(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】照明装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20241001BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241001BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241001BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20241001BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241001BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20241001BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 340
F21V7/04 100
F21Y115:30
F21Y113:13
(21)【出願番号】P 2022142111
(22)【出願日】2022-09-07
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 光一
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-95105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
G03B 21/00
F21S 2/00
F21V 7/04
F21Y 115/30
F21Y 113/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の第1光を射出する第1光源と、
前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源と、
前記第1光と前記第2光とを合成して合成光を射出する光合成部材と、
前記光合成部材から射出される前記合成光を拡散する光拡散装置と、
前記光合成部材と前記光拡散装置との間に設けられ、前記合成光を前記光拡散装置に向けて集光する集光素子と、
前記光拡散装置から射出される前記合成光を平行化する平行化素子と、
を備え、
前記光拡散装置は、
前記合成光を反射して拡散する拡散面を有する拡散板と、
前記拡散板を前記拡散面と交差する回転軸を中心として回転させる駆動装置と、
を有し、
前記拡散面は、前記集光素子の光軸に対して傾斜しており、
前記集光素子に対する前記合成光の主光線の入射位置は、前記集光素子の前記光軸に対して前記平行化素子が配置されている側にずれている、照明装置。
【請求項2】
前記光軸に対する前記主光線の前記入射位置のずれ量は、前記合成光の光束径の1/2の長さ以上である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光軸に対する前記拡散面の傾斜角度は、45度である、請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記拡散面上の第1方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの前記凹部と1つの前記凸部とを合わせた前記第1方向に沿う長さは、互いに隣り合う他の1つの前記凹部と他の1つの前記凸部とを合わせた前記第1方向に沿う長さとは異なる、請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記拡散面上の第1方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの前記凹部と1つの前記凸部とを合わせた形状は、互いに隣り合う他の1つの前記凹部と他の1つの前記凸部とを合わせた形状とは異なる、請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1光および前記第2光のそれぞれは、直線偏光であり、
前記光合成部材から射出される前記合成光において、前記第1光の偏光方向と前記第2光の偏光方向とは、互いに一致している、請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記凹凸構造は、前記光合成部材から射出される前記合成光を1回反射して前記平行化素子に向けて射出する、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出される前記合成光を含む光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの高性能化を目的として、広色域かつ高効率な光源であるレーザー光源を用いた照明装置を備えるプロジェクターが提案されている。下記の特許文献1に、青色光源アレイと、赤色光源アレイと、緑色光源アレイと、色合成光学系と、集光レンズと、拡散板と、を備える照明装置が開示されている。青色光源アレイ、赤色光源アレイ、および緑色光源アレイのそれぞれは、複数の半導体レーザーを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の照明装置は、一方の面から入射する光を拡散して他方の面から射出させる透過型の拡散板を備えている。透過型の拡散板は、大きな拡散角を得ることが難しく、大きな拡散角を得ようとすると後方散乱が大きくなり、光の利用効率が低下する、という課題を有する。これらの課題を解消するためには、反射型の拡散板を用いることが考えられるが、反射型の拡散板を用いた場合、拡散板から射出される光の照度分布の広がりが後段の光学系の光軸に対して均等にならず、拡散板から射出された光を取り込む後段の光学系のサイズを大きくする必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の照明装置は、第1波長帯の第1光を射出する第1光源と、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源と、前記第1光と前記第2光とを合成して合成光を射出する光合成部材と、前記光合成部材から射出される前記合成光を拡散する光拡散装置と、前記光合成部材と前記光拡散装置との間に設けられ、前記合成光を前記光拡散装置に向けて集光する集光素子と、前記光拡散装置から射出される前記合成光を平行化する平行化素子と、を備える。前記光拡散装置は、前記合成光を反射して拡散する拡散面を有する拡散板と、前記拡散板を前記拡散面と交差する回転軸を中心として回転させる駆動装置と、を有する。前記拡散面は、前記集光素子の光軸に対して傾斜している。前記集光素子に対する前記合成光の主光線の入射位置は、前記集光素子の前記光軸に対して前記平行化素子が配置されている側にずれている。
