(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】成形体及び成形体の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20241001BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241001BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/14
B29C33/44
(21)【出願番号】P 2023040021
(22)【出願日】2023-03-14
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】坂下 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】小出 浩資
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康雄
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-179224(JP,A)
【文献】特開平6-254870(JP,A)
【文献】特開2004-168064(JP,A)
【文献】特開2007-21815(JP,A)
【文献】特開平2-248218(JP,A)
【文献】特開2005-297307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で形成され、厚み方向の一方の面が凸面、他方の面が凹面となる板状の基材と、第2の樹脂材料で形成され、前記基材の少なくとも前記凸面を被覆する内側層と、第3の樹脂材料で形成され、前記内側層の少なくとも前記凸面の被覆領域を被覆する外側層とを含んでなり、取付対象部材へ前記凸面を外側に向けて取り付けられる成形体であって、
前記厚み方向と交差する方向での前記基材の両端部のうちの何れか一方の端部において、当該端部を被覆する前記内側層には、射出成形によるアンダーカット部が形成されて
いると共に、前記内側層における前記アンダーカット部の前記凹面側の端部に、パーティングラインが形成されており、
前記外側層は、
前記アンダーカット部を含んで前記パーティングラインの位置まで被覆している一方、
前記基材の他方の端部を被覆する前記内側層は、前記基材の前記凹面側へ折り返されて前記凹面を被覆しており、前記凹面を被覆している前記内側層の端部に、第2のパーティングラインが形成されていると共に、前記外側層も、前記基材の前記凹面側へ折り返されて、前記第2のパーティングラインの位置まで前記凹面を被覆していることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記パーティングラインは、前記取付対象部材に取り付けられた状態で前記取付対象部材によって隠れる位置にあることを特徴とする請求項
1に記載の成形体。
【請求項3】
一対の第1合わせ面と、前記一対の第1合わせ面の第1内側端縁から型合わせ方向に凸設され、成形体の凹面に対応した外面となる内側成形面とを有する第1の金型と、
前記一対の第1合わせ面と前記型合わせ方向に対向して配置される一対の第2合わせ面と、前記一対の第2合わせ面の第2内側端縁から前記型合わせ方向に凹設され、前記成形体の凸面に対応した外面となる外側成形面とを有する第2の金型と、を用いて、
外側樹脂材料を前記第2の金型の前記外側成形面に塗布し、
前記第1の金型の前記内側成形面に、樹脂材料で形成され、前記外側成形面側が凸面、前記内側成形面側が凹面となる板状の基材を固定した状態で、前記第1の金型と前記第2の金型とを型締めして前記内側成形面と前記外側成形面との間に形成されるキャビティ内に内側樹脂材料を射出して、前記基材の前記凸面に、前記内側樹脂材料からなる内側層と、前記外側樹脂材料からなる外側層とを被覆してなる成形体を成形する方法であって、
前記外側成形面における何れか一方の前記第2合わせ面側で前記第2内側端縁と連続する所定の領域が、前記キャビティ側に突出するアンダーカット部となり、
前記外側樹脂材料を前記外側成形面に塗布する工程では、前記外側樹脂材料を、前記アンダーカット部を含む前記外側成形面と、前記アンダーカット部に連続する前記一方の第2合わせ面とに塗布し、
前記成形体を前記キャビティから取り出した後、前記外側層を、前記第2内側端縁の位置又は前記第2内側端縁に連続する前記一方の第2合わせ面の所定の位置で切除することを特徴とする成形体の成形方法。
【請求項4】
前記内側成形面における前記アンダーカット部と反対側の前記第1合わせ面側には、前記キャビティの形成領域を越えて前記第1内側端縁に連続する第1余長成形部が形成されると共に、前記内側成形面には、前記基材の端部が配置されて前記キャビティの端部を形成する凹部が形成されて、
