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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241001BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241001BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241001BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241001BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20241001BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20241001BHJP
   B60L 58/16 20190101ALN20241001BHJP
   B60L 58/18 20190101ALN20241001BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J3/38 110
H02M3/155 H
H02M3/155 U
H02M3/155 W
H02M7/48 E
B60L9/18 P
B60L50/60
B60L58/16
B60L58/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022158488
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2024052049
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大畠 弘嗣
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011138(JP,A)
【文献】特開2014-204574(JP,A)
【文献】特開2017-093144(JP,A)
【文献】特開2024-052050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 3/38
H02M 3/155
H02M 7/48
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 58/16
B60L 58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムであって、
前記電池ユニットを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記電池ユニットを、前記電源システムの出力電圧が電圧指令になるよう電圧制御するとともに、前記電圧制御される前記電池ユニットと異なる前記電池ユニットを、前記電源システムの出力電力が電力指令になるよう電力制御し、
所定期間毎に、前記電圧制御される前記電池ユニットを切り替えるよう構成されている、電源システム。
【請求項2】
前記電圧制御される前記電池ユニットは、1個の前記電池ユニットである、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記コンバータは、三相インバータを転用したものであり、
前記三相インバータの各相アームに、前記電池が接続されている、請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電源システムは、前記三相インバータの各相アームに接続された3個の前記電池から構成された、3個の前記電池ユニットを含む電源サブユニットを複数並列に接続したものであり、
前記制御装置は、前記電源サブユニットの単位で、前記電圧制御および前記電力制御を実行するよう構成されている、請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電圧制御される前記電源サブユニットは、1個の前記電源サブユニットである、請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記電圧制御される前記電池ユニットの状態に応じて、前記所定期間を設定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記状態は、前記電池ユニットに含まれる前記電池の劣化度合であり、
前記制御装置は、前記電池の劣化度合が大きいほど、前記所定期間を短くする、請求項6に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関し、特に、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-103804号公報(特許文献1)には、複数の組電池を並列に接続した電池システムにおいて、複数の組電池の電圧を均等化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-103804号公報
【文献】特開2015-154692号公報
【文献】特開2015-186405号公報
【文献】国際公開第2017/163508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の組電池(電池)を並列に接続した電池システム(電源システム)では、各電池の特性の差や劣化によって各電池の電圧に差が生じ、循環電流が発生する。並列に接続した電池毎にコンバータを設け、循環電流を抑制して、循環電流に起因した電池の劣化を抑制することが考えられる。
【0005】
電池とコンバータを含む電池ユニットを並列に接続した電源システムにおいて、当該電源システムの出力電圧および出力電力を、所望の値に制御することが望まれる。たとえば、電源システムに接続された負荷等から要求される電圧指令および電力指令に基づいて、各電池ユニットのコンバータを制御する。この場合、所定の電池ユニットにおいて、電源システムの出力電圧が電圧指令になるよう電圧制御を実行し、他の電池ユニットにおいて、電源システムの出力電力が電力指令になるよう電力制御を実行することが考えられる。
【0006】
