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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】スラストフォイル軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
F16C27/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022552039
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034847
(87)【国際公開番号】W WO2022065375
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020159534
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勘
(72)【発明者】
【氏名】吉永 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅祐
(72)【発明者】
【氏名】青山 茂一
(72)【発明者】
【氏名】大森 直陸
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061698(WO,A1)
【文献】特開2017-180592(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが挿通される挿通孔、及び、前記挿通孔の軸方向に直交する方向に広がる支持面を有するベースプレートと、
前記支持面に載置され、前記ベースプレートと別体で形成された段差部材と、
前記挿通孔の周方向に延びると共に、一部が前記支持面に支持され、前記一部と前記周方向に隣り合う他の部分が前記段差部材に支持されるバックフォイルと、を有し、
前記バックフォイルは、山部と谷部とを備えたバンプフォイルであり、
前記段差部材は、前記谷部を面で支持する段差支持部を有する、スラストフォイル軸受。
【請求項2】
前記段差部材は、金属製である、請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項3】
前記バックフォイルに支持されるトップフォイルを有する、請求項1または2に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項4】
前記トップフォイルは、前記周方向において前記一部から前記他の部分に向かうに従って、前記支持面に対する傾きが漸次小さくなるように湾曲している、請求項3に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項5】
前記段差部材は、階段状に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項6】
前記段差部材は、複数のシムを重ね合わせて形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項7】
前記複数のシムは、厚みの異なるシムを含む、請求項6に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項8】
前記複数のシムは、端面のずらし量が異なるシムを含む、請求項6または7に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項9】
前記複数のシムは、前記バックフォイルを直接的には支持しないシムを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項10】
前記ベースプレートには、環状部材が取り付けられ、
前記段差部材は、前記ベースプレートと前記環状部材との間に挟持されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラストフォイル軸受に関する。
本願は、2020年9月24日に日本に出願された特願2020-159534号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラストフォイル軸受が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。スラストフォイル軸受は、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き(スラストカラーの軸方向変位と傾き)を吸収できるように、軸受面が柔軟なフォイル(金属製薄板)によって形成されており、軸受面の下に軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有している。
【0003】
