を抑制することができる磁性フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、所定のカバーフィルム層が、磁性粉体を含む樹脂組成物層であっても容易に貼り付くことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 支持体と、
該支持体上に設けられた、樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、
樹脂組成物層の支持体側とは反対側の面に接合するカバーフィルム層と、を有する磁性フィルムであって、
樹脂組成物は、磁性粉体を含有し、
カバーフィルム層が、自己粘着性フィルムである、磁性フィルム。
[2] 磁性粉体の含有量が、樹脂組成物の不揮発分を100質量%としたとき、75質量%以上98質量%以下である、[1]に記載の磁性フィルム。
[3] 樹脂組成物層の最低溶融粘度が、50,000ポイズ以上50,000,000ポイズ以下である、[1]又は[2]に記載の磁性フィルム。
[4] 樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物である、[1]~[3]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[5] 樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[6] 樹脂組成物が、硬化剤及び硬化促進剤の少なくともいずれかを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[7] 樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[8] カバーフィルム層の樹脂組成物層に対する密着強度が、0.1gf/cm以上10gf/cm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[9] 磁性粉体が、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれかに記載の磁性フィルム。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の磁性フィルムの製造方法であって、
支持体上に樹脂組成物を含む樹脂ワニスを塗布し、樹脂組成物層を形成させる工程、及び
樹脂組成物層上にカバーフィルム層を積層する工程、を含む、磁性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁性粉体を含有する樹脂組成物層を有する場合であっても、樹脂組成物層への異物の付着を抑制することができる磁性フィルム、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、磁性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0015】
[磁性フィルム]
本発明の磁性フィルムは、支持体上に設けられた、樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、樹脂組成物層の支持体側とは反対側の面に接合するカバーフィルム層とを有し、樹脂組成物は、磁性粉体を含有し、カバーフィルム層が、自己粘着性フィルムである。支持体と樹脂組成物層の間には、1以上の任意の層が設けられていてもよい。
【0016】
図1は、本発明の磁性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
図1に示す磁性フィルム1においては、支持体11、樹脂組成物層12、及びカバーフィルム層13が順に積層されている。
以下、本発明の磁性フィルムを構成する各層について詳細に説明する。
【0017】
<支持体>
磁性フィルムは、支持体を有する。支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0018】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0019】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0020】
支持体と樹脂組成物層が接合する場合、支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0021】
また、支持体と樹脂組成物層が接合する場合などに、支持体の樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0022】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0023】
<樹脂組成物層>
磁性フィルムは、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有する。樹脂組成物層は、支持体上に直接または間接的に形成されており、支持体側の面とは反対側の面上にカバーフィルム層が設けられている。樹脂組成物は、磁性粉体を含有しているものを用いることができ、通常はその硬化物が十分な機械強度と比透磁率を有する。このため、樹脂組成物は磁性粉体を含有する熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。斯かる熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、磁性粉体及び熱硬化性樹脂を含む組成物が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、インダクタ素子の磁性層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物は、(a)磁性粉体、及び(b)エポキシ樹脂を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(c)硬化剤、(d)硬化促進剤、(e)熱可塑性樹脂、(f)磁性粉体以外の無機充填材、(g)その他の添加剤を含み得る。
【0024】
-(a)磁性粉体-
樹脂組成物は、(a)磁性粉体を含有する。樹脂組成物層の硬化物がインダクタ基板に含まれる場合、(a)磁性粉体は軟磁性粉体が好ましい。(a)磁性粉体としては、例えば軟磁性粉体として、純鉄粉末;Mg-Zn系フェライト、Fe-Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類、が挙げられる。
【0025】
中でも、(a)磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
【0026】
(a)磁性粉体としては、市販の磁性粉体を用いることができる。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
(a)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすい。しかし、特に球状の磁性粉体を用いる方が、通常、磁気損失を低くできる観点から好ましい。
【0028】
(a)磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。また、好ましくは8μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。
【0029】
(a)磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0030】
(a)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下である。
【0031】
(a)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは84質量%以上である。また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0032】
-(b)エポキシ樹脂-