各種センサの誤差や制御の応答遅れ等によって、電力制御における出力電力と電力指令と差が生じる(電力ずれが生じる)と、出力電圧が変動する。電力ずれに起因した出力電圧の変動に応答して、電圧制御が実行されるので、電圧制御を実行する電池ユニットの動作量が増え、所定の電池ユニット(電圧制御が実行される電池ユニット)の負荷(電力負担)が増大し、所定の電池ユニットの劣化が促進される可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムにおいて、各電池ユニットの負荷(負担)の均一化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の電源システムは、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムである。電源システムは、電池ユニットを制御する制御装置を備える。制御装置は、電池ユニットを、電源システムの出力電圧が電圧指令になるよう電圧制御するとともに、電圧制御される電池ユニットと異なる電池ユニットを、電源システムの出力電力が電力指令になるよう電力制御し、所定期間毎に、電圧制御される電池ユニットを切り替えるよう構成されている。
【0009】
この構成によれば、電圧制御される電池ユニットが、所定期間毎に切り替えられる。電力ずれが生じるような場合であっても、電圧制御が実行される電池ユニットが順次切り替えられるので、各電池ユニットの負荷(電力負担)の均一化を図ることができる。
【0010】
(2)好ましくは、(1)において、電圧制御される電池ユニットは、1個の電池ユニットであってよい。
【0011】
この構成によれば、電圧制御される1個の電池ユニット以外の電池ユニットによって電力制御を実行するので、電力制御の応答性を高めることができ、出力電力と電力指令と差を小さくできる。これにより、出力電圧の変動を抑制しつつ、電源システムに接続された負荷の電力変動に応えることができる。
【0012】
(3)好ましくは、(1)において、コンバータは、三相インバータを転用したものであり、三相インバータの各相アームに、電池が接続されるようにしてもよい。
【0013】
近年、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などの電動車両の普及が進んでいる。これら車両の買い換え、解体等に伴って回収されるバッテリ(電池)やPCU(Power Control Unit)を、リサイクルあるいはリユースすることが望まれる。この構成によれば、回収したPCUの三相インバータを、電源システム(電池ユニット)のコンバータに転用することにより、PCUのリユースを促進することができる。なお、電源システム(電池ユニット)の電池として、回収したバッテリ(電池)も用いれば、バッテリのリユースを促進することもできる。
【0014】
(4)好ましくは、(3)において、電源システムは、三相インバータの各相アームに接続された3個の電池から構成された、3個の電池ユニットを含む電源サブユニットを複数並列に接続したものであり、制御装置は、電源サブユニットの単位で、電圧制御および電力制御を実行するよう構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、三相インバータと、三相インバータに接続された(3個の)電池によって、電源サブユニットが構成される。電源サブユニットは、3個の電池ユニットから構成される。そして、電源サブユニットを複数並列に接続することにより、電源システムが構成される。電圧制御および電力制御を、電源サブユニットの単位で実行するので、電源サブユニットに含まれる3個の電池ユニットは、同一の制御(電圧制御あるいは電力制御)によって制御される。
【0016】
電圧制御および電力制御を、電源サブユニットの単位で実行すれば、PCU(三相インバータ)の駆動制御を行うECU(Electronic Control Unit)のハードウェアを、制御装置として、比較的容易に活用できる。これにより、電動車両のPCU(三相インバータ)の駆動制御を行うECUを、制御装置として利活用することを促進できる。
【0017】
(5)好ましくは、(4)において、電圧制御される電源サブユニットは、1個の電源サブユニットであってよい。
【0018】
この構成によれば、電圧制御される1個の電源サブユニット以外の電源サブユニットによって電力制御を実行するので、電力制御の応答性を高めることができ、出力電力と電力指令と差を小さくできる。これにより、出力電圧の変動を抑制しつつ、電源システムに接続された負荷の電力変動に応えることができる。
【0019】
(6)好ましくは、(1)~(5)において、制御装置は、電圧制御される電池ユニットの状態に応じて、所定期間を設定するようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、所定期間は、電圧制御される電池ユニットの状態に応じて設定されるので、たとえば、電圧制御によって劣化が促進され易い電池ユニットの電圧制御の期間を短期間とすることができ、当該電池ユニットの劣化を抑制することが可能になる。
【0021】
(7)好ましくは、(6)において、電圧制御される電池ユニットの状態は、電池ユニットに含まれる電池の劣化度合であり、制御装置は、電池の劣化度合が大きいほど、所定期間を短くするようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、電池の劣化度合が大きいほど、当該電池を含む電池ユニットの電圧制御の期間が短期間になり、当該電池ユニットがさらに劣化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムにおいて、各電池ユニットの負荷(負担)の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態の電源システムの全体構成を示す図である。
図2】電動車両の一例を説明する図である。
図3】電源システムの制御装置の構成の一例を示す図である。
図4】本実施の形態における、電源システムの出力電力を制御するブロック線図の一例である。
図5】制御装置で実行される、電圧制御切替処理の一例を示すフローチャートである。
図6】変形例1に係る、電源システムの制御装置を説明する図である。
図7】変形例1の制御装置で実行される、電圧制御切替処理の一例を示すフローチャートである。
図8】変形例2における電源システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
図1は、本実施の形態の電源システムPの全体構成を示す図である。電源システムPは、3個のバッテリパック1とコンバータ2とを含む電源サブユニットSuと、制御装置3とを備える。本実施の形態において、電源サブユニットSuは、電動車両に搭載されるバッテリパックおよびPCUを、電源システムPに転用したものである。バッテリパックおよびPCUを搭載した電動車両の構成の一例を説明する。
