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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】エレベーターの乗場操作表示器
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20241001BHJP
   B66B 1/46 20060101ALI20241001BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B1/14 G
B66B1/14 K
B66B1/46 A
B66B3/00 G
B66B3/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022086967
(22)【出願日】2022-05-27
(65)【公開番号】P2023174226
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭利
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020267(JP,A)
【文献】特開2017-001767(JP,A)
【文献】特開2001-002331(JP,A)
【文献】特開2019-094203(JP,A)
【文献】特開2013-028450(JP,A)
【文献】特開2022-025548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階床又は呼びを登録するための操作モードを、一般利用者向けの第一モードから障がい者向けの第二モードへと移行可能に構成されたエレベーターの乗場操作表示器であって、
エレベーターの乗場に設置された乗場操作盤と、
前記乗場操作盤を制御する制御装置と、を備え、
前記乗場操作盤は、表示画面に対する非接触の近接操作を検出可能なタッチパネルディスプレイを含み、
前記制御装置は、
前記階床又は前記呼びを登録するための情報を前記表示画面に表示させる表示処理部と、
前記表示画面に対して検出物が近接した反応エリアを検出する検出処理部と、
前記第一モードにおいて、検出された前記反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、前記操作モードを前記第一モードから前記第二モードへと移行させるモード移行処理部と、
を備えるエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項2】
階床又は呼びを登録するための操作モードを、一般利用者向けの第一モードから障がい者向けの第二モードへと移行可能に構成されたエレベーターの乗場操作表示器であって、
エレベーターの乗場に設置された乗場操作盤と、
前記乗場操作盤を制御する制御装置と、を備え、
前記乗場操作盤は、
表示画面に対する非接触の近接操作を検出可能なタッチパネルディスプレイと、
前記操作モードを前記第一モードから前記第二モードへと移行するためのモード変更ボタンと、を含み、
前記制御装置は、
前記階床又は前記呼びを登録するための情報を前記表示画面に表示させる表示処理部と、
前記表示画面に対して検出物が近接した反応エリアを検出する検出処理部と、
前記第一モードにおいて、検出された前記反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、前記モード変更ボタンの位置を通知するための音声ガイダンスを出力する音声出力処理部と、
を備えるエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項3】
前記タッチパネルディスプレイは、前記表示画面上の各位置に対して検出物との距離に応じたセンサ検出値をそれぞれ出力するように構成され、
前記検出処理部は、前記センサ検出値が基準値以上となるエリアを前記反応エリアとして検出する
ように構成される請求項1又は請求項2に記載のエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項4】
前記検出処理部は、前記反応エリア内において前記センサ検出値がピークとなる位置をピーク点として検出し、
前記制御装置は、前記第二モードにおいて、前記ピーク点に基づいて情報の入力を受け付ける入力処理部
を更に備える請求項3に記載のエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項5】
前記反応エリアは、
上方エリアと、
前記上方エリアよりも下方に位置し、前記上方エリアに隣接しない独立した下方エリアと、を含み、
前記第二モードにおいて、前記入力処理部は、前記上方エリア内の前記ピーク点の位置に対応する情報の入力を受け付ける
ように構成される請求項4に記載のエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項6】
前記反応エリアは、単一のエリアであり、
前記第二モードにおいて、前記入力処理部は、前記反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、前記反応エリア内において、前記ピーク点よりも基準距離だけ上方の仮想ピーク点の位置に対応する情報の入力を受け付ける
ように構成される請求項4に記載のエレベーターの乗場操作表示器。
【請求項7】
前記反応エリアは、単一のエリアであり、
前記第二モードにおいて、前記入力処理部は、前記反応エリアの面積が閾値以下の場合、前記反応エリア内の前記ピーク点の位置に対応する情報の入力を受け付ける
