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  • 特許-廃却材管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】廃却材管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20241001BHJP
【FI】
G06Q10/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022072426
(22)【出願日】2022-04-26
(65)【公開番号】P2023161831
(43)【公開日】2023-11-08
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】西野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】滝瀬 真一郎
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0216978(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105260836(CN,A)
【文献】特開2010-191832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(200)の製造に必要な材料の種類、前記材料の組成、前記材料の重量、及び前記材料の用意に要した温室効果ガス排出量の各情報を含む材料受入データと、前記熱交換器の製造時に使用される消費電力及び消費ガス量の各情報を含むユーティリティデータと、前記熱交換器の完成品の状態、前記熱交換器の部品の状態、前記熱交換器を製造する際に発生する廃却材(210~215)の状態でのそれぞれの重量データと、を取得して管理する管理部(100)と、
前記熱交換器のろう付工程で使用されるろう付条件データ及び前記材料受入データを用いて、前記廃却材のうち前記ろう付工程後に発生するろう付後廃却材(215)の材料組成の変化を予測する予測部(110)と、
を含み、
前記管理部は、前記材料から前記熱交換器の部品(201~204)を製造する部品加工工程で発生する部品廃却材(210~213)、前記部品加工工程の後に前記部品を組み付ける組付工程で発生する組付後廃却材(214)、及び前記ろう付後廃却材を含む前記廃却材の量と、前記予測部で予測される材料組成と、に基づき、リアルタイムで前記各廃却材の材料組成とカーボンフットプリントを把握する、廃却材管理システム。
【請求項2】
前記予測部は、前記ろう付後廃却材に含まれるSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Tiのうちの少なくとも1つの変化量を予測する、請求項1に記載の廃却材管理システム。
【請求項3】
前記予測部は、前記ろう付条件データに含まれる入熱温度、風速、製品体格、及び炉内雰囲気に基づいて、前記ろう付後廃却材の材料組成を予測する、請求項1または2に記載の廃却材管理システム。
【請求項4】
前記管理部は、前記熱交換器の製造データを全て記録及び管理する一方、外部の要求に対しては公開可能な情報を開示する、請求項1に記載の廃却材管理システム。
【請求項5】
前記管理部は、ブロックチェーンを用いてデータの改ざん及び製造に関するデータの外部流出を防止する、請求項1に記載の廃却材管理システム。
【請求項6】
前記管理部は、前記熱交換器の製造データ、経理、及び前記カーボンフットプリントを一元管理する、請求項1に記載の廃却材管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃却材管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品単位でその生産にかかわる温室効果ガスの排出量を把握できる管理装置が、例えば特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-191832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、製品として熱交換器の製造を管理する場合、熱交換器の製造工場において、受入材料から部品加工によって発生する廃却屑や熱交換器の不良屑等の廃却材の材料組成を厳密に把握することとなる。また、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量に基づいてカーボンフットプリントを把握することとなる。
【0005】
