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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】物品昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241001BHJP
   B66D 1/46 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65G1/04 551D
B66D1/46 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022087757
(22)【出願日】2022-05-30
(65)【公開番号】P2023175350
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-76840(JP,A)
【文献】特開2005-22791(JP,A)
【文献】特開2022-33466(JP,A)
【文献】特開昭62-215475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B66D 1/46
B66C 13/23
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保持する保持部と、前記保持部を昇降させる昇降装置と、前記昇降装置を制御する制御部と、を備えた物品昇降装置であって、
前記昇降装置は、プーリと、前記プーリに巻き取り及び繰り出し自在に巻回されたベルトと、前記プーリを回転駆動する駆動部と、を備え、前記ベルトにより前記保持部を吊り下げた状態で、前記プーリからの前記ベルトの繰り出しによって前記保持部を下降させ、前記プーリへの前記ベルトの巻き取りによって前記保持部を上昇させ、
前記制御部は、
前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降速度を下降用目標速度に向けて次第に増加させた後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度に維持する定速下降動作を行い、その後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度から次第に減少させて前記保持部を停止させ、
前記定速下降動作において、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、前記プーリの回転速度を次第に増加させるように前記駆動部を制御する、物品昇降装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記保持部を上昇させる場合に、前記保持部の上昇速度を上昇用目標速度に向けて次第に増加させた後、前記保持部の上昇速度を前記上昇用目標速度に維持する定速上昇動作を行い、その後、前記保持部の上昇速度を前記上昇用目標速度から次第に減少させて前記保持部を停止させ、
前記定速上昇動作において、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記巻き取りによって次第に大きくなることに応じて、前記プーリの回転速度を次第に減少させるように前記駆動部を制御する、請求項1に記載の物品昇降装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度に向けて次第に増加させる期間、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、前記プーリからの前記ベルトの繰り出し加速度が重力加速度を超えない範囲で、前記プーリの回転加速度を次第に上昇させるように前記駆動部を制御する、請求項1に記載の物品昇降装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降開始時に前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径に応じて、前記プーリからの前記ベルトの繰り出し加速度が重力加速度を超えないように、前記プーリの回転加速度を制御する、請求項1に記載の物品昇降装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記駆動部が前記保持部を下降させる側に前記プーリを回転させる駆動力が、前記物品の重さにより前記ベルトに作用する荷重を超えないように、前記駆動部を制御する、請求項1に記載の物品昇降装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記保持部の下降速度及び上昇速度を変化させる場合に、加速度がステップ状に変化するような速度の時間変化パターンに従って基準速度指令を生成すると共に、設定期間における前記基準速度指令の移動平均により得られる移動平均指令を生成し、当該移動平均指令に基づいて前記駆動部を制御する、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を保持する保持部と、保持部を昇降させる昇降装置と、昇降装置を制御する制御部と、を備えた物品昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品昇降装置の一例が、特開2007-276962号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1では、物品昇降装置が、物品(24)を搬送する搬送装置(2)に設けられている。