ように構成される請求項4に記載のエレベーターの乗場操作表示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、利用者による非接触の近接操作を認識可能なタッチパネルディスプレイを用いたエレベーターの乗場操作表示器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タッチパネルディスプレイを用いたエレベーターの行先階登録装置に関する技術が開示されている。この技術の装置では、利用者がタッチパネルディスプレイに触れた軌跡に基づいて、利用者が視覚障がい者であるか否かが特定される。そして、利用者が視覚障がい者であると特定された場合、利用者がタッチパネルディスプレイに触れた軌跡のパターン認識に基づいて行先階が登録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5115554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エレベーターのタッチパネルディスプレイの分野において、指をディスプレイに近接させ非接触状態での近接操作を可能とした乗場操作表示器が知られている。このような近接操作が可能なタッチパネルディスプレイを視覚障がい者が利用する場合を考える。
【0005】
乗場操作表示器には、操作モードを障がい者専用モードに移行させるための障がい者対応ボタンが設置されている。視覚障がい者は、乗場操作表示器に顔を近づけてこの障がい者対応ボタンを探すことがある。この場合、近接操作が可能なタッチパネルディスプレイが近接した顔を指での近接操作であると誤認識するおそれがある。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、非接触の近接操作が可能なタッチパネルディスプレイを有する乗場操作表示器において、障がい者が利用する際の操作性及び利便性を向上させるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、階床又は呼びを登録するための操作モードを、一般利用者向けの第一モードから障がい者向けの第二モードへと移行可能に構成されたエレベーターの乗場操作表示器であって、エレベーターの乗場に設置された乗場操作盤と、乗場操作盤を制御する制御装置と、を備える。乗場操作盤は、表示画面に対する非接触の近接操作を検出可能なタッチパネルディスプレイを含み、制御装置は、階床又は呼びを登録するための情報を表示画面に表示させる表示処理部と、表示画面に対して検出物が近接した反応エリアを検出する検出処理部と、第一モードにおいて、検出された反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、操作モードを第一モードから第二モードへと移行させるモード移行処理部と、を備える。
【0008】
また、本開示は、階床又は呼びを登録するための操作モードを、一般利用者向けの第一モードから障がい者向けの第二モードへと移行可能に構成されたエレベーターの乗場操作表示器であって、エレベーターの乗場に設置された乗場操作盤と、乗場操作盤を制御する制御装置と、を備える。乗場操作盤は、表示画面に対する非接触の近接操作を検出可能なタッチパネルディスプレイと、操作モードを第一モードから第二モードへと移行するためのモード変更ボタンと、を含み、制御装置は、階床又は呼びを登録するための情報を表示画面に表示させる表示処理部と、表示画面に対して検出物が近接した反応エリアを検出する検出処理部と、第一モードにおいて、検出された反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、モード変更ボタンの位置を通知するための音声ガイダンスを出力する音声出力処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、非接触の近接操作が可能なタッチパネルディスプレイを有する乗場操作表示器において、障がい者が利用する際の操作性及び利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の乗場操作表示器が備える乗場操作盤の外観を示す正面図である。
図2】乗場操作盤の外観を示す側面図である。
図3】視覚障がい者が障がい者対応ボタンを探している状態を例示した図である。
図4】車椅子の利用者が乗場操作盤に対して近接操作を行う状態を例示した図である。
図5】直立した一般利用者が乗場操作盤に対して近接操作を行う状態を例示した図である。
図6】車椅子の利用者の近接操作により認識される反応エリアを例示した図である。
図7】一般利用者の近接操作により認識される反応エリアを例示した図である。
図8】実施の形態1の乗場操作表示器の構成の一例を示す図である。
図9】制御装置のプロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。
図10】実施の形態1に係る乗場操作表示器の制御装置において実行される処理のフローチャートである。
図11】実施の形態1に係る乗場操作表示器の制御装置において実行される処理の他の例を示すフローチャートである。
図12】制御装置のハードウェア資源の変形例を示す図である。
図13】乗場操作盤から行先階床を登録する際の第一操作形態例を示す図である。
図14】乗場操作盤から行先階床を登録する際の第二操作形態例を示す図である。
図15】乗場操作盤から行先階床を登録する際の第三操作形態例を示す図である。
図16】実施の形態2に係る乗場操作表示器の制御装置において実行される処理のフローチャートである。
図17】実施の形態2に係る乗場操作表示器の制御装置において実行される処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.実施の形態1.
