(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】超音波装置、半導体装置および超音波装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2022561246
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042629
(87)【国際公開番号】W WO2022102131
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 直人
(72)【発明者】
【氏名】米田 直人
(72)【発明者】
【氏名】玉村 雅也
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-261593(JP,A)
【文献】特開2006-129951(JP,A)
【文献】特開2011-087948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、
前記複数の振動子が生成する電圧のうち、第1所定数の振動子が生成する電圧を選択するスイッチと、
複数の半導体装置と、
を有し、
前記複数の半導体装置の各々は、
前記スイッチにより選択される前記第1所定数の電圧のうち、他の半導体装置が受信する電圧とは異なる第2所定数の電圧を受信するために設けられる第1端子と、
前記第1端子が受信した前記第2所定数の電圧に基づくデータを加算する第1加算部と、
前記他の半導体装置の前記第1加算部によるデータの加算結果を受信する第2端子と、
前記第1加算部によるデータの加算結果と、前記第2端子で受信するデータの加算結果とを加算する第2加算部と、
前記第2加算部の加算結果に
基づいて画像データを生成する画像生成部と、
を有する超音波装置。
【請求項2】
前記複数の半導体装置の各々は、
前記第1端子で受信する前記第2所定数の電圧の時間変化をそれぞれ示す前記第2所定数の時系列データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した前記第2所定数の時系列データから所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出する遅延調整部と、
を有し、
前記第1加算部は前記遅延調整部が抽出した前記所定の遅延量のデータを加算する
請求項1に記載の超音波装置。
【請求項3】
前記複数の半導体装置の1つがメイン半導体装置として動作し、残りの半導体装置がサブ半導体装置として動作し、
前記メイン半導体装置の前記第2加算部は、前記第2端子を介して前記サブ半導体装置の前記第1加算部から加算結果を受信し、
前記サブ半導体装置の前記第2加算部および前記画像生成部は、動作を停止する
請求項2に記載の超音波装置。
【請求項4】
前記複数の半導体装置の各々は、自半導体装置の前記第2加算部および前記画像生成部を動作または停止させる制御部を有する
請求項3に記載の超音波装置。
【請求項5】
前記複数の半導体装置の各々の前記制御部は、自半導体装置の前記遅延調整部に、前記第2所定数の時系列データにおいて前記所定の遅延量のデータを抽出する位置を指示する
請求項4に記載の超音波装置。
【請求項6】
前記メイン半導体装置の前記画像生成部が生成する画像データを、画像データを超音波画像として表示するディスプレイが搭載された端末に無線で送信する無線通信部を有する
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の超音波装置。
【請求項7】
前記複数の半導体装置の前記画像生成部がそれぞれ生成する画像データを、画像データを超音波画像として表示するディスプレイが搭載された端末に無線でそれぞれ送信する複数の無線通信部を有し、
前記複数の半導体装置の各々の前記画像生成部は、自半導体装置の前記第2加算部の加算結果に対して、他の半導体装置の画像生成部と異なる信号処理を実施する信号処理部を有する
請求項1
または請求項2に記載の超音波装置。
【請求項8】
前記複数の半導体装置の前記画像生成部がそれぞれ生成する画像データを、画像データを超音波画像として表示するディスプレイが搭載された端末に無線でそれぞれ送信する複数の無線通信部を有し、
前記複数の無線通信部は、複数の前記画像生成部がそれぞれ生成する画像データを互いに異なる無線方式で前記端末に送信する
請求項1
または請求項2に記載の超音波装置。
【請求項9】
被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、前記複数の振動子が生成する電圧のうち第1所定数の振動子が生成する電圧を選択するスイッチとを有する超音波装置に搭載される半導体装置であって、
前記スイッチにより選択される前記第1所定数の電圧のうち第2所定数の電圧を受信するために設けられる第1端子と、
前記第1端子が受信した前記第2所定数の電圧に基づくデータを加算する第1加算部と、
前記超音波装置に搭載される他の半導体装置の前記第1加算部によるデータの加算結果を受信するために設けられる第2端子と、
前記第1加算部によるデータの加算結果と、前記第2端子で受信するデータの加算結果とを加算する第2加算部と、
前記第2加算部の加算結果に
基づいて画像データを生成する画像生成部と、
を有する半導体装置。
【請求項10】
前記第1端子で受信する前記第2所定数の電圧の時間変化をそれぞれ示す前記第2所定数の時系列データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した前記第2所定数の時系列データから所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出する遅延調整部と、
を有し、
前記第1加算部は前記遅延調整部が抽出した前記所定の遅延量のデータを加算する
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、前記複数の振動子が生成する電圧のうち、第1所定数の振動子が生成する電圧を選択するスイッチと、複数の半導体装置と、を有する超音波装置の制御方法であって、
前記複数の半導体装置の各々は、
前記スイッチにより選択される前記第1所定数の電圧のうち、他の半導体装置が受信する電圧とは異なる第2所定数の電圧を受信し、
受信する前記第2所定数の電圧の時間変化をそれぞれ示す前記第2所定数の時系列データを生成し、
生成した前記第2所定数の時系列データから所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出し、
抽出した前記所定の遅延量のデータを加算し、
前記他の半導体装置のデータの加算結果を受信し、
自半導体装置でのデータの加算結果と、前記他の半導体装置でのデータの加算結果とを加算し、
自半導体装置でのデータの加算結果と、前記他の半導体装置でのデータの加算結果との加算結果に
基づいて画像データを生成する
