IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図1
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図2
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図3
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図4
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図5
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図6
  • 特許-三次元造形装置及び三次元造形方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】三次元造形装置及び三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/40 20210101AFI20241001BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241001BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20241001BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241001BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20241001BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241001BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241001BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241001BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20241001BHJP
【FI】
B22F12/40
B22F10/28
B22F10/366
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022565502
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043789
(87)【国際公開番号】W WO2022114210
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020198791
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100224546
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 龍
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】モハラ ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】毛利 雅志
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166178(JP,A)
【文献】特開2020-172104(JP,A)
【文献】特表2021-504571(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088114(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0160806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/28,10/366,12/40
B29C 64/153,64/268,64/386
B33Y 10/00,30/00,50/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料にエネルギビームを照射して前記造形材料を溶融させ積層することにより三次元の物体を造形する三次元造形装置において、
前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを出射し、前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを前記造形材料に照射させるビーム出射部を備え、
前記ビーム出射部は、前記物体の断面である造形領域のうち少なくとも輪郭部分において、前記造形領域の輪郭線に対し直交する方向に、前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを走査させて前記造形材料に照射することにより、前記物体の少なくとも輪郭部分を造形する、
三次元造形装置。
【請求項2】
前記ビーム出射部は、前記造形領域のうち前記輪郭部分より内側に形成される内側部分で一定の方向に沿って前記エネルギビームを走査させて前記造形材料に照射する、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記ビーム出射部は、前記輪郭部分に設定される複数の照射経路に対し前記エネルギビームの照射を行い、前記照射経路に前記エネルギビームを照射した後、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路に前記エネルギビームの照射を行う、
請求項1又は2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記ビーム出射部は、前記輪郭部分に設定される複数の照射経路に対し前記エネルギビームの照射を行い、前記照射経路に前記エネルギビームを照射した後、アイドル時間を設けて、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路に前記エネルギビームの照射を行い、又は前記隣接する照射経路に前記エネルギビームの照射を行う、