スラストフォイル軸受には、周方向に複数のトップフォイル片とバックフォイル片が配列された形態がある。トップフォイル片は、バックフォイル片に支持されており、スラストカラーの回転により、トップフォイル片とスラストカラーとの間に潤滑流体が導入される。この潤滑流体がトップフォイル片とスラストカラーとの間に楔状の流体潤滑膜を形成し、スラストフォイル軸受の負荷能力が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第6065917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術では、トップフォイルとスラストカラーとの間に楔状の隙間を形成するために、一定の高さのバックフォイルを、ベースプレートに形成した傾斜面に設置している。このような傾斜面は、切削加工などにより形成することが考えられるが、ある程度の加工精度を確保しないと、所望の流体潤滑膜を形成することが困難となる場合がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スラストフォイル軸受の負荷能力の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様のスラストフォイル軸受は、シャフトが挿通される挿通孔、及び、前記挿通孔の軸方向に直交する方向に広がる支持面を有するベースプレートと、前記支持面に載置され、前記ベースプレートと別体で形成された段差部材と、前記挿通孔の周方向に延びると共に、一部が前記支持面に支持され、前記一部と前記周方向に隣り合う他の部分が前記段差部材に支持されるバックフォイルと、を有する。
【0008】
また、本開示の前記一態様においては、前記段差部材は、階段状に形成されていてもよい。
【0009】
また、本開示の前記一態様においては、前記段差部材は、複数のシムを重ね合わせて形成されてもよい。
【0010】
また、本開示の前記一態様においては、前記複数のシムは、厚みの異なるシムを含んでもよい。
【0011】
また、本開示の前記一態様においては、前記複数のシムは、端面のずらし量が異なるシムを含んでもよい。
【0012】
また、本開示の前記一態様においては、前記複数のシムは、前記バックフォイルを直接的には支持しないシムを含んでもよい。
【0013】
また、本開示の前記一態様においては、前記ベースプレートには、環状部材が取り付けられ、前記段差部材は、前記ベースプレートと前記環状部材との間に挟持されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、スラストフォイル軸受の負荷能力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示のスラストフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。
図2】本開示のスラストフォイル軸受を示す側面図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るスラストフォイル軸受を示す平面図である。
図4図3に示す矢視A-A断面図である。
図5】本開示の第2実施形態に係るスラストフォイル軸受の要部を示す断面図である。
図6】本開示の第2実施形態に係るスラストフォイル軸受の負荷能力を説明する説明図である。
図7】本開示の第3実施形態に係るスラストフォイル軸受の要部を示す断面図である。
図8】本開示の一変形例に係るスラストフォイル軸受の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示のスラストフォイル軸受について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示のスラストフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。
図1中、符号1は回転軸(シャフト)、符号2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、符号3は本開示に係るスラストフォイル軸受を示している。
【0018】
回転軸1には、円板状のスラストカラー4が取り付けられている。スラストカラー4は、一対のスラストフォイル軸受3に挟まれている。インペラ2は、静止側となるハウジング5内に配置されており、ハウジング5との間にチップクリアランス6を有している。回転軸1は、ラジアルフォイル軸受7に支持されている。
【0019】
図2は、本開示のスラストフォイル軸受3を示す側面図である。
スラストフォイル軸受3は、図2に示すように、スラストカラー4を挟んで両側に一対で設けられている。これら一対のスラストフォイル軸受3は、共に同じ構成となっている。スラストフォイル軸受3は、トップフォイル10と、バックフォイル20と、ベースプレート30と、を備える。
