(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】建設機械の制御装置及びこれを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20241001BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20241001BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241001BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241001BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F01N3/18 B
E02F9/00 M
E02F9/26 B
F01N3/08 B
F01N11/00
(21)【出願番号】P 2022156439
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】臼本 翔汰
(72)【発明者】
【氏名】森 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】宇澤 亮太
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-17687(JP,A)
【文献】特開2012-137036(JP,A)
【文献】特開2017-95927(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/08
F01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物を還元剤を用いて還元する排ガス浄化装置と、前記排ガス浄化装置に前記還元剤を供給する供給装置と、前記エンジンにより駆動され、前記供給装置を冷却するための冷却装置と、を備える建設機械の制御装置であって、
前記排ガスの温度を検出する第1温度検出器と、
前記エンジンの停止を許容することを知らせるための停止許容報知を行う報知装置と、
前記排ガス浄化装置による前記排ガスの浄化効率を回復させる再生処理のための制御を行うコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記再生処理が行われていない場合には予め設定された非再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御し、前記再生処理が行われている場合には、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御し、
前記非再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値である非再生処理用基準値以下であることを含み、
前記再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値であって前記非再生処理用基準値よりも低い再生処理用基準値以下であることを含む、建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置であって、
前記コントローラは、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行う、建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の制御装置であって、
前記コントローラは、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行い、前記再生処理用条件が満たされていない場合には、予め設定された第2待機時間が経過した後に、前記非再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御する、建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の制御装置であって、
前記非再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下であることと、前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することと、を含む、建設機械の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械の制御装置であって、
前記排ガス浄化装置は、前記再生処理において前記浄化効率が回復する特性を有する浄化要素を含む第1処理部と、前記第1処理部よりも前記排ガスの流れの下流に配置され、前記還元剤を用いて還元反応を行うための第2処理部と、を含み、
前記供給装置は、前記第1処理部と前記第2処理部との間に配置され、
前記第1温度検出器は、前記第1処理部と前記供給装置との間に配置されている、建設機械の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械の制御装置であって、
前記排ガスの温度を検出する第2温度検出器をさらに備え、
前記第2温度検出器は、前記供給装置と前記第2処理部との間に配置され、
前記コントローラは、前記第1温度検出器が故障している場合には、前記第2温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値であって前記再生処理用基準値よりも低い第2再生処理用基準値以下である場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御する、建設機械の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の建設機械の制御装置であって、
前記コントローラは、前記第1温度検出器及び前記第2温度検出器が故障している場合には、予め設定された第3待機時間が経過した後に、前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御する、建設機械の制御装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の制御装置を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス浄化装置を備えた建設機械に用いられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンなどの建設機械にはエンジンが搭載され、当該エンジンの出力によって建設機械に含まれる駆動対象要素の駆動が行われる。この建設機械は、エンジンから排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化装置を備える。この排ガス浄化装置としては、例えば、尿素水を還元剤として排ガス中の窒素酸化物の選択式還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)の反応を行うための還元装置と、尿素水を供給するための噴射器と、を備えたものが知られている。また、排ガス浄化装置として、前記還元装置とともに、例えば、DPF(Diesel Particle Filter)を用いた装置、又はDOC(Diesel Oxidation Catalyst)を用いた装置を備えたものも知られている。DPFは、エンジンの排ガスにおける有害物質を含む微粒子を捕集するフィルタである。DOCは、排ガス中の未燃焼ガスを酸化除去するための酸化触媒である。
【0003】