請求項1又は2に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記ビーム出射部は、前記輪郭部分に設定される複数の照射経路に対し前記エネルギビームの照射を行い、前記複数の照射経路のそれぞれについて同一方向に向けて前記エネルギビームの照射を行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
造形材料にエネルギビームを照射して前記造形材料を溶融させ積層することにより三次元の物体を造形する三次元造形方法において、
前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを出射し、前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを前記造形材料に照射させる照射工程を含み、
前記照射工程にて、前記物体の断面である造形領域のうち少なくとも輪郭部分において、前記造形領域の輪郭線に対し直交する方向に、前記造形材料を溶解するための前記エネルギビームを走査させて前記造形材料に前記エネルギビームを照射させることにより、前記物体の少なくとも輪郭部分を造形する、
三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元の物体を造形する三次元造形装置及び三次元造形方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元造形装置及び三次元造形方法として、例えば、米国特許第5155324号明細書に記載された三次元の物体を造形する装置及び方法が知られている。この装置及び方法は、粉末材料にレーザビームを照射することによって、粉末材料を焼結させながら、当該焼結した粉末材料を積層させる。この装置及び方法で採用されるビームの照射パターンは、断面の輪郭に沿ったパターン(コンター)と輪郭の内側を塗りつぶすパターン(ハッチング)と、を含む。この装置及び方法では、まずレーザビームを物体の断面の輪郭線に沿って照射する。次に、輪郭線の内側の部分にレーザビームを一定の方向に沿って往復させながらレーザビームを照射することによって、物体の造形を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5155324号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような三次元造形の装置及び方法は、物体の造形を効率良く行うことが難しい。物体の断面へのビームの照射を、断面の輪郭に沿ったパターンと輪郭の内側を塗りつぶすパターンとに分けると、各パターンでビームの強度及び走査速度を変更する必要がある。例えば、輪郭に沿ったビームの照射は、弱いビームを低速で走査する。内側へのビームの照射は、強いビームを高速で走査する。このとき、輪郭に沿ったビームの照射には、長い時間を要するので、物体の造形を効率良く行うことができない。
【0005】
そこで、本開示は、物体の造形を効率良く行うことが可能な三次元造形装置及び三次元造形方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である三次元造形装置は、造形材料にエネルギビームを照射して造形材料を溶融させ積層することにより三次元の物体を造形する。三次元造形装置は、エネルギビームを出射し、エネルギビームを造形材料に照射させるビーム出射部を備える。ビーム出射部は、物体の断面である造形領域のうち少なくとも輪郭部分において、造形領域の輪郭線に対し直交する方向にエネルギビームを走査させて造形材料に照射するように構成されている。この三次元造形装置は、造形領域の輪郭部分において造形領域の輪郭線に対し直交する方向にエネルギビームを走査しながら、エネルギビームを造形材料に照射する。その結果、輪郭部分に対して、エネルギビームを高速で走査するビーム照射を行うことができる。このため、輪郭部分へのビームの照射を短時間で完了することができる。従って、三次元造形装置は、物体を効率良く造形することができる。
【0007】
本開示の一態様である三次元造形装置のビーム出射部は、造形領域のうち輪郭部分より内側に形成される内側部分で一定の方向に沿ってエネルギビームを走査させて造形材料に照射してもよい。この場合、造形領域のうち内側部分で一定の方向に沿ってエネルギビームを走査させながら、エネルギビームを造形材料に照射する。その結果、内側部分におけるビーム照射を短時間で完了させることができる。従って、物体の造形を短時間で行うことができる。
【0008】
本開示の一態様である三次元造形装置のビーム出射部は、輪郭部分に設定される複数の照射経路に対しエネルギビームの照射を行ってもよい。ビーム出射部は、照射経路にエネルギビームを照射した後、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路にエネルギビームの照射を行ってもよい。この場合、照射経路にエネルギビームを照射した後、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路にエネルギビームの照射を行う。その結果、エネルギビームの照射による熱の集中を抑制することができる。従って、物体の不適切な造形を抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様である三次元造形装置のビーム出射部は、輪郭部分に設定される複数の照射経路に対しエネルギビームの照射を行ってもよい。ビーム出射部は、照射経路にエネルギビームを照射した後、アイドル時間を設けて、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路にエネルギビームの照射を行い、又は隣接する照射経路にエネルギビームの照射を行ってもよい。