しかし、熱交換器製造のろう付工程においては、ろう付の加熱条件によって、材料組成に変化が生じる。このため、ろう付工程後に発生する廃却材の組成を把握することが難しい。よって、ろう付工程後に発生する廃却材をリサイクルしようとしても、材料の要求成分範囲が厳格な熱交換器の材料に再びリサイクルするような水平リサイクルではなく、より低品位なダイキャスト材に活用するカスケードリサイクルに留まってしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、熱交換器の製造において発生する全ての廃却材の材料組成とカーボンフットプリントを把握することができる廃却材管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、廃却材管理システムは、熱交換器(200)の製造に必要な材料の種類、材料の組成、材料の重量、及び材料の用意に要した温室効果ガス排出量の各情報を含む材料受入データと、熱交換器の製造時に使用される消費電力及び消費ガス量の各情報を含むユーティリティデータと、熱交換器の完成品の状態、熱交換器の部品の状態、熱交換器を製造する際に発生する廃却材(210~215)の状態でのそれぞれの重量データと、を取得して管理する管理部(100)を含む。
【0008】
廃却材管理システムは、熱交換器のろう付工程で使用されるろう付条件データ及び材料受入データを用いて、廃却材のうちろう付工程後に発生するろう付後廃却材(215)の材料組成の変化を予測する予測部(110)を含む。
【0009】
管理部は、材料から熱交換器の部品(201~204)を製造する部品加工工程で発生する部品廃却材(210~213)、部品加工工程の後に部品を組み付ける組付工程で発生する組付後廃却材(214)、及びろう付後廃却材を含む廃却材の量と、予測部で予測される材料組成と、に基づき、リアルタイムで各廃却材の材料組成とカーボンフットプリントを把握する。
【0010】
これによると、ろう付工程において材料組成が変化した後のろう付後廃却材の材料組成を予測部によって予測することができる。したがって、熱交換器の製造において、材料組成が変化した後のろう付後廃却材を含む全ての廃却材の材料組成とカーボンフットプリントを把握することができる。また、ろう付後廃却材の材料組成を把握するための工程が不要になるので、当該工程に掛かるエネルギー消費の抑制に加え、CO排出量の抑制も可能である。
【0011】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る廃却材管理システムを示した図である。
図2】熱交換器の各工程で発生する廃却材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る廃却材管理システムは、製品として熱交換器を製造する熱交換器製造工場において、材料や製品、廃却材やユーティリティ管理を行う。
【0014】
図1に示されるように、廃却材管理システムは、管理部100及び予測部110を含む。管理部100及び予測部110は、例えば電子計算機として構成される。管理部100及び予測部110は、予め設計されたプログラムを実行することで、熱交換器を製造する際に発生する廃却材及びカーボンフットプリントを管理する。
【0015】
管理部100及び予測部110は、熱交換器製造工場に設置される。管理部100及び予測部110は、例えばICT(Information and Communication Technology)の環境に接続されることで、クラウド120にアクセス可能になっている。よって、遠隔でもデータの把握が可能になる。すなわち、グローバルの生産・廃却が遠隔地で把握可能である。
【0016】
また、熱交換器製造工場に設置された図示しない電子機器端末もクラウド120にアクセス可能になっている。これにより、管理部100及び予測部110や各電子機器端末は、クラウド120を介して、随時、熱交換器の製造に関するデータの送受信が可能になっている。
【0017】
管理部100及び予測部110や各電子機器端末は、例えば4Gや5G等の移動通信システムを利用してクラウド120にアクセスする。これにより、高速加工の膨大なデータでも高速通信によって熱交換器一個一個の紐付けが可能である。
【0018】
クラウド120は、例えば熱交換器の製造に関する全てのデータを記憶するクラウド・コンピューティングである。製造に関するデータは、例えば、製造データ、カーボンフットプリントのデータ、経理のデータ等である。経理のデータには、原価コストや製造時の加工コスト等のコストが含まれる。
【0019】
管理部100は、上記の製造データ、経理、及びカーボンフットプリントの各データを一元管理する。すなわち、管理部100は、複数の情報をクラウド120に集めて管理することで、各情報を効率良く活用できる状態を維持する。