超音波装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波装置、半導体装置および超音波装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に向けて超音波を発生し、生体により反射される超音波から超音波画像データを生成する超音波装置が知られている。この種の超音波装置は、例えば、所定数の振動子からそれぞれ信号を受信する複数のサブビームフォーマを有し、複数のサブビームフォーマにより信号の遅延量を調整した後、メインビームフォーマに出力することで画像データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-102717号公報
【文献】特開2005-261593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、超音波装置の小型化およびワイヤレス化が進んできており、例えば、超音波画像を生成するための基本の処理機能が内蔵された超音波プローブが開発されている。超音波装置では、超音波画像データの生成に使用する超音波の受信信号の数(振動子の数)である受信チャネル数を増やすほど、超音波画像は高画質になるが、消費電力は増える。このため、例えば、バッテリー駆動のために低消費電力が要求されるモバイル型の超音波装置では、据え置き型の超音波装置に比べて、受信チャネル数を抑え、超音波画像の画質で抑えている。
【0005】
受信チャネル数は、超音波装置の設計時に、要求される消費電力および要求される超音波画像の画質に基づいて決定される。そして、超音波装置は、決定された受信チャネル数に応じて個々に設計される。超音波装置を個々に設計することで、超音波装置の設計期間は長くなり、設計コストおよび製造コストが増加する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、設計により決定した受信チャネル数に対応する数の半導体装置を搭載することで、要求される受信チャネル数に応じた超音波装置の設計を簡易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、超音波装置は、被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、前記複数の振動子が生成する電圧のうち、第1所定数の振動子が生成する電圧を選択するスイッチと、複数の半導体装置と、を有し、前記複数の半導体装置の各々は、前記スイッチにより選択される前記第1所定数の電圧のうち、他の半導体装置が受信する電圧とは異なる第2所定数の電圧を受信するために設けられる第1端子と、前記第1端子が受信した前記第2所定数の電圧に基づくデータを加算する第1加算部と、前記他の半導体装置の前記第1加算部によるデータの加算結果を受信する第2端子と、前記第1加算部によるデータの加算結果と、前記第2端子で受信するデータの加算結果とを加算する第2加算部と、前記第2加算部の加算結果に基づいて画像データを生成する画像生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、設計により決定した受信チャネル数に対応する数の半導体装置を搭載することで、要求される受信チャネル数に応じた超音波装置の設計を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の各半導体装置の遅延調整部による遅延調整の一例を示す説明図である。
【
図4】第2の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
【
図5】
図4の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図4の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図5および
図6の各半導体装置の遅延調整部による遅延調整の一例を示す説明図である。
【
図8】第3の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
【
図9】
図8の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図10】第4の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における超音波装置200を含む超音波診断システム100の一例を示す。超音波診断システム100は、超音波装置200と端末装置300とを有する。超音波装置200と端末装置300とは、相互に無線通信を行う。例えば、端末装置300は、タブレット端末またはスマートフォン等の可搬性を有する汎用端末、またはパーソナルコンピュータ等の汎用端末である。
【0012】
超音波装置200は、例えば、超音波プローブと一体化されており、超音波プローブの筐体内に収納される。超音波装置200は、トランスデューサ210、パルサ&スイッチ部220、AMP(Amplifier)&ADC(Analog to Digital Converter)部230a、230b、デジタル信号処理部240a、240b、制御部250a、250b、無線通信部260およびバッテリー270を有する。
【0013】
AMP&ADC部230a、デジタル信号処理部240aおよび制御部250aは、半導体装置SEMaに搭載される。AMP&ADC部230b、デジタル信号処理部240bおよび制御部250bは、半導体装置SEMbに搭載される。トランスデューサ210、パルサ&スイッチ部220、半導体装置SEMa、SEMb、無線通信部260およびバッテリー270は、超音波装置200に収納されるプリント基板に搭載される。
【0014】
例えば、半導体装置SEMa、SEMbは、互いに同一の品種であり、半導体装置SEMa、SEMbの回路構成および機能は互いに同じである。このため、超音波装置200に搭載される半導体装置SEMa、SEMbを個別に設計および製造する必要がない。したがって、超音波装置200の設計を簡易にすることができ、超音波装置200の開発期間を短縮することができ、超音波装置200のコストを削減することができる。なお、半導体装置SEMa、SEMbは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0015】
端末装置300は、無線通信部310、CPU(Central Processing Unit)320、メモリ330およびディスプレイ340を有する。
【0016】
超音波装置200は、生体P(被検体)に向けて超音波を発生し、生体Pにより反射される反射波(超音波)を受信し、受信した反射波に基づいて超音波画像データを生成する。超音波装置200は、生成した超音波画像データを無線により端末装置300に送信する。端末装置300は、超音波装置200から受信した超音波画像データを超音波画像としてディスプレイ340に表示する。
【0017】
トランスデューサ210は、生体P(被検体)における超音波画像の測定部位に対向する位置にアレー状に配置された、図示しない複数の振動子が配列された振動子アレーを有する。トランスデューサ210は、パルサ&スイッチ部220が生成したパルス信号に基づいて振動子アレーの振動子のうちの所定数が発生する超音波を生体Pに向けて出力する。この実施形態では、振動子アレーは、N個の振動子を有しており、Nチャネル(Nch)のうちのMチャネル(Mch)の超音波を生体に出力する。