この場合、エネルギビームの照射にアイドル時間を設ける。その結果、エネルギビームの照射による熱の集中を抑制することができる。従って、物体の不適切な造形を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様である三次元造形装置のビーム出射部は、輪郭部分に設定される複数の照射経路に対しエネルギビームの照射を行ってもよい。ビーム出射部は、複数の照射経路のそれぞれについて同一方向に向けてエネルギビームの照射を行ってもよい。この場合、照射経路のそれぞれについて同一方向に向けてエネルギビームの照射を行う。その結果、エネルギビームの照射による熱の集中を抑制することができる。従って、物体の不適切な造形を抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様に係る三次元造形方法は、造形材料にエネルギビームを照射して造形材料を溶融させ積層することにより三次元の物体を造形する。三次元造形方法は、エネルギビームを出射し、エネルギビームを造形材料に照射させる照射工程を含み、照射工程にて、物体の断面である造形領域のうち少なくとも輪郭部分において、造形領域の輪郭線に対し直交する方向にエネルギビームを走査させて造形材料にエネルギビームを照射させるように構成されている。この三次元造形方法によれば、造形領域の輪郭部分において造形領域の輪郭線に対し直交する方向にエネルギビームを走査しながら、エネルギビームを造形材料に照射する。その結果、輪郭部分に対して、エネルギビームを高速で走査するビーム照射を行うことができる。このため、輪郭部分へのビームの照射を短時間で完了することができる。従って、物体を効率良く造形することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の三次元造形装置及び三次元造形方法は、物体の造形を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態である三次元造形装置の構成概要図である。
図2図2は、図1の三次元造形装置におけるビームの照射の説明図である。
図3図3は、図1の三次元造形装置におけるビームの照射の説明図である。
図4図4は、図1の三次元造形装置におけるビームの照射の説明図である。
図5図5は、本開示の実施形態である三次元造形装置の動作及び三次元造形方法を示すフローチャートである。
図6図6は、図1の三次元造形装置の変形例であるビームの照射の説明図である。
図7図7は、図1の三次元造形装置の変形例であるビームの照射の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本開示の実施形態である三次元造形装置の構成概要図である。三次元造形装置1は、粉末材料Aに電子ビームBを照射することによって粉末材料Aを溶融させる。そして、三次元造形装置1は、溶融の後に固化した粉末材料Aを積層する。その結果、三次元の物体Oが造形される。三次元造形装置1は、粉末床溶融結合法(PBF: Powder Bed Fusion)を用いる。三次元造形装置1は、エネルギビームとして電子ビームBを用いる。三次元造形装置1は、電子ビーム積層造形(EBM: Electron Beam Melting)によって物体Oを造形する。粉末材料Aは、物体を造形するための造形材料である。粉末材料Aは、多数の粉末体により構成される。粉末材料Aとしては、例えば金属製の粉末が用いられる。粉末材料Aとしては、電子ビームBの照射により溶融及び凝固できるものであれば、粉末より粒径の大きい粒体を用いてもよい。電子ビームBは、粉末材料Aを溶解するためのエネルギビームである。
【0016】
三次元造形装置1は、ビーム出射部2、造形部3及び制御部4を備える。ビーム出射部2は、造形部3の粉末材料Aに対し電子ビームBを出射する。つまり、ビーム出射部2は、粉末材料Aを溶融させる。電子ビームBは、電子の直線的な運動により形成される。例えば、ビーム出射部2は、粉末材料Aに電子ビームBを照射することによって、粉末材料Aの予備加熱を行う。次に、ビーム出射部2は、粉末材料Aに電子ビームBを照射することによって、粉末材料Aを溶融させる。その結果、三次元の物体Oの造形が行われる。
【0017】
ビーム出射部2は、例えば、電子銃部21、収差コイル22、フォーカスコイル23及び偏向コイル24を有する。電子銃部21は、制御部4と電気的に接続されている。電子銃部21は、制御部4からの制御信号を受けて作動する。電子銃部21は、電子ビームBを出射する。電子銃部21は、例えば、下方に向けて電子ビームBを出射するように設けられている。収差コイル22は、制御部4と電気的に接続されている。収差コイル22は、制御部4からの制御信号を受けて作動する。収差コイル22は、電子銃部21から出射される電子ビームBの周囲に設置される。収差コイル22は、電子ビームBの収差を補正する。フォーカスコイル23は、制御部4と電気的に接続される。フォーカスコイル23は、制御部4からの制御信号を受けて作動する。フォーカスコイル23は、電子銃部21から出射される電子ビームBの周囲に設置される。フォーカスコイル23は、電子ビームBを収束させる。フォーカスコイル23は、、電子ビームBの照射位置におけるフォーカス状態を調整する。偏向コイル24は、制御部4と電気的に接続される。偏向コイル24は、制御部4からの制御信号を受けて作動する。偏向コイル24は、電子銃部21から出射される電子ビームBの周囲に設置される。偏向コイル24は、制御信号に応じて電子ビームBの照射位置を調整する。偏向コイル24は、電磁的なビーム偏向を行うため、機械的なビーム偏向と比べて、電子ビームBの照射時における走査速度が高速である。電子銃部21、収差コイル22、フォーカスコイル23及び偏向コイル24は、例えば、筒状を呈するコラム26内に設置される。なお、収差コイル22の設置を省略する場合もある。また、ビーム出射部2は、電子ビームBを出射可能であれば、上述した構成のものと異なるものであってもよい。
