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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】遠隔操作システム及び異常通知方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241001BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022020821
(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公開番号】P2023117981
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 優樹
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-011233(JP,A)
【文献】特開2004-359000(JP,A)
【文献】特開2021-068132(JP,A)
【文献】特開2022-119598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G05D 1/00- 1/87
B62D 5/00- 6/10
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と、
前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末と、
前記移動体と前記遠隔オペレータ端末の少なくとも一方に含まれる1又は複数のプロセッサと
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記移動体と前記遠隔オペレータ端末との間の通信の異常、前記移動体の異常、及び前記遠隔オペレータ端末の異常のうち少なくとも一つが発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
前記異常が発生していない場合よりも前記異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量に前記ゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と
を実行するように構成され、
前記遠隔オペレータ端末は、前記反力制御量に応じた操作反力を前記遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与するように構成され、
前記ゲイン設定処理は、
前記異常が発生していないと判定された場合、前記ゲインを第1ゲインに設定する処理と、
前記異常が発生していると判定された場合、前記ゲインを前記第1ゲインよりも大きい第2ゲインに設定する処理と、
前記異常が発生している可能性が検知された後、前記異常が発生しているか否かが確定するまでの期間、前記ゲインを前記第1ゲインと前記第2ゲインとの間の第3ゲインに設定する処理と
を含む
遠隔操作システム。
【請求項2】
請求項1記載の遠隔操作システムであって、
前記異常判定処理は、前記移動体と前記遠隔オペレータ端末との間の前記通信の前記異常が発生しているか否かを判定する通信異常判定処理を含む
遠隔操作システム。
【請求項3】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と、
前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末と、
前記移動体と前記遠隔オペレータ端末の少なくとも一方に含まれる1又は複数のプロセッサと
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記遠隔オペレータ端末の異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
前記異常が発生していない場合よりも前記異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量に前記ゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と
を実行するように構成され、
前記遠隔オペレータ端末は、前記反力制御量に応じた操作反力を前記遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与するように構成された
遠隔操作システム。
【請求項4】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末とを備える遠隔操作システムにおいて、コンピュータによって実行される異常通知方法であって、
前記移動体と前記遠隔オペレータ端末との間の通信の異常、前記移動体の異常、及び前記遠隔オペレータ端末の異常のうち少なくとも一つが発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
前記異常が発生していない場合よりも前記異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量に前記ゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と、
前記反力制御量に応じた操作反力を前記遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与する処理と
を含み、
前記ゲイン設定処理は、
前記異常が発生していないと判定された場合、前記ゲインを第1ゲインに設定する処理と、
前記異常が発生していると判定された場合、前記ゲインを前記第1ゲインよりも大きい第2ゲインに設定する処理と、
前記異常が発生している可能性が検知された後、前記異常が発生しているか否かが確定するまでの期間、前記ゲインを前記第1ゲインと前記第2ゲインとの間の第3ゲインに設定する処理と
を含む
異常通知方法。
【請求項5】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末とを備える遠隔操作システムにおいて、コンピュータによって実行される異常通知方法であって、
前記遠隔オペレータ端末の異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
前記異常が発生していない場合よりも前記異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量に前記ゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と、
前記反力制御量に応じた操作反力を前記遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与する処理と
を含む
異常通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の遠隔操作を行う運転制御システムを開示している。遠隔操作装置と車両側の運転制御装置とが無線通信を行う。運転制御装置は、遠隔操作装置との無線通信の遅延時間を算出する。遅延時間が閾値以上の場合、運転制御装置は、車両の運転制御を通常制御から安全制御に変更する。安全制御は、例えば、通常制御時よりも車速を低下させる。
【0003】