【0018】
生体Pに入り込んだ超音波は、音響インピーダンスが異なる境界において反射される。トランスデューサ210は、生体Pから反射された超音波(反射波)をN個の振動子で受信する。N個の振動子は、受信した超音波を電圧に変換し、Nチャネルの電圧信号としてパルサ&スイッチ部220に出力する。トランスデューサ210とパルサ&スイッチ部220との間は、Nチャネルの信号線で相互に接続される。
【0019】
パルサ&スイッチ部220は、パルサおよびスイッチを有し、半導体装置SEMa、SEMbの制御部250a、250bからそれぞれ出力される制御信号CNT1a、CNT1bに基づいて動作する。パルサ&スイッチ部220は、トランスデューサ210が超音波を生体Pに送信する場合、パルサが生成する2M個のパルス信号を、スイッチを介してトランスデューサ210の2M個の振動子に、所定のタイミングで送信する。特に限定されないが、例えば、"N"は128であり、"M"は32である。N"は196または256でもよく、"M"は16または64でもよい。
【0020】
また、パルサ&スイッチ部220は、トランスデューサ210が超音波を生体Pから受信する場合、トランスデューサ210から出力されるNチャネルの電圧信号のうち、2Mチャネルの電圧信号を、スイッチを介して選択する。パルサ&スイッチ部220が選択する2Mチャネルは、パルス信号を出力した2Mチャネルと同じである。2M個および2Mチャネルは、第1所定数の一例であり、M個およびMチャネルは、第2所定数の一例である。
【0021】
そして、パルサ&スイッチ部220は、制御信号CNT1aに基づいて選択した2Mチャネルの電圧信号のうち、Mチャネルの電圧信号を半導体装置SEMaのAMP&ADC部230aに出力する。また、パルサ&スイッチ部220は、制御信号CNT1bに基づいて選択した2Mチャネルの電圧信号のうち、他のMチャネルの電圧信号を半導体装置SEMbのAMP&ADC部230bに出力する。パルサ&スイッチ部220から半導体装置SEMa、SEMbに出力される電圧信号のチャネル数(この例では、2Mチャネル)は、受信チャネル数とも称される。
【0022】
AMP&ADC部230a、230bがそれぞれ受信するMチャネルの電圧信号は、互いに異なるチャネルである。トランスデューサ210において一列に配列された128個の振動子のチャネル番号は、端から順に"1"から"128"であるとする。例えば、パルサ&スイッチ部220は、1チャネル目から32チャネル目の電圧信号をAMP&ADC部230aに出力し、33チャネル目から64チャネル目の電圧信号をAMP&ADC部230bに出力する。
【0023】
あるいは、パルサ&スイッチ部220は、奇数番目のチャネルの電圧信号をAMP&ADC部230aに出力し、偶数番目のチャネルの電圧信号をAMP&ADC部230bに出力する。なお、後述するように、パルサ&スイッチ部220が選択するチャネル(振動子)のグループは、画像データの生成毎に1つずつずらされる。例えば、パルサ&スイッチ部220は、1チャネル目から64チャネル目の電圧信号を選択した後、2チャネル目から65チャネル目の電圧信号を選択する。
【0024】
AMP&ADC部230a、230bの動作は、互いに同じであるため、以下では、AMP&ADC部230aについて説明する。AMP&ADC部230aは、制御部250aから出力される制御信号CNT2aに基づいて動作する。AMP&ADC部230aは、図示しないM個の増幅器(以下、AMPと称する)と、M個のアナログデジタル変換器(以下、ADCと称する)とを有する。各AMPは、パルサ&スイッチ部220から受信するMチャネルの超音波の反射波を示す電圧信号の各々を増幅し、増幅した電圧信号を対応するADCに出力する。
【0025】
各ADCは、対応するAMPにより増幅された電圧信号(アナログ信号)をデジタルデータに順次変換し、Mチャネルのデジタルデータをデジタル信号処理部240aに出力する。ここで、M個のADCは、反射波に基づいてM個の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す時系列のデジタルデータを生成する。以下では、時系列のデジタルデータは、時系列データとも称する。
【0026】
半導体装置SEMbのデジタル信号処理部240bは、制御部250bから出力される制御信号CNT3bに基づいて動作する。デジタル信号処理部240bは、AMP&ADC部230bから受信したMチャネルの時系列データから所定の遅延量のデータをチャネル毎に抽出することで、データの遅延量を調整する。デジタル信号処理部240bは、遅延量を調整したデータを整相加算し、整相加算したデータを半導体装置SEMaのデジタル信号処理部240aに出力する。
【0027】
半導体装置SEMaのデジタル信号処理部240aは、制御部250aから出力される制御信号CNT3aに基づいて動作する。デジタル信号処理部240aは、AMP&ADC部230aから受信したMチャネルの時系列データから所定の遅延量のデータをチャネル毎に抽出することで、データの遅延量を調整する。デジタル信号処理部240aは、遅延量を調整したデータを整相加算し、さらに、整相加算したデータと半導体装置SEMbから受信する整相加算されたデータとを加算する。
【0028】
この後、デジタル信号処理部240aは、2Mチャネルが整相加算されたデータに対して各種処理を行って、超音波画像を示す1ラインの画像データを生成し、生成した画像データを無線通信部260に出力する。ここで、1ラインの画像データは、振動子アレーに対向する生体Pの表面の帯状の測定部位の複数箇所のうちの1つにおける生体Pの表面から体内の深さ方向に向く1ラインの超音波画像の生成に使用されるデータである。以下では、測定部位のうち1ラインの超音波画像を生成する箇所は、送信位置とも称される。
【0029】
例えば、デジタル信号処理部240aが実施する各種処理は、生体P内での反射波の減衰を加味したゲイン補正処理または輝度情報を取り出すための包絡線処理等である。例えば、デジタル信号処理部240aと無線通信部260とは、SPI(Serial Peripheral Interface)バスで相互に接続される。
【0030】
無線通信部260は、例えば、Wi-Fi(登録商標:無線LAN(Local Area Network))等の無線ネットワークを介して、端末装置300の無線通信部310と無線通信を実施する。なお、無線通信部260、310間での無線通信は、Wi-Fiに限定されず、他の無線規格の無線ネットワークを使用して実施されてもよい。超音波装置200に無線通信部260を設けることで、超音波装置200を、端末装置300と分離させ、超音波プローブと一体化させることができる。
【0031】
無線通信部260は、端末装置300から受信する超音波の照射指示等を、例えば、I2C(Inter Integrated Circuit)インタフェースバスを使用して制御部250a、250bに出力する。また、無線通信部260は、デジタル信号処理部240aから受信した画像データを、端末装置300の無線通信部310に送信する。超音波装置200から端末装置300に送信する超音波画像を示す画像データは、デジタルデータである。
【0032】
