(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20241001BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20241001BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20241001BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20241001BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/255
H01F41/02 D
H01F27/29 125
H01F27/24 E
H01F27/29 G
(21)【出願番号】P 2022029446
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克志
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178074(JP,A)
【文献】特開2017-183444(JP,A)
【文献】特開2022-002348(JP,A)
【文献】特開2015-035473(JP,A)
【文献】特開2015-115406(JP,A)
【文献】特開2020-074486(JP,A)
【文献】特開2019-004045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/255
H01F 41/02
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向での互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアと、
前記第1鍔部に設けられた、第1端子電極と、
前記第2鍔部に設けられた、第2端子電極と、
前記第1端子電極および前記第2端子電極に接続され、かつ前記巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる実装面と、前記実装面の反対側に向く天面と、前記実装面と前記天面とを連結するものであって、前記内側端面と、前記内側端面の反対側に向く外側端面と、前記内側端面と前記外側端面とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面および第2側面と、を有し、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の
前記実装面には、
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向である幅方向での中央部に盛り上がる隆起部が設けられ、
前記幅方向における前記隆起部の両側に前記隆起部より低い肩部が形成され、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記巻芯部の前記軸線方向での端部を位置させる内側端面には
、前記巻芯部の前記幅方向の全域にわたって延びる凹部が設けられ、
前記凹部は前記巻芯部の中心軸線を通りかつ前記実装面と前記天面とが対向する方向である高さ方向に延びる面に関して面対称形状とされ、前記巻芯部の前記軸線方向での端部であって、少なくとも前記隆起部側の部分は、
前記幅方向の全域にわたって前記凹部内に位置し
ながら、前記内側端面に食い込んだ状態にある、
コイル部品。
【請求項2】
前記巻芯部と前記内側端面との交差部分にはアール面が形成され、前記実装面側のアール面を規定する曲率半径は前記天面側のアール面を規定する曲率半径より大きい、請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ワイヤにおける前記巻芯部から引き出されて前記第1端子電極および前記第2端子電極の各々にまで至る引き出し部と前記内側端面との間には、すき間が形成されている、請求項
1または
2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1端子電極および前記第2端子電極は、金属板からなり、
前記第1端子電極および前記第2端子電極は、それぞれ、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記実装面における前記隆起部および前記肩部に沿って延びる部分を有し、
前記第1端子電極および前記第2端子電極の各々において、実装基板との接続部分が前記隆起部に沿って延びる部分によって与えられ、前記ワイヤとの接続部分が前記肩部に沿って延びる部分によって与えられる、
請求項
1ないし
3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記隆起部の頂面の
前記幅方向での両端部には、アール面が形成されている、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記隆起部と前記肩部とが交差する部分には、アール面が形成されている、請求項
4または
5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記隆起部の幅方向での両端面には、勾配が付されている、請求項
4ないし
6のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項8】
前記隆起部の前記内側端面側の面には、勾配が付されている、請求項
4ないし