【0020】
一対のスラストフォイル軸受3のそれぞれのベースプレート30の間には、図2の二点鎖線で示す円筒状の軸受スペーサ40(環状部材)が挟持されている。そして、これらベースプレート30は、締結ボルト41によって軸受スペーサ40を介して連結されている。ベースプレート30の外周部には、締結ボルト41を挿通するための貫通孔42が形成されている。なお、このように連結されたベースプレート30のうちの一方は、締結ボルト41による締め付けによってハウジング5に当接している。
なお、スラストフォイル軸受3が当接しているハウジング5の部位は、図1では省略されている。
【0021】
(第1実施形態)
図3は、本開示の第1実施形態に係るスラストフォイル軸受3を示す平面図である。図4は、図3に示す矢視A-A断面図である。
ベースプレート30は、図3に示すように、回転軸1が挿通される挿通孔30aを有する。
【0022】
なお、以下の説明においては、挿通孔30aを基準に各部材の位置関係を説明することがある。具体的に、「軸方向」とは、挿通孔30aが延びる方向(回転軸1が挿通される方向、回転軸1が延びる方向)を言う。また、「径方向」とは、挿通孔30aの径方向を言う。また、「周方向」とは、挿通孔30aの内周面に沿った周方向を言う。あるいは、挿通孔30aに挿通された回転軸1の軸心を基準に、当該軸心から視た「径方向」及び「周方向」とも言える。
また、「径方向」は、挿通孔30aの中心軸線方向に視たときに当該中心軸線と交差する方向とも言える。「周方向」は、挿通孔30aの中心軸線回りの方向とも言える。
【0023】
ベースプレート30は、軸方向におけるスラストフォイル軸受3の最外部(スラストカラーから遠い側)を構成している。ベースプレート30には、挿通孔30aが形成されている。すなわち、本開示のベースプレート30は、挿通孔30aが形成された円板状の部材である。しかし、挿通孔30aを有すれば、ベースプレート30は、円板状以外の部材(例えば矩形板状)であってもよい。また、挿通孔30aについても、必ずしも厳密な円筒形状である必要はない。
【0024】
ベースプレート30は、例えば、厚さ数mm程度の金属板から形成されている。ベースプレート30は、挿通孔30aの軸方向に直交する方向に広がる支持面30b(平坦面)を有する。支持面30bは、スラストカラー4と対向して配置されている。支持面30bにおける挿通孔30a(開口)の周囲には、トップフォイル10、バックフォイル20、及び後述する段差部材50が配置されている。具体的に、トップフォイル10は、バックフォイル20に支持され、バックフォイル20は、ベースプレート30と、段差部材50に支持されている。つまり、トップフォイル10は、バックフォイル20を介し、ベースプレート30及び段差部材50にも支持されている。
【0025】
本開示では、トップフォイル10、バックフォイル20がいずれも複数枚(6枚)のトップフォイル片11、バックフォイル片21によって形成されている。ベースプレート30は、支持面30bの周方向において等間隔に6枚のトップフォイル片11、バックフォイル片21を支持している。なお、トップフォイル片11、バックフォイル片21の枚数は、6枚に限定されず、2~5枚または7枚以上であってもよい。
【0026】
本開示のトップフォイル10は、周方向に配列された6枚の金属製の薄板(トップフォイル片11)によって形成されている。トップフォイル片11は、周方向一方側(回転軸1の回転方向上流側)から周方向他方側(回転軸1の回転方向下流側)に向かって上方(図3において紙面手前側、あるいは、軸方向においてベースプレート30からトップフォイル片11に向かう側)に傾斜する傾斜部12と、傾斜部12の周方向一方側に連設され、ベースプレート30に取り付けられる取付部13と、を有している。
【0027】
傾斜部12は、図3に示すように、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、傾斜部12は、周方向に離隔し、内周側から外周側に延びる2つの端縁と、2つの端縁を内周側で接続する内周側の端縁と、2つの端縁を外周側で接続する外周側の端縁を備えている。傾斜部12の周方向他方側の内周側から外周側に延びる端縁(以下、周方向他方側の端部12aと言う)は、自由端となっている。
【0028】
一方で、傾斜部12の周方向一方側の内周側から外周側に延びる端縁は、曲げ部14を介して取付部13に接続されている。曲げ部14は、図4に示すように、第1の屈曲と、第1の屈曲の周方向他方側に位置する第2の屈曲とで構成されている。第1の屈曲は、トップフォイル片11のベースプレート30に対向する面の背面側に屈曲している。第2の屈曲は、トップフォイル片11のベースプレート30に対向する面側に屈曲している。つまり、曲げ部14は、階段状となっている。なお、第1の屈曲、第2の屈曲は、いずれも鈍角となっている。