【0018】
造形部3は、所望の物体Oを造形する部位である。造形部3は、例えばビーム出射部2の下方に設けられている。造形部3は、箱状のチャンバ30を備えている。造形部3は、チャンバ30内に配置されたプレート31、昇降機32、粉末供給機構33及びホッパ34を有している。チャンバ30は、コラム26と結合されている。チャンバ30の内部空間は、電子銃部21が配置されるコラム26の内部空間と連通している。
【0019】
プレート31は、造形される物体Oを支持する。プレート31上では、物体Oが造形される。プレート31は、造形されていく物体Oを支持する。プレート31は、例えば円形の板状体のものが用いられる。プレート31は、電子ビームBの出射方向の延長線上に配置される。プレート31は、例えば水平方向に向けて設けられる。プレート31は、下方に設置される昇降ステージ35に支持されるように配置されている。プレート31は、昇降ステージ35と共に上下方向に移動する。昇降機32は、昇降ステージ35及びプレート31を昇降させる機器である。昇降機32は、制御部4と電気的に接続されている。昇降機32は、制御部4からの制御信号を受けて作動する。例えば、昇降機32は、物体Oの造形の初期において昇降ステージ35と共にプレート31を上部へ移動させる。昇降機32は、プレート31上で溶融した後に凝固した粉末材料Aが積層されるごとにプレート31を降下させる。昇降機32は、プレート31を昇降できる機構であれば、いずれの機構のものを用いてもよい。
【0020】
プレート31は、造形タンク36内に配置されている。造形タンク36は、チャンバ30内の下部に設置される収容体である。造形タンク36は、例えば、円筒状に形成されている。造形タンク36は、プレート31の移動方向に向けて延びている。造形タンク36は、プレート31と同心円状の断面円形に形成される。造形タンク36の内側形状に合わせて、昇降ステージ35が形成される。造形タンク36の内側形状が水平断面で円形の場合、昇降ステージ35の外形も円形である。その結果、造形タンク36に供給される粉末材料Aが昇降ステージ35の下方へ漏れ落ちることを抑制しやすくなる。粉末材料Aが昇降ステージ35の下方へ漏れ落ちることを抑制するために、昇降ステージ35の外縁部にシール材を設けてもよい。造形タンク36の形状は、円筒状に限定されない。造形タンク36の形状は、断面矩形の角筒状であってもよい。
【0021】
粉末供給機構33は、プレート31の上方に粉末材料Aを供給すると共に粉末材料Aの表面を均す。粉末供給機構33は、リコータとして機能する。例えば、粉末供給機構33は、棒状又は板状の部材が用いられる。粉末供給機構33は、水平方向に移動することにより電子ビームBの照射領域に粉末材料Aを供給すると共に粉末材料Aを敷き均す。粉末供給機構33の移動は、図示しないアクチュエータ及び機構により制御される。粉末材料Aを均す機構としては、粉末供給機構33以外の機構を用いることができる。ホッパ34は、粉末材料Aを収容する収容器である。ホッパ34の下部には、粉末材料Aを排出する排出口34aが形成されている。排出口34aから排出された粉末材料Aは、プレート31上へ流入する。または、排出口34aから排出された粉末材料Aは、粉末供給機構33によりプレート31上へ供給される。プレート31、昇降機32、粉末供給機構33及びホッパ34は、チャンバ30内に設置される。チャンバ30内は、真空又はほぼ真空な状態である。プレート31上に粉末材料Aを層状に供給する機構としては、粉末供給機構33及びホッパ34以外の機構を用いることができる。
【0022】
制御部4は、三次元造形装置1の装置全体の制御を行う電子制御ユニットである。制御部4は、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを含んで構成される。制御部4は、プレート31の昇降制御、粉末供給機構33の作動制御、電子ビームBの出射制御、及び偏向コイル24の作動制御を行う。制御部4は、プレート31の昇降制御として、昇降機32に制御信号を出力することによって昇降機32を作動させる。その結果、プレート31の上下方向に沿った位置が調整される。制御部4は、粉末供給機構33の作動制御として、電子ビームBの出射前に粉末供給機構33を作動させる。その結果、プレート31上へ粉末材料Aが供給されると共に粉末材料Aが敷き均される。制御部4は、電子ビームBの出射制御として、電子銃部21に制御信号を出力する。その結果、電子銃部21から電子ビームBが出射される。
【0023】
制御部4は、偏向コイル24の作動制御として、偏向コイル24に制御信号を出力する。その結果、電子ビームBの照射位置が制御される。例えば、粉末材料Aの予備加熱を行う場合、制御部4は、ビーム出射部2の偏向コイル24に制御信号を出力することによって、プレート31に対し電子ビームBを走査させながら、電子ビームBを照射させる。物体Oの造形を行う場合、制御部4は、ビーム出射部2の偏向コイル24に制御信号を出力することによって、プレート31上の粉末材料Aに対し電子ビームBを走査させながら、電子ビームBを照射させる。
【0024】
図2は、プレート31を上方から見た図である。図2は、粉末材料Aに対する電子ビームBの照射を示す。図2において、プレート31の範囲内に造形領域Mが設定される。造形領域Mは、物体Oの断面の領域である。造形領域Mは、物体Oの造形時に電子ビームBを照射すべき領域である。造形領域M内の矢印は、電子ビームBの照射経路及び照射方向を示している。例えば、照射経路は直線状に設定される。この図2では、説明の便宜上、プレート31上に敷設される粉末材料Aの図示を省略している。
【0025】
造形領域Mは、輪郭部分M1と内側部分M2とを有している。輪郭部分M1は、造形領域Mの輪郭線Cの近傍の領域である。例えば、輪郭部分M1は、輪郭線Cから内側へ所定の距離までの領域である。輪郭部分M1は、輪郭線Cの全範囲に沿う。輪郭部分M1は、輪郭線Cの全範囲の内側の領域である。しかしながら、輪郭部分M1は、輪郭線Cに部分的な凸部や凹部がある場合など、その部分の所定の距離の長さが変更される場合もある。輪郭部分M1は、輪郭線Cに部分的な凸部や凹部がある場合など、その部分の輪郭部分M1が部分的に省略される場合もある。内側部分M2は、輪郭部分M1より造形領域Mの内側に設定される中央の領域である。