この物品昇降装置は、物品(24)を保持する昇降台(20)と、昇降台(20)を昇降させる昇降装置と、昇降装置を制御する昇降モータ制御部(36)と、を備えている。昇降装置は、ドラム(14)と、ドラム(14)に巻回された吊持材(18)と、ドラム(14)を回転駆動する昇降モータ(12)と、を備えており、ドラム(14)からの吊持材(18)の繰り出しによって昇降台(20)を下降させ、ドラム(14)への吊持材(18)の巻き取りによって昇降台(20)を上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-276962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物品を保持する保持部(特許文献1では、昇降台)を下降させる場合に、保持部の下降速度を下降用目標速度に向けて次第に増加させる加速下降動作を行った後、保持部の下降速度を下降用目標速度に維持する定速下降動作を行い、その後、保持部の下降速度を下降用目標速度から次第に減少させて保持部を停止させる減速下降動作を行うことが考えられる。特許文献1の図3に示される昇降速度パターンも、このように加速下降動作、定速下降動作、及び減速下降動作を順に行う速度パターンであると理解される。
【0005】
特許文献1の段落0011には、吊持材の一例としてベルトが記載されている。このように吊持材としてベルトを用いる場合、プーリ(特許文献1では、ドラム)に巻き取られているベルトの外周面の径である巻き取り径は、プーリからのベルトの繰り出しによって次第に小さくなる。そのため、仮に上記の定速下降動作においてプーリの回転速度を一定とした場合、定速下降動作中の保持部の下降速度は、巻き取り径が次第に小さくなることに伴い減少する。この結果、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時に、保持部の下降速度が増加した直後に減少する(言い換えれば、加速直後に減速する)ことになり、保持部に大きな加速度の変化が生じて、保持部や保持部に保持された物品に作用する振動が大きくなりやすい。しかしながら、特許文献1にはこの点についての記載はない。
【0006】
そこで、加速下降動作、定速下降動作、及び減速下降動作を順に行って保持部を下降させる場合に、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時に保持部や保持部に保持された物品に作用する振動を小さく抑えることが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る物品昇降装置は、物品を保持する保持部と、前記保持部を昇降させる昇降装置と、前記昇降装置を制御する制御部と、を備えた物品昇降装置であって、前記昇降装置は、プーリと、前記プーリに巻き取り及び繰り出し自在に巻回されたベルトと、前記プーリを回転駆動する駆動部と、を備え、前記ベルトにより前記保持部を吊り下げた状態で、前記プーリからの前記ベルトの繰り出しによって前記保持部を下降させ、前記プーリへの前記ベルトの巻き取りによって前記保持部を上昇させ、前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降速度を下降用目標速度に向けて次第に増加させた後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度に維持する定速下降動作を行い、その後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度から次第に減少させて前記保持部を停止させ、前記定速下降動作において、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、前記プーリの回転速度を次第に増加させるように前記駆動部を制御する。
【0008】
本構成によれば、プーリに巻き取られているベルトの外周面の径である巻き取り径が、プーリからのベルトの繰り出しによって次第に小さくなることを考慮して、定速下降動作におけるプーリの回転速度を、巻き取り径が次第に小さくなることに応じて増加させることができる。よって、定速下降動作においてプーリの回転速度を一定とする場合に比べて、定速下降動作中の保持部の下降速度の変化を小さく抑えることができ、その結果、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時における保持部の加速度の変化を小さく抑えることができる。これにより、当該切り替え時に保持部や保持部に保持された物品に作用する振動を小さく抑えやすくなっている。
【0009】
物品昇降装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る物品搬送設備を示す図
図2】実施形態に係る物品昇降装置を示す図
図3】実施形態に係るプーリの分解斜視図
図4】比較例に係る保持部の下降速度及び下降加速度の時間変化の一例を示す図
図5】比較例に係る保持部の上昇速度及び上昇加速度の時間変化の一例を示す図
図6】保持部を下降させる場合の実施形態に係るプーリの回転速度及び回転加速度の時間変化の一例を示す図
図7】実施形態に係る保持部の下降速度及び下降加速度の時間変化の一例を示す図
図8】保持部を上昇させる場合の実施形態に係るプーリの回転速度及び回転加速度の時間変化の一例を示す図
