IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】調光装置、画像表示装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/163 20060101AFI20241001BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20241001BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20241001BHJP
   G02F 1/1514 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
G02F1/163
G02F1/15 502
G02B27/02 Z
G02F1/15 506
G02F1/15 503
G02F1/1514
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021575659
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048447
(87)【国際公開番号】W WO2021157247
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020017658
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】河野 正洋
(72)【発明者】
【氏名】町田 暁夫
(72)【発明者】
【氏名】角野 宏治
(72)【発明者】
【氏名】仲山 正二
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-316396(JP,A)
【文献】特開2017-219781(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012108(WO,A1)
【文献】特開2017-211620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15ー1/19
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、
第1電極と対向する第2電極、
第1電極と第2電極とによって挟まれた調光層、
第1基板、
第1電極と第1基板との間に形成された保護層、及び、
調光層の着色・消色を制御する制御部、
を備えており、
制御部は、二次電池、制御回路及びコンデンサを備えており、
制御部は、
(A)二次電池によるコンデンサの充電、及び、
(B)調光層の着色時又は消色時、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する調光装置。
【請求項2】
制御部は、更に、
(C)調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間が経過した後の、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
制御部は、調光装置の着色時、第1電極及び第2電極の一方に正の電位を印加し、第1電極及び第2電極の他方に負の電位を印加し、
制御部は、調光装置の消色時、第1電極及び第2電極には、調光装置の着色時とは逆の極性を有する電圧を印加する請求項1に記載の調光装置。
【請求項4】
着色時、調光層に所望の光透過率を与える電荷量をQ0、コンデンサの電荷量をQ1、調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間T0が経過した後のコンデンサの電荷量をQ2としたとき、
0.4<(Q1-Q2)/Q0
を満足するように、制御部は、コンデンサ、並びに、第1電極及び第2電極への印加電圧を制御する請求項1に記載の調光装置。
【請求項5】
1.0≦(Q1-Q2)/Q0≦10.0
を満足するように、制御部は、コンデンサ、並びに、第1電極及び第2電極への印加電圧を制御する請求項4に記載の調光装置。
【請求項6】
0.1(秒)≦T0≦12(秒)
を満足する請求項4に記載の調光装置。
【請求項7】
第1電極及び第2電極に電圧を印加したとき、調光層に電流が流れる請求項1に記載の調光装置。
【請求項8】
調光層は、酸化タングステンから成る還元着色層、酸化タンタルから成る電解質層及びイリジウム原子を含む酸化着色層の積層構造を有する請求項1に記載の調光装置。
【請求項9】
酸化着色層は酸化イリジウムスズ系材料から成る請求項8に記載の調光装置。
【請求項10】
少なくとも第2電極と第2基板との間には水分保持部材が配設されている請求項1に記載の調光装置。
【請求項11】
調光層の有効面積をA(mm2)、コンデンサの静電容量をC(ファラッド)としたとき、
C/A>1×10-6(F/mm2
を満足する請求項1に記載の調光装置。
【請求項12】
コンデンサは、複数の並列に接続されたコンデンサから構成されている請求項1に記載の調光装置。
【請求項13】
制御回路は、
二次電池の放電時の電流を制限する電流制限回路、及び、
コンデンサ及び二次電池から第1電極及び第2電極に印加する電圧を制御する電圧制御回路、
を備えている請求項1に記載の調光装置。
【請求項14】
二次電池はリチウムイオン電池から成る請求項1に記載の調光装置。
【請求項15】
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の調光装置から成る画像表示装置。
【請求項16】
観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、
フレームに取り付けられた画像表示装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の調光装置から成る表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調光装置、係る調光装置を備えた画像表示装置、及び、係る画像表示装置を備えた表示装置に関し、より具体的には、例えば、頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)に用いられる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現実の環境(あるいはその一部)に付加情報としてバーチャルな物体や各種情報を電子情報として合成・提示する拡張現実技術(AR技術:Augmented Reality)が、注目を浴びている。この拡張現実技術を実現するために、視覚情報を提示する装置として、例えば、頭部装着型ディスプレイが検討されている。そして、応用分野として、現実の環境における作業支援が期待されており、例えば、道路案内情報の提供、メンテナンス等を行う技術者に対する技術情報提供等を挙げることができる。特に、頭部装着型ディスプレイは、手が塞がることがないため、非常に便利である。また、屋外を移動しながら映像や画像を楽しみたい場合にも、視界に映像や画像と外部環境とを同時に捉えることができるため、スムーズな移動が可能となる。
【0003】
画像形成装置によって形成された2次元画像を虚像光学系により拡大虚像として観察者に観察させるための虚像表示装置(表示装置)が周知である。そして、この表示装置において2次元画像に基づく虚像を形成することで、観察者は、外界の像と形成された虚像とを重畳して見ることができる。然るに、表示装置の置かれた周囲の環境が非常に明るい場合や、形成された虚像の内容に依っては、観察者が観察する虚像に十分なコントラストを与えることができないといった問題が生じ得る。そこで、このような問題を解決する手段、即ち、調光装置を備えた虚像表示装置(表示装置)が、例えば、国際公開WO2019/097895号公報から周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2019/097895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調光装置を構成する調光層をエレクトロクロミック材料等から構成し、調光層に電流を流すことで生じる調光層を構成する物質の電気化学的酸化還元反応に基づく色変化を応用して光の透過率を変化させる場合、短時間(例えば、ゴーグル形状であれば12秒以内、メガネサイズであれば4秒以内)で調光層を着色(発色)あるいは消色することが困難である場合がある。
【0006】
従って、本開示の目的は、短時間で着色あるいは消色し得る構成を有する調光装置、係る調光装置を備えた画像表示装置、及び、係る画像表示装置を備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の調光装置は、
第1電極、
第1電極と対向する第2電極、
第1電極と第2電極とによって挟まれた調光層、及び、
調光層の着色・消色を制御する制御部、
を備えており、
制御部は、二次電池、制御回路及びコンデンサを備えており、
制御部は、
(A)二次電池によるコンデンサの充電、及び、
(B)調光層の着色時又は消色時、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の画像表示装置は、
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、本開示の調光装置から成る。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の表示装置は、
観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、
フレームに取り付けられた画像表示装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、本開示の調光装置から成る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A及び図1Bは、それぞれ、実施例1の表示装置における光学装置及び調光装置(但し、右眼用)の模式的な正面図、及び、図1Aの矢印B-Bに沿った模式的な断面図である。
図2図2A及び図2Bは、それぞれ、実施例1の表示装置の変形例における光学装置及び調光装置(但し、右眼用)の模式的な正面図、及び、図2Aの矢印B-Bに沿った模式的な断面図であり、図2Cは、調光装置の変形例の模式的な正面図である。
図3図3A及び図3Bは、それぞれ、図1Aの矢印B-Bに沿ったと同様の調光装置の模式的な断面図、及び、左眼側から表示装置を眺めたときの表示装置(主に右眼用)の模式的な側面図である。
図4図4は、実施例1の表示装置における画像表示装置の概念図である。
図5図5は、実施例1の表示装置における画像表示装置の変形例の概念図である。
図6図6は、実施例1の表示装置を上方から眺めた模式図である。
図7図7は、実施例1の表示装置を正面から眺めた模式図である。
図8図8は、調光装置を構成する第1電極と第2電極との間に印加する電圧(ΔV)と光透過率の関係の一例を示すグラフである。
図9図9の上段、中段及び下段は、それぞれ、着色開始以降の状態における、調光装置を構成する第1電極と第2電極との間に印加した電圧、調光層を流れる電流、及び、光透過率の時間変化を示すグラフである。
図10図10の上段、中段及び下段は、それぞれ、消色開始以降の状態における、調光装置を構成する第1電極と第2電極との間に印加した電圧、調光層を流れる電流、及び、光透過率の時間変化を示すグラフである。
図11図11A及び図11Bは、実施例1における調光装置を構成する制御部及びその変形例-1の概念図である。
図12図12は、実施例1における調光装置を構成する制御部の変形例-2の概念図である。
図13図13は、制御回路及び二次電池の回路構成例を示すブロック図である。
図14図14A及び図14Bは、それぞれ、コンデンサを充電するための充電回路の等価回路図、及び、図14Aに示した等価回路図の各部位における電位の変化を示す図である。
図15図15A及び図15Bは、光透過率を制御し、且つ、第1電極及び第2電極に印加する電圧の極性を変えるための光透過率・極性制御回路の等価回路図である。
図16図16は、調光装置700の別の駆動回路の回路図である。
図17図17は、図16に示した駆動回路の動作説明を示す図である。
図18図18は、実施例2の表示装置における画像表示装置の概念図である。
図19図19は、実施例3の表示装置における画像表示装置の概念図である。
図20図20は、実施例3の表示装置における反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
図21図21は、実施例4の表示装置における画像表示装置の概念図である。
図22図22は、実施例5の表示装置を上方から眺めた模式図である。
図23図23A及び図23Bは、それぞれ、実施例6の表示装置を上方から眺めた模式図、及び、照度センサを制御する回路の模式図である。
図24図24A及び図24Bは、それぞれ、実施例7の表示装置を上方から眺めた模式図、及び、照度センサを制御する回路の模式図である。
図25図25A及び図25Bは、それぞれ、図1Aの矢印B-Bに沿ったと同様の実施例8及び実施例9の調光装置の模式的な断面図である。
図26図26は、実施例1の表示装置の更に別の変形例を上方から眺めた模式図である。
図27図27A図27B図27C図27D図27E図27F図27G及び図27Hは、実施例1の表示装置の更に別の変形例における光学装置の概念図である。
図28図28は、実施例1の表示装置の更に別の変形例における光学装置の概念図である。
図29図29A及び図29Bは、実施例5の表示装置の変形例における光学装置を上から眺めた模式図である。
図30図30A及び図30Bは、それぞれ、実施例5の表示装置の別の変形例における光学装置を上から眺めた模式図、及び、横から眺めた模式図である。
図31図31は、実施例1の調光装置の動作の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の調光装置、本開示の画像表示装置及び本開示の表示装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の調光装置、本開示の画像表示装置及び本開示の表示装置、第1-A構造の光学装置、第1構成の画像形成装置)
3.実施例2(実施例1の変形、第1-A構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
4.実施例3(実施例1の別の変形、第1-B構造の光学装置、第1構成の画像形成装置)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形、第1-B構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
6.実施例5(実施例1の更に別の変形、第2構造の光学装置、第2構成の画像形成装置)
7.実施例6(実施例1~実施例5の変形)
8.実施例7(実施例1~実施例5の別の変形)
9.実施例8(実施例1~実施例7の変形)
10.実施例9(実施例1~実施例7の別の変形)
11.その他
【0012】
〈本開示の調光装置、本開示の画像表示装置及び本開示の表示装置、全般に関する説明〉 本開示の調光装置、本開示の画像表示装置を構成する調光装置、及び、本開示の表示装置を構成する調光装置(以下、これらを総称して、『本開示の調光装置等』と呼ぶ場合がある)において、制御部は、更に、
(C)調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間が経過した後の、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する形態とすることができる。
【0013】
尚、調光層の着色開始から所定の時間T0’が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行うが、規定時間(着色・規定時間)T1’が経過後には、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止してもよい。同様に、調光層の消色開始から所定の時間T0”が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行うが、規定時間(消色・規定時間)T1”が経過後には、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止してもよい。場合によっては、調光層の消色開始から所定の時間T0”が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止してもよい。また、調光層の着色時、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極へ印加される電圧の値と、調光層の着色開始から所定の時間T0’が経過した後の、二次電池に基づく第1電極及び第2電極へ印加される電圧の値とは同じ値とすることができ、この電圧によって調光層の光透過率の値が規定される。所定の時間T0,T0’T0”、規定時間(着色・規定時間)T1’、規定時間(消色・規定時間)T1”を、予め、制御部に記憶させておいてもよい。あるいは又、制御部は、第1電極、第2電極に印加される電圧を測定し、第1電極、第2電極に印加される電圧が所定の電圧、規定の電圧に達したとき、制御部は、所定の時間T0,T0’T0”、規定時間(着色・規定時間)T1’、規定時間(消色・規定時間)T1”に達したと判断してもよい。
【0014】
上記の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、
制御部は、調光装置の着色時、第1電極及び第2電極の一方に正の電位を印加し、第1電極及び第2電極の他方に負の電位を印加し、
制御部は、調光装置の消色時、第1電極及び第2電極には、調光装置の着色時とは逆の極性を有する電圧を印加する形態とすることができる。具体的には、調光装置の着色時、例えば、第2電極には第1電極よりも相対的に高い電圧が印加されるし、調光装置の消色時、例えば、第1電極には第2電極よりも相対的に高い電圧が印加される。
【0015】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、
着色時、調光層に所望の光透過率を与える電荷量をQ0、充電後のコンデンサの電荷量をQ1、調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間T0が経過した後のコンデンサの電荷量をQ2としたとき、
0.4<(Q1-Q2)/Q0
好ましくは、
1.0≦(Q1-Q2)/Q0≦10.0
を満足するように、制御部は、コンデンサ、並びに、第1電極及び第2電極への印加電圧を制御する形態とすることができる。更には、T0の値として、
0.1(秒)≦T0≦12(秒)
好ましくは、
0.8(秒)≦T0≦4(秒)
を満足する形態を挙げることができる。また、調光装置の着色開始から所定の時間T0’と調光装置消色開始から所定の時間T0”とを、同じとしてもよいし、異ならせてもよい。具体的には、例えば、
0=T0’=T0
あるいは、
0=T0’>T0
の関係を例示することができる。尚、より具体的には、T0,T0’,T0”の値は、調光装置において各種の試験を行い決定すればよい。
【0016】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、第1電極及び第2電極に電圧を印加したとき、調光層に電流が流れる形態とすることができる。
【0017】
具体的には、調光層は、無機又は有機のエレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用した一種の光シャッタから成る形態とすることができる。より具体的には、調光層は、無機又は有機のエレクトロクロミック材料を含む形態とすることができる。即ち、調光層は、例えば、酸化タングステンから成る還元着色層、酸化タンタルから成る電解質層及びイリジウム原子を含む酸化着色層の積層構造を有する形態とすることができ、この場合、酸化着色層は酸化イリジウムスズ系材料から成る形態とすることができる。具体的には、調光層は、第1電極側から、WO3層/Ta25層/IrXSn1-XO層といった無機エレクトロクロミック材料層の積層構造、あるいは又、WO3層/Ta25層/IrOx層といった無機エレクトロクロミック材料層の積層構造を有する形態とすることができる。WO3層の代わりに、MoO3層やV25層を用いることができる。また、IrOx層の代わりに、ZrO2層、リン酸ジルコニウム層を用いることができるし、あるいは又、プルシアンブルー錯体/ニッケル置換プルシアンブルー錯体等を用いることもできるし、ビオロゲン誘導体、ポリチオフェン誘導体、プルシアンブルー誘導体等の有機材料を挙げることができるし、酸化着色層を構成する材料として、その他、酸化ロジウム(RhOx)、酸化ニッケル(NiOx)、酸化クロム(CrOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、リン酸ジルコニウム、水酸化ニッケル、塩化銅等の無機材料や、金属錯体(プルシアンブルー錯体、ルテニウムパープル錯体)、ペンタシアノカルボニル鉄酸鉄;アミン誘導体、フェナジン、ビオロゲン誘導体等の有機材料を挙げることができる。また、電解質層として、その他、炭酸プロピレン、イオン液体、アセトニトリルやエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のゲル、イオンポリマーを挙げることができる。
【0018】
あるいは又、調光装置を、金属(例えば、銀粒子)の可逆的な酸化還元反応によって発生する電着・解離現象を応用した電着方式(エレクトロデポジション方式あるいは電界析出方式)による一種の光シャッタ、即ち、調光層は、金属イオンを含む電解質を含む形態とすることもできる。このような調光装置については、実施例9において詳しく説明する。
【0019】
調光装置によって着色される色を、青色や茶色、黒色等の固定色とすることもできるし、調光装置を通過する光は、調光装置によって所望の色に着色され、しかも、調光装置によって着色される色は可変である形態とすることもできる。具体的には、例えば、赤色に着色される調光装置と、緑色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とを積層すればよい。尚、本明細書において、「着色」の概念は、『発色』を包含する。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、少なくとも第2電極と第2基板との間には水分保持部材(後に詳しく説明する)が配設されている形態とすることができる。
【0021】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、調光層の有効面積をA(mm2)、コンデンサの静電容量をC(ファラッド)としたとき、
C/A>1×10-6(F/mm2
を満足する形態とすることができる。
【0022】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、コンデンサは、複数の並列に接続されたコンデンサから構成されている形態とすることができる。
【0023】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、制御回路は、
二次電池の放電時の電流を制限する電流制限回路、及び、
コンデンサ及び二次電池から第1電極及び第2電極に印加する電圧を制御する電圧制御回路(レギュレータ)、
を備えている形態とすることができる。
【0024】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、二次電池はリチウムイオン電池から成る形態とすることができる。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等は、第1基板及び第1基板と対向する第2基板を備えており、
第1電極は、第2基板と対向する第1基板の対向面に設けられており、
第2電極は、第1基板と対向する第2基板の対向面に設けられている形態とすることができる。
【0026】
調光装置を構成する透明な第1基板及び第2基板を構成する材料として、具体的には、ソーダライムガラス、白板ガラス等の透明なガラス基板や、プラスチック基板、プラスチック・シート、プラスチック・フィルムを挙げることができる。ここで、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素系ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、ポリアリレート、ポリスルホン、COP(シクロオレフィンポリマー)、TACフィルム、高透明性自己粘着型アクリルフィルム等を挙げることができる。プラスチック・シート、プラスチック・フィルムは、容易に曲がらない剛性を有していてもよいし、可撓性を有していてもよい。第1基板及び第2基板を透明なプラスチック基板から構成する場合、基板内面に無機材料あるいは有機材料から成るバリア層を形成しておいてもよい。
