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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20241001BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20241001BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241001BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J7/34 B
H02J7/02 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022149360
(22)【出願日】2022-09-20
(65)【公開番号】P2024044047
(43)【公開日】2024-04-02
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大畠 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄次
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189152(JP,A)
【文献】特開2006-271136(JP,A)
【文献】特開2008-136258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0224428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/32
H02J 7/34
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が電池とコンバータとを含むとともに、負荷に対して互いに並列に接続されている複数の電池ユニットと、
前記複数の電池ユニットの各々を制御する制御装置と、を備え、
前記複数の電池ユニットは、第1電池ユニットと、第2電池ユニットとを含み、
前記制御装置は、
前記第1電池ユニットにおいて第1電圧指令に従って第1電圧制御を実行するとともに、前記第2電池ユニットにおいて電力指令に従って電力制御を実行し、
前記第1電圧制御における電力変化に制限値を設定し、
出力電圧値と指令電圧値との偏差が所定範囲を超える場合に、前記第2電池ユニットにおいて、前記電力制御を実行することに加えて第2電圧指令に従って第2電圧制御を実行する、電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電力指令の指令値に基づいて、前記所定範囲を調整する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電力指令の指令値が大きいほど、前記所定範囲を大きくする、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1電圧制御における電流値の変化量に上限値および下限値を設定することにより、前記制限値を設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記電力指令の指令値が大きいほど、前記所定範囲を大きくするとともに前記上限値および前記下限値の各々の絶対値を大きくする、請求項4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-103804号公報(特許文献1)には、複数の組電池が並列に接続された電池システムが開示されている。ここで、複数の組電池のうちの一部において電圧制御を実行し、残りの一部において電力制御を実行する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-103804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、複数の組電池のうちの一部(以下、第1電池ユニットとする)において電圧制御が実行され、残りの一部(以下、第2電池ユニットとする)において電力制御が実行される場合がある。この場合、第2電池ユニットにおいて出力電力が指令電力からずれると、上記ずれに起因する出力電圧の変動を抑制するために第1電池ユニットにかかる負荷が増大する。そこで、第1電池ユニットにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧の変動を抑制することが可能なシステムが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電力制御が行われる電池ユニットにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧の変動を抑制することが可能な電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る電源システムは、各々が電池とコンバータとを含むとともに、負荷に対して互いに並列に接続されている複数の電池ユニットと、複数の電池ユニットの各々を制御する制御装置と、を備える。複数の電池ユニットは、第1電池ユニットと、第2電池ユニットとを含む。制御装置は、第1電池ユニットにおいて第1電圧指令に従って第1電圧制御を実行するとともに、第2電池ユニットにおいて電力指令に従って電力制御を実行し、第1電圧制御における電力変化に制限を設定し、出力電圧値と指令電圧値との偏差が所定範囲を超える場合に、第2電池ユニットにおいて第2電圧指令に従って第2電圧制御を実行する。
【0007】
本開示の一の局面に係る電源システムでは、上記のように、第1電圧制御における電力変化に制限が設定される。これにより、第1電圧制御が行われる第1電池ユニットにかかる負荷が電力変化に起因して増加するのを抑制することができる。また、上記電源システムでは、出力電圧値と指令電圧値との偏差が所定範囲を超える場合に、第2電池ユニットにおいて第2電圧指令に従って第2電圧制御が実行される。これにより、第1電池ユニットにおける電力変化の制限に起因して上記偏差が上記所定範囲を超えた場合にも、第2電圧制御によって上記偏差の増加を抑制することができる。その結果、出力電圧の変動を抑制することができる。したがって、上記のように、第1電池ユニットにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧の変動を抑制することができる。