【0006】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、前記照明装置から射出される前記合成光を含む光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図3】
図2のIV-IV線に沿う拡散板の断面図である。
【
図5】比較例の照明装置において、拡散板から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
【
図6】比較例の照明装置において、拡散板から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
【
図7】比較例の照明装置において、拡散板から射出される青色光の照度分布を示す図である。
【
図8】第1実施形態の照明装置において、拡散板から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
【
図9】第1実施形態の照明装置において、拡散板から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
【
図10】第1実施形態の照明装置において、拡散板から射出される青色光の照度分布を示す図である。
【
図11】第2実施形態の照明装置において、拡散板から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
【
図12】第2実施形態の照明装置において、拡散板から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
【
図13】第2実施形態の照明装置において、拡散板から射出される青色光の照度分布を示す図である。
【
図14】第2実施形態の照明装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、半導体レーザーを用いた照明装置を備えた液晶プロジェクターの一例である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0009】
本実施形態のプロジェクター10は、スクリーン(被投射面)SCR上にカラー画像を表示する投射型の画像表示装置である。プロジェクター10は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を備える。プロジェクター10は、光源装置の発光素子として、高輝度かつ高出力な光が得られる半導体レーザーを備える。
【0010】
図1は、本実施形態のプロジェクター10の概略構成図である。
図1に示すように、プロジェクター10は、照明装置700と、色分離導光光学系200と、赤色光用光変調装置(光変調装置)400Rと、緑色光用光変調装置(光変調装置)400Gと、青色光用光変調装置(光変調装置)400Bと、合成光学系500と、投射光学装置600と、を備える。赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bは、照明装置700から射出される合成光LWを含む光を画像情報に応じて変調することにより画像光を形成する。投射光学装置600は、画像光を投射する。
【0011】
照明装置700は、光源装置710と、集光素子720と、光拡散装置740と、平行化素子730と、インテグレーター光学系780と、を備える。照明装置700において、光拡散装置740、平行化素子730およびインテグレーター光学系780は、照明装置700から射出される合成光LWの主光線に一致する光軸AX0上に設けられている。光源装置710、集光素子720および光拡散装置740は、光軸AX0と直交する光軸AX1上に設けられている。
【0012】
以下、光源装置710から合成光LWが射出される方向をX方向とし、照明装置700から合成光LWが射出される方向をY方向とし、X方向およびY方向と垂直な方向をZ方向として説明する。光軸AX1はX軸と平行であり、光軸AX0はY軸と平行である。
【0013】
光源装置710は、赤色光源部71Rと、緑色光源部71Gと、青色光源部71Bと、光合成部材72と、を備える。赤色光源部71Rは、赤色半導体レーザー73Rと、コリメーターレンズ74Rと、を有する。緑色光源部71Gは、緑色半導体レーザー73Gと、コリメーターレンズ74Gと、を有する。青色光源部71Bは、青色半導体レーザー73Bと、コリメーターレンズ74Bと、を有する。
本実施形態の赤色半導体レーザー73Rは、特許請求の範囲の第1光源に対応する。本実施形態の緑色半導体レーザー73Gは、特許請求の範囲の第2光源に対応する。
【0014】
赤色半導体レーザー73Rは、第1波長帯の赤色光LRを-Y方向に射出する。第1波長帯は、例えば635nm±20nmである。緑色半導体レーザー73Gは、第2波長帯の緑色光LGを+X方向に射出する。第2波長帯は、例えば550nm±30nmである。青色半導体レーザー73Bは、第3波長帯の青色光LBを+Y方向に射出する。第3波長帯は、例えば455nm±20nmである。
本実施形態の赤色光LRは、特許請求の範囲の第1光に対応する。本実施形態の緑色光LGは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0015】