【0027】
第2基板は、例えば、保護基板としての機能も有する。第1基板は、隙間を開けた状態で、光学装置に対向しており、あるいは又、隙間の無い状態で、光学装置に対向しており、あるいは又、光学装置を構成する部材(例えば、光学装置に備えられた保護部材)を兼用している。第2基板の外面には、有機/無機混合層から成るハードコート層(例えば、アクリル変性コロイダルシリカ粒子と、フェニルケトン系及びアクリレート系の有機物及びメチルエチルケトンとから成る)や、フッ素系樹脂から成る反射防止膜を形成してもよい。
【0028】
また、必要に応じて、第2基板に無機材料膜を設ければよく、これによって、第2基板に剛性を付与することができ、調光装置の組立時、第2基板に歪みが生じ難くなる。無機材料膜として、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ニオブ等を挙げることができる。無機材料膜の形成は、例えば、PVD法やCVD法、レーザーアブレーション法、原子層堆積法(ALD法)に基づき行うことができる。
【0029】
第1基板と第2基板とは、外縁部においてシール剤によって封止され、接着されている。シール剤として、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン-チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種樹脂を用いることができる。
【0030】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、
第1電極は、第1の方向に延びる複数の帯状の第1電極セグメントから構成されており、
第2電極は、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2電極セグメントから構成されており、
第1電極セグメントと第2電極セグメントの重複領域(調光装置の遮光率が変化する最小単位領域)に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1電極セグメント及び第2電極セグメントに印加する電圧の制御に基づき行われる形態とすることができる。即ち、遮光率の制御を単純マトリクス方式に基づき行うことができる。第1の方向と第2の方向とは直交している形態を例示することができる。調光装置の着色時、例えば、第2電極には第1電極よりも高い電圧が印加され、調光装置の消色時、例えば、第1電極には第2電極よりも高い電圧が印加される。
【0031】
あるいは又、調光装置の遮光率が変化する最小単位領域の遮光率の制御のために、最小単位領域のそれぞれに薄膜トランジスタ(TFT)を設けてもよい。即ち、遮光率の制御をアクティブマトリクス方式に基づき行ってもよい。あるいは又、第1電極及び第2電極のいずれか一方を所謂ベタ電極(パターニングされていない電極)とすることもできるし、両方を所謂ベタ電極(パターニングされていない電極)とすることもできる。
【0032】
上述したとおり、第1電極は、パターニングされていてもよいし、パターニングされていなくともよい。第2電極も、パターニングされていてもよいし、パターニングされていなくともよい。第1電極及び第2電極を構成する材料として、透明導電材料、具体的には、インジウム-スズ複合酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn23、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、フッ素ドープSnO2(FTO)、IFO(FドープのIn23)、アンチモンドープSnO2(ATO)、SnO2、ZnO(AlドープのZnOやBドープのZnOを含む)、インジウム-亜鉛複合酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、スピネル型酸化物、YbFe24構造を有する酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。あるいは又、第1電極及び第2電極を、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属、あるいは、合金から成る細線から構成することができる。第1電極に補助電極(第1補助電極)を設けてもよいし、第2電極に補助電極(第2補助電極)を設けてもよい。補助電極は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属、あるいは、これらの合金から構成することができるし、あるいは又、補助電極は、銀ペーストや銅ペーストを用いて形成することもできる。補助電極(第1補助電極及び第2補助電極)は、第1電極及び第2電極よりも電気抵抗が低いことが要求される。第1電極及び第2電極、補助電極(第1補助電極及び第2補助電極)は、真空蒸着法やスパッタリング法等の各種物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)、各種塗布法、各種印刷法等に基づき形成することができるし、パターニングは、エッチング法、リフトオフ法、各種マスクを用いる方法等、任意の方法で行うことができる。
【0033】
第1基板及び第2基板の内のいずれか一方の基板が導光板(後述するが、光学装置を構成する)を兼ねている構成とすることができ、このような構成とすることで、表示装置全体の重量の減少を図ることができ、表示装置の使用者(観察者)に不快感を感じさせる虞が無い。第1基板及び第2基板の内のいずれか一方の基板は他方の基板よりも薄い構成とすることができる。調光装置を備えた表示装置にあっては、画像形成装置において画像を表示するための信号に基づき、調光装置の実際に調光する領域の大きさ及び位置を決定すればよい。調光装置の大きさは、光学装置と同じ大きさでもよいし、大きくてもよいし、小さくともよい。要は、調光装置の正射影像内に第2偏向手段(虚像形成領域であり、後述する)が位置していればよい。
【0034】
場合によっては、調光装置が着脱自在に配設されている形態とすることができる。調光装置を着脱自在に配設するためには、例えば、透明なプラスチックから作製されたビスを用いて調光装置を例えばフレームに取り付け、あるいは又、フレームに溝を切っておき、この溝に調光装置を係合させ、あるいは又、フレームに磁石を取り付けることで調光装置をフレームに取り付けることができるし、フレームにスライド部を設け、このスライド部に調光装置を嵌め込んでもよい。あるいは又、第1基板及び第2基板の少なくとも一方を、例えば、フレームに取り付けてもよい。あるいは又、調光装置は光学装置に取り付けられている形態とすることができる。即ち、調光装置は、密着した状態で光学装置に取り付けられていてもよいし、隙間を開けた状態で光学装置に取り付けられていてもよい。そして、この場合、導光板と調光装置を構成する基板の一方とは、外縁部において封止部材によって封止され、接着されている形態とすることもできる。封止部材として、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン-チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種樹脂を用いることができる。但し、これらに限定するものではない。観察者側から、光学装置、調光装置の順に配してもよいし、調光装置、光学装置の順に配してもよい。また、調光装置にコネクタを取り付け(具体的には、第1電極や第2電極にコネクタを取り付け)、調光装置の遮光率(光透過率)を制御するための制御部(例えば、画像形成装置を制御するための制御装置に含まれていてもよい)にこのコネクタ及び配線を介して調光装置を電気的に接続すればよい。
【0035】
調光装置の最高光透過率は50%以上であり、調光装置の最低光透過率は30%以下である構成とすることができる。調光装置の最高光透過率の上限値として99%を挙げることができるし、調光装置の最低光透過率の下限値として1%を挙げることができる。ここで、
(光透過率)=100(%)-(遮光率)
の関係にある。
【0036】
調光装置の動作時、調光装置の他の領域の遮光率は、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域の遮光率を「1」としたとき、「1」とすることもできるし、例えば、0.95以下とすることもできる。あるいは又、調光装置の他の領域の遮光率は、例えば、30%以下とすることができる。一方、調光装置の動作時、調光装置の虚像投影領域の遮光率は、35%乃至99%、例えば、80%とすることができる。このように、虚像投影領域の遮光率は、一定であってもよいし、表示装置の置かれた環境の照度に依存して変化させてもよい。
【0037】
本開示の表示装置等において、遮光率は、徐々に変化してもよいし(即ち、連続的に変化してもよいし)、電極の配置状態、形状に依っては、階段状に変化する構成とすることもできるし、一定の値から連続的にあるいは階段状に変化する構成とすることもできる。即ち、調光装置を、色のグラデーションが付いた状態としてもよいし、段階的に色が変化する状態とすることもできるし、一定の色が付いた状態から連続的にあるいは段階的に色が変化する状態とすることもできる。遮光率は、第1電極及び第2電極に印加する電圧によって制御することができる。第1電極と第2電極との間の電位差を制御してもよいし、第1電極に印加する電圧と第2電極に印加する電圧とを独立に制御してもよい。遮光率の調整を行う場合、光学装置にテストパターンを表示してもよい。
【0038】
本開示の調光装置等は、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(あるいは第2の照度センサ)を更に備えており、照度センサ(あるいは第2の照度センサ)の測定結果に基づき、制御部は調光装置の着色開始、消色開始を行うことができるし、光透過率の設定を行うことができる。あるいは又、観察者が操作することができるスイッチ等を更に備えており、観察者のスイッチ等の操作に基づき、制御部は調光装置の着色開始、消色開始を行うことができるし、光透過率の設定を行うことができる。あるいは又、例えば、表示装置はマイクロフォンを更に備えており、マイクロフォンを介した音声入力によって、調光装置の着色開始、消色開始の制御を行うことができる。具体的には、観察者の肉声に基づく指示によって、調光装置の着色開始、消色開始の制御を行えばよい。あるいは又、表示装置は、赤外線入出射装置を更に備えており、赤外線入出射装置によって、調光装置の着色開始、消色開始の制御を行えばよい。具体的には、赤外線入出射装置によって、観察者の瞬きを検出することで、調光装置の着色開始、消色開始の制御を行えばよい。あるいは又、本開示の画像表示装置や表示装置においては、画像形成装置における画像の形成開始あるいは画像に形成終了に同期して、制御部は調光装置の着色開始、消色開始を行うことができるし、光透過率の設定を行うことができる。
【0039】
本開示の表示装置において、上述したとおり、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき調光装置の遮光率を制御する形態とすることができる。あるいは又、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。これらの形態を組み合わせてもよい。
【0040】
あるいは又、本開示の表示装置において、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(便宜上、『透過光照度測定センサ』と呼ぶ場合がある)を更に備えており、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき調光装置の遮光率を制御する形態とすることができる。あるいは又、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)は、光学装置よりも観察者側に配置されている形態とすることが望ましい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。これらの形態を組み合わせてもよい。更には、これらの形態と、上記の照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき制御を行う形態とを組み合わせてもよい。
【0041】
照度センサ(環境照度測定センサ、透過光照度測定センサ)は、周知の照度センサから構成すればよいし、照度センサの制御は周知の制御用回路に基づき行えばよい。
【0042】
観察者が、調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者が、スイッチ等(具体的には、スイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等であり、以下においても同様)を操作することで手動にて光透過率(遮光率)を制御、調整することができるし、あるいは又、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、遮光率を制御、調整することができる。尚、光透過率(遮光率)の制御、調整は、具体的には、第1電極及び第2電極に印加する電圧を制御すればよい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。
【0043】
光学装置は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者の眼球(瞳)に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、光学装置のこの部分及び調光装置を通して外景を眺めることができる。尚、「半透過」とは、入射する光の1/2(50%)を透過し、あるいは反射することを意味するのではなく、入射する光の一部を透過し、残部を反射するといった意味で用いている。表示装置は、画像表示装置を1つ備えていてもよいし(片眼型)、2つ備えていてもよい(両眼型)。画像表示装置を2つ備えている場合、一方の調光装置と他方の調光装置のそれぞれにおいて、第1電極及び第2電極に印加する電圧を調整することで、一方の調光装置における遮光率及び他方の調光装置における遮光率の均等化を図ることができる。一方の調光装置における遮光率及び他方の調光装置における遮光率は、例えば、前述した外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、制御することができるし、あるいは又、観察者が、一方の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさ及び他方の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者が、スイッチ等を操作することで手動にて制御、調整することもできる。遮光率の調整を行う場合、光学装置にテストパターンを表示してもよい。
【0044】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の調光装置等において、調光装置は湾曲している形態とすることができ、これによって、画像表示装置あるいは表示装置へ調光装置を容易に、且つ、確実に装着させることができる。
【0045】
ところで、調光装置を構成する調光層をエレクトロクロミック材料から構成し、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用して光の透過率を変化させる場合、調光層内部において水分が無くなってしまうと調光層に色変化が生じなくなるといった現象が生じる。それ故、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の調光装置等において、例えば、第1基板は第2基板よりも観察者側に配置されており、少なくとも第2電極と第2基板との間には、前述したとおり、水分保持部材が配設されている形態とすることができ、この場合、水分保持部材の端面は外部に露出している形態とすることができる。尚、調光装置の端部(側面)の少なくとも一部は、第1基板側から、シール剤及び水分保持部材から構成されている形態(即ち、調光装置の端部の少なくとも一部は、第1基板側から、シール剤、及び、水分保持部材から延在する水分保持部材延在部の積層構造から構成されている形態)とすることができる。
【0046】
そして、第2電極は、調光層上から第1基板上に亙り、且つ、第1電極と離間して形成されており、水分保持部材は、少なくとも第2電極及び調光層を覆う形態とすることができる。
【0047】
水分保持部材を構成する樹脂は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂である形態とすることができる。あるいは又、水分保持部材は、紫外線硬化型樹脂から成る形態とすることができる。あるいは又、水分保持部材は、OCA(Optical Clear Adhesive)と呼ばれる材料から構成することもできる。あるいは又、水分保持部材を構成する材料として、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールといったポリビニル系樹脂、水分含有ゲル、多孔質材料から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。水分含有ゲルとして、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム及び末端にデンドロン基を有するポリエチレングリコールの混合物を例示することができるし、多孔質材料として有機シラン化合物で表面修飾されたシリカ等を挙げることができる。尚、『水分保持部材』は、プロトン供給部材、水分を保持し得る透明粘着部材、あるいは、水分を保持し得る透明シール剤と云い換えることもできる。水分保持部材の形態に依存するが、例えば、水分保持部材がシート状の場合、水分保持部材を介して第2基板と第2電極とを、また、第2基板とシール剤とを貼り合わせることができるし、熱可塑性紫外線硬化型の水分保持部材を用いることもできる。あるいは又、水分保持部材が液状の場合、第2電極からシール剤の上に亙り水分保持部材を塗布し、必要に応じてプレキュアした後、必要に応じて加圧しながら第2基板を水分保持部材に重ね合わせ、紫外線によって水分保持部材を硬化させればよい。あるいは又、使用する材料に依るが、熱ラミネート法等に基づき、第2電極からシール剤の上に亙り水分保持部材を貼り合わせることもできる。
【0048】
シール剤は水分バリア層として機能するが、シール剤の一部は補助電極から成る構成することができ、この場合、補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている構成とすることができる。このように、補助電極を設けることで、第1電極及び第2電極へ適切な電圧を容易に印加することができるし、第1電極あるいは第2電極における電圧降下の発生を抑制することができるので、調光装置の着色時のムラ発生を低減することができる。以下においても同様である。
【0049】
あるいは又、シール剤は樹脂から成る構成とすることができ、この場合、シール剤を構成する樹脂のヤング率は1×107Pa以下である構成とすることができ、更には、これらの場合、シール剤の一部の内側に補助電極が設けられている構成とすることができる。ここで、補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている構成とすることができる。シール剤を構成する樹脂として、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種の樹脂、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン-チオール系樹脂、変性ポリマー樹脂、ポリイミド系樹脂及びエポキシ系樹脂から成る群から選択された1種類の樹脂を挙げることができる。シール剤を樹脂から構成する場合、樹脂にシリカやアルミナ等の無機フィラーを添加してもよい。
【0050】
あるいは又、シール剤は、第1基板の縁部に設けられた凸部から成る構成とすることができ、この場合、シール剤の一部の内側に補助電極が設けられている構成とすることができる。ここで、補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている構成とすることができる。第1基板の縁部における凸部は、例えば、熱プレス装置を用いて第1基板の縁部を熱プレスすることで形成することができるし、各種物理的気相成長法(PVD法)や各種化学的気相成長法(CVD法)、各種印刷法によって形成することもできる。
【0051】
更には、シール剤の断面形状は、第2基板に近づくに従い狭くなる形状である形態とすることができる。シール剤の断面形状をこのような形状とすることで、水分保持部材を少なくとも第2電極上に配置し、水分保持部材から延在する水分保持部材延在部をシール剤上に配置するとき、水分保持部材の下に気泡が混入するといった問題の発生を回避することができる。シール剤のこのような断面形状は、例えば、印刷法に基づくシール剤の形成、メタルマスクを用いたスパッタリング法に基づくシール剤の形成といった種々の方法に基づき形成することができる。
【0052】
更には、水分保持部材を構成する材料(具体的には、樹脂)のヤング率は1×106Pa以下であることが望ましく、これによって、調光装置の内部において生じた各種の段差を吸収することができるし、調光装置中央部における水分保持部材の厚さのバラツキ、水分保持部材延在部の厚さのバラツキを小さくすることができる結果(即ち、第1基板と第2基板との間の距離全体の均一化を図ることができる結果)、視認性の劣化発生を防ぐことができる。具体的には、調光装置を通して外界を見たとき、外界の像に歪みが生じたり、外界の像にズレが生じることを抑制することができる。
【0053】
水分保持部材を少なくとも第2電極上に配置し、水分保持部材から延在する水分保持部材延在部をシール剤上に配置するが、具体的には、例えば、水分保持部材を第2電極に接着し、あるいは、貼り合わせ、水分保持部材延在部をシール剤に接着し、あるいは、貼り合わせればよい。また、水分保持部材及び水分保持部材延在部の上に第2基板を配置するが、具体的には、例えば、第2基板を水分保持部材及び水分保持部材延在部に接着し、あるいは、貼り合わせればよい。
【0054】
調光装置において遮光率の値を高くする領域は、調光装置の全部の領域であってもよいし、調光装置の一部の領域であってもよい。即ち、実際に虚像が形成される第2偏向手段の領域(例えば、後述する第2偏向手段の一部の領域)に対向した調光装置の領域の遮光率を制御してもよい。云い換えれば、画像形成装置から出射される光に基づき虚像形成領域の一部分において虚像が形成されるとき、調光装置への虚像の投影像が含まれる調光装置の虚像投影領域(光学装置における虚像形成領域に対応した調光装置の領域)の遮光率が、調光装置の他の領域の遮光率よりも高くなるように、調光装置を制御すればよい。尚、調光装置において虚像投影領域の位置は固定されたものでなく、虚像の形成位置に依存して変化し、また、虚像投影領域の数も、虚像の数(あるいは一連の虚像群の数、ブロック化された虚像群の数等)に依存して変化する形態とすることもできる。
【0055】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の表示装置(以下、これらを総称して、『本開示の表示装置等』と呼ぶ場合がある)において、フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部、及び、ノーズパッド部を備えており、調光装置はフロント部に配設されている形態とすることができ、この場合、光学装置は、調光装置に取り付けられている形態とすることができる。あるいは又、光学装置は、フロント部に取り付けられている形態とすることができ、この場合、調光装置は、光学装置に取り付けられている形態とすることができる。更には、これらの場合、フロント部はリム部を有し、調光装置はリム部に嵌め込まれている形態とすることができ、あるいは又、光学装置はリム部に嵌め込まれている形態とすることができ、この場合、光学装置を、水蒸気を透過し得る接着剤を用いてリム部に固定してもよい。あるいは又、調光装置と光学装置との間の空間は外部と連通している形態とすることができる。本開示の表示装置等において、観察者側から、光学装置、調光装置の順に配してもよいし、調光装置、光学装置の順に配してもよい。
【0056】
水蒸気を透過し得る接着剤として、水蒸気拡散性の高いシリコーン系やエチレンビニルアルコール系コポリマー、スチレン系ブタジエン等の非極性材料を主剤とした接着剤を挙げることができ、係る接着剤の水分透過率の値として、2×10グラム/m2・日乃至1.1×103グラム/m2・日を例示することができる。尚、水分透過率の測定は、JIS K7129:2008に基づいて行うことができ、50mm×50mmの試験片に対して、試験温度25゜C±0.5゜C、相対湿度90±2%の条件下、試験を実施する。測定は乾湿センサを用いて行う。