【0027】
図2は、電動車両の一例を説明する図である。図2において、電動車両Vは、回転電機とエンジンとを車両の駆動に併用するハイブリッド車である。電動車両Vは、バッテリパック1と、PCU20と、エンジン30と、回転電機としてのモータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構40と、駆動輪50と、を含む。
【0028】
バッテリパック1は、バッテリ10とシステムメインリレー(SMR)11とを備える。バッテリ10は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、等の二次電池からなる単電池(電池セル)を、電気的に直列に接続した組電池である。バッテリパック1の出力端子(正極端子,負極端子)は、PCU20のバッテリ接続端子25に接続され、SMR11が閉成すると、バッテリ10とPCU20とが接続され、SMR11が開放されると、バッテリ10とPCU20との接続が遮断される。バッテリパック1には、監視ユニット15が設けられており、バッテリ10の電圧VB、バッテリ10の入出力電流IB、および、バッテリ10の温度TB等を検出する。
【0029】
PCU20は、昇圧コンバータ21、インバータ22およびインバータ23を含む。昇圧コンバータ21は、バッテリパック1から入力されるバッテリ電圧VBを昇圧し、インバータ22およびインバータ23に出力する。インバータ22は、昇圧コンバータ21から昇圧された直流電力を三相交流電力に変換して、たとえばエンジン30を始動させるために、モータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ22は、エンジン30から伝達される動力によってモータジェネレータMG1で発電された交流電力を直流電力に変換し昇圧コンバータ21に戻す。このとき昇圧コンバータ21は、降圧回路として動作するよう制御される。インバータ23は、昇圧コンバータ21から出力された直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータMG2に出力する。
【0030】
動力分割機構40は、エンジン30とモータジェネレータMG1,MG2とに連結されて、これらの間で動力を分配する機構である。動力分割機構40として、遊星歯車機構を用いることができ、たとえば、エンジン30がプラネタリキャリアに、モータジェネレータMG1がサンギヤに、モータジェネレータMG2がリングギヤに接続されている。モータジェネレータMG2のロータ(および動力分割機構40のリングギヤの回転軸)は、図示しない減速ギヤ、差動ギヤおよびドライブシャフトを介して駆動輪50に連結されている。
【0031】
PCU20の昇圧コンバータ21は、リアクトルと、スイッチング素子Q1a,Q1b,Q2a,Q2bとを含む。スイッチング素子Q1a~Q2bは、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子からなり、各IGBT素子と逆並列に接続されるダイオードを含む。スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q1bとが並列に設けられ、スイッチング素子Q2aとスイッチング素子Q2bとが並列に設けられており、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q1bとは同一の駆動信号で駆動され、スイッチング素子Q2aとスイッチング素子Q2bとは同一の駆動信号で駆動される。スイッチング素子Q1a,Q1bのコレクタが正極線Plに接続され、スイッチング素子Q2a,Q2bのエミッタが負極線Nlに接続されている。リアクトルは、スイッチング素子Q1a,Q1bのエミッタおよびスイッチング素子Q2a,Q2bのコレクタに接続されている。
【0032】
インバータ22は、三相インバータであり、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4からなるU相アームと、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6からなるV相アームと、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q7,Q8からなるW相アームとを備える。スイッチング素子Q3~Q8は、スイッチング素子Q1aと同様に、IGBT素子と逆並列に接続されるダイオードを含むスイッチング素子である。
【0033】
各相のアームの中間点は、MG1接続端子26を介して、モータジェネレータMG1の各相のコイルに接続されている。モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、たとえばIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機であってよい。
【0034】
インバータ23の構成は、各相のアームのスイッチング素子が並列に設けられている他は、インバータ22の構成と同様な三相インバータである。スイッチング素子Q9a,Q9bがスイッチング素子Q3に相当し、スイッチング素子Q10a,Q10bがスイッチング素子Q4に相当してU相アームを構成する。スイッチング素子Q11a,Q11bがスイッチング素子Q5に相当し、スイッチング素子Q12a,Q12bがスイッチング素子Q6に相当してV相アームを構成する。スイッチング素子Q13a,Q13bがスイッチング素子Q7に相当し、スイッチング素子Q14a,Q14bがスイッチング素子Q8に相当してW相アームを構成する。
【0035】
各相のアームの中間点は、MG2接続端子27を介して、モータジェネレータMG2の各相のコイルに接続されている。モータジェネレータMG2も、IPM同期電動機であってよい。
【0036】
PCU20には、インバータ22およびインバータ23の各々のU相電流iuを検出する電流センサiu、V相電流ivを検出する電流センサiv、W相電流iwを検出する電流センサiwが設けられている。また、PCU20は、昇圧コンバータ21からインバータ22、23へ供給される電圧であるシステム電圧VHを検出する電圧センサVH、および、バッテリパック1から昇圧コンバータ21に入力される電圧VLを検出する電圧センサVLを備えている。
【0037】