エンジンの駆動中には、排ガスの温度が比較的高くなるので、冷却配管を循環する冷却水によって噴射器は冷却されているが、エンジンが停止すると、冷却水を循環させる冷却ポンプの駆動も停止するので、冷却水による冷却効果が得られない。従って、排ガスの温度が高い状態でイグニションキーオフ等によりエンジンが停止されると、排ガス管内の残留排ガスにより噴射器の温度が高くなり、噴射器内で尿素水が変質するという課題がある。特許文献1は、このような課題を解決するための技術を開示している。この特許文献1では、クーリング時間演算部が、温度検出部により検出された温度に基づいて、エンジンから排出される排気ガスの温度が一定値以下になるクーリング時間を演算し、報知部が、クーリング時間演算部により演算されたクーリング時間の間、エンジンの停止前に、クーリングの必要性をオペレータに報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、DOCは、排ガスが当該DOCを通過する過程において排ガスを浄化するものであるため、DOCに排ガス中の異物が堆積するとDOCによる排ガスの浄化効率(浄化性能)は低下する。また、DPFは、当該DPFに対する粒子状物質の捕捉量の増加に応じて粒子状物質の捕捉性能、つまり、排ガスの浄化効率が低下する。従って、排ガス浄化装置がDOC又はDPFを用いた装置を含む場合には、定期的に再生処理が行われる。再生処理では、排ガスの温度を上昇させることにより、DOCに堆積された異物又はDPFに捕捉された粒子状物質を燃焼させる。これにより、DOC又はDPFによる排ガスの浄化効率は回復する。すなわち、DOC又はDPFは再生される。
【0006】
上記のような再生処理が行われているときと再生処理が行われていないときでは、排ガスの温度は大きく異なる。具体的には、再生処理が行われていないときの通常の稼働状態における排ガスの温度は、例えば200~300℃程度であるのに対し、再生処理が行われているときの排ガスの温度は、例えば600℃程度まで上昇する。そして、再生処理が終了すると、排ガスの温度は、再生処理時の高温状態から通常の稼働状態まで急激に低下する。一方で、噴射器及びこれに付随するコネクタなどの部品の温度が低下する挙動は、排ガスの温度低下の挙動と大きく異なる。しかし、特許文献1の技術では、再生処理の有無については何ら考慮されておらず、また、排ガスの温度低下の挙動と噴射器及びこれに付随するコネクタなどの部品の温度低下の挙動についても何ら考慮されていない。
【0007】
本開示は、エンジンの停止が許容されることをオペレータに知らせるための報知を再生処理の有無に応じて適切に行うことができる建設機械の制御装置及びこれを備えた建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
提供されるのは、エンジンと、前記エンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物を還元剤を用いて還元する排ガス浄化装置と、前記排ガス浄化装置に前記還元剤を供給する供給装置と、前記エンジンにより駆動され、前記供給装置を冷却するための冷却装置と、を備える建設機械の制御装置であって、前記排ガスの温度を検出する第1温度検出器と、前記エンジンの停止を許容することを知らせるための停止許容報知を行う報知装置と、前記排ガス浄化装置による前記排ガスの浄化効率を回復させる再生処理のための制御を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記再生処理が行われていない場合には予め設定された非再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御し、前記再生処理が行われている場合には、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御し、前記非再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値である非再生処理用基準値以下であることを含み、前記再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値であって前記非再生処理用基準値よりも低い再生処理用基準値以下であることを含む。
【0009】
この建設機械の制御装置では、再生処理用条件及び非再生処理用条件のそれぞれが予め設定されており、再生処理が行われていない場合には、停止許容報知を行うか否かの判定が非再生処理用条件を用いて行われ、再生処理が行われている場合には、停止許容報知を行うか否かの判定が再生処理用条件を用いて行われる。そして、供給装置及びこれに付随する部品の熱容量が排ガスの熱容量よりも大きいことが考慮されて、再生処理用条件における再生処理用基準値は、非再生処理用条件における非再生処理用基準値よりも低く設定されている。すなわち、この再生処理用条件における再生処理用基準値は、第1温度検出器により検出される排ガスの温度が当該再生処理用基準値以下である場合にはその時点でエンジンが停止されて供給装置の冷却が停止されたとしても供給装置の故障のリスクが低いことを示すような値である。従って、この制御装置は、エンジンの停止が許容されることをオペレータに知らせるための報知(停止許容報知)を再生処理の有無に応じて適切に行うことができる。これにより、再生処理の有無にかかわらず、供給装置が適切に冷却された状態でエンジンが停止されるので、供給装置が故障するリスクを低減できる。
【0010】
なお、再生処理用基準値は、再生処理が行われているときの排ガスの温度、再生処理が終了した後における排ガスの温度低下の挙動、再生処理が終了した後における供給装置及びこれに付随する部品の温度低下の挙動、などを考慮したシミュレーション、実験などにより予め設定される。同様に、非再生処理用基準値は、再生処理が行われていないときの排ガスの温度と供給装置及びこれに付随する部品の温度などを考慮したシミュレーション、実験などにより予め設定される。
【0011】
前記コントローラは、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行うことが好ましい。この構成では、第1待機時間が経過した後に再生処理用条件が満たされているか否かの判定が行われるので、前記判定が行われるまでに、熱容量の大きい供給装置及びこれに付随する部品の温度がある程度実際に低下するまでの時間的な猶予が与えられる。これにより、供給装置及びこれに付随する部品の温度が再生処理用基準値を大きく超えるような段階で前記判定が行われることがなくなるので、コントローラによる演算処理の負荷を低減できる。
【0012】
前記コントローラは、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行い、前記再生処理用条件が満たされていない場合には、予め設定された第2待機時間が経過した後に、前記非再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御することが好ましい。第1待機時間が経過し、さらに第2待機時間が経過したような場合には、排ガスの温度が依然として再生処理用基準値を超えるような場合であっても、供給装置及びこれに付随する部品の温度は、供給装置の故障のリスクが低減された温度に達していることが想定される。そこで、この構成では、再生処理が終了又は中断し、第1待機時間が経過した後に、再生処理用条件が満たされていない場合であったとしても、第2待機時間が経過した後に非再生処理用条件が満たされた場合には、停止許容報知が行われる。すなわち、この場合には、再生処理用条件に比べて相対的に判断基準の緩やかな非再生処理用条件が判定に用いられることで、供給装置の故障のリスクを低減しつつ、オペレータに対して停止許容報知をできるだけ早く行うことができる。
【0013】
前記非再生処理用条件は、前記第1温度検出器により検出される前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下であることと、前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することと、を含むことが好ましい。この構成では、非再生処理用条件は排ガスの温度が非再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することも含むので、排ガスの温度が一時的に非再生処理用基準値以下となった後、再び非再生処理用基準値を超えるような場合を排除することができる。これにより、非再生処理用条件を用いた判定の精度を高めることができる。