言い換えれば、第1の屈曲は、ベースプレート30に向けて凸となるように屈曲し、第2の屈曲は、ベースプレート30とは逆側(スラストカラー4側)に向けて凸となるように屈曲している。
【0029】
曲げ部14よりも周方向他方側に位置する傾斜部12は、バックフォイル片21の支持部22に支持されている。支持部22に支持された傾斜部12は、周方向一方側から周方向他方側に向かうに連れて、ベースプレート30から漸次遠ざかるように初期傾斜角で傾斜して配置されている。ここで、初期傾斜角とは、荷重がゼロのときのベースプレート30に対するトップフォイル片11(すなわち傾斜部12)の傾斜角を意味する。本開示のベースプレート30は、軸方向に直交する方向に広がる支持面30bを有し、傾斜部12は、当該支持面30bに対し傾斜している。
【0030】
取付部13は、曲げ部14の周方向一方側(第1の屈曲側)に接続されている。本開示では、この取付部13は、径方向において曲げ部14と同じ長さで帯状に形成され、ベースプレート30に対してスポット溶接(点付溶接)されている。つまり、この溶接位置が、ベースプレート30に対するトップフォイル片11の取付位置となっている。なお、ベースプレート30に対するトップフォイル片11の取り付けについては、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによっても行うことができる。また、取付部13と曲げ部14は、必ずしも径方向において同じ長さである必要はない。
【0031】
一方、バックフォイル20は、周方向に配列された6枚の金属製の薄板(バックフォイル片21)によって形成されている。バックフォイル片21は、トップフォイル片11の傾斜部12を支持する支持部22を有している。支持部22は、図4に示すように、山部22aと谷部22bが交互に形成された波型のフォイル(バンプフォイル)である。支持部22は、トップフォイル片11の傾斜部12を弾性的に支持している。
【0032】
なお、支持部22としては、例えば、バンプフォイル、特開2006-57652号公報や特開2004-270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、特開2009-299748号公報などに記載されているバックフォイルなどを用いることができる。なお、特開2006-57652号公報や特開2004-270904号公報に記載されているスプリングフォイル、特開2009-299748号公報に記載されているバックフォイルは、ラジアル軸受に用いられるフォイルであるが、これらを平面状に展開して円環板状に形成すれば、スラストフォイル軸受3に用いられるフォイル(支持部22)となる。
【0033】
本開示の支持部22は、バンプフォイルから形成されている。支持部22は、図3に示す平面視で、トップフォイル片11の傾斜部12よりも一回り小さく形成されている。したがって、支持部22は、傾斜部12に覆われている。支持部22は、傾斜部12と同様に、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、支持部22は、周方向に離隔し、内周側から外周側に延びる2つの端縁と、2つの端縁を内周側で接続する内周側の端縁と、2つの端縁を外周側で接続する外周側の端縁を備えている。
【0034】
支持部22の周方向一方側の内周側から外周側に延びる端縁(以下、周方向一方側の端部)には、支持部22の周方向他方側の内周側から外周側に延びる端縁(以下、周方向他方側の端部)と平行に延びる平行部(以下、バックフォイル端部21aと言う)が形成されている。支持部22には、バックフォイル端部21aから支持部22の周方向他方側の端部に向かう第1方向において、すなわち、バックフォイル端部21aないし支持部22の周方向他方側の端部と直交する法線方向(山部22aの稜線と直交する方向とも言う)において、谷部22bと山部22aが交互に連なっている。
【0035】
図4に示すように、谷部22bは、平坦面を備え、ベースプレート30及び段差部材50に対向している。また、山部22aは、隣接する谷部22bを繋ぐアーチ状の部位となっている。バックフォイル片21は、ベースプレート30及び段差部材50に支持されている。そのため、谷部22bは、ベースプレート30及び段差部材50と当接可能である。支持部22の両端部、すなわち、バックフォイル端部21aと、支持部22の周方向他方側の端部(以下、取付部21bと言う)は、それぞれ谷部22bによって形成されている。
【0036】
本開示では、谷部22b及び山部22aは、それぞれほぼ等ピッチで形成されている。また、山部22aの高さは、一定の高さで形成されている。取付部21bは、段差部材50に対してスポット溶接(点付溶接)されている。つまり、この溶接位置が、周方向におけるバックフォイル片21の取付位置となっている。つまり、本開示において、バックフォイル片21の取付位置は、第1方向の他方側(図4において紙面右側)の端に位置する谷部22b(取付部21b)となっている。