制御部250aは、AMP&ADC部230a、デジタル信号処理部240aおよびパルサ&スイッチ部220を制御する。制御部250bは、AMP&ADC部230b、デジタル信号処理部240bおよびパルサ&スイッチ部220を制御する。例えば、制御部250a、250bの各々は、CPU等のプロセッサが実施する制御プログラムにより実現される。この場合、制御部250a、250bのそれぞれは、半導体装置SEMa、SEMbのそれぞれに搭載される図示しないプロセッサに含まれてもよい。
【0033】
例えば、制御部250a、250bの各々は、無線通信部260を介して端末装置300から受信した測定の開始指示に応じて、パルサ&スイッチ部220を制御して、トランスデューサ210に超音波を出力させる。
【0034】
また、制御部250a、250bの各々は、無線通信部260を介して端末装置300から受信した測定の停止指示に応じて、パルサ&スイッチ部220およびAMP&ADC部230a、230b等の動作を停止させる。なお、測定の開始指示および測定の停止指示は、超音波装置200に設けられた図示しない操作ボタンまたは操作スイッチ等の操作に基づいて実施されてもよい。
【0035】
例えば、制御部250a、250bは、FPGA等の論理をプログラム可能な要素を含む。これにより、同一の半導体装置SEMを使用する場合にも、パルサ&スイッチ部220、AMP&ADC部230a、230bおよびデジタル信号処理部240a、240bをそれぞれ正常に動作させるための制御信号を制御部250a、250bから出力させることができる。
【0036】
バッテリー270は、例えば、超音波装置200に設けられる図示しない充電端子を介して充電可能である。バッテリー270は、超音波装置200内のパルサ&スイッチ部220、半導体装置SEMa、SEMbおよび無線通信部260に電力を供給する。なお、バッテリー270は、無接点で充電されてもよい。また、超音波装置200は、商用電源等の外部電源を使用して動作されてもよく、この場合、超音波装置200は、バッテリー270を持たなくてもよい。
【0037】
端末装置300の無線通信部310は、超音波装置200の無線通信部260から超音波画像データ等を受信する。また、無線通信部310は、超音波の照射指示等を超音波装置200の無線通信部260に送信する。CPU320は、例えば、プログラムを実施することにより端末装置300の全体の動作を制御する。
【0038】
メモリ330は、無線通信部310が受信した画像データ、CPU320が実施する各種プログラム、および各種プログラムで使用するデータ等を保持する。メモリ330は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはフラッシュメモリでもよい。なお、メモリ330は、SRAM、DRAMおよびフラッシュメモリの少なくともいずれかと、ストレージ装置とを含んでもよい。
【0039】
ディスプレイ340は、超音波装置200から受信した画像データを超音波画像として表示する。ここで、ディスプレイ340に表示される超音波画像は、超音波装置200による生体Pの走査中に取得される動画と、超音波装置200による生体Pの走査が停止されたときに取得される静止画とがある。端末装置300がタブレット端末等の可搬性を有する端末の場合、ディスプレイ340は、タッチパネルを含んでもよい。なお、超音波装置200と端末装置300とのそれぞれに、無線通信部260、310とは別に有線通信部を設け、有線により画像データ等を送受信してもよい。有線通信部は、無線通信部260、310の代わりにそれぞれ設けられてもよい。
【0040】
図2は、
図1の半導体装置SEMa、SEMbの一例を示す。以下では、半導体装置SEMaの回路構成と、半導体装置SEMbにおいて、半導体装置SEMaと相違する回路構成とが説明される。
図2において、二重の四角印は、半導体装置SEMa、SEMbの外部端子を示し、三角印は、オン/オフを制御可能なバッファ(例えば、トライステートバッファ)を示す。なお、
図2および
図3では、超音波装置200の動作の例(超音波装置200の制御方法の例)が説明される。
【0041】
半導体装置SEMaにおいて、AMP&ADC部230aは、同時に動作するM個のAMP231aと、同時に動作するM個のADC232aとを有する。デジタル信号処理部240aは、遅延調整部241a、整相加算部242a、243a、信号処理部244aおよび画像生成部245aを有する。信号処理部244aは、制御部250aからの制御信号に基づいて、整相加算部243aから受信するデータに各種信号処理を実施し、信号処理後のデータを画像生成部245aに出力する機能を有する。
【0042】
上述したように、複数のAMP231aは、外部端子を介してパルサ&スイッチ部220から受信するMチャネルの超音波の反射波を示す電圧信号をそれぞれ増幅し、増幅した電圧信号を対応するADC232aに出力する。M個のADC232aは、対応するAMP231aから受信するMチャネルの電圧信号を時系列データにそれぞれ変換し、変換により得た時系列データをデジタル信号処理部240aの遅延調整部241aに出力する。
【0043】
パルサ&スイッチ部220から電圧信号を受信する外部端子は、第1端子の一例である。M個のADC232aは、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部の一例である。
【0044】
遅延調整部241aは、制御部250aからの遅延調整信号ADJaに基づいて、ADC232aから受信するMチャネルの時系列データから、チャネル毎に所定の遅延量のデータを抽出する。遅延調整部241aは、抽出したMチャネルのデータを整相加算部242aに出力する。すなわち、遅延調整部241aは、Mチャネルの時系列データから所定の遅延量のデータを抽出することで、Mチャネルの超音波の反射波を示すデータの遅延量を調整する。
【0045】
整相加算部242aは、遅延調整部241aで遅延量がそれぞれ調整されたMチャネルのデータを順次加算し、加算により得られたデータ(1ch)を整相加算部243aに出力する。整相加算部242aの出力は、制御部250aによりオン/オフが制御されるバッファを介して外部端子に接続される。但し、整相加算部242aの出力に接続されたバッファは、オフ状態に設定されるため、整相加算部242aで加算されたデータは、半導体装置SEMaの外部に出力されない。整相加算部242aは、第1加算部の一例である。
【0046】
整相加算部243a、信号処理部244aおよび画像生成部245aは、制御部250aからイネーブル状態を示す制御信号CNTaを受けて動作する(ON)。整相加算部243aは、外部端子および制御部250aによりオン/オフが制御されるバッファを介して、半導体装置SEMbの整相加算部242bにより順次加算されたデータを受信する。整相加算部243aに接続されたバッファは、オン状態に設定される。
【0047】
整相加算部243aは、整相加算部242aによる加算結果と、半導体装置SEMbの整相加算部242bによる加算結果とを順次加算することで、送信位置での生体Pの深さ方向の1ライン分のデータ(1ch)を生成する。整相加算部243aは、生成した1ライン分のデータを信号処理部244aに出力する。整相加算部243aは、第2加算部の一例である。バッファを介して整相加算部243aに接続された外部端子は、第2端子の一例である。