7のいずれかにに記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コアにワイヤを巻回した構造の巻線型のコイル部品に関するもので、特に、コアに備える鍔部と巻芯部との連結部分の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2021-39961号公報(特許文献1)には、鍔部の上面の幅方向の中央部に盛り上がる隆起部を設けたコアが記載されている。
図12(B)には、特許文献1に記載されたコア51が模式的に示されている。
【0003】
図12(B)を参照して、コア51は、軸線方向AXに延びる巻芯部52ならびに巻芯部52の軸線方向AXでの互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部53および第2鍔部54を有する。
【0004】
第1鍔部53および第2鍔部54は、それぞれ、実装時において実装基板側に向けられる実装面55および56と、実装面55および56の反対側に向く天面57および58と、実装面55および56と天面57および58とを連結するものであって、巻芯部52の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面59および60と、内側端面59および60の反対側に向く外側端面61および62と、内側端面59および60と外側端面61および62とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面63および64ならびに第2側面65および66と、を有する。
【0005】
特許文献1では、天面57および58の軸線方向AXに直交する方向での中央部に盛り上がる隆起部67が設けられ、隆起部67の両側に隆起部67より低い肩部68が形成されている。より具体的には、鍔部53および54の第1側面63および64と第2側面65および66とがそれぞれ対向する方向を幅方向WDとしたとき、天面57および58の幅方向WDでの中央部に盛り上がる隆起部67が設けられ、隆起部67の幅方向WDにおける両側に隆起部67より低い肩部68が形成されている。
【0006】
コア51は、フェライトなどの粉体を、対をなすパンチとダイとを用いて圧縮成形し、得られた成形体を焼成することによって得られる。必要に応じて、焼成後に、バリをとるため、バレル研磨が施されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12(A)には、
図12(B)に示したコア51を成形するために用いられるパンチ69が示されている。
図12(A)において、パンチ69は、その作用面を上方に向けて図示されている。したがって、パンチ69は、図示された姿勢とは上下逆に向けられた状態で、成形用粉体が充填されたダイ(図示せず。)の上方からダイに向かって下降することによって成形を達成する。
【0009】
図12(A)に示すように、パンチ69には、成形されるべきコア51の隆起部67に対応する部分(隆起部対応部)67a、肩部68に対応する部分(肩部対応部)68aおよび巻芯部52に対応する部分(巻芯部対応部)52aが、それぞれ所定の高さ位置をもって設けられている。ここで、パンチ69における隆起部対応部67aおよび肩部対応部68aと、巻芯部対応部52aと、の接続部に注目すると、そこには、肉薄部70が存在することがわかる。肉薄部70は、隆起部67を成形しようとすることの必然の結果として形成されたものであると言える。
【0010】
肉薄部70は、線接触部を形成するにすぎず、極めて肉薄であり、微小な隙間を形成することすらある。そのため、隆起部対応部67aおよび肩部対応部68aと、巻芯部対応部52aと、の接続部の断面が極めて小さく、機械的強度が極めて低い。したがって、パンチ69はコア51の成形時の圧力によって変形しやすく、肉薄部70において破断が生じることもあり得る。
【0011】
そこで、この発明の目的は、鍔部に隆起部を備えながらも、成形用のパンチに脆弱な部分を設ける必要のないコアを備えるコイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、軸線方向に延びる巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向での互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアと、第1鍔部に設けられた、第1端子電極と、第2鍔部に設けられた、第2端子電極と、第1端子電極および第2端子電極に接続され、かつ巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、を備える、コイル部品に向けられる。
【0013】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる実装面と、実装面の反対側に向く天面と、実装面と天面とを連結するものであって、内側端面と、内側端面の反対側に向く外側端面と、内側端面と外側端面とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面および第2側面と、を有する。
第1鍔部および第2鍔部の各々の実装面には、第1側面と第2側面とが対向する方向である幅方向での中央部に盛り上がる隆起部が設けられ、幅方向における隆起部の両側に隆起部より低い肩部が形成されている。
【0014】