その他、車両の遠隔操作に関連する技術が、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-071585号公報
【文献】特開2004-295360号公報
【文献】特開2013-020426号公報
【文献】特開2021-068132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔オペレータによる移動体(例:車両、ロボット)の遠隔操作について考える。遠隔操作システムは、遠隔操作の対象である移動体と、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末とを含む。遠隔操作の最中、移動体と遠隔オペレータ端末は互いに通信を行う。このような遠隔操作システムにおいて異常が発生した場合、異常発生を遠隔オペレータに効果的に通知することが望まれる。
【0006】
本開示の1つの目的は、遠隔操作システムにおいて異常が発生した場合、異常発生を遠隔オペレータに効果的に通知することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、遠隔操作システムに関連する。
遠隔操作システムは、
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と、
遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末と、
移動体と遠隔オペレータ端末の少なくとも一方に含まれる1又は複数のプロセッサと
を備える。
1又は複数のプロセッサは、
移動体と遠隔オペレータ端末との間の通信の異常、移動体の異常、及び遠隔オペレータ端末の異常のうち少なくとも一つが発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
異常が発生していない場合よりも異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量にゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と
を実行するように構成される。
遠隔オペレータ端末は、反力制御量に応じた操作反力を遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与するように構成される。
【0008】
第2の観点は、遠隔操作システムにおける異常通知方法に関連する。
遠隔操作システムは、遠隔オペレータによる遠隔操作の対象である移動体と、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末とを備える。
異常通知方法は、
移動体と遠隔オペレータ端末との間の通信の異常、移動体の異常、及び遠隔オペレータ端末の異常のうち少なくとも一つが発生しているか否かを判定する異常判定処理と、
異常が発生していない場合よりも異常が発生している場合の方が大きくなるゲインを設定するゲイン設定処理と、
基準反力制御量にゲインを掛けることによって反力制御量を算出する処理と、
反力制御量に応じた操作反力を遠隔オペレータが操作する遠隔操作部材に付与する処理と
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、遠隔操作システムにおいて異常が発生しているか否かが判定される。異常発生時には、遠隔オペレータが感じる操作反力が正常時よりも大きくなる。これにより、遠隔オペレータは、異常発生を容易に認識することが可能となる。すなわち、遠隔操作システムにおける異常発生を遠隔オペレータに効果的に通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る遠隔操作システムの構成例を示す概略図である。
図2】本開示の実施の形態に係る異常判定処理及び異常通知処理の概要を説明するための概念図である。
図3】本開示の実施の形態に係る異常判定処理及び異常通知処理の概要を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施の形態に係る車両の構成例を示すブロック図である。
図5】本開示の実施の形態に係る車両における異常判定処理及び異常通知処理を説明するためのブロック図である。
図6】本開示の実施の形態に係る通信異常判定処理の例を示すフローチャートである。
図7】本開示の実施の形態に係る通信異常判定処理の例を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態に係る車両異常判定処理の例を示すフローチャートである。
図9】本実施の形態に係る車両における反力制御量算出部の機能構成例を示すブロック図である。
図10】本実施の形態に係る車両における基準反力制御量算出部の機能構成例を示すブロック図である。
図11】本開示の実施の形態に係る遠隔オペレータ端末の構成例を示すブロック図である。
図12】本開示の実施の形態に係る遠隔オペレータ端末における異常判定処理及び異常通知処理を説明するためのブロック図である。
図13】本開示の実施の形態に係る端末異常判定処理の例を示すフローチャートである。
図14】本実施の形態に係る遠隔オペレータ端末における反力制御量算出部の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
1.遠隔操作システムの概要
移動体の遠隔操作(遠隔運転)について考える。遠隔操作の対象である移動体としては、車両、ロボット、飛翔体、等が例示される。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。飛翔体としては、飛行機、ドローン、等が例示される。
【0013】
一例として、以下の説明においては、遠隔操作の対象である移動体が車両である場合について考える。一般化する場合には、以下の説明における「車両」を「移動体」で読み替えるものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る遠隔操作システム1の構成例を示す概略図である。遠隔操作システム1は、車両100、遠隔オペレータ端末200、及び管理装置300を含んでいる。車両100は、遠隔操作の対象である。遠隔オペレータ端末200は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に使用する端末装置である。遠隔オペレータ端末200を遠隔操作HMI(Human Machine Interface)と言うこともできる。管理装置300は、遠隔操作システム1の管理を行う。遠隔操作システム1の管理は、例えば、遠隔操作が必要な車両100に対して遠隔オペレータOを割り当てることを含む。管理装置300は、通信ネットワークを介して車両100及び遠隔オペレータ端末200と通信可能である。典型的には、管理装置300は、クラウド上の管理サーバである。管理サーバは、分散処理を行う複数のサーバにより構成されていてもよい。
【0015】
車両100には、カメラを含む各種センサが搭載されている。カメラは、車両100の周囲の状況を撮像し、車両100の周囲の状況を示す画像情報を取得する。車両情報VCLは、各種センサにより得られる情報であり、カメラにより得られる画像情報を含む。車両100は、管理装置300を介して、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。つまり、車両100は、車両情報VCLを管理装置300に送信し、管理装置300は、受け取った車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に転送する。