【0048】
信号処理部244aは、整相加算部243aから受信するデータに対して、ゲイン補正処理または包絡線処理等の信号処理を実施し、信号処理後のデータを画像生成部245aに出力する。画像生成部245aは、信号処理部244aから受信するデータに基づいて、送信位置での生体Pの深さ方向の1ライン分の画像データを生成し、生成した画像データを、外部端子を介して
図1の無線通信部260に出力する。そして、送信位置に対応する1ライン分の画像データが、端末装置300に送信され、超音波画像としてディスプレイ340に表示される。なお、デジタル信号処理部240は、信号処理部244aの信号処理機能を画像生成部245aに含めてもよく、この場合、信号処理部244aを持たなくてもよい。
【0049】
半導体装置SEMbにおいて、AMP&ADC部230bは、同時に動作するM個のAMP231bと、同時に動作するM個のADC232bとを有する。AMP&ADC部230bの構成および機能は、AMP&ADC部230aの構成および機能と同様である。パルサ&スイッチ部220から電圧信号を受信する外部端子は、第1端子の一例である。M個のADC232bは、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部の一例である。
【0050】
デジタル信号処理部240bは、遅延調整部241b、整相加算部242b、243b、信号処理部244bおよび画像生成部245bを有する。デジタル信号処理部240bの構成および機能は、デジタル信号処理部240aの構成および機能と同様である。例えば、信号処理部244bは、制御部250bからの制御信号に基づいて、整相加算部243bから受信するデータに各種信号処理を実施し、信号処理後のデータを画像生成部245bに出力する機能を有する。
【0051】
但し、遅延調整部241bが受信する遅延調整信号ADJbは、半導体装置SEMaの遅延調整部241aが受信する遅延調整信号ADJaとは相違する。このため、遅延調整部241a、241bがそれぞれ抽出するチャネル毎に所定の遅延量のデータは、相互に異なる。
【0052】
また、整相加算部243b、信号処理部244bおよび画像生成部245bは、制御部250bからのディセーブル状態を示す制御信号CNTbを受け、パワーダウン状態に設定され、動作を停止する(PD)。これにより、互いに同一の複数の半導体装置SEMa、SEMbが超音波装置200に搭載される場合にも、超音波画像の画像データの生成に寄与しない無駄な電力の消費を抑止することができる。なお、デジタル信号処理部240bは、信号処理部244bの信号処理機能を画像生成部245bに含めてもよく、この場合、信号処理部244bを持たなくてもよい。
【0053】
整相加算部242bの出力は、制御部250bによりオン/オフが制御されるバッファを介して外部端子に接続される。整相加算部242bの出力に接続されたバッファは、オン状態に設定される。整相加算部243bの入力は、制御部250bによりオン/オフが制御されるバッファを介して外部端子に接続される。整相加算部242bは、第1加算部の一例であり、整相加算部243bは、第2加算部の一例である。バッファを介して整相加算部243bに接続された外部端子は、第2端子の一例である。
【0054】
整相加算部242bの出力に接続されたバッファは、オン状態に設定されるため、整相加算部242bで加算されたデータは、外部端子を介して半導体装置SEMaの整相加算部243aに伝達される。これにより、半導体装置SEMaのみを使用する場合に比べて、画像データを生成するために使用するチャネル数である受信チャネル数を2倍にすることができ、ディスプレイ340に表示する超音波画像の解像度を高くすることができる。
【0055】
このように、この実施形態では、半導体装置SEMaは、超音波画像を生成するための画像データを生成するメイン半導体装置として動作する。半導体装置SEMbは、半導体装置SEMaが画像データを生成するために必要なデータを生成するサブ半導体装置として動作する。
【0056】
なお、各遅延調整部241a、241bによるMチャネルのデータのそれぞれの遅延量は、振動子アレーにおいて超音波を生体Pに向けて発生するM個の振動子の位置と、生体Pの測定部位において1ラインの画像データを生成する位置との関係により決定される。さらに、各遅延調整部241a、241bによるMチャネルのデータのそれぞれの遅延量は、生体Pの測定部位(送信位置)の表面から体内に向くライン上において画像データの生成する位置に応じて決定される。
【0057】
なお、制御部250aは、整相加算部243aに、整相加算部242aの加算結果を信号処理部244aに転送させる制御信号CNTaを出力してもよい。この場合、制御部250aは、整相加算部242aの加算結果(Mチャネル分)のみを使用して画像データを生成するための遅延量を遅延調整部241aに調整させる遅延調整信号ADJaを出力する。そして、制御部250bは、AMP&ADC部230bおよびデジタル信号処理部240bの動作を停止する制御信号を生成してもよい。
【0058】
これにより、超音波画像を生成するための画像データに使用する受信チャネル数を2MチャネルまたはMチャネルに切り替えることができる。例えば、超音波装置200は、バッテリー270の容量に余裕がある場合、半導体装置SEMa、SEMbを動作させ、2Mチャネルを使用して画像データを生成する。超音波装置200は、バッテリー270の残容量が少ない場合、半導体装置SEMaのみを動作させ、Mチャネルを使用して画像データを生成する。これにより、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができる。画像データの生成に使用する受信チャネル数は、超音波装置200を操作する操作者により切り替えられてもよい。
【0059】
図3は、
図2の各半導体装置SEMa、SEMbの遅延調整部241a、241bによる遅延調整の一例を示す。
図3では、説明を分かりやすくするために、M=4とする。
図3の下側の括弧内は、半導体装置SEMaのみを使用する場合の遅延調整の例を示す。
【0060】
一点鎖線で示す枠は、送信位置に対応する生体Pの表面から体内に向く1つのラインを示す。振動子アレーの複数の振動子のうちの8個は、1から8までの受信チャネル番号で示される。生体Pの体内の測定位置から反射される超音波が各振動子に届くまでの時間は、矢印の長さにより示される。
【0061】
図2の各遅延調整部241a、241bは、測定位置からの超音波が、対応する複数のチャネルの振動子に同じタイミングで届くように遅延量を調整する。換言すれば、各遅延調整部241a、241bは、矢印の長さが同じになるように遅延量を調整する。例えば、遅延調整部241aは、チャネル1の遅延量を、チャネル2の遅延量より小さくする。具体的には、遅延調整部241aは、ADC232aにより生成されたチャネル毎の時系列データにおいて、チャネル1のデータを、チャネル2のデータより受信時刻が早い位置から抽出する。
【0062】