【0037】
また、バックフォイル片21の第1方向の一方側(図4において紙面左側)の端に位置する谷部22b(バックフォイル端部21a)は、自由端となっている。すなわち、バックフォイル片21に荷重が作用すると、バックフォイル端部21aが、第1方向一方側に向かって移動することが可能である。なお、段差部材50に対するバックフォイル片21の取り付けについては、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによっても行うことができる。
【0038】
段差部材50は、ベースプレート30と別体で形成され、支持面30bに載置されている。段差部材50は、バックフォイル片21(バックフォイル20)を周方向の途中から支持する段差支持部51と、図3に示すように、段差支持部51の周方向他方側に連設され、径方向外側に延伸する延伸部52と、段差支持部51よりも径方向外側において延伸部52に連設され、周方向一方側に延伸する被挟持部53と、を有している。
【0039】
延伸部52は、段差支持部51の周方向他方側の径方向外側に接続されている。この延伸部52は、径方向外側に延伸する帯状に形成され、被挟持部53に接続されている。
被挟持部53は、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、被挟持部53は、周方向に離隔し、内周側から外周側に延びる2つの端縁と、2つの端縁を内周側で接続する内周側の端縁と、2つの端縁を外周側で接続する外周側の端縁を備えている。
【0040】
被挟持部53と、段差支持部51部との間には、スリット54が形成されている。スリット54は、段差部材50を径方向において内側の領域と外側の領域に分けている。スリット54は、段差部材50の周方向一方側の端縁から他方側の端縁に向かって、周方向に延伸している。ここで、スリット54よりも外側の領域は、図3に示すように、軸受スペーサ40が配置される径方向位置まで延設されている。つまり、被挟持部53は、ベースプレート30と軸受スペーサ40との間に軸方向において挟持される。
【0041】
被挟持部53には、軸受スペーサ40をベースプレート30に取り付ける締結ボルト41が挿通される貫通孔55が形成されている。被挟持部53の貫通孔55は、ベースプレート30の貫通孔42と、軸方向において重なっている。被挟持部53の貫通孔55は、延伸部52の接続位置の近傍に配置されている。被挟持部53の径方向の寸法は、図3に示すように、軸受スペーサ40と略全体が当接可能なように、軸受スペーサ40の内周面から外周面までの径方向の寸法と同程度であるとよい。また、被挟持部53は、軸受スペーサ40の全周360°のうち、60°程度(全周の1/6程度)の周長を有するとよい。これにより、6つの段差部材50(被挟持部53)が、軸受スペーサ40の略全周で挟持される。
【0042】
図4に示すように、段差部材50は、複数のシム60(金属製の薄板)を重ね合わせて形成されている。複数のシム60は、それぞれ一定の厚みの板状に形成されている。複数のシム60は、段差支持部51において、周方向一方側の端面61が、段が増えるごとに周方向他方側にずれるように重なっている。つまり、1段目のシム60の端面61に対し、2段目のシム60の端面61は、周方向他方側に一定距離ずれている。3段目以降のシム60の端面61も同様である。なお、複数のシム60において、段差支持部51以外の部分(上述した延伸部52及び被挟持部53)の端面は揃っている。
すなわち、複数のシム60において、段差支持部51以外の部分(上述した延伸部52及び被挟持部53)の端面の、支持面30bに沿う方向での位置は一致している。
【0043】
重なり合うシム60(例えば、1段目のシム60と2段目のシム60)の端面61のずらし量Pは、一定である。このずらし量Pは、バックフォイル片21の山部22a及び谷部22bのピッチと同一である。また、複数のシム60は、山部22aの数と同じ枚数である。また、複数のシム60は、谷部22bの数よりも1つ少ない枚数である。複数のシム60(段差支持部51)は、最も周方向一方側に位置する谷部22b以外の谷部22bを支持している。つまり、最も周方向一方側に位置する谷部22b(一部)は、ベースプレート30の支持面30bに支持され、他の谷部22b(残部)は、段差支持部51の各段に1つずつ支持されている。
【0044】
次に、このような構成からなるスラストフォイル軸受3の作用について説明する。
スラストフォイル軸受3は、図2に示すように、スラストカラー4を挟んだ両側に設けている。そのため、回転軸1のスラスト方向両側の移動を抑制できる。
【0045】
