(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車椅子移動補助装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61G5/02 701
(21)【出願番号】P 2022017753
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194211(JP,A)
【文献】特開2004-290275(JP,A)
【文献】特開2007-125303(JP,A)
【文献】実開昭61-016122(JP,U)
【文献】特開2018-196576(JP,A)
【文献】特開2008-279848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの背もたれ側に設けられる1対の主車輪と、前記フレームの足下側に設けられる1対の前輪と、を有する車椅子に装着される車椅子移動補助装置であって、
前記1対の主車輪側に設けられて、前記主車輪の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、前記主車輪を支持するリア補助輪を有するリアユニットと、
前記1対の前輪側に設けられ、前記主車輪の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、前記前輪を支持するフロント補助輪を有するフロントユニットと、
前記主車輪及び前記前輪との組み合わせた通常車輪群が接地した状態となる第1の状態と、前記リア補助輪と前記フロント補助輪を組み合わせた補助車輪群が接地した状態となる第2の状態と、を切り替える切り替えレバーと、
前記リアユニットと前記フロントユニットとの間で前記切り替えレバーに加えられた力を伝達する連結ロットと、を有し、
前記リアユニットは、前記第2の状態において、前記主車輪に接触し、前記主車輪に加えられた駆動力を前記リア補助輪に伝達する駆動力伝達機構を有する車椅子移動補助装置。
【請求項2】
前記リアユニットは、前記第1の状態において、前記リア補助輪を非接地状態に維持するリア弾性部材を有し、
前記フロントユニットは、前記第1の状態において、前記フロント補助輪を非接地状態に維持するフロント弾性部材を有する請求項1に記載の車椅子移動補助装置。
【請求項3】
前記切り替えレバーは、前記フレームにおいて前記前輪に近い側に回転中心軸が設けられ、前記足下側に向かって倒す操作を受けて、前記リアユニットと前記フロントユニットとを前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える請求項1又は2に記載の車椅子移動補助装置。
【請求項4】
前記フロントユニットは、
前記切り替えレバーに連結され、前記切り替えレバーの動きに合わせて回転するモード切替軸と、
前記モード切替軸に連結されるカム板と、
一端が前記モード切替軸に連結され、他端が前記連結ロットに連結され、前記切り替えレバーの動きに合わせて前記連結ロットを前記主車輪の車軸方向と直交する方向に沿って前後させるリンク板と、を有し、
前記カム板の動きに合わせて床に向かって前記フロント補助輪を押しつける請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車椅子移動補助装置。
【請求項5】
前記リアユニットは、
前記連結ロットの動きに合わせて、前記駆動力伝達機構に連結された前記リア補助輪を床に向かって押しつけるリンク機構を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車椅子移動補助装置。
【請求項6】
前記駆動力伝達機構は、
前記第2の状態において前記主車輪に接触する駆動軸と、
前記駆動軸に伝達される駆動力を前記リア補助輪の回転力に変換するスパイラルギアと、
を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車椅子移動補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子移動補助装置に関し、例えば、車椅子の移動方向の自由度を向上させる車椅子移動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子は、短い距離で横移動をしたり、狭い場所で横移動したりすることが難しい特性がある。そこで、特許文献1に車椅子を任意の方向に移動させるための技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される車椅子用補助具は、大車輪と全方向に舵取り可能な補助車輪とを有する車椅子に装着される車椅子用補助具であり、下端に第2の補助車輪を支持する補助車輪支持部材と、車椅子のフレームに固定され前記補助車輪支持部材を上下方向に移動可能に支持するガイド部材と、その中間部において前記補助車輪支持部材と係合したレバーと、このレバーの一端と車椅子のフレームとを連結するリンク機構とを具備してなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、主車輪を操作することで横移動することはできず、搭乗者は例えば伝え歩きの要領で移動しなければならい。