【0020】
製造データは、熱交換器の生産活動におけるコスト、受け入れる材料の種類、各工程で発生する物の重量、投入されるエネルギー等のあらゆるデータを含む。製造データは、例えば、材料受入データ、ユーティリティデータ、重量データ、ろう付条件データ等の製造に関するデータを含む。
【0021】
材料受入データは、熱交換器の製造に必要な材料の種類、材料の組成、材料の重量、及び材料の用意に要した温室効果ガス排出量の各情報を含む。材料受入データは、例えば読み取り機器で識別マーク等が読み取られることで取得される。
【0022】
ユーティリティデータは、熱交換器の製造時に使用される消費電力及び消費ガス量の各情報や熱交換器製造工場で発生する温室効果ガス排出量の情報を含む。ユーティリティデータは、電力量計、ガス流量計、温度計等の計測器で随時取得される。
【0023】
重量データは、熱交換器の完成品の状態、熱交換器の部品の状態、熱交換器を製造する際に発生する廃却材の状態でのそれぞれの重量の情報を含む。重量データは、寸法測定器や重量計等の計測器で随時取得される。
【0024】
ろう付条件データは、入熱温度、風速、製品体格、及び炉内雰囲気等のろう付に関するデータを含む。ろう付条件データは、クラウド120に予めアップロードされている。
【0025】
管理部100は、材料受入データ、ユーティリティデータ、重量データを取得して管理する。これらのデータは、熱交換器の製造において各工程で随時更新されるデータである。管理部100は、熱交換器の製造データを全て記録及び管理する。
【0026】
一方、管理部100は、外部の要求に対しては公開可能な情報を開示する。例えば、外部からデータの透明性を要求されたときには、管理部100は公開可能なデータを外部に提供する。
【0027】
管理部100は、ブロックチェーン技術を用いてデータを管理する。すなわち、管理部100は、情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、暗号技術を用いて取引記録を分散的に処理及び記録する。これにより、管理部100は、データの改ざん及び製造に関するデータの外部流出を防止する。また、管理部100は、クラウド120上の製造ノウハウの外部流出を防止する。
【0028】
予測部110は、熱交換器の製造工程の中でろう付工程後に発生するろう付後廃却材の材料組成の変化を予測する。一連の製造工程で回収される廃却材の材料組成は、各廃却材の材料組成と各廃却材の総重量から計算することができる。例えば、第1の廃却材の重量が100kgでありZnを10%含み、第2の廃却材の重量が100kgでありZnを0%含む場合、各廃却材の総重量は200kgでありZnを5%含むと計算することができる。
【0029】
しかし、熱交換器製造のろう付工程では、ろう付加熱条件によって、材料組成に変化が生じる。このため、ろう付工程後に回収される廃却材の材料組成を予測する必要がある。そこで、予測部110は、例えば、対象とする熱交換器毎に、予め測定した参照用の材料組成データを用いて材料組成の変化を予測する。材料組成データは、クラウド120で管理され、必要に応じて更新される。以上が、廃却材管理システムの全体構成である。
【0030】
次に、図2を参照して、熱交換器製造における廃却材について説明する。図2に示されるように、熱交換器200は、おおまかに、材料受入工程、部品加工工程、組付工程、ろう付工程を経て完成する。
【0031】
材料受入工程では、チューブ、フィン、プレートヘッド、タンク等の各部品を製造するための材料をサプライヤより受け入れる。このとき、熱交換器製造工場は、受入材料のLot毎に、材料の種類、材料組成、購入量、材料を製造する上で要したCO排出量の各情報が紐づいた状態で受け入れる。材料の情報は、材料受入時にクラウド120に保存される。
【0032】
続いて、部品加工工程では、材料から熱交換器200の各部品を製造する。管理部100は、材料受入工程のデータと紐づいた状態で、製品として使用する正規部品と屑となった廃材量を管理する。
【0033】
例えば、熱交換器200を構成するチューブ201を部品Aとすると、素材から部品A1、A2、A3、・・・の複数の部品Aを熱交換器200毎に製造する。チューブ201の製造の際に発生する廃材A1、A2、A3、・・・等の廃却屑Aを部品廃却材210として回収する。
【0034】
フィン202を部品Bとすると、素材から部品B1、B2、B3、・・・の複数の部品Bを熱交換器200毎に製造する。フィン202の製造の際に発生する廃材B1、B2、B3、・・・等の廃却屑Bを部品廃却材211として回収する。
【0035】