【0008】
上記一の局面に係る電源システムにおいて、好ましくは、制御装置は、電力指令の指令値に基づいて、上記所定範囲を調整する。このように構成すれば、電力指令の指令値の変化に起因して出力電圧値が大きく変化するとともに上記偏差が大きく変化する場合にも、上記所定範囲が調整されることにより、過剰に第2電圧制御が実行されるのを抑制することができる。
【0009】
この場合、好ましくは、制御装置は、電力指令の指令値が大きいほど、上記所定範囲を大きくする。このように構成すれば、電力指令の指令値の変化に起因して出力電圧値が大きくなるほど上記所定範囲が大きくなるので、過剰に第2電圧制御が実行されるのをより抑制することができる。
【0010】
上記一の局面に係る電源システムにおいて、好ましくは、制御装置は、第1電圧制御における電流値の変化量に上限値および下限値を設定することにより、上記制限値を設定する。このように構成すれば、第1電圧制御における電流値の変化量に上限値および下限値を設定することにより、第1電池ユニットにかかる負荷が増大するのを容易に抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御装置は、電力指令の指令値が大きいほど、上記所定範囲を大きくするとともに上記上限値および上記下限値の各々の絶対値を大きくする。このように構成すれば、過剰に第2電圧制御が実行されるのを抑制することができるとともに、過剰に電流制限されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電力制御が行われる電池ユニットにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による電源システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態による電源システムの制御装置の構成を示す図である。
図3】一実施形態による制御装置における電流制限部による制御を示す図である。
図4】一実施形態による制御装置における不感帯処理部による制御を示す図である。
図5】一実施形態による電流制限部における制限値と指令電力との関係を示す図である。
図6】一実施形態による不感帯処理部における不感帯の範囲と指令電力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る電源システム1の構成を示す図である。電源システム1は、負荷30に対して互いに並列に接続されている複数の電池ユニット100を備える。複数の電池ユニット100は、PCS(Power Conditioning System)10に対しても、互いに並列に接続されている。
【0016】
複数の電池ユニット100の各々は、コンバータ111と、電池120とを含む。コンバータ111は、PC(Power Control Unit)110に設けられている。また、複数の電池ユニット100の各々には、複数の電池120が設けられている。
【0017】
コンバータ111は、PCS10からの交流電力を直流電力に変換する。また、コンバータ111は、変換された直流電力を電池120に供給している。これにより、電池120が充電される。
【0018】
PCS10は、たとえば太陽光発電装置20から電力を受電している。また、PCS10は、負荷30に交流電力を供給している。なお、負荷30は、家庭で使用される電気製品(たとえばエアコンおよび照明器具等)を含む。また、PCS10は、電力系統PGと電力の授受を行っている。
【0019】
PCS10は、複数の電池ユニット100の各々を制御するECU11を含む。ECU11は、太陽光発電装置20、負荷30、および、電力系統PGの各々との間の電力の授受の制御も行う。
【0020】
複数の電池ユニット100は、第1電池ユニット100Aと、第2電池ユニット100Bとを含む。第1電池ユニット100Aの個数は、1つである。第2電池ユニット100Bの個数は、N-1個である。すなわち、複数の電池ユニット100の個数は、N個である。第1電池ユニット100Aおよび第2電池ユニット100Bの構成は、互いに共通である。
【0021】
制御装置200は、第1電池ユニット100Aにおいて電圧指令に従って電圧制御を実行する。なお、第1電池ユニット100Aにおける上記電圧指令および上記電圧制御は、それぞれ、本開示の「第1電圧指令」および「第1電圧制御」の一例である。
【0022】
一方、制御装置200は、第2電池ユニット100Bにおいて電力指令に従って電力制御を実行する。制御装置200は、複数の第2電池ユニット100Bの各々において電力制御を実行する。
【0023】
ここで、従来の電源システムでは、第2電池ユニットにおいて出力電力が指令電力からずれると、上記ずれに起因する出力電圧の変動を抑制するために第1電池ユニットにかかる負荷が増大する。第1電池ユニットにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧の変動を抑制することが可能なシステムが望まれている。
【0024】
そこで、本実施形態では、制御装置200は、第1電池ユニット100Aの電圧制御における電力変化に制限値を設定する。制御装置200は、第1電池ユニット100Aの電圧制御における電流値の変化量に上限値および下限値を設定することにより、上記制限値を設定する。なお、上記上限値および上記下限値は、互いに絶対値が等しい。
【0025】
具体的には、制御装置200は、電流制限部201(図2参照)を含む。図2に示すように、ECU11からの電圧指令(指令電圧V)に基づく信号が、電流制限部201に入力されている。詳細には、電圧指令Vと出力電圧V(第1電池ユニット100Aの出力電圧)との偏差(V-V)が、PI制御器202によりPI制御される。PI制御器202からの出力信号である指令電流I1が、電流制限部201に入力されている。なお、指令電圧Vおよび出力電圧Vは、それぞれ、本開示の「指令電圧値」および「出力電圧値」の一例である。