電動車両Vは、制御装置として、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)(HV-ECU)200、モータジェネレータECU(MG-ECU)210、バッテリECU(BT-ECU)220、および、エンジンECU(EG-ECU)230を備える。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、バッファ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。
【0038】
監視ユニット15は、バッテリ10の電圧VBを検出する電圧センサVB、入出力電流IBを検出する電流センサIB、等を備えている。BT-ECU220は、監視ユニット15で検出した電圧VBおよび入出力電流IB等に基づいて、バッテリ10のSOC(State Of Charge)を演算し、HV-ECU200へ送信する。また、BT-ECU220は、電圧VB、入出力電流IB、温度TBの履歴等に基づいて、バッテリ10の状態であるSOH(States Of Health)を演算し、HV-ECU200へ送信する。SOHは、たとえば、バッテリ10の容量維持率や内部抵抗上昇率であってよく、バッテリ10の劣化度合を示すパラメータである。
【0039】
HV-ECU200は、電動車両Vの走行制御のために、たとえば、アクセル開度、車速等に基づいて要求駆動トルクTrを算出し、要求駆動トルクTrに駆動輪50の回転速度を乗じて、要求パワーPdを求める。要求パワーPdからバッテリ10のSOCに基づく充放電パワーPb(バッテリ10から放電するときに正の値)を減じて、エンジン30に要求される要求パワーPeを設定する。そして、エンジン30から要求パワーPeが出力されるとともに、要求駆動トルクTrが駆動輪50に出力されるよう、目標エンジン回転速度Ne、目標エンジントルクTe、モータジェネレータMG1の指令トルクTm1およびモータジェネレータMG2の指令トルクTm2を設定する。
【0040】
MG-ECU210は、モータジェネレータMG1から指令トルクTm1が出力されるよう、インバータ22の各スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。また、MG-ECU210は、モータジェネレータMG2から指令トルクTm2が出力されるよう、インバータ23の各スイッチング素子をPWM制御する。
【0041】
EG-ECU230は、エンジン30が目標エンジン回転速度Neおよび目標エンジントルクTeで運転されるようエンジン30を制御する。
【0042】
図1を参照して、電源システムPにおいて、バッテリパック1およびコンバータ2は、電動車両Vに搭載されたバッテリパック1およびPCU20を転用したものである。3個のバッテリパック1(1-1-1、1-1-2、1-1-3)の出力端子の正極端子が、PCU20のインバータ23(三相インバータ)の各相アーム(U相アーム、V相アーム、W相アーム)の中間点が接続されたMG2接続端子27に、コイル(インダクタ)5を介して接続される。バッテリパック1の正極端子とコイル5との間の電力線は、コンデンサ6を介して、バッテリパック1の出力端子の負極端子と接続される。バッテリパック1の負極端子は、電力線Nl1によって、PCU20の負極線Nlに接続される。なお、図1においては、監視ユニット15の図示を省略している。
【0043】
図1において、PCU20のインバータ22のスイッチング素子Q4、スイッチング素子Q5、および、スイッチング素子Q7が短絡されている。インバータ22の各相アームの中間点が接続されたMG1接続端子26において、U相アームが接続された端子が、電力線Nl2によって、バッテリ接続端子25の負極端子に接続される。バッテリ接続端子25の負極端子は、電源サブユニットSuの負極端子28bに接続される。MG1接続端子26において、V相アームおよびW相アームが接続される端子が、電力線Pl1によって、電源サブユニットSuの正極端子28aに接続される。
【0044】
このようにPCU20のインバータ23の各相アームをバッテリパック1に接続し、インバータ22の一部のスイッチング素子を短絡させ、MG1接続端子26を電源サブユニットSuの正極端子28a、負極端子28bに接続することによって、PCU20は、インバータ23の各相アームに接続されたバッテリパック1(バッテリ10)の電圧を昇圧するコンバータ2に転用されている。
【0045】
図1において、バッテリパック1が、本開示の「電池」の一例に相当する。1個のバッテリパック1に対応する(1個のバッテリパック1に接続された)各相アーム、コイル5およびコンデンサ6からなるチョッパ回路が、本開示の「コンバータ」に相当する。なお、図1においては、便宜上、3個のコンバータをまとめて、符号2を付している。そして、バッテリパック1と1個のコンバータ2を含む構成が、本開示の「電池ユニット」に相当する。たとえば、図1において、バッテリパック1-1-1、U相アーム(スイッチング素子Q9a,Q9b,Q10a,Q10b)、U相アームの中間点に接続されたコイル5、および、バッテリパック1-1-1の正極端子とコイル5との間の電力線に設けたコンデンサ6が、本開示の「電池ユニット」に相当する。なお、本実施の形態の説明では、各電池ユニットを区別することなく、電池ユニットに符号Buを用いる。
【0046】
電源サブユニットSuは、PCU20を転用したコンバータ2を含む、3個の電池ユニットBuから構成される。電源サブユニットSuにおいて、各電池ユニットBuは並列に接続されている。電源システムPは、電源サブユニットSuを複数備え、各電源サブユニットSuはPCS100に対して並列に接続される。本実施の形態において、電源システムPは、n個(nは正の整数)の電源サブユニットSuを備えており、たとえば、20個の電源サブユニットSuを備えてよい。電源サブユニットSuには、3個の電池ユニットBu(バッテリパック1)が並列に接続されており、20個の電源サブユニットSuを備えた電源システムPでは、60個の電池ユニットBu(バッテリパック1)が並列に接続されている。図1において、符号Su-nのnは、n番目の電源サブユニットSuであることを表している。符号1-n-1、1-n-2および1-n-3のnは、n番目の電源サブユニットSuに含まれるバッテリパック1を表している。
【0047】
各電源サブユニットSuの正極端子28aは、正極線PLを介して、PCS100の入出力端子に接続される。各電源サブユニットSuの負極端子28bは、負極線NLを介して、PCS100の入出力端子に接続される。
【0048】