【0014】
前記排ガス浄化装置は、前記再生処理において前記浄化効率が回復する特性を有する浄化要素を含む第1処理部と、前記第1処理部よりも前記排ガスの流れの下流に配置され、前記還元剤を用いて還元反応を行うための第2処理部と、を含み、前記供給装置は、前記第1処理部と前記第2処理部との間に配置され、前記第1温度検出器は、前記第1処理部と前記供給装置との間に配置されていることが好ましい。この構成では、第1温度検出器は、第1処理部と供給装置との間に配置されているので、第1処理部を通過した後で(例えば、第1処理部を通過した直後で)かつ供給装置又はその近傍を通過する前の排ガスの温度を検出することができる。このような位置で検出される排ガスの温度は、供給装置よりも排ガスの流れの上流でかつ供給装置に比較的近い位置であるので、他の位置で検出される排ガスの温度に比べて、供給装置の故障のリスクを評価するという観点で好ましい。従って、この構成では、停止許容報知を行うか否かの判定の精度を高めることができる。
【0015】
前記建設機械の制御装置は、前記排ガスの温度を検出する第2温度検出器をさらに備え、前記第2温度検出器は、前記供給装置と前記第2処理部との間に配置され、前記コントローラは、前記第1温度検出器が故障している場合には、前記第2温度検出器により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値であって前記再生処理用基準値よりも低い第2再生処理用基準値以下である場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御してもよい。この構成では、仮に、第1温度検出器が故障している場合であっても、その第1温度検出器よりも排ガスの流れの下流、具体的には供給装置と第2処理部との間に配置された第2温度検出器と、前記再生処理用基準値よりも低い第2再生処理用基準値と、を用いて、停止許容報知を行うか否かの判定を行うことができる。
【0016】
前記コントローラは、前記第1温度検出器及び前記第2温度検出器が故障している場合には、予め設定された第3待機時間が経過した後に、前記停止許容報知が行われるように前記報知装置を制御することが好ましい。この構成では、仮に、第1温度検出器及び第2温度検出器の双方が故障している場合、第3待機時間が経過した後に停止許容報知が行われる。この第3待機時間は、例えば、供給装置及びこれに付随する部品の温度が供給装置の故障のリスクが低減された温度に達していることを推定するために予め設定される。従って、この構成では、第1温度検出器及び第2温度検出器の双方が故障している場合であっても、第3待機時間が経過した後に停止許容報知を行うことができる。
【0017】
提供される建設機械は、上述した制御装置を備えるので、エンジンの停止が許容されることをオペレータに知らせるための報知を再生処理の有無に応じて適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、エンジンの停止が許容されることをオペレータに知らせるための報知を再生処理の有無に応じて適切に行うことができる建設機械の制御装置及びこれを備えた建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施形態に係る制御装置を備える建設機械を示す側面図である。
【
図2】前記建設機械の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】前記建設機械の排ガス浄化装置及びこれに関連する構成を示すブロック図である。
【
図4】前記建設機械の制御装置のコントローラが行う演算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態に係る制御装置及びこれを備えた建設機械を、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る建設機械は、エンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物を還元剤を用いて還元する排ガス浄化装置を備える。
【0021】
図1は、本実施形態に係る制御装置を備える建設機械X1を示す。この建設機械X1はクローラクレーンであるが、本開示に係る制御装置が適用される建設機械は、クローラクレーンに限定されず、排ガス浄化装置を備える他の建設機械にも広く適用されることが可能である。前記他の建設機械は、例えば、ホイールクレーンであってもよく、油圧ショベルであってもよく、ブルドーザーであってもよい。
【0022】
建設機械X1は、下部走行体1と、下部走行体1の上に旋回可能に支持される旋回フレーム2a及びその上に配置される運転室2bを含む上部旋回体2と、旋回フレーム2aに搭載されて種々の作業を行う作業装置と、を備える。作業装置は、旋回フレーム2aに対して起伏動作を行うことが可能な起伏部材3と、起伏ロープ4の巻取り及び巻出しを行うことにより起伏部材3を起伏させる起伏ウィンチ5と、吊り荷が掛けられる主巻フック6と、主巻ロープ7の巻取り及び巻出しを行うことにより主巻フック6及び吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う主巻ウィンチ8と、図略の補巻ロープの巻取り及び巻出しを行うことにより図略の補巻フック及びこれに掛けられる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う補巻ウィンチ9と、を有する。本実施形態では、起伏部材3は、ブームにより構成されるが、ブームの先端部に取り付けられる図略のジブをさらに備えていてもよい。
【0023】
図2は、建設機械X1の機能構成を示すブロック図である。
図3は、建設機械X1の排ガス浄化装置及びこれに関連する構成を示す図である。
【0024】
この建設機械X1は、エンジン150と、エンジン150から排出される排ガス中の窒素酸化物を還元剤を用いて還元する排ガス浄化装置110と、排ガス浄化装置110に還元剤を供給する噴射器120(供給装置の一例)と、エンジン150により駆動され、噴射器120を冷却するための冷却装置と、を備える。冷却装置は、冷却ポンプ151と、冷却配管170と、を含む。この建設機械X1は、エンジン150の停止を許容することをオペレータに知らせるための停止許容報知を再生処理の有無に応じて適切に行うための制御装置を備える。
【0025】
前記制御装置は、排ガスの温度を検出する第1温度センサ131及び第2温度センサ132と、停止許容報知を行う報知装置280と、コントローラ250と、を備える。コントローラ250は、排ガス浄化装置110による排ガスの浄化効率(排ガス浄化装置110による排ガスの浄化性能)を回復させる再生処理のための制御を行う。再生処理は、例えば、排ガス浄化装置110における後述の浄化要素が加熱されることによって行われる。再生処理における浄化要素の加熱は、例えば、排ガスの温度を上昇させることにより行われてもよい。また、再生処理では、浄化要素が直接的に加熱されてもよい。
【0026】
コントローラ250は、例えば演算処理装置とメモリとを含むコンピュータを備える。コントローラ250は、機械制御部251と、判定部252と、報知制御部253と、浄化装置制御部254と、エンジン制御部255と、を含む。機械制御部251、判定部252、報知制御部253、浄化装置制御部254、及びエンジン制御部255のそれぞれは、メモリに記憶された制御プログラムが実行されることにより実現される。
【0027】
コントローラ250は、再生処理が行われていない場合には予め設定された非再生処理用条件が満たされた場合に停止許容報知が行われるように報知装置280を制御し、再生処理が行われている場合には、再生処理が終了又は中断し、予め設定された再生処理用条件が満たされた場合に停止許容報知が行われるように報知装置280を制御する。非再生処理用条件は、第1温度センサ131により検出される排ガスの温度である第1温度T1が予め設定された基準値である非再生処理用基準値以下であることを含む。再生処理用条件は、第1温度T1が予め設定された基準値であって非再生処理用基準値よりも低い再生処理用基準値以下であることを含む。再生処理用基準値は、後述する