【0016】
遠隔オペレータ端末200は、車両100から送信された車両情報VCLを受け取る。遠隔オペレータ端末200は、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。具体的には、遠隔オペレータ端末200は、表示装置を備えており、画像情報等を表示装置に表示する。遠隔オペレータOは、表示された情報をみて、車両100の周囲の状況を認識し、車両100の遠隔操作を行う。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。遠隔オペレータ端末200は、管理装置300を介して、遠隔操作情報OPEを車両100に送信する。つまり、遠隔オペレータ端末200は、遠隔操作情報OPEを管理装置300に送信し、管理装置300は、受け取った遠隔操作情報OPEを車両100に転送する。
【0017】
車両100は、遠隔オペレータ端末200から送信された遠隔操作情報OPEを受け取る。車両100は、受け取った遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。このようにして、車両100の遠隔操作が実現される。
【0018】
2.異常判定処理及び異常通知処理
次に、遠隔操作システム1において発生し得る「異常」について考える。異常は、故障、機能不全、不調、不具合を含む概念である。遠隔操作システム1における異常としては、車両100と遠隔オペレータ端末200との間の通信の異常である「通信異常」、車両100の異常である「車両異常」、及び遠隔オペレータ端末200の異常である「端末異常」が挙げられる。
【0019】
遠隔操作システム1は、遠隔操作システム1において通信異常、車両異常、及び端末異常の少なくとも一つが発生しているか否かを判定する「異常判定処理」を行う。車両100の遠隔操作の最中に異常が発生した場合には、安全確保のために素早い対応を行うことが望ましい。そのために、遠隔操作システム1は、異常が発生した場合、異常発生を遠隔オペレータOに通知する「異常通知処理」を行う。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る異常判定処理及び異常通知処理の概要を説明するための概念図である。車両100及び遠隔オペレータ端末200の少なくとも一方が異常判定処理を行う。
【0021】
例えば、車両100は、通信異常が発生しているか否かを判定する「通信異常判定機能」を備えていてもよい。具体的には、車両100は、遠隔オペレータ端末200と通信を行い、遠隔オペレータ端末200から遠隔操作情報OPE等の情報を受信する。その受信情報に基づいて、遠隔オペレータ端末200との通信の状態を把握することができる。車両100は、その通信状態に基づいて、遠隔オペレータ端末200から車両100への通信の異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0022】
他の例として、車両100は、車両異常が発生しているか否かを判定する「車両異常判定機能」を備えていてもよい。
【0023】
更に他の例として、遠隔オペレータ端末200は、通信異常が発生しているか否かを判定する「通信異常判定機能」を備えていてもよい。具体的には、遠隔オペレータ端末200は、車両100と通信を行い、車両100から車両情報VCL等の情報を受信する。その受信情報に基づいて、車両100との通信の状態を把握することができる。遠隔オペレータ端末200は、その通信状態に基づいて、車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0024】
更に他の例として、遠隔オペレータ端末200は、端末異常が発生しているか否かを判定する「端末異常判定機能」を備えていてもよい。
【0025】
異常発生を遠隔オペレータOに通知する異常通知処理は、「操作反力」を通して行われる。具体的には、遠隔オペレータ端末200は、遠隔操作部材230と操作反力アクチュエータ240を備えている。遠隔操作部材230は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に操作する部材である。遠隔操作部材230は、ハンドル(ステアリングホイール)、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、等を含んでいる。操作反力アクチュエータ240は、遠隔操作部材230に操作反力を付与する。例えば、操作反力は、ハンドルに付与される操舵反力である。遠隔操作部材230を操作する遠隔オペレータOは、遠隔操作部材230に付与される操作反力を感じる。
【0026】
遠隔オペレータ端末200は、異常判定処理の結果に応じて、遠隔操作部材230に付与する操作反力の大きさを制御(調整)する。具体的には、車両100の操舵角や車速といった車両状態が同一である条件で比較したとき、異常発生時の操作反力は、正常時の操作反力よりも大きくなるように制御(調整)される。つまり、異常発生時には、遠隔オペレータOが感じる操作反力が正常時よりも大きくなる。これにより、遠隔オペレータOは、異常発生を容易に認識することが可能となる。すなわち、遠隔操作システム1における異常発生を遠隔オペレータOに効果的に通知することが可能となる。
【0027】
異常判定処理において、異常発生が確定したわけではないが、異常が発生している可能性(兆候)が検知される場合も考えられる。「判定中」の期間は、異常が発生している可能性が検知された後、異常が発生しているか否かが確定するまでの期間である。その判定中の期間、操作反力の大きさは、異常発生時と正常時との間に制御(調整)されてもよい。これにより、遠隔オペレータOに対してよりきめ細やかな通知を行うことが可能となる。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る異常判定処理及び異常通知処理の概要を示すフローチャートである。
【0029】
ステップS10において、遠隔操作システム1は、「異常判定処理」を行う。具体的には、遠隔操作システム1は、遠隔操作システム1において通信異常、車両異常、及び端末異常の少なくとも一つが発生しているか否かを判定する。
【0030】
ステップS20において、遠隔操作システム1は、異常判定処理の結果に応じて反力ゲインGrを設定する「ゲイン設定処理」を行う。より詳細には、異常が発生していないと判定された場合、遠隔操作システム1は、反力ゲインGrを第1ゲインに設定する。一方、異常が発生していると判定された場合、遠隔操作システム1は、反力ゲインGrを第1ゲインよりも大きい第2ゲインに設定する。異常が発生している可能性が検知された後、異常が発生しているか否かが確定するまでの期間、遠隔操作システム1は、反力ゲインGrを第1ゲインと第2ゲインとの間の第3ゲインに設定してもよい。
【0031】
ステップS30において、遠隔操作システム1は、操作反力を発生させるための反力制御量FBを算出する「反力制御量算出処理」を行う。具体的には、遠隔操作システム1は、基準反力制御量FB0に反力ゲインGrを掛けることによって反力制御量FBを算出する。基準反力制御量FB0は、車両100の操舵角や車速といった車両状態に基づいて算出される。基準反力制御量FB0が同一である条件で比較したとき、異常発生時の反力制御量FBは、正常時の反力制御量FBよりも大きくなる。
