(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】水系組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 283/00 20060101AFI20241001BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20241001BHJP
C08K 5/41 20060101ALI20241001BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241001BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08F283/00
C08K5/16
C08K5/41
B32B27/30 A
C08L101/12
(21)【出願番号】P 2022020916
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021032197
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 健一
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167530(JP,A)
【文献】特開2005-239803(JP,A)
【文献】特開2014-222355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00-283/00、283/01、
283/02-289/00、290/00-290/14
291/00-297/08、299/00-299/08
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価60mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート(A)、
界面活性剤(B)、
π共役系導電性ポリマー(C)及び
水系溶媒(D)を含み
(B)成分は、化学式(1)で表され、
(D)成分100質量%のうち80質量%以上が水であ
り、
質量比((A)成分/(B)成分)は、95/5~99.3/0.7であり、
質量比((A)成分/(C)成分)は、90/10~99.7/0.3であり、
質量比((B)成分/(C)成分)は、40/60~70/30であり、
質量比(水系組成物の固形分/水系溶媒(D))は、20/80~40/60である、
水系組成物。
【化1】
前記化学式(1)中の、Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~30の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、又は置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基であり、Aは炭素数2~4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であり、nはオキシアルキレン基(OA)の平均繰り返し単位数で2~50であり、Qは、エチレン性不飽和結合を有するアンモニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するイミダゾリウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピロリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピロリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピペリジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピラジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピリミジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するトリアゾリウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するトリアジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するキノリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するイソキノリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するインドリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するキノキサリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するピペラジニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するオキサゾリニウムイオン、エチレン性不飽和結合を有するチアゾリニウムイオン、及びエチレン性不飽和結合を有するモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【請求項2】
(A)成分が有する(メタ)アクリロイル基の数が少なくとも3個である、請求項1に記載の水系組成物。
【請求項3】
(C)成分が、ポリチオフェン類及び/又はポリアニリン類から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の水系組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の水系組成物の硬化物。
【請求項5】
基材の少なくとも片面に請求項4の硬化物を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水系組成物、硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリレートを界面活性剤により水系化した組成物は、建築用水系塗料、接着剤、プラスチックフィルムのコーティング剤等多岐にわたり使用されている。この例として特許文献1には、(メタ)アクリレートを界面活性剤の存在下で水性溶剤に分散されてなることを特徴とする組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は帯電防止性という点で課題があった。本発明では、帯電防止性が改良され、かつ保存安定性が良好である、水系組成物、硬化物及び積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、所定の水系組成物によって、上記課題が解決されることを見出した。なお、本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0006】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
水酸基価60mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート(A)、
界面活性剤(B)、
π共役系導電性ポリマー(C)及び
水系溶媒(D)を含み
(D)成分100質量%のうち80質量%以上が水である、
水系組成物。
(項目2)
(A)成分が有する(メタ)アクリロイル基の数が少なくとも3個である、項目1に記載の水系組成物。
(項目3)
(C)成分が、ポリチオフェン類及び/又はポリアニリン類から選択される1種以上である、項目1又は2に記載の水系組成物。
(項目4)
項目1~3のいずれかに記載の水系組成物の硬化物。
(項目5)
基材の少なくとも片面に項目4の硬化物を有する積層体。
【発明の効果】
【0007】