図4のステップS18における第1基準値であり、非再生処理用基準値は、後述する
図5のステップS35における第5基準値である。再生処理用基準値(第1基準値)は、例えば210℃に設定されてもよく、非再生処理用基準値(第5基準値)は、例えば300℃に設定されてもよい。
【0028】
この建設機械X1の制御装置では、再生処理用条件及び非再生処理用条件のそれぞれが予め設定されており、再生処理が行われていない場合には、停止許容報知を行うか否かの判定が非再生処理用条件を用いて行われ、再生処理が行われている場合には、停止許容報知を行うか否かの判定が再生処理用条件を用いて行われる。そして、噴射器120及びこれに付随するコネクタなどの部品の熱容量が排ガスの熱容量よりも大きいことが考慮されて、再生処理用条件における再生処理用基準値(第1基準値)は、非再生処理用条件における非再生処理用基準値(第5基準値)よりも低く設定されている。すなわち、この再生処理用条件における再生処理用基準値は、第1温度センサ131により検出される排ガスの温度が当該再生処理用基準値以下である場合にはその時点でエンジン150が停止されて噴射器120の冷却が停止されたとしても噴射器120の故障のリスクが低いことを示すような値である。従って、この制御装置は、エンジン150の停止が許容されることをオペレータに知らせるための停止許容報知を再生処理の有無に応じて適切に行うことができる。これにより、再生処理の有無にかかわらず、噴射器120が適切に冷却された状態でエンジン150が停止されるので、噴射器120が故障するリスクを低減できる。
【0029】
以下、建設機械X1についてさらに具体的に説明する。
【0030】
建設機械X1は、油圧ポンプ153と、複数のレバー操作器210と、アクセル操作器220と、レバー操作量検出器230と、アクセル操作量検出器240と、コントロールバルブ260と、複数のアクチュエータ270と、をさらに備える。
【0031】
エンジン150は、例えばディーゼルエンジンで構成され、冷却ポンプ151及び油圧ポンプ153を駆動する。
【0032】
冷却ポンプ151は、エンジン150によって駆動されることにより冷却配管170を通じて冷却水を循環させる。油圧ポンプ153は、エンジン150によって駆動されることにより作動油を吐出する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、コントロールバルブ260を介して複数のアクチュエータ270の少なくとも一つに供給される。
【0033】
排ガス浄化装置110は、第1処理部101と、第2処理部102と、を備える。第1処理部101及び第2処理部102のそれぞれは、排ガスを浄化する処理を行う。
図3に示すように、建設機械X1は、上流排ガス管180と、中間排ガス管181と、下流排ガス管182と、を備える。上流排ガス管180は、エンジン150と第1処理部101とを接続する。中間排ガス管181は、第1処理部101と第2処理部102とを接続する。下流排ガス管182には、第2処理部102が接続され、第2処理部102において浄化された排ガスが排出される。排ガス浄化装置110により浄化された排ガスは、下流排ガス管182を通じて大気中に排出される。
【0034】
第1処理部101は、エンジン150の排ガスを浄化するとともに加熱されることにより浄化効率が回復する特性を有する浄化要素及びこれを収容するハウジングを含む第1処理部本体と、第1処理部本体内に排気ガスを導入するために第1処理部本体に設けられた導入管とを備えている。本実施形態では、前記浄化要素は、排ガス中の未燃焼ガスを酸化除去するための酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:以下、DOCという)を有する。
【0035】
DOCは、排ガスが当該DOCを通過する過程において排ガスを浄化するものであるため、DOCに排ガス中の異物が堆積するとDOCによる排ガスの浄化効率は低下する。第1処理部101による排ガスの浄化効率の低下を抑えるために、第1処理部101に対する異物の堆積量が所定量以上となると第1処理部101を加熱することにより当該異物を燃焼させる。例えば、排ガス中に燃料を噴射することにより当該排ガスの温度を上昇させて第1処理部101を加熱することができる。DOCに堆積された異物が燃焼することにより、当該DOCによる排ガスの浄化効率は回復し、DOCは再生される。なお、第1処理部101を加熱する方法は、例えば、エンジン150の回転数を増加させることで排ガスの温度を上昇させることであってもよく、図略の負荷がけバルブ(リリーフバルブ)を操作することであってもよく、異物の燃焼を促進させるような物を添加することであってもよい。
【0036】
前記負荷がけバルブは、例えば前記DOC(又は後述のDPF)の再生のための負荷がけ動作、具体的には、油圧ポンプ153の吐出圧を上昇させて当該油圧ポンプ153の駆動負荷を増大させることによりエンジン150の負荷を増やして排ガスの温度を上昇させる動作、を行うものである。この負荷がけバルブは、当該負荷がけバルブに付設される図略の負荷がけ切換バルブとともに負荷がけ部を構成する。負荷がけバルブは、油圧ポンプ153とコントロールバルブ260とを接続するポンプラインに設けられるパイロット操作型の圧力制御弁である。すなわち、負荷がけバルブはパイロットポートを有し、当該負荷がけバルブの一次圧を前記パイロットポートに入力されるパイロット圧に対応した設定圧以上に保つように開閉動作する。前記負荷がけ切換バルブは、ソレノイドを有する電磁切換弁からなり、当該ソレノイドが励磁されないときは開通位置を保って負荷がけバルブのパイロットポートをタンクに連通することにより当該負荷がけバルブをオフの状態(負荷をかけない状態)に保つ一方、コントローラ250から入力される励磁電流(負荷掛け指令信号)によって前記ソレノイドが励磁されると前記パイロットポートとタンクとの間を遮断して負荷がけバルブをオンの状態(油圧ポンプ153の吐出圧を高くしてエンジン150に負荷を掛ける状態)に切換える。
【0037】
なお、第1処理部101は、DOCに代えて、又は、DOCに加えて、排ガス中の粒子状物質を捕捉するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter:以下、DPFという)を有していてもよい。DPFは、当該DPFに対する粒子状物質の捕捉量の増加に応じて粒子状物質の捕捉性能、つまり、排ガスの浄化効率が低下する。一方、DPFを加熱して当該DPFに捕捉された粒子状物質を燃焼することにより当該DPFによる排ガスの浄化効率は回復し、DPFは再生される。
【0038】
第2処理部102は、排ガス中の窒素酸化物の選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction:以下、SCRという)の反応を行うための還元装置を備えている。
【0039】
噴射器120は、排ガス浄化装置110に液体還元剤(例えば、尿素水)を供給する。
図3に示すように、建設機械X1は、液体還元剤を貯留する還元剤タンク121と、還元剤タンク121と噴射器120とを接続する還元剤送液管122と、図略の還元剤ポンプと、をさらに備える。噴射器120は、還元剤タンク121から前記還元剤ポンプを通じて供給される還元剤を排ガス管内に噴射する。本実施形態では、噴射器120は、中間排ガス管181に取り付けられており、第2処理部102に向かって中間排ガス管181を流れる排ガスに還元剤を供給する。噴射器120から液体還元剤が排ガス中に噴射されることにより、第2処理部102の還元装置におけるSCRの反応が促進される。
【0040】
第1温度センサ131及び第2温度センサ132のそれぞれは、排ガス浄化装置110に取り付けられ、排ガス浄化装置110を流れる排ガスの温度を検出し、検出結果をコントローラ250に入力する。第1温度センサ131は、第1温度検出器の一例であり、第2温度センサ132は、第2温度検出器の一例である。
【0041】