図9】実施形態に係る保持部の上昇速度及び上昇加速度の時間変化の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
物品昇降装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図2に示すように、物品昇降装置1は、保持部10、昇降装置20、及び制御部30を備えている。本実施形態では、物品昇降装置1は物品搬送車40に設けられており、これらの保持部10、昇降装置20、及び制御部30は、物品搬送車40に設けられている。物品搬送車40は、水平方向に走行して物品2を搬送するように構成されている。そのため、物品昇降装置1は、物品搬送車40の走行に伴い水平方向に移動する。このように、本実施形態では、物品昇降装置1は、水平方向に移動可能に構成されている。
【0012】
物品搬送車40は、走行経路に沿って走行して物品2を搬送する。ここで、走行経路の長手方向(走行経路が延びる方向)を経路長手方向Xとし、走行経路の幅方向を経路幅方向Yとする。経路幅方向Yは、経路長手方向X及び上下方向Z(鉛直方向)の双方に直交する方向である。図1及び図2に示す例では、経路長手方向Xは、経路幅方向Yと同様に、上下方向Zに直交する方向(すなわち、水平方向)である。
【0013】
走行経路は、物理的に形成されても仮想的に設定されてもよい。本実施形態では、図1及び図2に示すように、走行経路はレール4(ここでは、経路幅方向Yに間隔を空けて配置された一対のレール4)を用いて物理的に形成されている。また、本実施形態では、レール4は、天井3から吊り下げ支持されており、走行経路は、天井3に沿って形成されている。すなわち、本実施形態では、物品搬送車40は、天井3に沿って形成された走行経路に沿って走行する天井搬送車である。
【0014】
物品搬送車40は、走行経路に沿って走行する走行部41と、走行部41に連結された本体部44と、を備えている。本実施形態では、本体部44は、走行部41に対して下側Z2に配置された状態で、走行部41に連結されている。図1及び図2に示す例では、物品搬送車40は、走行部41を経路長手方向Xに並ぶように一対備えており、本体部44は、一対の走行部41に連結されている。
【0015】
走行部41は、レール4の走行面(ここでは、上側Z1を向く面)を転動する車輪43と、車輪43を回転駆動する走行駆動部42(例えば、サーボモータ等の電動モータ)と、を備えている。車輪43が走行駆動部42により回転されることで、走行部41がレール4に沿って走行する。
【0016】
本体部44は、物品2を保持する保持部10を備えている。本実施形態では、保持部10は、物品2を上側Z1から保持する。物品2の種類はこれに限定されないが、本実施形態では、物品2は、半導体ウェハ等の基板を収容する容器であり、保持部10は、物品2の上部に形成されたフランジ部2aを把持部11で把持することで、物品2を保持する。
【0017】
本体部44は、保持部10を昇降させる昇降装置20を備えている。図2に示すように、昇降装置20は、プーリ21と、プーリ21に巻き取り及び繰り出し自在に巻回されたベルト22と、プーリ21を回転駆動する昇降駆動部23(例えば、サーボモータ等の電動モータ)と、を備えている。ベルト22の一端はプーリ21に固定され(図3参照)、ベルト22の他端(プーリ21から繰り出される側の端部)は保持部10に連結されている(図1図2参照)。詳細は省略するが、昇降装置20が、ベルト22におけるプーリ21から繰り出された部分の延在方向を変更する案内用プーリを備えていてもよい。本実施形態では、昇降駆動部23が「駆動部」に相当する。
【0018】
図3に示すように、本実施形態では、プーリ21は、フランジ付きプーリであり、ベルト22が巻回される巻回部21aと、巻回部21aに対して軸方向(プーリ21の回転軸心Aに沿う方向)の両側に配置されるフランジ部21bと、を備えている。フランジ部21bは、巻回部21aの外周面に対して径方向(回転軸心Aに直交する方向)の外側に突出するように形成されている。
【0019】
昇降装置20は、昇降駆動部23によりプーリ21を一方の回転方向に回転させることで、プーリ21からベルト22を繰り出し、昇降駆動部23によりプーリ21を他方の回転方向に回転させることで、プーリ21にベルト22を巻き取る。昇降装置20は、ベルト22により保持部10を吊り下げた状態で、プーリ21からのベルト22の繰り出しによって保持部10を下降させ、プーリ21へのベルト22の巻き取りによって保持部10を上昇させる。このように、昇降装置20は、昇降駆動部23によりプーリ21を回転させて、保持部10を昇降させる。図2に示すように、本実施形態では、昇降装置20は、3つのプーリ21を備えており、3つのプーリ21のそれぞれにベルト22が巻回されている。そして、昇降装置20は、昇降駆動部23によりこれら3つのプーリ21を回転させて、保持部10を昇降させる。
【0020】
走行経路に沿って走行する走行動作を物品搬送車40が行う場合、保持部10は、走行用高さ(図2参照)に配置される。走行用高さは、保持部10に保持された物品2が本体部44に収容される高さである。走行用高さの保持部10に保持された物品2は、本体部44が備えるカバー部45の内部空間(ここでは、少なくとも経路長手方向Xの両側が閉じられた空間)に配置される。
【0021】