【0057】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の画像表示装置、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の表示装置において、光学装置は、
画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射される導光板、
導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段、
を備えている形態とすることができる。このような光学装置を、便宜上、『第1構造の光学装置』と呼ぶ。第2偏向手段によって光学装置の虚像形成領域が構成される。調光装置の射影像内に第2偏向手段(虚像形成領域)が位置する。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。画像形成装置から入射された光は、導光板の内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射されるし、第2偏向手段によって光学装置の虚像形成領域が構成される。調光装置の射影像内に第2偏向手段(虚像形成領域)が位置する場合もあるし、第2偏向手段(虚像形成領域)の射影像内に調光装置が位置する場合もある。
【0058】
第1構造の光学装置において、前述したとおり、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、(複数回に亙り)透過、反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。このような第1構造の光学装置を、便宜上、『第1-A構造の光学装置』と呼ぶ。
【0059】
このような第1-A構造の光学装置において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。あるいは又、第1偏向手段は、例えば、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体、ハーフミラー、偏光ビームスプリッターから構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が、(複数回に亙り)反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。場合によっては、第1偏向手段及び第2偏向手段の一方は、導光板の外側表面に配設されてもよい。
【0060】
あるいは又、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。回折格子素子として、体積ホログラム回折格子を挙げることができる。体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。また、このような第1構造の光学装置を、便宜上、『第1-B構造の光学装置』と呼ぶ。ホログラム回折格子層の干渉縞は、概ねY方向に延びる。ここで、導光板において、X方向は導光板の長手方向(水平方向)であり、Y方向は導光板の幅方向(高さ方向、垂直方向)であり、Z方向は導光板の厚さ方向である。
【0061】
第1-B構造の光学装置において、第1偏向手段から出射された光が入射する第3偏向手段を配設してもよい。そして、第3偏向手段から出射された光が第2偏向手段に入射する。ここで、第1偏向手段、第2偏向手段及び第3偏向手段は、体積ホログラム回折格子から成り、第1偏向手段の有する波数ベクトルを導光板に射影したときに得られる波数ベクトルをkv 1、第2偏向手段の有する波数ベクトルを導光板に射影したときに得られる波数ベクトルをkv 2、第3偏向手段の有する波数ベクトルを導光板に射影したときに得られる波数ベクトルをkv 3としたとき、
v 1+kv 2+kv 3=0
を満足することが好ましい。
【0062】
本開示の表示装置等における画像表示装置によって、単色(例えば、緑色や青色)の画像表示を行うことができる。そして、この場合、例えば、画角を例えば二分割(より具体的には、例えば二等分割)して、第1偏向手段は、二分割された画角群のそれぞれに対応する2つの回折格子部材が積層されて成る構成とすることができる。あるいは又、カラーの画像表示を行う場合、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、例えば、第1導光板に、赤色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させるホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、第2導光板に、緑色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させるホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、第3導光板に、青色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させるホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された回折格子部材を配し、これらの第1導光板、第2導光板及び第3導光板を隙間を開けて積層する構造を採用してもよい。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。観察者がホログラム回折格子に触れないように、保護部材を配することが好ましい。調光装置を構成する第1基板あるいは第2基板が保護部材を兼用していてもよい。
【0063】
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来のホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。作製された回折格子層に、必要に応じてエネルギー線を照射することで、回折格子層の物体光及び参照光の照射時に重合せずに残ったフォトポリマー材料中のモノマーを重合させて、定着させてもよい。また、必要に応じて、熱処理を行い、安定化させてもよい。
【0064】
あるいは又、本開示の表示装置等における画像表示装置において、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射する半透過ミラーから構成されている形態とすることができるし、偏光ビームスプリッター(PBS)から構成されている形態とすることができる。半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターによって光学装置の虚像形成領域が構成される。画像形成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターに入射する構造としてもよい。半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターを、この透明な部材を介して画像形成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーあるいは偏光ビームスプリッターを、この透明な部材とは別の部材を介して画像形成装置に取り付けてもよい。このような光学装置を、便宜上、『第2構造の光学装置』と呼ぶ。半透過ミラーとして、第1-A構造の光学装置における第1偏向手段、例えば、合金を含む金属から構成され、光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。あるいは又、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射されるプリズムから構成されている形態とすることができる。
【0065】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等における画像表示装置において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0066】
第1構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)素子、無機EL素子、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ素子等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、有機EL発光素子から構成された画像形成装置(有機EL表示装置)、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置、発光素子から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて光学装置(例えば、導光板)へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができる。あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。第1構成の画像形成装置にあっては、レンズ系(後述する)の前方焦点(画像形成装置側の焦点)の位置に絞りが配置されている形態とすることができ、この絞りが、画像形成装置から画像が出射される画像出射部に該当する。
【0067】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等における画像表示装置において、画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された光を走査して画像を形成する走査手段を備えている形態とすることができる。このような画像形成装置を、便宜上、『第2構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0068】
第2構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーやガルバノ・ミラーを挙げることができる。第2構成の画像形成装置にあっては、レンズ系(後述する)の前方焦点(画像形成装置側の焦点)の位置にMEMSミラーやガルバノ・ミラーが配置されている形態とすることができ、これらのMEMSミラーやガルバノ・ミラーが、画像形成装置から画像が出射される画像出射部に該当する。
【0069】
第1構成の画像形成装置あるいは第2構成の画像形成装置において、光学系(出射光を平行光とする光学系であり、『平行光出射光学系』と呼ぶ場合があり、具体的には、例えば、コリメート光学系やリレー光学系)にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、平行光出射光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置の光出射部を位置させればよい。平行光出射光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。平行光出射光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。平行光出射光学系と導光板との間には、平行光出射光学系から不所望の光が出射されて導光板に入射しないように、開口部を有する遮光部を配置してもよい。
【0070】
導光板は、導光板の軸線(長手方向、水平方向であり、X方向に該当する)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。導光板の幅方向(高さ方向、垂直方向)はY方向に該当する。導光板の厚さ方向がZ方向に該当する。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。第1偏向手段は、導光板の第1面又は第2面上に配置されており、第2偏向手段は、導光板の第1面又は第2面上に配置されている。回折格子部材の干渉縞は、概ねY方向と平行に延びる。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂の積層構造、アクリル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。前述したとおり、調光装置を湾曲させてもよい。
【0071】
本開示の表示装置等において、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材が配されている構成とすることができる。画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域に、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材を配することで、調光装置の作動によって外光の入射光量に変化が生じても、そもそも、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には外光が入射しないので、不所望の迷光等が発生し、表示装置における画像表示品質が低下するといったことが無い。遮光部材の光学装置への射影像内に、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域が含まれる形態とすることが好ましい。
【0072】
あるいは又、本開示の表示装置等において、画像形成装置から出射された光が入射される第1偏向手段の領域には、第1偏向手段への外光の入射を遮光する遮光部材が配置されている構成とすることができる。画像形成装置から出射された光が入射される導光板の領域に、導光板への外光の入射を遮光する遮光部材を配置することで、画像形成装置から出射された光が入射される導光板の領域には外光が入射しないので、不所望の迷光等が発生し、表示装置における画像表示品質が低下するといったことが無い。遮光部材の導光板への正射影像内に、画像形成装置から出射された光が入射される導光板の領域が含まれる形態とすることが好ましい。
【0073】
遮光部材は、光学装置(導光板)の画像形成装置が配された側とは反対側に、光学装置(導光板)と離間して配されている構成とすることができる。このような構成の表示装置にあっては、遮光部材を、例えば、不透明なプラスチック材料から作製すればよく、このような遮光部材は、画像形成装置の筐体から一体に延び、あるいは又、画像形成装置の筐体に取り付けられ、あるいは又、フレームから一体に延び、あるいは又、フレームに取り付けられている形態とすることができる。あるいは又、遮光部材は、画像形成装置が配された側とは反対側の光学装置(導光板)の部分に配されている構成とすることができるし、遮光部材は、調光装置に配されている構成とすることもできる。不透明な材料から成る遮光部材を、例えば、光学装置(導光板)の面上にPVD法やCVD法に基づき形成してもよいし、印刷法等によって形成してもよいし、不透明な材料(プラスチック材料や金属材料、合金材料等)から成るフィルムやシート、箔を貼り合わせてもよい。遮光部材の光学装置(導光板)への射影像内に、調光装置の端部の光学装置(導光板)への射影像が含まれる構成とすることが好ましい。
【0074】
本開示の表示装置等において、フレームは、前述したとおり、観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部とから成る構成とすることができる。各テンプル部の先端部には、必要に応じて、モダン部(先セル部)が取り付けられている。画像表示装置はフレームに取り付けられているが、具体的には、例えば、画像形成装置をテンプル部に取り付ければよいし、画像形成装置を内部に格納した筐体を、テンプル部側のフロント部に取り付ければよい。画像形成装置の取付け(筐体の取付け)は、例えば、ビスを用いる方法等、適切な方法によって行えばよい。更には、フロント部にノーズパッド部が取り付けられている構成とすることができる。フロント部と2つのテンプル部とが一体となった構成とすることもできる。即ち、本開示の表示装置の全体を眺めたとき、フレームは、概ね通常の眼鏡やサングラスと略同じ構造、外観を有する。即ち、本開示の表示装置等の全体を眺めたとき、フレーム(リム部を含む)及びノーズパッド部の組立体は、通常の眼鏡やサングラスと略同じ構造を有する。ノーズパッド部も周知の構成、構造とすることができる。テンプル部にスピーカやヘッドホン部を取り付けてもよい。ノーズパッド部を含むフレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡やサングラスを構成する材料と同じ材料から構成することができる。
【0075】
また、本開示の表示装置等にあっては、デザイン上、あるいは、装着の容易性といった観点から、1つあるいは2つの画像形成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、制御装置に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像形成装置はヘッドホン部を備えており、各画像形成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることもできる。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。また、フロント部の中央部分にカメラ(撮像装置)が取り付けられている形態とすることもできる。カメラは、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。カメラからの配線は、例えば、フロント部を介して、一方の画像表示装置(あるいは画像形成装置)に接続すればよく、更には、画像表示装置(あるいは画像形成装置)から延びる配線に含ませればよい。
【0076】
本開示の表示装置にあっては、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置(例えば、導光板)において虚像を形成するための信号)を外部から受け取る形態とすることができる。このような形態にあっては、画像表示装置において表示する画像に関する情報やデータは、例えば、所謂クラウドコンピュータやサーバーに記録、保管、保存されており、表示装置が通信手段、例えば、携帯電話機やスマートフォンを備えることによって、あるいは又、表示装置と通信手段とを組み合わせることによって、クラウドコンピュータやサーバーと表示装置との間での各種情報やデータの授受、交換を行うことができるし、各種情報やデータに基づく信号、即ち、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置において虚像を形成するための信号)を受け取ることができる。あるいは又、画像表示装置において画像を表示するための信号(光学装置において虚像を形成するための信号)は表示装置に記憶されている形態とすることができる。画像表示装置において表示される画像には、各種情報や各種データが含まれる。あるいは又、表示装置はカメラ(撮像装置)を備えており、カメラによって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出し、クラウドコンピュータやサーバーにおいてカメラによって撮像された画像に該当する各種情報やデータを検索し、検索された各種情報やデータを通信手段を介して表示装置に送出し、検索された各種情報やデータを画像表示装置において画像を表示してもよい。
【0077】
カメラ(撮像装置)によって撮像された画像を通信手段を介してクラウドコンピュータやサーバーに送出する際、カメラによって撮像される画像を画像表示装置において表示し、光学装置(例えば、導光板)において確認してもよい。具体的には、カメラによって撮像される空間領域の外縁を調光装置において枠状に表示する形態とすることができる。あるいは又、カメラによって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の遮光率を、カメラによって撮像される空間領域の外側に対応する調光装置の領域の遮光率よりも高くする形態とすることができる。このような形態にあっては、観察者には、カメラによって撮像される空間領域は、カメラによって撮像される空間領域の外側よりも暗く見える。あるいは又、カメラによって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の遮光率を、カメラによって撮像される空間領域の外側に対応する調光装置の領域の遮光率よりも低くする形態とすることもできる。このような形態にあっては、観察者には、カメラによって撮像される空間領域は、カメラによって撮像される空間領域の外側よりも明るく見える。そして、これによって、カメラが外部のどこを撮像するかを観察者は、容易に、且つ、確実に認識することができる。
【0078】
カメラ(撮像装置)によって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域の位置を校正することができる。具体的には、表示装置が、例えば、携帯電話機やスマートフォンを備えることによって、あるいは又、表示装置と携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータとを組み合わせることによって、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて、カメラによって撮像された空間領域を表示することができる。そして、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて表示された空間領域と、カメラによって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域との間に差異が存在する場合、調光装置の遮光率(光透過率)を制御するための回路(携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータによって代用することもできる)を用いて、カメラによって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域を移動・回転させ、あるいは、拡大/縮小することで、携帯電話機やスマートフォン、パーソナルコンピュータにおいて表示された空間領域と、カメラによって撮像される空間領域に対応する調光装置の領域との間の差異を無くせばよい。
【0079】
以上に説明した種々の変形例を含む本開示の表示装置は、例えば、電子メールの受信・表示、インターネット上の種々のサイトにおける各種情報等の表示、各種装置等の観察対象物の運転、操作、保守、分解時等における各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;人物や物品等の観察対象物に関する各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;動画や静止画の表示;映画等の字幕の表示;映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示;芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明(運転、操作、保守、分解時等における各種説明)、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示に用いることができるし、クローズド・キャプションの表示に用いることができる。芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した画像としての文字を表示装置において表示すればよい。具体的には、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、画像信号が表示装置に送出され、画像が表示装置にて表示される。また、各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を行うが、カメラによって各種装置、人物や物品等の観察対象物を撮影(撮像)し、表示装置において撮影(撮像)内容を解析することで、予め作成しておいた各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を表示装置にて行うことができる。
【0080】