【0032】
ステップS40において、遠隔オペレータ端末200は、反力制御量FBに従って操作反力アクチュエータ240を制御し、反力制御量FBに応じた操作反力を遠隔操作部材230に付与する。
【0033】
<効果>
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、遠隔操作システム1において異常が発生しているか否かが判定される。異常発生時には、遠隔オペレータOが感じる操作反力が正常時よりも大きくなる。これにより、遠隔オペレータOは、異常発生を容易に認識することが可能となる。すなわち、遠隔操作システム1における異常発生を遠隔オペレータOに効果的に通知することが可能となる。
【0034】
異常発生を認識した遠隔オペレータOは、安全確保のための対応を行うことができる。例えば、遠隔オペレータOは、車両100を安全な場所に退避させ停止させることができる。
【0035】
異常が発生しているか否かが確定するまでの判定中の期間、操作反力の大きさは、異常発生時と正常時との間に制御されてもよい。これにより、遠隔オペレータOに対してよりきめ細やかな通知を行うことが可能となる。
【0036】
操作反力は、ハンドルに付与される操舵反力であってもよい。この場合、異常発生時には、操舵反力が大きくなる。操舵反力が大きくなることにより、過剰な操舵が抑制される。これにより、例えば、遠隔操作に起因する車両100の蛇行運転が抑制される。つまり、異常発生時の車両100の安定性が向上する。異常発生時にはより安全に車両100を遠隔操作することが可能となる。
【0037】
以下、本実施の形態に係る遠隔操作システム1について更に詳しく説明する。
【0038】
3.車両の例
3-1.構成例
図4は、車両100の構成例を示すブロック図である。車両100は、通信装置110、センサ群120、走行装置130、及び制御装置150を備えている。
【0039】
通信装置110は、車両100の外部と通信を行う。例えば、通信装置110は、遠隔オペレータ端末200や管理装置300と通信を行う。
【0040】
センサ群120は、認識センサ、車両状態センサ、位置センサ、等を含んでいる。認識センサは、車両100の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。車両状態センサは、車両100の状態を検出する。車両状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。位置センサは、車両100の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)を含んでいる。
【0041】
走行装置130は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0042】
制御装置150は、車両100を制御するコンピュータである。制御装置150は、1又は複数のプロセッサ160(以下、単にプロセッサ160と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置170(以下、単に記憶装置170と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ160は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ160は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置170は、プロセッサ160による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置170としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置150は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0043】
車両制御プログラムPROG1は、プロセッサ160によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ160が車両制御プログラムPROG1を実行することにより、制御装置150の機能が実現される。車両制御プログラムPROG1は、記憶装置170に格納される。あるいは、車両制御プログラムPROG1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0044】
3-2.運転環境情報
制御装置150は、センサ群120を用いて、車両100の運転環境を示す運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報ENVは、記憶装置170に格納される。
【0045】
運転環境情報ENVは、認識センサによる認識結果を示す周辺状況情報を含む。例えば、周辺状況情報は、カメラによって撮像される画像情報を含む。周辺状況情報は、車両100の周辺の物体に関する物体情報を含んでいてもよい。車両100の周辺の物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、信号、標識、路側構造物、等が例示される。物体情報は、車両100に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。
【0046】
また、運転環境情報ENVは、車両状態センサによって検出される車両状態を示す車両状態情報を含む。
【0047】
更に、運転環境情報ENVは、車両100の位置及び方位を示す車両位置情報を含む。車両位置情報は、位置センサにより得られる。地図情報と周辺状況情報(物体情報)を用いた自己位置推定処理(Localization)により、高精度な車両位置情報が取得されてもよい。
【0048】
3-3.車両走行制御
制御装置150は、車両100の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。制御装置150は、走行装置130(操舵装置、駆動装置、及び制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。
【0049】
制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて自動運転制御を行ってもよい。より詳細には、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100の走行プランを生成する。更に、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、制御装置150は、車両100が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0050】
3-4.遠隔操作に関連する処理
以下、車両100の遠隔操作が行われる場合について説明する。制御装置150は、通信装置110を介して、遠隔オペレータ端末200と通信を行う。
【0051】