つまり、特許文献1に記載の技術では、横移動の為に搭乗者が主車輪による通常移動とは異なる姿勢で移動しなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、搭乗者が主車輪による移動と同じ要領の操作で横移動が可能な車椅子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる車椅子移動補助装置の一態様は、フレームの背もたれ側に設けられる1対の主車輪と、前記フレームの足下側に設けられる1対の前輪と、を有する車椅子に装着される車椅子移動補助装置であって、前記1対の主車輪側に設けられて、前記主車輪の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、前記主車輪を支持するリア補助輪を有するリアユニットと、前記1対の前輪側に設けられ、前記主車輪の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、前記前輪を支持するフロント補助輪を有するフロントユニットと、前記主車輪及び前記前輪との組み合わせた通常車輪群が接地した状態となる第1の状態と、前記リア補助輪と前記フロント補助輪を組み合わせた補助車輪群が接地した状態となる第2の状態と、を切り替える切り替えレバーと、前記リアユニットと前記フロントユニットとの間で前記切り替えレバーに加えられた力を伝達する連結ロットと、を有し、前記リアユニットは、前記第2の状態において、前記主車輪に接触し、前記主車輪に加えられた駆動力を前記リア補助輪に伝達する駆動力伝達機構を有する。
【0008】
本発明にかかる車椅子移動補助装置では、車椅子の横方向の転がり方向を有するリア補助輪及びフロント補助輪により、主車輪及び前輪を浮かせた状態で主車輪によりリア補助輪に駆動力を加える。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、本発明にかかる車椅子移動補助装置では、搭乗者が主車輪による移動と同じ要領の操作で横移動が可能な車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置を装着した車椅子の概略図である。
【
図2】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の概略図である。
【
図3】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置のフロントユニットを説明する図である。
【
図4】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置のリアユニットを説明する図である。
【
図5】実施の形態1にかかるリアユニットの駆動力伝達機構を説明する図である。
【
図6】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第1の状態を説明する図である。
【
図7】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第1の状態から第2の状態に遷移する途中の状態を説明する図である。
【
図8】実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第2の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
まず、
図1に実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置を装着した車椅子1の概略図を示す。以下の説明では、車椅子1に着座した搭乗者の身体の胸側の方向を前方向、搭乗者の背中側の方向を後方向、後方から前方に向かう方向と直交する方向を横方向と定義する。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1にかかる車椅子1は、手押し式の車椅子に車椅子移動補助装置20を取り付けたものである。車椅子は、フレーム10の足下側の端部に足乗せ台11が取り付けられ、足乗せ台11の取り付け位置と反対のフレーム10の端部に補助者が車椅子1を操作するためのハンドル12が取り付けられている。また、フレーム10には、搭乗者が手を乗せる手摺り13と、搭乗者が着座する際に接する座面14及び背もたれ15が取り付けられている。
【0013】
そして、車椅子1では、フレームの背もたれ15側の位置に1対の主車輪16が設けられ、フレーム10の足乗せ台11側の位置に1対の前輪17が設けられる。主車輪16は、搭乗者の力で主車輪を回転させることが可能な手押し部材が取り付けられる。また主車輪16は、1対の主車輪16が対向する方向に延在する軸を車軸として1方向に回転する。前輪17は、回転軸が全方向に回転可能にフレーム10に取り付けられている。
【0014】
