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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】探針の評価方法およびSPM
(51)【国際特許分類】
   G01Q 40/02 20100101AFI20241001BHJP
   G01Q 60/38 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
G01Q40/02
G01Q60/38
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022571017
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021849
(87)【国際公開番号】W WO2022137600
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2020211165
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月19日 取扱説明書とこの取扱説明書が格納されたCD-ROMを、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構に配布
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 賢治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】小暮 亮雅
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308312(JP,A)
【文献】特開2006-308313(JP,A)
【文献】特開2007-078679(JP,A)
【文献】特開2001-165844(JP,A)
【文献】米国特許第06489611(US,B1)
【文献】米国特許第06545273(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0069325(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q10/00-90/00
G01B 7/34
G12B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって前記探針を評価する方法であって、
前記既知試料の表面に凸部が形成されており、
前記凸部は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記方法は、
前記頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における前記凸部の断面を円形と近似したときの該円形の半径を測定するステップと、
前記半径と閾値とを比較するステップと、
前記半径が前記閾値未満である場合には前記探針は合格であると判断し、前記半径が前記閾値以上である場合には前記探針は不合格であると判断するステップとを備える方法。
【請求項2】
SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって前記探針を評価する方法であって、
前記既知試料の表面に溝部が形成されており、
前記溝部は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記方法は、
前記底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における前記溝部の空間を円形と近似したときの該円形の半径を測定するステップと、
前記半径と閾値とを比較するステップと、
前記半径が前記閾値未満である場合には前記探針は合格であると判断し、前記半径が前記閾値以上である場合には前記探針は不合格であると判断するステップとを備える方法。
【請求項3】
前記半径は、前記探針の曲率半径が反映された値である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって前記探針を評価する方法であって、
前記既知試料の表面に複数の凸部が形成されており、
前記複数の凸部の各々は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記方法は、
前記頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における前記複数の凸部の各々の幅を測定するステップと、
前記複数の凸部の各々の幅と閾値とを比較するステップと、
前記複数により示される数に対する前記幅が前記閾値未満である凸部の数の割合が所定値以上である場合には前記探針は合格であると判断し、前記割合が前記所定値未満である場合には前記探針は不合格であると判断するステップとを備える方法。
【請求項5】
SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって前記探針を評価する方法であって、
前記既知試料の表面に複数の溝部が形成されており、
前記複数の溝部の各々は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記方法は、
前記底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における前記複数の溝部の各々の幅を測定するステップと、
前記複数の溝部の各々の幅と閾値とを比較するステップと、
前記複数により示される数に対する前記幅が前記閾値未満である溝部の数の割合が所定値以上である場合には前記探針は合格であると判断し、前記割合が前記所定値未満である場合には前記探針は不合格であると判断するステップとを備える方法。
【請求項6】
前記閾値は、前記探針の種別に応じて設定される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値は、ユーザにより設定される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記判断するステップにおける判断結果を表示装置に表示させるステップをさらに備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
探針を有する観察装置と、
情報処理装置とを備え、
前記観察装置は、形状が既知である既知試料を前記探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を前記情報処理装置に出力し、
前記既知試料の表面に凸部が形成されており、
前記凸部は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記情報処理装置は、
前記頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における前記凸部の断面を円形と近似したときの該円形の半径を測定し、
