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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 15/00 20160101AFI20241001BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20241001BHJP
   B60K 6/445 20071001ALN20241001BHJP
   B60W 10/08 20060101ALN20241001BHJP
   B60W 20/00 20160101ALN20241001BHJP
   H02P 101/15 20150101ALN20241001BHJP
   H02P 101/45 20150101ALN20241001BHJP
【FI】
F03D15/00
H02P9/00 F
H02P9/04 P
B60K6/445 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/00 900
H02P101:15
H02P101:45
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022032045
(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公開番号】P2023128017
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】小林 国浩
(72)【発明者】
【氏名】森下 聡
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-239715(JP,A)
【文献】特開2021-184223(JP,A)
【文献】特開2018-008559(JP,A)
【文献】特開2004-048866(JP,A)
【文献】豊田通商株式会社,平成28年度低炭素型3R技術・システム実証事業 HVユニットをリユーズした小型風力発電システムを構築する仕組み作り 報告書,日本,環境省,2017年03月,第1-19頁,ndlsearch.ndl.go.jp/en/books/R10000002-1028325994#bib
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/32
F03D 15/00
H02P 9/00
H02P 9/04
B60K 6/445
B60W 10/08
B60W 20/00
H02P 101/15
H02P 101/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードと、
第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
サンギヤ、リングギヤ及びプラネタリキャリアを有する遊星歯車機構と、
前記第1モータジェネレータおよび前記第2モータジェネレータの発電トルクを制御可能な制御部と、
を備える風力発電装置であって、
前記サンギヤには前記第1モータジェネレータが連結されており、
前記リングギヤには前記ブレードおよび前記第2モータジェネレータが連結されており、
前記第1モータジェネレータは前記第2モータジェネレータよりも起動トルクが小さいモータジェネレータであり、
前記制御部は、
前記ブレードから入力される入力トルクが所定値よりも小さい場合には、前記第1モータジェネレータを用いて発電し、
前記入力トルクが所定値よりも大きい場合には、前記第1モータジェネレータおよび前記第2モータジェネレータを用いて発電するように制御する、
風力発電装置。
【請求項2】
前記第2モータジェネレータの回転数と前記ブレードの回転数との比は固定であり、
前記第1モータジェネレータの回転数と前記ブレードの回転数との比は調整可能に構成されている、請求項に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記プラネタリキャリアに連結されているメカオイルポンプをさらに備え、
前記メカオイルポンプは、前記プラネタリキャリアの回転に応じて、前記風力発電装置の構成部品にオイルを供給可能に構成されている、請求項またはに記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記リングギヤが正回転し、前記サンギヤが逆回転している第1の状態と、
前記リングギヤ、前記プラネタリキャリア、前記サンギヤが正回転している第2の状態と、
の間で状態変化が可能に構成されており、
前記第2の状態では、第1モータジェネレータは正回転方向のトルクを発生している、請求項の何れか1項に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記第1モータジェネレータおよび前記第2モータジェネレータの発電トルクを制御可能な制御部と、