画像形成装置への画像信号には、画像信号(例えば、文字データ)だけでなく、例えば、表示すべき画像に関する輝度データ(輝度情報)、又は、色度データ(色度情報)、又は、輝度データ及び色度データを含めることができる。輝度データは、光学装置(例えば、導光板)を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとすることができるし、色度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。このように、画像に関する輝度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)の制御を行うことができるし、画像に関する色度データを含めることで、表示される画像の色度(色)の制御を行うことができるし、画像に関する輝度データ及び色度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)及び色度(色)の制御を行うことができる。光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとする場合、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度の値が高くなるほど、画像の輝度の値が高くなるように(即ち、画像がより明るく表示されるように)、輝度データの値を設定すればよい。また、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとする場合、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度と、表示すべき画像の色度とが、おおよそ補色関係となるように色度データの値を設定すればよい。補色とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組み合わせ指す。赤色に対しての緑色、黄色に対しての紫色、青色に対しての橙色など、相補的な色のことでもある。或る色に別の色を適切な割合で混合して、光の場合は白、物体の場合は黒というように、彩度低下を引き起こす色についても云うが、並列した際の視覚的効果の相補性と混合した際の相補性は異なる。余色、対照色、反対色ともいう。但し、反対色は補色が相対する色を直接に指示するのに対し、補色の指示する範囲はやや広い。補色同士の色の組み合わせは互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは補色調和といわれる。
【0081】
本開示の表示装置等によって、例えば、頭部装着型ディスプレイ(HMD)を構成することができる。そして、これによって、表示装置の軽量化、小型化を図ることができるし、表示装置装着時の不快感を大幅に軽減させることが可能となり、更には、製造コストダウンを図ることも可能となる。あるいは又、車両や航空機のコックピット等に備えられるヘッドアップディスプレイ(HUD)に本開示の表示装置等を適用することができる。具体的には、画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域が車両や航空機のコックピット等のフロントガラスに配されたHUDにおいて、あるいは又、画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有するコンバイナが車両や航空機のコックピット等のフロントガラスに配されたHUDにおいて、係る虚像形成領域やコンバイナを調光装置の少なくとも一部分と重ならせればよい。本開示の表示装置等は、カメラ(撮像装置)に用いることもできるし、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。この場合、必要に応じて、光学装置(例えば、導光板)に偏光板や偏光フィルムを着脱自在に取り付け、あるいは、光学装置に偏光板や偏光フィルムを貼り合わせればよい。また、本開示の調光装置によってサングラスを構成することができるし、本開示の調光装置を窓(住宅用だけでなく、車両用等、如何なる分野における窓をも含む)に取り付けてもよい。
【実施例1】
【0082】
実施例1は、本開示の表示装置(具体的には、頭部装着型ディスプレイ,HMD)に関し、具体的には、第1構造の光学装置(より具体的には、第1-A構造の光学装置)及び第1構成の画像形成装置を備えた第1形態の表示装置に関する。実施例1の表示装置における光学装置及び調光装置(但し、右眼用)の模式的な正面図を図1Aに示し、図1Aの矢印B-Bに沿った模式的な断面図を図1Bに示し、図1Aの矢印B-Bに沿ったと同様の調光装置の模式的な断面図を図3Aに示し、左眼側から表示装置を眺めたときの表示装置(主に右眼用)の模式的な側面図を図3Bに示す。また、実施例1の表示装置における画像表示装置の概念図を図4及び図5に示し、実施例1の表示装置を上方から眺めた模式図を図6に示し、実施例1の表示装置を正面から眺めた模式図を図7に示す。
【0083】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置は、
観察者20の頭部に装着されるフレーム10、及び、
フレーム10に取り付けられた画像表示装置100,200,300,400,500を備えている。
【0084】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9における画像表示装置100,200,300,400,500は、
画像形成装置111,211、
画像形成装置111,211から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置120,320,520、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置700、
を備えている。尚、実施例の表示装置は、具体的には、2つの画像表示装置を備えた両眼型としたが、1つ備えた片眼型としてもよい。また、画像形成装置111,211は、単色の画像を表示するとしたが、これに限定されるものではない。
【0085】
更には、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例4、実施例6~実施例9における画像表示装置100,200,300,400にあっては、
画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、
を備えており、光学系112,254にて平行光とされた光束が光学装置120,320に入射され、導光され、出射される。
【0086】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例4、実施例6~実施例9における光学装置120,320は、第1構造を有し、
画像形成装置111,211から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者20に向けて出射される導光板121,321、
導光板121,321に入射された光が導光板121,321の内部で全反射されるように、導光板121,321に入射された光を偏向させる第1偏向手段130,330、及び、
導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を導光板121,321から出射させるために、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段140,340、
を備えている。そして、第2偏向手段140,340によって光学装置の虚像形成領域が構成される。また、調光装置700の射影像内に第2偏向手段(虚像形成領域)140,340が位置する。更には、調光装置700を構成する基板の一方によって、第2偏向手段140,340は被覆されている。光学装置120,320は、シースルー型(半透過型)である。
【0087】
ここで、実施例1において、第1偏向手段130及び第2偏向手段140は導光板121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を反射し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段130は反射鏡として機能し、第2偏向手段140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板121の内部に設けられた第1偏向手段130は、アルミニウム(Al)から成り、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板121の内部に設けられた第2偏向手段140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005-521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段130においては、導光板121に入射された平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段140においては、導光板121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板121から平行光の状態で、観察者20の瞳21に向かって出射される。
【0088】
第1偏向手段130は、導光板121の第1偏向手段130を設ける部分124を切り出すことで、導光板121に第1偏向手段130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板121の切り出した部分124を第1偏向手段130に接着すればよい。また、第2偏向手段140は、導光板121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板121の第2偏向手段140を設ける部分125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板121の内部に第1偏向手段130及び第2偏向手段140が設けられた光学装置120を得ることができる。
【0089】
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例4、実施例6~実施例9において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X方向)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。
【0090】
実施例1あるいは後述する実施例3において、画像表示装置100を構成する画像形成装置111は、第1構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、図4に示すように、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(図4では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
【0091】
あるいは又、図5に示すように、画像形成装置111’は、有機EL表示装置150’から構成されている。有機EL表示装置150’から出射され画像は、凸レンズ112を通過し、平行光となって、導光板121へと向かう。有機EL表示装置150’は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(有機EL素子)を備えている。
【0092】
フレーム10は、観察者20の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド部10’が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッド部10’の組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によって、着脱自在にテンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱できないように取り付けられていてもよい。また、各筐体113を、テンプル部13の内側に取り付けた状態を示しているが、テンプル部13の外側に取り付けてもよい。
【0093】
更には、画像形成装置111から延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御部30を含む)18に接続されている。更には、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線16’が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線16’は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線16’が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした表示装置とすることができる。
【0094】
フロント部11の中央部分に、必要に応じて、CCDあるいはCMOSセンサから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成されたカメラ17が、適切な取付部材(図示せず)によって取り付けられている。カメラ17からの信号は、カメラ17から延びる配線(図示せず)を介して制御装置18に送出される。
【0095】
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、調光装置700はフロント部11に配設されている。そして、光学装置120,320は調光装置700に取り付けられている。フロント部11はリム11’を有し、調光装置700はリム11’に嵌め込まれている。観察者側から、光学装置120,320、調光装置700の順に配されているが、調光装置700、光学装置120,320の順に配してもよい。
【0096】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9において、光学装置120,320,520は、一種の光シャッタである調光装置700の少なくとも一部分と重なっている。具体的には、図1A及び図1Bに示す例では、光学装置120,320,520は、調光装置700の一部分と重なっている。但し、これに限定するものではなく、光学装置120,320,520は、調光装置700と重なっていてもよい。即ち、光学装置120,320,520(より具体的には、光学装置を構成する導光板121,321)や導光部材602,612,622の外形形状を、調光装置700の外形形状と同形とすることもできる。このような形態(即ち、実施例1の表示装置の変形例)における光学装置及び調光装置の模式的な正面図を図2Aに示し、図2Aの矢印B-Bに沿った光学装置及び調光装置の模式的な断面図を図2Bに示す。この変形例にあっては、調光装置700と導光板121,321との間に隙間が設けられており、調光装置700と導光板121,321とは接着剤719Dによって外周部において貼り合わされている。以下に説明する実施例においても同様とすることができる。そして、これによって、導光板121,321の外縁部は、後述するリム11’によって隠され、導光板121,321の外縁部が目視されないようになる。ここで、観察者20の鼻側を内側、耳側を外側と称し、光学装置の虚像形成領域(第2偏向手段140,340)と対向する調光装置700の領域を虚像形成領域対向領域701と称する。
【0097】
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、調光装置700は、
第1電極712A、
第1電極712Aと対向する第2電極712B、
第1電極712Aと第2電極712Bとによって挟まれた調光層716、及び、
調光層716の着色・消色を制御する制御部30、
を備えており、
制御部30は、二次電池31、制御回路32及びコンデンサ(キャパシタとも呼ばれ、具体的には、例えば、電気二重層コンデンサから成り、スーパーキャパシタあるいはウルトラ・キャパシタとも呼ばれる)33を備えており、
制御部30は、
(A)二次電池31によるコンデンサ33の充電、及び、
(B)調光層716の着色時又は消色時、コンデンサ33の放電に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加、
を制御する。更には、制御部30は、
(C)調光層716の着色開始又は消色開始から所定の時間(T0)が経過した後の、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加、
を制御する。尚、第1電極712A及び第2電極712Bは、制御部30に、図示しないコネクタを介して接続されている。また、図11Aに図示した例では、コンデンサ33を1つとしたが、所望の静電容量の確保のため、複数の並列に接続されたコンデンサ33から構成されていてもよい。
【0098】
尚、調光層716の着色開始から所定の時間T0’が経過した後、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行うが、規定時間(着色・規定時間)T1’が経過後には、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を中止してもよい。同様に、調光層716の消色開始から所定の時間T0”が経過した後、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行うが、規定時間(消色・規定時間)T1”が経過後には、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を中止してもよい。場合によっては、調光層716の消色開始から所定の時間T0”が経過した後、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を中止してもよい。また、調光層716の着色時、コンデンサ33の放電に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへ印加される電圧の値と、調光層716の着色開始から所定の時間T0’が経過した後の、二次電池31に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへ印加される電圧の値とは同じ値とすることができ、この電圧によって調光層716の光透過率の値が規定される。所定の時間T0,T0’T0”、規定時間(着色・規定時間)T1’、規定時間(消色・規定時間)T1”を、予め、制御部30に記憶させておいてもよい。あるいは又、制御部30は、第1電極712A、第2電極712Bに印加される電圧を測定し、第1電極712A、第2電極712Bに印加される電圧が所定の電圧、規定の電圧に達したとき、制御部30は、所定の時間T0,T0’T0”、規定時間(着色・規定時間)T1’、規定時間(消色・規定時間)T1”に達したと判断してもよい。
【0099】
更には、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、
制御部30は、調光装置の着色時、第1電極712A及び第2電極712Bの一方に正の電位を印加し、第1電極712A及び第2電極712Bの他方に負の電位を印加し、
制御部30は、調光装置の消色時、第1電極712A及び第2電極712Bには、調光装置の着色時とは逆の極性を有する電圧を印加する。具体的には、調光装置の着色時、例えば、第2電極712Bには第1電極712Aよりも相対的に高い電圧が印加されるし、調光装置の消色時、例えば、第1電極712Aには第2電極712Bよりも相対的に高い電圧が印加される。
【0100】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、調光装置700は、第1基板711A、及び、第1基板711Aと対向する第2基板711Bを備えており、第1電極712Aは、第2基板711Bと対向する第1基板711Aの対向面に設けられており、第2電極712Bは、第1基板711Aと対向する第2基板711Aの対向面に設けられている。図示した例では、第1基板711Aが観察者20と対向しているが、第2基板711Bが観察者20と対向していてもよい。
【0101】
更には、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、着色時、調光層716に所望の光透過率を与える電荷量をQ0、充電後のコンデンサ33の電荷量をQ1、調光層716の着色開始又は消色開始から所定の時間T0が経過した後のコンデンサ33の電荷量をQ2としたとき、
0.4<(Q1-Q2)/Q0
好ましくは、
1.0≦(Q1-Q2)/Q0≦10.0
を満足するように、制御部30は、コンデンサ33、並びに、第1電極712A及び第2電極712Bへの印加電圧を制御する。更には、T0の値として、
0.1(秒)≦T0≦12(秒)
好ましくは、
0.8(秒)≦T0≦4(秒)
を満足する。具体的には、限定するものではないが、
0=250ミリファラッド(調光面積2500mm2の場合)
1=500ミリファラッド
2=250ミリファラッド
を挙げることができるし、
0 =4秒
0’=4秒
0”=2秒
を挙げることができる。
【0102】
また、調光層716の有効面積をA(mm2)、コンデンサ33の静電容量をC(ファラッド)としたとき、
C/A>1×10-6[0.000001](F/mm2
を満足する。具体的には、
A=2500mm2
C=250ミリファラッド
とした。
【0103】
尚、調光装置の着色時、あるいは、消色時、第1電極712A及び第2電極712Bには、コンデンサ(キャパシタ)33及び(あるいは)二次電池31から第1電極712A及び第2電極712Bへ、電圧制御回路(レギュレータ)50を介して、一定の電圧が印加される。二次電池31からの出力電圧は、調光層716を構成する材料に損傷が発生しない電圧よりも高い場合があるので、電圧制御回路50を介することで、このような調光層716を構成する材料に損傷が発生するといった問題の発生を回避することができるが、場合によっては、電圧制御回路50は不要である。
【0104】
更には、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9の表示装置において、第1電極712A及び第2電極712Bに電圧を印加したとき、調光層716に電流が流れる。
【0105】
調光装置700は、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用した一種の光シャッタから成る。具体的には、調光層716はエレクトロクロミック材料を含む。より具体的には、調光層716は、第1電極側から、WO3層(還元着色層)713/Ta25層(電解質層)714/IrXSn1-XO層(酸化着色層)715の積層構造を有する。WO3層713は還元発色する。また、Ta25層714は固体電解質を構成し、IrXSn1-XO層715は酸化発色する。第1電極712Aと第1基板711Aの間には、SiN層、SiO2層、Al23層、TiO2層あるいはこれらの積層膜から成る保護層719Aが形成されている。保護層719Aを形成することで、イオンの行き来を阻止するイオン遮断性、防水性、防湿性及び耐傷性を調光装置に付与することができる。第2基板711Bと第2電極712Bとの間には下地層719Bが形成されている。また、第1基板711Aと第2基板711Bとは、外縁部において、紫外線硬化型エポキシ系樹脂や、紫外線と熱とによって硬化するエポキシ系樹脂といった紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂から成るシール剤719Cによって封止されている。第1基板711A及び第2基板711Bは、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PES(ポリエーテルスルホン)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)、無色透明のポリイミド樹脂、TACフィルム、あるいは又、高透明性自己粘着型アクリルフィルムから成るが、これらに限定するものではない。ITOやIZOといった透明導電材料から成る第1電極712A及び第2電極712Bは、パターニングされておらず、所謂ベタ電極である。調光装置700、それ自体は、周知の方法で作製することができる。
【0106】
IrXSn1-XO層715中では、IrとH2Oとが反応して、水酸化イリジウムIr(OH)nとして存在する。第1電極712Aに負の電位を、第2電極712Bに正の電位を加えると、IrXSn1-XO層715からTa25層714へのプロトンH+の移動、第2電極712Bへの電子放出が生じ、次の酸化反応が進んで、IrXSn1-XO層715は着色する。
Ir(OH)n → IrOX(OH)n-X(着色) + X・H+ + X・e-
【0107】
一方、Ta25層714中のプロトンH+がWO3層713中へ移動し、第1電極712Aから電子がWO3層713に注入され、WO3層713では、次の還元反応が進んでWO3層713は着色する。
WO3 + X・H+ + X・e- → HXWO3(着色)
【0108】
これとは逆に、第1電極712Aに正の電位を、第2電極712Bに負の電位を加えると、IrXSn1-XO層715では、上記と逆向きに還元反応が進み、消色し、WO3層713では、上記と逆向きに酸化反応が進み、消色する。尚、Ta25層714にはH2Oが含まれており、第1電極712A、第2電極712Bに電圧を印加することで電離し、プロトンH+、OH-イオンの状態が含まれ、着色反応及び消色反応に寄与している。
【0109】
図8に、第1電極712Aと第2電極712Bとの間に印加する電圧(ΔV)と光透過率の関係の一例を示す。図示した例では、第1電極712Aと第2電極712Bとの間に印加する電圧の値ΔVが高くなるに従い光透過率は低下するが、ΔVが1ボルトを越すと、光透過率が低下する割合は小さくなる。また、ΔVが0.2ボルトにおいて、調光層716が着色し始めたことを認識することができた。
【0110】