保持部10と移載対象箇所6との間での物品2の移載動作を物品搬送車40が行う場合、保持部10は、移載対象箇所6に対応する移載用高さ(図1参照)に配置される。すなわち、物品2の移載動作を物品搬送車40が行う場合、昇降装置20は、走行用高さと移載用高さとの間で保持部10を昇降させる。移載用高さは、走行用高さよりも低い高さとされる。また、移載用高さは、各移載対象箇所6の高さに応じて設定される。図1では、移載対象箇所6の一例として、処理装置5に隣接して配置されるロードポートを示している。処理装置5は、物品2を処理対象とする装置であり、本実施形態では、物品2から取り出された基板に対して処理を行う。
【0022】
図2に示すように、物品搬送車40は、当該物品搬送車40の動作を制御する制御部30を備えている。制御部30は、CPU等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御部30の各機能が実現される。制御部30は、物品搬送車40に設けられても(図2参照)、物品搬送車40とは独立に設けられてもよい。また、制御部30が互いに通信可能に分離された複数のハードウェアを備える場合、一部のハードウェアが物品搬送車40に設けられ、残りのハードウェアが物品搬送車40とは独立に設けられてもよい。
【0023】
以下に説明する制御部30の種々の技術的特徴は、物品搬送車40(例えば、昇降装置20、以下同様)の制御方法や、物品搬送車40を制御するためのプログラムにも適用可能であり、そのような方法やプログラム、更には、そのようなプログラムが記録された記録媒体(光ディスクやフラッシュメモリ等の、コンピュータが読み取り可能な記録媒体)も、本明細書に開示されている。物品搬送車40を制御するためのプログラムは、例えば、当該プログラムを記録した記録媒体により提供され、或いは、通信ネットワークを介して提供され、提供されたプログラムは、制御部30(コンピュータ)が参照可能な記憶装置に記憶される。
【0024】
制御部30は、昇降装置20を制御する。具体的には、制御部30は、昇降駆動部23を制御して、保持部10を昇降させる昇降動作を昇降装置20に行わせる。本実施形態では、制御部30は、更に、走行部41及び保持部10を制御する。具体的には、制御部30は、走行駆動部42を制御して、走行経路に沿って走行する走行動作を走行部41に行わせる。また、制御部30は、図示しない保持駆動部(例えば、ソレノイドや電動モータ)を制御して、物品2を保持する保持動作や物品2の保持を解除する保持解除動作を保持部10に行わせる。
【0025】
制御部30は、走行動作を走行部41に行わせることで、移載対象箇所6に対応する位置(ここでは、移載対象箇所6よりも上側Z1であって、平面視(上下方向Zに沿う方向視)で移載対象箇所6と重複する位置)まで物品搬送車40を走行させる。そして、保持部10から移載対象箇所6に物品2を移載する場合には、制御部30は、物品2を保持した状態の保持部10を走行用高さから移載用高さまで下降させる昇降動作を昇降装置20に行わせた後、物品2の保持解除動作を保持部10に行わせ、その後、物品2を保持していない状態の保持部10を移載用高さから走行用高さまで上昇させる昇降動作を昇降装置20に行わせる。また、移載対象箇所6から保持部10に物品2を移載する場合には、制御部30は、物品2を保持していない状態の保持部10を走行用高さから移載用高さまで下降させる昇降動作を昇降装置20に行わせた後、物品2の保持動作を保持部10に行わせ、その後、物品2を保持している状態の保持部10を移載用高さから走行用高さまで上昇させる昇降動作を昇降装置20に行わせる。
【0026】
このように、制御部30は、保持部10と移載対象箇所6との間で物品2を移載する場合に、保持部10を昇降させる。そして、制御部30は、保持部10を下降させる場合に、保持部10の下降速度を下降用目標速度VD(図4参照)に向けて次第に増加させた後、保持部10の下降速度を下降用目標速度VDに維持する定速下降動作を行い、その後、保持部10の下降速度を下降用目標速度VDから次第に減少させて保持部10を停止させるように、昇降駆動部23を制御する。ここで、保持部10の下降速度を下降用目標速度VDに向けて次第に増加させる動作を、加速下降動作といい、保持部10の下降速度を下降用目標速度VDから次第に減少させて保持部10を停止させる動作を、減速下降動作という。
【0027】
後に参照する図4のグラフでは、時刻t1から時刻t2までの期間が加速下降動作の実行期間であり、時刻t2から時刻t3までの期間が定速下降動作の実行期間であり、時刻t3から時刻t4までの期間が減速下降動作の実行期間である。また、後に参照する図6及び図7のグラフでは、時刻t21から時刻t22までの期間が加速下降動作の実行期間であり、時刻t22から時刻t23までの期間が定速下降動作の実行期間であり、時刻t23から時刻t24までの期間が減速下降動作の実行期間である。
【0028】
また、制御部30は、保持部10を上昇させる場合に、保持部10の上昇速度を上昇用目標速度VU(図5参照)に向けて次第に増加させた後、保持部10の上昇速度を上昇用目標速度VUに維持する定速上昇動作を行い、その後、保持部10の上昇速度を上昇用目標速度VUから次第に減少させて保持部10を停止させるように、昇降駆動部23を制御する。ここで、保持部10の上昇速度を上昇用目標速度VUに向けて次第に増加させる動作を、加速上昇動作といい、保持部10の上昇速度を上昇用目標速度VUから次第に減少させて保持部10を停止させる動作を、減速上昇動作という。
【0029】