前記第1モータジェネレータおよび前記第2モータジェネレータの温度を測定可能な温度センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサで測定された温度が高くなることに応じて、前記発電トルクを低下させる、請求項の何れか1項に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記風力発電装置はハイブリッド車両用の装置であり、
前記リングギヤは車輪に連結可能に構成されており、
前記プラネタリキャリアはエンジンの出力軸に連結可能に構成されている、請求項の何れか1項に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータジェネレータ、変速装置、回転軸などを備えた風力発電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-336571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
循環型社会という考えから、風力発電以外の分野の部品を風力発電装置に応用することが考えられる。例えば、ハイブリッド車両のトランスアクセル部品は、モータ、変速装置、回転軸などを備えており、風力発電装置に転用することで、資源の有効活用につながる。本明細書は、持続可能な社会の実現に向けて、このような取り組みを促進するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、風力発電装置の製造方法に具現化される。この製造方法は、ハイブリッド車両用の、駆動用モータジェネレータを含むトランスアクスルを用意する工程を備える。製造方法は、用意されたトランスアクスルにおいて、駆動用モータジェネレータに連結されている回転軸に、ブレードを取り付ける工程を備える。
【0006】
上記した製造方法によると、ハイブリッド車両に搭載されたトランスアクスルを、風力発電装置の一部として利用することができる。トランスアクスルは大量生産される車両部品のため、風力発電用の部品に比して大変安価である。風力発電装置を安価に提供することが可能となり、再生可能エネルギーのさらなる普及を促進することができる。
【0007】
また本明細書が開示する技術は、風力発電装置に具現化される。この風力発電装置は、ブレードと、第1モータジェネレータと、第2モータジェネレータと、サンギヤ、リングギヤ及びプラネタリキャリアを有する遊星歯車機構と、を備える。サンギヤには第1モータジェネレータが連結されている。リングギヤにはブレードおよび第2モータジェネレータが連結されている。
【0008】
上記した風力発電装置によると、ブレードから入力される駆動トルクを、遊星歯車機構によって、第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとの間で分配することが可能となる。これにより、第1および第2モータジェネレータの全体での発電効率を最適化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ハイブリッド車両2のハイブリッドユニット8が、風力発電装置50の一部として利用される様子を模式的に示す。
図2】ハイブリッドユニット8を搭載したハイブリッド車両2の構成を模式的に示す図。
図3】ハイブリッドユニット8を利用した風力発電装置50の構成を模式的に示す図。
図4】第2モータジェネレータ14で発電している状態の共線図の一例。
図5】第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14で発電している状態の共線図の一例。
図6】プラネタリロック状態における共線図の一例。
図7】風力発電装置50のパワーカーブの一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態において、トランスアクスルの回転軸は、トランスアクスルがハイブリッド車両に搭載されるときに、ハイブリッド車両の車輪に接続される軸であってもよい。このような構成によると、ハイブリッド車両における車輪を用いた発電と同様に、風力発電装置においてもブレードの回転によって効率よく発電をすることができる。但し、他の実施形態として、トランスアクスルの回転軸は、トランスアクスルがハイブリッド車両に搭載されているときに、エンジンに接続されるエンジン軸であってもよい。
【0011】
本技術の一実施形態において、トランスアクスルは、遊星歯車機構をさらに備えてもよい。この場合、トランスアクスルの回転軸は、遊星歯車機構を介して駆動用モータジェネレータに接続されていてもよい。
【0012】
上記した実施形態において、トランスアクスルは、発電用モータジェネレータをさらに備えてもよい。この場合、トランスアクスルの回転軸は、遊星歯車機構を介して発電用モータジェネレータにも接続されていてもよい。このような構成によると、風力発電装置は、二つのモータジェネレータを用いて発電をすることができる。但し、トランスアクスルが二つのモータジェネレータを備える場合でも、風力発電装置は、一方のモータジェネレータのみを用いて発電をしてもよい。