調光装置700を構成する第1電極712Aと第2電極712Bとの間に、図9の上段に示すように一定の電圧(ΔV)を印加した着色開始以降の状態における、調光層716を流れる電流の変化を示すグラフを図9の中段に示し、光透過率の変化を示すグラフを図9の下段に示す。また、調光装置700を構成する第1電極712Aと第2電極712Bとの間に、図10の上段に示すように一定の電圧(-ΔV)を印加した消色開始以降の状態における、調光層716を流れる電流の変化を示すグラフを図10の中段に示し、光透過率の変化を示すグラフを図10の下段に示す。ここで、調光層716に流れる電流を制限しない実施例1の場合を「A」で示し、調光層716に流れる電流を20ミリアンペアに制限した場合を比較例1として「B」で示す。調光層716に流れる電流を制限しない実施例1の場合、コンデンサ33の放電に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行っている。また、コンデンサ33の放電に基づき第1電極712A及び第2電極712Bへ電圧を印加した後には、二次電池31から第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行う。
【0111】
調光層716に流れる電流を20ミリアンペアに制限した比較例1の場合、着色・消色に長時間を要する。一方、調光層716に流れる電流を制限しない実施例1の場合、コンデンサ33の放電に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行うので、着色・消色に要する時間が大幅に短縮されていることが判る。
【0112】
ところで、調光装置700によって調光を行う場合、着色と消色とで第1電極712A及び第2電極712Bに印加する電圧の極性を反転する必要がある。また、目標とする光透過率を得るために、第1電極712Aと第2電極712Bとの間に印加する電圧を変化させる(制御あるいは設定する)必要がある。しかも、速やかに光透過率を変化させるためには、着色開始時あるいは消色開始時、大電流を第1電極712Aと第2電極712Bとの間に流す必要がある。加えて、大電流が第1電極712Aと第2電極712Bとの間に流れるとき、例えば画像形成装置への供給電圧が一時的に低下し、表示装置全体の動作が不安定になってはならない。
【0113】
制御部30の回路図を図11A及び図13に示す。尚、図13は、制御部30を構成する制御回路32の一部である二次電池制御部32Aの回路図である。制御回路32は、
二次電池31の放電時の電流を制限する電流制限回路、及び、
コンデンサ33及び二次電池から第1電極712A及び第2電極712Bに印加する電圧を制御する電圧制御回路(レギュレータ)50、
を備えている。ここで、電流制限回路は二次電池制御部32Aに含まれる。また、図示した例では、コンデンサ33を1つとしたが、所望の静電容量の確保のため、複数の並列に接続されたコンデンサ33から構成されていてもよい。
【0114】
制御回路32は、第1スイッチ部41及び第2スイッチ部42を備えている。そして、制御部30にあっては、二次電池制御部32Aの正極端子1031及び負極端子1032は、制御回路32を構成する第1スイッチ部41に接続されており、コンデンサ33の両端も第1スイッチ部41に接続されている。更には、調光装置700も、第2スイッチ部42を介して第1スイッチ部41に接続されている。そして、第2スイッチ部42の切り替えによって第1電極712A及び第2電極712Bに印加される電圧の極性を切り替えることができる。
【0115】
二次電池制御部32Aの正極端子1031及び負極端子1032は、表示装置を構成する画像形成装置等にも接続されており、二次電池31によって画像形成装置等が駆動される。ここで、二次電池31は、図13に示すセル(組電池)1001から構成されている。
【0116】
実施例の調光装置にあっては、コンデンサ33が放電しているときを除き、制限された電流値で二次電池31によってコンデンサ33の充電を行う。また、調光装置700の着色開始又は消色開始時、コンデンサ33の放電に基づく第1電極712A及び第2電極712Bへの電圧の印加を行う。更には、コンデンサ33が放電し、第1電極712A及び第2電極712Bに印加される電圧が低下したとき、即ち、調光装置700の着色開始又は消色開始から所定の時間(T0)が経過した後、二次電池31に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行う。以上の調光装置の動作の流れを図31に示す。
【0117】
具体的には、第1スイッチ部41において、制限された電流値で二次電池31によってコンデンサ33の充電を行うとき、スイッチ部SW2を接続状態とし、スイッチ部SW1,SW3を切断状態とする。コンデンサ33の充電が完了したならば、スイッチ部SW2を切断状態とする。また、調光装置700の着色開始又は消色開始時、スイッチ部SW1,SW2を切断状態とし、スイッチ部SW3を接続状態とし、コンデンサ33を放電させる。尚、コンデンサ33の放電時、コンデンサ33から二次電池制御部32Aへの電流の逆流が二次電池制御部32Aによって阻止される場合には、スイッチ部SW1を接続状態としてもよい。更には、調光装置700の着色開始又は消色開始から所定の時間(T0)が経過した後には、スイッチ部SW1を接続状態とし、スイッチ部SW2,SW3を切断状態とする。
【0118】
図13に示すように、制御部30を構成する制御回路32の一部である二次電池制御部32Aは、外装部材(図示せず)、スイッチ部1021、電流検出抵抗器1014、温度検出素子1016及びコントローラ1010を備えている。スイッチ部1021は、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を備えている。また、制御部は、正極端子1031及び負極端子1032を備えており、充電時には正極端子1031及び負極端子1032は、それぞれ、充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、表示装置使用時には、正極端子1031及び負極端子1032は、それぞれ、表示装置の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0119】
セル1001(二次電池31)は、複数のリチウムイオン電池1002が直列及び/又は並列に接続されることで、構成される。尚、図13では、6つのリチウムイオン電池1002が、2並列3直列(2P3S)に接続された場合を示しているが、その他、p並列q直列(但し、p,qは整数)のように、どのような接続方法であってもよい。即ち、リチウムイオン電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。
【0120】
スイッチ部1021は、充電制御スイッチ1022及びダイオード1023、並びに、放電制御スイッチ1024及びダイオード1025を備えており、コントローラ1010によって制御される。ダイオード1023は、正極端子1031からセル1001の方向に流れる充電電流に対して逆方向、負極端子1032からセル1001の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード1025は、充電電流に対して順方向、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例ではプラス(+)側にスイッチ部を設けているが、マイナス(-)側に設けてもよい。充電制御スイッチ1022は、電池電圧が過充電検出電圧となった場合に、あるいは又、コンデンサ33の放電開始時、開状態とされて、セル1001の電流経路に充電電流(あるいは、逆流電流)が流れないようにコントローラ1010によって制御される。充電制御スイッチ1022が開状態となった後には、ダイオード1023を介することによって放電のみが可能となる。また、充電時、あるいは又、コンデンサ33の放電開始時、大電流が流れた場合に開状態とされて、セル1001の電流経路に流れる充電電流(あるいは、逆流電流)を遮断するように、コントローラ1010によって制御される。放電制御スイッチ1024は、電池電圧が過放電検出電圧となった場合に開状態とされて、セル1001の電流経路に放電電流が流れないようにコントローラ1010によって制御される。放電制御スイッチ1024が開状態となった後には、ダイオード1025を介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合に開状態とされて、セル1001の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、コントローラ1010によって制御される。このように、二次電池制御部32Aは、二次電池31の放電時の電流を制限する電流制限回路としても機能する。
【0121】
温度検出素子1016は例えばサーミスタから成り、セル1001の近傍に設けられ、温度測定部1015は、温度検出素子1016を用いてセル1001の温度を測定し、測定結果をコントローラ1010に送出する。電圧測定部1012は、セル1001の電圧、及びセル1001を構成する各リチウムイオン電池1002の電圧を測定し、測定結果をA/D変換して、コントローラ1010に送出する。電流測定部1013は、電流検出抵抗器1014を用いて電流を測定し、測定結果をコントローラ1010に送出する。
【0122】
スイッチ制御部1020は、電圧測定部1012及び電流測定部1013から送られてきた電圧及び電流を基に、スイッチ部1021の充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を制御する。スイッチ制御部1020は、リチウムイオン電池1002のいずれかの電圧が過充電検出電圧若しくは過放電検出電圧以下になったとき、あるいは又、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部1021に制御信号を送ることにより、過充電及び過放電、過電流充放電を防止する。充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024は、例えばMOSFET等の半導体スイッチから構成することができる。この場合、MOSFETの寄生ダイオードによってダイオード1023,1025が構成される。MOSFETとして、pチャネル型FETを用いる場合、スイッチ制御部1020は、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024のそれぞれのゲート部に、制御信号DO及び制御信号COを供給する。充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024は、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によって導通する。即ち、通常の充電及び放電動作では、制御信号CO及び制御信号DOをローレベルとし、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を導通状態とする。そして、例えば過充電若しくは過放電の際には、制御信号CO及び制御信号DOをハイレベルとし、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を開状態とする。
【0123】
メモリ1011は、例えば、不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等から成る。メモリ1011には、コントローラ1010で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各リチウムイオン電池1002の初期状態におけるリチウムイオン電池の内部抵抗値等が予め記憶されており、また、適宜、書き換えが可能である。また、リチウムイオン電池1002の満充電容量を記憶させておくことで、コントローラ1010と共に例えば残容量を算出することができる。
【0124】
温度測定部1015では、温度検出素子1016を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行い、また、残容量の算出における補正を行う。
【0125】
第1スイッチ部41及び第2スイッチ部42の切り替えは、前述したとおり、照度センサ(あるいは第2の照度センサ)の測定結果に基づき行うことができるし、あるいは又、観察者20が操作することで行うことができるし、あるいは又、画像形成装置における画像の形成開始あるいは画像に形成終了に同期して行うことができる。
【0126】
尚、図11Bに示すように、場合によっては、電圧制御回路(レギュレータ)50を省略することもできる。また、図12に示すように、スイッチ部41A,41Bを備えており、2つのコンデンサ33A及び33Bを配設し、コンデンサ33Aの放電によって、第1電極712Aよりも第2電極712Bに高い電圧を印加し、調光装置700を着色し、コンデンサ33Bの放電によって、第2電極712Bよりも第1電極712Aに高い電圧を印加し、調光装置700を消色してもよい。これらの場合、二次電池制御部32Aに、調光層716の光透過率を制御するための第1電極712A、第2電極712Bに印加する電圧の値を制御する電圧制御回路を含ませればよい。
【0127】
図14Aにコンデンサ33を充電するための充電回路60を示す。この充電回路60は、コンパレータ61、電流制限機能付き定電圧IC(以下、『定電圧IC62』と呼ぶ)及び電圧制御回路(レギュレータ)50を備えている。また、図14Bに各部位における電位の変化を示す。この充電回路60にあっては、抵抗器R4を介し、定電圧IC62の端子電圧(VELDC)がコンパレータ61の反転端子に印加される。基準電圧VREF、抵抗器R1,R2,R3でヒステリシス電圧V1,V2が設定される。端子電圧(VELDC)が電圧V2を下回ると、定電圧IC62のイネーブル端子ENが「ハイ,High」状態に遷移し、定電圧IC62がオンになり、制限された電流ICHGが流れ、コンデンサ33が充電される。端子電圧(VELDC)が電圧V1(即ち、コンデンサ33の最大使用電圧)に到達すると、定電圧IC62のイネーブル端子ENが「ロー,Low」状態に遷移し、定電圧IC62はオフになり、充電が終了する。このような充電回路60を、図11A図11B図12に示した回路のコンデンサ33の上流に配設すればよい。
【0128】
図15A及び図15Bに光透過率を制御し、且つ、第1電極712A及び第2電極712Bに印加する電圧の極性を変えるための光透過率・極性制御回路70A,70Bを示す。光透過率・極性制御回路70A,70Bは、光透過率の高低に依存して第1電極712A、第2電極712Bに印加する電圧を制御するし、着色・消色の指示によって第1電極712A、第2電極712Bに印加する電圧の極性を制御する。図11A及び図11Bに示した第2スイッチ部42を、光透過率・極性制御回路70A,70Bによって置き換えている。
【0129】
図15Aに示す光透過率・極性制御回路70Aは、2つのオペアンプ71A,71Bから構成されている。オペアンプ71A,71Bの非反転入力部には、VDDと接地電位の間の電位(VDD/x)が入力される。「x」の値は、例えば、2以上の整数である。オペアンプ71Bの反転入力部には、電位VINが入力される。電位VINによって調光装置700の光透過率が規定(設定)される。オペアンプ71Bの出力部は、調光装置700の第1電極712Aに接続され、オペアンプ71Aの反転入力部にも接続されている。オペアンプ71Aの出力部は、調光装置700の第2電極712Bに接続されている。2つのオペアンプ71A,71Bの正電源は、電圧制御回路(レギュレータ)50に接続され、電圧制御回路50はコンデンサ33に接続されている。また、2つのオペアンプ71A,71Bの負電源は接地されている。
【0130】
あるいは又、図15Bに光透過率・極性制御回路70Bを示すが、光透過率・極性制御回路70Bは、接地基準で+側の電圧を出力する2系統の定電圧回路を備えており、一方の定電圧回路の固定出力電圧Vout-1に対して、出力電圧制御信号に基づき他方の定電圧回路の出力電圧Vout-2を高くし、あるいは、低くすることで、調光装置700の着色・消色の制御(印加電圧の極性の制御)、光透過率の制御を行う。(Vout-2-Vout-1)>0の場合、調光装置700は着色状態となり、(Vout-2-Vout-1)<0の場合、調光装置700は消色状態となる。また、|Vout-2-Vout-1|の値に依存して光透過率が規定される。
【0131】
調光装置700の別の駆動回路の回路図を図16に示し、図16に示した駆動回路の動作説明を図17に示す。調光装置700の光透過率設定信号に応じて、D/Aコンバータ81の出力のDC電圧が変化する。このDC電圧が高い場合、調光装置700の光透過率が低下し(着色し)、DC電圧が低い場合、調光装置700の光透過率が増加する(消色する)。また、DC電圧変化のエッジ部を微分回路82によって抽出する。そして、このDC電圧変化のエッジ部から数秒が経過した後、コンデンサ33からの放電電流が調光層716に流れ始める。また、DC電圧変化のエッジ部は両極性なので、絶対値回路83によって片方向の極性に纏める。そして、コンパレータ回路84で矩形波を生成し、レベルシフト回路85で、グランド基準の波形に修正する。更には、矩形波のローレベルの期間(定電圧IC62のディスイネーブル期間)を、コンデンサ33からの放電電流を回避したい区間に設定するための遅延をモノマルチ遅延IC86で発生させる。
【0132】
場合によっては、第1電極及び/又は第2電極を、複数のブロックに分割し、各ブロックにおける遮光率を制御することで、調光装置の領域毎の遮光率を制御する形態を採用してもよい。あるいは又、第1電極あるいは第2電極を帯状の電極あるいはメッシュ状の電極とすることで、若しくは、第1電極あるいは第2電極の上に帯状の補助電極あるいはメッシュ状の補助電極を形成することで、調光装置の複数の領域における遮光率を独立して制御することができる。場合によっては、調光装置を、例えば、アクティブマトリクス方式や単純マトリクス方式に基づき駆動される液晶表示装置から構成し、調光装置の遮光率を制御してもよい。
【0133】
調光装置700における遮光率の制御を、例えば、単純マトリクス方式に基づき行う場合、調光装置700の模式的な平面図を図2Cに示すように、
第1電極712Aは、第1の方向に延びる複数の帯状の第1電極セグメント712A’から構成されており、
第2電極712Bは、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる複数の帯状の第2電極セグメント712B’から構成されており、
第1電極セグメント712A’と第2電極セグメント712B’の重複領域(調光装置の遮光率が変化する最小単位領域)に対応する調光装置の部分の遮光率の制御は、第1電極セグメント712A’及び第2電極セグメント712B’に印加する電圧の制御に基づき行われる。第1の方向と第2の方向とは直交しており、具体的には、第1の方向は横方向(X方向)に延び、第2の方向は縦方向(Y方向)に延びる。
【0134】
光透過率72%から光透過率7%を実現するための調光装置700を見積もった。調光装置700の調光に寄与する領域(以下、『調光領域』と呼ぶ)の面積を、例えば、1120mm2(=56mm×20mm)とした。そして、このような調光装置700の着色・消色に必要な電荷量は224ミリクーロンであると計測することができた。このことから、調光装置700の調光領域の単位面積当たりの電荷量は0.2ミリクーロン/mm2(=224/1120)である。
【0135】
調光領域の面積が1120mm2である調光装置において、第1電極712Aと第2電極712Bとの間に流れる電流に制限を加えない場合、第1電極712Aと第2電極712Bとの間に流れる電流が、例えば、20ミリアンペアとなるまでに要する時間は、着色時にあっては3.6秒後、消色時にあっては1.8秒後であることが実験的に確認された。また、時間に対する電流変化のデータから、このとき、着色時においては、着色が完了する電荷量224ミリクーロンに対して70%に相当する157ミリクーロンが調光装置に注入されており、消色時においては、消色が完了する電荷量224ミリクーロンに対して98%に相当する220ミリクーロンが調光装置に注入されていることが判った。そして、このことから、着色・消色の際に、二次電池31に20ミリアンペアの電流制限をかける場合、動作速度を損なわずに着色・消色に必要な電荷量をコンデンサ33から賄おうとすると、着色・消色に必要な電荷量Q0に対してコンデンサ33の放電前後の電荷変化量(Q1-Q2)は、Q0×0.98以上であることが求められる。
【0136】
この電荷量は、コンデンサ33の静電容量Cと放電前後の電位差(V1-V2)によって決まる。ここで、実用上、コンデンサ33を充電する二次電池31の電圧を、市販の定格電圧3.7ボルトとする。この電圧は、コンデンサ33の放電開始時の電圧V1に相当する。充分に調光層716に電荷を与えた直後、即ち、制限電流以下の電流が流れ始めるときの電圧V2を1.5ボルトとすると、電圧制御回路は一層簡便な回路構成になる。そして、この場合、消色が完了する電荷量224ミリクーロンに対して98%に相当する220ミリクーロンの電荷量を、電位差2.2ボルト(3.7ボルト-1.5ボルト)で賄うためのコンデンサ33に求められる静電容量Cは、
C=Q/ΔV=220[mC]/2.2[V]=100[mF]
以上となる。実際にこのようなコンデンサ33からは、電流制限の無い場合の二次電池31と同程度の放電電流を得ることができ、消色時のコンデンサ33の放電中の平均電流はおよそ124ミリクーロン/秒(=124ミリアンペア)であった。
【0137】
コンデンサ33の放電時間TDiscahrgeは、一般に、コンデンサ33の出力をPとしたとき、
Discahrge=(1/2)×C×(V1 2-V2 2)/P
という関係がある(ELMA社の技術資料等参照 https://www.elna.co.jp/capacitor/double_layer/pdf/calculation.pdf)。ここで、出力P=(出力電流)×(出力電圧)であり、出力電流を放電中の平均電流124ミリクーロン/秒(=124ミリアンペア)で近似し、また、出力電圧を平均電圧{(V1+V2)/2=2.6ボルト}で近似すると、
Discahrge=(1/2)×100[mC/V]×(3.72-1.52)[V2
/(124×2.6)[mC・V/秒]
≒1.8[秒]
となり、コンデンサ33によって調光装置700を駆動することで、電流制限の無い場合の二次電池の放電に基づくと同等の動作速度を得られることが判る。尚、コンデンサ33の放電電圧は放電に伴い減少するが、電圧制御回路によって調光装置700には一定電圧が印加されている。
【0138】
ところで、調光装置において調光領域の面積や、要求される光透過率の範囲、制限電流、二次電池31の定格電圧、調光装置の電極間に印加される電圧に依存して、調光装置の実際の動作速度及びコンデンサ33に求められる電荷量は異なる。以上に説明した例は、サングラスサイズ(調光に寄与する領域:1120mm2)の調光装置に光透過率72%~8%の透過率範囲で着色・消色を行い、電極間の電圧V2は1.5ボルトであるといった例である。そして、この場合のコンデンサ33の放電による電流は、最大300ミリアンペア程度と想定される。
【0139】
また、単位面積当たりの電荷量0.2ミリクーロン/mm2の値は、実験的に確認されている調光装置の着色・消色に必要な電荷量であるが、実際には、光透過率範囲を拡大させようとすると、より大きな電荷量が必要となる。また、電圧によってもコンデンサ33の電荷量は変わるため、低めの電圧(0.2ボルト)でも必要な電荷量を賄えるであろう単位面積当たり静電容量C[F/mm2]として、
C=Q[mC/mm2]/V[V]
=0.2×10-3/0.2
=0.001[F/mm2
と見積もることができ、より狭い光透過率範囲や電圧も考慮して、
C/A>1×10-6[F/mm2
と設定している。
【0140】
また、制限電流20ミリアンペアに対応するコンデンサ33の動作時間(着色時3.6秒、消色時1.8秒)も、実験的に確認されている動作時間である。しかしながら、調光装置において調光領域の面積が大きくなると、動作時間は、動作回路に拘わらず長く(遅く)なる。従って、調光領域の面積と動作時間との関係は、実用上の価値と実際の動作速度を鑑みて決定すればよい。
【0141】
以上のとおり、実施例1の表示装置には調光装置が備えられているので、観察者が観察する虚像に高いコントラストを与えることができる。しかも、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加によって調光装置の着色・消色を速やかに行うことができるし、小型の二次電池の使用が可能である。また、二次電池によるコンデンサの充電を行うので、制御部全体の構成の簡素化、表示装置の軽量化、小型化を図ることができる。加えて、調光装置の着色開始又は消色開始から所定の時間(T0)が経過した後の二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を制御部は行うので、調光装置の光透過率の値の安定化を図ることができる。