コリメーターレンズ74Rは、赤色半導体レーザー73Rから射出される赤色光LRを平行化する。コリメーターレンズ74Gは、緑色半導体レーザー73Gから射出される緑色光LGを平行化する。コリメーターレンズ74Bは、青色半導体レーザー73Bから射出される青色光LBを平行化する。
図1では、各光源部71R,71G,71Bとして、1個の半導体レーザーと1個のコリメーターレンズとを示しているが、半導体レーザーおよびコリメーターレンズの個数および配置は限定されない。また、各光源部71R,71G,71Bは、半導体レーザーとコリメーターレンズとを保持するパッケージ等、他の部材を有していてもよい。
【0016】
光合成部材72は、クロスダイクロイックプリズムから構成されている。クロスダイクロイックプリズムは、第1ダイクロイックミラー721と、第2ダイクロイックミラー722と、を有する。第1ダイクロイックミラー721および第2ダイクロイックミラー722は、X軸およびY軸のそれぞれに対して45°で交差する方向に配置されている。第1ダイクロイックミラー721は、赤色光LRを反射し、緑色光LGおよび青色光LBを透過する。第2ダイクロイックミラー722は、青色光LBを反射し、緑色光LGおよび赤色光LRを透過する。
【0017】
赤色光源部71Rは、光合成部材72の第1面72aに対向して配置され、第1面72aに向けて赤色光LRを射出する。緑色光源部71Gは、光合成部材72の第2面72bに対向して配置され、第2面72bに向けて緑色光LGを射出する。青色光源部71Bは、光合成部材72の第3面72cに対向して配置され、第3面72cに向けて青色光LBを射出する。赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとが合成された白色の合成光LWは、光合成部材72の第4面72dから射出される。
【0018】
赤色光源部71Rは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第1面72aに垂直に延びる仮想線に対して-X側にずれて配置されている。すなわち、赤色光源部71Rは、上記交点を通り第1面72aに垂直に延びる仮想線に対して、光拡散装置740が配置される側とは反対側にずれて配置されている。緑色光源部71Gは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第2面72bに垂直に延びる仮想線(光軸AX1)に対して+Y側にずれて配置されている。すなわち、緑色光源部71Gは、上記交点を通り第2面72bに垂直に延びる仮想線に対して、平行化素子730が配置される側にずれて配置されている。青色光源部71Bは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第3面72cに垂直に延びる仮想線に対して+X側にずれて配置されている。すなわち、青色光源部71Bは、上記交点を通り第3面72cに垂直に延びる仮想線に対して、光拡散装置740が配置される側にずれて配置されている。これらの光源部71R,71G,71Bの配置によって、合成光LWは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第4面72dに垂直に延びる仮想線(光軸AX1)に対して+Y側にずれた位置から射出される。すなわち、光源装置710から射出される合成光LWの主光線LW0は、光軸AX1に対して+Y側にずれる。
【0019】
以上の構成により、光源装置710は、青色光LB、緑色光LGおよび赤色光LRを含む白色の合成光LWを射出する。赤色半導体レーザー73Rから射出される赤色光LR、緑色半導体レーザー73Gから射出される緑色光LG、および青色半導体レーザー73Bから射出される青色光LBのそれぞれは、直線偏光である。合成光LWを構成する青色光LBの偏光方向、緑色光LGの偏光方向、および赤色光LRの偏光方向は、光合成部材72から射出される時点で互いに一致している。
【0020】
集光素子720は、光合成部材72と光拡散装置740との間に設けられている。集光素子720は、光源装置710から射出される合成光LWを光拡散装置740に向けて集光する。具体的には、集光素子720は、合成光LWを光拡散装置740の拡散板305上に集光する。集光素子720は、一つの凸レンズから構成されている。なお、集光素子720は、複数のレンズから構成されていてもよい。集光素子720の光軸は光軸AX1に一致するため、以下、集光素子720の光軸を光軸AX1と記すことにする。
【0021】
集光素子720に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置は、集光素子720の光軸AX1に対して平行化素子730が配置されている側(+Y側)にずれている。換言すると、集光素子720に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置は、集光素子720の光軸AX1に対して光拡散装置740から射出される合成光LWの進行方向(+Y側)にずれている。集光素子720の光軸AX1に対する主光線LW0の入射位置のずれ量F1は、集光素子720に入射する前の合成光LWの光束径D1の1/2の長さ以上であることが望ましい。
【0022】
なお、合成光LWの光束径D1は、赤色光源部71Rからの赤色光LRの射出方向および青色光源部71Bからの青色光LBの射出方向と、赤色光LRおよび青色光LBの各射出方向と直交する緑色光源部71Gからの緑色光LGの射出方向と、の双方に直交する方向から合成光LWを見たときの合成光LWの外径である。すなわち、青色光源部71Bからの青色光LBの射出方向と、緑色光LGの射出方向と、の双方に直交する方向は、
図1の紙面に直交する方向である。また、主光線LW0の入射位置のずれ量F1は、集光素子720の入射面において主光線LW0が入射する点と光軸AX1との間の距離である。
【0023】
図2は、拡散板305の正面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う拡散板305の断面図である。
図2および