【0013】
上記した実施形態において、遊星歯車機構は、発電用モータジェネレータに接続されているサンギヤと、駆動用モータジェネレータおよびブレードに接続されているリングギヤと、を有してもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、第2モータジェネレータの回転数とブレードの回転数との比は固定であってもよい。第1モータジェネレータの回転数とブレードの回転数との比は調整可能に構成されていてもよい。このような構成によると、第1モータジェネレータの回転数を任意の値に調整することができる。第1モータジェネレータのエネルギー変換効率を高めることが可能となる。
【0015】
本技術の一実施形態において、プラネタリキャリアに連結されているメカオイルポンプをさらに備えていてもよい。メカオイルポンプは、プラネタリキャリアの回転に応じて、風力発電装置の構成部品にオイルを供給可能に構成されていてもよい。このような構成によると、プラネタリキャリアを回転させることにより、風力発電装置の構成部品の冷却および潤滑を行うことが可能となる。
【0016】
本技術の一実施形態において、リングギヤが正回転し、サンギヤが逆回転している第1の状態と、リングギヤ、プラネタリキャリア、サンギヤが正回転している第2の状態と、の間で状態変化が可能に構成されていてもよい。第2の状態では、第1モータジェネレータは正回転方向のトルクを発生していてもよい。このような構成によると、第1モータジェネレータが正回転方向のトルクを発生することで、第1の状態から第2の状態に移行させることができる。第2の状態では、プラネタリキャリアを回転させることができるため、メカオイルポンプによってオイルを供給することが可能となる。
【0017】
本技術の一実施形態において、第1モータジェネレータおよび第2モータジェネレータの発電トルクを制御可能な制御部をさらに備えていてもよい。第1モータジェネレータは第2モータジェネレータよりも起動トルクが小さいモータジェネレータであってもよい。制御部は、ブレードから入力される入力トルクが所定値よりも小さい場合には、第1モータジェネレータを用いて発電し、入力トルクが所定値よりも大きい場合には、第1モータジェネレータおよび第2モータジェネレータを用いて発電するように制御してもよい。このような構成によると、定格出力を高くすることと、発電を開始するカットイン風速を低くすることとを両立することができる。発電効率を高めることが可能となる。
【0018】
本技術の一実施形態において、風力発電装置は、第1モータジェネレータおよび第2モータジェネレータの発電トルクを制御可能な制御部をさらに備えていてもよい。風力発電装置は、第1モータジェネレータおよび第2モータジェネレータの温度を測定可能な温度センサをさらに備えていてもよい。制御部は、温度センサで測定された温度が高くなることに応じて、発電トルクを低下させてもよい。このような構成によると、第1および第2モータジェネレータの温度を制御することができるため、発電効率を高めることや、モータジェネレータの寿命を長くすることが可能となる。
【0019】
本技術の一実施形態において、風力発電装置はハイブリッド車両用の装置であってもよい。リングギヤは車輪に連結可能に構成されていてもよい。プラネタリキャリアはエンジンの出力軸に連結可能に構成されていてもよい。このような構成によると、ハイブリッド車両に搭載された装置を、風力発電装置の一部として利用することができる。
【実施例
【0020】
(ハイブリッド車両2の構成)
先ず、ハイブリッド車両2のハイブリッドユニット8について説明する。図1に示すように、本実施例の風力発電装置50では、ハイブリッド車両2から取り出されたハイブリッドユニット8が利用されている。ハイブリッドユニット8は、ハイブリッド車両2において、車輪4に接続されたパワーユニットである。ハイブリッドユニット8は、トランスアクスル6と電力制御ユニット7とを有する。なおハイブリッドユニット8は新品であってもよい。
【0021】
図2に示すように、トランスアクスル6は、第2モータジェネレータ14と遊星歯車機構16をさらに備える。遊星歯車機構16は、エンジン軸10aと第1モータジェネレータ12との間に位置しており、エンジン軸10aは、遊星歯車機構16を介して第1モータジェネレータ12に接続されている。また、エンジン軸10aは、遊星歯車機構16を介して第2モータジェネレータ14にも接続されている。第1モータジェネレータ12は第2モータジェネレータ14よりも定格出力が小さく、起動トルクが小さいモータジェネレータである。なお図面では、第1モータジェネレータ12をMG1と表記し、第2モータジェネレータ14をMG2と表記する場合がある。
【0022】