この発明において、前述した技術的課題を解決するため、第1鍔部および第2鍔部の各々の巻芯部の軸線方向での端部を位置させる内側端面には、巻芯部の上記幅方向の全域にわたって延びる凹部が設けられ、凹部は巻芯部の中心軸線を通りかつ実装面と天面とが対向する方向である高さ方向に延びる面に関して面対称形状とされ、巻芯部の軸線方向での端部であって、少なくとも隆起部側の部分は、幅方向の全域にわたって凹部内に位置しながら、内側端面に食い込んだ状態にあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、鍔部に隆起部を備えていても、巻芯部の軸線方向での端部が内側端面に食い込んだ状態にあるコアを備えているので、コアを成形するためのパンチにおいて、隆起部対応部および肩部対応部と、巻芯部対応部と、の間で十分な重なりを持たせることができ、これら部分間の接続部の断面を比較的大きくすることができる。したがって、パンチの機械的強度を高めることができ、パンチがコアの成形時に圧力によって変形しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品1の外観を、実装面7および8側から示す底面図である。
【
図3】
図1に示したコイル部品1の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す正面図である。
【
図4】
図2の線A-Aに沿うコイル部品1の断面図である。
【
図5】
図1に示したコイル部品1に備えるコア5の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
【
図6】
図5に示したコア5の外観を、実装面7および8側から示す底面図である。
【
図7】
図6の線B-Bに沿うコア5の断面図である。
【
図8】この発明の第2の実施形態によるコイル部品に備えるコア35の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
【
図9】
図5に示したコア5または
図8に示したコア35の成形工程を模式化して説明するためのもので、(A)はパンチP1を示す斜視図であり、(B)は(A)に示したパンチP1によって成形されるコアC2を示す斜視図である。
【
図10】コアの成形工程の第1の変形例を説明するための
図9に相当する図である。
【
図11】コアの成形工程の第2の変形例を説明するための
図9に相当する図である。
【
図12】特許文献1に記載されたコア51の成形工程を説明するための
図9に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし
図7を参照して、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1について説明する。
【0018】
コイル部品1は、軸線方向AXに延びる巻芯部2ならびに巻芯部2の軸線方向AXでの互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部3および第2鍔部4を有する、ドラム状のコア5を備えている。コア5は、たとえばフェライト、フェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂、またはアルミナのような非磁性体などから構成される。巻芯部2は、図示では横断面形状がほぼ四角形状であるが、その他、六角形状などの多角形状、円形状、楕円形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0019】
第1鍔部3は、実装時において実装基板側に向けられる実装面7と、実装面7の反対側に向く天面9と、実装面7と天面9とを連結するものであって、巻芯部2側に向きかつ巻芯部2の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面11と、内側端面11の反対側に向く外側端面13と、内側端面11と外側端面13とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面15および第2側面17と、を有している。
【0020】
同様に、第2鍔部4は、実装時において実装基板側に向けられる実装面8と、実装面8の反対側に向く天面10と、実装面8と天面10とを連結するものであって、巻芯部2側に向きかつ巻芯部2の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面12と、内側端面12の反対側に向く外側端面14と、内側端面12と外側端面14とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面16および第2側面18と、を有している。
【0021】
コア5は、一例として、軸線方向AXでの寸法が3.5mm、第1側面15および16と第2側面17および18とが対向する方向である幅方向WDでの寸法が2.6mm、実装面7および8と天面9および10とが対向する方向である高さ方向HDでの寸法が1.4mmとされる。
【0022】
コイル部品1は、たとえば、コモンモードチョークコイルを構成するもので、コア5の巻芯部2に巻回される第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を備えている。コモンモードチョークコイルでは、周知のように、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が巻芯部2のまわりで同方向に巻回されている。この実施形態では、
図4によく示されているように、巻芯部2のまわりで、第1ワイヤ21が巻芯部2に接するように巻回され、第2ワイヤ22が第1ワイヤ21の外周に接するように巻回されている。ワイヤ21および22は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる中心線材と、中心線材を覆うポリアミドイミド、ポリウレタンまたはポリエステルイミドのような電気絶縁性樹脂からなる絶縁被膜と、を備える。ワイヤ22および21としては、径20μm以上かつ100μm以下のものを用いることが好ましい。
【0023】