PCS100は、電源システムPに加え、電力系統PG、太陽光発電装置650、および、負荷(電気負荷)300に接続されている。電力系統PGは、発電所や送電網からなる、たとえば商用電源である。PCS100は、電力変換装置を含み、太陽光発電装置650で発電した電力を負荷300に供給したり、逆潮流を行ったりする。PCS100は、上げDRの要請があると、電力系統PGの交流電力を直流電力に変換し、電源システムP(電池ユニットBu)の充電を行う。PCS100は、下げDRの要請があると、電源システムP(電池ユニットBu)の放電電力(出力電力)を交流電力に変換し、負荷300への電力の供給や逆潮流を行う。負荷300は、家庭負荷(家電)であってよく、事業所や工場の電気負荷であってよい。
【0049】
電源システムPは、電力系統PGとの間で電力の授受を行う連系運転と、電力系統PGと解列された(遮断された)自立運転とを行う。連系運転時、負荷300への電力供給は、主に、電力系統PGの電力が供給される。連系運転時、電源システムPは、下げDRあるいは上げDRの要請に応じて、電力系統PGと電力の授受を行う。電源システムPの自立運転時には、電源システムP(電池ユニットBu)の出力電力(放電電力)が、負荷300に供給される。
【0050】
図3は、電源システムPの制御装置3の構成の一例を示す図である。制御装置3は、制御ECU400と駆動ECU450とを備える。各ECUは、CPUと、メモリと、バッファ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。PCS-ECU500は、PCS100を制御する制御装置であり、電源システムP(電池ユニットBu)から出力される電力の要求値、あるいは、電源システムPに入力される電力の要求値である電力指令RP、および、電源システムPから出力される電圧の指令値である電圧指令RVを、制御ECU400に出力する。
【0051】
制御ECU400は、電源システムPから電力を出力するとき(電池ユニットBuから放電するとき)、電力指令RPおよび電圧指令RVに基づいて出力電力指令TPを生成する。駆動ECU450は、電源システムPの出力電力が、出力電力指令TPになるよう、電池ユニット(コンバータ2)をPWM制御する。
【0052】
図4は、本実施の形態における、電源システムPの出力電力を制御するブロック線図の一例である。このブロック線図は、制御ECU400および駆動ECU450に、ソフトウェアおよび/またはハードウェアとして、構成されてよい。図4において、電圧指令RVおよび電力指令RPは、PCS-ECU500から入力される。電圧指令RVは、電源システムPの出力電圧の要求値(目標電圧)であり、たとえば、100V、200V、あるいは、600Vであってよい。また、電力指令RPは、PCS100に接続されている負荷等によって要求される(負荷等に供給する)電力であってよい。
【0053】
たとえば、所定の電池ユニットBuにおいて、電源システムPの出力電圧VPが電圧指令RVになるよう電圧制御を実行し、他の電池ユニットBuにおいて、電源システムPの出力電力OPが電力指令RPなるよう電力制御を実行すると、電流センサの誤差や電力制御の応答遅れ等によって出力電力OPと電力指令RPとの差が生じ(電力ズレが生じ)、出力電圧VPが変動する。この出力電圧VPの変動に応答して電圧制御が実行されるので、電圧制御を実行する所定の電池ユニットBuの動作量が増え、当該電池ユニットBuの負荷(負担)が増大し、当該電池ユニットBu(に含まれるバッテリパック1)の劣化が促進される可能性がある。このため、実施の形態1では、各電池ユニットBu(バッテリパック1)の負荷(負担)の均一化を図るため、電圧制御を実行する電池ユニットBuを所定期間毎に切り替える。
【0054】
図4において、PCS-ECU500から入力された電力指令RPと出力電力OPが差し引き点301に入力される。出力電力OPは、電源システムPの出力電力であり、電源システムの出力電力VPと出力電流IPとから算出されてよい。差し引き点301から電力指令RPと出力電力OPの偏差ΔRPが出力され、PI制御器302へ入力される。PI制御器302は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔRPが0になるよう(出力電力OPが電力指令RPに一致するよう)電力補正Frpを出力する。
【0055】
加え合わせ点303には、電力指令RPと電力補正Frpとが入力され、加え合わせ点303は、電源システムPの出力電力指令TPを出力する。加え合わせ点303から出力された出力電力指令TPは、配分器304に入力される。配分器304は、各電池ユニットBuの出力電力(ユニット出力電力)の指令値であるユニット電力指令TP(N)を出力する。本実施の形態の電源システムPにおいて、電池ユニットBuは60個並列に接続されており、配分器304は、出力電力指令TPの1/60を、各電池ユニットBuに配分する。たとえば、出力電力指令TPに「1/60」を乗算して、ユニット電力指令TP(N)を出力する。なお、ユニット電力指令TP(N)の「N」は、当該電池ユニットBuに含まれるバッテリパックの符号に対応するものであり、たとえば、バッテリパック1-n-1を含む電池ユニットBuのユニット電力指令TP(N)は、ユニット電力指令TP(1-n-1)と表される。以下、「N」を同様に扱い、「N」はバッテリパックの符号に対応するものとする。
【0056】
ユニット電力指令TP(N)の算出以外は、各電池ユニットBuにおいて共通であるので、以下、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuについて説明する。
【0057】
PCS-ECU500から入力された電圧指令RVと電池ユニットBuの出力電圧であるユニット出力電圧VO(1-1-1)が差し引き点401に入力され、差し引き点401から、電圧指令RVとユニット出力電圧VO(1-1-1)の偏差ΔRVが、PI制御器402へ出力される。ユニット出力電圧VO(1-1-1)は、電源サブユニットSu-1に転用されたPCU20が備えている、システム電圧VHを検出する電圧センサVHの検出値であってよい。
【0058】
PI制御器402は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔRVが0になるよう(ユニット出力電圧VO(1-1-1)が電圧指令RVに一致するよう)、電圧フィードバック量(電圧FB量)ILfb(1-1-1)を出力する。電圧FB量ILfb(1-1-1)は、偏差ΔRVが0になるように、電池ユニットBuの出力電流を制御するものである。電圧FB量ILfb(1-1-1)は、開閉器403を介して、加え合わせ点404に入力される。