本開示で提供する水系組成物は、帯電防止性能及び保存安定性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの下限としてA1、A2、A3等が例示され、数値αの上限としてB1、B2、B3等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以上、A2以上、A3以上、B1以下、B2以下、B3以下、A1~B1、A1~B2、A1~B3、A2~B1、A2~B2、A2~B3、A3~B1、A3~B2、A3~B3等が例示される。なお、本開示において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。以下、本開示で提供される水系組成物の各成分、硬化物及び積層体等について詳細に説明する。
【0009】
<水酸基価60mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート(A)>
水酸基価60mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート(A)(本開示において、「(A)成分」ともいう。)は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの平均の水酸基価が60mgKOH/g以下であればよい。なお、本開示において(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートのことであり、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基のことである。(A)成分には、(B)成分は含まれない。
【0010】
(A)成分は、水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(a1)(本開示において、「(a1)成分」ともいう。)を含む。(A)成分は、必要に応じて、水酸基を有さないポリ(メタ)アクリレート(a2)(本開示において、「(a2)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0011】
(a1)成分として、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシ)プロパノール、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0012】
その他の(A)成分として、
(1)水酸基を有する成分と、水酸基に対して反応する官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する成分との反応物、
(2)水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する成分と、水酸基に対して反応する官能基を有する成分との反応物から選択される1種以上も例示される。
水酸基を有する成分として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス-[ヒドロキシメチル]-シクロヘキサン、ソルビトール等が例示される。
水酸基に対して反応する官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する成分として、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)クリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が例示される。
水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する成分として、上記の(a1)成分が例示される。
水酸基に対して反応する官能基を有する成分として、ポリイソシアネートが例示される。ポリイソシアネートとして、鎖状炭化水素基を含むポリイソシアネート、脂環式炭化水素基を含むポリイソシアネート、芳香族炭化水素基を含むポリイソシアネート等が例示される。鎖状炭化水素基を含むポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。脂環式炭化水素基を含むポリイソシアネートとして、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。芳香族炭化水素基を含むポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート等が例示される。その他のポリイソシアネートとして、上記例示したポリイソシアネートや各種公知のポリイソシアネートの付加体、これらイソシアネートの多量体等が例示される。そのようなポリイソシアネートとして、ビウレット、ヌレート、アダクト、アロファネート等が例示される。ポリイソシアネートのビウレットとして、製品名「デュラネート24A-100」、「デュラネート22A-75P」、「デュラネート21S-75E」(いずれも旭化成(株)製)等が例示される。ポリイソシアネートのヌレートとして、製品名「コロネートHK」、「コロネートHXR」(いずれも東ソー(株)製)等が例示される。ポリイソシアネートのアダクトとして、製品名「デュラネートP301-75E」(旭化成(株)製)等が例示される。ポリイソシアネートのアロファネートとして、製品名「コロネート2770」(東ソー(株)製)等が例示される。また、本開示のポリイソシアネートは、平均イソシアネート基数が3以上10以下程度のものであってもよい。なお、平均イソシアネート基数は、以下の式により算出することができる。平均イソシアネート基数=(数平均分子量(Mn)×イソシアネート基濃度(%))/(42.02×100)。式中のイソシアネート基濃度(%)はJIS K 1603-1:2007記載の方法により測定される値である。
【0013】
(A)成分は、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(製品名「Miramer M300」、MIWON社製、水酸基価10mgKOH/g)、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート(製品名「Miramer M320」、MIWON社製、水酸基価25mgKOH/g)、ペンタエリスリトールEO変性テトラ(メタ)アクリレート(製品名「Miramer M4004」、MIWON社製、水酸基価20mgKOH/g)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(製品名「Miramer M410」、MIWON社製、水酸基価10mgKOH/g)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(製品名「Miramer M600」、MIWON社製、水酸基価5mgKOH/g)、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「A-DPH」、新中村化学工業(株)製、水酸基価10mgKOH/g)、(製品名「A-9550」、新中村化学工業(株)製、水酸基価50mgKOH/g)、EO変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「A-DPH-12EL」、新中村化学工業(株)製、水酸基価30mgKOH/g)等が例示される。
【0014】
(A)成分として例示された物質及び(A)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(A)成分は、構造中にエリスリトールを含むポリ(メタ)アクリレートであることが好ましく、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート及び構造中にエリスリトールを含むウレタンポリ(メタ)アクリレートから選択される1種以上がより好ましい。
【0015】
(A)成分の(メタ)アクリロイル基数の上限は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3等が例示され、下限は14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の(メタ)アクリロイル基数は2~15程度が好ましく、より好ましくは3~12程度である。(A)成分の(メタ)アクリロイル基数が多いほど耐擦傷性が良好となることから好ましい。