前記半径と閾値とを比較し、
前記半径が前記閾値未満である場合には前記探針は合格であると判断し、前記半径が前記閾値以上である場合には前記探針は不合格であると判断する、SPM。
【請求項10】
探針を有する観察装置と、
情報処理装置とを備え、
前記観察装置は、形状が既知である既知試料を前記探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を前記情報処理装置に出力し、
前記既知試料の表面に溝部が形成されており、
前記溝部は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記情報処理装置は、
前記底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における前記溝部の空間を円形と近似したときの該円形の半径を測定し、
前記半径と閾値とを比較し、
前記半径が前記閾値未満である場合には前記探針は合格であると判断し、前記半径が前記閾値以上である場合には前記探針は不合格であると判断する、SPM。
【請求項11】
前記半径は、前記探針の曲率半径が反映された値である、請求項9または請求項10に記載のSPM。
【請求項12】
探針を有する観察装置と、
情報処理装置とを備え、
前記観察装置は、形状が既知である既知試料を前記探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を前記情報処理装置に出力し、
前記既知試料の表面に複数の凸部が形成されており、
前記複数の凸部の各々は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記情報処理装置は、
前記頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における前記複数の凸部の各々の幅を測定し、
前記複数の凸部の各々の幅と閾値とを比較し、
前記複数により示される数に対する前記幅が前記閾値未満である凸部の数の割合が所定値以上である場合には前記探針は合格であると判断し、前記割合が前記所定値未満である場合には前記探針は不合格であると判断する、SPM。
【請求項13】
探針を有する観察装置と、
情報処理装置とを備え、
前記観察装置は、形状が既知である既知試料を前記探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を前記情報処理装置に出力し、
前記既知試料の表面に複数の溝部が形成されており、
前記複数の溝部の各々は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、
前記情報処理装置は、
前記底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における前記複数の溝部の各々の幅を測定し、
前記複数の溝部の各々の幅と閾値とを比較し、
前記複数により示される数に対する前記幅が前記閾値未満である溝部の数の割合が所定値以上である場合には前記探針は合格であると判断し、前記割合が前記所定値未満である場合には前記探針は不合格であると判断する、SPM。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探針の評価方法およびSPMに関する。
【背景技術】
【0002】
SPM(Scanning Probe Microscope:走査型プローブ顕微鏡)においては、カンチレバーの先端に探針が設けられており、試料に対して探針を接近させて試料表面の情報を取得し、この情報に基づいて観察画像が生成される。SPMの長期間の使用により、探針の先端が次第に摩耗する。SPMは、探針の摩耗量が増大すると、観察画像を正確に生成することができなくなる。このため、SPMのユーザは、探針の先端の状態を定期的に観察し、探針の摩耗量が許容範囲内であるか否かを評価することが好ましい。
【0003】
特許第5902485号公報(特許文献1)には、SPMにおいて、既知試料を測定して探針の曲率半径を算出する技術が開示されている。この既知試料には、曲率半径が10nm以下である凸部が形成されている。SPMは、この既知試料を測定することにより、凸部を示す観察画像を生成する。SPMは、この観察画像により示される1つの凸部の先端からの距離と、この距離により規定される位置における該凸部の幅との複数の組合せを測定し、この複数の組合せに基づいて探針の曲率半径を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5902485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、SPMのユーザは、特許文献1記載のSPMにおいて算出された探針の曲率半径に基づいて探針を評価することが可能である。しかしながら、特許文献1記載のSPMでは、1つの凸部の先端からの距離と、この距離で測定した該凸部の幅との複数の組合せを測定する必要がある。したがって、探針を評価するための演算処理量が増大するという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、演算処理量を増大させることなく探針を評価する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法である。既知試料の表面に凸部が形成されている。凸部は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有する。この方法は、凸部の表面に沿って探針を相対的に移動させて、頂点から高さ方向に予め定められた距離の位置における凸部の幅を測定するステップを備える。また、この方法は、幅と閾値とを比較するステップを備える。さらに、この方法は、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断するステップとを備える。
【0008】
本開示の別の局面に従う方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法である。既知試料の表面に溝部が形成されている。溝部は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有する。この方法は、溝部の表面に沿って探針を相対的に移動させて、底部から深さ方向に予め定められた距離の位置における溝部の幅を測定するステップを備える。また、この方法は、幅と閾値とを比較するステップを備える。さらに、この方法は、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断するステップを備える。
【0009】