遊星歯車機構16は、サンギヤ16sと、複数のプラネタリギヤ16pと、プラネタリキャリア16cと、リングギヤ16uとを有する。サンギヤ16sは、第1モータジェネレータ12に接続されている。複数のプラネタリギヤ16pは、サンギヤ16sの周囲に配置されており、サンギヤ16sに係合している。プラネタリキャリア16cは、複数のプラネタリギヤ16pを回転可能に支持しているとともに、エンジン軸10aに接続されている。リングギヤ16uは、複数のプラネタリギヤ16pの周囲に位置しており、複数のプラネタリギヤ16pに係合している。リングギヤ16uは、第1減速機構18を介して、第2モータジェネレータ14に接続されている。また、リングギヤ16uは、第2減速機構20を介して、車輪4の車軸4aに接続されている。なお、第2減速機構20と車軸4aとの間には、ディファレンシャルギヤ21が設けられている。
【0023】
トランスアクスル6は、メカオイルポンプ24をさらに備える。メカオイルポンプ24は、エンジン軸10aに連結されており、エンジン軸10aの回転によって駆動される。メカオイルポンプ24は、エンジン軸10aの回転によって駆動されることで、トランスアクスル6内の潤滑油を循環させる。これにより、トランスアクスル6の構成部品の各々にオイルを供給することが可能とされている。
【0024】
電力制御ユニット7は、トランスアクスル6に対して一体に設けられている。電力制御ユニット7は、第1インバータ26と、第2インバータ28と、DC-DCコンバータ30と、これらを制御するための制御部31と、を備える。制御部31は、PCU(パワー・コントロール・ユニット)であってもよい。第1インバータ26は、第1モータジェネレータ12と電気的に接続されている。制御部31は、第1インバータ26を介して第1モータジェネレータ12の発電トルクを制御することができる。第2インバータ28は、第2モータジェネレータ14と電気的に接続されている。制御部31は、第2インバータ28を介して第2モータジェネレータ14の発電トルクを制御することができる。
【0025】
第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の各々には、温度センサ61および62が備えられている。温度センサ61および62から出力される温度データは、制御部31に入力される。
【0026】
DC-DCコンバータ30は、第1インバータ26を介して第1モータジェネレータ12へ電気的に接続されているとともに、第2インバータ28を介して第2モータジェネレータ14へ電気的に接続されている。DC-DCコンバータ30には、ハイブリッド車両2のバッテリ40が電気的に接続されている。バッテリ40は、例えば複数のリチウムイオンセルを有しており、充放電可能に構成されている。ハイブリッド車両2において、DC-DCコンバータ30は、バッテリ40からの直流電力を昇圧して、第1インバータ26及び第2インバータ28に供給することができる。第1インバータ26は、DC-DCコンバータ30からの直流電力を交流電力に変換して、第1モータジェネレータ12に供給することができる。これにより、第1モータジェネレータ12は、例えばエンジン10を始動するために、バッテリ40からの供給電力によって動作することができる。同様に、第2インバータ28は、DC-DCコンバータ30からの直流電力を交流電力に変換して、第2モータジェネレータ14に供給することができる。これにより、第2モータジェネレータ14は、例えば車輪4を駆動するために、バッテリ40からの供給電力によって動作することができる。
【0027】
前述したように、第1モータジェネレータ12は、エンジン10によって駆動されることで、発電機として機能することもできる。この場合、第1インバータ26は、第1モータジェネレータ12からの交流電力を直流電力に変換して、DC-DCコンバータ30に供給する。そして、DC-DCコンバータ30は、第1インバータ26からの直流電力を降圧して、バッテリ40に供給することができる。一方、第2モータジェネレータ14は、ハイブリッド車両2を回生制動するために、発電機として機能することもできる。この場合、第2インバータ28は、第2モータジェネレータ14からの交流電力を直流電力に変換して、DC-DCコンバータ30に供給する。そして、DC-DCコンバータ30は、第2インバータ28からの直流電力を降圧して、バッテリ40に供給することができる。
【0028】
(風力発電装置50の構成)
次に、図1図3を参照して、ハイブリッドユニット8が利用された風力発電装置50について説明する。風力発電装置50は、ハイブリッドユニット8に加えて、ブレード52とパワーコンディショナー54とを備える。パワーコンディショナー54は、電力制御ユニット7に接続されており、外部の電力系統100と電力制御ユニット7との間に介在する。
【0029】