【0016】
(A)成分の水酸基価(mgKOH/g)の上限は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1等が例示され、下限は55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0.5、0.1、0.05等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の水酸基価(mgKOH/g)は60以下であり、0.05~60程度が好ましい。(A)成分の水酸基価は低いほど、保存安定性及び耐擦傷性に優れる傾向にあるものと考えている。(A)成分の水酸基価が60mgKOH/gを超えた場合、特に乳化物の粒子径の保存安定性が悪く肥大化することから好ましくない。水酸基価の高い(A)成分を使用した硬化物や積層体は、水酸基価の低い(A)成分を使用した硬化物や積層体と比較すると、より良好な帯電防止性を示すことから、上記下限以上であることが好ましい。なお、本開示における水酸基価の測定方法として、JIS K 0070 1992に記載の方法が例示され、特に中和滴定法が例示される。
【0017】
(A)成分の分子量の上限は、20,000、10,000、5,000、1,000、500、250等が例示され、下限は10,000、5,000、1,000、500、250、100等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の分子量は100~20,000程度が好ましく、より好ましくは500~10,000である。本開示において、単に「分子量」という場合、原子量を基に計算した数値を指す。
【0018】
(A)成分の重量平均分子量の上限は、20,000、10,000、5,000、1,000、500、250等が例示され、下限は10,000、5,000、1,000、500、250、100等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分の重量平均分子量は100~20,000程度が好ましく、より好ましくは500~10,000である。本開示において重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0019】
本開示の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)の上限は、99.9、99.5、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75質量%等が例示され、下限は、99.5、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量100質量%に占める(A)成分の含有量(固形分換算)は、本開示の効果を良好に示すことから、70~99.9質量%程度が好ましく、より好ましくは80~99.5質量%であり、さらにより好ましくは85~99.5質量%であり、特に好ましくは90~99質量%である。
【0020】
<界面活性剤(B)>
本開示の水系組成物には界面活性剤(B)(本開示において、「(B)成分」ともいう。)が含まれる。(B)成分として、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、反応性界面活性剤等が例示される。(B)成分には、(A)成分は含まれない。
【0021】
カチオン系界面活性剤として、第4級アンモニウム型、脂肪族3級アミドアミン型等が例示される。第4級アンモニウム型として、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等が例示される。脂肪族3級アミドアミン型として、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が例示される。カチオン系界面活性剤は、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、製品名「カチオーゲンH」、「カチオーゲンL」(第一工業製薬(株)製)、製品名「コータミン24P」、「コータミン86Pコーンク」、「コータミン60W」、「コータミン86W」(花王(株)製)等が例示される。
【0022】
アニオン系界面活性剤として、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等が例示される。カルボン酸塩として、ロジン酸塩、脂肪酸塩、アシル化ザルコシン塩等が例示される。ロジン酸塩として、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等が例示される。脂肪酸塩として、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ラウリン酸トリエタノールアミン等が例示される。アシル化ザルコシン塩として、ラウロイルサルコシンナトリウム等が例示される。硫酸エステル塩として、アルキルサルフェート塩、アルキルエーテルサルフェート塩、アマイドエーテルサルフェート等が例示される。アルキルサルフェート塩として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等が例示される。アルキルエーテルサルフェート塩として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が例示される。アマイドエーテルサルフェートとして、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等が例示される。スルホン酸塩として、アルキルアリルスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、スルホコハク酸エステル塩等が例示される。アルキルアリルスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等が例示される。スルホコハク酸ジエステル塩として、ジオクチルスルホサクシネート等が例示される。スルホコハク酸エステル塩として、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が例示される。リン酸エステル塩として、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル等が例示される。アルキルリン酸エステルとして、ラウリルリン酸等が例示される。アルキルエーテルリン酸エステルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等が例示される。
【0023】
ノニオン系界面活性剤として、エーテル型、エステル型、エステル・エーテル型、アミノエーテル型、アルカノールアミド型等が例示される。エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が例示される。エステル型として、ポリエチレングリコールアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が例示される。エステル・エーテル型として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル等が例示される。アミノエーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が例示される。アルカノールアミド型として、脂肪族モノエタノールアミド、脂肪族ジエタノールアミド等が例示される。
【0024】