本開示の別の局面に従う方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法である。既知試料の表面に複数の凸部が形成されている。複数の凸部の各々は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有する。この方法は、複数の凸部の各々の表面に沿って探針を相対的に移動させて、頂点から高さ方向に予め定められた距離の位置における複数の凸部の幅を測定するステップを備える。また、この方法は、複数の凸部の各々の幅と閾値とを比較するステップを備える。さらに、この方法は、複数により示される数に対する幅が閾値未満である凸部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断するステップを備える。
【0010】
本開示の別の局面に従う方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法である。既知試料の表面に複数の溝部が形成されている。複数の溝部の各々は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有する。この方法は、底部から深さ方向に予め定められた距離の位置における複数の溝部の幅を測定するステップを備える。また、この方法は、複数の溝部の各々の幅と閾値とを比較するステップを備える。さらに、この方法は、複数により示される数に対する幅が閾値未満である溝部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断するステップを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術によれば、SPMは、凸部の頂点から高さ方向に予め定められた距離の位置における凸部の幅、または溝部の底部から深さ方向に予め定められた距離の位置における溝部の幅を測定する。そして、SPMは、この幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、この幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断する。したがって、従来のように1つの凸部の先端からの高さと、この高さで測定した該凸部の幅との複数の組合せを測定する必要はないことから、処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る顕微鏡の構成を概略的に示す図である。
図2】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】既知試料に形成された凸部の断面図を示す図である。
図4】情報処理装置の機能ブロック図の一例である。
図5】第1の実施の形態の情報処理装置のフローチャートの一例である。
図6】カンチレバーの種別と、第1閾値Pとの対応を示す閾値テーブルの一例である。
図7】第2の実施の形態の情報処理装置のフローチャートの一例である。
図8】既知試料に形成された溝部の断面図を示す図である。
図9】第3の実施の形態の情報処理装置のフローチャートの一例である。
図10】第4の実施の形態の情報処理装置のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分に同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
<第1の実施の形態>
[走査型プローブ顕微鏡の構成]
図1は、実施の形態に係るSPM100の構成を概略的に示す図である。SPM100は、探針(プローブ)と試料Sの表面との間に働く原子間力(引力または斥力)を利用して試料Sを観察する原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)である。
【0015】
図1を参照して、実施の形態に係るSPM100は、主たる構成要素として、観察装置80と、情報処理装置20と、表示装置26と、入力装置28とを備える。観察装置80は、主たる構成要素として、光学系1と、カンチレバー2と、スキャナ10と、試料保持部12と、駆動部16と、演算部17と、制御部18とを備える。
【0016】
スキャナ10は、試料Sと探針3との相対的な位置関係を変化させるための移動装置である。試料Sが、スキャナ10上に載置された試料保持部12の上に保持される。スキャナ10は、試料Sを互いに直交するX、Yの2軸方向に走査するXYスキャナと、試料SをZ軸方向に微動させるZスキャナとを有する。XYスキャナおよびZスキャナは、駆動部16から印加される電圧によって変形する圧電素子により構成されており、該圧電素子に印加される電圧に従って、スキャナ10は、3次元方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に走査する。これにより、SPM100は、スキャナ10に載置された試料Sと探針3との間の相対的な位置関係を変化させることができる。
【0017】
カンチレバー2は、試料Sと対向する表面と、表面と反対側の裏面とを有しており、ホルダ4によって支持されている。カンチレバー2は、自由端である先端部の表面に探針3を有する。探針3は試料Sに対向して配置される。探針3は、試料Sの表面に沿って移動し、探針3と試料Sとの間に働く原子間力によって、カンチレバー2が変位する。
【0018】
カンチレバー2の上方には、カンチレバー2のZ軸方向の変位を検出するための光学系1が設けられている。光学系1は、試料Sの観察時に、レーザ光をカンチレバー2の裏面に照射し、カンチレバー2の裏面で反射されたレーザ光を検出する。光学系1は、レーザ光源6と、ビームスプリッタ5と、ミラー7と、光検出器8とを有する。
【0019】
レーザ光源6は、レーザ光LAを発射するレーザ発振器を有する。光検出器8は、入射されるレーザ光を検出する4分割フォトダイオードを有する。レーザ光源6から発射されたレーザ光LAは、ビームスプリッタ5で反射され、カンチレバー2の裏面に照射される。
【0020】
カンチレバー2は、シリコンまたは窒化シリコンなどで形成され、カンチレバー2の背面で光学系1から照射されたレーザ光を反射することができる。カンチレバー2の裏面で反射されたレーザ光は、さらにミラー7によって反射されて光検出器8に入射する。光検出器8にてレーザ光を検出することにより、カンチレバー2の変位を検出することができる。
【0021】
具体的には、光検出器8は、カンチレバー2の変位方向(Z軸方向)に複数(通常2つ)に分割された受光面を有する。あるいは、光検出器8は、Z軸方向およびY軸方向に4分割された受光面を有する。カンチレバー2が変位すると、これら複数の受光面に照射される光量の割合が変化する。光検出器8は、その複数の受光光量に応じた検出信号を演算部17に出力する。演算部17は、検出信号を受信すると、検出信号に基づいてカンチレバー2の変位量を算出する。演算部17は、探針3と試料S表面との間の原子間力が常に一定になるように試料SのZ方向位置を制御する。演算部17は、カンチレバー2の変位量に基づいてスキャナ10をZ軸方向に変位させる電圧値を算出し、スキャナ10に出力する。
【0022】
