(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】移動体制御システム、制御装置、及び、移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241001BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2022538529
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028271
(87)【国際公開番号】W WO2022018826
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141519
【氏名又は名称】梶田 邦之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-22130(JP,A)
【文献】国際公開第97/036217(WO,A1)
【文献】特開平5-297943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体を目標経路に追従するように制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、
前記移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出し、
前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を、前記移動体の目標重心速度として決定する
ことを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
前記移動体は、前記移動体の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪を有し、前記駆動輪の速度差を示すオフセット値の正負が逆転した場合に、前記漸近軌道へ移行することを特徴とする請求項
1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記オフセット値は、前記移動体と前記目標経路との間の距離、及び前記なす角に基づいて算出されることを特徴とする請求項
2に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記1対の駆動輪を構成する2つの駆動輪のそれぞれの速度は、前記移動体の重心速度と前記オフセット値に基づいて算出されることを特徴とする請求項
3に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、所定の時間周期で前記移動体の前記位置及び前記なす角を繰り返し算出することで、前記漸近軌道に移行するまでの距離を算出することを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記移動体は、物品を搬送する搬送ロボットであることを特徴とする請求項
1から5のいずれか1項に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出手段と、
前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を、前記移動体の目標重心速度として決定する決定手段と
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出ステップと、
前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を、前記移動体の目標重心速度として決定する決定ステップと
を含むことを特徴とする移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御システム、制御装置、及び、移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産現場では、使用する部品、資材などの物品移動が欠かせない。また、物流倉庫においても物品の移動が必要となる。これらの物品移動には搬送ロボット(AGV;Automated Guided Vehicle)が活用される。
【0003】
搬送ロボットは、設定された目標経路を追従するように走行し、経路上に障害物が存在する場合は経路を外れ、当該障害物を回避した後、目標経路に戻るように走行する。
【0004】
特許文献1には、移動ロボットの位置と仮想的な経路との間のずれを最小化するように、当該経路を追従する移動ロボットを制御する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、移動体の位置および姿勢角に加えて、移動体の舵角を考慮し、目標地点における走行経路の曲率が連続するように、移動体を走行させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、自機の現在位置から各サブゴールへ向かうベクトルを求め、各ベクトルの合成ベクトルの方向に自機の仮想的な移動目標を配置することで、目的地まで滑らかに移動することが可能な自律移動体が開示されている。
【0007】
特許文献4には、N個の座標点からなる座標点集合を一定順序でつなぎ合わせて生成される離散経路から、離散経路上のN個の座標点の各々の座標値を変換し、座標値の重み付け移動平均を算出することで滑らかな連続経路を作成することが開示されている。
【0008】
特許文献5には、目標経路を追従するロボットの移動速度に応じて、目標経路における円弧の曲率を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2018-527689号公報
【文献】特開平1-223513号公報
【文献】特開2010-092279号公報
【文献】特開2007-257094号公報
【文献】特開2007-249363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
搬送ロボットは、目標経路に戻る際、例えば、物品を搬送する状態で急激に旋回しないように曲率を考慮して制御される。そのため、搬送ロボットは、一般に定速であるベース速度で走行するため、目標経路に戻るために長い走行距離が必要になることがある。
【0011】
このような問題は、物品を搬送する搬送ロボットに限らず、目標経路を追従する一般的な移動体に対しても生じ得る。そして、このような問題は、特許文献1乃至5に開示された技術を適用しても解消することはできない。
【0012】