反応性界面活性剤は、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、製品名「ラテムルS-180A」、「ラテムルPD-104」、「ラテムルPD-105」、「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」(花王(株)製)、製品名「エレミノールJS-2」(三洋化成工業(株)製)、製品名「アクアロンKH-10」、「アクアロンBC-20」、「アクアロンRN-20」、「アクアロンRN-30」、「アクアロンRN-50」(第一工業製薬(株)製)、製品名「アデカリアソープSE-10N」、「アデカリアソープSR-10N」((株)ADEKA製)、製品名「Antox MS-60」、「アミノイオンRE-1000L」(日本乳化剤(株)製)、製品名「サーフマーFP-120」(東邦化学工業(株)製)等が例示される。
【0025】
(B)成分として例示された物質及び(B)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])の上限は、99.9/0.1、99.8/0.2、99.7/0.3、99.6/0.4、99.5/0.5、99.4/0.6、99.3/0.7、99.2/0.8、99.1/0.9、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15等が例示され、下限は、99.8/0.2、99.7/0.3、99.6/0.4、99.5/0.5、99.4/0.6、99.3/0.7、99.2/0.8、99.1/0.9、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、94/6、93/7、92/8、91/9、90/10、85/15、80/20等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(B)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(B)成分])は、本開示の効果を良好に示すことから、80/20~99.9/0.1程度が好ましい。
【0027】
本開示の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量100質量%に占める(B)成分の含有量(固形分換算)の上限は、20、15、10、5、1、0.5、0.1質量%等が例示され、下限は、15、10、5、1、0.5、0.1、0.05質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量100質量%に占める(B)成分の含有量(固形分換算)は、0.05~20質量%程度が好ましい。上記下限以上であることで、水系化(エマルジョン化)が良好にできる。
【0028】
<π共役系導電性ポリマー(C)>
本開示の水系組成物には、π共役系導電性ポリマー(C)(本開示において、「(C)成分」ともいう。)を含む。本開示の水系組成物に(C)成分を含むことで、他の帯電防止剤と比較した場合に本開示における所望の効果、特に保存安定性や帯電防止性に優れる。(C)成分として、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリチオフェンビニレン類、ポリピロール類及びポリフラン類等からなる群より選ばれる少なくとも一種が例示される。なお、(C)成分に(A)成分は含まれない。
【0029】
ポリチオフェン類として、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)類、ポリ(モノアルコキシチオフェン)類、ポリ(ジアルコキシチオフェン)類、ポリ(アルキレンジオキシチオフェン)類等が例示される。ポリチオフェン類は、好ましくはポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたアルキレンジオキシポリ(チオフェン)であり、より好ましくはポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とPSSの錯体(本開示において、「PEDOT/PSS」ともいう。)である。PEDOT/PSSは、例えば、モノマーである3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を、水相中、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)の存在下、酸化剤を用いて重合することにより得られる。PEDOT/PSSの市販品として、製品名「Clevios P」(ヘレウス(株)製)や、製品名「Orgacon ICP1010」(日本アグフアマテリアルズ(株)製)等が例示される。
【0030】
ポリアニリン類として、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)等が例示される。
【0031】
ポリチオフェンビニレン類として、ポリ(チオフェンビニレン)、アルキレンジオキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、アルコキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、アルキル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、カルボキシル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、ヒドロキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、フェニル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、シアノ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、ハロゲン置換ポリ(チオフェンビニレン)類等が例示される。アルキレンジオキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェンビニレン)等が例示される。アルコキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-メトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-エトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-ブトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェンビニレン)等が例示される。アルキル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-メチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-エチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-プロピルチオフェンビニレン)、ポリ(3-ブチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-オクチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-デシルチオフェンビニレン)、ポリ(3-ドデシルチオフェンビニレン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェンビニレン)等が例示される。カルボキシル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-カルボキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェンビニレン)等が例示される。ヒドロキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-ヒドロキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェンビニレン)等が例示される。フェニル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-フェニルチオフェンビニレン)等が例示される。シアノ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-シアノチオフェンビニレン)等が例示される。ハロゲン置換ポリ(チオフェンビニレン)類として、ポリ(3-ブロモチオフェンビニレン)、ポリ(3-クロロチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヨードチオフェンビニレン)等が例示される。