風力発電装置50を製造するときは、先ず、ハイブリッド車両2から、ハイブリッドユニット8が取り出される。次いで、取り出されたハイブリッドユニット8において、トランスアクスル6の車軸4aに、ブレード52が取り付けられる。これにより、サンギヤ16sに第1モータジェネレータ12が連結されており、リングギヤ16uに第2モータジェネレータ14およびブレード52が連結されている構造が完成する。なお、エンジン軸10aには何も接続されていない。このような構造では、第2モータジェネレータ14の回転数とブレード52の回転数との比は固定である。一方、第1モータジェネレータ12の回転数とブレード52の回転数との比は調整可能である。
【0030】
また電力制御ユニット7には、パワーコンディショナー54が電気的に接続される。第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14による発電電力は、電力制御ユニット7を介してパワーコンディショナー54に供給される。パワーコンディショナー54は、外部の電力系統100と系統連系することで、発電電力を外部の電力系統100へ供給することができる。なお、電力制御ユニット7には、パワーコンディショナー54に代えて、又は加えて、蓄電装置が接続されてもよい。また、ブレード52と車軸4aとの間には、必要に応じて、減速機、増速機又は変速機が設けられてもよい。
【0031】
(風力発電装置50の動作)
図4図6の共線図を用いて、風力発電装置50の動作を説明する。共線図は、サンギヤ回転数Ng、キャリア回転数Ne、リングギヤ回転数Nmの各々の回転速度の関係を示す図である。
【0032】
図4に、第2モータジェネレータ14で発電している状態の共線図の一例を示す。ブレード52の回転が車軸4aに入力されると、リングギヤ16uは、リングギヤ回転数Nmで正回転する。リングギヤ16uの回転は、第2モータジェネレータ14に伝達される。制御部31は、第2インバータ28を制御して第2モータジェネレータ14に発電トルクを印加する。これにより、第2モータジェネレータ14によって発電することができる。またサンギヤ16sはサンギヤ回転数Ngで逆回転するため、第1モータジェネレータ12は無負荷で逆回転する。そしてプラネタリキャリア16cのキャリア回転数Neは、ゼロとなる。すなわち、エンジン軸10aが疑似的にロックされた状態となる(領域R1参照)。
【0033】
図5に、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14で発電している状態の共線図の一例を示す。図4の発電状態から、第1モータジェネレータ12に正回転方向のトルクを発生させる。具体的には、第1インバータ26を制御して第1モータジェネレータ12に発電トルクを印加する。負回転状態の第1モータジェネレータ12に正回転方向のトルクを発生させるため、第1モータジェネレータ12が発電機として動作する。また、エンジン軸10aを正回転させる向きのトルクがサンギヤ16sに発生する。これにより、キャリア回転数Neが上昇する(領域R2参照)。なお、第1モータジェネレータ12と第2モータジェネレータ14との間の発電の分担量は、制御部31により両者に印加される発電トルクによって制御することができる。
【0034】
図6に、プラネタリロック状態における共線図の一例を示す。制御部31は、図4の状態から、第1インバータ26を介して第1モータジェネレータ12を力行動作させる。これにより、第1モータジェネレータ12が正回転し(領域R3参照)、キャリア回転数Neがさらに上昇する(領域R4参照)。そして図6に示すように、サンギヤ回転数Ng、キャリア回転数Ne、リングギヤ回転数Nmが同一となるまでキャリア回転数Neが上昇すると、プラネタリがロックされた状態となる。
【0035】
以上説明したように、風力発電装置50は、キャリア回転数Ne(すなわちエンジン軸10aの回転数)がゼロの状態(図4)から、キャリア回転数Neが最大となる状態(図6)の間で、任意の状態になるように変化することが可能とされている。換言すると、制御部31が第1モータジェネレータ12の回転速度を制御することによって、キャリア回転数Ne(すなわちエンジン軸10aの回転数)を調整することができる。キャリア回転数Neを高くするほど、メカオイルポンプ24から循環される潤滑油の流量を多くすることができる。従って、風力発電装置50の構成部品の冷却状態および潤滑状態に応じて、キャリア回転数Neを適宜に調整すればよい。
【0036】
(風力発電装置50の制御の具体例1)
図7に、風力発電装置50のパワーカーブの一例を示す。カットイン風速ISから予め定められた所定風速PSまでの間の領域A1では、制御部31は、第1モータジェネレータ12のみに発電トルクを印加する。これにより、第1モータジェネレータ12のみを用いて発電が行われる。一方、所定風速PSからカットアウト風速OSまでの間の領域A2では、制御部31は、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14に発電トルクを印加する。これにより、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の両方で発電が行われる。換言すると、ブレード52から入力される入力トルクが、所定風速PSで定まる所定トルクよりも小さい場合には、第1モータジェネレータ12で発電する。一方、入力トルクが所定トルクよりも大きい場合には、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の両方を用いて発電する。