【0059】
開閉器403が閉じると、加え合わせ点404に、電圧FB量ILfb(1-1-1)が入力される。開閉器403が開くと、加え合わせ点404には、電圧FB量ILfb(1-1-1)は、入力されない。この場合(開閉器403が開いている場合)、加え合わせ点404において、電圧FB量ILfb(1-1-1)は、0として扱われる。
【0060】
配分器304から出力されたユニット電力指令TP(1-1-1)、および、バッテリパック1-1-1に含まれるバッテリ10の電圧VB(1-1-1)が、乗算器(除算器)405に入力される。電圧VB(1-1-1)は、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の電圧VBを検出する電圧センサVBの検出値であってよい。乗算器(除算器)405では、ユニット電力指令TP(1-1-1)を電圧VB(1-1-1)で除算することにより、電流フィードフォワード量(電流FF量)ILff(1-1-1)が算出される。算出された電流FF量ILff(1-1-1)は、加え合わせ点404に入力される。電流FF量ILff(1-1-1)は、出力電力OPが電力指令RPになるよう、電池ユニットBuの出力電流を制御するものである。
【0061】
加え合わせ点404では、電流FF量ILff(1-1-1)に電圧FB量ILfb(1-1-1)が加算され、IL指令を出力する。加え合わせ点404から出力されたIL指令と電池ユニットBuの出力電流であるIL(1-1-1)が差し引き点406に入力され、差し引き点406から、IL指令とIL(1-1-1)の偏差ΔILが、PI制御器407へ出力される。IL(1-1-1)は、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuの出力電流であり、バッテリパック1-1-1が接続されたU相のU相電流iuを検出する電流センサiuの検出値であってよく、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の入出力電流IBを検出する電流センサIBの検出値であってもよい。
【0062】
PI制御器407は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔILが0になるよう(IL(1-1-1)がIL指令に一致するよう)、比例項と積分項を加算した、デューティ比Du(1-1-1)を出力する。そして、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuのコンバータ2(U相アーム(スイッチング素子Q9a,Q9b,Q10a,Q10b))が、デューティ比Du(1-1-1)によって、PWM制御される。なお、すべての電池ユニットBuが同様に制御される。
【0063】
開閉器403が閉じているとき、IL指令に、電圧FB量ILfb(1-1-1)が加算されるので、デューティ比Du(1-1-1)は、ユニット出力電圧VO(1-1-1)が電圧指令RVになるよう、当該電池ユニットBuが制御される。これにより、電源システムPの出力電圧VPが電圧指令RVになるよう電圧制御される。開閉器403が閉じているとき、差し引き点401~PI制御器407は、電圧制御部310としての機能を奏する。
【0064】
開閉器403が開いているとき、IL指令は、電流FF量ILff(1-1-1)であるので、デューティ比Du(1-1-1)は、当該電池ユニットBuの出力電力がユニット電力指令TP(1-1-1)になるよう、当該電池ユニットBuが制御される。これにより、電源システムPの出力電力OPが電力指令RPになるよう電力制御される。開閉器403が開いているとき、加え合わせ点404~PI制御器407は、電力制御部320として機能する。
【0065】
図5は、制御装置3で実行される、電圧制御切替処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、電源システムP(電池ユニットBu)の放電時に実行され、たとえば、PCS-ECU500から入力される電力指令RPが放電電力であるとき、実行される。
【0066】
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、nを「M+1」に設定する。Mの初期値は0に設定されており、最初にS10が処理されるとき、nは1に設定される。
【0067】
続くS11では、Mをnに設定する。なお、S11が最初に処理されるとき、nは1であるので、Mは1に設定される。
【0068】
S12では、電源サブユニットSu-nに含まれる3個の電池ユニットBuを電圧制御するとともに、電源サブユニットSu-n以外の電源サブユニットSuに含まれる電池ユニットBuを電流制御する。なお、S12が最初に処理されるとき、nは1であるので、電源サブユニットSu-1に含まれる3個の電池ユニットBuが電圧制御されるとともに、電源サブユニットSu-1以外の電源サブユニットSuに含まれる電池ユニットBuは電流制御される。
【0069】
制御装置3は、電源サブユニットSu-nに含まれる3個の電池ユニットBuに接続された開閉器403を閉じることにより、電源サブユニットを電圧制御する。制御装置3は、電源サブユニットSu-n以外の電源サブユニットSuに含まれる電池ユニットBuに接続される開閉器403を開くことにより、電源サブユニットSu-n以外の電源サブユニットSuを電流制御する。
【0070】
続くS13では、電源サブユニットSu-nの電圧制御を開始してから所定期間T経過したか否かを判定する。所定期間Tは、任意の期間であってよい。たとえば、電源システムPからの放電が、1コマ30分単位の下げDRの要請に基づいており、下げDRの要請が2コマ(60分)である場合、所定期間Tを3分に設定してよい。本実施の形態において、電源サブユニットSuは20個であり、3分毎に電圧制御される電源サブユニットSu(電池ユニットBu)を切り替えることにより、放電期間中にすべての電源サブユニットSu(電池ユニットBu)に対して電圧制御を行うことができる。
【0071】
電源サブユニットSu-nの電圧制御を開始してから所定期間Tが経過すると、S13で肯定判定され、S14へ進む。S14では、Mが20以上であるか否かを判定する。「20」は、電源システムPに並列に接続された電源サブユニットSnの数である。Mが20未満であるときは、否定判定されて、S10から処理を再開する。Mが20以上であるときには、肯定判定され、S15においてMを0に設定したあと、S10から処理を再開する。
【0072】