また、演算部17は、検出信号を制御部18に対して出力する。制御部18は、該検出信号に基づいて制御信号を生成し、該制御信号を情報処理装置20に出力する。制御信号は、本開示の「測定信号」に対応する。
【0023】
情報処理装置20は、制御部18、表示装置26、および入力装置28と通信可能に接続される。情報処理装置20は、制御部18からの制御信号に基づいて画像データ(プロファイルデータ)を生成する。
【0024】
情報処理装置20は、生成された画像データに基づいて、表示装置26に観察画像を表示する。観察画像は、試料Sの表面を示す画像である。また、情報処理装置20は、スキャナ10を3次元方向に駆動するように、制御部18を介して駆動部16を制御する。
【0025】
入力装置28は、ユーザの入力操作を受け付ける。入力装置28は、ユーザの操作内容に応じた信号を情報処理装置20へ出力する。情報処理装置20は、この信号を制御部18に出力する。制御部18は、この信号に基づいた制御を観察装置80に対して実行する。入力装置28は、表示装置26上に設けられたタッチパネルであってもよいし、専用の操作ボタン、マウスまたはキーボードなどの物理操作キーであってもよい。
【0026】
[情報処理装置のハードウェア構成]
図2は、情報処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置20は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)160と、ROM(Read Only Memory)162と、RAM(Random Access Memory)164と、HDD(Hard Disk Drive)166と、通信I/F(Interface)168と、表示I/F170と、入力I/F172とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0027】
通信I/F168は、観察装置80と通信するためのインターフェースである。表示I/F170は、表示装置26と通信するためのインターフェースである。入力I/F172は、入力装置28と通信するためのインターフェースである。
【0028】
ROM162は、CPU160にて実行されるプログラムを格納する。RAM164は、CPU160におけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/F168を経由して入力されたデータを一時的に格納することができる。RAM164は、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD166は、不揮発性の記憶装置である。また、HDD166に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置が採用されてもよい。
【0029】
また、ROM162に格納されているプログラムは、記録媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通されてもよい。または、プログラムは、情報提供事業者によって、いわゆるインターネットなどによりダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。情報処理装置20は、記録媒体またはインターネットなどにより提供されたプログラムを読み取る。情報処理装置20は、読み取ったプログラムを所定の記憶領域(たとえば、ROM162)に記憶する。CPU160は、該記憶されたプログラムを実行することにより上述の表示処理を実行する。
【0030】
記録媒体は、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magneto Optical disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリなどの固定的にプログラムを担持する媒体としてもよい。また、記録媒体は、プログラムなどをコンピュータが読取可能な非一時的な媒体である。ROM162と、RAM164と、HDD166とのうちの少なくとも1つが、本開示の「メモリ」に対応する。つまり、メモリは、情報処理装置により利用される情報を記憶する。
【0031】
[探針の評価]
観察装置80による試料Sの観測中に、探針3と試料Sとが接触する場合があり、探針3と試料Sとの接触回数が多くなると、探針3の先端の摩耗が生じる。探針3の先端の摩耗量が増加した状態で、探針3を用いた試料Sの測定が行われると、正確な測定を行うことができない。このため、SPM100のユーザまたはSPM100が探針3の先端の状態を定期的に観察し、探針の摩耗量が許容範囲内であるか否かを評価することが好ましい。
【0032】
本開示のSPM100においては、未知試料を測定する測定モードと、探針を評価する評価モードとに切換可能である。ユーザにより入力装置28に対して所定の操作が行われた場合に、SPM100のモードは評価モードに切り換えられる。評価モードでは、観察装置80は、形状が既知である既知試料を測定して、この測定結果を示す検出信号を情報処理装置20に送信する。既知試料は、N(Nは2以上の整数)個の単位試料から構成されるものであり、N個の単位試料の各々には凸部が形成されている。つまり、既知試料の表面には、N個の凸部が形成されている。
【0033】
情報処理装置20は、この検出信号に基づいて既知試料の画像データを生成する。情報処理装置20は、この画像データを解析することにより、既知試料の所定の長さ(たとえば、後述の既知試料の凸部の幅など)を算出できる。
【0034】
図3は、既知試料に形成された凸部200の断面を示す図である。図3においては、凸部200に対する探針3の軌跡3Sが示されている。図3(A)は、探針3の先端3Aが摩耗していない場合の軌跡3Sを表す図であり、図3(B)は、探針3の先端3Aが摩耗した場合の軌跡3Sを表す図である。探針3の先端3Aが摩耗した場合には、先端3Aの曲率半径は大きくなる。なお、図3においては、探針3と、既知試料との間に原子間力が働くことから、探針3の先端3Aと凸部200との間に一定の距離が保たれる。
【0035】
図3の例において、凸部200の高さ方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面をXY平面とする。凸部200は、凸部200の頂点200Aに向かうにつれて細くなる形状を有する。凸部200は、たとえば、円錐形状を有する。なお、凸部200は、三角錐形状、または四角錐形状を有していてもよい。
【0036】
評価モードでは、SPM100は、凸部200の測定を行う。したがって、XY平面における凸部200の断面は、円形状に近似される。この円形状の半径は、以下では、「円相当半径R」とも称される。「凸部200の円相当半径R」は、本開示の「凸部の幅」に対応する。
【0037】