【0037】
第1モータジェネレータ12は、第2モータジェネレータ14よりも起動トルクが小さいモータジェネレータである。従って、領域A1において第1モータジェネレータ12のみを用いることで、カットイン風速ISを小さくすることができる。また、領域A2において第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14を用いることで、定格出力ROを高くすることができる。発電効率を高めることが可能となる。
【0038】
(風力発電装置50の制御の具体例2)
制御部31は、温度センサ61および62から取得した温度データを監視している。そして、第1モータジェネレータ12の温度が、予め定められた所定温度まで上昇することに応じて、第1モータジェネレータ12に印加される発電トルクを低下させる。また、第2モータジェネレータ14の温度が所定温度まで上昇することに応じて、第2モータジェネレータ14に印加される発電トルクを低下させる。これにより、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の温度を所定温度以下に制御することができるため、発電効率を高めることや、モータジェネレータの寿命を長くすることが可能となる。
【0039】
また制御部31は、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の少なくとも一方の温度が所定温度まで上昇すると、第1モータジェネレータ12に正回転方向のトルクを発生させる。これにより、エンジン軸10aを回転させてメカオイルポンプ24を駆動させることができるため、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14を冷却することが可能となる。
【0040】
(効果)
以上のように、本実施例の風力発電装置50では、ハイブリッド車両2用のハイブリッドユニット8が、風力発電装置50の一部として利用されている。ハイブリッドユニット8は大量生産される車両部品のため、風力発電用の部品に比して大変安価である。風力発電装置50を安価に提供することが可能となり、再生可能エネルギーのさらなる普及を促進することができる。またハイブリッドユニット8は、風力発電用部品に比して入手性がよいメリットがある。またハイブリッドユニット8のメンテナンスには、蓄積されてきた車両のノウハウを流用できるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0041】
本明細書の風力発電装置50によると、ブレード52から入力される駆動トルクを、遊星歯車機構16によって、第1モータジェネレータ12と第2モータジェネレータ14との間で分配することが可能となる。第1モータジェネレータ12の回転数を、ブレード52の回転数とは独立して設定することができるため、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の最適な動作点での発電が可能となる。風力発電装置50の全体での発電効率を最適化することが可能となる。また、第1モータジェネレータ12および第2モータジェネレータ14の一方が故障した場合においても、他方で発電を行うことができる。故障に対する冗長性を持たせることが可能となる。
【0042】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で、技術的な有用性を持つものである。
【0043】
(変形例)
ブレード52の取り付け軸は、車軸4aに限られない。例えばトランスアクスル6のエンジン軸10aといった、第1モータジェネレータ12又は第2モータジェネレータ14に連結された他の回転軸に取り付けられてもよい。
【0044】
第2モータジェネレータ14は、駆動用モータジェネレータの一例である。第1モータジェネレータ12は、発電用モータジェネレータの一例である。図4および図5の状態は、第1の状態の一例である。図6の状態は、第2の状態の一例である。
【符号の説明】
【0045】
2:ハイブリッド車両 4a:車軸 6:トランスアクスル 10a:エンジン軸 12:第1モータジェネレータ 14:第2モータジェネレータ 16c:プラネタリキャリア 16s:サンギヤ 16:遊星歯車機構 16u:リングギヤ 16p:プラネタリギヤ 24:メカオイルポンプ 26:第1インバータ 28:第2インバータ 31:制御部 52:ブレード 61、62:温度センサ
図1
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図3
図4
図5
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図7