本発明の各態様によれば、目標経路へ戻る際の走行距離を制御することが可能な移動体制御システム、制御装置、及び移動体制御方法が提供される。なお、本発明により、上記効果の代わりに、又は上記効果と共に、他の効果が奏されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様による移動体制御システムは、移動体と、前記移動体を目標経路に追従するように制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、前記移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出し、前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定することを特徴とする。
【0014】
一態様による制御装置は、目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出手段と、前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定する決定手段とを有することを特徴とする。
【0015】
一態様による移動体制御方法は、目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出ステップと、前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定する決定ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の各態様によれば、目標経路へ戻る際の走行距離を制御することが可能な移動体制御システム、制御装置、及び移動体制御方法が提供される。なお、本発明により、当該効果の代わりに、又は当該効果と共に、他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る搬送システムの構成例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る搬送システムの動作例を示すシーケンス図である。
【
図3】第1の実施形態に係る搬送システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る搬送ロボットの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る位置情報生成装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る搬送計画装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る搬送計画装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図9】目標経路を外れた搬送ロボットの例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための図である。
【
図13】第1の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図14】第2の実施形態に係る移動体制御システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、同様に説明されることが可能な要素については、同一の符号を付することにより重複説明が省略され得る。
【0019】
説明は、以下の順序で行われる。
1.実施形態の概要
2.第1の実施形態
2.1.システム構成
2.2.動作例
3.第2の実施形態
3.1.システム構成
3.2.動作例
【0020】
<<1.実施形態の概要>>
はじめに、実施形態の概要について説明する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る搬送システムの構成例を示す図である。一実施形態に係る搬送システム100は、搬送ロボット101、制御装置102、及び位置情報生成装置103を含む。搬送ロボット101は、物品を搬送する。位置情報生成装置103は、搬送ロボット101の位置情報を生成し、生成された位置情報を制御装置102に送信する。制御装置102は、搬送ロボット101の位置情報に基づいて、物品を搬送ロボット101によって搬送するための制御情報を生成し、生成された制御情報を搬送ロボット101に送信する。尚、搬送システム100は、複数の搬送ロボットを含んでよい。その場合、位置情報生成装置103は、複数の搬送ロボットのそれぞれの位置情報を生成する。また、制御装置102は、複数の搬送ロボットのそれぞれに、物品を搬送するための制御情報を送信する。
【0022】
図2は、上記一実施形態に係る搬送システムの動作例を示すシーケンス図である。
【0023】
まず、ステップS1において、位置情報生成装置103は、搬送ロボット101の位置情報を生成し、生成した位置情報を制御装置102に送信する。次いで、ステップS2において、制御装置102は、当該位置情報に基づいて、物品を搬送ロボット101によって搬送するための制御情報を生成し、生成された制御情報を搬送ロボット101に送信する。次いで、ステップS3において、搬送ロボット101は、受信した制御情報に基づき物品を搬送する。
【0024】
上記搬送システム100では、搬送ロボット101は、ロボット自身の上に物品を載せるタイプのロボットや、牽引器具により物品を牽引するタイプのロボットとすることができる。或いは、2台の搬送ロボットが協調して物品を移動(搬送)してもよい。そうすることで、物流倉庫等に運び込まれる多種多様な物品に適応できる。例えば、2台の搬送ロボットが物品を挟み込んで移動することで、2台の搬送ロボットは物品の形状等によらず物品を搬送できる。また、制御装置102は、2台の搬送ロボットの状況だけでなくその周辺環境等も考慮してこれらの搬送ロボットを制御できる。そのため、例えば、搬送ロボットの周辺(搬送ロボットの経路上)に障害物が存在しても、制御装置102は、当該障害物を回避する制御を実行できる。
【0025】
また、上記搬送システム100では、搬送ロボット101は、工場等において、磁気テープやQRコード(登録商標)を床に貼り付け、当該磁気テープ等を頼りに移動するタイプの搬送ロボットとすることもできる。
【0026】
図16は、課題を説明するための図である。図示されるように、搬送ロボット101は、目標経路上に存在する障害物110を回避することで、目標経路を外れてしまうことがある。このような場合、搬送ロボット101は、目標経路へ戻るように制御される。例えば、低速で走行している場合、搬送ロボット101は、軌跡111を描くように目標経路に漸近することになる。一方、より高速で移動している場合、搬送ロボット101は、軌跡112を描くように目標経路に漸近することになる。このように、搬送ロボット101の走行速度によって目標経路に戻るまでの走行距離は異なるが、従来、搬送ロボット101が目標経路に戻るまでの走行距離を制御することは実現されていなかった。このような問題は、物品を搬送する搬送ロボットに限らず、目標経路を追従する移動体全般に対して生じ得る。