1-1.乗場操作表示器の概要
図1は、本開示の乗場操作表示器が備える乗場操作盤の外観を示す正面図である。図2は、乗場操作盤の外観を示す側面図である。乗場操作表示器100は、乗場操作盤10と、乗場操作盤10を制御する制御装置50(図8参照)を備える。乗場操作盤10は、エレベーターの利用者が乗場において希望する行先階床を登録するためのものである。乗場操作盤10は矩形形状を呈し、エレベーターが設置された建物の各階の乗場の壁面に設けられる。或いは、乗場操作盤10は、エレベーターが設置された建物の各階の乗場の床に設置された設置台の直立面に設けられる。乗場操作盤10の設置高さは、例えば、車椅子利用者の視線高さとして、例えば100cmから115cm程度とされる。以下の説明では、乗場操作盤10がエレベーターの乗場の鉛直な壁面に設置された状態を基準に、乗場操作盤10の上下方向を定義する。
【0013】
図1に示す乗場操作盤10は、タッチパネルディスプレイ20と、障がい者対応ボタン30と、を備える。タッチパネルディスプレイ20は、表示画面に情報の表示を行う表示機能と、利用者の操作による入力を受け付ける入力機能と、を備える。表示機能は、タッチパネルディスプレイ20の表示画面に、行先階床を登録するための階床ボタンを表示させる。
【0014】
入力機能は、利用者がタッチパネルディスプレイ20の表示画面に対して指を非接触で近接させる操作による入力を受け付ける。利用者によるこの操作は、以下「近接操作」と呼ばれる。表示画面に対して近接操作が行われると、タッチパネルディスプレイ20は、表示画面の各座標点において指等の検出物との距離に応じたセンサ検出値を出力する。センサ検出値は、表示画面と検出物との距離が近いほど大きな値を出力する。タッチパネルディスプレイ20が静電容量式である場合、センサ検出値は静電容量である。乗場操作盤10の制御装置50は、センサ検出値が基準値より大きいエリアを反応エリアとして認識する。そして、制御装置50は、反応エリアに対応する表示画面の情報の入力を受け付ける。
【0015】
エレベーターは、利用者が行先階床又は呼びを登録するための操作モードとして、第一モードと第二モードとを備えている。第一モードは、一般利用者がタッチパネルディスプレイ20の表示画面に表示された視覚情報を利用して行先階床又は呼びを登録する一般利用者向けの操作モードである。第一モードでは、例えば利用者が表示された階床ボタンの中から希望する行先階床に対して近接操作を行うことによって行先階床を登録する。これに対して、第二モードは、近接操作によって行先階床又は呼びを登録する際の補助機能を備えた障がい者向けの操作モードである。
【0016】
第一モードから第二モードへの移行は、例えば利用者が障がい者対応ボタン30を押すことによって行われる。障がい者対応ボタン30は、機械式のモード変更ボタンである。障がい者対応ボタン30は、EN規格、ASME規格、等の規格に準拠するように構成されている。図1に示す例では、障がい者対応ボタン30は、乗場操作盤10においてタッチパネルディスプレイ20よりも下方の領域に設置されている。
【0017】
ここで、エレベーターの利用者の中には、視覚が不自由な視覚障がい者も存在する。視覚障がい者は、乗場操作盤10に設置されている障がい者対応ボタン30を見つけることが困難な場合がある。図3は、視覚障がい者が障がい者対応ボタン30を探している状態を例示した図である。この図に示すように、視覚障がい者は、障がい者対応ボタン30を見つけるために、乗場操作盤10に顔を近づけることがある。この場合、タッチパネルディスプレイ20は、広範囲の反応エリアを認識してしまい、制御装置50が利用者の意図しない近接操作によって選択された情報を誤入力するおそれがある。
【0018】
他の例として、エレベーターの利用者の中には、車椅子を利用している障がい者も存在する。車椅子の利用者は、乗場操作盤10に対面する体勢が、直立している一般の利用者と異なる。図4は、車椅子の利用者が乗場操作盤10に対して近接操作を行う状態を例示した図である。図5は、直立した一般利用者が乗場操作盤10に対して近接操作を行う状態を例示した図である。図4及び図5に示すように、車椅子の利用者が近接操作を行う差し指の指す方向の表示画面に対する角度をθ1とし、直立した一般利用者が近接操作を行う差し指の指す方向の表示画面に対する角度をθ2とすると、一般的にθ1<θ2の関係が成立する。つまり、車椅子の利用者が近接操作を行う場合、一般利用者が近接操作を行う場合に比べて、表示画面に対する角度が小さくなる。
【0019】
図6は車椅子の利用者の近接操作により認識される反応エリアを例示した図である。図7は一般利用者の近接操作により認識される反応エリアを例示した図である。これらの図に示すように、タッチパネルディスプレイ20は、車椅子利用者の近接操作に対して、複数箇所において広範囲の反応エリアを認識してしまい、制御装置50が利用者の近接操作によって選択された情報を誤入力するおそれがある。