【0142】
ところで、上述したとおり、二次電池制御部において、コントローラは、二次電池制御部からの大電流の流れを抑制するような制御を行う。従って、このような二次電池制御部を用いたのでは、速やかに調光層の光透過率を変化させるために大電流を第1電極と第2電極との間に流すことは困難である。然るに、実施例1にあっては、調光装置はコンデンサを備えており、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加によって、調光装置の着色・消色を速やかに行うことができる。しかも、調光層の着色開始から所定の時間が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行えば、調光層の着色状態の安定化を図ることができる。
【実施例2】
【0143】
実施例2は、実施例1の変形であり、第1-A構造の光学装置及び第2構成の画像形成装置に関する。実施例2の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置200の概念図を図18に示すように、実施例2において、画像形成装置211(211A,211B)は、第2構成の画像形成装置から構成されている。即ち、光源251、及び、光源251から出射された平行光を走査する走査手段253を備えている。より具体的には、画像形成装置211は、
光源251、
光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、及び、
走査手段253によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系254、
から構成されている。尚、画像形成装置211全体が筐体213(図18では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体213には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系254から光が出射される。そして、各筐体213が、取付け部材19によって、着脱自在に、テンプル部13に取り付けられている。
【0144】
光源251は、白色を発光する発光素子から構成されている。そして、光源251から出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、実施例1と同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)254を通過し、平行光とされた光束が光学装置120に入射する。
【0145】
リレー光学系254にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120は、実施例1にて説明した光学装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例2の表示装置も、上述したとおり、画像形成装置211が異なる点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0146】
実施例3も、実施例1の変形であるが、第1-B構造の光学装置及び第1構成の画像形成装置に関する。実施例3の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置300の概念図を図19に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図20に示す。実施例3において、画像形成装置111’は、実施例1と同様に、有機EL表示装置150’から構成されている。画像形成装置111’は、実施例1と同様に、有機EL表示装置150’から構成されている。尚、図4に示した実施例1における画像形成装置111から画像形成装置を構成してもよい。光学装置320は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造は、実施例1の光学装置120と同じである。
【0147】
実施例3において、第1偏向手段及び第2偏向手段は、導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。
【0148】
そして、実施例3あるいは後述する実施例4において、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は、1層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折格子素子、回折格子部材)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Y方向に延びる。尚、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の軸線はX方向に延び、法線はZ方向に延びる。
【0149】
図20に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角(スラント角)φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
【0150】
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°-(φ+ψ) (B)
【0151】
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折(具体的には、回折反射)する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を回折(具体的には、複数回、回折反射)し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。
【0152】
そして、導光板321にあっても、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板321が薄く導光板321の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材340に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板321に入射する平行光のうち、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材340から離れる方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材330において回折される平行光であって、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板321に入射する平行光よりも、導光板321の内部を伝播していく光が導光板321の内面と衝突するときの導光板321の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材340の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材330の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板321の軸線に垂直な仮想平面に対して対称な関係にある。第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の導光板321とは対向していない面を、透明樹脂板あるいは透明樹脂フィルムで被覆し、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340に損傷が生じることを防止する構造としてもよい。また、第1面322に透明な保護フィルムを貼り合わせ、導光板321を保護してもよい。
【0153】
後述する実施例4における導光板321も、基本的には、以上に説明した導光板321の構成、構造と同じ構成、構造を有する。
【0154】
実施例3の表示装置は、上述したとおり、光学装置320が異なる点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0155】
実施例4も、実施例1の変形であるが、第1-B構造の光学装置及び第2構成の画像形成装置に関する。実施例4の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置の概念図を図21に示す。実施例4の画像表示装置400における光源251、コリメート光学系252、走査手段253、平行光出射光学系(リレー光学系254)等は、実施例2と同じ構成、構造(第2構成の画像形成装置)を有する。また、実施例4における光学装置320は、実施例3における光学装置320と同じ構成、構造を有する。実施例4の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0156】
実施例5も、実施例1における画像表示装置の変形であるが、第2構造の光学装置、第2構成の画像形成装置に関する。実施例5の表示装置を上方から眺めた模式図を図22に示す。
【0157】
実施例5において、画像表示装置500を構成する光学装置520は、光源251A,251Bから出射された光が入射され、観察者20の瞳21に向かって出射される半透過ミラー530A,530Bから構成されている。尚、実施例5において、筐体213内に配置された光源251(251A,251B)から出射された光は、図示しない光ファイバの内部を伝播して、例えば、ノーズパッド部10’の近傍のリム11’の部分に取り付けられた走査手段253(253A,253B)に入射し、走査手段253によって走査された光は半透過ミラー530A,530Bに入射する。あるいは又、筐体213内に配置された光源251A,251Bから出射された光は、図示しない光ファイバの内部を伝播して、例えば、両眼のそれぞれに対応するリム11’の部分の上方に取り付けられた走査手段253(253A,253B)に入射し、走査手段253によって走査された光は半透過ミラー530A,530Bに入射する。あるいは又、筐体213内に配置された光源251A,251Bから出射され、筐体213内に配置された走査手段253(253A,253B)に入射し、走査手段253によって走査された光は、半透過ミラー530A,530Bに、直接、入射する。そして、半透過ミラー530A,530Bによって反射された光が観察者20の瞳21に入射する。画像形成装置は、実質的に、実施例2において説明した画像形成装置211とすることができる。実施例5の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例6】
【0158】
実施例6は、実施例1の変形である。実施例6の表示装置を上方から眺めた模式図を図23Aに示す。また、照度センサを制御する回路の模式図を図23Bに示す。
【0159】
実施例6の表示装置は、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)901を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)901の測定結果に基づき、調光装置700の遮光率を制御する。併せて、あるいは、独立して、照度センサ(環境照度測定センサ)901の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する環境照度測定センサ901は、例えば、調光装置700の外側端部に配置すればよい。環境照度測定センサ901は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、環境照度測定センサ901を制御する回路が含まれる。この環境照度測定センサ901を制御する回路は、環境照度測定センサ901からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する環境照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御にあっては、調光装置700の遮光率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御にあっては、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。
【0160】
例えば、照度センサ(環境照度測定センサ)901の測定結果が所定値(第1の照度測定値)以上になったとき、調光装置700の遮光率を所定の値(第1の遮光率)以上とする。一方、照度センサ(環境照度測定センサ)901の測定結果が所定値(第2の照度測定値)以下になったとき、調光装置700の遮光率を所定の値(第2の遮光率)以下とする。ここで、第1の照度測定値として10ルクスを挙げることができるし、第1の遮光率として99%乃至70%のいずれかの値を挙げることができるし、第2の照度測定値として0.01ルクスを挙げることができるし、第2の遮光率として49%乃至1%のいずれかの値を挙げることができる。
【0161】
尚、実施例6における照度センサ(環境照度測定センサ)901を、実施例2~実施例5において説明した表示装置に適用することができる。また、表示装置が撮像装置を備えている場合、撮像装置に備えられた露出測定用の受光素子から照度センサ(環境照度測定センサ)901を構成することもできる。
【0162】
実施例6あるいは次に述べる実施例7の表示装置にあっては、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御し、また、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の遮光率を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御するので、観察者が観察する虚像に高いコントラストを与えることができるだけでなく、表示装置の置かれた周囲の環境の照度に依存して虚像の観察状態の最適化を図ることができる。
【実施例7】
【0163】
実施例7も、実施例1の変形である。実施例7の表示装置を上方から眺めた模式図を図24Aに示す。また、第2の照度センサを制御する回路の模式図を図24Bに示す。
【0164】
実施例7の表示装置は、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する、即ち、環境光が調光装置を透過して所望の照度まで調整されて入射しているかを測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902を更に備えており、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902の測定結果に基づき、調光装置700の遮光率を制御する。併せて、あるいは、独立して、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する透過光照度測定センサ902は、光学装置120,320,520よりも観察者側に配置されている。具体的には、透過光照度測定センサ902は、例えば、筐体113,213の内側面に配置すればよい。透過光照度測定センサ902は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、透過光照度測定センサ902を制御する回路が含まれる。この透過光照度測定センサ902を制御する回路は、透過光照度測定センサ902からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する透過光照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御において、調光装置700の遮光率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御において、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。更に、透過光照度測定センサ902の測定結果が環境照度測定センサ901の照度から鑑みて所望の照度まで制御できていない場合、即ち、透過光照度測定センサ902の測定結果が所望の照度になっていない場合、若しくは、更に一層の微妙な照度調整が望まれる場合には、透過光照度測定センサ902の値をモニターしながら調光装置の遮光率を調整すればよい。第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を、少なくとも2つ、配置し、高遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定、低遮光率の部分を通過した光に基づく照度の測定を行ってもよい。
【0165】
尚、実施例7における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902を、実施例2~実施例5において説明した表示装置に適用することができる。あるいは又、実施例7における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902と実施例6における照度センサ(環境照度測定センサ)901とを組み合わせてもよく、この場合、種々の試験を行い、調光装置700における遮光率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御を、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。右眼用の調光装置と左眼用の調光装置のそれぞれにおいて、第1電極及び第2電極に印加する電圧を調整することで、右眼用の調光装置における遮光率及び左眼用の調光装置における遮光率の均等化を図ることができる。第1電極と第2電極との間の電位差を制御してもよいし、第1電極に印加する電圧と第2電極に印加する電圧とを独立に制御してもよい。右眼用の調光装置における遮光率及び左眼用の調光装置における遮光率は、例えば、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)902の測定結果に基づき、制御することができるし、あるいは又、観察者20が、右眼用の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさ及び左眼用の調光装置及び光学装置を通過した光の明るさを観察し、観察者20が、スイッチやボタン、ダイアル、スライダ、ノブ等を操作することで手動にて制御、調整することもできる。
【実施例8】
【0166】
実施例8は、実施例1~実施例7の変形である。実施例8の調光装置にあっては、少なくとも第2電極と第2基板との間には水分保持部材が配設されている。
【0167】
実施例8における調光装置700’は、図25Aに模式的な断面図を示すように、
第1基板711A、
第1基板711Aと対向して配設され、外光が入光する第2基板711B、
第1基板711Aと第2基板711Bとの間に設けられた調光層716、
を備えており、
調光層716と第1基板711Aとの間には第1電極712Aが設けられており、
調光層716と第2基板711Bとの間には第2電極712Bが設けられており、 調光層716は、還元着色層713、電解質層714及び酸化着色層715の積層構造を有する。
【0168】
そして、少なくとも第2電極712Bと第2基板711Bとの間には水分保持部材721が配設されている。水分保持部材721の端面は外部に露出している。調光装置700’の端部(側面)の少なくとも一部は、第1基板側から、封止部材723及び水分保持部材721から構成されている。即ち、調光装置700’の端部の少なくとも一部は、第1基板側から、封止部材723、及び、水分保持部材721から延在する水分保持部材延在部722の積層構造から構成されている。封止部材723は、例えば、第1基板711Aの縁部に設けられている。
【0169】
第2電極712Bは、調光層716上から第1基板711A上に亙り、且つ、第1電極712Aと離間して形成されており、水分保持部材721は、少なくとも第2電極712B及び調光層716を覆っている。即ち、第1電極712Aは第1基板711A上に形成されており、調光層716は第1電極712A上に形成されており、第2電極712Bは少なくとも調光層716上に形成されており、水分保持部材721は、少なくとも第2電極712Bを覆い、第2基板711Bと対向している。封止部材723と第2基板711Bとの間には、水分保持部材721から延在する水分保持部材延在部722が配設されている。更には、封止部材723の一部は銅(Cu)から成る補助電極(図示せず)から構成されている。また、封止部材723の残部は、樹脂、具体的には、アクリル系接着剤から成る。補助電極は、第1電極712A上に形成された第1補助電極(図示せず)、及び、第2電極712B上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極(図示せず)から構成されている。封止部材723及び水分保持部材延在部722によって、調光装置700’の側壁が構成される。また、封止部材723は、隙間無く設けられている。
【0170】
プロトン供給部材、水分を保持し得る透明粘着部材、あるいは、水分を保持し得る透明封止部材と呼ぶこともできる水分保持部材721及び水分保持部材延在部722を構成する樹脂は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂から、適宜、選択すればよく、実施例8にあっては、具体的には、アクリル系樹脂から構成されている。
【0171】
ヤング率が1×106Pa以下である材料から水分保持部材721及び水分保持部材延在部722を構成することで、調光装置の内部において生じた各種の段差を吸収することができるし、調光装置中央部における水分保持部材721の厚さのバラツキ、水分保持部材延在部722の厚さのバラツキを小さくすることができる。即ち、第1基板711Aと第2基板711Bとの間の距離全体の均一化を図ることができる。そして、その結果、視認性の劣化発生を防ぐことができる。具体的には、調光装置700’を通して外界を見たとき、外界の像に歪みが生じたり、外界の像にズレが生じることを抑制することができる。
【0172】
ITOやIZOから成る第1電極712A及び第2電極712Bは、パターニングされておらず、所謂ベタ電極である。調光装置700’の補助電極の一部にコネクタ(図示せず)が取り付けられており、第1電極712A及び第2電極712Bは、調光装置700’の遮光率を制御するための制御部30に電気的に接続されている。
【0173】
エレクトロクロミック素子内部において水分が無くなってしまうとエレクトロクロミック素子に色変化が生じなくなるといった現象が発生する。然るに、実施例8の調光装置にあっては、水分保持部材延在部の端面(調光装置の側壁)を介して水分の出入りが生じるので、調光装置あるいは画像表示装置、表示装置の信頼性が低下するといった問題の発生を回避することができる。しかも、補助電極を設ければ、第1電極及び第2電極へ適切な電圧を容易に印加することができるし、第1電極あるいは第2電極における電圧降下の発生を抑制することができる結果、調光装置の着色時のムラ発生を低減することができる。
【実施例9】
【0174】
実施例9も、実施例1~実施例7の変形である。実施例9の調光装置において、調光装置は、金属(例えば、銀粒子)の可逆的な酸化還元反応によって発生する電着・解離現象を応用した電着方式(エレクトロデポジション方式あるいは電界析出方式)による一種の光シャッタから構成されている。実施例9の調光装置の模式的な断面図を図25Bに示す。
【0175】
このような調光装置において、調光層を金属イオンを含む電解質層から構成する場合、金属イオンは銀イオンから成り、電解質は、LiX、NaX及びKX(但し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である)から成る群より選ばれた少なくとも1種類の塩(『支持電解質塩』と呼ぶ)を含むことが望ましい。
【0176】
そして、第1電極及び第2電極への電圧の印加に基づく、第2電極上における金属(例えば、銀)の析出及び電解質中への金属(例えば、銀)の溶解によって、調光装置(具体的には、エレクトロデポジション型の調光装置)の着色及び消色が生じる形態とすることが好ましい。金属イオンを銀イオンとし、第2電極を銀から構成すれば、即ち、第2電極を構成する金属材料と金属イオンを同じ金属とすれば、電気化学的に安定な電極反応を実現することができる。
【0177】
電解質中には、電気化学的な還元・酸化、及び、これに伴う析出・溶解によって着色(発色)する材料として金属イオンが含有されている。そして、金属イオンの電気化学的な析出・溶解反応により、着色(発色)及び消色がなされ、調光装置の遮光率が変化する。換言すると、このような表示装置における調光装置の動作は、所謂、電解メッキによる金属の析出と析出した金属の溶出反応とを可逆的に生じさせる動作であると云える。このように、電気化学的な析出・溶解によって着色(発色)と消色とが実現可能な金属イオンとして、特に限定されるものではないが、上述した銀(Ag)以外にも、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)の各イオン、これらのイオンの組合せを例示することができるが、中でも特に好ましい金属イオンは、銀(Ag)、ビスマス(Bi)である。銀やビスマスは、可逆的な反応を容易に進めることができ、しかも、析出時の変色度が高い。