図3に示すように、光拡散装置740は、円板状の拡散板305と、駆動装置303と、を有する。拡散板305は、集光素子720から射出される合成光LWを反射して拡散する拡散面301aを有する。すなわち、本実施形態の拡散板305は、透過型の拡散板ではなく、反射型の拡散板である。拡散板305は、集光素子720の所定の集光位置に配置されている。駆動装置303は、モーターから構成され、拡散板305を拡散面301aと交差する回転軸302を中心として回転させる。なお、本明細書における拡散面301aは、後述する微細な凹凸構造の形状からなる湾曲面を意味するのではなく、複数の凹部および複数の凸部が概ね並ぶ一つの平面を意味する。
【0024】
図1に示すように、拡散板305は、拡散面301aが光軸AX0および光軸AX1のそれぞれに対して45°の角度をなすように配置されている。すなわち、拡散面301aは、集光素子720の光軸AX1に対して45°傾斜している。ここで、45°傾斜するとは、45°のみに限らず、45°に対して±5°のずれを許容することを意味する。
この構成によれば、拡散面301aに入射する合成光LWの主光線LW0の進行方向と、拡散面301aから射出される合成光LWの主光線LW0の進行方向と、を略直交させることができる。これにより、反射型の拡散板305を備える照明装置700の構成を簡略化することができる。
【0025】
図3に示すように、拡散板305は、基材301と、反射膜307と、誘電体多層膜308と、を有する。
【0026】
基材301は、アルミニウム合金で構成されている。アルミニウム合金として、例えばアルミニウム(Al)にマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)とが添加されたAl-Mg-Si系合金が用いられる。その他、アルミニウム合金には、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)等の元素が含有されていてもよい。
【0027】
基材301の2つの面のうち、合成光が入射する拡散面301aに、複数の凹部と複数の凸部とからなる凹凸構造304が設けられている。凹凸構造304は、ランダムに配置された複数の曲面を含む。すなわち、基材301は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造304を有する。個々の凹部は、略球面状に形成されている。凹部の深さは、例えば球面の径の1/4程度である。凹凸構造304は、基材301をエッチング処理などで削ったり、ブラスト処理などで塑性変形させたりすることによって形成できる。
【0028】
拡散面301a上の径方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの凹部と1つの凸部とを合わせた径方向に沿う長さは、互いに隣り合う他の1つの凹部と他の1つの凸部とを合わせた径方向に沿う長さとは異なる。ここで、互いに隣り合う1つの凹部と1つの凸部とを合わせた径方向に沿う長さを凹凸のピッチと定義する。換言すると、拡散面301a上の径方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの凹部と1つの凸部とからなる凹凸のピッチは、互いに隣り合う他の1つの凹部と他の1つの凸部とからなる凹凸のピッチとは異なる。すなわち、拡散面301a上の径方向に沿う断面において、凹凸構造のピッチはランダムである。本実施形態の径方向は、特許請求の範囲の第1方向に対応する。
【0029】
また、拡散面301a上の径方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの凹部と1つの凸部とを合わせた形状は、互いに隣り合う他の1つの凹部と他の1つの凸部とを合わせた形状とは異なる。すなわち、拡散面301a上の径方向に沿う断面において、凹凸形状はランダムである。
【0030】
このように、凹凸構造304のピッチおよび形状がランダムな拡散面301aを形成することにより、合成光の可干渉性を低減することができる。これにより、プロジェクター10が形成する画像のスペックルノイズを効果的に抑制することができる。
【0031】
アルミニウム合金として、例えばJIS合金呼称のA1050、A1070、A1085などの1000系アルミニウム合金展伸材が用いられてもよい。この種の合金材は、加工性に優れるため、プレスや切断などによる外形や塑性変形による表面形状の形成を容易に行うことができる。また、JIS合金呼称のA6061、A6063などの6000系アルミニウム合金展伸材が用いられてもよい。この種の合金材は、強度に優れ、表面切削や塑性変形加工を施しても、反射膜307の断裂などの原因となる微小亀裂などがあまり発生しない。性能や加工方法によって、その他のアルミニウム合金展伸材、ダイキャスト用や鋳造用のアルミニウム合金を適宜選択することができる。
【0032】
反射膜307は、基材301の凹凸構造304に沿って設けられている。反射膜307は、アルミニウムを含有する材料から構成されている。具体的には、反射膜307は、アルミニウム含有率が99.99wt%以上の高純度アルミニウムから構成されている。好ましくは、反射膜307は、含有率99.999wt%以上の超高純度アルミニウムを選択することができる。
【0033】
反射膜307は、基材301の拡散面301aに、スパッタ法、蒸着法等の成膜法を用いて所定の膜厚で表面が滑らかな純アルミニウム膜を形成することにより得られる。成膜工程において、アルミニウムの含有率が例えば99.999wt%のスパッタリングターゲットを用いた場合、アルミニウムの含有率が99.999wt%の超高純度アルミニウムからなる反射膜307が得られる。
【0034】
誘電体多層膜308は、反射膜307の基材301とは反対側の面に設けられている。
図3では図示を省略するが、誘電体多層膜308は、屈折率が互いに異なる2種類の誘電体膜が交互に複数積層された構成を有する。
【0035】