【0020】
そこで、実施の形態1の乗場操作表示器100の制御装置50は、広範囲の反応エリアを検出した場合、障がい者による近接操作が行われたと判断して、操作モードを第一モードから第二モードへと移行させる。具体的には、先ず、利用者の近接操作において検出されたセンサ検出値が基準値以上となる反応エリアを検出する。この処理は、以下「検出処理」と呼ばれる。
【0021】
反応エリアが広範囲かどうかは、例えば、反応エリアの面積が閾値よりも大きいかどうかによって判断される。そして、反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、制御装置50は、操作モードを第一モードから第二モードへと自動で移行する。この処理は、以下「モード移行処理」と呼ばれる。
【0022】
或いは、反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、制御装置50は、障がい者対応ボタン30の配置を通知するための音声ガイダンスを出力する。この処理は、以下「音声出力処理」と呼ばれる。
【0023】
以上のような乗場操作表示器100の動作によれば、近接操作が可能なタッチパネルディスプレイ20を備える乗場操作盤10を障がい者が操作する場合の誤認識を減らすことができる。これにより、エレベーターの運行効率が向上する。また、乗場操作表示器100によれば、検出された反応エリアに基づいて、利用者が障がい者であることを検知することができるので、第二モードへの移行、或いは障がい者対応ボタン30の配置を告げる音声ガイダンスを出力することができる。これにより、障がい者が乗場操作盤10を利用する際の操作性及び利便性が向上する。
【0024】
1-2.乗場操作表示器100の構成
図8は、実施の形態1の乗場操作表示器100の構成の一例を示す図である。乗場操作表示器100は、乗場操作盤10と制御装置50と、を備える。乗場操作盤10は、上述したタッチパネルディスプレイ20と、障がい者対応ボタン30と、音声出力部40と、を含む。音声出力部40は、音声ガイダンス等の音声を出力する。タッチパネルディスプレイ20は、近接操作を検出可能な構成であれば、その検出方式、種類、等に限定はない。
【0025】
制御装置50は、例えば乗場操作盤10の内部に配置される。又は、制御装置50の機能の一部又は全部は、乗場操作盤10と通信可能な外部サーバに配置されていてもよい。制御装置50は、コンピュータとしての処理装置の機能を備える。典型的には、制御装置50は、1つ又は複数のプロセッサ60と、1つ又は複数の記憶装置70と、を備えている。記憶装置70には、プロセッサ60で実行可能な1つ又は複数のプログラムとそれに関連する種々のデータが記憶されている。
【0026】
プロセッサ60がプログラムを実行することにより、プロセッサ60による各種処理が実行される。図9は、制御装置50のプロセッサ60がプログラムを実行することによって実現される機能を示す機能ブロック図である。図9に示すように、プロセッサ60は、表示処理部61と、検出処理部62と、モード移行処理部63と、音声出力処理部64と、入力処理部65と、を備える。以下、図1も参照しながら、制御装置50が障がい者に対して乗場操作盤10の操作モードを第二モードへ移行させる場合を例に、プロセッサ60の機能について説明する。
【0027】
表示処理部61は、タッチパネルディスプレイ20の表示画面に情報を表示させるための機能ブロックである。ここで表示される情報は、例えば、行先階床を選択するための階床ボタンの表示が例示される。
【0028】
検出処理部62は、利用者の近接操作において検出されたセンサ検出値が基準値以上となる反応エリアの面積を検出する検出処理を実行するための機能ブロックである。ここでの基準値は、例えば、近接操作において指等の検出物と表示画面との距離が基準距離となるときのセンサ検出値に設定される。検出された反応エリアの面積は、モード移行処理部63に送られる。
【0029】
モード移行処理部63は、上述のモード移行処理を実行するための機能ブロックである。モード移行処理では、検出処理部62が検出した反応エリアの面積が閾値よりも大きい場合、操作モードを第一モードから第二モードへと自動で移行する。ここでの閾値は、差し指の指先で近接操作を実行した場合の反応エリアの面積よりも大きい値に設定される。
【0030】
音声出力処理部64は、上述の音声出力処理を実行するための機能ブロックである。音声出力処理における反応エリアの面積の閾値は、モード移行処理と同じ手法で設定される。
【0031】