第1温度センサ131は、DOCの再生処理において排ガスの温度を検出するために設けられている。すなわち、第1温度センサ131は、DOCの再生処理において排ガスの温度を検出する役割と、再生処理用条件及び非再生処理用条件のそれぞれが満たされているか否かを判定するための排ガスの温度を検出する役割と、を有する。
【0042】
第1温度センサ131は、例えば、第1処理部101と噴射器120との間に配置されていることが好ましい。第1温度センサ131は、第1処理部101において浄化処理され、第1処理部101から中間排ガス管181に排出された排ガスの温度を検出することが可能なように中間排ガス管181に取り付けられている。
図3に示す具体例では、第1温度センサ131は、第1処理部101に対する中間排ガス管181の接続部分又はその近傍、すなわち中間排ガス管181の上流側端部又はその近傍、に取り付けられ、第1処理部101から中間排ガス管181に排出された直後の排ガスの温度を検出する。ただし、第1温度センサ131の取り付け位置は、
図3に示す具体例に限られず、例えば、前記上流側端部よりも噴射器120に近い位置において中間排ガス管181に取り付けられていてもよい。
【0043】
第2温度センサ132は、第2処理部102内の排ガスの温度又は第2処理部102に流入する排ガスの温度を検出する。第2温度センサ132は、例えば、噴射器120と第2処理部102との間に配置されていてもよい。
図3に示す具体例では、第2温度センサ132は、第2処理部102に対する中間排ガス管181の接続部分又はその近傍、すなわち中間排ガス管181の下流側端部又はその近傍、に取り付けられ、第2処理部102に流入する直前の排ガスの温度を検出する。ただし、第2温度センサ132の取り付け位置は、
図3に示す具体例に限られず、例えば、前記下流側端部よりも噴射器120に近い位置において中間排ガス管181に取り付けられていてもよい。
【0044】
複数のレバー操作器210のそれぞれは、アクチュエータ270を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。複数のレバー操作器210は、例えば、起伏部材3を起伏させるための起伏部材操作器と、主巻フック6を上下に昇降させるための昇降操作器と、上部旋回体2を旋回させるための旋回操作器と、を含んでいてもよい。
【0045】
アクセル操作器220は、例えば、アクセルダイヤル又はアクセルペダルで構成され、エンジン150の回転数を調整するためのオペレータの操作を受け付ける。
【0046】
レバー操作量検出器230は、例えば、ポテンショメータで構成され、複数のレバー操作器210のそれぞれの傾倒角度をそのレバー操作器210に対する操作量として検出する。レバー操作量検出器230は、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0047】
アクセル操作量検出器240は、例えば、ポテンショメータで構成され、アクセル操作器220の操作角度をアクセル操作器220に対する操作量として検出する。アクセル操作量検出器240は、検出結果をコントローラ250に入力する。
【0048】
コントロールバルブ260は、コントローラ250による制御の下、油圧ポンプ153から吐出された作動油を複数のアクチュエータ270のそれぞれに分配する。
【0049】
複数のアクチュエータ270は、例えば、コントロールバルブ260を介して供給される作動油によって駆動される油圧モータと、油圧シリンダと、を含んでいてもよい。具体的には、複数のアクチュエータ270は、例えば、起伏部材3を起伏させる起伏ウィンチ5を駆動する油圧モータと、主巻フック6を上下方向に昇降させる主巻ウィンチ8を駆動する油圧モータと、上部旋回体2を旋回させる油圧モータと、を含む。
【0050】
機械制御部251は、第1温度センサ131、第2温度センサ132、レバー操作量検出器230、アクセル操作量検出器240、などの検出器から入力される検出結果に基づいて、建設機械X1の動作を制御する。
【0051】
判定部252は、非再生処理用条件が満たされたか否かの判定、再生処理用条件が満たされたか否かの判定などを行う。判定部252の詳細については後述する。
【0052】
報知制御部253は、報知装置280を制御する。報知装置280は、モニタ281と、クーリングランプ282と、を含む。モニタ281は、例えば、報知制御部253からの指令に基づいて、噴射器120などを冷却している状態であることをオペレータに知らせるための表示であるクーリング表示を行う。クーリングランプ282は、噴射器120などを冷却している状態であることをオペレータに知らせるためのランプである。報知装置280は、例えばブザーをさらに含んでいてもよい。
【0053】
浄化装置制御部254は、例えば第1温度センサ131により検出された排ガスの温度等に応じて、必要な量の還元剤が噴射されるように噴射器120を制御する。浄化装置制御部254は、例えば、噴射器120における噴射弁の開度を制御することで、噴射器120から噴射される還元剤の量を制御してもよい。
【0054】
エンジン制御部255は、エンジン150を制御する。エンジン制御部255は、コントローラ250からの指令にしたがってエンジン150の回転数を制御する。オペレータは、エンジン150を始動させるためのエンジンオン操作又はエンジン150を停止させるためのエンジンオフ操作を例えばイグニションキーなどの図略のエンジン操作器に与える。エンジン制御部255は、エンジンオン操作に基づいてエンジンを始動させ、エンジンオフ操作に基づいてエンジンを停止させる。
【0055】
エンジン150の駆動中には冷却ポンプ151は駆動され、エンジン150が停止すると冷却ポンプ151は停止する。従って、エンジン150の駆動中には、冷却水は、冷却配管170を循環し、これにより、エンジン150、噴射器120、及び排ガス浄化装置110は冷却される。冷却配管170は、エンジン150及び噴射器120間に接続された、冷却水を循環させる循環路である。冷却配管170は、冷却水を冷却させるラジエータを備え、ラジエータにより冷却された冷却水を、噴射器120に供給し、噴射器120を冷却する。
【0056】
図4は、建設機械X1の制御装置のコントローラ250が行う演算処理の一例を示すフローチャートであり、
図5は、
図4の続きのフローチャートである。以下、
図4及び
図5を参照しながら、コントローラ250による制御について説明する。
【0057】
ステップS11において、コントローラ250の判定部252は、DOC(又はDPF)による浄化効率を回復するための再生処理が行われているか否かを判定する。判定部252は、例えば、エンジン制御部255が出力する再生信号(CAN)に基づいて再生処理が行われているか否かを判定することができる。再生信号は、再生処理が行われている場合又は再生処理が行われていない場合にエンジン制御部255が出力する信号である。
【0058】
コントローラ250は、再生処理が行われている場合にはステップS12以降の処理を行い、再生処理が行われていない場合には
図5に示すステップS31以降の処理を行う。
【0059】
再生処理が行われている場合には(ステップS11においてYES)、コントローラ250の報知制御部253は、クーリングランプ282が点灯又は点滅するように報知装置280を制御する(ステップS12)。これにより、オペレータは、クーリングランプ282の点灯又は点滅を目視することで、噴射器120が冷却水により冷却されている状態であること、及び噴射器120の冷却が必要であること、を認識する。
【0060】
次に、コントローラ250の判定部252は、再生処理が終了又は中断されたか否かを判定する(ステップS13)。再生処理が終了又は中断していない場合には(ステップS13においてNO)、コントローラ250は、ステップS13の処理を繰り返す。
【0061】
再生処理が終了又は中断された場合には(ステップS13においてYES)、報知制御部253は、モニタ281に所定のクーリング表示がされるように報知装置280を制御する(ステップS14)。これにより、オペレータは、前記所定のクーリング表示を目視することで、例えば、噴射器120が冷却水により冷却されている状態であること、及び噴射器120の冷却が必要であること、をモニタ281の表示を通じてさらに確実に認識する。