本実施形態の拡散板305において、凹凸構造304は、光合成部材72から射出される合成光LWを1回反射して平行化素子730に向けて射出する。したがって、光合成部材72から射出される合成光LWは、拡散面301aにおいて多重反射することなく、拡散板305から平行化素子730に向けて射出される。この構成によれば、光合成部材72から射出される合成光LWが拡散面301aで多重反射しないため、合成光LWの偏光方向の乱れを抑制することができる。なお、拡散板305は、マイクロレンズアレイを備えたマイクロレンズアレイ型の拡散板であってもよい。
【0036】
図1に示すように、平行化素子730は、コリメーターレンズから構成されている。平行化素子730は、光拡散装置740から射出された合成光LWを平行化し、インテグレーター光学系780に向けて射出する。本実施形態の場合、平行化素子730は、一つの凸レンズから構成されている。なお、平行化素子730は、複数のレンズから構成されていてもよい。
【0037】
インテグレーター光学系780は、マルチレンズアレイ781と、重畳レンズ783と、を有する。インテグレーター光学系780は、平行化素子730から射出された合成光LWの照度分布を赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bの各々の画像形成領域において均一化する。
【0038】
本実施形態の場合、マルチレンズアレイ781は、第1マルチレンズ面781aと第2マルチレンズ面781bとが一体化された両面マルチレンズアレイから構成されている。第1マルチレンズ面781aは、平行化素子730から射出された合成光LWを複数の部分光線束に分割するための複数のレンズを有する。複数のレンズは、光軸AX0と直交する面内にマトリクス状に配列されている。なお、第1マルチレンズ面781aと第2マルチレンズ面781bとが2枚のマルチレンズアレイに分かれて設けられていてもよい。
【0039】
第2マルチレンズ面781bは、第1マルチレンズ面781aの複数のレンズに対応する複数のレンズを有する。第2マルチレンズ面781bは、後段の重畳レンズ783とともに、第1マルチレンズ面781aの各レンズの像を赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bの各々の画像形成領域もしくはその近傍に結像させる。複数のレンズは、光軸AX0に直交する面内にマトリクス状に配列されている。
【0040】
重畳レンズ783は、マルチレンズアレイ781から射出される複数の部分光線束のそれぞれを集光して赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bの各々の画像形成領域もしくはその近傍で互いに重畳させる。
【0041】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー240と、ダイクロイックミラー220と、反射ミラー210と、反射ミラー230と、反射ミラー250と、を備える。色分離導光光学系200は、照明装置700から射出された白色の合成光LWを赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBに分離し、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBをそれぞれ対応する赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bに導く。
【0042】
色分離導光光学系200と赤色光用光変調装置400Rとの間には、フィールドレンズ300Rが配置されている。色分離導光光学系200と緑色光用光変調装置400Gとの間には、フィールドレンズ300Gが配置されている。色分離導光光学系200と青色光用光変調装置400Bとの間には、フィールドレンズ300Bが配置されている。
【0043】
ダイクロイックミラー240は、青色光LBを反射させ、赤色光LRおよび緑色光LGを透過させる。ダイクロイックミラー220は、緑色光LGを反射させ、青色光LBを透過させる。反射ミラー210および反射ミラー230のそれぞれは、赤色光LRを反射させる。反射ミラー250は、青色光LBを反射させる。
【0044】
赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bのそれぞれは、入射した色光を画像情報に応じて変調して画像を形成する液晶パネルから構成されている。
【0045】
図示を省略したが、フィールドレンズ300Rと赤色光用光変調装置400Rとの間、フィールドレンズ300Gと緑色光用光変調装置400Gとの間、フィールドレンズ300Bと青色光用光変調装置400Bとの間には、入射側偏光板がそれぞれ配置されている。赤色光用光変調装置400Rと合成光学系500との間、緑色光用光変調装置400Gと合成光学系500との間、青色光用光変調装置400Bと合成光学系500との間には、射出側偏光板がそれぞれ配置されている。
【0046】
合成光学系500は、赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、青色光用光変調装置400Bから射出された各画像光を合成する。合成光学系500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなすクロスダイクロイックプリズムから構成されている。クロスダイクロイックプリズムにおいて、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面に誘電体多層膜が設けられている。
【0047】
合成光学系500から射出された画像光は、投射光学装置600によってスクリーンSCR上に拡大投射される。投射光学装置600は、複数のレンズから構成されている。
【0048】
[比較例]
以下、比較例の照明装置800について説明する。
図4は、比較例の照明装置800の概略構成図である。
図4において、
図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、比較例の照明装置800は、光源装置810と、集光素子720と、光拡散装置740と、平行化素子730と、マルチレンズアレイ781と、を備える。光源装置810は、赤色光源部71Rと、緑色光源部71Gと、青色光源部71Bと、光合成部材72と、を備える。