また、複数の振動子に届く超音波の時間差は、測定位置により異なり、測定位置が生体Pの表面に近いほど大きくなる。このため、各遅延調整部241a、241bは、測定位置の生体Pの表面からの距離に応じて、チャネル毎の遅延量を変化させる。
【0063】
各制御部250a、250bは、測定位置に応じて、各遅延調整部241a、241bの遅延量を調整する遅延調整信号ADJa、ADJbの論理値を決定する論理回路を有してもよい。また、各制御部250a、250bは、測定位置に応じて、各遅延調整部241a、241bの遅延量を調整する遅延調整信号ADJa、ADJbの論理値を出力するROMを有してもよい。ここで、遅延調整信号ADJa、ADJbの論理値は、メモリまたはレジスタに格納される時系列データのうち、抽出するデータの読み出し位置を示すアドレス値等である。
【0064】
なお、超音波を検出する振動子の数が多いほど、すなわち、矢印の本数が多いほど、画像データを生成するためのデータの情報量が増えるため、超音波画像の解像度を高くすることができる。このため、
図3の下側の括弧内に示すように、半導体装置SEMaのみを使用して4個の振動子で超音波を受信する場合、超音波画像の解像度は、8個の振動子で超音波を受信する場合に比べて低くなる。
【0065】
例えば、
図3の下側の括弧内は、
図2において、半導体装置SEMaのみを動作させて画像データを生成する場合の遅延調整の例を示している。
図1のパルサ&スイッチ部220は、制御部250aからの制御信号CNT1aに基づいて、1、3、6、8の受信チャネル番号で示される振動子からの電圧信号を選択し、選択した電圧信号をAMP&ADC部230aに出力する。これにより、超音波画像の解像度は低下するものの、超音波装置200の消費電力をほぼ半減することができる。
【0066】
以上、この実施形態では、超音波装置200に搭載する複数の半導体装置SEMa、SEMbに同一の半導体装置を使用することができるため、超音波装置200の設計を簡易にすることができる。この結果、超音波装置200の開発期間を短縮することができ、超音波装置200のコストを削減することができる。換言すれば、要求される超音波画像の解像度に応じて、超音波装置200に搭載する半導体装置SEMの数を変更することで、受信チャネル数を容易に増減することができる。したがって、超音波装置200の設計変更を容易に対応することができる。
【0067】
同一の半導体装置SEMが超音波装置200に搭載される場合、超音波画像の画像データの生成に寄与しない整相加算部243b、信号処理部244bおよび画像生成部245bの動作を停止する。これにより、超音波装置200の無駄な電力の消費を抑止することができる。換言すれば、同一の半導体装置SEMを、メイン半導体装置およびサブ半導体装置のいずれかとして動作させることで、超音波装置200の無駄な電力の消費を抑止することができる。
【0068】
制御部250a、250bは、FPGA等の論理をプログラム可能な要素を含む。これにより、同一の半導体装置SEMを使用する場合にも、パルサ&スイッチ部220、AMP&ADC部230a、230bおよびデジタル信号処理部240a、240bをそれぞれ正常に動作させるための制御信号を制御部250a、250bから出力させることができる。超音波装置200に無線通信部260を設けることで、超音波装置200を、端末装置300と分離させ、超音波プローブと一体化させることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示す。
図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態では、超音波診断システム100Aは、超音波装置200Aと端末装置300とを有する。
【0070】
超音波装置200Aは、4個の半導体装置SEMa、SEMb、SEMc、SEMdを有する。半導体装置SEMa、SEMb、SEMc、SEMdは、互いに同一であるため、
図4では、半導体装置SEMaのみの内部構成が示される。なお、半導体装置SEMaは、デジタル信号処理部240aが
図1のデジタル信号処理部240aと異なることを除き、
図1の半導体装置SEMaと同様である。
【0071】
他の半導体装置SEMb、SEMc、SEMdも、デジタル信号処理部が
図1のデジタル信号処理部240bと異なることを除き、
図1の半導体装置SEMbと同様である。以下では、半導体装置SEMa、SEMb、SEMc、SEMdを区別なく説明する場合、単に半導体装置SEMとも称される。なお、超音波装置200Aに搭載される半導体装置SEMの数は、2個以上であれば4個に限定されない。
【0072】
半導体装置SEMaは、超音波画像を生成するための画像データを生成するメイン半導体装置として動作する。半導体装置SEMb、SEMc、SEMdは、半導体装置SEMaが画像データを生成するために必要なデータを生成するサブ半導体装置として動作する。各半導体装置SEMは、無線通信部260を介して端末装置300から受信する指示に基づいて、メイン半導体装置またはサブ半導体装置として動作する。
【0073】
各半導体装置SEMは、
図1と同様に、Mチャネルの電圧信号をパルサ&スイッチ部220からそれぞれ受信して動作する。このため、パルサ&スイッチ部220は、トランスデューサ210から出力されるNチャネルの電圧信号のうち、4Mチャネルの電圧信号を、スイッチを介して選択する。
【0074】
そして、パルサ&スイッチ部220は、4個のMチャネルの電圧信号を半導体装置SEMa、SEMb、SEMc、SEMdにそれぞれ出力する。パルサ&スイッチ部220がそれぞれ選択するMチャネルは、各半導体装置SEMa、SEMb、SEMc、SEMdから出力される制御信号CNT1a、CNT1b、CNT1c、CNT1dにより指示される。パルサ&スイッチ部220は、選択するチャネル数と、電圧信号の出力先が異なることを除き、
図1のパルサ&スイッチ部220と同様である。
【0075】
なお、バッテリー270の残容量が少ない場合、サブ半導体装置として動作する半導体装置SEMb、SEMc、SEMdの数を順次減らして受信チャネル数を減らすことで、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができる。
【0076】
図5は、
図4の半導体装置SEMa、SEMbの一例を示す。
図6は、
図4の半導体装置SEMc、SEMdの一例を示す。
図2と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。半導体装置SEMaは、整相加算部243aが半導体装置SEMb、SEMc、SEMdの整相加算部242b、242c、242dによりそれぞれ加算されたデータを受信することを除き、
図2の半導体装置SEMaと同様である。なお、
図5、
図6、
図7では、超音波装置200Aの動作の例(超音波装置200Aの制御方法の例)が説明される。
【0077】
半導体装置SEMaにおいて、整相加算部242aの出力に接続されたバッファは、オフ状態に設定され、整相加算部243aの入力に接続された3つのバッファは、オン状態に設定される。3つのバッファに接続される外部端子は、第2端子の一例である。整相加算部243a、信号処理部244aおよび画像生成部245aは、制御部250aからイネーブル状態を示す制御信号CNTaを受けて動作する(ON)。