このような状態で回転軸1が回転し、スラストカラー4が回転を始めると、スラストカラー4とトップフォイル片11は擦れ合いつつ、両者の間に形成されたくさび形の空間に周囲流体が押し込まれる。そして、スラストカラー4が一定の回転速度に達すると、両者の間に流体潤滑膜が形成される。この流体潤滑膜の圧力によってトップフォイル片11はバックフォイル片21側へ押し付けられ、スラストカラー4はトップフォイル片11との接触状態を脱し、非接触で回転するようになる。
【0046】
ここで、図4に示すように、バックフォイル片21は、一部が支持面30bに支持され、残部が周方向の途中から段差部材50に支持されている。支持面30bは、挿通孔30aの軸方向に直交する方向に広がる平坦面である。段差部材50は、支持面30bに載置され、周方向他方側に向かうに従って高くなる階段状に形成されている。つまり、本実施形態の段差部材50には、支持面30bとおおよそ平行で、高さの異なる複数の面が形成されている。段差部材50は、ベースプレート30と別体であるため、高精度の加工が可能であり、支持面30bに高精度の疑似傾斜面を形成することができる。これにより、バックフォイル片21に適切な傾斜を付与し、スラストカラー4とトップフォイル片11との間に、良好な流体潤滑膜を形成することができる。
【0047】
したがって、上述した第1実施形態によれば、回転軸1が挿通される挿通孔30a、及び、挿通孔30aの軸方向に直交する方向に広がる支持面30bを有するベースプレート30と、支持面30bに載置され、ベースプレート30と別体で形成された段差部材50と、挿通孔30aの周方向に延びると共に、一部が支持面30bに支持され、残部が周方向の途中から段差部材50に支持されるバックフォイル20と、を有する、という構成を採用することによって、スラストフォイル軸受3の負荷能力を向上させることができる。
なお、言い換えれば、図4に示すように、バックフォイル片21は、一部が支持面30bに支持され、当該一部と周方向に隣り合う他の部分が段差部材50に支持されている。バックフォイル片21が、支持面30bにも段差部材50にも支持されない部分を備えていてもよい。
【0048】
また、第1実施形態においては、段差部材50が、階段状に形成されていているため、簡単な形状で高精度の疑似傾斜面を形成することができる。
【0049】
また、第1実施形態においては、段差部材50は、複数のシム60を重ね合わせて形成されている。シム60は、エッチング加工や精密プレス加工などで、高精度で大量生産できる。
【0050】
また、第1実施形態においては、図3に示すように、ベースプレート30には、軸受スペーサ40が取り付けられ、段差部材50は、ベースプレート30と軸受スペーサ40との間に挟持されている。これにより、一対のスラストフォイル軸受3のベースプレート30のスペースを確保する軸受スペーサ40を利用して、段差部材50を挟持することができる。また、段差部材50が挟持されることで、段差部材50が定位置から動くことが抑制される。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0052】
図5は、本開示の第2実施形態に係るスラストフォイル軸受3の要部を示す断面図である。なお、図5は、上述した図3に示す矢視A-A断面図に対応する。
図5に示すように、第2実施形態では、段差部材50(複数のシム60)が、厚みの異なるシム60を含んでいる点で、上記実施形態と異なる。
【0053】
具体的に、1段目のシム60は、厚みt1で形成されている。また、2段目のシム60は、厚みt1よりも大きい厚みt2で形成されている。また、3段目のシム60は、厚みt2よりも小さい厚みt3で形成されている。また、4段目のシム60は、厚みt3よりも小さい厚みt4で形成されている。また、5段目のシム60は、厚みt4よりも僅かに小さい厚みt5で形成されている。
【0054】
すなわち、2段目のシム60が最も厚みが大きく、2段目のシム60から軸方向一方側(図5の紙面上側、スラストカラー4側)及び他方側(図5の紙面下側、ベースプレート30側)に離れるに従って、シム60の厚みが小さくなっていく。バックフォイル片21は、このような厚みの複数のシム60(段差支持部51)に支持されている。このバックフォイル片21に支持されるトップフォイル片11は、軸方向一方側に凸となる湾曲した傾斜部12Aを有する。傾斜部12Aは、周方向他方側に向かうに従って、支持面30b(言い換えればスラストカラー4)に対する傾きが漸次小さくなるように湾曲している。
【0055】
図6は、本開示の第2実施形態に係るスラストフォイル軸受3の負荷能力を説明する説明図である。図6に示すグラフにおいて、横軸xは周方向位置、縦軸P(x)は流体潤滑膜の圧力、つまりスラストフォイル軸受3の負荷能力である。