【0027】
本発明の実施形態によれば、目標経路へ戻る際の走行距離を制御することが可能な移動体制御システム、制御装置、及び移動体制御方法が提供される。
【0028】
なお、上述した実施形態の概要は、一例であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。また、本発明の実施形態は、物品を搬送する搬送ロボットだけでなく、目標経路を追従する移動体に適用することができる。
【0029】
<<2.第1の実施形態>>
続いて、
図3~
図13を参照して、第1の実施形態についてより詳細に説明する。
【0030】
<2.1.システム構成>
図3は、第1の実施形態に係る搬送システムの概略構成の一例を示す図である。搬送システム100は、搬送ロボット101と、制御装置102と、位置情報生成装置103と、搬送計画装置104と、カメラ装置105とを含む。尚、
図3に示す構成は例であって、搬送システム100に含まれる搬送ロボット101やカメラ装置105の数を制限するものではない。
【0031】
搬送ロボット101は、制御装置102と通信可能に構成されており、制御装置102からの制御コマンド(制御情報)に基づき移動し、物品(不図示)を搬送する。また、搬送ロボット101は、搬送ロボット101の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪122、123と、補助輪として機能する非駆動輪124とを有する。非駆動輪124は、方向を変更できるように回転自在に取り付けられている。
【0032】
カメラ装置105は、フィールド106を撮像する装置である。搬送システム100は、例えば、デプスカメラやステレオカメラ等を含んで構成される。デプスカメラは、画像の各画素値がカメラから対象物までの距離を示す深度画像を撮影できるカメラである。また、ステレオカメラは、2つのカメラを用いて対象物を複数の異なる方向から撮影することで、対象物の奥行き方向(高さ方向)に関する計測を可能とするカメラである。
【0033】
カメラ装置105は、天井や柱などに設置される。複数のカメラ装置105が撮像した画像データを統合することで、フィールド106を俯瞰できるようにしてもよい。
【0034】
カメラ装置105は、位置情報生成装置103と接続される。カメラ装置105は、所定の間隔(所定のサンプリング周期)でフィールド106を撮像し、画像データを位置情報生成装置103に送信する。カメラ装置105は、フィールド106の状況をリアルタイムに撮像し、当該状況を含む画像データを位置情報生成装置103に送信する。
【0035】
位置情報生成装置103は、フィールド106(例えば、工場又は物流倉庫)内の物体の位置に関する情報を生成する。位置情報生成装置103は、カメラ装置105から受信した画像データに基づいてフィールド106内に位置する物体を識別すると共に、物体の位置情報を生成する。例えば、位置情報生成装置103は、搬送ロボット101の位置情報を生成する。
【0036】
位置情報生成装置103は、カメラ装置105から取得した画像データを解析することで、フィールド106内の物体(例えば、搬送ロボット101や、不図示の物品、その他フィールド106内に置かれた障害物等)を識別する。なお、位置情報生成装置103は、フィールド106の初期状態には存在しない物体を「障害物」として扱ってもよい。
【0037】
位置情報生成装置103は、フィールド106内の任意の一点(例えば、出入り口)を原点とする3次元座標系(X軸、Y軸、Z軸)における対象物の位置(絶対位置)を算出する。位置情報生成装置103は、算出した物体の位置情報(以下、物体位置情報と称する)を制御装置102に送信する。或いは、位置情報生成装置103は、フィールド106内の任意の一点を原点とする2次元座標系(X軸、Y軸)において、対象物の位置を算出してもよい。
【0038】
搬送計画装置104は、搬送ロボット101より搬送される物品の搬送元、及び搬送先に関する情報を含む、物品搬送計画情報を生成する。具体的には、搬送計画装置104は、作業者によって特定された搬送対象の物品の搬送元、及び搬送先を入力するための操作画面(GUI;Graphical User Interface)を提供する。搬送計画装置104は、当該GUIにより入力された情報に基づき、物品搬送計画情報を生成する。搬送計画装置104は、生成した物品搬送計画情報を制御装置102に送信する。
【0039】
制御装置102は、位置情報生成装置103から取得した物体位置情報、及び搬送計画装置104から取得した物品搬送計画情報を用いて、搬送ロボット101を制御する。制御装置102は、搬送計画情報を取得すると、フィールド106内に待機している搬送ロボット101を選択し、選択された搬送ロボット101に対し、搬送計画情報に含まれた搬送元に向かうように指示する。具体的には、制御装置102は、選択された搬送ロボット101に制御コマンド(制御情報)を送信し、搬送ロボット101が搬送元に向かうように遠隔制御する。
【0040】
搬送ロボット101は、制御装置102からの制御コマンドに基づき搬送元へ移動し、物品の搬送準備が完了すると、制御装置102に対して「完了通知」を送信する。なお、制御装置102の制御方法によっては、搬送ロボット101から完了通知を送信する必要はない。例えば、制御装置102は、搬送ロボット101が所定の位置に移動してから所定時間(例えば、30秒)経過後に、搬送ロボット101による搬送準備が完了したと判定してもよい。
【0041】
制御装置102は、搬送準備の完了通知を搬送ロボット101から取得すると、当該搬送ロボット101に対して制御コマンドを送信し、搬送ロボット101が物品搬送計画情報に含まれた搬送先に移動するように遠隔制御する。
【0042】
続いて、搬送システム100に含まれる各装置の機能構成について説明する。
【0043】
図4は、第1の実施形態に係る搬送ロボットの機能構成(処理モジュール)の一例を示す図である。搬送ロボット101は、通信制御部201と、駆動部202と、センサ203とを含んで構成される。
【0044】
通信制御部201は、制御装置102との間の通信を制御する手段である。通信制御部201は、無線LAN(Local Area Network)やLTE(Long Term Evolution)、ローカル5Gのような特定のエリアで用いるネットワーク等の無線通信手段を用いて制御装置102と通信する。
【0045】