【0032】
ポリピロール類として、ポリ(ピロール)、アルコキシ基置換ポリ(ピロール)類、アルキル基置換ポリ(ピロール)類、カルボキシル基置換ポリ(ピロール)類、ヒドロキシ基置換ポリ(ピロール)類等が例示される。アルコキシ基置換ポリ(ピロール)類として、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)等が例示される。アルキル基置換ポリ(ピロール)類として、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)等が例示される。カルボキシル基置換ポリ(ピロール)類として、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)等が例示される。ヒドロキシ基置換ポリ(ピロール)類として、ポリ(3-ヒドロキシピロール)等が例示される。
【0033】
ポリフラン類として、ポリフラン、アルコキシ基置換ポリフラン類、アルキル基置換ポリフラン類、カルボキシル基置換ポリフラン類、ヒドロキシ基置換ポリフラン類等が例示される。アルコキシ基置換ポリフラン類として、ポリ(3-メトキシフラン)、ポリ(3-エトキシフラン)、ポリ(3-ブトキシフラン)、ポリ(3-ヘキシルオキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシフラン)等が例示される。アルキル基置換ポリフラン類として、ポリ(3-メチルフラン)、ポリ(3-エチルフラン)、ポリ(3-n-プロピルフラン)、ポリ(3-ブチルフラン)、ポリ(3-オクチルフラン)、ポリ(3-デシルフラン)、ポリ(3-ドデシルフラン)、ポリ(3,4-ジメチルフラン)、ポリ(3,4-ジブチルフラン)等が例示される。カルボキシル基置換ポリフラン類として、ポリ(3-カルボキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルフラン)等が例示される。ヒドロキシ基置換ポリフラン類として、ポリ(3-ヒドロキシフラン)等が例示される。
【0034】
(C)成分として例示された物質及び(C)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(C)成分は、水系組成物の硬化物の帯電防止性及び透明性等の観点より、好ましくはポリチオフェン類及び/又はポリアニリン類であり、より好ましくはポリチオフェン類であり、さらにより好ましくはPEDOT/PSSである。
【0035】
(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])の上限は、99.9/0.1、99.8/0.2、99.7/0.3、99.6/0.4、99.5/0.5、99.4/0.6、99.3/0.7、99.2/0.8、99.1/0.9、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、90/10等が例示され、下限は、99.8/0.2、99.7/0.3、99.6/0.4、99.5/0.5、99.4/0.6、99.3/0.7、99.2/0.8、99.1/0.9、99/1、98/2、97/3、96/4、95/5、90/10、85/15等が例示される。1つの実施形態において、(A)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(A)成分/(C)成分])は、本開示の効果を良好に示すことから、85/15~99.9/0.1程度が好ましい。
【0036】
(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])の上限は、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75等が例示され、下限は、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、30/70、25/75、20/80等が例示される。1つの実施形態において、(B)成分と(C)成分との含有量比(質量比、固形分換算、[(B)成分/(C)成分])は、本開示の効果を良好に示すことから、20/80~80/20程度が好ましい。
【0037】
本開示の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量%に占める(C)成分の含有量(固形分換算)の上限は、15、10、9、7、5、3、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1質量%等が例示され、下限は、10、9、7、5、3、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0.05質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100質量%に占める(C)成分の含有量(固形分換算)は、0.05~15質量%程度が好ましく、より好ましくは0.05~10質量%であり、さらにより好ましくは0.1~10質量%であり、特に好ましくは0.5~3質量%であり、さらに特に好ましくは0.5~1質量%である。上記下限以上であることで、良好な帯電防止性を発揮することが可能である。上記上限以下であることで、他成分との相溶性が良好となり、本開示の硬化物の透明性が優れる。
【0038】
<水系溶媒(D)>
本開示の水系組成物には、水系溶媒(D)(本開示において、「(D)成分」ともいう。)を含み、(D)成分100質量%のうち80質量%以上が水である。
【0039】
(D)成分は、水のみからなる溶媒、又は水と水溶性有機溶媒との混合物からなる溶媒である。水溶性有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒であればその種類は特に限定されない。水溶性有機溶媒として、アルコール類、エーテル類等が例示される。アルコール類として、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-オクチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール等が例示される。エーテル類として、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が例示される。
【0040】
(D)成分として水と水溶性有機溶媒との混合物を使用する場合の水の使用割合の上限は(D)成分100質量%に対して、100、95、90、85質量%等が例示され、下限は、95、90、85、80質量%等が例示される。1つの実施形態において、(D)成分として水と水溶性有機溶媒との混合物を使用する場合の水の使用割合は、(D)成分100質量%に対して、80~100質量%程度が好ましい。(D)成分として、水の使用割合が高いほど環境に対する影響が小さくなり、また樹脂エマルジョンのミセルの崩壊が抑制され、分散状態の安定性(乳化安定性)が良好となり、JISZ8825:2013に準じてレーザー回折・散乱式粒子径測定装置(例えば、マイクロトラックMT3000等)にて測定された樹脂エマルジョンの粒子径(D50やD90等)が小さくなり分散性が良好となることから最も好ましい。また、本開示の水系組成物には、(D)成分以外の溶媒を含有しないことが好ましい。
【0041】
溶媒として例示された物質及び溶媒として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