なお、本電圧制御切替処理の途中で、電源システムPからの放電が停止した場合、そのときのMを保持して、電圧制御切替処理を終了する。そして、電源システムP空の放電が再開したとき、保持しているMを用いて、S10の処理から処理が再開される。
【0073】
この実施形態によれば、電圧制御される電源サブユニットSn(電池ユニットBu)が、所定期間T毎に切り替えられる。電力ずれが生じるような場合であっても、電圧制御が実行される電池ユニットBuが順次切り替えられるので、各電池ユニットBuの負荷(電力負担)の均一化を図ることができる。また、電圧制御される1個の電源サブユニットSu以外の電源サブユニットSuによって電力制御を実行するので、電力制御の応答性を高めることができ、出力電力OPと電力指令RPと差を小さくできる。これにより、出力電圧OVの変動を抑制しつつ、電源システムに接続された負荷の電力変動に応えることができる。
【0074】
この実施の形態によれば、電源サブユニットSuのコンバータ2は、電動車両VのPCU20に含まれるインバータ23(三相インバータ)を転用したものである。また、電源サブユニットSuのバッテリパック1として、電動車両Vのバッテリパック1を用いている。したがって、電動車両Vの買い換え、解体等に伴って回収されるバッテリやPCUのリユースを促進することができる。
【0075】
上記の実施の形態では、制御装置3は、電源サブユニットSuの単位で、電圧制御および電力制御を実行し、電源サブユニットSuに含まれる3個の電池ユニットBuは、同一の制御(電圧制御あるいは電力制御)によって制御されていた。しかし、制御装置3は、1個の電池ユニットBuに対して電圧制御を実行し、電圧制御する電池ユニットBuを順次切り替えるようにしてもよい。これにより、電圧制御される1個の電池ユニットBu以外の電池ユニットBuによって電力制御を実行するので、電力制御の応答性を高めることができ、出力電力OPと電力指令RPと差を小さくできる。これにより、出力電圧OVの変動を抑制しつつ、電源システムPに接続された負荷の電力変動に応えることができる。なお、同時に電圧制御される電池ユニットBuは、2個であってよく、4個であってもよい。
【0076】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る、電源システムPの制御装置3aを説明する図である。変形例1の制御装置3aは、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220を利活用したものである。図6において、H/HV-ECU200a、および、HV-ECU(1)200a-1~HV-ECU(3)200a-3は、電動車両Vに搭載されたHV-ECU200を利活用したものである。MG-ECU210aは、MG-ECU210を利活用したものである。BT-ECU220a1~BT-ECU220a-3は、BT-ECU220を利活用したものである。
【0077】
図6において、インターフェースECU(I/F-ECU)600は、PCS-ECU500と制御装置3a(H/HV-ECU200a)との間を接続し、PCS-ECU500の通信プロトコルと制御装置3aの通信プロトコルとの間の整合を行っている。H/HV-ECU200aは、I/F-ECU600を介して、PCS-ECU500から受信した、電力指令RP、電圧指令RV、等から、各電池ユニットBuに対する電力指令TP(N)、等を演算する。
【0078】
MG-ECU210a、HV-ECU(1)200a-1~HV-ECU(3)200a-3、および、BT-ECU220a1~BT-ECU220a-3から構成された、サブ制御装置3a1は、電源サブユニットSuを制御する制御装置であり、図4におけるサブユニット制御部Sucの機能を奏する。図6において、サブ制御装置3a1-1は、図1における電源サブユニットSu-1を制御する制御装置であり、図4におけるサブユニット制御部Suc-1における機能を有する。電源サブユニットSu毎にサブ制御装置3a1が設けられ、制御装置3aは、サブ制御装置3a1-1~サブ制御装置3a1-nのn個のサブ制御装置3a1を有する。
【0079】
図6において、BT-ECU(1)220a-1は、電源サブユニットSu-1のバッテリパック1-1-1のバッテリ10の電圧VB、入出力電流IB、温度等を監視するとともに、SOCを算出する。また、BT-ECU(1)220a-1は、電圧VB、入出力電流IB、温度TBの履歴等に基づいて、電源サブユニットSu-1のバッテリパック1-1-1のバッテリ10の状態であるSOH(States Of Health)を演算する。SOHは、たとえば、バッテリ10の容量維持率や内部抵抗上昇率であってよく、バッテリ10の劣化度合を示すパラメータである。HV-ECU(1)200a-1は、電力指令TP(1-1-1)や電圧指令RVに基づいて、バッテリパック1-1-1のSMR11の開閉制御を行う。また、HV-ECU200a-1は、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の劣化度合の検出等を行う。BT-ECU(2)220a-2およびHV-ECU(2)200a-2は、バッテリパック1-1-2に対して、BT-ECU(1)220a-1およびHV-ECU(1)200a-1と同様の処理を行う。BT-ECU(3)220a-3およびHV-ECU(3)200a-3は、バッテリパック1-1-3に対して、BT-ECU(1)220a-1およびHV-ECU(1)200a-1と同様の処理を行う。MG-ECU210aは、電圧指令RV、電力指令TP(1-1-1)、等に基づいて、上記で説明したように、デューティ比Du(1-1-1)を求め、コンバータ2を制御する(インバータ23のU相アームのスイッチング素子を駆動する)。
【0080】
サブ制御装置3a1-2~サブ制御装置3a1-nも、電源サブユニットSu-2~電源サブユニットSu-nに関して、サブ制御装置3a1-1と同様の処理を行う。
【0081】
図7は、変形例1の制御装置3aで実行される、電圧制御切替処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図5におけるフローチャートのS12とS13の間に、S20を追加したものである。
【0082】