制御装置150は、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。車両情報VCLは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に必要な情報であり、上述の運転環境情報ENVの少なくとも一部を含んでいる。例えば、車両情報VCLは、周辺状況情報(特に画像情報)を含んでいる。車両情報VCLは、更に、車両状態情報や車両位置情報を含んでいてもよい。
【0052】
また、制御装置150は、遠隔操作情報OPEを遠隔オペレータ端末200から受信する。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。制御装置150は、受信した遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。
【0053】
3-4-1.異常判定処理及び異常通知処理
図5は、車両100における異常判定処理及び異常通知処理を説明するためのブロック図である。車両100は、機能ブロックとして、受信部151、通信異常判定部152、制御部153、車両異常判定部154、及び送信部155を含んでいる。これら機能ブロックは、通信装置110及び制御装置150により実現される。
【0054】
受信部151は、車両100の遠隔操作の最中、遠隔オペレータ端末200から送信される情報を受信する。遠隔オペレータ端末200から送信される情報は、上述の遠隔操作情報OPEを含む。受信部151は、受信情報に基づいて、遠隔オペレータ端末200との通信状態を把握する。通信状態としては、データ受信の有無、遅延量、通信速度、電波受信強度、等が例示される。
【0055】
通信異常判定部152は、「通信異常判定処理」を行う。より詳細には、通信異常判定部152は、受信部151から通信状態に関する情報を取得する。そして、通信異常判定部152は、通信状態に基づいて、遠隔オペレータ端末200から車両100への通信の異常が発生しているか否かを判定する。通信異常判定処理の具体例については後述される(セクション3-4-2参照)。
【0056】
通信異常フラグFL1-Cは、通信異常判定処理の結果を示す情報である。通信異常が発生していないと判定された場合、つまり、通信異常が検知されていない場合、通信異常フラグFL1-Cは例えば「0」に設定される。一方、通信異常が発生していると判定された場合、つまり、通信異常が検知された場合、通信異常フラグFL1-Cは例えば「1」に設定される。通信異常判定部152は、通信異常フラグFL1-Cを出力する。
【0057】
制御部153は、遠隔操作情報OPEや異常フラグ(FL1-C,FL1-V)を受け取る。制御部153は、遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。また、制御部153は、車両情報VCLを出力する。異常フラグが異常検知を示している場合、制御部153は、所定の異常対応処理(例:退避制御)を行ってもよい。
【0058】
車両異常判定部154は、「車両異常判定処理」を行う。より詳細には、車両異常判定部154は、制御部153によって算出される車両走行制御量の情報を受け取る。そして、車両異常判定部154は、車両走行制御量に基づいて、車両走行制御に異常が発生しているか否かを判定する。車両異常判定処理の具体例について後述される(セクション3-4-3参照)。
【0059】
車両異常フラグFL1-Vは、車両異常判定処理の結果を示す情報である。車両異常が発生していないと判定された場合、つまり、車両異常が検知されていない場合、車両異常フラグFL1-Vは例えば「0」に設定される。一方、車両異常が発生していると判定された場合、つまり、車両異常が検知された場合、車両異常フラグFL1-Vは例えば「1」に設定される。車両異常判定部154は、車両異常フラグFL1-Vを出力する。
【0060】
送信部155は、制御部153から出力される車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。
【0061】
3-4-2.通信異常判定処理の例
図6は、通信異常判定部152による通信異常判定処理の例を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS110において、通信異常判定部152は、受信部151がデータを受信しているか否かを判定する。受信部151がデータを受信している場合(ステップS110;Yes)、処理はステップS120に進む。それ以外の場合(ステップS110;No)、処理はステップS130に進む。
【0063】
ステップS120において、通信異常判定部152は、受信状態が良好か否かを判定する。受信状態は、通信速度、電波受信強度、等のパラメータにより表される。当該パラメータが所定の閾値以上である場合(ステップS120;Yes)、受信状態は良好であると判定され、処理はステップS160に進む。それ以外の場合(ステップS120;No)、処理はステップS130に進む。
【0064】
ステップS130において、通信異常判定部152は、データを受信していない状態、あるいは、受信状態が良好ではない状態が、Ta秒継続したか否かを判定する。そのような不良状態がTa秒継続した場合(ステップS130;Yes)、処理はステップS140に進む。一方、そのような不良状態がまだTa秒継続していない場合(ステップS130;No)、処理はステップS150に進む。
【0065】
ステップS140において、通信異常判定部152は、通信異常が発生していると判定(断定)する。
【0066】
ステップS150において、通信異常判定部152は、判断を確定することなく、現在の状態を「通信異常判定中」とする。その後、処理はステップS110に戻る。
【0067】
図7は、ステップS160の例を示すフローチャートである。ステップS160では、通信の遅延量DLが考慮される。
【0068】
ステップS161において、通信異常判定部152は、受信部151から通信の遅延量DLの情報を取得する。
【0069】
ステップS162において、通信異常判定部152は、遅延量DLが第1閾値DL_th1を超えているか否かを判定する。第1閾値DL_th1は、通信異常が発生していると断定してもよいような遅延量DLである。例えば、第1閾値DL_th1は、通常は起こり得ないような遅延量DLである。遅延量DLが第1閾値DL_th1を超える場合(ステップS162;Yes)、処理はステップS163に進む。一方、遅延量DLが第1閾値DL_th1以下である場合(ステップS162;No)、処理はステップS164に進む。
【0070】
ステップS163において、通信異常判定部152は、通信異常が発生していると判定(断定)する。
【0071】
ステップS164において、通信異常判定部152は、遅延量DLが第2閾値DL_th2を超えているか否かを判定する。第2閾値DL_th2は、上記の第1閾値DL_th1よりも小さい。例えば、第2閾値DL_th2は、遅延量DLの許容範囲の上限値である。遅延量DLが第2閾値DL_th2を超える場合(ステップS164;Yes)、処理はステップS165に進む。一方、遅延量DLが第2閾値DL_th2以下である場合(ステップS164;No)、処理はステップS167に進む。
【0072】
ステップS165において、通信異常判定部152は、遅延量DLが第2閾値DL_th2を超えている状態がTb秒継続したか否かを判定する。そのような状態がTb秒継続した場合(ステップS165;Yes)、処理はステップS163に進む。一方、そのような状態がまだTb秒継続していない場合(ステップS165;No)、処理はステップS166に進む。