後に参照する図5のグラフでは、時刻t11から時刻t12までの期間が加速上昇動作の実行期間であり、時刻t12から時刻t13までの期間が定速上昇動作の実行期間であり、時刻t13から時刻t14までの期間が減速上昇動作の実行期間である。また、後に参照する図8及び図9のグラフでは、時刻t31から時刻t32までの期間が加速上昇動作の実行期間であり、時刻t32から時刻t33までの期間が定速上昇動作の実行期間であり、時刻t33から時刻t34までの期間が減速上昇動作の実行期間である。
【0030】
ところで、プーリ21に巻き取られているベルト22の外周面Sの径である巻き取り径R(図3参照)は、プーリ21からのベルト22の繰り出しによって次第に小さくなり、プーリ21へのベルト22の巻き取りによって次第に大きくなる。そのため、仮に定速下降動作においてプーリ21の回転速度を一定とした場合、定速下降動作中の保持部10の下降速度は、巻き取り径Rが次第に小さくなることに伴い減少する。この結果、図4の比較例に示されるように、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時(図4における時刻t2)に、保持部10の下降速度(絶対値)が増加した直後に減少する(言い換えれば、加速直後に減速する)ことになり、保持部10に大きな加速度の変化が生じて、保持部10や保持部10に保持された物品2に作用する振動が大きくなりやすい。なお、図4では、「実速度」が保持部10の下降速度を表している。
【0031】
また、仮に定速上昇動作においてプーリ21の回転速度を一定とした場合、定速上昇動作中の保持部10の上昇速度は、巻き取り径Rが次第に大きくなることに伴い増加する。この結果、図5の比較例に示されるように、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時(図5における時刻t13)に、保持部10の上昇速度(絶対値)が増加した直後に減少する(言い換えれば、加速直後に減速する)ことになり、保持部10に大きな加速度の変化が生じて、保持部10や保持部10に保持された物品2に作用する振動が大きくなりやすい。なお、図5では、「実速度」が保持部10の上昇速度を表している。
【0032】
図4及び図5において、「指令加速度」は、プーリ21の回転加速度の指令を表し、「指令速度」は、プーリ21の回転速度の指令を表している。「指令速度」は、プーリ21の回転位置の指令の1階微分値(時間微分値)に相当し、「指令加速度」は、プーリ21の回転位置の指令の2階微分値(時間微分値)に相当する。図4及び図5において、実線の「指令加速度」は、プーリ21の回転加速度がステップ状に変化する指令を表し、実線の「指令速度」は、実線の「指令加速度」に対応する回転速度の指令を表している。また、破線の「指令加速度」は、実線の「指令加速度」に正弦波処理(ステップ状の変化を正弦波状の変化にする処理)を施した指令を表し、破線の「指令速度」は、破線の「指令加速度」に対応する回転速度の指令を表している。
【0033】
図4及び図5において、「実加速度」及び「実速度」は、破線の「指令加速度」及び破線の「指令速度」に従ってプーリ21が回転した場合の、保持部10の昇降加速度及び昇降速度をそれぞれ表している。すなわち、「実加速度」及び「実速度」は、昇降駆動部23が上記の正弦波処理を施した指令に従ってプーリ21を回転させた場合の、保持部10の昇降加速度及び昇降速度をそれぞれ表している。なお、図4及び図5では、理解を容易にするために、プーリ21の回転加速度の指令(指令加速度)と保持部10の昇降加速度(実加速度)とを重ねて示し、プーリ21の回転速度の指令(指令速度)と保持部10の昇降速度(実速度)とを重ねて示している。また、図4及び図5並びに後に参照する図6図9では、保持部10を下降させる場合に速度(プーリ21の回転速度及び保持部10の昇降速度)の符号が正(縦軸の上側)となるように各グラフを示している。そのため、保持部10の下降速度(絶対値)は、図中上側に向かうに従って高くなり、保持部10の上昇速度(絶対値)は、図中下側に向かうに従って高くなる。
【0034】
図4に示す比較例では、時刻t2から時刻t3までの期間に行われる定速下降動作において、プーリ21の回転速度を一定としているため、定速下降動作中の保持部10の実加速度が負となり、定速下降動作中の保持部10の実速度(下降速度の絶対値)が時間の経過と共に減少している。この結果、上述したように、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時(図4における時刻t2)に、保持部10に大きな加速度の変化が生じやすい。また、図5に示す比較例では、時刻t12から時刻t13までの期間に行われる定速上昇動作において、プーリ21の回転速度を一定としているため、定速上昇動作中の保持部10の実加速度が負となり、定速上昇動作中の保持部10の実速度(上昇速度の絶対値)が時間の経過と共に増加している。この結果、上述したように、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時(図5における時刻t13)に、保持部10に大きな加速度の変化が生じやすい。
【0035】