S20では、電源サブユニットSu-nに含まれる、3個の電池ユニットBuのバッテリパック1(バッテリ10)の劣化度合に基づいて、所定期間Tを設定する。変形例1では、たとえば、BT-ECU(1)220a-1~BT-ECU(3)220a-3で求めた容量維持率のうち、最も小さい容量維持率に基づいて、所定期間Tを設定する。所定期間Tは、容量維持率が小さいほど(劣化度合が大きいほど)、短くなるよう設定される。なお、劣化度合として、内部抵抗上昇率を採用する場合は、BT-ECU(1)220a-1~BT-ECU(3)220a-3で求めた内部抵抗上昇率のうち、最も大きい内部抵抗上昇率に基づいて、所定期間Tを設定する。所定期間Tは、内部抵抗上昇率が大きいほど(劣化度合が大きいほど)、短く設定される。
【0083】
S13では、S20で設定された所定期間Tを用いて、電源サブユニットSu-nの電圧制御を開始してから所定期間T経過したか否かを判定する。
【0084】
この変形例1によれば、電源システムPの制御装置として、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220のハードウェアを利活用することが促進できる。また、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220等で利用していたCAN(Controller Area Network)通信の資源も活用でき、信頼性の高い、多重系の通信や監視を、比較的容易に実行することができる。
【0085】
また、三相インバータと三相インバータに接続された3個の電池によって構成された、電源サブユニットSuの単位で、電圧制御および電力制御を行う際、PCU20(三相インバータ)の駆動制御を行うECUのハードウェアを、制御装置3aとして、比較的容易に活用できる。これにより、電動車両のPCU20(三相インバータ)の駆動制御を行うECUを、制御装置3aとして利活用することを促進できる。
【0086】
この変形例1によれば、電圧制御される電池ユニットBuの状態に応じて、所定期間Tを設定しており、電池ユニットBuに含まれるバッテリパック1(バッテリ10)の劣化度合が大きいほど、所定期間Tを短くしている。バッテリ10の劣化度合が大きいほど、そのバッテリ10を含む電池ユニットBuの電圧制御の期間が短期間になり、当該電池ユニットBuがさらに劣化することを抑制できる。
【0087】
なお、所定期間Tは、バッテリパック1(バッテリ10)のSOCによって設定されてもよい。たとえば、電圧制御される電池ユニットBuに含まれるバッテリパック1(バッテリ10)の電圧制御開始時のSOCが小さいほど、所定期間Tを短く設定するようにしてもよい。
【0088】
変形例1においても、制御装置3aは、1個の電池ユニットBuに対して電圧制御を実行し、電圧制御する電池ユニットBuを順次切り替えるようにしてもよい。また、上記実施の形態の制御装置3において、電池ユニットBuに含まれるバッテリパック1(バッテリ10)の劣化度合を算出し、劣化度合が大きいほど所定期間Tを短くしてもよい。
【0089】
(変形例2)
図8は、変形例2における電源システムPaの全体構成を示す図である。上記の実施の形態では、昇圧コンバータ21、インバータ22およびインバータ23を備えたPCU20を、電源システムPのコンバータ2に転用した例を説明した。上記の実施の形態では、特に、大電力を通電可能とするために、並列にスイッチング素子が設けられたインバータ23を、コンバータ2のスイッチング素子として利用していた。しかし、電動車両に搭載されるPCUには、インバータがひとつ設けられるもの、あるいは、昇圧コンバータを備えないPCUが存在する。
【0090】
変形例2における電源システムPaは、ひとつのインバータのみを備えるPCU、あるいは、PCUからインバータ部分を抜き出した回路を、電源システムPaのコンバータ2Aに転用したものである。
【0091】
図8において、コンバータ2Aは、電動車両に搭載されたPCUのインバータ(三相インバータ)を転用したものである。図8において、バッテリパック1のSR1およびSR2は、システムメインリレー(SMR)である。上記実施の形態と同様に、3個のバッテリパック1(1-1-1、1-1-2、1-1-3)の出力端子の正極端子が、PCUの三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の中間点に、コイル(インダクタ)5を介して接続される。バッテリパック1の正極端子とコイル5との間の電力線は、コンデンサ6を介して、バッテリパック1の出力端子の負極端子と接続される。三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の上アームは正極線PLに接続され、PCS100の入出力端子に接続される。三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の下アームは負極線NLに接続され、PCS100の入出力端子に接続される。バッテリパック1の負極端子は、負極線NLに接続される。
【0092】
このように、変形例2における電源システムPaでは、PCUの三相インバータの各相アームをバッテリパック1に接続し、三相インバータをコンバータ2Aに転用して、3個の電池ユニットBuを有する電源サブユニットSuaを構成している。電源システムPaは、上記実施の形態と同様に、電源サブユニットSuaを複数備え、各電源サブユニットSuaは並列に接続されている。この変形例2においても、制御装置3bにおいて、上記の実施の形態と同様な電圧制御を実行することにより、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0093】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 バッテリパック、2,2A コンバータ、3,3a,3b 制御装置、5 コイル(インダクタ)、6 コンデンサ、10 バッテリ、11 SMR、15 監視ユニット、20 PCU、21 昇圧コンバータ、22,23 インバータ、25 バッテリ接続端子、26 MG1接続端子、27 MG2接続端子、28a 正極端子、28b 負極端子、30 エンジン、40 動力分割機構、50 駆動輪、100 PCS、200 HV-ECU、210 MG-ECU、220 BT-ECU 230 EG-ECU、300 負荷、310 電圧制御部、320 電力制御部、400 制御ECU、450 駆動ECU、500 PCS-ECU、600 I/F-ECU、650 太陽光発電装置、Bu 電池ユニット、MG1 モータジェネレータ、MG2 モータジェネレータ、Su,Sua 電源サブユニット、P,Pa 電源システム、PG 電力系統、V 電動車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8