入力処理部65は、表示画面に表示された情報の中から、利用者の近接操作によって選択された情報を入力する入力処理を実行するための機能ブロックである。ここでは、入力処理部65は、第一モードにおいて、検出された反応エリアの中でセンサ検出値がピークとなるピーク点の座標を検出する。そして、入力処理部65は、ピーク座標の位置に対応する表示画面の情報を、利用者によって選択された登録情報として入力する。
【0032】
また、入力処理部65は、第二モードにおいて、表示画面に表示された情報の中から、利用者の近接操作によって選択された情報を入力する。第二モードにおける入力処理については、実施の形態2において詳細を後述する。
【0033】
1-3.実施の形態1に係る乗場操作表示器100によって実行される具体的処理
次に、フローチャートを参照して、乗場操作表示器100において実行される具体的処理について説明する。図10は、実施の形態1に係る乗場操作表示器100の制御装置50において実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、乗場操作盤10に対する利用者の操作を検知した場合に実行される。或いは、乗場操作表示器100が乗場操作盤10に対して利用者が接近したことを検知するセンサを搭載している場合、当該センサが利用者の接近を検知した場合に、このフローチャートが実行される構成でもよい。
【0034】
ステップS100では、第一モードにおいて近接操作を検知したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、本ルーチンは終了され、判定の成立が認められた場合、処理はステップS102に進む。ステップS102では、反応エリアの面積Sを検出する検出処理が実行される。
【0035】
ステップS102の処理が行われると、次にステップS104及びS106によるモード移行処理が実行される。具体的には、ステップS104では、ステップS102の処理において検出された反応エリアの面積Sが閾値よりも大きいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、本ルーチンは終了され、判定の成立が認められた場合、処理はステップS106に進む。ステップS106では、乗場操作盤10の操作モードが第一モードから第二モードへと移行される。
【0036】
図11は、実施の形態1に係る乗場操作表示器100の制御装置50において実行される処理の他の例を示すフローチャートである。このフローチャートのステップS110及びS112は、図10に示すフローチャートのステップS100及びS102と同様の処理が実行される。ステップS112の処理が行われると、次にステップS114及びS116による音声出力処理が実行される。具体的には、ステップS114では、ステップS112の処理において検出された反応エリアの面積Sが閾値よりも大きいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、本ルーチンは終了され、判定の成立が認められた場合、処理はステップS116に進む。ステップS116では、障がい者対応ボタン30の配置を通知するための音声ガイダンスが音声出力部40から出力される。
【0037】
以上の説明から明らかなように、実施の形態1に係る乗場操作表示器100によれば、反応エリアの面積Sに基づいて利用者が障がい者であるかを把握し、乗場操作盤10の操作モードを第二モードへと移行することができる。これにより、乗場操作盤10を利用する障がい者の利便性を向上させることができる。また、乗場操作表示器100によれば、反応エリアの面積Sに基づいて利用者が障がい者であるかを把握し、障がい者対応ボタン30の配置を音声ガイダンスによって通知することができる。これにより、障がい者による乗場操作盤10の操作性を向上させることができる。
【0038】
1-4.変形例
実施の形態に係る乗場操作表示器100は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0039】
図12は、制御装置50のハードウェア資源の変形例を示す図である。図12に示す例では、制御装置50は、例えばプロセッサ60、記憶装置70、及び専用ハードウェア80を含む処理回路82を備える。図12は、制御装置50が有する機能の一部を専用ハードウェア80によって実現する例を示す。制御装置50が有する機能の全部を専用ハードウェア80によって実現しても良い。専用ハードウェア80として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。この変形例は、後述する他の実施の形態のおいても適用することができる。
【0040】
2.実施の形態2.