【0026】
輪郭部分M1と内側部分M2には複数の照射経路が設定されている。輪郭部分M1の電子ビームBの照射パターンは、内側部分M2の電子ビームBの照射パターンと異なっている。輪郭部分M1では、造形領域Mの輪郭線Cに対し直交する方向に照射経路が設定される。輪郭部分M1では、輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBが走査されながら、電子ビームBが照射される。つまり、輪郭部分M1では、輪郭線Cに対し直交する方向に複数の照射経路が設定される。その結果、それぞれの照射経路に沿って電子ビームBが順次照射される。このとき、輪郭線Cが湾曲している場合など、照射位置によって電子ビームBの走査方向が異なる。すなわち、輪郭線Cが曲がっている場合、照射経路に沿って順次ビーム照射を行っていくと、照射経路の方向が変わる。その結果、電子ビームBの走査方向が変化する。なお、輪郭線Cが曲がっている場合であっても、照射経路は、隣接する照射経路の方向を変えず複数の照射経路が平行になるように設定される場合もある。
【0027】
これに対し、内側部分M2では、一定の方向に沿って照射経路が設定される。その結果、一定の方向に沿って電子ビームBが走査されながら、電子ビームBが照射される。例えば、内側部分M2では、プレート31上に設定されたXY座標系のX方向に沿って照射経路が設定される。その結果、この照射経路に沿って電子ビームBが走査されながら、電子ビームBが照射される。内側部分M2では、一定の方向に沿って電子ビームBを往復させながら電子ビームBを走査する。その結果、電子ビームBを短時間で照射することができる。輪郭部分M1においても、輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBを往復させながら走査する。その結果、電子ビームBを短時間で照射することが可能となる。
【0028】
図2において、輪郭部分M1では、造形領域Mの輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBが走査される。その結果、輪郭線Cに対し直交する方向に往復して電子ビームBが照射される。直交する方向には、ほぼ直交する方向も含まれる。例えば、電子ビームBは、輪郭線Cに対し90度の角度で走査されてもよい。電子ビームBは、輪郭線Cに対し45度から135度までの角度の範囲で走査されてもよい。ほぼ直交する方向にビーム照射する場合であっても、電子ビームBが順次平行な方向又はほぼ平行な方向に往復して走査されることで、電子ビームBを短時間で照射することができる。
【0029】
ここで、輪郭部分M1において、輪郭線Cに沿って照射位置を移動させて電子ビームBを照射する場合を仮定する。この場合には、電子ビームBを往復させながら電子ビームBを走査することが難しい。輪郭線Cと平行に電子ビームBを照射することによって輪郭部分M1を造形する場合、照射速度を優先したビーム条件でなく物体Oの面粗度を優先したビーム条件が用いられる。この場合、輪郭線Cと平行に弱い電子ビームBを低速に移動させながら、電子ビームBを照射する。このため、輪郭部分M1へのビームの照射に多くの時間を要する。その結果、物体Oを効率良く造形することができない。内側部分M2に対し輪郭部分M1の電子ビームBの強度や照射移動速度を変更する必要がある。従って、照射制御の変更がタイムロスとなるので、物体Oを効率良く造形することができない。
【0030】
これに対し、本開示の三次元造形装置1は、輪郭部分M1において、造形領域Mの輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBを走査する。その結果、輪郭部分M1への電子ビームBの照射を短時間で完了させることができる。電子ビームBの強度及び走査速度を変更せずに、内側部分M2へ電子ビームBを照射することが可能である。その結果、効率良く物体Oの造形を行うことができる。このとき、輪郭部分M1へ照射される電子ビームBの強度及び走査速度は、内側部分M2に照射される電子ビームBの強度及び走査速度と同一とである。電子ビームBの強度及び走査速度が同一であるとは、ほぼ同一も含まれる。つまり、照射制御の変更がほとんどタイムロスとならない程度のほぼ同一な強度及び走査速度であれば、物体Oを効率良く造形することが可能となる。
【0031】
図3は、電子ビームBの照射の一例を示している。輪郭部分M1への電子ビームBの照射は、照射経路に沿う電子ビームBの照射を行った後に、隣接する照射経路に沿う電子ビームBの照射を順次行ってもよい。図3に示すように、輪郭部分M1への電子ビームBの照射は、照射経路に沿う電子ビームBの照射を行った後に、隣接する照射経路を飛び越して、他の照射経路に沿う電子ビームBの照射を行ってもよい。このような照射を、「飛び越し走査」と称する。図3は、二つの照射経路を飛び越して電子ビームBを照射する場合について図示している。なお、飛び越す照射経路の数は二つ以外であってもよい。つまり、飛び越し走査を採用した電子ビームBの照射によって、最終的に輪郭部分M1に設定される全部の照射経路に沿った電子ビームBの照射がなされればよい。このような電子ビームBの照射によれば、照射経路に沿って電子ビームBを照射することによって、粉末材料Aを溶融させたときから、隣接する照射経路の粉末材料Aを溶融させるときまでに適正なタイムラグを発生させることができる。その結果、造形される物体Oの面粗度を向上させることができる。つまり、飛び越し走査によれば、互いに離間する照射経路にビームの照射が行われる。その結果、熱が分散されるので、物体Oの造形を適切に行うことができる。特に、帯状の輪郭部分M1において、輪郭部分M1の幅方向に沿って電子ビームBを走査する場合、電子ビームBの照射により熱が集中しやすい。これに対し、飛び越し走査によれば、熱の集中を抑制することが可能である。従って、物体Oを適切に造形することができる。