第1鍔部3には第1端子電極23が設けられ、第2鍔部4には第2端子電極24が設けられる。第1鍔部3には、2つの第1端子電極23が互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられ、第2鍔部4には、2つの第2端子電極24が互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられている。
【0024】
2つの第1端子電極23を互いに区別するため、一方の第1端子電極には参照符号「23A」を付し、他方の第1端子電極には参照符号「23B」を付し、また、2つの第2端子電極24を互いに区別する場合には、一方の第2端子電極には参照符号「24A」を付し、他方の第2端子電極には参照符号「24B」を付す。
【0025】
第1ワイヤ21の第1端部および第2端部は、それぞれ、第1端子電極23Aおよび第2端子電極24Bに熱圧着によって接続される。第2ワイヤ22の第1端部および第2端部は、それぞれ、第1端子電極23Bおよび第2端子電極24Aに熱圧着によって接続される。
【0026】
第1鍔部3の外側端面13には、当該外側端面13と第1側面15とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条25および当該外側端面13と第2側面17とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条26が設けられる。
【0027】
さらに、第1鍔部3の外側端面13には、第1凸条25と第2凸条26との間に、第3凸条27が設けられる。
【0028】
同様に、第2鍔部4の外側端面14には、当該外側端面14と第1側面16とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条25および当該外側端面14と第2側面18とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条26が設けられ、第1凸条25と第2凸条26との間に、第3凸条27が設けられる。
【0029】
第1凸条25および第2凸条26は、一例として、幅方向寸法が0.2mm、突出高さが0.1mmとされる。第3凸条43は、一例として、幅方向寸法が0.4mm、突出高さが0.1mmとされる。
【0030】
前述した第1端子電極23および第2端子電極24は、第1凸条25および第2凸条26の突出高さ以下の厚みを有する金属板からなることが好ましい。端子電極23および24を構成する金属板としては、たとえば、素体が銅からなり、その外側に向く面にニッケルおよび錫の順にめっきを施したものが用いられる。第1端子電極23は、第1鍔部3の外側端面13における第1凸条25、第2凸条26および第3凸条27のいずれもが設けられていない領域に沿って配置されかつ接着剤を介して第1鍔部3に固着される固着部28を有する。同様に、第2端子電極24は、第2鍔部4の外側端面14における第1凸条25、第2凸条26および第3凸条27のいずれもが設けられていない領域に沿って配置されかつ接着剤を介して第2鍔部4に固着される固着部28を有する。
【0031】
図1および
図5などによく示されているように、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の実装面7および8には、幅方向WDの中央部に盛り上がる隆起部29が設けられ、隆起部29の幅方向における両側に隆起部29より低い肩部30が形成されている。なお、隆起部が設けられる面は、特許文献1に記載のものでは天面57および58であったが、この実施形態では、実装面7および8であり、この点で、特許文献1の場合とは異なっている。
【0032】
第1端子電極23および第2端子電極24は、それぞれ、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の実装面7および8における隆起部29および肩部30に沿ってS字状に湾曲して延びる部分を有する。
【0033】
第1端子電極23および第2端子電極24の各々において、実装基板(図示せず。)との接続部分が隆起部29に沿って延びる部分31によって与えられ、ワイヤ21および22との接続部分が肩部30に沿って延びる部分32によって与えられる。
【0034】
第1鍔部3および第2鍔部4の各々の内側端面11および12には、
巻芯部2の幅方向WDの全域にわたって延びる凹部33が設けられる。
図5および図6によく示されているように、凹部33は巻芯部2の中心軸線を通りかつ実装面7と天面9とが対向する方向または実装面8と天面10とが対向する方向である高さ方向に延びる面に関して面対称形状とされる。巻芯部2の軸線方向AXでの端部であって、少なくとも隆起部29側の部分は、
幅方向WDの全域にわたって凹部33内に位置し、内側端面11および12に食い込んだ状態とされる。
【0035】
このような構成において、前述したように、ワイヤ21および22との接続部分が肩部30に沿って延びる部分32によって与えられると、
図2によく示されているように、ワイヤ21および22における巻芯部2から引き出されて第1端子電極23および第2端子電極24の各々にまで至る引き出し部と、鍔部3および4の内側端面11および12と、の間にすき間34が形成される。このすき間34によって、実装基板への接続のためのソルダーペーストに含まれるフラックスがワイヤ21および22の引き出し部に濡れ広がらないようにすることができ、ワイヤ21および22、ひいてはコイル部品1の品質を低下させる原因を低減することができる。
【0036】
図4および