駆動部202は、制御装置102から受信した制御コマンド(制御情報)に基づいて、搬送ロボット101の2つの車輪を駆動する手段である。例えば、制御装置102は、モータの回転開始、モータの回転速度、モータの回転停止等を含む制御コマンドを搬送ロボット101に送信する。駆動部202は、当該制御コマンドに従いモータ等を制御し、搬送ロボット101の2つの車輪を駆動する。
【0046】
センサ203は、搬送ロボット101の向きを検出する。搬送ロボット101は、検出された搬送ロボット101の向きに関する情報を、通信制御部201を介して制御装置102へ送信する。例えば、センサ203は、ジャイロセンサとすることができる。
【0047】
図5は、第1の実施形態に係る位置情報生成装置の機能構成(処理モジュール)の一例を示す図である。位置情報生成装置103は、通信制御部301と、位置情報生成部302と、記憶部303と、を含んで構成される。
【0048】
通信制御部301は、有線(例えば、LAN、光ファイバ等)又は無線により接続された他の装置(例えば、カメラ装置105や制御装置102)との間の通信を制御する手段である。
【0049】
位置情報生成部302は、上述した物体位置情報を生成する手段である。位置情報生成部302は、カメラ装置105から取得した画像データに基づき物体位置情報を生成する。
【0050】
カメラ装置105は、自身の識別子(ID;Identifier)と共に画像データを、位置情報生成装置103に送信する。位置情報生成装置103は、当該識別子から画像データの送信元であるカメラ装置105を特定する。カメラ装置105は、天井等に固定されており、フィールド106の画像データを位置情報生成装置103に継続的に送信する。
【0051】
位置情報生成部302は、例えば、以下の方法で物体を検出する。記憶部303には、カメラ装置105の識別子とカメラ装置105が撮影するエリアを対応づけた情報が格納されている。位置情報生成部302は、当該対応情報を参照することで、取得した画像データがフィールド106内のどのエリアに相当する画像が把握できる。
【0052】
また、記憶部303には、カメラ装置105が撮像するエリアの初期画像データが格納されている。初期画像データとはフィールド106内に初期状態では存在しない物体が写っていない画像データである。位置情報生成部302は、取得した画像データと対応する初期画像データを比較し、差分があれば、当該画像データに検出対象の物体が含まれていると判断する。なお、位置情報生成部302が検出対象とする物体は、搬送ロボット101、搬送対象の物品、フィールド106の通路に置かれた障害物等が含まれる。
【0053】
なお、位置情報生成部302による物体判別は、上記初期画像データを用いた方法に限定されない。例えば、位置情報生成部302は、物体(障害物)の座標を算出し、当該物体の座標とフィールドの通常の座標情報に基づいて、通路上(リンク上)に物体が存在することを検出してもよい。
【0054】
位置情報生成部302は、物体を検出すると、当該物体を例えば矩形形状に近似し、その四点の座標を計算する。具体的には、位置情報生成部302は、画像データにおける基準点(例えば、画像の左下)から物体までの画素数に基づき当該基準点の絶対座標に対する物体の相対座標(X座標、Y座標)を計算する。その際、位置情報生成部302は、画像データを取得したカメラ装置105の情報(撮像素子の解像度等)に基づき上記物体の相対座標を計算する。
【0055】
取得画像データの基準点の絶対座標は予め判明している。位置情報生成部302は、基準点の絶対座標に上記計算した物体の相対座標を加算することで、物体のフィールド内における絶対座標(XY座標)を算出する。さらに、画像データがデプスカメラにより撮像されている場合には、位置情報生成部302は、上記算出されたX座標及びY座標に対応する画素値を読み出すことで、物体のZ座標(高さ)とする。
【0056】
位置情報生成部302は、このような処理を物体の四隅について実行することで、物体をなす4点の絶対位置を計算する。
【0057】
また、位置情報生成部302は、取得画像に含まれる物体の種別を判定する。位置情報生成部302は、上記4点の絶対座標から検出された物体の大きさを計算する。位置情報生成部302は、当該計算された大きさに基づき、物体の種別を判定してもよい。例えば、搬送ロボット101の大きさは予め判明しているので、物体の大きさと搬送ロボット101の大きさが一致すれば、位置情報生成部302は、検出した物体は搬送ロボット101と判定する。対して、検出した物体の大きさと搬送ロボット101の大きさが一致しない場合には、位置情報生成部302は、当該検出した物体を障害物と判定する。
【0058】
なお、物体の大きさで搬送ロボットか否かを判定する方法は一例であって、他の方法を用いることもできる。例えば、搬送ロボット101にQRコード(登録商標)やAR(Augmented Reality)マーカ等の識別機能を持つマーカを貼り付け、位置情報生成部302が当該マーカを読み出すことで搬送ロボット101が検出されてもよい。第1の実施形態では、搬送ロボット101にマーカが貼り付けられ、検出された物体が搬送ロボット101であること及びその搬送ロボット101の識別が可能であるとして説明を行う。あるいは、位置情報生成部302が搬送ロボット101に特定の信号やメッセージが送信し、当該信号等を受信した搬送ロボット101が識別番号等を応答することで搬送ロボット101の識別が行われてもよい。即ち、搬送ロボット101の外側に識別情報(例えば、文字や模様)を付与しなくとも、位置情報生成部302は、搬送ロボット101からの信号等により搬送ロボット101の識別を行うことができる。
【0059】
位置情報生成部302は、検出した物体の種類(搬送ロボット101、障害物等)とその絶対位置を制御装置102に送信する。なお、物体の絶対位置は、上記計算された物体をなす4点の絶対座標でもよいし、物体を代表する1点(例えば、物体の中心)の絶対座標であってもよい。
【0060】
図6は、第1の実施形態に係る搬送計画装置の機能構成(処理モジュール)の一例を示す図である。搬送計画装置104は、通信制御部401と、搬送計画情報生成部402と、表示部403と、記憶部404と、を含んで構成される。
【0061】
通信制御部401は、位置情報生成装置103の通信制御部301と同様に、他の装置との間の通信を制御する手段である。
【0062】
搬送計画情報生成部402は、上述の物品搬送計画情報を生成する手段である。搬送計画情報生成部402は、作業者によって特定された搬送対象の物品の搬送元、及び搬送先を入力するためのGUIに関する情報を生成する。搬送計画情報生成部402は、当該生成したGUI情報を表示部403に引き渡す。表示部403は、当該GUI情報を表示部403に表示する。表示部403は、例えば、液晶ディスプレイ等とすることができる。あるいは、搬送計画情報生成部402は、作業者が使用する端末(不図示)にGUIを表示するための情報を生成し、当該端末に向けて生成した情報を送信してもよい。