【0026】
そして、電流制限部201からの出力信号と第1電池ユニット100Aの出力電流I1との差分が、PI制御器203によってPI制御される。PI制御器203からの出力信号であるパルス信号P1に基づいて、第1電池ユニット100Aが制御される。
【0027】
図3に示すように、電流制限部201では、入力電流が上限値(図3では30A)以上の場合は、出力電流が30Aに固定される。入力電流が下限値(-30A)以下の場合は、出力電流が-30Aに固定される。また、入力電流の絶対値が上記下限値よりも大きく上記上限値よりも小さい場合は、出力電流と入力電流とは互いに等しい値になる。
【0028】
また、本実施形態では、制御装置200は、指令電圧Vと出力電圧Vとの偏差(V-V)が所定範囲を超える場合に、第2電池ユニット100Bにおいて電圧指令に従って電圧制御を実行する。なお、第2電池ユニット100Bにおける上記電圧指令および上記電圧制御は、それぞれ、本開示の「第2電圧指令」および「第2電圧制御」の一例である。
【0029】
具体的には、図2に示すように、制御装置200は、不感帯処理部204を含む。指令電圧Vと出力電圧Vとの偏差(V-V)が不感帯処理部204に入力される。
【0030】
そして、不感帯処理部204からの出力信号は、P制御器205によりP制御される。P制御器205からの出力信号および指令電流I2の和と、第2電池ユニット100Bの出力電流I2との差分が、PI制御器206によってPI制御される。PI制御器206からの出力信号であるパルス信号P2に基づいて、第2電池ユニット100Bが制御される。
【0031】
なお、指令電流I2は、電力指令(指令電力P)が第2電池ユニット100Bにおける出力電圧(電圧値B)で除算された値である。指令電力Pは、電力補正のフィードバックが行われることによって生成される。上記フィードバックでは、第1電池ユニット100Aの出力電力Pと指令電力Pとの差分(P-P)がPI制御器207によりPI制御される。指令電力Pは、PI制御器207からの出力値と、電源システム1の総電力実行値との和を、電池ユニット100の個数(N)で除算した値である。
【0032】
図4に示すように、不感帯処理部204では、入力電圧(上記偏差)の絶対値が設定値(図4では30V)以下の場合は、出力電圧が0になる。すなわち、入力電圧が-30Vと30Vとの間の範囲に不感帯が設定されている。また、入力電圧(上記偏差)が30Vよりも大きい場合は、出力電圧は、入力電圧から30を差し引いた値になる。また、入力電圧(上記偏差)が-30Vよりも小さい場合は、出力電圧は、入力電圧から-30を差し引いた値(30を加算した値)になる。上記不感帯の上限値および下限値は、互いに等しい値である。また、上記範囲は、本開示の「所定範囲」の一例である。
【0033】
また、図5に示すように、制御装置200は、指令電力Pに基づいて、電流制限部201における上記制限値(上限値および下限値)を調整する。具体的には、制御装置200は、指令電力Pが大きくなるほど、上記上限値(下限値)の絶対値を大きくする。図5に示す例では、指令電力Pの大きさに比例して上記絶対値が変化する。なお、指令電力Pは、負荷30の負荷容量が大きいほど大きくなる。
【0034】
また、図6に示すように、制御装置200は、指令電力Pに基づいて、不感帯処理部204における不感帯の範囲を調整する。具体的には、制御装置200は、指令電力Pが大きいほど、上記範囲(範囲における上限値および下限値)を大きくする。図6に示す例では、指令電力Pの大きさに比例して上記範囲が変化する。
【0035】
以上のように、上記実施形態においては、制御装置200は、第1電池ユニット100Aの電圧制御における電力変化に制限値を設定し、出力電圧Vと指令電圧Vとの偏差が所定範囲を超える場合に、第2電池ユニット100Bにおいて電圧指令に従って電圧制御を実行する。これにより、上記制限値が設けられたことに起因して出力電圧Vに変化が生じても、第2電池ユニット100Bにおける電圧制御によって上記変化を抑制することができる。したがって、上記電力変化の制限によって第1電池ユニット100Aにかかる負荷が増大するのを抑制しながら、出力電圧Vと指令電圧Vとの乖離を抑制することができる。
【0036】
上記実施形態では、指令電力Pの大きさに基づいて不感帯の範囲が調整される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、不感帯の範囲が一定(固定値)であってもよい。
【0037】
上記実施形態では、指令電力Pの大きさに基づいて電流制限部201の制限値(上限値および下限値)が調整される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、上記制限値が一定(固定値)であってもよい。たとえば、上記制限値が、電池120の許容電力と等しくてもよい。
【0038】
上記実施形態では、指令電力Pが大きいほど不感帯の範囲が大きくなる(指令電力Pに比例する)例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、指令電力Pと所定の閾値との大小関係に基づいて、不感帯の範囲が段階的(階段状)に変化してもよい。
【0039】
上記実施形態では、指令電力Pが大きいほど電流制限部201における上限値および下限値の絶対値が大きくなる(指令電力Pに比例する)例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、指令電力Pと所定の閾値との大小関係に基づいて、上記絶対値が段階的(階段状)に変化してもよい。
【0040】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 電源システム,30 負荷,100 電池ユニット,100A 第1電池ユニット,100B 第2電池ユニット,111 コンバータ,120 電池,200 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6