【0050】
赤色光源部71Rは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第1面72aに垂直に延びる仮想線上に配置されている。緑色光源部71Gは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第2面72bに垂直に延びる仮想線(光軸AX1)上に配置されている。青色光源部71Bは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第3面72cに垂直に延びる仮想線上に配置されている。これらの光源部71R,71G,71Bの配置によって、合成光LWは、第1ダイクロイックミラー721と第2ダイクロイックミラー722との交点を通り、第4面72dに垂直に延びる仮想線(光軸AX1)に沿って射出される。すなわち、光源装置810から射出される合成光LWの主光線LW0は、光軸AX1に一致する。
【0051】
この場合、集光素子720から射出される合成光LWの角度分布は、集光素子720の光軸AX1に対して対称となる。ところが、合成光LWが拡散板305に対して45°の角度で入射する際、拡散板305が指向性を有しているため、拡散板305から射出される合成光LWの角度分布は、光軸AX0に対して対称とはならない。具体的には、拡散板305から射出される合成光LWは、拡散面301aの法線に対して反射角が大きい側に偏って拡散する。すなわち、拡散板305から射出される合成光LWは、光軸AX0に対して-X側よりも+X側に広い角度で拡散する。
【0052】
本発明者は、比較例の照明装置800において、拡散板305から射出される合成光LWを構成する各色光の照度分布のシミュレーションを行った。
図5~
図7は、シミュレーション結果を示す図である。
図5は、拡散板305から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
図6は、拡散板305から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
図7は、拡散板305から射出される青色光の照度分布を示す図である。各図において、横軸は、X座標であり、光軸AX0上を基準として示している。すなわち、当該基準のX座標の値は0である。縦軸は、照度である。なお、X座標および照度は相対値である。
【0053】
図5~
図7に示すように、赤色光、緑色光、および青色光のいずれにおいても、照度分布のピークは、ほぼ光軸AX0上に位置している。ところが、照度分布の裾野に着目すると、照度分布の裾野は、いずれも-X側よりも+X側に長く延びている。
【0054】
したがって、比較例の照明装置800においては、平行化素子730のサイズが小さい場合、拡散板305から射出される合成光LWのうち、+X側に向けて反射する合成光LWの一部が平行化素子730に入射されないおそれがある。これにより、合成光LWの利用効率が低下する、という問題が生じる。また、合成光LWの利用効率を低下させないために平行化素子730のサイズを大きくした場合、平行化素子730と拡散板305とが干渉し、各光学部材の配置が難しくなる、という問題が生じる。
【0055】
[第1実施例]
本発明者は、本実施形態の照明装置700について、上記の比較例と同様、拡散板305から射出される合成光LWを構成する各色光の照度分布のシミュレーションを行った。
図8~
図10は、第1実施例の照明装置のシミュレーション結果を示す図である。
図8は、拡散板305から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
図9は、拡散板305から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
図10は、拡散板305から射出される青色光の照度分布を示す図である。各図において、横軸は、X座標であり、光軸AX0を基準として示している。すなわち、当該基準のX座標の値は0である。縦軸は、照度である。なお、X座標および照度は相対値である。
【0056】
第1実施例のシミュレーション条件として、集光素子720の光軸AX1に対する主光線LW0の入射位置のずれ量F1を、集光素子720に入射する前の合成光LWの光束径D1の1/2に設定した。
【0057】
図8~
図10に示すように、赤色光、緑色光、および青色光のいずれにおいても、集光素子720の光軸AX1に対する主光線LW0の入射位置を+Y側にずらしたことによって、照度分布のピークは、光軸AX0上から-X側に移動した。ところが、照度分布の裾野に着目すると、比較例とは異なり、光軸AX0上から照度分布の裾野の端部までの距離は、-X側と+X側とで略同等となった。
【0058】
[第2実施例]
図11~
図13は、第2実施例の照明装置のシミュレーション結果を示す図である。
図11は、拡散板305から射出される赤色光の照度分布を示す図である。
図12は、拡散板305から射出される緑色光の照度分布を示す図である。
図13は、拡散板305から射出される青色光の照度分布を示す図である。各図において、横軸は、X座標であり、光軸AX0を基準として示している。すなわち、当該基準のX座標の値は0である。縦軸は、照度である。なお、X座標および照度は相対値である。
【0059】
第2実施例のシミュレーション条件として、集光素子720の光軸AX1に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置のずれ量F1を、第1実施例よりも大きくし、集光素子720に入射する前の合成光LWの光束径D1の2/3に設定した。
【0060】
図11~
図13に示すように、赤色光、緑色光、および青色光のいずれにおいても、照度分布のピークは、光軸AX0上から-X側に移動した。ここで、照度分布の裾野に着目すると、光軸AX0上から照度分布の裾野の端部までの距離は、比較例に比べて、-X側と+X側との差が小さい。一方、第1実施例に比べると、光軸AX0上から照度分布の裾野の端部までの距離はいずれも+X側よりも-X側に長く延びていることも確認できた。つまり、光軸AX0上から照度分布の裾野の端部までの距離が-X側と+X側とで再びバランスが崩れ始めたことが確認できる。