本開示の水系組成物の固形分に対する水系溶媒の含有量比(質量比、[本開示の水系組成物の固形分/水系溶媒])の上限は、99/1、95/5、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、5/95等が例示され、下限は、95/5、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、5/95、1/99等が例示される。1つの実施形態として、本開示の水系組成物の固形分に対する水系溶媒の含有量比(質量比、[本開示の水系組成物の固形分/水系溶媒])は1/99~99/1程度が好ましい。水系溶媒の量を少なくすることで本開示の水系組成物の硬化物の厚さを大きくすることができる。
【0043】
<重合開始剤(E)>
本開示の水系組成物には重合開始剤(E)(本開示において、「(E)成分」ともいう。)を含むことも考えられる。重合開始剤として、光重合開始剤、熱重合開始剤等が例示される。
【0044】
光重合開始剤として、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等が例示される。ラジカル系光重合開始剤として、アルキルフェノン型光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル型光重合開始剤等が例示される。アルキルフェノン型光重合開始剤として、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンジルジメチルケタール、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン等が例示される。アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が例示される。水素引き抜き型光重合開始剤として、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が例示される。オキシムエステル型光重合開始剤として、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が例示される。カチオン系光重合開始剤として、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)]4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェート(1-)及びプロピレンカーボネートの混合物、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウム テトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が例示される。アニオン系光重合開始剤として、コバルトアミン系錯体、o-ニトロベンジルアルコールカルバミン酸エステル、オキシムエステル等が例示される。
【0045】
熱重合開始剤として、有機過酸化物、アゾ系化合物等が例示される。有機過酸化物として、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が例示される。アゾ系化合物として、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタンおよびアゾジ-t-ブタン等が例示される。
【0046】
重合開始剤として例示された物質及び重合開始剤として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
本開示の水系組成物の固形分換算100質量%に占める(E)成分の含有量(固形分換算)の上限は、20、15、10、8、6、4、2、1、0.5質量%等が例示され、下限は、15、10、8、6、4、2、1、0.5、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、本開示の水系組成物の固形分換算100質量%に占める(E)成分の含有量(固形分換算)は、0~20質量%程度が好ましい。
【0048】
<その他配合可能な剤>
本開示の水系組成物には、さらに、必要に応じて上記例示した成分以外のバインダー樹脂、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、酸化防止剤、導電性向上剤、有機粒子、無機粒子、増粘剤、発泡剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、重合禁止剤等の各種添加剤を配合することもできる。
【0049】
重合禁止剤として、p-メトキシフェノール、フェノチアジン等が例示される。重合禁止剤は、市販された製品を使用してもよい。当該製品として、製品名「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」(BASFジャパン(株)製)、製品名「SumilizerGA-80」(住友化学(株)製)、製品名「キノパワーQS-30」、「キノパワーQS-W10」(川崎化成工業(株)製)等が例示される。これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0050】
<水系組成物の製造方法>
本開示の水系組成物は、(A)成分及び(B)成分を含む乳化物を水系化しエマルジョンを得た後、当該エマルジョンに(C)成分を添加することで得てもよい。(D)成分は上記製造方法のいずれの段階で含めてもよいが、(A)成分と(B)成分を混合した後に(D)成分を加えて分散させることが好ましい。さらに、必要に応じて添加される(E)成分も上記製造方法のいずれの段階で含めてもよい。乳化方法としては、強制乳化法、転相乳化法のいずれの方法を採用してもよい。乳化条件も特に限定されず、例えば、温度が通常、5~70℃程度、好ましくは10~50℃程度である。また、時間が通常、1~24時間程度、好ましくは1~12時間程度である。なお、乳化前に、(A)成分及び(B)成分の混合物をプレ乳化させてもよい。
【0051】
乳化に用いる装置として、プロペラミキサー、タービンミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超音波等が例示される。これらの装置を単独で用いてもよく、適宜併用して用いてもよい。
【0052】
<積層体>
基材及び本開示の水系組成物の硬化物を有する積層体を本開示では提供する。また、本開示において基材の少なくとも片面に塗工した本開示の水系組成物を活性エネルギー線及び/又は熱で硬化する工程を含む、積層体の製造方法も本開示では提供する。
【0053】
本開示の水系組成物を塗工する基材として、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材等が例示される。プラスチック基材として、熱可塑性プラスチック基材、熱硬化性プラスチック基材等が例示される。熱可塑性プラスチック基材として、汎用プラスチック基材、エンジニアリングプラスチック基材等が例示される。汎用プラスチック基材として、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ビニル系、ポリスチレン系等が例示される。オレフィン系として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン等が例示される。ポリエステル系として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が例示される。アクリル系として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が例示される。ビニル系として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が例示される。ポリスチレン系として、ポリスチレン(PS)樹脂、スチレン・アクリロニトリル(AS)樹脂、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル(ABS)樹脂等が例示される。