図7によく示されているように、巻芯部2と鍔部3および4の内側端面11および12の各々との交差部分にはアール面が形成される。ここで、実装面7および8側のアール面R1を規定する曲率半径は天面9および10側のアール面R2を規定する曲率半径より大きくされることが好ましい。これによって、巻芯部2でのワイヤ21および22を巻回し得る直線部を減らすことなく、アール面R1での曲率半径を大きくすることができる。また、コイル部品1を実装後に、温度変化によってコア5と実装基板の熱膨張差が発生し、鍔部3および4の各々の隆起部29を互いに外側に開く力が加わることがある。このような場合、巻芯部2と鍔部3および4との連結部分に応力が集中する懸念がある。本実施形態のように曲率半径を大きくすることで、応力集中を緩和することができ、コア5の強度を高めることができる。
【0037】
図5によく示されているように、隆起部29の頂面の幅方向WDでの両端部には、たとえば曲率半径0.1mm以上のアール面R3が形成されていることが好ましい。この構成によれば、コア5の成形時に良好な離型性を得ることができるばかりでなく、端子電極23および24をコア5に取り付ける際に、端子電極23および24を構成する金属板と隆起部29とを密着させることが容易になり、端子電極23および24をコア5に対して位置決めすることが容易になる。
【0038】
また、
図5によく示されているように、隆起部29と肩部30とが交差する部分には、アール面R4が形成されていることが好ましい。この構成によっても、端子電極23および24をコア5に取り付ける際に、端子電極23および24を構成する金属板と隆起部29とを密着させることが容易になり、端子電極23および24をコア5に対して位置決めすることが容易になる。
【0039】
また、
図5によく示されているように、隆起部29の幅方向WDでの両端面には、勾配S1が付されていることが好ましい。この構成によっても、端子電極23および24をコア5に取り付ける際に、端子電極23および24を構成する金属板と隆起部29とを密着させることが容易になり、端子電極23および24をコア5に対して位置決めすることが容易になる。また、コア5の成形時に良好な離型性を得ることができ、コア5内のクラックを発生しにくくすることができる。
【0040】
また、
図7によく示されているように、隆起部29の内側端面11および12側の各面には、勾配S2が付されていることが好ましい。この構成によれば、コア5の成形時に良好な離型性を得ることができ、コア5内のクラックを発生しにくくすることができる。
【0041】
図8は、この発明の第2の実施形態によるコイル部品に備えるコア35の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
図8は
図5に相当している。
図8において、
図5に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0042】
第2の実施形態に係るコア35は、第1の実施形態に係るコア5と比較して、隆起部29の頂面に溝36が設けられ、隆起部29の頂面が幅方向WDに2分割されていることを特徴としている。
【0043】
この構成によれば、
図1および
図2に示したように、第1鍔部3に、2つの第1端子電極23Aおよび23Bが互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられ、第2鍔部4に、2つの第2端子電極24Aおよび24Bが互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられているとき、2つの第1端子電極23Aおよび23B間の沿面距離、ならびに2つの第2端子電極24Aおよび24B間の沿面距離をより長くすることができ、電気的絶縁の信頼性を高めることができる。また、溝36に、実装工程でのリフローはんだに含まれるフラックスを溜めることができるので、フラックスの濡れ広がりを生じにくくすることができる。
【0044】
以下、
図9ないし
図13をそれぞれ参照して、種々の形態のコアについての成形工程で用いるパンチおよびそれによって得られるコアについて説明する。なお、
図9ないし
図13において、前述した
図12の場合と同様、(A)にパンチが図示され、(B)に(A)に示したパンチによって得られる成形体としてのコアが図示され、また、(A)に示したパンチは、その作用面を上方に向けて図示されている。
【0045】
図9(B)に示したコアC1は、
図5に示したコア5および
図8に示したコア35と基本的構造が同じである。すなわち、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の実装面7および8には、幅方向WDでの中央部に盛り上がる隆起部29が設けられ、隆起部29の幅方向WDにおける両側に隆起部29より低い肩部30が形成されている。また、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の巻芯部2の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面11および12には凹部33が設けられ、巻芯部2の軸線方向AXでの端部は、凹部33内に位置し、内側端面11および12に食い込んだ状態にある。
【0046】
一方、
図9(A)に示したパンチP1は、隆起部対応部29a、肩部対応部30aおよび巻芯部対応部2aに加えて、凹部対応部33aを有している。ここで、
図12(A)に示したパンチ69と比較すると、
図12(A)に示したパンチ69では、隆起部対応部67aおよび肩部対応部68aと、巻芯部対応部52aと、の接続部には、極めて薄い肉薄部70が存在しているのに対し、
図9(A)に示したパンチP1では、隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の接続部には、凹部対応部33aが割り込んでいるので、隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の間で十分な重なりを持たせることができる。したがって、パンチP1の機械的強度を高めることができる。