【0178】
そして、電解質に金属イオンが含まれているが、具体的には、金属イオンを含む物質が電解質に溶解している。より具体的には、金属イオンを含む物質として、例えば、AgF、AgCl、AgBr、AgI等のハロゲン化銀の少なくとも1種、好ましくはAgIあるいはAgBrを挙げることができ、この金属イオンを含む物質が電解質に溶解している。ハロゲン化銀の濃度として、例えば、0.03~2.0モル/リットルを例示することができる。
【0179】
第1基板と第2基板との間には金属イオンを含む電解質が封止されているが、電解質は、電解液あるいは高分子電解質から構成することができる。電解液として、溶媒に金属塩又はアルキル四級アンモニウム塩を含有させたものを用いることができる。具体的には、電解質として、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エトキシエタノール、2-メトキシエタノール、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、スルホラン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAA)、N-メチルプロピオン酸アミド(MPA)、N-メチルピロリドン(MP)、ジオキソラン(DOL)、エチルアセテート(EA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、又は、これらの混合物を用いることができる。また、高分子電解質に用いるマトリクス(母材)高分子として、主骨格単位、若しくは、側鎖単位、若しくは、主骨格単位及び側鎖単位に、アルキレンオキサイド、アルキレンイミン、アルキレンスルフィドの繰り返し単位を有する高分子材料、又は、これらの異なる単位を複数含む共重合物、又は、ポリメチルメタクリレート誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート誘導体、又は、これらの混合物を挙げることができる。電解質が高分子電解質から成る場合、電解質は、単一層であってもよいし、複数の高分子電解質が積層された積層構造を有していてもよい。
【0180】
水や有機溶剤を添加することで膨潤したマトリクス高分子を用いることもできる。特に応答速度等が要求されるような場合には、マトリクス高分子に水や有機溶剤を添加することにより、電解質中に含まれる金属イオンの移動がより容易になる。
【0181】
尚、マトリクス高分子の特質並びに所望の電気化学的反応に応じて、親水性を要求される場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールあるいはこれらの混合物等を添加することが好ましく、疎水性を要求される場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、スルホラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン、あるいは、これらの混合物を添加することが好ましい。
【0182】
上述したとおり、第1電極及び第2電極への電圧の印加に基づく、第2電極上における金属の析出及び電解質中への金属の溶解によって、調光装置(具体的には、エレクトロデポジション型の調光装置)の着色及び消色が生じる。ここで、一般に、第2電極上において析出した金属から成る層(金属層)の電解質と接する面には凹凸が生じ、黒味を帯びて見える一方、金属層の第2電極と接する面は鏡面状となる。従って、調光装置として用いる場合、金属層の電解質と接する面が観察者側を向くことが望ましい。云い換えれば、第1基板は第2基板よりも観察者側に配置されている形態とすることが好ましい。
【0183】
調光装置の有効領域内において第2電極はパターニングされていない形態とすることが好ましい。即ち、調光装置の有効領域を占める第2電極の部分は、パターニングされていない透明電極層(所謂、ベタ透明電極層)から構成されている形態とすることが好ましい。具体的には、パターニングされていない第2電極の射影像の大きさは、第2偏向手段の射影像と同じ、若しくは、射影像よりも大きいことが好ましい。第2電極を外部に引き出す部分等はパターニングされていてもよい。
【0184】
上述したとおり、電解質に、析出・溶解させる金属イオン種とは異なるイオン種を含む塩(支持電解質塩)を添加することにより、電気化学的な析出・溶解反応をより効果的に、且つ、安定して行うことができる。このような支持電解質塩として、上述したリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩や、テトラアルキル四級アンモニウム塩を挙げることができる。ここで、リチウム塩として、具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等を挙げることができる。また、カリウム塩として、具体的には、KCl、KI、KBr等を挙げることができる。更には、ナトリウム塩として、具体的には、NaCl、NaI、NaBr等を挙げることができる。また、テトラアルキル四級アンモニウム塩として、具体的には、硼フッ化テトラエチルアンモニウム塩、過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩、硼フッ化テトラブチルアンモニウム塩、過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムハライド塩等を挙げることができる。尚、上述の四級アンモニウム塩のアルキル鎖長は不揃いであってもよい。支持電解質塩は、金属イオンを含む物質の、例えば、1/2~5倍程度の濃度で添加すればよい。また、高分子電解質から成る電解質に無機粒子を着色剤として混ぜてもよい。
【0185】
また、電解質には、電気化学的な反応、特に金属の析出・溶解を可逆的、且つ、効率的に行うために、成長阻害剤、応力抑制剤、光沢剤、錯化剤、還元剤といった添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。このような添加剤としては、酸素原子又は硫黄原子を有する基を備えた有機化合物が好ましく、例えば、チオ尿素、1-アリル-2-チオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール、クマリン、フタル酸、コハク酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、酒石酸、シュウ酸及びD-グルコノ-1,5-ラクトンから成る群より選ばれた少なくとも1種類を添加することが好ましい。特に、メルカプトアルキルイミダゾールに準じるメルカプトベンゾイミダゾール(下記の構造式を参照)を添加することによって、可逆性が向上すると共に、長期保存性、高温保存性においても優れた効果を得ることができるため好ましい。
【0186】
但し、R1,R2,R3は、それぞれ、水素原子、あるいは、Cn2n+1(但し、nは1以上の整数)で示されるアルキル基である。
【0187】
また、電気化学的な反応が生じるとき、所定の反応以外の副反応が発生する場合がある。例えば、電解質にハロゲン化物を含む塩が含有されている場合、これらは電位によっては、以下に示すような反応によりイオン状態から酸化されてしまう。そして、これに伴い所望の発色以外の発色が生じてしまう。
【0188】
2 + 2e- → 又は ← 2I- (0.536V)
Br2 + 2e- → 又は ← 2Br- (1.065V)
Cl2 + 2e- → 又は ← 2Cl- (1.360V)
【0189】
従って、この不要な発色の発生を解消するには、上述した副反応を抑制し、且つ、酸化されたハロゲン物を還元する必要がある。この場合、還元剤として、一般的な還元剤を用いることができ、添加剤として電解質に添加すればよい。このような還元剤として、例えば、アスコルビン酸化合物や、以下の式で表されるトリアルキルアルコールアミン等が好適である。
【0190】
【0191】
特に、トリアルキルアルコールアミン種であり以下の式で表されるトリエタノールアミンは、電解質に添加することによって、長期保存性、高温保存性においても優れた効果を得ることができるため好ましい。
【0192】
【0193】
また、所定の反応以外の副反応により還元反応が生じる場合には酸化剤を添加する。従って、金属が析出する際に、第1電極及び第2電極のどちらにおいても生じ得る主としてアニオン種に起因した副反応を抑制するための還元剤又は酸化剤を電解質に添加することが好ましい。
【0194】
実施例9の調光装置において、第1電極と第2電極との間の距離は20μm乃至200μmであることが好ましい。第1電極と第2電極との間の距離が短いほど、電極間の電気抵抗が低くなり、発色・消色時間の短縮や消費電力の低下につながり、好ましい。しかしながら、第1電極と第2電極との間の距離が20μm未満になると、機械的強度が低下して、ピンホールや亀裂が生じる虞がある。また、第1電極と第2電極との間の距離があまりに短い場合には、電界集中が偏るために色ムラが生じ、観察者が映像を見ているときのコントラストにムラが生じる虞がある。
【0195】
第1基板と第2基板とは、外縁部において封止剤によって封止され、接着されている。シール剤とも呼ばれる封止剤として、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン-チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種樹脂を用いることができる。電解質には、必要に応じて、柱状構造物が含まれていてもよい。柱状構造物は、基板間に強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに基づき一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物から成る。尚、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。柱状構造物は、ランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、調光装置における光の通過を妨げない配列であることが好ましい。一対の基板間には、基板間のギャップを均一に保持するためにスペーサを配してもよい。スペーサとして、樹脂製又は無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性樹脂がコーティングされたスペーサも好適に用いることができる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを配してもよいし、スペーサ及び柱状構造物の両方を配してもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサのみを配してもよい。スペーサの直径は、柱状構造物と併用する場合、柱状構造物の高さ以下、好ましくは、柱状構造物の高さと等しくする。柱状構造物を配さない場合、スペーサの直径が一対の基板間のギャップの厚さに相当する。
【0196】
第1電極はナノワイヤから成る形態とすることが望ましく、更には、ナノワイヤの平均直径は1μm以下、好ましくは0.5μm以下である形態とすることが望ましい。ナノワイヤの平均長さ(長軸方向の平均長さ)は、1×10-6m以上、5×10-4m以下、好ましくは5×10-6m以上、2.5×10-4m以下、より好ましくは1×10-5mm以上、1×10-4m以下であることが望ましい。また、ナノワイヤの平均直径(短軸方向の平均長さ)は、前述したとおり、1μm(1×10-6m)以下であるが、好ましくは5×10-9m以上、5×10-7m以下、より好ましくは1×10-8m以上、1×10-7m以下、より一層好ましくは1×10-8m以上、5×10-8m以下であることが望ましい。ナノワイヤの平均長さが1×10-6m未満であると、例えば、第1電極を塗布法や印刷法に基づき形成するとき、ナノワイヤ同士の接点が少なくなり、導通が取り難くなり、その結果、第1電極の電気抵抗が高くなってしまう虞がある。一方、5×10-4mを超えると、ナノワイヤが絡み易くなり過ぎ、分散安定性が悪くなる虞がある。ナノワイヤの平均直径が1×10-6mを超えると、導電体としての特性は良くなるが、光散乱によるヘイズが目立ち、透明性が失われる虞がある。一方、ナノワイヤの平均直径が、5×10-9m未満であると、透明性は良くなるが、酸化により導電性が悪化する虞がある。
【0197】
第1電極を構成する導電材料は、電気化学的に安定な導電材料であれば如何なる材料をも用いることができ、具体的には、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、白金(Pt)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)といった金属材料を挙げることができるが、中でも、後述する理由から、銀(Ag)を用いることが望ましい。第1電極は、例えば、導電材料から成るナノワイヤを溶媒中に分散させたものを第1基板上に塗布あるいは印刷し、熱処理を施すことによって得ることができるし、導電材料から成る微粒子を溶媒中に分散させたものを第1基板上に塗布あるいは印刷し、熱処理を施すことによって得ることもでき、これらの場合、第1電極はパターニングされていない。具体的には、調光装置の有効領域を占める第1電極の部分は、パターニングされていないことが好ましい。ここで、調光装置の有効領域とは、後述する第2偏向手段の射影像と同じ、若しくは、射影像よりも大きな領域を指す。以下においても同様である。即ち、パターニングされていない第1電極の部分の射影像の大きさは、後述する第2偏向手段の射影像と同じ、若しくは、射影像よりも大きいことが好ましい。尚、第1電極を外部に引き出す部分は導電材料から構成することができる。あるいは又、第1基板上に金属薄膜を成膜した後、金属薄膜をランダムに(あるいは不規則に、無秩序に)パターニングすることで得ることもできる。尚、導電材料として、カーボン(例えば、カーボンナノチューブ)を用いることもでき、この場合、樹脂及び溶剤を用いてインク化し、第1基板に印刷すればよい。
【0198】
ナノワイヤを用いて塗布法あるいは印刷法に基づき第1電極を形成することで、ナノワイヤがランダム(あるいは不規則、無秩序)に配されて成る第1電極を得ることができる結果、第1電極を通過した光に回折現象が生じることを効果的に防止することができる。更には、上述したとおり、ナノワイヤの平均直径を1μm以下、好ましくは0.5μm以下とすることで、第1電極を通過した光に回折現象が生じることを一層効果的に防止することができるし、光散乱強度を低下させることができる。例えば蛍光灯を調光装置を通して眺めると、第1電極を通過した光に回折現象が生じた場合、蛍光灯が虹色に見え、極めて視界が悪くなってしまうといった問題が発生するが、第1電極を通過した光に回折現象が生じることを防止することで、このような問題の発生を確実に回避することができる。
【0199】
第2電極として、所謂透明電極を挙げることができ、具体的には、インジウム-スズ複合酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn23、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、フッ素ドープSnO2(FTO)、IFO(FドープのIn23)、アンチモンドープSnO2(ATO)、SnO2、ZnO(AlドープのZnOやBドープのZnOを含む)、インジウム-亜鉛複合酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、スピネル型酸化物、YbFe24構造を有する酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。第2電極は、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)、各種塗布法等に基づき形成することができる。電極のパターニングは、エッチング法、リフトオフ法、各種マスクを用いる方法等、任意の方法で行うことができる。
【0200】
以下、実施例9の調光装置800の具体例を説明する。
【0201】
実施例9の調光装置800は、
透明な第1基板801、及び、第1基板801に対向した透明な第2基板803、
第1基板801上に設けられた第1電極802、
第2基板803上に設けられた第2電極804、並びに、
第1基板801と第2基板803との間に封止された、金属イオンを含む電解質805、
から成り、
第1電極802は、細線状の導電材料から成り、
第2電極804は、透明電極層から構成されている。
【0202】
第1基板801は第2基板803よりも観察者側に配置されている。第1電極802はナノワイヤから成り、ナノワイヤの平均直径は1μm以下である。より具体的には、第1電極802を構成する導電材料は銀(Ag)であり、第1電極802は銀ナノワイヤから構成されている。銀ナノワイヤの平均長さ(長軸方向の長さ)、ナノワイヤの平均直径(短軸方向の長さ)は、それぞれ、4×10-4m、5×10-7mである。尚、第1電極802は、銀ナノワイヤがランダム(あるいは不規則、無秩序)に配されて成るが、図面においては、模式的に層状の状態で示している。金属イオンは銀(Ag)イオンから成り、電解質805は、LiIから成る支持電解質塩を含んでいる。金属イオンを銀イオンとし、第2電極804を銀から構成することで、即ち、第2電極804を構成する金属材料と金属イオンを同じ金属とすることで、電気化学的に安定な電極反応を実現することができる。第1基板801及び第2基板803は厚さ0.4mmのガラスから成り、第1基板801と第2基板803との間隔は100μmである。第2電極804は、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)から構成された透明電極から成り、スパッタリング法といったPVD法とリフトオフ法との組合せに基づき形成されている。第1電極802はパターニングされておらず、第2電極804もパターニングされておらず、これらの電極は所謂ベタ電極である。具体的には、調光装置800の有効領域を占める第1電極802、第2電極804の部分は、パターニングされていない。ここで、調光装置800の有効領域とは、第2偏向手段140,340の射影像と同じ、若しくは、射影像よりも大きな領域を指す。より具体的には、パターニングされていない第1電極802の部分及び第2電極804の部分の射影像の大きさは、第2偏向手段140,340の射影像よりも大きい。尚、第1電極802を外部に引き出す部分は、別の導電材料(図示せず)から構成されている。また、第2電極804を外部に引き出す部分は、パターニングされている。そして、第1電極802及び第2電極804は、図示しないコネクタ、配線を介して制御装置18に接続されている。2枚の基板801,803の外縁部は、封止剤806によって封止されている。更には、調光装置800の第1基板801を導光板121に対して封止部材によって固定し、第1基板801と導光板121との間に隙間を開ける。尚、調光装置800の第1基板801を導光板121と同程度の長さとし、調光装置800の第1基板801を導光板121に対して封止部材によって固定する。封止部材は、第1基板801の外縁部に配されている。
【0203】
第1電極802は、銀ナノワイヤを溶媒中に分散させたものを第1基板801上にスクリーン印刷法に基づき印刷し、熱処理を施すことによって得ることができる。
【0204】
、図示しないバリア層(例えば、無機材料、具体的には、アルミナから成る)を、第1基板801と第1電極802との間、第2基板803と第2電極804との間との間に形成してもよい。更には、第2電極804とバリア層の間には、SiN層、SiO2層、Al23層、TiO2層あるいはこれらの積層膜から成る保護層を形成してもよい。保護層を形成することで、イオンの行き来を阻止するイオン遮断性、防水性、防湿性及び耐傷性を調光装置に付与することができる。
【0205】
分子量約35万のポリエーテル1質量部と、ジメチルスルホキシド(DMSO)10質量部と、ヨウ化ナトリウム1.7質量部と、ヨウ化銀1.7質量部とを混合し、120゜Cに加熱して、均一な溶液を調製した。そして、この溶液に、トリエタノールアミン、クマリン(下記の式を参照)及びベンゾイミダゾール(下記の式を参照)を添加することで、電解質805を得た。尚、この溶液1リットル当たり、トリエタノールアミンが10グラム、クマリンが1.5グラム、ベンゾイミダゾールが1.5グラムとなるように添加した。
【0206】
【0207】
【0208】
そして、第1電極802が形成された第1基板801と、第2電極804が形成された第2基板803とを、オレフィン系の封止剤806を用いて、それらの外縁部で封止した。封止剤806には、平均粒径100μmのプラスチック製の球形ビーズから成るスペーサ(図示せず)が10体積%含まれている。尚、封止剤の一部には開口部(注入口)が設けられている。そして、こうして得られた第1基板801と第2基板803とが貼り合わされたセルの内部に、封止剤に設けられた開口部からAgIを含む電解質805を真空注入し、次いで、開口部を封止することで、調光装置800を得た。
【0209】
第1電極802及び第2電極804への電圧の印加に基づく、第2電極804上における銀の析出及び電解質805中への銀の溶解によって、調光装置(具体的には、エレクトロデポジション型の調光装置)の着色及び消色が生じる。そして、これによって、調光装置800の光透過率を制御することができる。具体的には、第1電極802に相対的に正の電圧を印加し、第2電極804に相対的に負の電圧を印加すると、第2電極804上で、
Ag+ + e- → Ag
といった反応に基づき、銀が析出し、第2電極804上に銀薄層が形成される。従って、調光装置800における光透過率は低い値となる。一方、これとは逆に、第1電極802に負の電圧を印加し、第2電極804に正の電圧を印加すると、
Ag → Ag+ + e-
といった反応が生じ、第2電極804上に析出していた銀が電解質805中に溶解する。これにより、着色状態であった第2電極804は透明な状態となる。従って、調光装置800における光透過率は高い値となる。調光装置800における光透過率は、第1電極802及び第2電極804に印加する電圧の値、印加する時間に基づき制御することができる。第1電極802及び第2電極804に印加する電圧は制御装置18に設けられた制御ノブを観察者が操作することにより行うことができる。即ち、光学装置120,320からの画像を観察者が観察し、調光装置800の光透過率を調整することで、画像のコントラスト向上を図ればよい。尚、種々の試験の結果、調光装置800の最高光透過率は50%以上(好ましくは50%以上、99%以下)であり、最低光透過率は30%以下(好ましくは、1%以上、30%以下)であることが望ましいことが判った。
【0210】
実施例9の表示装置において、調光装置は、細線状の導電材料から成る第1電極、及び、透明電極層から成る第2電極を備えた、所謂エレクトロデポジション型調光装置から構成されているので、観察者が観察する画像に高いコントラストを与えることができるだけでなく、消費電力が少なく、画像表示装置に入射する外光の光量を十分に多くすることを可能とする表示装置を提供することができる。しかも、銀ナノワイヤを用いて印刷法に基づき第1電極を形成することで、銀ナノワイヤがランダム(あるいは不規則、無秩序)に配されて成る第1電極を得ることができる結果、第1電極を通過した光に回折現象が生じることを効果的に防止することができる。しかも、銀ナノワイヤの平均直径を上記のとおりとすることで、第1電極を通過した光に回折現象が生じることを一層効果的に防止することができるし、光散乱強度を低下させることができる。
【0211】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した表示装置(頭部装着型ディスプレイ)、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。光学装置320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。本開示の表示装置は、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。この場合、必要に応じて、光学装置に偏光板や偏光フィルムを着脱自在に取り付け、あるいは、光学装置に偏光板や偏光フィルムを貼り合わせればよい。
【0212】