情報処理装置20は、凸部200の軌跡3Sの最高点3Hから、既知試料の表面500に向かう高さ方向(Z軸方向)において距離hの位置における凸部200の幅(円相当半径R)を、凸部200の画像データを解析することにより測定する。「凸部200の軌跡3Sの最高点3H」は、凸部200の頂点200Aの探針3による測定点である。距離hは、予め定められた値である。距離hは、ユーザにより入力可能(設定可能)としてもよく、予め定められた値としてもよい。
【0038】
測定された円相当半径Rは、探針3の先端3Aの曲率半径が反映された値である。ここで、「先端3Aの曲率半径が反映された値」とは、「先端3Aの曲率半径」の値、「先端3Aの曲率半径」の値に近似される値、および「先端3Aの曲率半径」に対して定数を乗算した値のうちいずれかである。
【0039】
図3(A)に示すように、探針3の先端3Aが摩耗していない場合において測定される円相当半径を、「円相当半径R1」と称する。一方、図3(B)に示すように、探針3の先端3Aが摩耗している場合において測定される円相当半径を、「円相当半径R2」と称する。ここで、探針3の先端3Aが摩耗している場合の方が、探針3の先端3Aが摩耗していない場合よりも、軌跡3Sの最高点3Hが低くなる(つまり、最高点3HのZ座標が小さくなる)。また、上述のように、凸部200の頂点200Aに向かうにつれて細くなる形状を有する。したがって、最高点3Hから一定の距離hの位置における凸部200の円相当半径Rは、探針3の先端3Aが摩耗している場合の方が、探針3の先端3Aが摩耗していない場合よりも大きくなる。よって、R2>R1となる。
【0040】
つまり、探針3の先端3Aが摩耗される程、測定される円相当半径Rは大きくなる。そこで、情報処理装置20は、N個の凸部200のうちの1つの凸部200の円相当半径Rと、予め定められた第1閾値Pとを比較し、円相当半径Rが第1閾値P未満であれば、探針3は合格であると判断し、円相当半径Rが第1閾値P以上であれば、探針3は合格であると判断する。N個の凸部200のうちから、1つの凸部200を抽出する基準は、如何なる基準であってもよく、たとえば、最も高い凸部200を1つの凸部200として抽出する。
【0041】
たとえば、特許文献1に記載のSPMであれば、探針の曲率半径を算出するために、1つの凸部の画像において、凸部の先端からの高さと、この高さで測定した凸部の幅との複数の組合せを測定する必要がある。したがって、探針を評価するための演算処理量が増大するという問題が生じ得る。
【0042】
一方、本開示のSPM100においては、測定された円相当半径Rと第1閾値Pとの比較に基づいて探針3を評価することができる。したがって、従来のSPMのように、凸部の先端からの高さと、この高さで測定した凸部の幅との複数の組合せを測定する必要がない。よって、本開示のSPM100は、従来のSPMと比較して演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0043】
[情報処理装置の機能ブロック図]
図4は、情報処理装置20の機能ブロック図の一例である。情報処理装置20は、第1入力部302と、生成部304と、測定部306と、評価部308と、第2入力部310と、記憶部312とを含む。
【0044】
第1入力部302は、光検出器8からの検出信号の入力を受け、該検出信号を生成部304に出力する。生成部304は、検出信号に基づいて画像データを生成し、該画像データを測定部306に出力する。
【0045】
また、ユーザは、入力装置28を用いて、距離h(図3参照)を入力する。第2入力部310は、距離hの入力を受け付ける。距離hは記憶部312に記憶される。なお、記憶部312には、第1閾値Pも予め記憶されている。
【0046】
測定部306は、凸部200の軌跡3Sの最高点3Hから、Z軸方向に距離hの位置における凸部200の円相当半径Rを、生成部304により生成された画像データに基づいて測定する。測定部306は、測定された円相当半径Rを評価部308に出力する。
【0047】
評価部308は、円相当半径Rと、第1閾値Pとを比較する。評価部308は、円相当半径Rが第1閾値P未満である場合には探針3は合格であると判断し、円相当半径Rが第1閾値P以上である場合には探針3は不合格であると判断する。探針3が合格であるということは、探針3の先端3Aの摩耗量が少ないということである(図3(A)参照)。一方、探針3が不合格であるということは、探針3の先端3Aの摩耗量が多いということである(図3(B)参照)。
【0048】
評価部308は、評価結果を表示装置26に表示させる。たとえば、評価結果が合格である場合には、評価部308は「合格」といった文字を表示装置26に表示させる。一方、評価結果が不合格である場合には、評価部308は「不合格」といった文字を表示装置26に表示させる。
【0049】
[情報処理装置のフローチャート]
図5は、情報処理装置20のフローチャートの一例である。図5の処理は、評価モードに切り換えられたときに開始される。
【0050】
まず、ステップS2において、生成部304は、観察装置80からの検出信号に基づいて、N個の凸部を含む既知資料の画像データを生成する。次に、ステップS4において、生成部304は、N個の凸部200のうちから1つの凸部200を決定し、該凸部200の円相当半径Rを測定する。
【0051】
次に、ステップS8において、評価部308は、円相当半径Rが、第1閾値P未満であるか否かを判断する。円相当半径Rが、第1閾値P未満である場合には(ステップS8でYES)、ステップS10において、評価部308は、探針3が合格であると判断する。一方、円相当半径Rが第1閾値P以上である場合には(ステップS8でNO)、ステップS12において評価部308は、探針3が不合格であると判断する。次に、ステップS14において、評価部308は、評価結果を表示装置26に表示する。
【0052】
このように、本開示のSPM100は、測定された円相当半径Rと第1閾値Pとの比較に基づいて探針3を評価することができる。したがって、従来の顕微鏡のように、凸部の先端からの高さと、この高さで測定した凸部の幅との複数の組合せを測定する必要がない。よって、本開示のSPM100は、従来の顕微鏡と比較して演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0053】
また、情報処理装置20は、評価結果を表示装置26に表示させる。したがって、ユーザは、探針3の評価結果を容易に認識することができる。
【0054】
[第1閾値について]
上述のように、カンチレバー2はユーザにより交換可能である。また、探針3は、カンチレバー2に設けられることから、カンチレバー2が交換されることにより探針3も交換されることになる。一般的に、探針3の種別に応じて、先端3Aが摩耗していない場合の該先端3Aの曲率半径は異なる。また、上述のように、測定される円相当半径Rは、探針3の先端3Aの曲率半径が反映された値である。したがって、装着されているカンチレバー2に設けられている探針3に応じて、第1閾値Pが設定される。
【0055】