図6に示すように、第2実施形態ではトップフォイル片11が湾曲面の傾斜部12Aを有するため、第1実施形態の傾斜面(単一の傾斜角度の面)の傾斜部12と比べて、メッシュをかけた領域の分だけ流体潤滑膜の圧力が高くなる。
つまり、この第2実施形態によれば、図5に示すように、複数のシム60の厚みを異ならせることにより、スラストフォイル軸受3の負荷能力を向上させることができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0057】
図7は、本開示の第3実施形態に係るスラストフォイル軸受3の要部を示す断面図である。なお、図7は、上述した図3に示す矢視A-A断面図に対応する。
図7に示すように、第3実施形態では、段差部材50(複数のシム60)が、端面61のずらし量が異なるシム60を含んでいる点で、上記実施形態と異なる。なお、複数のシム60の厚みは一定であるが、異なっていてもよい。
【0058】
具体的に、2段目のシム60は、1段目のシム60に対し、ずらし量P1で端面61をずらして重なっている。また、3段目のシム60は、2段目のシム60に対し、ずらし量P1よりも小さいずらし量P2で端面61をずらして重なっている。また、4段目のシム60は、3段目のシム60に対し、ずらし量P2よりも大きいずらし量P3で端面61をずらして重なっている。また、5段目のシム60は、4段目のシム60に対し、ずらし量P3よりも大きいずらし量P4で端面61をずらして重なっている。
【0059】
すなわち、3段目のシム60のずらし量P2が最も小さく(2段目のシム60の支持面積が最も小さく)、2段目のシム60から軸方向一方側(図5の紙面上側)及び他方側(図5の紙面下側)に離れるに従って、シム60の支持面積が大きくなっていく。バックフォイル片21は、このような複数のシム60(段差支持部51)に支持されている。このバックフォイル片21に支持されるトップフォイル片11は、軸方向一方側に凸となる湾曲した傾斜部12Bを形成する。これにより、第2実施形態と同様に、スラストフォイル軸受3の負荷能力を向上させることができる。
上記支持面積とは、各シム60のうち、バックフォイル20側に露出している領域の面積を言う。
【0060】
また、第3実施形態では、2段目のシム60がバックフォイル片21の谷部22bを直接的には支持しておらず、4段目のシム60が2つの谷部22bを支持している。これにより、トップフォイル片11の傾斜部12Bの形状を単純な2次関数的な湾曲面ではなく、3次関数的な湾曲面に形成することもできる。図7に示す例では、傾斜部12Bの周方向他方側が、軸方向一方側に反り上がるように湾曲している。これにより、トップフォイル片11の周方向他方側における負荷能力を向上させることができる。
すなわち、傾斜部12Bの周方向一方側の部分は、軸方向一方側に凸となるように湾曲し、傾斜部12Bの周方向他方側の部分は、軸方向他方側に凸となるように湾曲し、よって図7において傾斜部12Bは逆S字状に湾曲している。
なお、2段目のシム60は、バックフォイル片21の谷部22bに接触していない。
【0061】
以上、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、図8に示す変形例のように、段差部材50が複数のシム60から形成されていなくてもよい。この変形例の段差部材50は、エッチング加工や精密プレス加工などで一体成形された複数の段差70を有し、これら複数の段差70が段差支持部51を形成している。
【0063】
また、例えば、上記実施形態では、段差部材50が、ベースプレート30と軸受スペーサ40との間に挟持されていたが、溶接やボルト止めなどでベースプレート30に固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、ベースプレートと、当該ベースプレートに支持されるバックフォイルとを備えるスラストフォイル軸受に適用でき、スラストフォイル軸受の負荷能力の向上を目的としている。
【符号の説明】
【0065】
1 回転軸(シャフト)
2 インペラ
3 スラストフォイル軸受
4 スラストカラー
5 ハウジング
6 チップクリアランス
7 ラジアルフォイル軸受
10 トップフォイル
11 トップフォイル片
12 傾斜部
12a 端部
12A 傾斜部
12B 傾斜部
13 取付部
14 曲げ部
20 バックフォイル
21 バックフォイル片
21a バックフォイル端部
21b 取付部
22 支持部
22a 山部
22b 谷部
30 ベースプレート
30a 挿通孔
30b 支持面
40 軸受スペーサ
41 締結ボルト
42 貫通孔
50 段差部材
51 段差支持部
52 延伸部
53 被挟持部
54 スリット
55 貫通孔
60 シム
61 端面
70 段差
P ずらし量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8