2-1.実施の形態2の乗場操作表示器100の特徴
次に、本開示の実施の形態2に係る乗場操作表示器100について説明する。実施の形態2の乗場操作表示器の構成は、実施の形態1の乗場操作表示器100と同様である。実施の形態2の乗場操作表示器100は、第二モードにおける近接操作において誤入力を減らすようにした入力処理に特徴を有している。以下に第二モードにおいて行われる近接操作の幾つかの操作形態について説明する。
【0041】
2-2-1.第一操作形態
図13は、乗場操作盤10から行先階床を登録する際の第一操作形態例を示す図である。図13に示す例では、利用者はタッチパネルディスプレイ20の表示画面に対して差し指の指先を垂直に近い角度で近接させている。このような近接操作は、直立した利用者、或いは車椅子の利用者のうち指先での近接操作を意識した利用者によって行われることが想定される。
【0042】
図13に示す近接操作の例では、表示画面の各座標点におけるセンサ検出値で形成される検出波形は、指先に対応する1つのピーク点を有する急峻な検出波形となる。そこで、第一操作形態における入力処理では、入力処理部65は、反応エリアが単一のエリアによって構成され、且つ反応エリアの面積Sが閾値より小さい場合、反応エリア内におけるピーク点の座標に対応する表示画面の行先階床の入力を受け付ける。なお、ここでの閾値は、指先のみを表示画面に近接させていることを判定するための閾値として、予め定められた値を使用することができる。
【0043】
2-2-2.第二操作形態
図14は、乗場操作盤10から行先階床を登録する際の第二操作形態例を示す図である。図14に示す例では、利用者はタッチパネルディスプレイ20の表示画面に対して差し指の指先を鋭角で近接させている。このような近接操作は、車椅子に着座した利用者等、乗場操作盤10の下方側から手を伸ばして操作する利用者が行うことが想定される。しかしながら、この近接操作では、差し指の指先だけでなく、操作する手の他の部分も表示画面に近接してしまうおそれがある。
【0044】
図14に示す近接操作の例では、検出波形は、差し指の指先に対応するピーク点と、手の他の部分に対応するピーク点との2つのピーク点を有する検出波形となっている。そこで、第二操作形態における入力処理では、入力処理部65は、反応エリアが上方エリアと、当該上方エリアよりも下方に位置し且つ上方エリアに隣接しない独立した下方エリアと、を含むかが判定される。そして、反応エリアが上方エリアと下方エリアとを含む場合、入力処理部65は、上方エリア内におけるピーク点の座標に対応する表示画面の行先階床の入力を受け付け、下方エリアの座標に対応する表示画面の行先階床の入力を受け付けない。
【0045】
2-2-3.第三操作形態
図15は、乗場操作盤10から行先階床を登録する際の第三操作形態例を示す図である。図15に示す例では、図14に示す第二動作例と同様に、利用者はタッチパネルディスプレイ20の表示画面に対して差し指の指先を鋭角で近接させている。しかしながら、この近接操作例では、差し指の指先よりも操作する手の他の部分の方が表示画面に近接している。
【0046】
図15に示す近接操作の例では、検出波形は、手の他の部分に対応する1つのピーク点を有する広範な山なりの検出波形となっている。この近接操作では、差し指の指先はピーク点よりも上方に位置することとなる。そこで、第三操作形態における入力処理では、入力処理部65は、反応エリアが単一のエリアによって構成され、且つ反応エリアの面積Sが閾値以上の場合、反応エリア内における実ピーク点から予め定められた基準距離だけ上方に移動した仮想ピーク点の座標に対応する表示画面の情報の入力を受け付ける。ここでの基準距離は、例えば50mmである。
【0047】
以上のような第二モードにおける入力処理によれば、車椅子に着座した利用者の近接操作において、差し指の位置に対応する情報の入力を受け付けることができる。これにより、近接操作時の誤入力が減るので、エレベーターの運行効率が向上する。
【0048】