図6は、カンチレバー2の種別(探針3の種別)と、第1閾値Pとの対応を示す閾値テーブルの一例である。図6の例では、カンチレバー2Aに対しては、第1閾値PAが対応づけられており、カンチレバー2Bに対しては、第1閾値PBが対応づけられており、カンチレバー2Cに対しては、第1閾値PCが対応づけられている。図6においては、第1閾値は、カンチレバー2に設けられている探針3の曲率半径と同一の値が設定されている。なお、第1閾値は、カンチレバー2に設けられている探針3の曲率半径よりも若干大きな値としてもよい。閾値テーブルは予め記憶部312に記憶されている。
【0056】
ユーザにより、カンチレバー2が装着されると、観察装置80は、該装着されたカンチレバー2の種別を認識するとともに、該認識したカンチレバー2の種別を示す種別情報を情報処理装置20に送信する。情報処理装置20は、この種別情報を取得すると、閾値テーブルを参照して、第1閾値Pを設定する(第1閾値Pを記憶部312に記憶する)。
【0057】
このような構成によれば、SPM100は、評価対象の探針3の種別(カンチレバー2の種別)に応じて、適切な第1閾値Pを設定することができる。
【0058】
また、第1閾値Pは、ユーザが設定可能である構成が採用されてもよい。たとえば、ユーザは、カンチレバー2の種別と、該カンチレバー2に設けられている探針3の曲率半径(第1閾値P)とが対応づけられている表(たとえば、図6に示す表)を視認して、ユーザが第1閾値Pを設定するようにしてもよい。このような構成によれば、ユーザが所望する第1閾値Pを設定することができる。
【0059】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、N個の凸部のうちの1つの凸部200の円相当半径Rと、第1閾値Pとの比較により、探針3を評価する構成を説明した。第2の実施の形態では、N個の凸部の各々の円相当半径Rを測定し、円相当半径Rが第1閾値P未満となる凸部の数のNに対する割合に基づいて探針3を評価する。
【0060】
図7は、本実施の形態の情報処理装置20のフローチャートの一例である。図7のフローチャートは、図5のステップS4およびステップS8の各々が、ステップS42およびステップS82に代替され、さらに、ステップS42とステップS82との間にステップS62が介在されたものである。
【0061】
ステップS2により、N個の凸部200の画像データが生成されると、ステップS42において、測定部306は、N個の凸部200の画像データに基づいて、N個の凸部200の各々の円相当半径Rを測定する。N個の円相当半径Rは評価部308に出力される。
【0062】
次に、ステップS62において、評価部308は、円相当半径Rが第1閾値P未満となる凸部200の数Cを測定する。更に、ステップS62において、凸部の総数であるNにより示される値に対する測定値Cの割合Qを算出する。つまり、割合Q=C/Nとなる。次に、ステップS82において、評価部308は、割合Qが第2閾値V以上であるか否かを判断する。本実施の形態の「第2閾値」は、本開示の「所定数」に対応する。なお、第2閾値は、ユーザにより入力可能(設定可能)としてもよく、予め定められた値としてもよい。
【0063】
割合Qが第2閾値V以上である場合には(ステップS82でYES)、処理は、ステップS10に進められる。一方、割合Qが第2閾値V未満である場合には(ステップS82でNO)、処理は、ステップS12に進められる。以降の処理は、図5と同一である。
【0064】
1個の凸部のみの円相当半径Rと第1閾値Pとの比較では、該1個の凸部の形状によって、測定される円相当半径Rのばらつきが生じる場合がある。そこで、本実施の形態では、円相当半径Rが第1閾値P未満となる凸部200の割合Qが第2閾値V以上である場合に、探針3が合格であると判断し、割合Qが第2閾値V未満である場合に探針3が不合格であると判断する。したがって、測定される円相当半径Rのばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0065】
<第3の実施の形態>
上述の実施の形態では、SPM100が、凸部が形成されている既知試料を測定することにより探針3を評価する構成を説明した。第3の実施の形態では、溝部が形成されている既知試料を測定することにより探針3を評価する構成を説明する。
【0066】
図8は、既知試料に形成された溝部300の断面を示す図である。溝部300に対する探針3の軌跡3Sも示されている。図8(A)は、探針3の先端3Aが摩耗していない場合の軌跡3Sを表す図であり、図8(B)は、探針3の先端3Aが摩耗した場合の軌跡3Sを表す図である。なお、図8においては、探針3と、既知試料との間に原子間力が働くことから、探針3の先端3Aと溝部300との間に一定の距離が保たれる。なお、溝部300の開口部の幅は、探針3の先端3Aの摩耗度合いに関わらず、探針3の先端3Aよりも十分大きいとする。したがって、SPM100は、先端3Aの摩耗により先端3Aの曲率半径が大きくなったとしても、溝部300の形状を測定することができる。
【0067】
図8の例において、溝部300の深さ方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面をXY平面とする。溝部300は、溝部300の底部300Aに向かうにつれて細くなる形状を有する。溝部300により形成される空間は、たとえば、円錐形状を有する。
【0068】
評価モードでは、SPM100は、溝部300の測定を行う。また、XY平面における溝部300により形成される空間の断面は、円形状に近似される。この円形状の半径は、以下では、「円相当半径S」とも称される。「溝部300の円相当半径S」は、本開示の「溝部の幅」に対応する。
【0069】
情報処理装置20は、溝部300の軌跡3Sの最低点3Lから、既知試料の表面500に向かう深さ方向(Z軸方向)において、距離hの位置における溝部300の幅(円相当半径R)を、溝部300の画像データを解析することにより測定する。「溝部300の軌跡3Sの最低点3L」は、溝部300の底部300Aの探針3による測定点である。
【0070】
また、測定された円相当半径Sは、探針3の先端3Aの曲率半径に対応する値である。図8(A)に示すように、探針3の先端3Aが摩耗していない場合において測定される円相当半径を、「円相当半径S1」と称する。一方、図8(B)に示すように、探針3の先端3Aが摩耗している場合において測定される円相当半径を、「円相当半径S2」と称する。ここで、探針3の先端3Aが摩耗している場合には、先端3Aの曲率半径が大きくなる。したがって、探針3は、溝部300の最下部まで移動することができない。よって、探針3の先端3Aが摩耗している場合の方が、探針3の先端3Aが摩耗していない場合よりも、軌跡3Sの最低点3Lが高くなる(つまり、最低点3LのZ座標が大きくなる)。また、溝部300は、溝部300の底部300Aに向かうにつれて細くなる形状を有する。したがって、最低点3Lから一定の距離hの位置における溝部300の円相当半径Sは、探針3の先端3Aが摩耗している場合の方が、探針3の先端3Aが摩耗していない場合よりも大きくなる。よって、S2>S1となる。