以上のように、定速下降動作においてプーリ21の回転速度を一定とした場合、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時に、保持部10に大きな加速度の変化が生じやすく、定速上昇動作においてプーリ21の回転速度を一定とした場合、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時に、保持部10に大きな加速度の変化が生じやすい。この点に鑑みて、制御部30は、図6に示すように、定速下降動作において、巻き取り径Rが繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、プーリ21の回転速度(絶対値)を次第に増加させるように昇降駆動部23を制御する。制御部30は、保持部10が物品2を保持している状態と保持部10が物品2を保持していない状態とのうちの少なくとも前者の状態で、上記のように昇降駆動部23を制御する。このように昇降駆動部23を制御することで、図7に示すように、定速下降動作中(図6及び図7における時刻t22から時刻t23までの期間)の保持部10の下降速度の変化を小さく抑えて、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時(図6及び図7における時刻t22)における保持部10の加速度の変化を小さく抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態では、制御部30は、図8に示すように、定速上昇動作において、巻き取り径Rが巻き取りによって次第に大きくなることに応じて、プーリ21の回転速度(絶対値)を次第に減少させるように昇降駆動部23を制御する。制御部30は、保持部10が物品2を保持している状態と保持部10が物品2を保持していない状態とのうちの少なくとも前者の状態で、上記のように昇降駆動部23を制御する。このように昇降駆動部23を制御することで、図9に示すように、定速上昇動作中(図8及び図9における時刻t32から時刻t33までの期間)の保持部10の上昇速度の変化を小さく抑えて、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時(図8及び図9における時刻t33)における保持部10の加速度の変化を小さく抑えることができる。
【0037】
図6及び図8において、「基準加速度」は、ステップ状に変化するプーリ21の回転加速度の指令を表し、「基準速度指令」は、「基準加速度」に対応するプーリ21の回転速度の指令を表している。また、図6及び図8において、「移動平均加速度」は、「基準加速度」に移動平均処理(例えば、重みづけのない単純移動平均処理)を施した指令を表し、「移動平均指令」は、「基準速度指令」に移動平均処理を施した指令(すなわち、「移動平均加速度」に対応するプーリ21の回転速度の指令)を表している。
【0038】
図7及び図9において、「指令加速度」及び「指令速度」は、「基準加速度」及び「基準速度指令」に従ってプーリ21が回転した場合の、保持部10の昇降加速度及び昇降速度をそれぞれ表している。また、図7及び図9において、「実加速度」及び「実速度」は、「移動平均加速度」及び「移動平均指令」に従ってプーリ21が回転した場合の、保持部10の昇降加速度及び昇降速度をそれぞれ表している。すなわち、「実加速度」及び「実速度」は、昇降駆動部23が上記の移動平均処理を施した指令に従ってプーリ21を回転させた場合の、保持部10の昇降加速度及び昇降速度をそれぞれ表している。
【0039】
本実施形態では、制御部30は、上記の移動平均処理を施した指令に従ってプーリ21を回転させるように、昇降駆動部23を制御する。すなわち、本実施形態では、制御部30は、保持部10の下降速度及び上昇速度を変化させる場合に、加速度(ここでは、プーリ21の回転加速度)がステップ状に変化するような速度(ここでは、プーリ21の回転速度)の時間変化パターンに従って基準速度指令を生成する。ここで、加速度には、減速度(負の加速度)も含む。そして、制御部30は、設定期間における基準速度指令の移動平均により得られる移動平均指令を生成し、当該移動平均指令に基づいて昇降駆動部23を制御する。移動平均指令は、設定期間における基準速度指令の時系列データに基づき生成される。制御部30は、例えば、移動平均指令から生成される位置指令(例えば、移動平均指令を積分して生成される位置指令)に基づく位置制御により、昇降駆動部23を制御し、或いは、移動平均指令に基づく速度制御により、昇降駆動部23を制御する。
【0040】
なお、定速下降動作において、定速下降動作中の保持部10の下降速度が一定となるようにプーリ21の回転速度を次第に増加させてもよいが、図6及び図7に示す例では、定速下降動作中の保持部10の下降速度が、加速下降動作中及び減速下降動作中に比べて低い変化率で変化(図7に示す例では、下降速度の絶対値が次第に増加)するように、プーリ21の回転速度の絶対値を次第に増加させている。また、定速上昇動作において、定速上昇動作中の保持部10の上昇速度が一定となるようにプーリ21の回転速度を次第に減少させてもよいが、図8及び図9に示す例では、定速上昇動作中の保持部10の上昇速度が、加速上昇動作中及び減速上昇動作中に比べて低い変化率で変化(図9に示す例では、上昇速度の絶対値が次第に減少)するように、プーリ21の回転速度の絶対値を次第に減少させている。このように定速下降動作や定速上昇動作における保持部10の昇降速度の変化を許容することで、プーリ21の回転速度や回転加速度のプロファイルを、制御部30における計算を簡素化できるプロファイルとすることが可能となっている。
【0041】
ところで、保持部10を下降させる場合に、プーリ21からのベルト22の繰り出し加速度が重力加速度を超えないようにすることで、ベルト22が弛むことによる保持部10の振動の発生を回避することができる。ここで、プーリ21からのベルト22の繰り出し加速度は、プーリ21の回転加速度と巻き取り径Rとに応じて定まる。この点に鑑みて、例えば、制御部30が、保持部10を下降させる場合に、保持部10の下降開始時の巻き取り径Rに応じて、プーリ21からのベルト22の繰り出し加速度が重力加速度を超えないように(言い換えれば、ベルト22に張力が掛からない状態とならないように)、プーリ21の回転加速度を制御する構成とすると好適である。