樹脂組成物は、(b)成分としてエポキシ樹脂を含有する。(b)エポキシ樹脂は、(a)磁性粉体を樹脂組成物中に分散・結合させ、十分な機械強度を有する磁性層を形成し得る。
【0033】
エポキシ樹脂は、例えば、グリシロール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0035】
エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(b)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよいが、樹脂組成物層とカバーフィルム層との密着強度を向上させる観点から、液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含むことが好ましい。
【0036】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)、「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(b)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:4、より好ましくは1:0.3~1:3.5、さらに好ましくは1:0.6~1:3である。
【0039】
(b)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0040】
(b)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0041】
(b)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度を示す磁性層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0042】
-(c)硬化剤-
樹脂組成物は、任意の成分として、(c)硬化剤を含有していてもよい。(c)硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化を効果的に進行させて、硬化物の機械強度を高めることができる。(c)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤が挙げられる。(c)硬化剤としては、樹脂組成物の硬化物の耐熱性や機械強度等の観点から、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤が好ましい。(c)硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0044】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0045】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0046】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0047】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0048】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0049】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0050】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0051】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0052】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216)、V-05(カルボジイミド基当量:262)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.1~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。
【0054】
(c)硬化剤の含有量は、良好な機械強度を示す磁性層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0055】
-(d)硬化促進剤-
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(d)成分としての硬化促進剤を含んでいてもよい。(d)硬化促進剤を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化を効果的に進行させて、硬化物の機械強度を高めることができる。(d)硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。(d)硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。(d)硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0057】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0058】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0059】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0060】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0061】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0062】
(d)硬化促進剤の含有量は、良好な機械強度を示す磁性層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。上限は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0063】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化を効果的に進行させて、硬化物の機械強度を高める観点から、(c)硬化剤及び(d)硬化促進剤の少なくともいずれかを含むことが好ましく、(c)硬化剤及び(d)硬化促進剤の両方を含むことがより好ましい。
【0064】
-(e)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物は、任意の成分として、(e)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。(e)熱可塑性樹脂を用いることにより、樹脂組成物層の応力を緩和させることができる。
【0065】
(e)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、フェノキシ樹脂がより好ましい。また、(e)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ポリイミド樹脂としては、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0067】
ポリイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0068】
ポリカーボネート樹脂としては、カーボネート構造を有する樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。
【0069】
カーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱ガス化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0070】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0071】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7553BH30」、及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0072】