エンジニアリングプラスチック基材として、汎用エンプラ、スーパーエンプラ等が例示される。汎用エンプラとして、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等が例示される。スーパーエンプラとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が例示される。熱硬化性プラスチック基材として、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示される。その他のプラスチック基材として、トリアセチルセルロース樹脂等が例示される。プラスチック基材は、上記した複数のプラスチックの共重合体であってもよい。本開示の基材は、上記した基材を複数含む多層であってもよい。また、基材は、表面処理(コロナ放電等)がなされているものであってよい。また、基材の片面あるいは両面に、本開示の水系組成物が形成する層との間にその他の層(例えば易接着層、アンカー層等)が設けられたものであってよい。基材は、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐薬品性等に優れることから、好ましくはポリエステル系であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。基材は、耐熱性、寸法安定性、機械的特性等に優れることから、好ましくはポリイミドである。基材の厚さの上限は、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、50、25、10μm等が例示され、下限は、275、250、225、200、175、150、125、100、75、50、25、10、1μm等が例示される。1つの実施形態において、基材の厚さは、好ましくは1~300μmであり、より好ましくは25~250μmであり、さらにより好ましくは50~200μmであり、特に好ましくは50~150μmであり、さらに特に好ましくは75~125μmである。
【0054】
プラスチック基材は、プラスチックの原料である樹脂をシート状に成形した未延伸樹脂フィルム、又はこの未延伸樹脂フィルムを延伸した延伸樹脂フィルム等を使用できる。
【0055】
未延伸樹脂フィルムは、例えば、溶融押出法、溶融流涎法、カレンダー法等により樹脂材料をシート状に成形することにより得られる。また、成形方法としては、溶融押出法が好ましい。溶融押出法に使用される成形装置としては、例えば一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。溶融条件としては、特に限定されず、例えば、温度が通常200℃~300℃程度である。
【0056】
延伸樹脂フィルムは、上記未延伸樹脂フィルムを長手方向(流れ方向)又は短手方向に延伸することにより得られる。延伸樹脂フィルムとしては、未延伸樹脂フィルムを長手方向(流れ方向)に延伸したものが好ましい。
【0057】
未延伸樹脂フィルムを長手方向に延伸する方法としては、特に限定されず、例えば、予め加熱したロールによって2~5倍に延伸する方法等が挙げられる。また、上記ロール温度としては、特に限定されず、通常は80~120℃程度であり、好ましくは80~100℃程度である。
【0058】
未延伸樹脂フィルムを短手方向に延伸する方法としては、特に限定されず、例えば、クリップ止め等の方法によって端部を把持し、熱風ゾーンに導いて2.5~5倍に延伸する方法等があげられる。熱風ゾーンの温度としては、特に限定されず、通常は70~140℃程度であり、好ましくは80~120℃程度である。
【0059】
本開示の水系組成物を基材上に塗工する方法として、ロールコーター塗工、リバースロールコーター塗工、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が例示される。なお、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の質量が0.01~20g/m2になる範囲であり、好ましくは0.025~10g/m2であり、より好ましくは0.05~5g/m2である。硬化物の厚さの上限は、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、0.02μm等が例示され、下限は、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、0.02、0.01μm等が例示される。硬化物の厚さは、好ましくは0.01~50μmであり、より好ましくは0.01~10μmであり、さらにより好ましくは0.01~1μmであり、特に好ましくは0.02~1μmである。
【0060】
活性エネルギー線照射により硬化させる方法として、150nm波長域以上450nm波長域以下の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ又はLED等を用いて、10mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下程度照射する方法が例示される。活性エネルギー線照射前は、必要に応じて加熱を行って乾燥させてもよい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って完全に硬化させてもよい。加熱の条件として、60~150℃程度で、30秒~30分程度が例示され、好ましくは70~130℃で、50秒~10分程度が考えられる。
【0061】
本開示の水系組成物を加熱により硬化させる方法における条件として、70~250℃で1~100分加熱する方法が例示される。加熱の回数、加熱下又は非加熱下における加圧の回数は特に限定されない。加熱方法は各成分の種類及び配合割合によって異なる。加熱方法の具体例として、70~180℃で、1~15分間加熱後、180~250℃(好ましくは200~250℃)で、5~90分間加熱処理することが例示され、当該加熱により硬化物を得ることができる。
【0062】
本開示の水系組成物は以下の(1)~(12)ように使用することが考えられる。本開示の水系組成物は、すなわち帯電防止用ハードコート剤として使用することが好ましいが、本開示の水系組成物が奏する効果を発揮できるような各種の用途に用いることも考えられる。
(1)本開示の水系組成物の硬化物、基材
(2)本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材
(3)本開示の水系組成物の硬化物、基材、粘着剤層
(4)本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材、粘着剤層
(5)防汚層、本開示の水系組成物の硬化物、基材
(6)防汚層、本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材
(7)防汚層、本開示の水系組成物の硬化物、基材、粘着剤層
(8)防汚層、本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材、粘着剤層
(9)低屈折率層、高屈折率層、本開示の水系組成物の硬化物、基材、
(10)低屈折率層、高屈折率層、本開示の水系組成物の硬化物、基材、粘着剤層
(11)低屈折率層、高屈折率層、本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材
(12)低屈折率層、高屈折率層、本開示の水系組成物の硬化物、プライマー層、基材、粘着剤層
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本開示の具体例を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は特記しない限り全て固形分質量基準である。
【0064】
本実施例において重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(GPC測定条件)
機種 :製品名「HLC-8220」(東ソー(株)製)