【0071】
このように、探針3の先端3Aが摩耗される程、測定される円相当半径Sは大きくなる。そこで、情報処理装置20は、N個の溝部300のうちの1つの溝部300の円相当半径Sと、予め定められた第1閾値Pとを比較し、円相当半径Sが第1閾値P未満であれば、探針3は合格であると判断し、円相当半径Sが第1閾値P以上であれば、探針3は不合格であると判断する。SPM100は、N個の溝部300のうちから、1つの溝部300を抽出する基準は、如何なる基準であってもよい。1つの溝部300は、たとえば、N個の溝部300のうちの最も深い溝部である。
【0072】
図9は、本実施の形態の情報処理装置20のフローチャートの一例である。まず、ステップS102において、生成部304は、観察装置80からの検出信号に基づいて、N個の溝部300を含む既知資料の画像データを生成する。次に、ステップS104において、生成部304は、N個の溝部300のうちから1つの溝部300を決定し、該溝部300の円相当半径Sを測定する。
【0073】
次に、ステップS108において、評価部308は、円相当半径Sが、第1閾値P未満であるか否かを判断する。円相当半径Sが、第1閾値P未満である場合には(ステップS108でYES)、処理は、ステップS10に進められる。一方、円相当半径Sが第1閾値P以上である場合には(ステップS108でNO)、処理は、ステップS12に進められる。以降の処理は、図5と同一である。
【0074】
このように、本実施の形態のSPM100においては、溝部300の円相当半径Sと、第1閾値Pとの比較に基づいて、探針3を評価することができる。
【0075】
<第4の実施の形態>
第3の実施の形態では、N個の溝部のうちの1つの溝部300の円相当半径Sと、第1閾値Pとの比較により、探針3を評価する構成を説明した。第4の実施の形態では、N個の溝部の各々の円相当半径Sを測定し、円相当半径Sが第1閾値P未満となる凸部の数のNに対する割合に基づいて探針3を評価する。
【0076】
図10は、本実施の形態の情報処理装置20のフローチャートの一例である。図10のフローチャートは、図9のステップS104およびステップS108の各々が、ステップS1042およびステップS1082に代替され、さらに、ステップS1042とステップS1082との間にステップS1062が介在されたものである。
【0077】
ステップS102により、N個の溝部300の画像データが生成されると、ステップS1042において、測定部306は、N個の溝部300の画像データに基づいて、N個の溝部300の各々の円相当半径Sを測定する。N個の円相当半径Sは評価部308に出力される。
【0078】
次に、ステップS1062において、評価部308は、円相当半径Sが第1閾値P未満となる溝部300の数Cを測定する。更に、ステップS62において、溝部の総数であるNにより示される値に対する測定値Cの割合Qを算出する。つまり、割合Q=C/Nとなる。次に、ステップS1082において、評価部308は、割合Qが第2閾値V以上であるか否かを判断する。
【0079】
割合Qが第2閾値V以上である場合には(ステップS82でYES)、処理は、ステップS10に進められる。一方、割合Qが第2閾値V未満である場合には(ステップS82でNO)、処理は、ステップS12に進められる。以降の処理は、図5と同一である。
【0080】
1個の溝部のみの円相当半径Sと第1閾値Pとの比較では、該1個の溝部の形状によって、測定される円相当半径Sのばらつきが生じる場合がある。そこで、本実施の形態では、円相当半径Sが第1閾値P未満となる溝部300の割合Qが第2閾値V以上である場合に、探針3が合格であると判断し、割合Qが第2閾値V未満である場合に探針3が不合格であると判断する。したがって、測定される円相当半径Sのばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0081】
なお、上述の第1の実施の形態~第4の実施の形態の各々で説明した探針3の評価方法をユーザが選択できるようにしてもよい。たとえば、凸部が形成された既知試料を用いて探針3の評価をSPM100に実行させる場合には、第1の実施の形態で説明した探針3の評価方法または第2の実施の形態で説明した探針3の評価方法をユーザが選択できるようにしてもよい。
【0082】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0083】
(第1項) 一態様に係る方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法であって、既知試料の表面に凸部が形成されており、凸部は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、この方法は、頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における凸部の幅を測定するステップと、幅と閾値とを比較するステップと、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断するステップとを備える。
【0084】
第1項の方法によれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0085】
(第2項) 一態様に係る方法は、SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法であって、既知試料の表面に溝部が形成されており、溝部は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、この方法は、底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における溝部の幅を測定するステップと、幅と閾値とを比較するステップと、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断するステップとを備える。
【0086】
第2項の方法によれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0087】
(第3項) SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法であって、既知試料の表面に複数の凸部が形成されており、複数の凸部の各々は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、この方法は、頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における複数の凸部の各々の幅を測定するステップと、複数の凸部の各々の幅と閾値とを比較するステップと、複数により示される数に対する幅が閾値未満である凸部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断するステップとを備える。