アクリル樹脂としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、官能基含有アクリル樹脂が好ましく、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂がより好ましい。官能基含有アクリル樹脂の官能基とは、フェノール性水酸基、エポキシ基等が挙げられる。
【0073】
官能基含有アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000~1000000であり、より好ましくは30000~900000である。
【0074】
官能基含有アクリル樹脂の官能基当量は、好ましくは1000~50000であり、より好ましくは2500~30000である。
【0075】
ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂としては、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス社製「SG-80H」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:350000g/mol、エポキシ価0.07eq/kg、ガラス転移温度11℃))、ナガセケムテックス社製「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、ガラス転移温度12℃))が挙げられる。
【0076】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、デンカ社製の電化ブチラール「4000-2」、「5000-A」、「6000-C」、「6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0077】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0078】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0079】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
【0080】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0081】
(e)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは750,000以下、特に好ましくは500,000以下である。
【0082】
(e)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0083】
-(f)磁性粉体以外の無機充填材-
樹脂組成物は、任意の成分として、(f)磁性粉体以外の無機充填材(以下、単に「(f)無機充填材」ということがある。)を含有していてもよい。(f)磁性粉体以外の無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物層に、例えば絶縁性向上等、無機充填材の有する他の機能を付与することができる。
【0084】
(f)無機充填材の材料は無機化合物であり、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。(f)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
(f)無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0086】
(f)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、0.3μm以上である。また、好ましくは5μm以下、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、1μm以下である。無機充填材の平均粒径は、(a)磁性粉体の平均粒径の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0087】
(f)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0088】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0089】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、無機充填材100質量部に対して、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0090】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0091】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0092】
(f)無機充填材の含有量(質量%)は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0093】
(f)無機充填材の含有量(体積%)は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上である。また、上限は、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。
【0094】
-(g)その他の添加剤-
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、(g)その他の添加剤を含んでいてもよい。斯かる添加剤としては、例えば、難燃剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0095】
樹脂組成物は、例えば、配合成分を、3本ロール、回転ミキサー、高速回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。樹脂組成物は、製造後等に脱泡を行ってよい。例えば、静置による脱泡、遠心分離による脱泡、真空脱泡、撹拌脱泡、及びこれらの組合せ等による脱泡が挙げられる。
【0096】
先述したように、磁性フィルムにより形成される磁性層の比透磁率を高くするには、磁性フィルムの樹脂組成物層に含まれる磁性粉体の含有量を多くすることが考えられる。磁性粉体の含有量が多くすると樹脂組成物層の最低溶融粘度が高くなる傾向となる。また、磁性フィルムにより磁性層を形成する際、熱プレスにより磁性層を形成すると、磁性層中の磁性粉体密度をより高くすることが可能となるため、磁性層の比透磁率をより高くすることができる。一般に回路基板の絶縁層形成に使用される接着フィルムは、真空ラミネータ等でラミネートし、その後熱硬化して絶縁層を形成させるため、最低溶融粘度が相対的に低く設定されるが、本発明の磁性フィルムにおける樹脂組成物層の最低溶融粘度は、熱プレスによる磁性層の形成に適するように相対的に高く設定することが好ましい。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、上記観点から、好ましくは50,000ポイズ以上、より好ましくは100,000ポイズ以上、さらに好ましくは500,000ポイズ以上であり、好ましくは50,000,000ポイズ以下、より好ましくは30,000,000ポイズ以下、さらに好ましくは10,000,000ポイズ以下である。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0097】
樹脂組成物層の厚みとしては、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0098】
<カバーフィルム層>