また、車椅子1では、主車輪16の下側のフレーム10に車椅子移動補助装置20が取り付けられている。車椅子移動補助装置20は、切り替えレバー31を前側(例えば、足下側)に向かって倒す操作をすることで、主車輪16及び前輪17が床面に接触する第1の状態から主車輪16及び主車輪16が床面から離間した第2の状態に車椅子1を変化させる。また、第2の状態では、車椅子移動補助装置20に設けられたフロント補助輪及びリア補助輪が接地した状態となり、主車輪16を回転させることで生じる力をリア補助輪に伝達することで、車椅子1を横移動させる。そこで、以下では、特に車椅子移動補助装置20について詳細に説明する。
【0015】
図2に実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20の概略図を示し、
図3に実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置のフロントユニット30を説明する図を示し、
図4に実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置のリアユニットを説明する図を示す。
【0016】
図2に示すように、車椅子移動補助装置20は、フロントユニット30、リアユニット40及び連結ロット50を有する。連結ロット50は、フロントユニット30とリアユニット40との間で切り替えレバー31に加えられた力を伝達するためのものである。
【0017】
切り替えレバー31は、主車輪16及び前輪17との組み合わせた通常車輪群が接地した状態となる第1の状態と、リア補助輪43cとフロント補助輪37を組み合わせた補助車輪群が接地した状態となる第2の状態と、を切り替えるための操作レバーである。
【0018】
フロントユニット30は、1対の前輪側に設けられ、主車輪16の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、前輪17を支持するフロント補助輪37を有する。また、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20では、切り替えレバー31をフロントユニット30に連結するように構成したが、切り替えレバー31は、前輪17よりも後ろ側に設けることも可能である。しかしながら。切り替えレバー31を前輪17近傍に設けることで、車椅子1の走行モードを第1の状態から第2の状態に切り替える際の操作が容易になる効果を奏するため、切り替えレバー31は、前輪17の近傍に設けることが好ましい。
【0019】
また、リアユニット40は、1対の主車輪側に設けられて、主車輪16の車軸方向と直交する方向の車軸を有し、主車輪16を支持するリア補助輪43cを有する。また、第2の状態において、主車輪16に接触し、主車輪16に加えられた駆動力をリア補助輪43cに伝達する駆動力伝達機構43を有する。
【0020】
続いて、
図2及び
図3を参照して、フロントユニット30の構造について詳細に説明する。フロントユニット30は、シャシー39に切り替えレバー31、フレーム取り付け部32、モード切替軸33、カム板34、カムフォロワ35、リンク板36、フロント補助輪37が組み付けられている。切り替えレバー31は、フロントユニット30のモード切替軸33に回転軸が取り付けられている。フレーム取り付け部32は、フロントユニット30をフレーム10に取り付ける為の構造である。
【0021】
モード切替軸33の両端には、それぞれ切り替えレバー31が取り付けられ、切り替えレバー31の回転軸となり、切り替えレバー31の操作により回転する。モード切替軸33の切り替えレバー31に挟まれる部分には、
図2及び
図3に示す例では、リンク板36が2枚取り付けられる。なお、リンク板36は1枚であっても良いが、その場合は、リンク板36の後続の構造を工夫する必要がある。リンク板36は、一端がモード切替軸に連結され、他端が連結ロット50に連結される。リンク板36は、切り替えレバー31の動きに合わせて回転し、連結ロットを主車輪16の車軸方向と直交する方向に沿って前後させる。
【0022】
また、
図2及び
図3に示す例では、モード切替軸33の延在方向の中心付近であって、リンク板36に挟まれる位置にカム板34が設けられる。そして、カム板34に接触するように、カムフォロワ35が設けられる。カムフォロワ35は、カムフォロワベース35aに取り付けられる。カムフォロワベース35aは、シャシー39を貫通するシャフトを介してフロント補助輪37に連結される。また、カムフォロワベース35aとフロント補助輪37を連結するシャフトは、バネ38に通されるように設けられる。バネ38は、縮みバネであって、カム板34の動きに合わせてカムフォロワ35が上昇する際にフロント補助輪37をシャシー39側に引き上げる。つまり、バネ38は、第1の状態において、フロント補助輪37を非接地状態に維持するフロント弾性部材である。
【0023】
図2及び