【0063】
搬送計画情報生成部402は、例えば、
図7に示すような画面を表示する。搬送計画情報生成部402は、作業者が入力した情報を制御装置102に送信する。具体的には、搬送計画情報生成部402は、搬送対象の物品を特定する情報(例えば、物品名、シリアル番号等)、当該物品が置かれる場所(搬送元)及び当該物品の搬送先を対応付けて物品搬送計画情報として制御装置102に送信する。
【0064】
なお、搬送計画装置104と制御装置102との間で、搬送先等をフィールド内の名称等でやり取りする場合には、フィールド内の名称についての絶対座標を搬送計画装置104と制御装置102で共有しておく。あるいは、搬送計画情報生成部402は、作業者が入力したフィールド内の名称をフィールド内の絶対座標に変換し、当該変換された絶対座標を制御装置102に送信してもよい。
【0065】
図8は、第1の実施形態に係る制御装置の機能構成(処理モジュール)の一例を示す図である。制御装置102は、通信制御部501と、経路計算部502と、ロボット制御部503と、記憶部504と、を含んで構成される。
【0066】
通信制御部501は、搬送計画装置104の通信制御部401等と同様に、他の装置との間の通信を制御する。通信制御部501は、位置情報生成装置103から取得した物体位置情報や、搬送計画装置104から取得した物品搬送計画情報を、記憶部504に格納する。
【0067】
経路計算部502は、搬送計画装置104により生成された物品搬送計画情報に基づき、搬送ロボット101が物品を搬送元から搬送先まで搬送するための目標経路(以下、単に経路、あるいは搬送経路とも称する)を計算する手段である。経路計算部502は、例えば、ダイクストラ法やベルマン-フォード法等の経路探索アルゴリズムを用いて、物品を搬送元から搬送先まで搬送する経路を計算する。また、経路計算部502は、計算した経路と当該経路を使う搬送ロボット101とを対応付けて、記憶部504に格納する。
【0068】
ロボット制御部503は、搬送ロボット101を制御する手段である。ロボット制御部503は、搬送ロボット101の位置情報に基づいて、物品を搬送ロボット101で搬送するための制御情報を搬送ロボット101に送信する。即ち、ロボット制御部503は、搬送ロボット101に対して制御コマンド(制御情報)を送信することで搬送ロボット101を制御する。なお、ロボット制御部503は、搬送ロボット101が搬送元から搬送先に移動できるように全ての制御コマンドを一度に送信してもよいし、搬送ロボット101の位置等に応じて制御コマンドを順番に送信してもよい。
【0069】
ロボット制御部503は、搬送ロボット101の搬送経路として算出された経路上を、搬送ロボット101が移動するように制御コマンドを生成し、搬送ロボット101に送信する。
【0070】
搬送ロボット101を直進させる場合には、ロボット制御部503は、搬送ロボット101の現在位置と計算された到達位置の距離に応じて、搬送ロボット101のモータを回転させる時間及び速さを計算する。
【0071】
搬送ロボット101を回転させる場合には、ロボット制御部503は、左右の車輪の速度差によりカーブを描く、円運動のモデルを用いる。具体的には、ロボット制御部503は、目的位置と搬送ロボット101の位置及び向きに基づき、円軌道で現在位置から目的位置に到達するための左右の車輪への入力速度を計算する。ロボット制御部503は、当該計算された入力速度に基づき、搬送ロボット101に送信する制御コマンドを生成する。
【0072】
なお、制御装置102はネットワーク(例えば、インターネット、LTE等の無線通信網)上のクラウドサーバとして実装可能である。
【0073】
<2.2.動作例>
制御装置102は、上述したように、搬送ロボット101が経路に追従して走行するように搬送ロボット101を制御するが、以下では、搬送ロボット101が経路上の障害物を回避して経路から外れた場合を例として、搬送ロボット101を経路へ戻すための動作例について説明する。
【0074】
図9は、目標経路を外れた搬送ロボットの例を示す図である。
図9では、搬送ロボット101と障害物110とが存在するフィールドを上方向から眺めた図を示している。以下で説明する制御装置102の動作例は、搬送ロボット101が障害物110の位置を通り過ぎた後に実施され得る。距離Δdは、搬送ロボット101の中心位置と、目標経路との間の距離を示す。また、搬送ロボット101の進行方向と目標経路とのなす角をΔθとする。このように、搬送ロボット101が目標経路から外れている場合に、以下に説明する動作が実施される。なお、図示されるように、搬送ロボット101は、搬送ロボット101の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪122、123を有する。
【0075】
図10は、第1の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。フローチャートの各ステップは、制御装置102のロボット制御部503によって実施することができる。制御装置102は、例えば、搬送ロボット101が目標経路から外れた場合など、搬送ロボット101を目標経路に戻すように動作する。
図12は、第1の実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための図である。以下では、
図12も参照しながら、制御装置102の動作例を説明する。
【0076】
まず、S101において、制御装置102は、搬送ロボット101の現在位置(x
0,y
0)と、搬送ロボット101の進行方向と目標経路とのなす角Δθ(
図9参照)を取得する。現在位置(x
0,y
0)は、動作を開始する際の搬送ロボット101の初期位置である。
【0077】
次いで、S102において、制御装置102は、搬送ロボット101が目標経路への
漸近軌道に移行するまでの距離を算出する。すなわち、ロボット制御部503は、搬送ロボット101が目標経路への
漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出手段として機能することができる。
図12に示したように、搬送ロボット101は、まず、旋回して方向転換し、その後、目標経路への漸近軌道へ移行する。本実施形態では、制御装置102は、搬送ロボット101が当該漸近軌道へ移行するまでの距離を制御する。
【0078】
ここで、
図11を参照して、S102の処理について詳細に説明する。S102の処理は、1または複数の候補重心速度のうちの1つの候補重心速度において、搬送ロボット101が漸近軌道へ移行するまでに走行する距離を算出する処理である。なお、重心速度とは、左右の駆動輪によって駆動される搬送ロボット101の重心の速度である。また、S102の処理では、処理毎に異なる候補重心速度を選択してもよい。例えば、搬送ロボット101が急な加減速を行わない範囲で候補重心速度を選択することで、搬送ロボット101が徐々に加速したり、減速したりすることができる。