磁性フィルムは、カバーフィルム層を有し、カバーフィルム層は、樹脂組成物層上に設けられている。本発明者らは、先述したとおり、磁性粉体を含む樹脂組成物層上には、カバーフィルム層が貼り付き難い傾向となることを知見し、さらに、磁性粉体の含有量が多いほど、カバーフィルム層が樹脂組成物層に貼り付き難いことを知見している。また熱プレスによる磁性層形成に適するように、樹脂組成物層の最低溶融粘度を上記のように高い範囲に設定した場合、さらにカバーフィルム層が樹脂組成物層に貼り付き難くなることを知見している。本発明では、カバーフィルム層として、自己粘着性フィルムを用いることで、これらの場合においても、樹脂組成物層上にカバーフィルム層を設けることが可能となる。これにより、樹脂組成物層への異物の付着を抑制することが可能となる。またカバーフィルム層がない磁性フィルムを用いると、樹脂組成物層表面の異物の付着の問題の他に、磁性フィルムをスリットする際に、フィルム端部において、樹脂組成物層の割れや欠けが起り易くなること傾向がある。本発明により、磁性粉体を含む樹脂組成物層上にカバーフィルム層を設けることが可能となる結果、通常は、樹脂組成物層への異物の付着、およびスリット時の樹脂組成物層の割れや欠けの発生を抑制することが可能となる。
【0099】
先述したように、カバーフィルム層は、自己粘着性フィルムである。用語「自己粘着性フィルム」とは、基材樹脂と粘着樹脂とを共押出して形成された粘着面を有するフィルムであり、粘着剤が塗工されていなくとも粘着力を有するフィルムを表す。
【0100】
自己粘着性フィルムの粘着力は、23℃の条件下、スライドグラスに対して、好ましくは0.1gf/cm以上、より好ましくは0.2gf/cm以上、さらに好ましくは0.5gf/cm以上であり、好ましくは20gf/cm以下、より好ましくは15gf/cm以下、さらに好ましくは10gf/cm以下である。自己粘着フィルムの粘着力は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0101】
粘着樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体;直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0102】
基材樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0103】
カバーフィルム層は、市販品を用いることができる。用いられ得るカバーフィルムの市販品としては、例えば、東レフィルム加工社製の「R025」、「R033KS」;フタムラ化学社製の「FSA-300M」、「FSA-150M」;東洋紡社製の「MS300」;が挙げられる。
【0104】
カバーフィルム層の厚みとしては、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。下限は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
【0105】
粘着面を有するフィルムとしては、基材樹脂層に粘着剤を塗工して形成される粘着剤塗工型フィルムもあるが、カバーフィルム層を剥離する際、粘着剤が樹脂組成物層上に残留し、磁性層と他の層との密着性の低下や、高透磁率の達成が困難になる惧れがあることから、本発明のカバーフィルム層には適さない。
【0106】
[磁性フィルムの製造方法]
本発明の磁性フィルムは、先述のとおり、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、該樹脂組成物層上に設けられたカバーフィルム層とを有する。斯かる磁性フィルムの製造方法としては、
(1)支持体上に樹脂ワニスを塗布し、樹脂組成物層を形成させる工程、及び
(2)樹脂組成物層上にカバーフィルム層を積層する工程、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0107】
<(1)工程>
(1)工程は、支持体上に樹脂ワニスを塗布し、樹脂組成物層を形成させる工程であり、この工程により支持体上に樹脂組成物層を形成する。(1)工程の詳細は、有機溶剤に樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させる。
【0108】
樹脂ワニスは、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたものである。樹脂組成物については先述のとおりである。
【0109】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
樹脂ワニスの塗布は、厚さが均一な塗膜を形成し得る方法により実施することができる。樹脂ワニスの塗布方法としては、例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター等の塗工装置を用いて樹脂ワニスを支持体上に塗工することができる。
樹脂ワニスを支持体上に塗布後、樹脂ワニスを乾燥させ、樹脂組成物層を形成する。
【0111】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量としては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、1質量%以下となるように乾燥させる。
【0112】
乾燥条件としては、樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0113】
<(2)工程>
(2)工程は、樹脂組成物層上にカバーフィルムを積層する工程であり、この工程により樹脂組成物層上にカバーフィルム層を形成する。(2)工程の詳細は、樹脂組成物層を形成後、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体側とは反対側の面)にカバーフィルムをさらに積層させる。
【0114】
樹脂組成物層とカバーフィルムとの接合は、例えば、カバーフィルムを樹脂組成物層にロール圧着やプレス圧着等で樹脂組成物層にカバーフィルムをラミネート処理することが好ましい。
【0115】
ラミネート処理は、加熱条件下において行ってもよい。加熱温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0116】
ラミネート処理の圧着圧力や圧着時間は、所期の密着強度が得られる限り特に限定されず、適宜決定してよい。例えば、圧着圧力は、0.1kgf/cm2~18kgf/cm2(0.0098MPa~1.77MPa)の範囲、圧着時間は5秒間~400秒間の範囲としてよい。ラミネート処理は、減圧条件下(例えば26.7hPa以下)で実施してもよい。
【0117】
ラミネート処理は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
【0118】
<磁性フィルムの物性等>
樹脂組成物層とカバーフィルム層と間の密着強度としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1gf/cm以上、より好ましくは0.2gf/cm以上、さらに好ましくは0.3gf/cm以上である。前記の密着強度の上限としては、カバーフィルム層を剥離時の樹脂剥がれを抑制する観点から、好ましくは10gf/cm以下、より好ましくは8gf/cm以下、さらに好ましくは6gf/cm以下である。密着強度は、室温(23℃)の条件下で測定したものであり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0119】
[磁性層の製造方法]
本発明の磁性フィルムを用いて、インダクタ素子等における磁性層を製造する場合、磁性層は、例えば、下記の(A)及び(B)の工程を含む方法により製造することができる。
(A)磁性フィルムのカバーフィルム層を剥離する工程、及び
(B)磁性フィルムを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程。
【0120】
<(A)工程>