【0061】
第1実施例および第2実施例の結果から、集光素子720に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置を光軸AX1に対して平行化素子730が配置されている側にずらすことにより、拡散板305から射出される合成光LWが特定の方向に不均等に拡散する現象を改善でき、上記比較例の問題点を解決できることがわかった。
【0062】
また、本発明者の検討によれば、集光素子720の光軸AX1に対する主光線LW0の入射位置のずれ量F1を合成光LWの光束径D1の2/3よりも大きくすると、-X側の領域の照度分布と+X側の領域の照度分布との差が大きくなり過ぎてしまう。この場合、最終的に光変調装置に入射する光の入射角のバランスが大きく崩れ、画像品質を低下させるおそれがある。そのため、第1実施例および第2実施例のシミュレーション結果から、集光素子720の光軸AX1に対する主光線LW0の入射位置のずれ量F1は、合成光LWの光束径D1の1/2の長さ以上、かつ、2/3の長さ以下とすることが望ましい。
【0063】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の照明装置700は、第1波長帯の赤色光LRを射出する赤色光源部71Rと、第1波長帯とは異なる第2波長帯の緑色光LGを射出する緑色光源部71Gと、第1波長帯および第2波長帯とは異なる第3波長帯の青色光LBを射出する青色光源部71Bと、赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとを合成して合成光LWを射出する光合成部材72と、光合成部材72から射出される合成光LWを拡散する光拡散装置740と、光合成部材72と光拡散装置740との間に設けられ、合成光LWを光拡散装置740に向けて集光する集光素子720と、光拡散装置740から射出される合成光LWを平行化する平行化素子730と、を備える。光拡散装置740は、合成光LWを反射して拡散する拡散面301aを有する拡散板305と、拡散板305を拡散面301aと交差する回転軸302を中心として回転させる駆動装置303と、を有する。拡散面301aは、集光素子720の光軸AX1に対して傾斜している。集光素子720に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置は、集光素子720の光軸AX1に対して平行化素子730が配置されている側にずれている。
【0064】
本実施形態の照明装置700によれば、光拡散装置740から射出される合成光LWが平行化素子730に向かう際に特定の方向に不均等に拡散する現象を改善することができる。これにより、平行化素子730のサイズをむやみに大きくすることなく、合成光LWの利用効率を十分に確保することができる。
【0065】
本実施形態のプロジェクター10は、本実施形態の照明装置700と、照明装置700から射出される合成光LWを含む光を変調する光変調装置400R,400G,400Bと、光変調装置400R,400G,400Bにより変調された光を投射する投射光学装置600と、を備える。
【0066】
本実施形態のプロジェクター10によれば、光利用効率に優れるプロジェクター10が実現できる。
【0067】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図14を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの基本構成の説明は省略する。
【0068】
図14は、第2実施形態の照明装置900の概略構成図である。
図14において、第1実施形態で用いた
図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
図14に示すように、本実施形態の照明装置900は、光源装置910と、集光素子720と、光拡散装置740と、平行化素子730と、マルチレンズアレイ781と、を備える。光源装置910は、赤色光源部71Rと、緑色光源部71Gと、青色光源部71Bと、光合成部材92と、を備える。
【0070】
光合成部材92は、第1ダイクロイックミラー921と、第2ダイクロイックミラー922と、を有する。第1ダイクロイックミラー921および第2ダイクロイックミラー922は、X軸およびY軸のそれぞれに対して45°で交差する方向に配置されている。第1ダイクロイックミラー921は、赤色光LRを反射し、緑色光LGを透過する。第2ダイクロイックミラー922は、青色光LBを反射し、緑色光LGおよび赤色光LRを透過する。第1ダイクロイックミラー921および第2ダイクロイックミラー922は、光軸AX1に沿って配置されている。
【0071】
本実施形態の光源装置910においても、第1実施形態と同様、合成光LWは、集光素子720の光軸AX1に対して+Y側にずれた位置から射出される。すなわち、光源装置910から射出される合成光LWの主光線LW0は、光軸AX1に対して+Y側にずれる。これにより、集光素子720に対する合成光LWの主光線LW0の入射位置は、集光素子720の光軸AX1に対して平行化素子730が配置されている側(+Y側)にずれている。照明装置900のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
[第2実施形態の効果]
本実施形態の照明装置900においても、平行化素子730のサイズを大きくすることなく、合成光LWの利用効率を十分に確保できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0074】
例えば、
図1に示す第1実施形態の構成に代えて、各色の光源部と光合成部材との位置関係を
図4のように比較例と同様の配置とした上で、各色の光源部と光合成部材との全体を集光素子の光軸に対して平行化素子が配置されている側、すなわち+Y側にずらしてもよい。この構成によっても、集光素子の光軸に対する合成光の主光線の入射位置を平行化素子が配置されている側、すなわち+Y側にずらすことができる。