前記外側成形面における前記アンダーカット部と反対側の前記第2合わせ面側には、前記キャビティの形成領域を越えて前記第2内側端縁に連続し、前記第1余長成形部と対向する第2余長成形部が形成されており、
前記外側樹脂材料を前記外側成形面に塗布する工程では、前記外側樹脂材料を、前記第2余長成形部にも塗布し、
前記成形体を前記キャビティから取り出した後、前記内側層及び前記外側層のうちの前記第1、第2余長成形部側の端部を前記基材の前記凹面側に折り返して前記凹面に固定することを特徴とする請求項
3に記載の成形体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂材料からなる成形体と、当該成形体を成形する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料からなる成形体は、樹脂材料を成形型内に射出成形(例えばRIM成形)することで形成される。特に、成形体の表面には、着色を行うために塗料による表皮(外側層)が形成される場合がある。このような表皮を形成する方法として、例えば特許文献1には、予め成形した表皮を金型内に配置し、この表皮と型面との間に形成されるキャビティ内に樹脂材料を射出し、且つ圧縮することで、表皮と樹脂芯体とを一体成形する方法が開示されている。
しかし、この一体成形方法では、表皮の成形工程や別の金型が余分に必要となる上、成形体の形状が複雑になると対応できない。そこで、別の方法として、表皮となる外側樹脂材料を型の内面に塗布し、その後内側樹脂材料をキャビティ内に射出して転写させるインモールドコーティングも知られている。この場合、同一型内で成形と塗装とが行えるため、工程及びコストが削減できる上、成形体の形状が複雑であっても対応可能となる。
【0003】
図3は、インモールドコーティングによる成形の一例を示す。成形体が自動車内装品であるドアアームレストのように、厚み方向の一方の面が凸面、他方の面が凹面となる板状で凸面が表面となる形状の場合、金型は、
図3(A)に示すように、上型50と下型60とに分割される。上型50には、一対の上合わせ面51A,51Bと、上合わせ面51A,51Bの間で成形体の凹面に対応した内側成形面52が凸設される。下型60には、一対の下合わせ面61A,61Bと、下合わせ面61A,61Bの間で成形体の凸面に対応した外側成形面62が凹設される。
この上型50と下型60とにより、インモールドコーティングによってウレタンによる内側層と、塗料による外側層とを成形する場合、下型60では、予め塗料63が、外側成形面62及び下合わせ面61A,61Bに塗布される。上型50では、外から見える部位に着色する必要があることから、基材の表面及びその両端の裏側にも内側層及び外側層が形成される。よって、上型50の内側成形面52には、両端の裏側にもキャビティの一部となる凹部53,53が形成されているため、塗料54は、予め上合わせ面51A,51B及び両端の凹部53,53にも塗布される。
次に、
図3(B)に示すように、上型50の内側成形面52に基材70を固定した状態で型合わせを行い、上型50と下型60との間に形成されるキャビティ71内にウレタンが射出成形される。すると、
図3(C)に示すように、基材70の表面から両端の裏側にかけて、ウレタンによる内側層72と、塗料54,63の転写による外側層73とが一体成形された成形体80が得られる。
この成形体80は、両端が取付対象部材41に当接又は近接した状態で取り付けられる。よって、外側層73のみが外部に露出することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記インモールドコーティングによる成形では、外側層73の表面に、上型50と下型60との割線(パーティングライン)PLが生じることになる。よって、見栄えが悪くなり、外観を損なう。また、外部から見える領域に外側層73を形成する必要があるため、上型50と下型60との両方に塗料54,63を塗布することになり、塗装工程や塗料の使用量が増えて製造工程の増加やコストアップに繋がってしまう。
【0006】
そこで、本開示は、インモールドコーティングにより表面に塗料による外側層が形成されていても、パーティングラインによる見栄えの悪化を防止して意匠性を向上させることができると共に、製造工程の短縮化及びコストダウンを図ることができる成形品及びその成形方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、樹脂材料で形成され、厚み方向の一方の面が凸面、他方の面が凹面となる板状の基材と、第2の樹脂材料で形成され、基材の少なくとも凸面を被覆する内側層と、第3の樹脂材料で形成され、内側層の少なくとも凸面の被覆領域を被覆する外側層とを含んでなり、取付対象部材へ凸面を外側に向けて取り付けられる成形体であって、