(A)工程は、磁性フィルムのカバーフィルム層を剥離する工程である。(A)工程を行うにあたって、磁性フィルムを準備する工程を含んでいてもよい。磁性フィルムは、上記において説明したとおりである。
【0121】
カバーフィルム層を剥離する方法は、絶縁用途に用いる、磁性粉体を含まない樹脂組成物層を有する接着フィルムにおけるカバーフィルム層を剥離する方法と同様の方法にて行うことができる。剥離は手動で行ってもよく、機械的に剥離してもよい。磁性フィルムがロール状である場合、磁性フィルムを搬送しながらカバーフィルム層を剥離してもよく、磁性フィルムが枚葉である場合、カバーフィルム層を剥離する剥離装置等を用いてカバーフィルム層を剥離してもよい。
【0122】
<(B)工程>
(B)工程は、磁性フィルムを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程である。(B)工程の一実施形態として、磁性フィルムを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に熱プレスし、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。
【0123】
熱プレスの加熱温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは、150℃以上であり、また、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0124】
熱プレスのプレス時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上であり、また、好ましくは24時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【0125】
熱プレスの圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは100MPa以下である。
【0126】
磁性層形成後、通常、支持体はカバーフィルム層と同様に剥離される。本発明の磁性フィルムはインダクタ基板の磁性層を形成するために好適に使用することができる。このようなインダクタ基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0127】
また、かかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0129】
<樹脂組成物1の調製>
「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)14質量部、「HP-4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、DIC社製)14質量部、「YX7553」(フェノキシ樹脂、不揮発分30質量%、三菱ケミカル社製)35質量部、「KS-1」(ポリビニルアセタール樹脂、積水化学工業社製)23質量部をMEK10質量部、シクロヘキサノン10質量部、エタノール30質量部、トルエン30質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、「LA-7054」(トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、不揮発分60質量%、DIC社製)28質量部、「2E4MZ」(硬化促進剤、四国化成工業社製)0.1質量部、「AW2-08PF3F」(磁性粉体、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径3.0μm、エプソンアトミックス社製)1010質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物1を調製した。
【0130】
<樹脂組成物2の調製>
樹脂組成物1において、無機充填材(「SO-C2」(シリカ、平均粒子径0.5μm、アドマテックス社製)を「KBM-573」(アミノシラン系カップリング剤、信越化学工業社製)で処理したシリカ)35質量部を添加した。以上の事項以外は樹脂組成物1と同様にして樹脂組成物2を調製した。
【0131】
<樹脂組成物3の調製>
「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)7質量部、「HP-4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、DIC社製)7質量部、「YX7553」(フェノキシ樹脂、不揮発分30質量%、三菱ケミカル社製)135質量部を撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、「LA-7054」(トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、不揮発分60質量%、DIC社製)14質量部、「2E4MZ」(硬化促進剤、四国化成工業社製)0.1質量部、「AW2-08PF3F」(磁性粉体、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径3.0μm、エプソンアトミックス社製)850質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物3を調製した。
【0132】
<樹脂組成物4の調製>
樹脂組成物3において、「AW2-08PF3F」(磁性粉体、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径3.0μm、エプソンアトミックス社製)850質量部を、「M05S」(磁性粉体、Fe-Mn系フェライト、平均粒径3.0μm、パウダーテック社製)600質量部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物3と同様にして樹脂組成物4を調製した。
【0133】
<樹脂組成物5の調製>
樹脂組成物3において、「AW2-08PF3F」(磁性粉体、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径3.0μm、エプソンアトミックス社製)850質量部を、「PST-S」(磁性粉体、Fe-Si-Al系合金、平均粒径25μm、山陽特殊製鋼社製)850質量部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物3と同様にして樹脂組成物5を調製した。
【0134】
<実施例1:磁性フィルム1の作製>
支持体として、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)フィルム(厚さ38μm)を用意した。樹脂組成物1をPETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、65℃から120℃で8分間、樹脂組成物層中の残留溶媒量が0.9質量%となるように乾燥した。次いで樹脂組成物層の表面にカバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を60℃でラミネートして磁性フィルム1を得た。
【0135】
<実施例2:磁性フィルム2の作製>
実施例1において、カバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を、カバーフィルム「R033KS」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み45μm)に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性フィルム2を作製した。
【0136】
<実施例3:磁性フィルム3の作製>
実施例1において、カバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を、カバーフィルムを「FSA-300M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性フィルム3を作製した。
【0137】