【0079】
まず、S201において、制御装置102は、搬送ロボット101の現在位置から算出した目標経路に対する距離誤差Δdと、搬送ロボット101の進行方向と目標経路とのなす角である角度誤差Δθに基づいて、左右の車輪の速度差に関する速度オフセットΔV
offsetを算出する。速度オフセットΔV
offsetは、ゲイン係数kを用いて、以下の式(1)に示すように算出することができる。
【数1】
【0080】
このように、速度オフセットΔVoffsetは、搬送ロボット101の距離誤差Δdと角度誤差Δθによって定まる。
【0081】
次いで、S202において、制御装置102は、所定の重心速度(ベース速度とも称する)における左右の車輪速度、及び旋回半径を算出する。搬送ロボット101の左右の車輪速度V
r,lは、所定のベース速度V
base及びS201で算出された速度オフセットΔV
offsetを用いて、以下の式(2)に示すように算出することができる。
【数2】
【0082】
また、制御装置102は、左右の車輪速度V
r,lを用いて、搬送ロボット101の旋回半径Rを、以下の式(3)に示すように算出することができる。
【数3】
ここで、2wが、左右の車輪間の距離を表すものとする。
【0083】
次いで、S203において、制御装置102は、所定の時間周期Δtにおける搬送ロボット101の位置(x
t+Δt,y
t+Δt)及びなす角θ
t+Δtを、以下の式(4)~(8)に示すように算出する。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0084】
次いで、S204において、制御装置102は、上記式(1)に示したように、Δtにおける距離誤差Δdと角度誤差Δθに基づいて、Δtにおける速度オフセットΔVoffsetを算出する。
【0085】
次いで、S205において、制御装置102は、S204で算出された速度オフセット値の符号(正負)が逆転したかどうか判定する。速度オフセット値の符号が逆転する状態は、左右の車輪の速度の大きさが右と左で逆転した状態を示す。
図12に示すように、目標経路から離れる方向を向いている搬送ロボット101が旋回して、目標経路の方向を向くにつれて、速度オフセット値は徐々に小さくなり、速度オフセット値の符号が逆転する。ここでは、時間周期Δtをnステップ繰り返した後の搬送ロボット101の位置(x
n,y
n)において、速度オフセット値が逆転するものとする。速度オフセット値が逆転する前の状態は、距離誤差Δd、角度誤差Δθ、及びゲイン係数kを用いて、|k
dΔd|>|k
θΔθ|と表現することができ、速度オフセット値が逆転した状態を|k
dΔd|<|k
θΔθ|と表現することができる。
【0086】
制御装置102は、速度オフセット値の符号が逆転していないと判定すると、S202に戻り、処理を繰り返す。一方、速度オフセット値の符号が逆転した場合は、S206に進む。
【0087】
S206において、制御装置102は、速度オフセット値の符号が逆転した際の搬送ロボット101の移動距離を算出する。
【0088】
次いで、
図10に戻り、S103において、制御装置102は、別の候補重心速度で漸近軌道に移行するまでの距離を計算するかどうか判定する。別の候補重心速度で計算する場合は、S102に戻り、処理を繰り返す。一方、別の候補重心速度で計算しない場合は、S104に進む。
【0089】
S104において、制御装置102は、算出された搬送ロボット101の移動距離を所定の閾値σと比較し、移動距離が所定の閾値σ内にある候補重心速度を、搬送ロボット101が旋回して漸近軌道へ移行するまでの目標重心速度に決定する。すなわち、制御装置102は、所定の閾値σ内で漸近軌道に乗るように、以下の式(9)を満たす重心速度V
baseを決定する。
【数9】
このように、制御装置102のロボット制御部503は、目標重心速度の決定手段として機能することができる。
【0090】
なお、
図12に示すように、初期位置(x
0,y
0)からnステップ後の位置(x
n,y
n)までの距離を、閾値σ
1と比較してもよいし、x方向の移動距離に対する閾値σ
2と比較してもよい。
【0091】
なお、搬送ロボット101の軌道のうち、漸近軌道へ移行するまでの部分(前半部分)は、目標経路と搬送ロボット101との距離誤差を小さくすることを主な目的とする。一方、漸近軌道(後半部分)では、目標経路と搬送ロボット101の進行方向とを合わせることを主な目的とする。
【0092】
上述したように、本実施形態では、1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、漸近軌道に移行するまでに進んだ距離をシミュレーションし、所定の閾値と比較することで、目標重心速度を決定する。制御装置102は、決定された目標重心速度に基づいて搬送ロボット101を制御することで、目標経路へ戻る際の走行距離を制御することができる。すなわち、走行距離が所定の閾値を超えない範囲で重心速度を決定することができるので、目標経路に戻るために長い走行距離を走行しないようにすることができる。
【0093】
続いて、搬送システムを構成する各装置のハードウェアについて説明する。
図13は、制御装置102のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0094】
制御装置102は、情報処理装置(所謂、コンピュータ)により構成可能である。例えば、制御装置102は、プロセッサ311、メモリ312、入出力インターフェイス313及び通信インターフェイス314等を備える。上記プロセッサ311等の構成要素は内部バス315等により接続され、相互に通信可能に構成されている。
【0095】
但し、
図13に示す構成は、制御装置102のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。制御装置102は、図示しないハードウェアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インターフェイス313を備えていなくともよい。また、制御装置102に含まれるプロセッサ311等の数も
図13の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のプロセッサ311が制御装置102に含まれていてもよい。
【0096】