【0032】
図4は、電子ビームBの照射の変形例を示している。図2では、輪郭部分M1において照射経路を折り返して隣接の照射経路を照射した。図4に示すように、全ての照射経路において照射方向を同一方向に統一してもよい。例えば、図4に示すように、電子ビームBの照射は、輪郭部分M1の照射経路のそれぞれについて照射方向を輪郭線Cから内側へ向かう向きとしてもよい。この場合、ある照射経路に沿ったビームの照射を完了した後に、折り返してすぐに次の照射経路へのビームの照射を開始しない。輪郭線Cまで戻った後に、次の照射経路へのビームの照射を開始する。その結果、照射位置の折り返し箇所に熱が集中することを避けることができる。また、照射経路に沿った電子ビームBの照射によって粉末材料Aを溶融させたときから、隣接する照射経路に沿った電子ビームBの照射によって粉末材料Aを溶融させたときまでに適正なタイムラグを発生させることができる。その結果、造形される物体Oの面粗度を向上させることができる。つまり、隣接する照射経路に沿ったビーム照射をすぐに行わない。従って、熱が分散されるので、物体Oの造形を適切に行うことができる。なお、図4では、電子ビームBは、輪郭線C付近の外側から内側へ向けて照射している。電子ビームBは、輪郭線Cに向け内側から外側へ向けて照射してもよい。図3のように、飛び越し走査を適用して電子ビームBの照射を行ってもよい。特に、帯状の輪郭部分M1おいて、輪郭部分M1の幅方向に沿って電子ビームBが走査される場合、電子ビームBの照射により熱が集中しやすい。これに対し、電子ビームBの照射方向を同一とすることにより、熱の集中を抑制することが可能となる。その結果、物体Oを適切に造形することができる。
【0033】
図4に示すように、照射経路に沿って電子ビームBを照射することによって粉末材料Aを溶融させたときから、次の照射経路に沿って電子ビームBを照射することによって、粉末材料Aを溶融させたときまでにアイドル時間を設けてもよい。アイドル時間とは、粉末材料Aに電子ビームBが実質的に照射されていないとみなす時間である。例えば、図4において、アイドル時間では、破線で示される経路を走査している時に、電子ビームBの出力を停止する。または、アイドル時間では、破線で示される経路を走査している時に、電子ビームBの焦点をずらす。その結果、粉末材料Aが受けるエネルギが実質的に弱まるので、適正な電子ビームBが照射されていないとみなすことができる。このアイドル時間は、電子ビームBの照射による熱集中の程度に基づいて、設定される。このように、電子ビームBの照射にアイドル時間を設けることにより、熱を分散することができる。その結果、物体Oの造形を適切に行うことができる。なお、図4では、照射経路に沿って電子ビームBを照射することによって粉末材料Aを溶融した後に、隣接する照射経路に沿って電子ビームBを照射した。例えば、隣接する照射経路を飛び越して他の照射経路に沿って電子ビームBを照射してもよい。
【0034】
図1において、制御部4は、物体Oの造形を行う場合、例えば造形すべき物体Oの三次元CAD(Computer-Aided Design)データを用いる。物体Oの三次元CADデータは、予め入力される物体Oの形状データである。制御部4は、三次元CADデータに基づいて二次元のスライスデータを生成する。スライスデータは、例えば、造形すべき物体Oの水平断面のデータである。スライスデータは、上下位置に応じた多数のデータの集合体である。制御部4は、このスライスデータに基づいて、粉末材料Aに対し電子ビームBを照射する造形領域Mを設定する。さらに、制御部4は、輪郭部分M1及び内側部分M2を設定する。制御部4は、輪郭部分M1及び内側部分M2における照射経路及び照射方向を設定する。造形領域M、輪郭部分M1、内側部分M2、照射経路及び照射方向の設定は、各スライスデータごとに行われる。
【0035】
物体Oの造形時において、制御部4は、造形領域M、輪郭部分M1、内側部分M2、照射経路及び照射方向を含む設定データに応じて偏向コイル24に制御信号を出力する。つまり、制御部4は、ビーム出射部2の偏向コイル24に制御信号を出力する。その結果、物体形状に応じた造形領域Mに対し電子ビームBが照射される。
【0036】
次に、本開示の三次元造形装置1の動作及び三次元造形方法について説明する。
【0037】
図5は、本開示の三次元造形装置1の動作及び三次元造形方法を示すフローチャートである。図5の一連の制御処理は、例えば制御部4によって行われる。
【0038】
まず、図5のステップS10に示すように、プレート31の位置設定が行われる。以下、ステップS10は、単に「S10」と示す。以下のステップについても同様とする。物体Oの造形の初めにおいては、プレート31の位置は、上方の位置に設定する。そして、物体Oの造形が進むに連れて、プレート31の位置は徐々に下方へ移動する。図1において、制御部4は、昇降機32に作動信号を出力することによって、昇降機32を作動させる。これにより、昇降機32が作動するので、昇降ステージ35及びプレート31が昇降する。その結果、プレート31の位置が設定される。
【0039】
図5のS12に処理が移行する。S12では、粉末材料Aの供給が行われる。粉末材料Aの供給は、電子ビームBの照射領域Rに粉末材料Aを供給すると共に粉末材料Aを敷き均す処理である。例えば、図1において、制御部4は、図示しないアクチュエータに作動信号を出力することによって、粉末供給機構33を作動させる。これにより、粉末供給機構33は水平方向に移動するので、プレート31上に粉末材料Aが供給されると共に、粉末材料Aが敷き均される。
【0040】