<実施例4:磁性フィルム4の作製>
実施例1において、カバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を、カバーフィルムを「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性フィルム4を作製した。
【0138】
<実施例5:磁性フィルム5の作製>
実施例1において、カバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を、カバーフィルムを「MS300」(自己粘着性フィルム、東洋紡社製、厚み40μm)に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性フィルム5を作製した。
【0139】
<実施例6:磁性フィルム6の作製>
樹脂組成物2をPETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、65℃から120℃で8分間、樹脂組成物層中の残留溶媒量が0.8質量%となるように乾燥した。次いで樹脂組成物層の表面にカバーフィルム「R033KS」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み45μm)を60℃でラミネートして磁性フィルム6を得た。
【0140】
<実施例7:磁性フィルム7の作製>
実施例6において、乾燥時間を8分間から10分間に変え、樹脂組成物層中の残留溶媒量を0.8質量%から0.5質量%に変えた。以上の事項以外は実施例6と同様にして磁性フィルム7を作製した。
【0141】
<実施例8:磁性フィルム8の作製>
実施例6において、カバーフィルム「R033KS」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み45μm)を、カバーフィルムを「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)に変えた。以上の事項以外は実施例6と同様にして磁性フィルム8を作製した。
【0142】
<実施例9:磁性フィルム9の作製>
樹脂組成物3をPETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、65℃から120℃で8分間、樹脂組成物層中の残留溶媒量が約1.3質量%となるように乾燥した。次いで樹脂組成物層の表面にカバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を60℃でラミネートして磁性フィルム9を作製した。
【0143】
<実施例10:磁性フィルム10の作製>
樹脂組成物4をPETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、65℃から120℃で8分間、樹脂組成物層中の残留溶媒量が約1.9質量%となるように乾燥した。次いで樹脂組成物層の表面にカバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を60℃でラミネートして磁性フィルム10を作製した。
【0144】
<実施例11:磁性フィルム11の作製>
樹脂組成物5をPETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、65℃から120℃で8分間、樹脂組成物層中の残留溶媒量が約1.2質量%となるように乾燥した。次いで樹脂組成物層の表面にカバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を60℃でラミネートして磁性フィルム11を作製した。
【0145】
<比較例1:磁性フィルム12の作製>
実施例1において、カバーフィルム「R205」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み40μm)を、カバーフィルム「MA-411」(OPPフィルム、王子エフテックス社製、厚み15μm)に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性フィルム12を作製した。
【0146】
<比較例2:磁性フィルム13の作製>
実施例6において、カバーフィルム「R033KS」(自己粘着性フィルム、東レフィルム加工社製、厚み45μm)を、カバーフィルム「MA-411」(OPPフィルム、王子エフテックス社製、厚み15μm)に変えた。以上の事項以外は実施例6と同様にして磁性フィルム13を作製した。
【0147】
<比較例3:磁性フィルム14の作製>
実施例9において、カバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を、カバーフィルム「MA-411」(OPPフィルム、王子エフテックス社製、厚み15μm)に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして磁性フィルム14を作製した。
【0148】
<比較例4:磁性フィルム15の作製>
実施例10において、カバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を、カバーフィルム「MA-411」(OPPフィルム、王子エフテックス社製、厚み15μm)に変えた。以上の事項以外は実施例10と同様にして磁性フィルム15を作製した。
【0149】
<比較例5:磁性フィルム16の作製>
実施例11において、カバーフィルム「FSA-150M」(自己粘着性フィルム、フタムラ化学社製、厚み30μm)を、カバーフィルム「MA-411」(OPPフィルム、王子エフテックス社製、厚み15μm)に変えた。以上の事項以外は実施例11と同様にして磁性フィルム16を作製した。
【0150】
<樹脂組成物層の最低溶融粘度の測定>
磁性フィルム1~16の樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。樹脂組成物1gについて、直径10mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から180℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、歪み0.1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、複素粘性率の中で最も低い値を最低溶融粘度(ポイズ)として求めた。
【0151】
<カバーフィルムの粘着力の測定>
カバーフィルムをそれぞれ幅24mm、長さ70mmにカットし、スライドグラス(松浪硝子工業社製「S1112」)に40℃でラミネートし、測定試料を得た。カバーフィルム層の一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温(23℃)下、50mm/分の速度で垂直方向に保護フィルムを15mm引き剥がした時の荷重を測定し、剥離強度(密着強度)を求めた。測定には、引っ張り試験機(ティー・エス・イー社製「AC-50」)を使用した。
【0152】
<樹脂組成物層とカバーフィルム層の間の密着強度の測定>
磁性フィルム1~16をそれぞれ幅27mm、長さ70mmにカットし、支持体を剥離して測定試料を得た。銅張積層板を幅27mm、長さ100mmにカットし、端から70mmのところまで両面テープ(ニチバン社製「ナイスタック」)を貼り付け、測定試料の樹脂組成物層表面に接着した。カバーフィルム層の一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温(23℃)下、50mm/分の速度で垂直方向に保護フィルムを15mm引き剥がした時の荷重を測定し、剥離強度(密着強度)を求めた。測定には、引っ張り試験機(ティー・エス・イー社製「AC-50」)を使用した。
また、測定した密着強度を以下の基準で評価した。
〇:カバーフィルムが樹脂組成物層に貼り付いた。
×:カバーフィルムが樹脂組成物層に貼り付かなかった。
【0153】
【符号の説明】
【0154】
1 磁性フィルム
11 支持体
12 樹脂組成物層
13 カバーフィルム層