【0078】
半導体装置SEMbにおいて、整相加算部242bの出力に接続されたバッファは、オン状態に設定され、整相加算部242bから出力される1チャネルのデータを半導体装置SEMaに出力する。整相加算部243bの入力に接続された3つのバッファは、オフ状態に設定される。3つのバッファに接続される外部端子は、第2端子の一例である。整相加算部243b、信号処理部244bおよび画像生成部245bは、制御部250bからのディセーブル状態を示す制御信号CNTbを受け、パワーダウン状態に設定され、動作を停止する(PD)。
【0079】
図6の半導体装置SEMcにおいて、整相加算部242cの出力に接続されたバッファは、オン状態に設定され、整相加算部242cから出力される1チャネルのデータを半導体装置SEMaに出力する。整相加算部243cの入力に接続された3つのバッファは、オフ状態に設定される。3つのバッファに接続される外部端子は、第2端子の一例である。整相加算部243c、信号処理部244cおよび画像生成部245cは、制御部250cからのディセーブル状態を示す制御信号CNTcを受け、パワーダウン状態に設定され、動作を停止する(PD)。
【0080】
半導体装置SEMdにおいて、整相加算部242dの出力に接続されたバッファは、オン状態に設定され、整相加算部242dから出力される1チャネルのデータを半導体装置SEMaに出力する。整相加算部243dの入力に接続された3つのバッファは、オフ状態に設定される。3つのバッファに接続される外部端子は、第2端子の一例である。整相加算部243d、信号処理部244dおよび画像生成部245dは、制御部250dからのディセーブル状態を示す制御信号CNTdを受け、パワーダウン状態に設定され、動作を停止する(PD)。
【0081】
この実施形態では、メイン半導体装置として動作する半導体装置SEMaの整相加算部243aは、整相加算部242a、242b、242c、242dでそれぞれ加算されたデータを受信して、加算処理を実行する。このため、半導体装置SEMaのみを使用する場合に比べて、画像データを生成するために使用するチャネル数である受信チャネル数を4倍にすることができ、ディスプレイ340に表示する超音波画像の解像度を、
図2に比べてさらに高くすることができる。また、サブ半導体装置として動作する半導体装置SEMb、SEMc、SEMdにおいて、超音波画像の画像データの生成に寄与しない回路の動作を停止することで、無駄な電力の消費を抑止することができる。
【0082】
図7は、
図5および
図6の各半導体装置SEMの遅延調整部241a、241b、241c、241dによる遅延調整の一例を示す。
図3と同様の内容については、詳細な説明は省略する。
図7においても、説明を分かりやすくするために、M=4とする。
【0083】
各遅延調整部241a、241b、241c、241dは、測定位置からの超音波が、対応する複数のチャネルの振動子に同じタイミングで届くように遅延量を調整する。また、各遅延調整部241a、241b、241c、241dは、測定位置の生体Pの表面からの距離に応じて、チャネル毎の遅延量を変化させる。なお、各半導体装置SEMと受信チャネル番号の関係は、各半導体装置SEMが4つのチャネルの時系列データを受信できれば、
図7に示す組み合わせ以外でもよい。
【0084】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、超音波装置200Aに搭載される半導体装置SEMの数を増やすことで、受信チャネル数を容易に増やすことができる。また、バッテリー270の残容量が少ない場合、動作させる半導体装置SEMの数を減らして受信チャネル数を減らすことで、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができる。
【0085】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示す。
図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態では、超音波診断システム100Bは、超音波装置200Bと端末装置300とを有する。
【0086】
超音波装置200Bは、半導体装置SEMa、SEMbを有する。半導体装置SEMa、SEMbは、互いに同一であり、ともにマスタ半導体装置として動作する。このため、半導体装置SEMaのデジタル信号処理部240aと半導体装置SEMbのデジタル信号処理部240bとは、相互にデータを送受信する。なお、超音波装置200Bに搭載される半導体装置SEMの数は、2個以上であれば4個に限定されない。
【0087】
また、超音波装置200Bは、半導体装置SEMaに接続された無線通信部260と、半導体装置SEMbに接続された無線通信部261とを有する。各無線通信部260、261は、互いに独立に動作し、端末装置300の無線通信部310との間で通信を実施する。
【0088】
図9は、
図8の半導体装置SEMa、SEMbの一例を示す。
図2と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。整相加算部242a、242bまでの動作は、
図2の半導体装置SEMa、SEMbの動作と同様である。なお、
図9では、超音波装置200Bの動作の例(超音波装置200Bの制御方法の例)が説明される。
【0089】
但し、この実施形態では、整相加算部242aの出力に接続されたバッファおよび整相加算部243bの入力に接続されたバッファは、ともにオンする。このため、整相加算部242aによる加算で得られたデータは、整相加算部243bに伝達される。また、整相加算部243b、信号処理部244bおよび画像生成部245bは、制御部250bからのイネーブル状態を示す制御信号CNTbを受けて動作する(ON)。
【0090】
これにより、デジタル信号処理部240a、240bは、2M個の受信チャネル数に対応する画像データをそれぞれ生成する。デジタル信号処理部240aが生成した画像データは、無線通信部260を介して端末装置300に送信される。デジタル信号処理部240bが生成した画像データは、無線通信部261を介して端末装置300に送信される。このため、2つの画像データによる2つの超音波画像がディスプレイ340に表示可能である。
【0091】
なお、超音波装置200Bは、信号処理部244a、244bに互いに異なる信号処理を実施させてもよい。例えば、信号処理部244a、244bは、制御部250a、250bからそれぞれ出力される制御信号CNTSa、CNTSbに基づいて、帯域が互いに異なるフィルタ処理を実施し、または、互いに異なるゲイン調整を実施する。これにより、端末装置300のディスプレイ340に表示される2つの超音波画像を互いに相違させることができる。そして、ディスプレイ340を見る端末装置300の操作者は、2つの超音波画像のうちのいずれかを選んで拡大表示することができる。
【0092】