厚み方向と交差する方向での基材の両端部のうちの何れか一方の端部において、当該端部を被覆する内側層には、射出成形によるアンダーカット部が形成されていると共に、内側層におけるアンダーカット部の凹面側の端部に、パーティングラインが形成されており、外側層は、アンダーカット部を含んでパーティングラインの位置まで被覆している一方、
基材の他方の端部を被覆する内側層は、基材の凹面側へ折り返されて凹面を被覆しており、凹面を被覆している内側層の端部に、第2のパーティングラインが形成されていると共に、外側層も、基材の凹面側へ折り返されて、第2のパーティングラインの位置まで凹面を被覆していることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、パーティングラインは、取付対象部材に取り付けられた状態で取付対象部材によって隠れる位置にあることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、一対の第1合わせ面と、一対の第1合わせ面の第1内側端縁から型合わせ方向に凸設され、成形体の凹面に対応した外面となる内側成形面とを有する第1の金型と、
一対の第1合わせ面と型合わせ方向に対向して配置される一対の第2合わせ面と、一対の第2合わせ面の第2内側端縁から型合わせ方向に凹設され、成形体の凸面に対応した外面となる外側成形面とを有する第2の金型と、を用いて、
外側樹脂材料を第2の金型の外側成形面に塗布し、
第1の金型の内側成形面に、樹脂材料で形成され、外側成形面側が凸面、内側成形面側が凹面となる板状の基材を固定した状態で、第1の金型と第2の金型とを型締めして内側成形面と外側成形面との間に形成されるキャビティ内に内側樹脂材料を射出して、基材の凸面に、内側樹脂材料からなる内側層と、外側樹脂材料からなる外側層とを被覆してなる成形体を成形する方法である。
そして、外側成形面における何れか一方の第2合わせ面側で第2内側端縁と連続する所定の領域が、キャビティ側に突出するアンダーカット部となり、
外側樹脂材料を外側成形面に塗布する工程では、外側樹脂材料を、アンダーカット部を含む外側成形面と、アンダーカット部に連続する一方の第2合わせ面とに塗布し、
成形体をキャビティから取り出した後、外側層を、第2内側端縁の位置又は第2内側端縁に連続する一方の第2合わせ面の所定の位置で切除することを特徴とする。
第2の構成の別の態様は、上記構成において、内側成形面におけるアンダーカット部と反対側の第1合わせ面側には、キャビティの形成領域を越えて第1内側端縁に連続する第1余長成形部が形成されると共に、内側成形面には、基材の端部が配置されてキャビティの端部を形成する凹部が形成されて、
外側成形面におけるアンダーカット部と反対側の第2合わせ面側には、キャビティの形成領域を越えて第2内側端縁に連続し、第1余長成形部と対向する第2余長成形部が形成されており、
外側樹脂材料を外側成形面に塗布する工程では、外側樹脂材料を、第2余長成形部にも塗布し、
成形体をキャビティから取り出した後、内側層及び外側層のうちの第1、第2余長成形部側の端部を基材の凹面側に折り返して凹面に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、表面に外側樹脂材料による外側層が形成されていても、パーティングラインによる見栄えの悪化を防止して意匠性を向上させることができる。また、外側樹脂材料は第2の金型にのみ塗布すれば良いため、製造工程の短縮化及びコストダウンを図ることができる。
また、内側層におけるアンダーカット部の凹面側の端部にパーティングラインが形成されて、外側層は、パーティングラインの位置まで被覆しているので、パーティングラインが成形体の裏側に近い位置となり、目立ちにくくなる。
さらに、基材の他方の端部側では、内側層及び外側層が基材の凹面側へ折り返されて、第2のパーティングラインの位置まで凹面を被覆しているので、他方の端部側で第2の金型にアンダーカット部を設けてパーティングラインを凹面側へずらさなくても、パーティングラインを裏側へ隠すことができる。
第1の構成の別の態様によれば、上記効果に加えて、パーティングラインは、取付対象部材に取り付けられた状態で取付対象部材によって隠れる位置にあるので、パーティングラインにバリが発生してもバリ処理が不要若しくはバリ処理の仕上げレベルを簡略化できる。このため、製造工程の短縮化を図ることができる。
第2の構成の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側層及び外側層のうちの第1、第2余長成形部側の端部を基材の凹面側に折り返して凹面に固定するので、基材の他方の端部側でもパーティングラインを外部から見えない位置に隠すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)~(C)は、成形体の成形方法を示す断面説明図である。