【0042】
上記のようにプーリ21からのベルト22の繰り出し加速度が重力加速度を超えないようにプーリ21の回転加速度を制御する場合に、例えば、制御部30が、保持部10を下降させる場合に、保持部10の下降速度を下降用目標速度VDに向けて次第に増加させる期間(すなわち、加速下降動作の実行期間)、巻き取り径Rが繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、プーリ21からのベルト22の繰り出し加速度が重力加速度を超えない範囲で、プーリ21の回転加速度を次第に上昇させるように昇降駆動部23を制御する構成とすると好適である。このように昇降駆動部23を制御することで、ベルト22が弛むことによる保持部10の振動の発生を回避しつつ、保持部10を迅速に下降させることができる。
【0043】
また、保持部10が物品2を保持している場合には、ベルト22に掛かる張力は、当該物品2の重さに応じて変化する。この点を考慮して、例えば、制御部30が、保持部10を下降させる場合に、昇降駆動部23が保持部10を下降させる側にプーリ21を回転させる駆動力が、物品2の重さによりベルト22に作用する荷重を超えないように、昇降駆動部23を制御する構成とすると好適である。このように物品2の重さを考慮して昇降駆動部23を制御することで、ベルト22に張力が掛からない状態とならないようにプーリ21を回転させることができる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、制御部30が、保持部10の下降速度及び上昇速度を変化させる場合に、加速度がステップ状に変化するような速度の時間変化パターンに従って基準速度指令を生成すると共に、設定期間における基準速度指令の移動平均により得られる移動平均指令を生成し、当該移動平均指令に基づいて昇降駆動部23を制御する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、制御部30が、基準速度指令に基づいて昇降駆動部23を制御する構成とすることもできる。
【0045】
(2)上記の実施形態では、物品昇降装置1が水平方向に移動可能な構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、物品昇降装置1が水平方向に移動不能な構成とすることもできる。
【0046】
(3)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0047】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品昇降装置の概要について説明する。
【0048】
物品を保持する保持部と、前記保持部を昇降させる昇降装置と、前記昇降装置を制御する制御部と、を備えた物品昇降装置であって、前記昇降装置は、プーリと、前記プーリに巻き取り及び繰り出し自在に巻回されたベルトと、前記プーリを回転駆動する駆動部と、を備え、前記ベルトにより前記保持部を吊り下げた状態で、前記プーリからの前記ベルトの繰り出しによって前記保持部を下降させ、前記プーリへの前記ベルトの巻き取りによって前記保持部を上昇させ、前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降速度を下降用目標速度に向けて次第に増加させた後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度に維持する定速下降動作を行い、その後、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度から次第に減少させて前記保持部を停止させ、前記定速下降動作において、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、前記プーリの回転速度を次第に増加させるように前記駆動部を制御する。
【0049】
本構成によれば、プーリに巻き取られているベルトの外周面の径である巻き取り径が、プーリからのベルトの繰り出しによって次第に小さくなることを考慮して、定速下降動作におけるプーリの回転速度を、巻き取り径が次第に小さくなることに応じて増加させることができる。よって、定速下降動作においてプーリの回転速度を一定とする場合に比べて、定速下降動作中の保持部の下降速度の変化を小さく抑えることができ、その結果、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時における保持部の加速度の変化を小さく抑えることができる。これにより、当該切り替え時に保持部や保持部に保持された物品に作用する振動を小さく抑えやすくなっている。
【0050】
ここで、前記制御部は、前記保持部を上昇させる場合に、前記保持部の上昇速度を上昇用目標速度に向けて次第に増加させた後、前記保持部の上昇速度を前記上昇用目標速度に維持する定速上昇動作を行い、その後、前記保持部の上昇速度を前記上昇用目標速度から次第に減少させて前記保持部を停止させ、前記定速上昇動作において、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記巻き取りによって次第に大きくなることに応じて、前記プーリの回転速度を次第に減少させるように前記駆動部を制御すると好適である。