【0073】
ステップS166において、通信異常判定部152は、判断を確定することなく、現在の状態を「通信異常判定中」とする。その後、処理はステップS110に戻る。
【0074】
ステップS167において、通信異常判定部152は、通信異常は発生しておらず、通信は正常であると判定する。その後、処理はステップS110に戻る。
【0075】
3-4-3.車両異常判定処理の例
図8は、車両異常判定部154による車両異常判定処理の例を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS181において、車両異常判定部154は、制御部153によって算出される車両走行制御量の情報を受け取る。そして、車両異常判定部154は、車両走行制御量の前回値からの変化分である「制御量変化DC」を取得する。
【0077】
ステップS182において、車両異常判定部154は、制御量変化DCが第1閾値DC_th1を超えているか否かを判定する。第1閾値DC_th1は、車両異常が発生していると断定してもよいような制御量変化DCである。例えば、第1閾値DC_th1は、通常は起こり得ないような制御量変化DCである。制御量変化DCが第1閾値DC_th1を超える場合(ステップS182;Yes)、処理はステップS183に進む。一方、制御量変化DCが第1閾値DC_th1以下である場合(ステップS182;No)、処理はステップS184に進む。
【0078】
ステップS183において、車両異常判定部154は、車両異常が発生していると判定(断定)する。
【0079】
ステップS184において、車両異常判定部154は、制御量変化DCが第2閾値DC_th2を超えているか否かを判定する。第2閾値DC_th2は、上記の第1閾値DC_th1よりも小さい。例えば、第2閾値DC_th2は、制御量変化DCの許容範囲の上限値である。制御量変化DCが第2閾値DC_th2を超える場合(ステップS184;Yes)、処理はステップS185に進む。一方、制御量変化DCが第2閾値DC_th2以下である場合(ステップS184;No)、処理はステップS187に進む。
【0080】
ステップS185において、車両異常判定部154は、制御量変化DCが第2閾値DC_th2を超えている状態がTc秒継続したか否かを判定する。そのような状態がTc秒継続した場合(ステップS185;Yes)、処理はステップS183に進む。一方、そのような状態がまだTc秒継続していない場合(ステップS185;No)、処理はステップS186に進む。
【0081】
ステップS186において、車両異常判定部154は、判断を確定することなく、現在の状態を「車両異常判定中」とする。その後、処理はステップS181に戻る。
【0082】
ステップS187において、車両異常判定部154は、車両異常は発生しておらず、車両100は正常であると判定する。その後、処理はステップS181に戻る。
【0083】
3-4-4.反力制御量算出処理の例
既出の図5に示されるように、制御部153は、反力制御量算出部190を含んでいる。反力制御量算出部190は、遠隔オペレータ端末200において操作反力を発生させるための「第1反力制御量FB1」を算出する。第1反力制御量FB1は、車両情報VCLの一部として遠隔オペレータ端末200にフィードバックされる。
【0084】
図9は、反力制御量算出部190の機能構成例を示すブロック図である。反力制御量算出部190は、ゲイン設定部191、ゲイン設定部192、乗算部193、フィルタ部194、乗算部195、及び基準反力制御量算出部180を含んでいる。
【0085】
ゲイン設定部191は、反力ゲインGr1-Cを設定するゲイン設定処理を行う。より詳細には、ゲイン設定部191は、通信異常判定部152による通信異常判定処理の結果を示す通信異常フラグFL1-Cに基づいて、反力ゲインGr1-Cを設定する。例えば、通信異常が発生していないと判定された場合、ゲイン設定部191は、反力ゲインGr1-Cを第1ゲインGr1-C1に設定する。通信異常が発生していると判定された場合、ゲイン設定部191は、反力ゲインGr1-Cを第1ゲインGr1-C1よりも大きい第2ゲインGr1-C2に設定する。通信異常判定中の期間、ゲイン設定部191は、反力ゲインGr1-Cを第1ゲインGr1-C1と第2ゲインGr1-C2との間の第3ゲインGr1-C3に設定してもよい。
【0086】
ゲイン設定部192は、反力ゲインGr1-Vを設定するゲイン設定処理を行う。より詳細には、ゲイン設定部192は、車両異常判定部154による車両異常判定処理の結果を示す車両異常フラグFL1-Vに基づいて、反力ゲインGr1-Vを設定する。例えば、車両異常が発生していないと判定された場合、ゲイン設定部192は、反力ゲインGr1-Vを第1ゲインGr1-V1に設定する。車両異常が発生していると判定された場合、ゲイン設定部192は、反力ゲインGr1-Vを第1ゲインGr1-V1よりも大きい第2ゲインGr1-V2に設定する。車両異常判定中の期間、ゲイン設定部192は、反力ゲインGr1-Vを第1ゲインGr1-V1と第2ゲインGr1-V2との間の第3ゲインGr1-V3に設定してもよい。
【0087】
乗算部193は、反力ゲインGr1-Cと反力ゲインGr1-Vを掛けることによって反力ゲインGr1を算出する。
【0088】
フィルタ部194は、反力ゲインGr1の急変を抑制するために設けられている。つまり、フィルタ部194は、異常判定処理の結果に応じて反力ゲインGr1が切り替わった時、反力ゲインGr1を徐変させる。例えば、フィルタ部194は、ローパスフィルタを含んでおり、反力ゲインGr1にローパスフィルタを適用する。
【0089】
乗算部195は、基準反力制御量FB0に反力ゲインGr1を掛けることによって第1反力制御量FB1を算出する(FB1=Gr1×FB0)。
【0090】
基準反力制御量FB0は、基準反力制御量算出部180によって算出される。図10は、基準反力制御量算出部180の機能構成例を示すブロック図である。基準反力制御量算出部180は、目標転舵角算出部181、スイッチ182、及び算出部183を含んでいる。
【0091】
目標転舵角算出部181は、車両100の目標転舵角φtを算出する。ここで、転舵角とは、車両100の車輪の転舵角であり、ピニオン角、モータ角、ハンドルの操舵角、等に相当する。
【0092】
例えば、目標転舵角算出部181は、車両100の運転モードに基づいて目標転舵角φtを算出する。車両100の遠隔操作の最中、目標転舵角算出部181は、遠隔操作情報OPEで示される操作量に応じて目標転舵角φtを算出する。車両100の自動運転の最中、目標転舵角算出部181は、自動運転制御に必要な目標転舵角φtを算出する。自動運転と遠隔操作が同時に行われる場合、目標転舵角算出部181は、遠隔オペレータOによる操作量に応じた目標転舵角φtと自動運転制御に必要な目標転舵角φtを組み合わせてもよい。緊急制御時には、目標転舵角算出部181は、緊急制御用の目標転舵角φtを算出してもよい。
【0093】
実転舵角φaは、車両100の車輪の実際の転舵角である。実転舵角φaは、車両状態センサにより検出され、車両状態情報から得られる。
【0094】
スイッチ182は、実転舵角φaと目標転舵角φtのいずれか一方を選択転舵角φsとして選択する。
【0095】