【0047】
次に、
図10(B)に示したコアC2は、
図9(B)に示したコアC1と比較して、隆起部29の幅方向WDの寸法がより小さくされている。
図9(B)に示したコアC1では、隆起部29の幅方向WDの寸法が巻芯部2の幅方向WDの寸法と同じでであったが、
図10(B)に示したコアC2では、隆起部29の幅方向WDの寸法が巻芯部2の幅方向WDの寸法より小さくされている。
【0048】
一方、
図10(A)に示したパンチP2は、隆起部対応部29a、肩部対応部30a、巻芯部対応部2aおよび凹部対応部33aを有している。隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の接続部には、凹部対応部33aが割り込んでいるので、隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の間で十分な重なりを持たせることができる。したがって、パンチP2の機械的強度を高めることができ、パンチP2がコアC2の成形時に圧力によって変形しにくくすることができる。
【0049】
次に、
図11(B)に示したコアC3は、
図9(B)に示したコアC1と比較して、隆起部29の幅方向WDの寸法がより大きくされている。
図9(B)に示したコアC1では、隆起部29の幅方向WDの寸法が巻芯部2の幅方向WDの寸法と同じでであったが、
図11(B)に示したコアC3では、隆起部29の幅方向WDの寸法が巻芯部2の幅方向WDの寸法より大きくされている。
【0050】
一方、
図11(A)に示したパンチP3は、隆起部対応部29a、肩部対応部30a、巻芯部対応部2aおよび凹部対応部33aを有している。隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の接続部には、凹部対応部33aが割り込んでいるので、隆起部対応部29aおよび肩部対応部30aと、巻芯部対応部2aと、の間で十分な重なりを持たせることができる。したがって、パンチP3の機械的強度を高めることができ、パンチP3がコアC3の成形時に圧力によって変形しにくくすることができる。
【0051】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の実施形態が可能である。
【0052】
たとえば、図示した実施形態では、隆起部29が鍔部3および4の実装面7および8に設けられたが、隆起部は、ダイに向かって動作するパンチによって成形されるものである。したがって、鍔部3および4の実装面7および8と天面9および10とを挟むようにプレスする成形方法の場合には、隆起部は実装面7および8に設けられても、天面9および10に設けられてもよい。第1側面15および16と第2側面17および18とを挟むようにプレスする成形方法の場合には、隆起部は第1側面15および16の一方と第2側面17および18の一方に設けられてもよい。
【0053】
したがって、隆起部は、鍔部の周囲のいずれの面に設けられてもよく、隆起部より低い肩部は、軸線方向に直交する方向における隆起部の両側に形成されればよい。鍔部の内側端面に設けられる凹部についても、巻芯部の軸線方向での端部であって、少なくとも隆起部側の部分を受け入れればよく、それによって、巻芯部が内側端面に食い込んだ状態にあればよい。
【0054】
また、コア5の第1鍔部3の天面9および第2鍔部4の天面10の間を連結するように、天板が設けられてもよい。天板はコア5に接着剤によって接合される。接着剤としては、たとえば熱硬化性のあるエポキシ樹脂が用いられる。接着剤の熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーのような無機フィラーが接着剤に添加されてもよい。天板の材料としては、フェライト、フェライト以外の非導電性材料、フェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などが用いられる。コア5および天板が双方とも磁性体から構成される場合、コア5および天板は閉磁路を構成する。天板に代えて、樹脂によるコーティングが施されてもよい。
【0055】
また、端子電極23および24は、金属板に代えて、鍔部3および4上に形成される導体膜によって構成されてもよい。この場合、たとえば、鍔部3および4の実装面7および8上には、銀ペーストの焼付けによって下地電極が形成され、鍔部3および4の外側端面13および14上には、銀の蒸着によって下地電極が形成され、これら下地電極上に銅、ニッケルおよび錫の順にめっきが施される。
【0056】
また、この発明が向けられるコイル部品は、図示された実施形態のようにコモンモードチョークコイルを構成するもの以外に、単一のコイルを構成するもの、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数も変更され得る。
【0057】
また、この発明に係るコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 コイル部品
2 巻芯部
3 第1鍔部
4 第2鍔部
5,35,C1~C3 コア
7,8 実装面
9,10 天面
11,12 内側端面
13,14 外側端面
15,16 第1側面
17,18 第2側面
21,22 ワイヤ
23,23A,23B 第1端子電極
24,24A,24B 第2端子電極
28 固着部
29 隆起部
30 肩部
31 隆起部に沿って延びる部分
32 肩部に沿って延びる部分
33 凹部
34 すき間
AX 軸線方向
WD 幅方向
R1,R2,R3,R4 アール面
S1,S2 勾配