【0062】
次に、コントローラ250の判定部252は、図略の負荷がけバルブがオフの状態又は故障している状態であるか否かを判定する(ステップS15)。判定部252は、例えば、負荷がけバルブの一次圧が前記設定圧まで上昇しない場合に負荷がけバルブが故障していると判定してもよく、前記設定圧に相当するエンジン150の負荷が得られない場合に負荷がけバルブが故障していると判定してもよい。
【0063】
負荷がけバルブがオフの状態でない又は負荷がけバルブが故障していない場合には(ステップS15においてNO)、コントローラ250は、ステップS15の処理を繰り返す。
【0064】
負荷がけバルブがオフの状態である又は負荷がけバルブが故障している場合には(ステップS15においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第1待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。
【0065】
第1待機時間が経過したか否かを判定するための経過時間の計測開始時点は、例えば、ステップS13において再生処理が終了又は中断されたと判定された時点であってもよく、ステップS14においてモニタ281に所定のクーリング表示がされた時点であってもよく、ステップS15において負荷がけバルブがオフの状態である又は負荷がけバルブが故障していると判定された時点であってもよく、他の基準となり得る時点であってもよい。
【0066】
第1待機時間が経過していない場合には(ステップS16においてNO)、コントローラ250は、ステップS16の処理を繰り返す。
【0067】
第1待機時間が経過した場合には(ステップS16においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第1温度センサ131が故障しているか否かを判定する(ステップS17)。判定部252は、例えば、エンジン150の負荷の変動が生じているにもかかわらず第1温度センサ131が検出する値が変動しない場合に第1温度センサ131が故障していると判定してもよく、何らかの理由で第1温度センサ131との通信が途絶して温度を検出することができない場合に第1温度センサ131が故障していると判定してもよい。
【0068】
コントローラ250は、第1温度センサ131が故障していない場合には(ステップS17においてNO)、ステップS18以降の処理を行い、第1温度センサ131が故障している場合には(ステップS17においてYES)、ステップS21以降の処理を行う。
【0069】
ステップS18において、コントローラ250の判定部252は、第1温度センサ131により検出される第1温度T1が第1基準値(再生処理用基準値)以下であるか否かを判定する。第1温度T1が第1基準値以下である場合(ステップS18においてYES)、報知制御部253は、モニタ281に表示されているクーリング表示が削除されるように報知装置280を制御し(ステップS26)、クーリングランプ282が消灯するように報知装置280を制御する(ステップS27)。
【0070】
第1温度T1が第1基準値(再生処理用基準値)を超えている場合(ステップS18においてNO)、コントローラ250は、ステップS19以降の処理を行う。ステップS19以降の処理については後述する。
【0071】
ステップS17において、第1温度センサ131が故障している場合には(ステップS17においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第2温度センサ132が故障しているか否かを判定する(ステップS21)。判定部252は、例えば、エンジン150の負荷の変動が生じているにもかかわらず第2温度センサ132が検出する値が変動しない場合に第2温度センサ132が故障していると判定してもよく、何らかの理由で第2温度センサ132との通信が途絶して温度を検出することができない場合に第2温度センサ132が故障していると判定してもよい。
【0072】
第2温度センサ132が故障している場合には(ステップS21においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第3待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS25)。
【0073】
ステップS25において第3待機時間が経過したか否かを判定するための経過時間の計測開始時点は、例えば、ステップS21において第2温度センサ132が故障していると判定された時点であってもよく、他の基準となり得る時点であってもよい。
【0074】
第3待機時間が経過していない場合には(ステップS25においてNO)、コントローラ250は、ステップS25の処理を繰り返す。第3待機時間が経過した場合には(ステップS25においてYES)、報知制御部253は、モニタ281に表示されているクーリング表示が削除されるように報知装置280を制御し(ステップS26)、クーリングランプ282が消灯するように報知装置280を制御する(ステップS27)。
【0075】
第2温度センサ132が故障していない場合には(ステップS21においてNO)、コントローラ250の判定部252は、第2温度センサ132により検出される第2温度T2が第2基準値以下であるか否かを判定する(ステップS22)。第2基準値は、第1基準値よりも低い値に設定されている。具体的には、第2基準値は、例えば190℃に設定されていてもよい。
【0076】
第2温度T2が第2基準値以下である場合(ステップS22においてYES)、報知制御部253は、モニタ281に表示されているクーリング表示が削除されるように報知装置280を制御し(ステップS26)、クーリングランプ282が消灯するように報知装置280を制御する(ステップS27)。
【0077】
第2温度T2が第2基準値を超えている場合(ステップS22においてNO)、報知制御部253は、モニタ281に表示されているクーリング表示が削除されるように報知装置280を制御し(ステップS23)、コントローラ250の判定部252は、待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS24)。待機時間が経過していない場合には(ステップS24においてNO)、コントローラ250は、ステップS24の処理を繰り返す。待機時間が経過した場合には(ステップS24においてYES)、コントローラ250は、
図5のステップS40の処理を行う。
【0078】
ステップS19の処理について説明する。第1温度T1が第1基準値(再生処理用基準値)を超えている場合(ステップS18においてNO)、コントローラ250の報知制御部253は、モニタ281に表示されているクーリング表示が削除されるように報知装置280を制御し(ステップS19)、コントローラ250の判定部252は、第2待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS20)。
【0079】
第2待機時間が経過したか否かを判定するための経過時間の計測開始時点は、例えば、ステップS18において第1温度T1が第1基準値を超えていると判定された時点であってもよく、ステップS19においてモニタ281に表示されているクーリング表示が削除された時点であってもよく、他の基準となり得る時点であってもよい。
【0080】
第2待機時間が経過していない場合には(ステップS20においてNO)、コントローラ250は、ステップS20の処理を繰り返す。第2待機時間が経過した場合には(ステップS20においてYES)、コントローラ250は、
図5のステップS34の処理を行う。
【0081】
【0082】