算出部183は、選択転舵角φsと車速等に基づいて、基準反力制御量FB0を算出する。典型的には、選択転舵角φsが増加するにつれて、基準反力制御量FB0は大きくなる。
【0096】
選択転舵角φsは、例えば、外乱を考慮して選択される。例えば、高速道路走行時に横風が吹くと、ハンドルが取られる。そのような外乱の感覚が遠隔オペレータOに伝わることを防止するためには、実転舵角φaではなく目標転舵角φtを選択すればよい。そのために、スイッチ182は、車両状態情報に基づいて、外乱の有無を検出する。より詳細には、車両状態情報は、車両100の車速、操舵角、及び実横加速度を含んでいる。車速及び操舵角から目標横加速度が算出される。実横加速度と目標横加速度との間の差分が閾値を超えた場合、横風等の外乱が存在すると判定される。その場合、スイッチ182は、実転舵角φaではなく目標転舵角φtを選択転舵角φsとして選択する。
【0097】
以上に説明されたように、基準反力制御量算出部180は、基準反力制御量FB0を算出する。反力制御量算出部190は、異常判定処理の結果に応じて反力ゲインGr1を設定する。更に、反力制御量算出部190は、基準反力制御量FB0に反力ゲインGr1を掛けることによって第1反力制御量FB1を算出する(FB1=Gr1×FB0)。このようにして算出された第1反力制御量FB1が、車両情報VCLの一部として遠隔オペレータ端末200にフィードバックされる。
【0098】
4.遠隔オペレータ端末の例
4-1.構成例
図11は、遠隔オペレータ端末200の構成例を示すブロック図である。遠隔オペレータ端末200は、通信装置210、表示装置220、遠隔操作部材230、操作反力アクチュエータ240、及び制御装置250を含んでいる。
【0099】
通信装置210は、車両100及び管理装置300と通信を行う。
【0100】
表示装置220は、各種情報を表示することにより、各種情報を遠隔オペレータOに提示する。
【0101】
遠隔操作部材230は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に操作する部材である。遠隔操作部材230は、ハンドル(ステアリングホイール)、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、等を含んでいる。
【0102】
操作反力アクチュエータ240は、遠隔操作部材230に操作反力を付与する。例えば、操作反力アクチュエータ240は、ハンドルに操舵反力(操舵反力トルク)を付与する反力モータを含んでいる。反力モータのロータは、減速機を介してハンドルに連結されている。反力モータの回転により、ハンドルに操舵反力を付与することができる。操作反力アクチュエータ240の動作は、制御装置250によって制御される。
【0103】
制御装置250は、遠隔オペレータ端末200を制御する。制御装置250は、1又は複数のプロセッサ260(以下、単にプロセッサ260と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置270(以下、単に記憶装置270と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ260は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ260は、CPUを含んでいる。記憶装置270は、プロセッサ260による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置270としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD、等が例示される。
【0104】
遠隔操作プログラムPROG2は、プロセッサ260によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ260が遠隔操作プログラムPROG2を実行することにより、制御装置250の機能が実現される。遠隔操作プログラムPROG2は、記憶装置270に格納される。あるいは、遠隔操作プログラムPROG2は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。遠隔操作プログラムPROG2は、ネットワーク経由で提供されてもよい。
【0105】
制御装置250は、通信装置210を介して、車両100と通信を行う。制御装置250は、車両100から送信される車両情報VCLを受信する。制御装置250は、画像情報を含む車両情報VCLを表示装置220に表示することによって、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。遠隔オペレータOは、表示装置220に表示される車両情報VCLに基づいて、車両100の状態や周囲の状況を認識することができる。
【0106】
遠隔オペレータOは、遠隔操作部材230を操作する。遠隔操作部材230の操作量は、遠隔操作部材230に設置されたセンサにより検出される。制御装置250は、遠隔オペレータOによる遠隔操作部材230の操作量を反映した遠隔操作情報OPEを生成する。そして、制御装置250は、その遠隔操作情報OPEを通信装置210を介して車両100に送信する。
【0107】
4-2.異常判定処理及び異常通知処理
図12は、遠隔オペレータ端末200における異常判定処理及び異常通知処理を説明するためのブロック図である。遠隔オペレータ端末200は、機能ブロックとして、受信部251、通信異常判定部252、制御部253、端末異常判定部254、及び送信部255を含んでいる。これら機能ブロックは、通信装置210及び制御装置250により実現される。
【0108】
受信部251は、車両100の遠隔操作の最中、車両100から送信される情報を受信する。車両100から送信される情報は、上述の車両情報VCLを含む。受信部251は、受信情報に基づいて、車両100との通信状態を把握する。通信状態としては、データ受信の有無、遅延量、通信速度、電波受信強度、等が例示される。
【0109】
通信異常判定部252は、「通信異常判定処理」を行う。より詳細には、通信異常判定部252は、受信部251から通信状態に関する情報を取得する。そして、通信異常判定部252は、通信状態に基づいて、車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の異常が発生しているか否かを判定する。通信異常判定処理の具体例は、上述の図6図7で示されたものと同様である。
【0110】
通信異常フラグFL2-Cは、通信異常判定処理の結果を示す情報である。通信異常が発生していないと判定された場合、つまり、通信異常が検知されていない場合、通信異常フラグFL2-Cは例えば「0」に設定される。一方、通信異常が発生していると判定された場合、つまり、通信異常が検知された場合、通信異常フラグFL2-Cは例えば「1」に設定される。通信異常判定部252は、通信異常フラグFL2-Cを出力する。
【0111】
制御部253は、車両情報VCLや異常フラグ(FL2-C、FL2-T)を受け取る。制御部253は、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。また、制御部253は、遠隔操作情報OPEを出力する。異常フラグが異常検知を示している場合、制御部253は、異常発生を遠隔オペレータOに通知する。
【0112】