プロセッサ311は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルなデバイスである。あるいは、プロセッサ311は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスであってもよい。プロセッサ311は、オペレーティングシステム(OS;Operating System)を含む各種プログラムを実行する。
【0097】
メモリ312は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。メモリ312は、OSプログラム、アプリケーションプログラム、各種データを格納する。
【0098】
入出力インターフェイス313は、図示しない表示装置や入力装置のインターフェイスである。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受け付ける装置である。
【0099】
通信インターフェイス314は、他の装置と通信を行う回路、モジュール等である。例えば、通信インターフェイス314は、NIC(Network Interface Card)、無線通信回路等を備える。
【0100】
制御装置102の機能は、各種処理モジュールにより実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ312に格納されたプログラムをプロセッサ311が実行することで実現される。また、当該プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transitory)なものとすることができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。また、上記プログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。
【0101】
なお、位置情報生成装置103、搬送計画装置104等も制御装置102と同様に情報処理装置により構成可能であり、その基本的なハードウェア構成は制御装置102と相違する点はないので説明を省略する。
【0102】
<<3.第2の実施形態>>
続いて、
図14及び
図15を参照して、第2の実施形態について詳細に説明する。
【0103】
<3.1.システム構成>
図14は、第2の実施形態に係る移動体制御システムの概略構成の一例を示す図である。本実施形態における移動体制御システム1400は、移動体1410と、移動体1410を目標経路に追従するように制御する制御装置1420とを含む。また、制御装置1420は、算出部1421と、決定部1422とを含む。
【0104】
算出部1421は、移動体1410の位置及び移動体1410の進行方向と目標経路とのなす角に基づいて、移動体1410の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、移動体1410が旋回して目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する。決定部1422は、算出部1421によって算出された距離に基づいて、1または複数の候補重心速度の中から移動体1410の目標重心速度を決定する。
【0105】
上述した装置の各処理部は、例えば、プログラムに従って動作するコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、および、そのコンピュータの通信インターフェイスによって実現される。例えば、CPUが、そのコンピュータのプログラム記憶装置等のプログラム記録媒体からプログラムを読み込み、そのプログラムに従って、必要に応じて通信インターフェイスを用いて、上述した各装置の各処理部として動作することができる。
【0106】
<3.2.動作例>
図15は、第2の実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【0107】
まず、S301において、制御装置1420(算出部1421)は、移動体1410の位置及び移動体1410の進行方向と目標経路とのなす角に基づいて、移動体1410の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、移動体1410が旋回して目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する。次いで、S302において、制御装置1420(決定部1422)は、算出された距離に基づいて、1または複数の候補重心速度の中から移動体1410の目標重心速度を決定する。
【0108】
-第1の実施形態との関係
一例として、第2の実施形態における移動体制御システム1400は、第1の実施形態における搬送システム100である。この場合に、第1の実施形態についての説明は、第2の実施形態にも適用され得る。
【0109】
なお、第2の実施形態は、この例に限定されない。
【0110】
なお、上記実施形態にて説明した搬送システムの構成、動作等は例示であって、システムの構成等を限定する趣旨ではない。例えば、位置情報生成装置103の機能は制御装置102で実現されてもよい。例えば、位置情報生成装置103は物体の位置の判定に関する処理を実行し、制御装置102が物体の種別を判定してもよい。
【0111】
あるいは、位置情報生成装置103はフィールド内部に設置され、制御装置102はネットワーク上のサーバに実装されてもよい。即ち、本願開示の搬送システムは、エッジクラウドシステムとして実現されてもよい。
【0112】
上記実施形態では、物体の高さが検出可能なカメラ(例えば、デプスカメラ)を用いる場合について説明したが、物体の高さを検出する必要がない場合には通常のカメラが用いられてもよい。あるいは、物体の位置を検出するためのセンサとして、赤外線センサや距離センサが用いられてもよい。
【0113】
また、上記実施形態は、搬送ロボット101に対して、以下の式(10)に示す角速度ωや、以下の式(11)に示す操舵角sを入力して制御する場合にも適用することができる。なお、操舵角を入力するタイプの搬送ロボットは、複数の車輪が搬送ロボットの前後方向に配置され、1または複数の車輪の操舵角によって方向を転換し、旋回することができる。
【数10】
上式において、2wは左右の車輪間の距離を表す。
【数11】
上式において、Wは前後の車輪間の距離であるホイールベースを表す。
【0114】
また、上述の説明で用いたフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、例えば各処理を並行して実行する等、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は例示にすぎないということ、及び、本発明のスコープ及び精神から逸脱することなく様々な変形が可能であるということは、当業者に理解されるであろう。