ステップS11において、再生処理が行われていない場合には(ステップS11においてNO)、コントローラ250の判定部252は、第1温度センサ131が故障しているか否かを判定する(ステップS31)。コントローラ250は、第1温度センサ131が故障していない場合には(ステップS31においてNO)、ステップS32の処理を行う。ステップS32において、コントローラ250の判定部252は、第1温度T1が第3基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上であるか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、ステップS32において、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度T1が310℃以上の状態が10分間のうち60%以上の時間(6分)を占めるか否かを判定する。
【0083】
第1温度T1が第3基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上でない場合(ステップS32においてNO)、コントローラ250は、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0084】
第1温度T1が第3基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上である場合(ステップS32においてYES)、報知制御部253は、クーリングランプ282が点灯又は点滅するように報知装置280を制御する(ステップS33)。
【0085】
コントローラ250の判定部252は、ステップS34において、ステップS17で説明したように第1温度センサ131の故障の有無の判定を行う。ステップS34において第1温度センサ131が故障している場合(ステップS34においてYES)、コントローラ250は、ステップS40の処理を行う。
【0086】
ステップS34において第1温度センサ131が故障していない場合(ステップS34においてNO)、コントローラ250の判定部252は、第1温度T1が第5基準値(非再生処理用基準値)以下の状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS35)。具体的には、ステップS35において、コントローラ250は、例えば、第1温度T1が300℃以下の状態が30秒以上継続しているか否かを判定する。
【0087】
第1温度T1が第5基準値(非再生処理用基準値)以下の状態が所定時間以上継続している場合(ステップS35においてYES)、コントローラ250は、ステップS36以降の処理を行う。
【0088】
第1温度T1が第5基準値(非再生処理用基準値)以下の状態が所定時間以上継続していない場合(ステップS35においてNO)、コントローラ250は、ステップS34以降の処理を行う。
【0089】
ステップS36において、コントローラ250の判定部252は、第1温度T1が第6基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上であるか否かを判定する。具体的には、ステップS36において、コントローラ250の判定部252は、例えば、第1温度T1が310℃以上の状態が10分間のうち60%以上の時間(6分)を占めるか否かを判定する。
【0090】
第1温度T1が第6基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上でない場合(ステップS36においてNO)、報知制御部253は、クーリングランプ282が消灯するように報知装置280を制御する(ステップS27)。第1温度T1が第6基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上である場合(ステップS36においてYES)、コントローラ250は、ステップS34以降の処理を繰り返す。
【0091】
次に、ステップS37以降の処理について説明する。
【0092】
コントローラ250は、第1温度センサ131が故障している場合には(ステップS31においてYES)、ステップS37において、ステップS21で説明したように第2温度センサ132の故障の有無の判定を行う。第2温度センサ132が故障している場合(ステップS37においてYES)、報知制御部253は、クーリングランプ282が点灯又は点滅するように報知装置280を制御し(ステップS43)、コントローラ250は、ステップS44以降の処理を行う。
【0093】
第2温度センサ132が故障していない場合(ステップS37においてNO)、コントローラ250の判定部252は、第2温度T2が第4基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上継続しているか否かを判定する(ステップS38)。具体的には、ステップS38において、コントローラ250の判定部252は、例えば、第2温度T2が290℃以上の状態が10分間のうち60%以上の時間(6分)を占めるか否かを判定する。
【0094】
第2温度T2が第4基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上でない場合(ステップS38においてNO)、コントローラ250は、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0095】
第2温度T2が第4基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上である場合(ステップS38においてYES)、報知制御部253は、クーリングランプ282が点灯又は点滅するように報知装置280を制御し(ステップS39)、ステップS40以降の処理を行う。
【0096】
次に、ステップS40以降の処理について説明する。コントローラ250の判定部252は、ステップS40において、ステップS21で説明したように第2温度センサ132の故障の有無の判定を行う。
【0097】
第2温度センサ132が故障していない場合(ステップS40においてNO)、コントローラ250の判定部252は、第2温度T2が第7基準値以下の状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS41)。具体的には、ステップS41において、コントローラ250の判定部252は、例えば、第2温度T2が280℃以下の状態が30秒以上継続しているか否かを判定する。
【0098】
第2温度T2が第7基準値以下の状態が所定時間以上継続している場合(ステップS41においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第2温度T2が第8基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上であるか否かを判定する(ステップS42)。具体的には、ステップS42において、コントローラ250の判定部252は、例えば、第2温度T2が290℃以上の状態が10分間のうち60%以上の時間(6分)を占めるか否かを判定する。
【0099】
第2温度T2が第8基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上でない場合(ステップS42においてNO)、コントローラ250は、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0100】
コントローラ250は、第2温度T2が第8基準値以上の状態が所定時間で所定割合以上である場合(ステップS42においてYES)、コントローラ250は、ステップS40の処理を行う。
【0101】
ステップS40において、第2温度センサ132が故障している場合(ステップS40においてYES)、コントローラ250の判定部252は、負荷がけバルブがオフの状態又は故障している状態であるか否かを判定する(ステップS44)。負荷がけバルブがオフの状態でない又は負荷がけバルブが故障していない場合には(ステップS44においてNO)、コントローラ250は、ステップS44の処理を繰り返す。
【0102】
負荷がけバルブがオフの状態である又は負荷がけバルブが故障している場合には(ステップS44においてYES)、コントローラ250の判定部252は、第3待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS45)。