端末異常判定部254は、「端末異常判定処理」を行う。より詳細には、端末異常判定部254は、制御部253から出力される遠隔操作情報OPEを受け取る。そして、端末異常判定部254は、遠隔操作情報OPEに基づいて、遠隔オペレータ端末200に異常が発生しているか否かを判定する。端末異常判定処理の具体例について後述される(セクション4-3参照)。
【0113】
端末異常フラグFL2-Tは、端末異常判定処理の結果を示す情報である。端末異常が発生していないと判定された場合、つまり、端末異常が検知されていない場合、端末異常フラグFL2-Tは例えば「0」に設定される。一方、端末異常が発生していると判定された場合、つまり、端末異常が検知された場合、端末異常フラグFL2-Tは例えば「1」に設定される。端末異常判定部254は、端末異常フラグFL2-Tを出力する。
【0114】
送信部255は、制御部253から出力される遠隔操作情報OPEを車両100に送信する。
【0115】
4-3.端末異常判定処理の例
図13は、端末異常判定部254による端末異常判定処理の例を示すフローチャートである。
【0116】
ステップS281において、端末異常判定部254は、遠隔操作情報OPEを受け取る。そして、端末異常判定部254は、遠隔オペレータOによる操作量の前回値からの変化分である「操作量変化DO」を取得する。
【0117】
ステップS282において、端末異常判定部254は、操作量変化DOが第1閾値DO_th1を超えているか否かを判定する。第1閾値DO_th1は、端末異常が発生していると断定してもよいような操作量変化DOである。例えば、第1閾値DO_th1は、通常は起こり得ないような操作量変化DOである。操作量変化DOが第1閾値DO_th1を超える場合(ステップS282;Yes)、処理はステップS283に進む。一方、操作量変化DOが第1閾値DO_th1以下である場合(ステップS282;No)、処理はステップS284に進む。
【0118】
ステップS283において、端末異常判定部254は、端末異常が発生していると判定(断定)する。
【0119】
ステップS284において、端末異常判定部254は、操作量変化DOが第2閾値DO_th2を超えているか否かを判定する。第2閾値DO_th2は、上記の第1閾値DO_th1よりも小さい。例えば、第2閾値DO_th2は、操作量変化DOの許容範囲の上限値である。操作量変化DOが第2閾値DO_th2を超える場合(ステップS284;Yes)、処理はステップS285に進む。一方、操作量変化DOが第2閾値DO_th2以下である場合(ステップS284;No)、処理はステップS287に進む。
【0120】
ステップS285において、端末異常判定部254は、操作量変化DOが第2閾値DO_th2を超えている状態がTd秒継続したか否かを判定する。そのような状態がTd秒継続した場合(ステップS285;Yes)、処理はステップS283に進む。一方、そのような状態がまだTd秒継続していない場合(ステップS285;No)、処理はステップS286に進む。
【0121】
ステップS286において、端末異常判定部254は、判断を確定することなく、現在の状態を「端末異常判定中」とする。その後、処理はステップS281に戻る。
【0122】
ステップS287において、端末異常判定部254は、端末異常は発生しておらず、遠隔オペレータ端末200は正常であると判定する。その後、処理はステップS281に戻る。
【0123】
4-4.反力制御量算出処理の例
既出の図12に示されるように、制御部253は、反力制御量算出部290を含んでいる。反力制御量算出部290は、操作反力を発生させるための「反力制御量FB」を算出する。
【0124】
図14は、反力制御量算出部290の機能構成例を示すブロック図である。反力制御量算出部290は、ゲイン設定部291、ゲイン設定部292、乗算部293、フィルタ部294、及び乗算部295を含んでいる。
【0125】
ゲイン設定部291は、反力ゲインGr2-Cを設定するゲイン設定処理を行う。より詳細には、ゲイン設定部291は、通信異常判定部252による通信異常判定処理の結果を示す通信異常フラグFL2-Cに基づいて、反力ゲインGr2-Cを設定する。例えば、通信異常が発生していないと判定された場合、ゲイン設定部291は、反力ゲインGr2-Cを第1ゲインGr2-C1に設定する。通信異常が発生していると判定された場合、ゲイン設定部291は、反力ゲインGr2-Cを第1ゲインGr2-C1よりも大きい第2ゲインGr2-C2に設定する。通信異常判定中の期間、ゲイン設定部291は、反力ゲインGr2-Cを第1ゲインGr2-C1と第2ゲインGr2-C2との間の第3ゲインGr2-C3に設定してもよい。
【0126】
ゲイン設定部292は、反力ゲインGr2-Tを設定するゲイン設定処理を行う。より詳細には、ゲイン設定部292は、端末異常判定部254による端末異常判定処理の結果を示す端末異常フラグFL2-Tに基づいて、反力ゲインGr2-Tを設定する。例えば、端末異常が発生していないと判定された場合、ゲイン設定部292は、反力ゲインGr2-Tを第1ゲインGr2-T1に設定する。端末異常が発生していると判定された場合、ゲイン設定部292は、反力ゲインGr2-Tを第1ゲインGr2-T1よりも大きい第2ゲインGr2-T2に設定する。端末異常判定中の期間、ゲイン設定部292は、反力ゲインGr2-Tを第1ゲインGr2-T1と第2ゲインGr2-T2との間の第3ゲインGr2-T3に設定してもよい。
【0127】
乗算部293は、反力ゲインGr2-Cと反力ゲインGr2-Tを掛けることによって反力ゲインGr2を算出する。
【0128】
フィルタ部294は、反力ゲインGr2の急変を抑制するために設けられている。つまり、フィルタ部294は、異常判定処理の結果に応じて反力ゲインGr2が切り替わった時、反力ゲインGr2を徐変させる。例えば、フィルタ部294は、ローパスフィルタを含んでおり、反力ゲインGr2にローパスフィルタを適用する。
【0129】
乗算部295は、車両100側からフィードバックされる第1反力制御量FB1を受け取る。そして、乗算部295は、第1反力制御量FB1に反力ゲインGr2を掛けることによって反力制御量FBを算出する(FB=Gr2×FB1=Gr1×Gr2×FB0)。
【0130】
制御部253は、反力制御量算出部290によって算出された反力制御量FBに従って操作反力アクチュエータ240を制御する。これにより、反力制御量FBに応じた操作反力が遠隔操作部材230に付与される。遠隔操作部材230を操作する遠隔オペレータOは、遠隔操作部材230に付与される操作反力を感じる。
【符号の説明】
【0131】
1 遠隔操作システム
100 車両
150 制御装置
152 通信異常判定部
154 車両異常判定部
160 プロセッサ
170 記憶装置
180 基準反力制御量算出部
190 反力制御量算出部
200 遠隔オペレータ端末
230 遠隔操作部材
240 操作反力アクチュエータ
250 制御装置
252 通信異常判定部
254 端末異常判定部
260 プロセッサ
270 記憶装置
290 反力制御量算出部
300 管理装置
FB 反力制御量
FB0 基準反力制御量
FB1 第1反力制御量
FL1-C 通信異常フラグ
FL1-V 車両異常フラグ
FL2-C 通信異常フラグ
FL2-T 端末異常フラグ
OPE 遠隔操作情報
VCL 車両情報
図1
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