プレートヘッダ203を部品Cとすると、素材から部品C1、C2、・・・の複数の部品Cを熱交換器200毎に製造する。プレートヘッダ203の製造の際に発生する廃材C1-1、C1-2、C1-3、C1-4、C2-1、C2-2、C2-3、C-4、・・・等の廃却屑Cを部品廃却材212として回収する。
【0036】
タンク204を部品Dとすると、素材から部品D1、D2、・・・の複数の部品Dを熱交換器200毎に製造する。タンク204の製造の際に発生する廃材D1-1、D1-2、D2-1、D2-2、・・・等の廃却屑Dを部品廃却材213として回収する。
【0037】
その他の部品についても同様に、管理部100は、随時、廃却屑を回収する。そして、管理部100は、随時、各部品201~204を含む完成品の重量、及び、部品加工工程で発生する部品廃却材211~213の重量を、材料受入工程のデータと紐づいた状態で管理する。
【0038】
この後、組付工程では、部品加工工程で製造した各部品201~204を組み付ける。この際、組み付け不良等により、廃却品(ASSY1)として組付後廃却材214が発生する。管理部100は、正規組付品の重量及び組付後廃却材214の重量を管理する。
【0039】
このとき、組付後廃却材214の廃却成分は、構成部品201~204の材料組成と構成重量で決まる。すなわち、組付後廃却材214は、各部品201~204から構成されると共に、各部品201~204を構成する部品で構成される。よって、組付後廃却材214の材料組成は、例えば、組付後廃却材214の重量に対してSiがX1%、FeがX2%、CuがX3%、MnがX4%、MgがX5%、CrがX6%、ZnがX7%、TiがX8%、というように決まる。また、組付後廃却材214の重量に対するCO排出量も導かれる。
【0040】
続いて、ろう付工程では、ろう付条件データを用いて、組付工程で得られた正規組付品のろう付を行う。ろう付工程後、ろう付不良等により、廃却品(ASSY1)としてろう付後廃却材215が発生する。管理部100は、正規ろう付品の重量及びろう付後廃却材215の重量を管理する。
【0041】
ここで、ろう付後廃却材215の重量は、組付後廃却材214とほぼ同じであるが、ろう付のための加熱によって材料組成が変化する。このため、ろう付後廃却材215の材料組成は構成部品201~204の材料組成と構成重量では決まらない。よって、予測部110がろう付後廃却材215の材料組成を予測する。
【0042】
予測部110は、ろう付条件データ及び材料受入データを用いて、ろう付工程後に発生するろう付後廃却材215の材料組成の変化を予測する。予測部110は、ろう付後廃却材215に含まれるSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Tiのうちの少なくとも1つの変化量を予測する。
【0043】
これにより、材料データと紐づいた廃材データとろう付条件から予測された組成も併せて管理されるので、回収された廃材の溶解時の組成を事前に予測することが可能となる。ろう付後廃却材215の材料組成は、例えば、ろう付後廃却材215の重量に対してSiがY1%、FeがY2%、CuがY3%、MnがY4%、MgがY5%、CrがY6%、ZnがY7%、TiがY8%、というように予測される。また、ろう付後廃却材215の重量に対するCO排出量も導かれる。特に、ろう付条件によって変化しやすいZnやMgの濃度を高精度で予測することができる。
【0044】
予測部110によって材料組成の変化後を予測できるので、ろう付後廃却材215の材料組成を把握するために、回収したろう付後廃却材215を溶解して材料組成を測定する必要がなくなり、そのための工数も掛からない。また、狙った材料組成に対し、ろう付後廃却材215の配合比を高精度で予測することができるので、ろう付後廃却材215のリサイクル性が向上する。さらに、材料組成の把握のためのろう付後廃却材215の溶解が不要になることで、エネルギー消費を抑制することができ、ひいてはCO排出量を削減することができる。
【0045】
管理部100は、各工程で発生する各廃却材210~215の量と、予測部110で予測される材料組成と、に基づき、リアルタイムで各廃却材210~215の材料組成とカーボンフットプリントを把握する。これにより、熱交換器200の製造において発生する廃却材の材料組成は、全ての廃材、組付後廃却材214、及びろう付後廃却材215の各材料組成の和として得られる。なお、管理部100は、工程毎に各廃却材210~215の材料組成とカーボンフットプリントを把握しても良い。
【0046】
以上説明したように、購入材料から製品、廃却屑の量、加工・ろう付条件による成分変化予測まで含めてICT管理することで、リアルタイムで、スクラップの成分やカーボンフットプリントを高精度で予測可能となる。
【0047】