カラム :製品名「TSKgel SuperHM-L」(東ソー(株)製)×3本
展開溶剤:テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)
【0065】
<合成例1:水酸基価60mgKOH/g以下であるポリ(メタ)アクリレート(A-1)の合成>
温度計、撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体200g、オクチル酸スズ0.2g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PETA」ともいう。)268gを仕込んだ後、約1時間かけて、系内の温度を約80℃に昇温した。次いで、同温度において、反応系を3時間保持し、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、反応物(以下、「(A-1)成分」ともいう。)を得た。(A-1)成分の(メタ)アクリロイル基当量は173g/eq、重量平均分子量は1,560であった。
【0066】
<実施例1:水系組成物(1)の調製>
撹拌機、温度計、冷却器及び乾燥ガス導入管を備えた容量300mLの4つ口フラスコに(A-1)を固形分換算で100部、界面活性剤(B-1)(製品名「アミノイオンRE-1000L」、日本乳化剤(株)製)を1.55部固形分換算で配合した水分散の乳化物にPEDOT/PSS(C-1)(製品名「Orgacon ICP1010」、日本アグフアマテリアルズ(株)製)を0.9部固形分換算で配合し、水で希釈して、不揮発分30%の水系組成物(1)を調製した。
【0067】
<実施例2~5及び比較例1~6:水系組成物(2)~(5)及び(C1)~(C6)の調製>
実施例2~5及び比較例1~6は、表1及び表2に記載の組成に変更したことを除き、実施例1と同様の手法により行い、水系組成物(2)~(5)及び(C1)~(C6)を得た。
【0068】
<積層体の作製>
100μm膜厚のPETフィルム(東洋紡(株)製 コスモシャインA4100)上に、各実施例及び比較例に記載されている水系組成物を、硬化後の被膜の膜厚が1μmとなるようにバーコーター#3にて塗布し、80℃で2分間乾燥させて水を蒸発させた後、200℃の熱処理をし、熱硬化フィルムを作成し、積層体を得た。
【0069】
<性能評価(1):保存安定性>
40℃の保温庫に各実施例及び比較例の水系組成物を保管し、その外観を観察することで、粒子径の肥大化が起こるまでの日数を測定した。当該日数を下記基準にて評価した。
AAA:90日以上肥大化が起きなかった。
AA:30日以上90日未満の間に肥大化した。
A:10日以上30日未満の間に肥大化した。
B:10日未満で肥大化した。
【0070】
<性能評価(2):耐擦傷性>
各実施例及び比較例の積層体を市販の測定装置(製品名「平面摩耗試験機」、(株)大栄科学精機製作所製)にセットし、スチールウール(番手「#0000」、等級「極細」、日本スチールウール(株)製)を用いて、硬化物表面を1kg荷重で1000回往復擦傷した。下記の基準に従って、できた傷の本数から積層体の耐擦傷性を評価した。なお、積層体それぞれにつき4回測定を行い、その平均の数値で評価した。
AAA:0本
AA:0本超5本以下
A:5本超10本以下
B:10本超20本以下
C:20本超
【0071】
<性能評価(3):表面抵抗試験>
積層体の表面抵抗を、市販抵抗率計(三菱化学(株)製、製品名「ハイレスタMCP-HT-450」)を用い、JIS K 6911に準じ、印加電圧500Vで測定した。測定値について、下記基準に従って評価した。
A:1×1010Ω/□以下
B:1×1010Ω/□超
【0072】
【0073】
【0074】
表1及び表2中の用語の意味は下記のとおりである。なお、表中の数値は固形分換算の数値を記載している。
(A-1):合成例1で得たポリ(メタ)アクリレート(水酸基価:0.8mgKOH/g、粘度:40,000、(メタ)アクリロイル基数:10)
(A-2):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(製品名「Miramer M600」、MIWON社製、水酸基価:5mgKOH/g、粘度:5,410、(メタ)アクリロイル基数:5~6)
(A-3):ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「NKエステルA-9550W」、新中村化学工業(株)製、水酸基価:44mgKOH/g、粘度:6,820、(メタ)アクリロイル基数:5~6)
(A-C1):ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(製品名「NKエステルA-9570W」、新中村化学工業(株)製、水酸基価:98.5mgKOH/g、粘度:6,990、(メタ)アクリロイル基数:5~6)
(A-C2):2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(製品名「エポキシエステルM-600A」、共栄社化学(株)製、粘度:150~200、(メタ)アクリロイル基数:1)
(B-1):界面活性剤(製品名「アミノイオンRE-1000L」、日本乳化剤(株)製)
(C-1):PEDOT/PSS(製品名「Orgacon ICP1010」、日本アグフアマテリアルズ(株)製)
(C-C1):下記合成例2により得た四級アンモニウム塩構造含有ポリマー
※1:分散せず、測定することができなかった。
【0075】
<合成例2:四級アンモニウム塩構造含有ポリマーの合成>
撹拌装置、冷却管を備えた反応装置に、ヒドロキシエチルメタクリレートを130部、ε-カプロラクトンを1140部、及びオクチル酸スズを1.3部加え、150℃まで昇温し、6時間保温した後に冷却することにより、重量平均分子量5500のポリエステル構造含有単官能ビニルモノマーを得た。撹拌装置、冷却管を備えた反応装置に、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMC)を100部、前記ポリエステル構造含有単官能ビニルモノマーを60部、tert-ブチルメタアクリレート(t-BMA)を40部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を800部加え、90℃まで昇温した。次いで2,2´-アゾビス(メチルブチロニトリル)(AMBN)を8部及びPGMを32部加え、重合反応を開始、100℃で6時間保温した後に冷却し、四級アンモニウム塩構造含有ポリマーの溶液(不揮発分20%)を得た。
【0076】
<実施例6:水系組成物(6)の調製>
実施例6の水系組成物として、実施例1と同一の水系組成物を使用した。
【0077】
<実施例7:水系組成物(7)の調製>
撹拌機、温度計、冷却器及び乾燥ガス導入管を備えた容量300mLの4つ口フラスコに(A-1)を100部、界面活性剤(B-1)(製品名「アミノイオンRE-1000L」、日本乳化剤(株)製)を1.55部、固形分換算で配合の水分散の乳化物にPEDOT/PSS(C-1)(製品名「Orgacon ICP1010」、日本アグフアマテリアルズ(株)製)を0.9部固形分換算で配合し、エタノールを2.05部配合し、不揮発分30%の水系組成物を調製した。水系溶媒中の水の含有量は、水系溶媒100質量%に対して98質量%であった。
【0078】
<実施例8~9及び比較例7:水系組成物(8)~(9)及び(C7)の調製>
実施例8~9及び比較例7は、水系溶媒中の水の含有量を水系溶媒100質量%に対してそれぞれ90質量%、81質量%、67質量%に変更したことを除き、実施例7と同様の手法により調製し、水系組成物(8)~(9)及び(C7)を得た。
【0079】
<性能評価(4):乳化安定性>
実施例6~9及び比較例7の水系組成物の外観を観察することで水系組成物を評価した。当該外観を下記基準にて評価した。
AA:乳化物全体が分散した状態
A:乳化物のうち少量がオイル状であり、大半が乳化分散された状態
B:乳化物のうち大半がオイル状であり、少量が乳化分散された状態
【0080】