【0103】
ステップS45において第3待機時間が経過したか否かを判定するための経過時間の計測開始時点は、例えば、ステップS37又はステップS40において第2温度センサ132が故障していると判定された時点であってもよく、ステップS43においてクーリングランプ282の点灯又は点滅が開始された時点であってもよく、ステップS44において負荷がけバルブがオフの状態である又は負荷がけバルブが故障していると判定された時点であってもよく、他の基準となり得る時点であってもよい。なお、ステップS45における第3待機時間は、ステップS25における第3待機時間と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0104】
第3待機時間が経過していない場合には(ステップS44においてNO)、コントローラ250は、ステップS44の処理を繰り返す。
【0105】
第3待機時間が経過した場合には(ステップS44においてYES)、コントローラ250の報知制御部253は、クーリングランプ282が消灯するように報知装置280を制御する(ステップS27)。
【0106】
以上説明したように、上記の実施形態では、前記コントローラ250は、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行う。この構成では、第1待機時間が経過した後に再生処理用条件が満たされているか否かの判定が行われるので、前記判定が行われるまでに、熱容量の大きい供給装置120及びこれに付随する部品の温度がある程度実際に低下するまでの時間的な猶予が与えられる。これにより、供給装置120及びこれに付随する部品の温度が再生処理用基準値を大きく超えるような段階で前記判定が行われることがなくなるので、コントローラ250による演算処理の負荷を低減できる。
【0107】
上記の実施形態では、前記コントローラ250は、前記再生処理が終了又は中断し、予め設定された第1待機時間が経過した後に、前記再生処理用条件が満たされているか否かの判定を行い、前記再生処理用条件が満たされていない場合には、予め設定された第2待機時間が経過した後に、前記非再生処理用条件が満たされた場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置280を制御する。第1待機時間が経過し、さらに第2待機時間が経過したような場合には、排ガスの温度が依然として再生処理用基準値を超えるような場合であっても、供給装置120及びこれに付随する部品の温度は、供給装置120の故障のリスクが低減された温度に達していることが想定される。そこで、この構成では、再生処理が終了又は中断し、第1待機時間が経過した後に、再生処理用条件が満たされていない場合であったとしても、第2待機時間が経過した後に非再生処理用条件が満たされた場合には、停止許容報知が行われる。すなわち、この場合には、再生処理用条件に比べて相対的に判断基準の緩やかな非再生処理用条件が判定に用いられることで、供給装置120の故障のリスクを低減しつつ、オペレータに対して停止許容報知をできるだけ早く行うことができる。
【0108】
上記の実施形態では、前記非再生処理用条件は、前記第1温度検出器131により検出される前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下であることと、前記排ガスの温度が前記非再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することと、を含む。この構成では、非再生処理用条件は排ガスの温度が非再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することも含むので、排ガスの温度が一時的に非再生処理用基準値以下となった後、再び非再生処理用基準値を超えるような場合を排除することができる。これにより、非再生処理用条件を用いた判定の精度を高めることができる。
【0109】
上記の実施形態では、前記排ガス浄化装置110は、前記再生処理において前記排ガスの温度が上昇することにより前記浄化効率が回復する特性を有する浄化要素を含む第1処理部101と、前記第1処理部101よりも前記排ガスの流れの下流に配置され、前記還元剤を用いて還元反応を行うための第2処理部102と、を含み、前記供給装置120は、前記第1処理部101と前記第2処理部102との間に配置され、前記第1温度検出器131は、前記第1処理部101と前記供給装置120との間に配置されている。この構成では、第1温度検出器131は、第1処理部101と供給装置120との間に配置されているので、第1処理部101を通過した後で(例えば、第1処理部101を通過した直後で)かつ供給装置120又はその近傍を通過する前の排ガスの温度を検出することができる。このような位置で検出される排ガスの温度は、供給装置120よりも排ガスの流れの上流でかつ供給装置120に比較的近い位置であるので、他の位置で検出される排ガスの温度に比べて、供給装置120の故障のリスクを評価するという観点で好ましい。従って、この構成では、停止許容報知を行うか否かの判定の精度を高めることができる。
【0110】
上記の実施形態では、前記建設機械の制御装置は、前記排ガスの温度を検出する第2温度検出器132をさらに備え、前記第2温度検出器132は、前記供給装置120と前記第2処理部102との間に配置され、前記コントローラ250は、前記第1温度検出器131が故障している場合には、前記第2温度検出器132により検出される前記排ガスの温度が予め設定された基準値であって前記再生処理用基準値よりも低い第2再生処理用基準値以下である場合に前記停止許容報知が行われるように前記報知装置280を制御する。この構成では、仮に、第1温度検出器131が故障している場合であっても、その第1温度検出器131よりも排ガスの流れの下流、具体的には供給装置120と第2処理部102との間に配置された第2温度検出器132と、前記再生処理用基準値よりも低い第2再生処理用基準値と、を用いて、停止許容報知を行うか否かの判定を行うことができる。
【0111】
上記の実施形態では、前記コントローラ250は、前記第1温度検出器131及び前記第2温度検出器132が故障している場合には、予め設定された第3待機時間が経過した後に、前記停止許容報知が行われるように前記報知装置280を制御する。この構成では、仮に、第1温度検出器131及び第2温度検出器132の双方が故障している場合、第3待機時間が経過した後に停止許容報知が行われる。この第3待機時間は、例えば、供給装置120及びこれに付随する部品の温度が供給装置120の故障のリスクが低減された温度に達していることを推定するために予め設定される。従って、この構成では、第1温度検出器131及び第2温度検出器132の双方が故障している場合であっても、第3待機時間が経過した後に停止許容報知を行うことができる。
【0112】
[変形例]
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0113】
(A)再生処理用条件は、第1温度検出器により検出される排ガスの温度が再生処理用基準値以下であることと、その排ガスの温度が再生処理用基準値以下である状態が所定時間以上継続することと、を含んでいてもよい。
【0114】
(B)供給装置は、必ずしも噴射器でなくてもよい。
【0115】
(C)冷却装置は、必ずしも冷却ポンプ151と、冷却配管170と、を備えるものでなくてもよい。
【0116】
(D)前記実施形態において説明した負荷がけバルブ(リリーフバルブ)は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
101 :第1処理部
102 :第2処理部
110 :排ガス浄化装置
120 :噴射器
131 :第1温度センサ
132 :第2温度センサ
150 :エンジン
151 :冷却ポンプ
170 :冷却配管
180 :上流排ガス管
181 :中間排ガス管
182 :下流排ガス管
250 :コントローラ
280 :報知装置
281 :モニタ
282 :クーリングランプ
T1 :第1温度
T2 :第2温度
X1 :建設機械