【0088】
第3項の方法によれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。さらに、測定される幅のばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0089】
(第4項) SPMにおいて形状が既知である既知試料を探針で測定することによって探針を評価する方法であって、既知試料の表面に複数の溝部が形成されており、複数の溝部の各々は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、この方法は、底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における複数の溝部の各々の幅を測定するステップと、複数の溝部の各々の幅と閾値とを比較するステップと、複数により示される数に対する幅が閾値未満である溝部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断するステップとを備える。
【0090】
第4項の方法によれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。さらに、測定される幅のばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0091】
(第5項) 第1項~第4項のいずれかに記載の方法において、閾値は、探針の種別に応じて設定される。
【0092】
第5項の方法によれば、探針の種別に応じた閾値により、該探針を評価することができる。
【0093】
(第6項) 第1項~第5項のいずれかに記載の方法において、閾値は、ユーザにより設定される。
【0094】
第6項の方法によれば、ユーザが所望する閾値により、該探針を評価することができる。
【0095】
(第7項) 第1項~第6項のいずれかに記載の方法において、この方法は、上述の判断するステップにおける判断結果を表示装置に表示させるステップをさらに備える。
【0096】
第7項の方法によれば、ユーザに表示装置を視認させることにより、判断結果を該ユーザに認識させることができる。
【0097】
(第8項) 一態様に係るSPMは、探針を有する観察装置と、情報処理装置とを備え、観察装置は、形状が既知である既知試料を探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を情報処理装置に出力し、既知試料の表面に凸部が形成されており、凸部は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、情報処理装置は、頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における凸部の幅を測定し、幅と閾値とを比較し、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断する。
【0098】
第8項のSPMによれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0099】
(第9項) 一態様に係るSPMは、探針を有する観察装置と、情報処理装置とを備え、観察装置は、形状が既知である既知試料を探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を情報処理装置に出力し、既知試料の表面に溝部が形成されており、溝部は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、情報処理装置は、底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における溝部の幅を測定し、幅と閾値とを比較し、幅が閾値未満である場合には探針は合格であると判断し、幅が閾値以上である場合には探針は不合格であると判断する。
【0100】
第9項のSPMによれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。
【0101】
(第10項) 探針を有する観察装置と、情報処理装置とを備え、観察装置は、形状が既知である既知試料を探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を情報処理装置に出力し、既知試料の表面に複数の凸部が形成されており、複数の凸部の各々は、頂点に向かうにつれて細くなる形状を有し、情報処理装置は、頂点の測定点から高さ方向に予め定められた距離の位置における複数の凸部の各々の幅を測定し、複数の凸部の各々の幅と閾値とを比較し、複数により示される数に対する幅が閾値未満である凸部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断する。
【0102】
第10項のSPMによれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。さらに、測定される幅のばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0103】
(第11項) 探針を有する観察装置と、情報処理装置とを備え、観察装置は、形状が既知である既知試料を探針で測定し、該測定の結果を示す測定信号を情報処理装置に出力し、既知試料の表面に複数の溝部が形成されており、複数の溝部の各々は、底部に向かうにつれて細くなる形状を有し、情報処理装置は、底部の測定点から深さ方向に予め定められた距離の位置における複数の溝部の各々の幅を測定し、複数の溝部の各々の幅と閾値とを比較し、複数により示される数に対する幅が閾値未満である溝部の数の割合が所定値以上である場合には探針は合格であると判断し、割合が所定値未満である場合には探針は不合格であると判断する。
【0104】
第11項のSPMによれば、演算処理量を増大させることなく探針を評価することができる。さらに、測定される幅のばらつきを低減でき、その結果、評価精度を向上させることができる。
【0105】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施の形態の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 光学系、2 カンチレバー、3 探針、3A 先端、3H 最高点、3L 最低点、3S 軌跡、4 ホルダ、5 ビームスプリッタ、6 レーザ光源、7 ミラー、8 光検出器、10 スキャナ、12 試料保持部、16 駆動部、17 演算部、18 制御部、20 情報処理装置、26 表示装置、28 入力装置、80 観察装置、162 ROM、164 RAM、200 凸部、200A 頂点、300 溝部、300A 底部、302 第1入力部、304 生成部、306 測定部、308 評価部、310 第2入力部、312 記憶部、500 表面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10