図5のS14に処理が移行する。S14では、予備加熱処理が行われる。予備加熱処理は、物体Oの造形を行う前に予め粉末材料Aを加熱する処理である。予備加熱は、予熱とも称される。予備加熱は、物体Oの造形前に粉末材料Aの融点未満の温度で粉末材料Aを加熱する処理である。予備加熱により、粉末材料Aが加熱されることによって、仮焼結される。その結果、電子ビームBの照射による粉末材料Aへの負電荷の蓄積が抑制される。従って、電子ビームBの照射時に粉末材料Aが飛散することによって、粉末材料Aが舞い上がるスモーク現象を抑制することができる。制御部4は、ビーム出射部2に制御信号を出力することによって、電子銃部21から電子ビームBを出射させると共に偏向コイル24を作動させる。その結果、電子ビームBの照射位置が制御される。これにより、図2に示すように、プレート31上の粉末材料Aに電子ビームBが照射された結果、粉末材料Aが加熱される。
【0041】
そして、図5のS16に処理が移行する。照射工程であるS16では、照射処理が行われる。照射処理は、造形領域Mに電子ビームBを照射することによって、物体Oの造形を行う造形処理である。例えば、制御部4は、造形すべき物体Oの三次元CADデータに基づいて二次元のスライスデータを生成する。制御部4は、このスライスデータに基づいて、粉末材料Aに対し電子ビームBを照射する造形領域M、輪郭部分M1、内側部分M2、照射経路及び照射方向を決定する。制御部4は、設定した照射経路及び照射方向に応じてビーム出射部2から電子ビームBを照射させる。S16の照射処理では、物体Oを構成する一部の層が造形される。
【0042】
具体的には、図2に示すように、プレート31の範囲内に造形領域Mが設定される。次に、造形領域M内に輪郭部分M1及び内側部分M2が設定される。そして、輪郭部分M1及び内側部分M2内には、それぞれ電子ビームBの照射経路及び照射方向が設定される。上述したように、輪郭部分M1と内側部分M2は、電子ビームBの照射パターンが異なっている。つまり、輪郭部分M1では、造形領域Mの輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBが走査されるように電子ビームBが照射される。一方、内側部分M2では、一定の方向に沿って電子ビームBが走査されるように電子ビームBが照射される。図2では、プレート31上に設定されたXY座標系のX方向に沿って電子ビームBが走査されるように電子ビームBが照射される場合を示している。輪郭部分M1及び内側部分M2では、互いに隣接する照射経路は、平行又はほぼ平行である。このため、電子ビームBを往復させて走査することができる。その結果、電子ビームBの照射時間を短くすることができる。輪郭部分M1の走査速度から内側部分M2の走査速度へ変更することなく電子ビームBの照射を行うことができる。従って、電子ビームBの照射を効率良く行うことができるので、短時間で照射処理を行うことが可能となる。
【0043】
この照射処理では、輪郭部分M1において、図3のように照射経路を飛び越し走査することによって、電子ビームBを照射してもよい。図4のように照射方向を同一方向として電子ビームBを照射してもよい。
【0044】
そして、図5のS18に処理が移行する。S18では、制御処理の終了条件が成立したか否かが判定される。制御処理の終了条件が成立した場合とは、例えば、所望の三次元の物体Oの造形が終了した場合である。つまり、S10からS16までの制御処理を繰り返し行った結果、物体Oの造形が完了した場合である。一方、制御処理の終了条件が成立していない場合とは、例えば、所望の三次元の物体Oの造形が完了していない場合である。
【0045】
S18において制御処理の終了条件が成立していないと判定された場合、S10に処理が戻る。一方、S18において制御処理の終了条件が成立したと判定された場合、図5の一連の制御処理が終了する。
【0046】
図5のS10からS18までの処理が繰り返し行われることにより、溶融及び固化した粉末材料Aが積層されるので、物体Oが徐々に形成される。そして、最終的に所望の物体Oが造形される。
【0047】
本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、造形領域Mの輪郭部分M1において造形領域Mの輪郭線Cに対し直交する方向に電子ビームBが走査するように電子ビームBを粉末材料Aに照射させる。その結果、電子ビームBを高速で走査しながら、物体Oを造形することができる。従って、造形領域Mの輪郭部分M1に対するビームの照射を短時間で完了することができる。その結果、物体Oを効率良く短時間で造形することができる。従って、物体Oを効率良く造形することができる。
【0048】
本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、輪郭部分M1と内側部分M2において、電子ビームBを同一の強度及び走査速度でビーム照射を行うことができる。このため、輪郭部分M1と内側部分M2において、電子ビームBの強度及び走査速度を変更せずに電子ビームBを照射することができる。従って、効率良く物体Oの造形を行うことができる。
【0049】
本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、良好な物体Oを造形することができる。例えば、輪郭部分M1を輪郭線Cと平行にビーム照射する場合と比較して、面粗度の小さい良好な物体Oを造形することができる。
【0050】