2-3.実施の形態2に係る乗場操作表示器100によって実行される具体的処理
次に、フローチャートを参照して、乗場操作表示器100において実行される具体的処理について説明する。図16及び図17は、実施の形態2に係る乗場操作表示器100の制御装置50において実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、乗場操作盤10に対する利用者の操作を検知した場合に実行される。或いは、乗場操作表示器100が乗場操作盤10に対して利用者が接近したことを検知するセンサを搭載している場合、当該センサが利用者の接近を検知した場合に、このフローチャートが実行される構成でもよい。
【0049】
図16に示すステップS200では、第二モードにおいて近接操作を検知したかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、本ルーチンは終了され、判定の成立が認められた場合、処理はステップS202に進む。ステップS202では、反応エリアが上方エリアと下方エリアとを含むかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、単一の反応エリアが検出されたと判断されて、図17に示すステップS210に進む。一方、判定の成立が認められた場合、ステップS204に進む。
【0050】
ステップS204では、上方エリアの中でセンサ検出値がピークとなるピーク点の座標が検出される。ステップS206では、検出されたピーク点に対応する画面表示の行先階床の入力が受け付けられる。
【0051】
図17に示すステップS210では、反応エリアの面積Sが検出される。ここでは、上述したステップS102と同様の処理が実行される。次のステップS212では、反応エリアの中でセンサ検出値がピークとなる実ピーク点の座標が検出される。次のステップS214では、反応エリアの面積Sが閾値よりも大きいかどうかが判定される。その結果、判定の成立が認められない場合、差し指のみが表示画面に近接していると判断されてステップS220に進む。ステップS220では、ステップS212において検出された実ピーク点に対応する画面表示の行先階床の入力が受け付けられる。
【0052】
一方、ステップS214の処理において、判定の成立が認められた場合、手の広範囲が表示画面に近接していると判断されてステップS216に進む。ステップS216では、ステップS212において検出された実ピーク点よりも基準距離だけ上方に移動した仮想ピーク点の座標が特定される。そして、ステップS218では、ステップS216において検出された仮想ピーク点に対応する画面表示の行先階床の入力が受け付けられる。
【0053】
以上の説明から明らかなように、実施の形態2に係る乗場操作表示器100によれば、第二モードにおいて、乗場操作盤10を操作する障がい者の差し指の位置に対応する画面表示の上方を受け付けることができる。これにより、乗場操作盤10を利用する障がい者の利便性及び操作性を向上させることができる。
【0054】
2-3.変形例
実施の形態2に係る乗場操作表示器100は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0055】
第二モードにおける入力処理は、行先階床の入力に限らず、かごの呼び等、タッチパネルディスプレイ20の表示画面に表示されている種々の情報の入力に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 乗場操作盤、 20 タッチパネルディスプレイ、 30障がい者対応ボタン、 40 音声出力部、 50 制御装置、 60 プロセッサ、 61 表示処理部、 62 検出処理部、 63 モード移行処理部、 64 音声出力処理部、 65 入力処理部、 70 記憶装置、 80 専用ハードウェア、 82 処理回路、 100 乗場操作表示器
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