図4を参照して、リアユニット40の構造について説明する。リアユニット40は、シャシー44にフレーム取り付け部41、リンク機構42、駆動力伝達機構43、シャシー44、バネ45が組み付けられている。フレーム取り付け部41は、リアユニット40をフレーム10に取り付ける為の構造である。リンク機構42は、連結ロット50の動きに合わせて、駆動力伝達機構43に連結されたリア補助輪を床に向かって押しつける。リンク機構42は、上側リンクアームと下側リンクアームを有し、上側リンクアームと下側リンクアームとを接続する箇所に連結ロット50が連結される。また、上側リンクアームの端部はシャシー44の上側リンクアーム取り付け部46に連結され、下側リンクアームの端部は駆動力伝達機構43の下側リンクアーム取り付け部47に連結される。上側リンクアーム取り付け部46及び下側リンクアーム取り付け部47は、
図4の紙面に沿った方向(例えば、車椅子1の前後方向に伸びる回転軸を中心とした方向)で回転するように各取り付け部に組み付けられる。そして、リンク機構42は、連結ロット50から押し圧力に応じて上側リンクアームと下側リンクアームの開き角度が大きくなることで駆動力伝達機構43を床面に押しつける。
【0024】
駆動力伝達機構43は、リアユニット40のシャシー44に対して回転可能なようにシャシー44に取り付けられる。また、駆動力伝達機構43は、バネ45を介してシャシー44と連結される。バネ45は、縮みバネであって、駆動力伝達機構43をシャシー44側に引き下げる際の補助力を駆動力伝達機構43に付加するとともに駆動力伝達機構43がシャシー44側に引き上げた状態を維持する。つまり、バネ45は、第1の状態において、駆動力伝達機構43に取り付けられたリア補助輪43cが非接地状態に維持するリア弾性部材である。
【0025】
駆動力伝達機構43は、第2の状態において、主車輪に接触し、主車輪に加えられた駆動力をリア補助輪に伝達する。駆動力伝達機構43は、ギアボックス43bに駆動軸43a及びリア補助輪43cが組み付けられる。ここで、
図5に実施の形態1にかかるリアユニットの駆動力伝達機構を説明する図を示す。
図5に示すように、駆動軸43aの回転軸AXaとリア補助輪43cの回転軸AXbは互いに直行するように設けられる。そして、ギアボックス43bは、駆動軸43aと同一の回転軸を有するスパイラルギア48と、リア補助輪43cと同一の回転軸を有するスパイラルギア48とを有する。そして、ギアボックス43bは、スパイラルギア48及びスパイラルギア49により、駆動軸43aが主車輪16に接した状態で伝えられた駆動力を、横方向の駆動力としてリア補助輪43cに伝達する。
【0026】
続いて、車椅子移動補助装置20の動きについて説明する。車椅子移動補助装置20は、切り替えレバー31を搭乗者等が操作することで、主車輪16及び前輪17との組み合わせた通常車輪群が接地した状態となる第1の状態と、リア補助輪43cとフロント補助輪37を組み合わせた補助車輪群が接地した状態となる第2の状態と、を切り替える。なお、第1の状態と第2の状態とにおいて接地していない側の車輪は床から浮いた状態にある。以下では、
図6~
図8を参照して、状態毎に車椅子移動補助装置20がどのような状態となるかを説明する。
図6~
図8では、上段にフロントユニット30の状態を説明する図を示し、中段にリアユニット40を側面視した状態(例えば横方向から見た状態)を示し、下段にリアユニット40を車椅子1の後部から見た状態を示した。
【0027】
図6は、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第1の状態を説明する図である。
図6に示すように、第1の状態では、切り替えレバー31は最も立った状態にされる。そして、この切り替えレバー31が立った状態である場合、カム板34モード切替軸33の中心から辺までの距離が短い辺がカムフォロワ35に接する。そして、カムフォロワ35がモード切替軸33に近い位置にあるとき、バネ38によりカムフォロワベース35aは最も高い位置に維持される。これにより、フロント補助輪37は床面との距離が距離G1となる位置に維持される。
【0028】
また、
図6に示すように、第1の状態ではリアユニット40においてもリア補助輪43cが床面との距離が距離G1となる位置に維持される。この第1の状態では、連結ロット50が最も前よりの位置にあり、リンク機構42の上側リンクアーム42aと下側リンクアーム42bとがなす角が最も狭くなる。そして、このリンク機構42の状態では、リンク機構42は、駆動力伝達機構43を上に引き上げる。また、駆動力伝達機構43の引き上げはバネ45によっても行われ、バネ45は駆動力伝達機構43を上側に引っ張り上げた状態で維持する。さらに、第1の状態では、駆動軸43aは、主車輪16と非接触となる位置に維持される。
【0029】
図7は、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第1の状態から第2の状態に遷移する途中の状態を説明する図である。
図7に示すように、切り替え途中状態では、第1の状態よりも切り替えレバー31が足下側に倒された状態となる。この状態では、モード切替軸33の回転に合わせカム板34が傾きモード切替軸33とカムフォロワ35の距離が大きくなる。これにより、カムフォロワベース35aが床側に押し下げられ、フロント補助輪37が接地する。このとき、切り替え途中状態では、前輪17とカムフォロワ35がともに接地した状態となる。
【0030】
また、