また、超音波装置200Bは、無線通信部260、261の無線方式を互いに相違させてもよい。例えば、無線通信部260は、Wi-Fiの2.4GHz帯を使用して画像データを端末装置300に送信し、無線通信部261は、Wi-Fiの5GHz帯を使用して画像データを端末装置300に送信する。端末装置300は、例えば、受信強度の強い方の画像データを優先してディスプレイ340に表示する。これにより、超音波装置200Bと端末装置300との間での無線通信の途切れを軽減することができ、ディスプレイ340に表示する超音波画像の品位の低下を抑制することができる。
【0093】
さらに、バッテリー270の残容量が少ない場合、動作させる半導体装置SEMの数を減らして受信チャネル数を減らすことで、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができる。この場合、画像データは、無線通信部260、261のいずれかを使用して端末装置300に送信される。また、超音波装置200Bは、バッテリー270の残容量が少ない場合、無線通信部261の動作を停止し、
図1の超音波装置200と同様に、無線通信部260のみを使用して、画像データを端末装置300に送信してもよい。
【0094】
さらに、2つの超音波画像のうちのいずれかが拡大表示された場合、超音波装置200Bは、表示されない超音波画像に対応する画像データを生成する整相加算部243、信号処理部244、画像生成部245をパワーダウン状態に設定してもよい。ここで、整相加算部243は、整相加算部243a、243bのいずれかであり、信号処理部244は、信号処理部244a、244bのいずれかであり、画像生成部245は、画像生成部245a、245bのいずれかである。
【0095】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、超音波装置200Aの複数の半導体装置SEMから複数の画像データを端末装置300それぞれ送信する。これにより、画像データから生成される複数の超音波画像のうち、品位の高い超音波画像を選択的にディスプレイ340に表示することができる。あるいは、診断がしやすい超音波画像を選択的にディスプレイ340に表示することができる。この際、複数の半導体装置SEM間で整相加算したデータを相互に伝達することで、受信チャネル数を増やした高い解像度の超音波画像をディスプレイ340に表示することができる。
【0096】
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示す。
図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態では、超音波診断システム100Cは、超音波装置200Cのみを含む。すなわち、超音波装置200Cは、
図1の端末装置300の機能を含む。
【0097】
超音波装置200Cは、トランスデューサ210、パルサ&スイッチ部220、半導体装置SEMa、SEMb、CPU280、メモリ282およびディスプレイ284を有する。CPU280、メモリ282およびディスプレイ284は、
図1の端末装置300のCPU320、メモリ330およびディスプレイ340とそれぞれ同様である。例えば、超音波装置200Aは、商用電源を使用して動作するため、バッテリーが搭載されない。なお、ディスプレイ284は、超音波装置200Cの外部に接続されてもよい。
【0098】
例えば、超音波装置200Cのプローブは、
図10に示す要素のうちトランスデューサ210のみを含む。このため、トランスデューサ210が内蔵されるプローブとパルサ&スイッチ部220との間は、Nチャネルの信号線を含むケーブルで接続される。半導体装置SEMa、SEMbの構成および機能は、
図2の半導体装置SEMa、SEMbの構成および機能と同様である。
【0099】
この実施形態では、CPU280は、I2Cインタフェースバスを介して、半導体装置SEMa、SEMbの制御部250a、250bに接続される。このため、CPU280は、無線通信部を介することなく、超音波画像の測定の開始指示および停止指示を制御部250a、250bに出力する。
【0100】
また、CPU280は、SPIバスを介して、半導体装置SEMa、SEMbのデジタル信号処理部240a、240bにそれぞれ接続される。このため、CPU280は、無線通信部を介することなく、デジタル信号処理部240a、240bから画像データを受信可能である。但し、この実施形態では、
図1および
図2に示す実施形態と同様に、半導体装置SEMbのデジタル信号処理部240bは、画像データを出力しない。超音波装置200Cの動作は、
図2および
図3で説明した動作と同様である。
【0101】
なお、
図10の超音波装置200CのCPU280、メモリ282およびディスプレイ284以外の要素を、
図4に示した超音波装置200Aの無線通信部260とバッテリー270とを除く要素に置き換えてもよい。また、
図10の超音波装置200CのCPU280、メモリ282およびディスプレイ284以外の要素を、
図8に示した超音波装置200Bの無線通信部260、261とバッテリー270とを除く要素に置き換えてもよい。以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
なお、上述した実施形態に示した超音波装置200、200A、200B、200Cは、複数の同一の半導体装置SEMを有する。すなわち、同一の半導体装置SEMを使用して、複数の超音波装置200、200A、200B、200Cを設計および製造することができる。なお、超音波装置200、200B、200Cの半導体装置SEMa、SEMbは、整相加算部243aの入力に接続された3つの外部端子を有する超音波装置200Aの半導体装置SEMaを使用することが可能である。
【0103】
また、上述した実施形態に示した超音波装置200、200A、200B、200Cは、動作させる半導体装置SEMの数を増減することで、画像データを生成する受信チャネル数を増減することができ、所望の解像度の超音波画像を得ることができる。
【0104】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0105】
100、100A、100B、100C 超音波診断システム
200、200A、200B、200C 超音波装置
210 トランスデューサ
220 パルサ&スイッチ部
230a、230b、230c、230d AMP&ADC部
231a、231b、231c、231d AMP
232a、232b、232c、232d ADC
240a、240b、240c、240d デジタル信号処理部
241a、241b、241c、241d 遅延調整部
242a、242b、242c、242d 整相加算部
243a、243b、243c、243d 整相加算部
244a、244b、244c、244d 信号処理部
245a、245b、245c、245d 画像生成部
250a、250b、250c、250d 制御部
260、261 無線通信部
270 バッテリー
280 CPU
282 メモリ
284 ディスプレイ
300 端末装置
310 無線通信部
320 CPU
330 メモリ
340 ディスプレイ
ADJa、ADJb、ADJc、ADJd 遅延調整信号
CNT1a、CNT1b 制御信号
CNT2a、CNT2b 制御信号
CNT3a、CNT3b 制御信号
CNTSa、CNTSb 制御信号
SEMa、SEMb、SEMc、SEMd 半導体装置