特に、本実施形態では、ろう付工程において材料組成が変化した後のろう付後廃却材215の材料組成を予測部110によって予測している。よって、材料組成が変化した後のろう付後廃却材215を含む全ての廃却材210~215の材料組成とカーボンフットプリントをリアルタイムで把握することができる。
【0048】
また、ろう付後廃却材215の材料組成を把握するための工程が不要になる。すなわち、金属を溶かし、固めて地金を形成し、地金の組成を検査する必要が無い。したがって、ろう付後廃却材215の材料組成を把握するために掛かるエネルギー消費を抑制することができると共に、当該エネルギー消費に伴うCO排出量を抑制することができる。
【0049】
さらに、廃却材管理システムによって、材料側カーボンフットプリントと製造過程でのカーボンフットプリントを管理することができる。また、カーボンフットプリントが最小となる運用が可能となるようにシステムで検討することや、材料データや前工程データによって、ろう付後廃却材215を削減できる予測をした自工程制御とすることが可能である。廃却材210~215が増えると製品を作るためにCO排出量が増えるが、廃却材210~215を削減することができれば、CO排出量の削減にも繋がる。
【0050】
変形例として、管理部100はクラウド120のデータをビッグデータ解析したり、AI分析したりしても良い。これにより、管理部100は例えば気象条件等に応じて各廃却材210~215の材料組成の予測を行ったり、各廃却材210~215のコストが最小になるように熱交換器製造工場を運営したりすることが可能になる。また、投入エネルギー/犠牲層形成等のろう付制御、歩留まり向上加工条件、戻し屑の水平リサイクル最適配合比等に利活用できる。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された廃却材管理システムの構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、管理部100及び予測部110はクラウド120に配置されていても構わない。この場合、ユーザは熱交換器製造工場の各電子機器端末からブラウザ等を介してクラウド120上の管理部100を操作すれば良い。
【0052】
本明細書に開示された廃却材管理システムの特徴を以下の通り示す。
(項目1)
熱交換器(200)の製造に必要な材料の種類、前記材料の組成、前記材料の重量、及び前記材料の用意に要した温室効果ガス排出量の各情報を含む材料受入データと、前記熱交換器の製造時に使用される消費電力及び消費ガス量の各情報を含むユーティリティデータと、前記熱交換器の完成品の状態、前記熱交換器の部品の状態、前記熱交換器を製造する際に発生する廃却材(210~215)の状態でのそれぞれの重量データと、を取得して管理する管理部(100)と、
前記熱交換器のろう付工程で使用されるろう付条件データ及び前記材料受入データを用いて、前記廃却材のうち前記ろう付工程後に発生するろう付後廃却材(215)の材料組成の変化を予測する予測部(110)と、
を含み、
前記管理部は、前記材料から前記熱交換器の部品(201~204)を製造する部品加工工程で発生する部品廃却材(210~213)、前記部品加工工程の後に前記部品を組み付ける組付工程で発生する組付後廃却材(214)、及び前記ろう付後廃却材を含む前記廃却材の量と、前記予測部で予測される材料組成と、に基づき、リアルタイムで前記各廃却材の材料組成とカーボンフットプリントを把握する、廃却材管理システム。
(項目2)
前記予測部は、前記ろう付後廃却材に含まれるSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Tiのうちの少なくとも1つの変化量を予測する、項目1に記載の廃却材管理システム。
(項目3)
前記予測部は、前記ろう付条件データに含まれる入熱温度、風速、製品体格、及び炉内雰囲気に基づいて、前記ろう付後廃却材の材料組成を予測する、項目1または2に記載の廃却材管理システム。
(項目4)
前記管理部は、前記熱交換器の製造データを全て記録及び管理する一方、外部の要求に対しては公開可能な情報を開示する、項目1ないし3のいずれか1つに記載の廃却材管理システム。
(項目5)
前記管理部は、ブロックチェーンを用いてデータの改ざん及び製造に関するデータの外部流出を防止する、項目1ないし4のいずれか1つに記載の廃却材管理システム。
(項目6)
前記管理部は、前記熱交換器の製造データ、経理、及び前記カーボンフットプリントを一元管理する、項目1ないし5のいずれか1つに記載の廃却材管理システム。
【符号の説明】
【0053】
100 管理部
110 予測部
200 熱交換器
201~204 部品
210~213 部品廃却材
214 組付後廃却材
215 ろう付後廃却材
図1
図2