実施例においては、画像形成装置111,211は、単色(例えば、緑色)の画像を表示するとして説明したが、画像形成装置111,211はカラー画像を表示することもでき、この場合、光源を、例えば、赤色、緑色、青色のそれぞれを出射する光源から構成すればよい。具体的には、例えば、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子のそれぞれから出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得ればよい。場合によっては、調光装置を通過する光を、調光装置によって所望の色に着色する構成とすることができ、この場合、調光装置によって着色される色を可変とすることができる。具体的には、例えば、赤色に着色される調光装置と、緑色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とを積層すればよい。
【0213】
また、実施例1~実施例9において説明した画像表示装置を、以下に説明するように、変形することも可能である。即ち、上方から眺めた模式図を図26に示すように、第1回折格子部材330と対向する調光装置700’の外面に、導光板321の外へ光が漏れ出し、光利用効率が低下することを防止するための遮光部材903が形成されている。
【0214】
あるいは又、実施例3~実施例4において説明した画像表示装置における光学装置を、以下に説明するように、変形することも可能である。即ち、図27Aに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子340Aとすることができる。尚、透過型回折格子素子330Bの側から光が入射し、透過型回折格子素子340Bの側から光が出射する。あるいは又、図27Bに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子330Aとし、光出射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子340Bとすることができる。あるいは又、図27Cに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子340Bとすることができる。あるいは又、図27Dに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子330A及び透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子340Aとすることができる。あるいは又、図27Eに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子330A及び透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子340Bとすることができる。あるいは又、図27Fに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子330Aとし、光出射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子340A及び透過型回折格子素子340Bとすることができる。あるいは又、図27Gに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子340A及び透過型回折格子素子340Bとすることができる。あるいは又、図27Hに実施例1の表示装置の変形例における光学装置の概念図を示すように、光入射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子330A及び透過型回折格子素子330Bとし、光出射側のホログラム回折格子を反射型回折格子素子340A及び透過型回折格子素子340Bとすることができる。
【0215】
実施例3~実施例4において説明した画像表示装置を、以下に説明するように、変形することも可能である。即ち、図28に実施例1の表示装置の変形例における光学装置及び調光装置の概念図を示すように、第1の反射型体積ホログラム回折格子351、第2の反射型体積ホログラム回折格子352及び第3の反射型体積ホログラム回折格子353を備えていてもよい。第1の反射型体積ホログラム回折格子351にあっては、回折格子部材の干渉縞は、概ねY方向に延びる。第2の反射型体積ホログラム回折格子352にあっては、回折格子部材の干渉縞は、斜めの方向に延びる。第3の反射型体積ホログラム回折格子353にあっては、回折格子部材の干渉縞は、概ねX方向に延びる。画像形成装置111,111’,211から出射された光線は、第1の反射型体積ホログラム回折格子351によって、X方向に回折され、導光板321を伝播し、第2の反射型体積ホログラム回折格子352に入射する。そして、第2の反射型体積ホログラム回折格子352によって斜め下方に回折され、第3の反射型体積ホログラム回折格子352に入射する。そして、第3の反射型体積ホログラム回折格子353によってZ方向に回折され、観察者20の瞳21に入射する。
【0216】
実施例5において説明した第2構造の光学装置を構成する光学装置の変形例を上から眺めた模式図を、図29A及び図29Bに示す。
【0217】
図29Aに示す例にあっては、光源601からの光が導光部材602に侵入し、導光部材602内に設けられた偏光ビームスプリッター603に衝突する。偏光ビームスプリッター603に衝突した光源601からの光の内、P偏光成分は偏光ビームスプリッター603を通過し、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター603によって反射され、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)604に向かう。液晶表示装置(LCD)604によって画像が形成される。液晶表示装置(LCD)604によって反射された光の偏光成分はP偏光成分が占めるので、液晶表示装置(LCD)604によって反射された光は、偏光ビームスプリッター603,605を通過し、1/4波長板606を通過し、反射板607に衝突して反射され、1/4波長板606を通過し、偏光ビームスプリッター605に向かう。このときの光の偏光成分はS偏光成分が占めるので、偏光ビームスプリッター605によって反射され、観察者20の瞳21へと向かう。以上のとおり、画像形成装置は、光源601及び液晶表示装置(LCD)604から構成され、光学装置は、導光部材602、偏光ビームスプリッター603,605、1/4波長板606及び反射板607から構成され、偏光ビームスプリッター605が光学装置の虚像形成領域に相当する。
【0218】
図29Bに示す例にあっては、画像形成装置611からの光が導光部材612を進行し、半透過ミラー613に衝突し、一部の光が半透過ミラー613を通過し、反射板614に衝突して反射され、半透過ミラー613に再び衝突し、一部の光が半透過ミラー613によって反射され、観察者20の瞳21へと向かう。光学装置は、以上のとおり、導光部材612、半透過ミラー613及び反射板614から構成されており、半透過ミラー613が光学装置の虚像形成領域に相当する。
【0219】
あるいは又、実施例5の表示装置の別の変形例における光学装置を上から眺めた模式図及び横から眺めた模式図を、図30A及び図30Bに示す。この光学装置は、6面体のプリズム622及び凸レンズ625から構成されている。画像形成装置621から出射された光は、プリズム622に入射し、プリズム面623に衝突して反射され、プリズム622を進行し、プリズム面624に衝突して反射され、凸レンズ625を介して観察者20の瞳21に到達する。プリズム面623とプリズム面624とは、向かい合う方向に傾斜が付けられており、プリズム622の平面形状は、台形、具体的には、等脚台形である。プリズム面623,624にはミラーコーティングが施されている。瞳21と対向するプリズム622の部分の厚さ(高さ)を、人間の平均的な瞳孔径である4mmより薄くすれば、観察者20は、外界の像とプリズム622からの虚像とを重畳して見ることができる。
【0220】
場合によっては、第1電極及び/又は第2電極を、複数のブロックに分割し、各ブロックにおける遮光率を制御することで、虚像形成領域対向領域の第1の所定の領域から虚像形成領域対向領域の第2の所定の領域に向かっての調光装置の遮光率を制御する形態を採用してもよい。あるいは又、第1電極あるいは第2電極を帯状の電極あるいはメッシュ状の電極とすることで、若しくは、第1電極あるいは第2電極の上に帯状の補助電極あるいはメッシュ状の補助電極を形成することで、調光装置の複数の領域における遮光率を独立して制御して、虚像形成領域対向領域の第1の所定の領域から虚像形成領域対向領域の第2の所定の領域に向かっての調光装置の遮光率を制御する形態を採用してもよい。
【0221】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《調光装置》
第1電極、
第1電極と対向する第2電極、
第1電極と第2電極とによって挟まれた調光層、及び、
調光層の着色・消色を制御する制御部、
を備えており、
制御部は、二次電池、制御回路及びコンデンサを備えており、
制御部は、
(A)二次電池によるコンデンサの充電、及び、
(B)調光層の着色時又は消色時、コンデンサの放電に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する調光装置。
[A02]制御部は、更に、
(C)調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間が経過した後の、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加、
を制御する[A01]に記載の調光装置。
[A03]調光層の着色開始から所定の時間が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行い、規定時間(着色・規定時間)が経過後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止する[A02]に記載の調光装置。
[A04]調光層の消色開始から所定の時間が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を行い、規定時間(消色・規定時間)が経過後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止する[A02]又は[A03]に記載の調光装置。
[A05]調光層の消色開始から所定の時間が経過した後、二次電池に基づく第1電極及び第2電極への電圧の印加を中止する[A02]又は[A03]に記載の調光装置。
[A06]制御部は、調光装置の着色時、第1電極及び第2電極の一方に正の電位を印加し、第1電極及び第2電極の他方に負の電位を印加し、
制御部は、調光装置の消色時、第1電極及び第2電極には、調光装置の着色時とは逆の極性を有する電圧を印加する[A01]乃至[A05]に記載の調光装置。
[A07]着色時、調光層に所望の光透過率を与える電荷量をQ0、充電後のコンデンサの電荷量をQ1、調光層の着色開始又は消色開始から所定の時間T0が経過した後のコンデンサの電荷量をQ2としたとき、
0.4<(Q1-Q2)/Q0
を満足するように、制御部は、コンデンサ、並びに、第1電極及び第2電極への印加電圧を制御する[A01]乃至[A06]のいずれか1項に記載の調光装置。
[A08]1.0≦(Q1-Q2)/Q0≦10.0
を満足するように、制御部は、コンデンサ、並びに、第1電極及び第2電極への印加電圧を制御する[A07]に記載の調光装置。
[A09]0.1(秒)≦T0≦12(秒)
を満足する[A07]又は[A08]に記載の調光装置。
[A10]第1電極及び第2電極に電圧を印加したとき、調光層に電流が流れる[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の調光装置。
[B01]調光層は、酸化タングステンから成る還元着色層、酸化タンタルから成る電解質層及びイリジウム原子を含む酸化着色層の積層構造を有する[A01]乃至[A10]のいずれか1項に記載の調光装置。
[B02]酸化着色層は酸化イリジウムスズ系材料から成る[B01]に記載の調光装置。
[B03]少なくとも第2電極と第2基板との間には水分保持部材が配設されている[B01]又は[B02]に記載の調光装置。
[B04]水分保持部材の端面は外部に露出している[B03]に記載の調光装置。
[B05]第1基板の縁部に設けられた封止部材を更に備えており、
封止部材と第2基板との間には、水分保持部材から延在する水分保持部材延在部が配設されている[B04]に記載の調光装置。
[B06]第2電極は、調光層上から第1基板上に亙り、且つ、第1電極と離間して形成されており、
水分保持部材は、少なくとも第2電極及び調光層を覆う[B05]に記載の調光装置。
[B07]封止部材の一部は補助電極から成る[B05]又は[B06]に記載の調光装置。
[B08]補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている[B07]に記載の調光装置。
[B09]封止部材は樹脂から成る[B05]又は[B06]に記載の調光装置。
[B10]封止部材を構成する樹脂のヤング率は1×107Pa以下である[B09]に記載の調光装置。
[B11]少なくとも封止部材の一部の内側に補助電極が設けられている[B05]又は[B06]に記載の調光装置。
[B12]補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている[B11]に記載の調光装置。
[B13]封止部材は、第1基板の縁部に設けられた凸部から成る[B05]又は[B06]に記載の調光装置。
[B14]封止部材の一部の内側に補助電極が設けられている[B13]に記載の調光装置。
[B15]補助電極は、第1電極上に形成された第1補助電極、及び、第2電極上に第1補助電極と離間して形成された第2補助電極から構成されている[B14]に記載の調光装置。
[B16]封止部材の断面形状は、第2基板に近づくに従い狭くなる形状である[B05]乃至[B15]のいずれか1項に記載の調光装置。
[B17]水分保持部材と対向する第2基板の面には無機材料膜が形成されている[B03]乃至[B16]のいずれか1項に記載の調光装置。
[B18]水分保持部材を構成する材料のヤング率は1×106Pa以下である[B03]乃至[B17]のいずれか1項に記載の調光装置。
[B19]水分保持部材を構成する樹脂は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂である[B18]に記載の調光装置。
[C01]調光装置は、
透明な第1基板、及び、第1基板に対向した透明な第2基板、
第1基板上に設けられた第1電極、
第2基板上に設けられた第2電極、並びに、
第1基板と第2基板との間に封止された、金属イオンを含む電解質、
から成り、
第1電極は、細線状の導電材料から成り、
第2電極は、透明電極層から構成されている[A01]乃至[A10]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C02]第1基板は第2基板よりも観察者側に配置されている[C01]に記載の表示装置。
[C03]第1電極はナノワイヤから成る[C02]に記載の表示装置。
[C04]ナノワイヤの平均直径は1μm以下である[C03]に記載の表示装置。
[C05]第1電極は銀から成る[C01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C06]調光装置の有効領域内において、第2電極はパターニングされていない[C01]乃至[C05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C07]金属イオンは銀イオンから成り、
電解質は、LiX、NaX及びKX(但し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である)から成る群より選ばれた少なくとも1種類の塩を含む[C01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の表示装置。
[C08]第1電極及び第2電極への電圧の印加に基づく、第2電極上における金属の析出及び電解質中への金属の溶解によって、調光装置の着色及び消色が生じる[C01]乃至[C07]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D01]調光層の有効面積をA(mm2)、コンデンサの静電容量をC(ファラッド)としたとき、
C/A>1×10-6(F/mm2
を満足する[A01]乃至[C08]のいずれか1項に記載の調光装置。
[D02]コンデンサは、複数の並列に接続されたコンデンサから構成されている[A01]乃至[D01]のいずれか1項に記載の調光装置。
[D03]制御回路は、
二次電池の放電時の電流を制限する電流制限回路、及び、
コンデンサ及び二次電池から第1電極及び第2電極に印加する電圧を制御する電圧制御回路、
を備えている[A01]乃至[D02]のいずれか1項に記載の調光装置。
[D04]二次電池はリチウムイオン電池から成る[A01]乃至[D03]のいずれか1項に記載の調光装置。
[D05]表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御する[A01]乃至[D04]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D06]表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する[A01]乃至[D05]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D07]外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御する[A01]乃至[D06]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D08]外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する[A01]乃至[D07]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D09]第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)は、光学装置よりも観察者側に配置されている[D07]又は[D08]に記載の表示装置。
[D10]照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果が所定値以上になったとき、調光装置の光透過率を所定の値以下とする[D05]乃至[D09]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D11]照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果が所定値以下になったとき、調光装置の光透過率を所定の値以上とする[D05]乃至[D09]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D12]第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果が所定値以上になったとき、調光装置の光透過率を所定の値以下とする[D07]又は[D08]に記載の表示装置。
[D13]第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果が所定値以下になったとき、調光装置の光透過率を所定の値以上とする[D07]又は[D08]に記載の表示装置。
[D14]調光装置の最高光透過率は50%以上であり、調光装置の最低光透過率は30%以下である[A01]乃至[D13]のいずれか1項に記載の表示装置。
[D15]湾曲している[A01]乃至[D14]のいずれか1項に記載の調光装置。
[D16]第1基板及び第2基板はプラスチック材料から成る[A01]乃至[D15]のいずれか1項に記載の調光装置。
[E01]《画像表示装置》
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、[A01]乃至[D16]のいずれか1項に記載の調光装置から成る画像表示装置。
[E02]《表示装置》
観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、
フレームに取り付けられた画像表示装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、
画像形成装置、
画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する光学装置、及び、
少なくとも虚像形成領域に対向して配置され、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置、
を備えており、
調光装置は、[A01]乃至[D16]のいずれか1項に記載の調光装置から成る表示装置。
【符号の説明】
【0222】
10・・・フレーム、10’・・・ノーズパッド部、11・・・フロント部、11’・・・リム、12・・・蝶番、13・・・テンプル部、14・・・モダン部、15・・・配線(信号線や電源線等)、16・・・ヘッドホン部、16’・・・ヘッドホン部用配線、17・・・カメラ、18・・・制御装置、19・・・取付け部材、20・・・観察者、21・・・瞳、30・・・制御部、31・・・二次電池、32・・・制御回路、32A・・・二次電池制御部、33・・・コンデンサ(キャパシタ)、41・・・第1スイッチ部、SW1,SW2,SW2・・・スイッチ部、42・・・第2スイッチ部、50・・・電圧制御回路(レギュレータ)、60・・・充電回路、61・・・コンパレータ、62・・・電流制限機能付き定電圧IC(定電圧IC)、70A,70B・・・光透過率・極性制御回路、71A,71B・・・オペアンプ、100,200,300,400,500・・・画像表示装置、111,111A,111B,111’,211,211A,211B・・・画像形成装置、112・・・光学系(コリメート光学系)、113,213・・・筐体、120,320,520・・・光学装置、121,321・・・導光板、122,322・・・導光板の第1面、123,323・・・導光板の第2面、124,125・・・導光板の一部分、130・・・第1偏向手段、140・・・第2偏向手段(虚像形成領域)、330・・・第1偏向手段(第1回折格子部材)、330A,340A・・・反射型回折格子素子、340・・・第2偏向手段(第2回折格子部材、虚像形成領域)、330B,340B・・・透過型回折格子素子、351・・・第1の反射型体積ホログラム回折格子、352・・・第2の反射型体積ホログラム回折格子、353・・・第3の反射型体積ホログラム回折格子、150・・・反射型空間光変調装置、150’・・・有機EL表示装置、151・・・液晶表示装置(LCD)、152・・・偏光ビームスプリッター(PBS)、153・・・光源、251,251A,251B・・・光源、252・・・コリメート光学系、253・・・走査手段、254・・・光学系(リレー光学系)、256・・・全反射ミラー、530A,530B・・・半透過ミラー、601・・・光源、602・・・導光部材、603,605・・・偏光ビームスプリッター、604・・・液晶表示装置、606・・・1/4波長板、607・・・反射板、611・・・画像形成装置、612・・・導光部材612、613・・・半透過ミラー、614・・・反射板、621・・・画像形成装置、622・・・プリズム、623,624・・・プリズム面、625・・・凸レンズ、700,700’・・・調光装置、701・・・虚像形成領域対向領域、711A・・・第1基板、711B・・・第2基板、712A・・・第1電極、712B・・・第2電極、713・・・WO3層(還元着色層)、714・・・Ta25層(電解質層)、715・・・IrXSn1-XO層(酸化着色層)、716・・・調光層、719A・・・保護層、719B・・・下地層、719C・・・シール剤、719D・・・接着剤、721・・・水分保持部材、722・・・水分保持部材延在部、723・・・封止部材、800・・・調光装置、801・・・第1基板、802・・・第1電極、803・・・第2基板、804・・・第2電極、805・・・電解質、806・・・封止剤、901・・・照度センサ(環境照度測定センサ)、902・・・第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)、903・・・遮光部材、1001・・・セル(組電池)、1002・・・マグネシウム二次電池、1010・・・制御部、1011・・・メモリ、1012・・・電圧測定部、1013・・・電流測定部、1014・・・電流検出抵抗器、1015・・・温度測定部、1016・・・温度検出素子、1020・・・スイッチ制御部、1021・・・スイッチ部、1022・・・充電制御スイッチ、1024・・・放電制御スイッチ、1023,1025・・・ダイオード、1031・・・正極端子、1032・・・負極端子、CO,DO・・・制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31