【0116】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0117】
(付記1)
移動体と、
前記移動体を目標経路に追従するように制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、
前記移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出し、
前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定する
ことを特徴とする移動体制御システム。
【0118】
(付記2)
前記制御装置は、前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を前記目標重心速度として決定することを特徴とする付記1に記載の移動体制御システム。
【0119】
(付記3)
前記移動体は、前記移動体の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪を有し、前記駆動輪の速度差を示すオフセット値の正負が逆転した場合に、前記漸近軌道へ移行することを特徴とする付記1または2に記載の移動体制御システム。
【0120】
(付記4)
前記オフセット値は、前記移動体と前記目標経路との間の距離、及び前記なす角に基づいて算出されることを特徴とする付記3に記載の移動体制御システム。
【0121】
(付記5)
前記1対の駆動輪を構成する2つの駆動輪のそれぞれの速度は、前記移動体の重心速度と前記オフセット値に基づいて算出されることを特徴とする付記3または4に記載の移動体制御システム。
【0122】
(付記6)
前記制御装置は、所定の時間周期で前記移動体の前記位置及び前記なす角を繰り返し算出することで、前記漸近軌道に移行するまでの距離を算出することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の移動体制御システム。
【0123】
(付記7)
前記移動体は、物品を搬送する搬送ロボットであることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の移動体制御システム。
【0124】
(付記8)
目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出手段と、
前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定する決定手段と
を有することを特徴とする制御装置。
【0125】
(付記9)
前記決定手段は、前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を前記移動体の目標重心速度として決定することを特徴とする付記8に記載の制御装置。
【0126】
(付記10)
前記移動体は、前記移動体の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪を有し、前記駆動輪の速度差を示すオフセット値の正負が逆転した場合に、前記漸近軌道へ移行することを特徴とする付記8または9に記載の制御装置。
【0127】
(付記11)
前記オフセット値は、前記移動体と前記目標経路との間の距離、及び前記なす角に基づいて算出されることを特徴とする付記10に記載の制御装置。
【0128】
(付記12)
前記1対の駆動輪を構成する2つの駆動輪のそれぞれの速度は、前記移動体の重心速度と前記オフセット値に基づいて算出されることを特徴とする付記10または11に記載の制御装置。
【0129】
(付記13)
前記算出手段は、所定の時間周期で前記移動体の前記位置及び前記なす角を繰り返し算出することで、前記漸近軌道に移行するまでの距離を算出することを特徴とする付記8乃至12のいずれか1項に記載の制御装置。
【0130】
(付記14)
前記移動体は、物品を搬送する搬送ロボットであることを特徴とする付記8乃至13のいずれか1項に記載の制御装置。
【0131】
(付記15)
目標経路を追従するように制御される移動体の位置及び前記移動体の進行方向と前記目標経路とのなす角に基づいて、前記移動体の1または複数の候補重心速度のそれぞれにおいて、前記移動体が旋回して前記目標経路への漸近軌道に移行するまでの距離を算出する算出ステップと、
前記算出された距離に基づいて、前記1または複数の候補重心速度の中から前記移動体の目標重心速度を決定する決定ステップと
を含むことを特徴とする移動体制御方法。
【0132】
(付記16)
前記決定ステップは、前記1または複数の候補重心速度のうち、前記算出された距離が所定の閾値内にある1つの候補重心速度を前記移動体の目標重心速度として決定することを含むことを特徴とする付記15に記載の移動体制御方法。
【0133】
(付記17)
前記移動体は、前記移動体の重心をそれぞれの車軸が通るように配置された1対の駆動輪を有し、前記駆動輪の速度差を示すオフセット値の正負が逆転した場合に、前記漸近軌道へ移行することを特徴とする付記15または16に記載の移動体制御方法。
【0134】
(付記18)
前記オフセット値は、前記移動体と前記目標経路との間の距離、及び前記なす角に基づいて算出されることを特徴とする付記17に記載の移動体制御方法。
【0135】
(付記19)
前記1対の駆動輪を構成する2つの駆動輪のそれぞれの速度は、前記移動体の重心速度と前記オフセット値に基づいて算出されることを特徴とする付記17または18に記載の移動体制御方法。
【0136】
(付記20)
前記算出ステップは、所定の時間周期で前記移動体の前記位置及び前記なす角を繰り返し算出することで、前記漸近軌道に移行するまでの距離を算出することを特徴とする付記15乃至19のいずれか1項に記載の移動体制御方法。
【0137】
(付記21)
前記移動体は、物品を搬送する搬送ロボットであることを特徴とする付記15乃至20のいずれか1項に記載の移動体制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0138】
上記の説明により、本発明の産業上の利用可能性は明らかであるが、本発明は、工場や物流倉庫等の物品搬送に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
100 搬送システム
101 搬送ロボット
102 制御装置
103 位置情報生成装置
122、123 駆動輪
124 非駆動輪
201 通信制御部
202 駆動部
203 センサ
301 通信制御部
302 位置情報生成部
303 記憶部
501 通信制御部
502 経路計算部
503 ロボット制御部
504 記憶部
1400 移動体制御システム
1410 移動体
1420 制御装置
1421 算出部
1422 決定部