【0075】
その他、照明装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による照明装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による照明装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有する単板式のプロジェクターであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、本発明の照明装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の照明装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0077】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0078】
(付記1)
第1波長帯の第1光を射出する第1光源と、
前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源と、
前記第1光と前記第2光とを合成して合成光を射出する光合成部材と、
前記光合成部材から射出される前記合成光を拡散する光拡散装置と、
前記光合成部材と前記光拡散装置との間に設けられ、前記合成光を前記光拡散装置に向けて集光する集光素子と、
前記光拡散装置から射出される前記合成光を平行化する平行化素子と、
を備え、
前記光拡散装置は、
前記合成光を反射して拡散する拡散面を有する拡散板と、
前記拡散板を前記拡散面と交差する回転軸を中心として回転させる駆動装置と、
を有し、
前記拡散面は、前記集光素子の光軸に対して傾斜しており、
前記集光素子に対する前記合成光の主光線の入射位置は、前記集光素子の前記光軸に対して前記平行化素子が配置されている側にずれている、照明装置。
【0079】
この構成によれば、光拡散装置から射出される合成光が平行化素子に向かう際に特定の方向に不均等に拡散する現象を改善することができる。そのため、平行化素子のサイズをむやみに大きくすることなく、合成光の利用効率を十分に確保することができる。
【0080】
(付記2)
前記光軸に対する前記主光線の前記入射位置のずれ量は、前記合成光の光束径の1/2の長さ以上である、付記1に記載の照明装置。
【0081】
この構成によれば、光拡散装置から射出される合成光の一方向への広がりと他方向への広がりとを略均等にすることができる。
【0082】
(付記3)
前記光軸に対する前記拡散面の傾斜角度は、45°である、付記1または付記2に記載の照明装置。
【0083】
この構成によれば、拡散面に入射する合成光の主光線と拡散面から射出される合成光の主光線とを略直交させることができ、反射型の拡散板を備える照明装置の構成を簡略化することができる。
【0084】
(付記4)
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記拡散面上の第1方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの前記凹部と1つの前記凸部とを合わせた前記第1方向に沿う長さは、互いに隣り合う他の1つの前記凹部と他の1つの前記凸部とを合わせた前記第1方向に沿う長さとは異なる、付記1から付記3までのいずれか一つに記載の照明装置。
【0085】
この構成によれば、凹凸構造のピッチがランダムな拡散面を構成でき、合成光の可干渉性を低減することができる。これにより、プロジェクターが形成する画像のスペックルノイズを効果的に抑制することができる。
【0086】
(付記5)
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記拡散面上の第1方向に沿う断面において、互いに隣り合う1つの前記凹部と1つの前記凸部とを合わせた形状は、互いに隣り合う他の1つの前記凹部と他の1つの前記凸部とを合わせた形状とは異なる、付記1から付記4までのいずれか一つに記載の照明装置。
【0087】
この構成によれば、凹凸構造の形状がランダムな拡散面を構成でき、合成光の可干渉性を低減することができる。これにより、プロジェクターが形成する画像のスペックルノイズを効果的に抑制することができる。
【0088】
(付記6)
前記第1光および前記第2光のそれぞれは、直線偏光であり、
前記光合成部材から射出される前記合成光において、前記第1光の偏光方向と前記第2光の偏光方向とは、互いに一致している、付記1から付記5までのいずれか一つに記載の照明装置。
【0089】
この構成によれば、液晶パネル等の偏光を用いた光変調装置に最適な照明光を形成することができる。
【0090】
(付記7)
前記拡散面は、複数の凹部と複数の凸部とを含む凹凸構造を有し、
前記凹凸構造は、前記光合成部材から射出される前記合成光を1回反射して前記平行化素子に向けて射出する、付記6に記載の照明装置。
【0091】
この構成によれば、光合成部材から射出される合成光が拡散面で多重反射しないため、合成光の偏光の乱れを抑制することができる。
【0092】
(付記8)
付記1から付記7までのいずれか一つに記載の照明装置と、
前記照明装置から射出される前記合成光を含む光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【0093】
この構成によれば、光利用効率の高いプロジェクターを実現することができる。
【符号の説明】
【0094】
10…プロジェクター、72,92…光合成部材、73R…赤色半導体レーザー(第1光源)、73G…緑色半導体レーザー(第2光源)、301a…拡散面、302…回転軸、303…駆動装置、304…凹凸構造、305…拡散板、400R…赤色光用光変調装置(光変調装置)、400G…緑色光用光変調装置(光変調装置)、400B…青色光用光変調装置(光変調装置)、600…投射光学装置、720…集光素子、730…平行化素子、740…光拡散装置、LR…赤色光(第1光)、LG…緑色光(第2光)、LW…合成光、LW0…主光線、AX1…光軸。