具体的に物体Oを造形した例を示す。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法と比較例でそれぞれ幅4mmの輪郭部分M1を有する物体Oを造形した。そして、それぞれの方法で造形された物体Oの面粗度を比較した。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法では、輪郭線Cに対して直交である方向にビームを照射した。比較例では、輪郭線Cに対して平行である方向にビームを照射した。幅4mmの輪郭部分M1とは、輪郭線Cからの距離が4mmであることを示す。面粗度としては、算術平均高さを採用した。算術平均高さSaは、光学式測定器により測定した。エネルギビームとしてレーザビームを用いた。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法では、Sa=20μm程度の面粗度の物体Oを造形することができた。これに対し、輪郭線Cに対して平行である方向にビームを照射した比較例では、Sa=30μm程度の面粗度の物体Oしか造形することができなかった。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法では、レーザの電流値を28mAとして造形を行った。これに対し、輪郭線Cに対して平行である方向にビーム照射した比較例では、レーザの電流値を下げるとSaの値が下がった。しかし、比較例では、レーザの電流値を10mAまで下げてもSaは28μm程度であった。このように、本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、面粗度の小さい良好な物体Oを造形できることがわかった。
【0051】
また、本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、造形領域Mのうち輪郭部分M1より内側に形成される内側部分M2において一定の方向に沿って電子ビームBを走査させながら、電子ビームBを粉末材料Aに照射してもよい。内側部分M2で一定の方向に沿って電子ビームBを走査させながら、電子ビームBを粉末材料Aに照射することにより、内側部分M2におけるビーム照射を短時間で行うことができる。その結果、物体Oの造形を短時間で行うことができる。
【0052】
本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、輪郭部分M1に設定される照射経路に対し電子ビームBの照射を行ってもよい。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、電子ビームBを照射した照射経路に次いで隣接する照射経路を飛び越して電子ビームBの照射が行われてもよい。この場合、電子ビームBを照射した照射経路に隣接する照射経路を飛び越して電子ビームBの照射を行う。その結果、電子ビームBの照射による熱の集中を抑制することができる。このため、物体Oの不適切な造形を抑制することができる。特に、帯状の輪郭部分M1であって、輪郭部分M1の幅方向に電子ビームBを照射する場合、熱の集中を抑制できる。その結果、物体Oの適切な造形が可能となる。
【0053】
本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、輪郭部分M1に設定される照射経路に対し電子ビームBの照射を行ってもよい。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、照射経路のそれぞれについて同一方向に向けて電子ビームBの照射を行ってもよい。この場合、照射経路のそれぞれについて同一方向に向けて電子ビームBを照射する。従って、電子ビームBの照射による熱の集中を抑制することができる。その結果、物体Oの不適切な造形を抑制することができる。特に、帯状の輪郭部分M1において、輪郭部分M1の幅方向に電子ビームBを照射する場合、熱の集中を抑制できる。従って、物体Oの適切な造形が可能となる。
【0054】
以上のように、本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法について説明した。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、上述した実施形態に限定されない。本開示の三次元造形装置1及び三次元造形方法は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様をとることができる。
【0055】
例えば、エネルギビームとして電子ビームBを粉末材料Aに照射することによって、物体Oを造形する場合について説明した。粉末材料Aには、電子ビームBとは異なる種類のエネルギビームを照射してもよい。例えば、エネルギビームとしてレーザビームを粉末材料Aに照射することによって、物体Oを造形するものであってもよい。この場合、ビーム出射部2としてレーザスキャンヘッドなどレーザビームを粉末材料Aへ照射可能なものを用いて、物体Oの造形を行えばよい。
【0056】
造形領域Mにおいて輪郭部分M1の内側に内側部分M2が設定される場合について説明した。内側部分M2の設定は、省略してもよい。例えば、造形領域Mの全部又は一部において、輪郭部分M1のみを設定した後に、照射処理を行うことによって物体Oを造形してもよい。具体的には、図6に示すように、造形領域Mがリング状の場合など造形領域Mが帯状の領域を有している場合、内側部分M2を設定せず輪郭部分M1のみを設定した後に、ビーム照射を行ってもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0057】
一つの照射経路に沿ってビームを照射している期間中に、ビームの走査速度及びビーム強度の一方又は双方を変化させてよい。例えば、図7に示すように、輪郭がZ方向(積層方向)になす角度に応じて、一つの照射経路に沿ってビームを照射している期間中にビームの走査速度及びビーム強度の一方又は双方を変化させてよい。物体Oの突出部分でオーバーハングとなる部分では熱を逃がすための抜熱パスが限られる。その結果、造形中の熱量が過剰になりやすい。このような部分ではビームの走査速度を速くしたりビーム強度を弱くする。その結果、熱の集中が抑制されるので、最適化を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 三次元造形装置
2 ビーム出射部
3 造形部
4 制御部
21 電子銃部
22 収差コイル
23 フォーカスコイル
24 偏向コイル
31 プレート
32 昇降機
33 粉末供給機構
34 ホッパ
A 粉末材料
B 電子ビーム
C 輪郭線
M 造形領域
M1 輪郭部分
M2 内側部分
O 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7