【0051】
保持部を上昇させる場合に、保持部の上昇速度を上昇用目標速度に向けて次第に増加させる加速上昇動作を行った後、保持部の上昇速度を上昇用目標速度に維持する定速上昇動作を行い、その後、保持部の上昇速度を上昇用目標速度から次第に減少させて保持部を停止させる減速上昇動作を行うことが考えられる。このように保持部を上昇させる場合に、仮に定速上昇動作においてプーリの回転速度を一定とした場合、定速上昇動作中の保持部の上昇速度は、巻き取り径が次第に大きくなることに伴い増加する。この結果、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時に、保持部の上昇速度が増加した直後に減少する(言い換えれば、加速直後に減速する)ことになり、保持部に大きな加速度の変化が生じて、保持部や保持部に保持された物品に作用する振動が大きくなりやすい。
【0052】
この点に関して、本構成によれば、巻き取り径がプーリへのベルトの巻き取りによって次第に大きくなることを考慮して、定速上昇動作におけるプーリの回転速度を、巻き取り径が次第に大きくなることに応じて減少させることができる。よって、定速上昇動作においてプーリの回転速度を一定とする場合に比べて、定速上昇動作中の保持部の上昇速度の変化を小さく抑えることができ、その結果、定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時における保持部の加速度の変化を小さく抑えることができる。これにより、当該切り替え時に保持部や保持部に保持された物品に作用する振動を小さく抑えやすくなっている。
【0053】
また、前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降速度を前記下降用目標速度に向けて次第に増加させる期間、前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径が前記繰り出しによって次第に小さくなることに応じて、前記プーリからの前記ベルトの繰り出し加速度が重力加速度を超えない範囲で、前記プーリの回転加速度を次第に上昇させるように前記駆動部を制御すると好適である。
【0054】
本構成によれば、上述した加速下降動作の実行期間において、ベルトに張力が掛からない状態とならない範囲で、プーリの回転加速度を、巻き取り径が次第に小さくなることに応じて増加させることができる。従って、ベルトが弛むことによる保持部の振動の発生を回避しつつ、保持部を迅速に下降させることができる。
【0055】
また、前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記保持部の下降開始時に前記プーリに巻き取られている前記ベルトの外周面の径に応じて、前記プーリからの前記ベルトの繰り出し加速度が重力加速度を超えないように、前記プーリの回転加速度を制御すると好適である。
【0056】
本構成によれば、保持部を下降させる場合のプーリの回転加速度を、保持部の下降開始時の巻き取り径に応じて、ベルトに張力が掛からない状態とならないように制御することができる。従って、ベルトが弛むことによる保持部の振動の発生を回避しつつ、保持部を適切に下降させることができる。
【0057】
また、前記制御部は、前記保持部を下降させる場合に、前記駆動部が前記保持部を下降させる側に前記プーリを回転させる駆動力が、前記物品の重さにより前記ベルトに作用する荷重を超えないように、前記駆動部を制御すると好適である。
【0058】
本構成によれば、保持部を下降させる場合のプーリの回転加速度を、物品の重さによりベルトに作用する荷重を考慮して、ベルトに張力が掛からない状態とならないように制御することができる。従って、ベルトが弛むことによる保持部の振動の発生を回避しつつ、保持部を適切に下降させることができる。
【0059】
また、前記制御部は、前記保持部の下降速度及び上昇速度を変化させる場合に、加速度がステップ状に変化するような速度の時間変化パターンに従って基準速度指令を生成すると共に、設定期間における前記基準速度指令の移動平均により得られる移動平均指令を生成し、当該移動平均指令に基づいて前記駆動部を制御すると好適である。
【0060】
本構成によれば、保持部を下降させる場合には、加速下降動作から定速下降動作への切り替え時や定速下降動作から減速下降動作への切り替え時における保持部の加速度の変化率(躍度)を、基準速度指令に基づいて駆動部を制御する場合に比べて小さく抑えることができる。また、保持部を上昇させる場合には、加速上昇動作から定速上昇動作への切り替え時や定速上昇動作から減速上昇動作への切り替え時における保持部の加速度の変化率を、基準速度指令に基づいて駆動部を制御する場合に比べて小さく抑えることができる。従って、基準速度指令に基づいて駆動部を制御する場合に比べて、動作の切り替え時に保持部や保持部に保持された物品に作用する振動を小さく抑えやすい。
【0061】
本開示に係る物品昇降装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0062】
1:物品昇降装置
2:物品
10:保持部
20:昇降装置
21:プーリ
22:ベルト
23:昇降駆動部(駆動部)
30:制御部
R:巻き取り径(プーリに巻き取られているベルトの外周面の径)
S:外周面
VD:下降用目標速度
VU:上昇用目標速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9