図7に示すように、切り替え途中状態ではリアユニット40においてもリア補助輪43cが床面側に近づき、床面とリア補助輪43cが接触する。この切り替え途中状態では、連結ロット50が第1の状態よりも後ろ側の位置にあり、リンク機構42の上側リンクアーム42aと下側リンクアーム42bとがなす角が第1の状態よりも広くなる。そして、このリンク機構42の状態では、リンク機構42は、駆動力伝達機構43を第1の状態よりも床側に押し下げる。また、駆動力伝達機構43は、シャシーと回転可能に取り付けられた部分を中心に車体外側に開くような遷移をする。また、リア補助輪43cは、接地した後は、回転しながら車体外側に移動していく。
【0031】
図8は、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置の第2の状態を説明する図である。
図8に示すように、切り替え途中状態では、切り替え途中状態よりもさらに切り替えレバー31が足下側に倒された状態となる。この状態では、モード切替軸33の回転に合わせカム板34が傾きモード切替軸33とカムフォロワ35の距離が第1の状態よりも大きくなった位置で維持される。これにより、カムフォロワベース35aが床側に押し下げられた状態で維持され、フロント補助輪37が接地する。このとき、第2の状態では、前輪17は床面に対して距離G2となる維持で非接地状態となる。
【0032】
また、
図8に示すように、第2の状態ではリアユニット40においてもリア補助輪43cが床面に接地するとともに床面との距離が距離G2となる位置で主車輪16が床面非接触状態なる。この第2の状態では、連結ロット50が最も後ろ側の位置にあり、リンク機構42の上側リンクアーム42aと下側リンクアーム42bとがなす角が最も大きくなる。
図8に示す例では、第2の状態では、上側リンクアーム42aと下側リンクアーム42bとがなす角が約180度となっている。そして、このリンク機構42の状態では、リンク機構42は、駆動力伝達機構43を最も床側に押し下げる。また、駆動力伝達機構43は、シャシーと回転可能に取り付けられた部分を中心に車体外側に開くような遷移をした状態で維持される。また、この第2の状態では、駆動軸43aが主車輪16に接触した状態なり、主車輪16に加えられた駆動力を受けることが可能になる。
【0033】
上記説明より、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20は、第1の状態では、フロント補助輪37及び駆動軸43aを床面から浮かせることで、車椅子1を車椅子移動補助装置20がないときと同様に操作可能にする。一方、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20は、第2の状態では。主車輪16及び前輪17を床面から浮かせ、フロント補助輪37及び駆動軸43aを床面に接地させる。また、フロント補助輪37及び駆動軸43aの回転軸を主車輪16の回転軸と直交した構成とする。そして、車椅子移動補助装置20は、第2の状態で、主車輪16に搭乗者が加える駆動力を駆動軸43aを介してリア補助輪43cに伝達する。これにより、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20を有する車椅子移動補助装置20は、搭乗者が姿勢を変えることなく車椅子1を容易に横移動させることが可能になる。
【0034】
また、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20では、切り替えレバー31を車椅子1の前輪17側の位置を中心に前側に倒すことで第1の状態から第2の状態を切り替える。これにより、搭乗者は、切り替えレバー31を前側に倒す際に、臀部を座面14から浮かせる姿勢になり、搭乗者の重心が足乗せ台11寄りになるため、主車輪16側にかかる加重を低減して、車椅子1を持ち上げるために搭乗者が切り替えレバー31にかける力を低減することができる。つまり、切り替えレバー31を足下側に配置し、切り替えレバー31を前に倒す動作により第1の状態から第2の状態への切り替えを行うことで、軽い状態切り替え操作を実現することができる。
【0035】
また、実施の形態1にかかる車椅子移動補助装置20では、切り替えレバー31に加わる力のみで切り替え操作が行われ、第2の状態では主車輪16に加える回転力で横移動が可能である。つまり、車椅子移動補助装置20を用いることで、モーター等の電機部品を用いることなく横移動が可能なる。また、電機部品が不要なことから故障のリスクを低減するとともに、部品交換等のメンテナンスが容易になる。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 車椅子
10 フレーム
16 主車輪
17 前輪
20 車椅子移動補助装置
30 フロントユニット
31 切り替えレバー
33 モード切替軸
34 カム板
35 カムフォロワ
36 リンク板
37 フロント補助輪
38 バネ
40 リアユニット
42 リンク機構
43 駆動力伝達機構
43a 駆動軸
43b ギアボックス
43c リア補助輪
45 バネ
48、49 スパイラルギア
50 連結ロット