【
図2】成形体を取付対象部材に取り付けた状態を示す断面説明図である。
【
図3】(A)~(C)は、従来の成形体の成形方法を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本開示の第2の構成に係る成形体の成形方法の一例を示す説明図である。
図1(A)は、上型10と下型20とを示している。上型10は、一対の上合わせ面11A,11Bと、上合わせ面11A,11Bのそれぞれの内側端縁から型合わせ方向である下方に凸設される内側成形面12と、を備えている。内側成形面12における
図1(A)の左側には、後述する基材の裏側に回り込む内側層及び外側層を形成するための左側凹部13が形成されている。内側成形面12における
図1(A)の右側には、基材の右端部が配置される右側凹部14と、右側凹部14から右側に延びて内側層及び外側層の余長分を形成するための上余長成形凹部15と、が形成されている。
下型20は、一対の下合わせ面21A,21Bと、下合わせ面21A,21Bのそれぞれの内側端縁から下方に凹設される外側成形面22と、を備えている。外側成形面22における
図1(A)の左側で、下合わせ面21Aと連続する領域には、内側に突出するアンダーカット部23が形成されている。外側成形面22における
図1(A)の右側で、下合わせ面21Bと連続する領域には、上型10の上余長成形凹部15に対向する下余長成形面24が形成されている。
【0012】
この上型10及び下型20を用いて、基材の表面に、ウレタンによる内側層と、塗料による外側層とを成形するインモールドコーティングを行う場合、まず、
図1(A)に示すように、下型20における下合わせ面21A,21B及び外側成形面22に、塗料25(例えばウレタン系塗料)を塗布する。
次に、
図1(B)に示すように、上型10の内側成形面12に基材30を取り付ける。この基材30は、PPやABS等の樹脂材料で予め形成され、一方が凸面30a、他方が凹面30bとなる横断面台形状の板体で、裏面となる凹面30bが内側成形面12に取り付けられる。
こうして基材30を取り付けた上型10を下型20に型合わせして型締めする。すると、基材30の下側で上型10と下型20との間にキャビティ35が形成される。このキャビティ35は、基材30の左端部31側では、上型10の左側凹部13と連続している。基材30の右端部32側では、上型10の上余長成形凹部15と連続している。
【0013】
この状態でキャビティ35にウレタンの原液を、例えばRIM成形等で射出成形して硬化後、脱型する。すると、
図1(C)に示すように、基材30の凸面30aには、ウレタンによる内側層36と、塗料25の転写による外側層37とが形成される。なお、下型20の左側にアンダーカット部23があっても、内側層36はウレタンであるため、脱型時には内側層36が変形してアンダーカット部23との干渉を回避できる。基材30の左端部31もアンダーカット部23と干渉しない形状又は肉厚となっている。
【0014】
脱型した基材30の左端部31では、内側層36が裏側まで回り込んで形成されると共に、外側層37の余長分37aが、左側のパーティングラインPL1から突出する。この余長分37aは、アンダーカット部23により内側層36及び外側層37に形成されるアンダーカット部23aの凹面30b側の端部から突出している。
一方、基材30の右端部32では、上余長成形凹部15と下余長成形面24との間に形成される内側層36及び外側層37の余長分38が基材30から突出する。右側のパーティングラインPL2は、余長分38における内側層36の端部の位置に形成されて、外側層37のみがさらに突出する。
よって、左端部31では、外側層37の余長分37aをパーティングラインPL1で切除するか、或いは下合わせ面21A上の所定の位置となる箇所で余長分37aを短く切除し、残った余長分37aを裏側に折り返して内側層36に接着するかする。
一方、右端部32では、余長分38の外側層37をパーティングラインPL2の位置で切除して、残った余長分38を裏側に折り返して基材30に接着する。すると、
図2に示すように、基材30の凸面30a側の表面及び左右端部31,32の裏側にかけて内側層36及び外側層37で被覆された成形体40が得られる。
【0015】
この成形体40を、取付対象部材41に、凸面30aを外側(
図2での下側)に向けて両端が当接又は近接する状態で取り付ける。
図2は、左側の余長分37aを裏側に折り返して内側層36に接着した例を示しているが、余長分37aをパーティングラインPL1で切除しても、左側の端部では、パーティングラインPL1が取付対象部材41との間に位置し、右側の端部では、パーティングラインPL2が裏側に隠れる。よって、パーティングラインPL1,PL2が外部に露出しないため、パーティングラインPL1,PL2にバリが生じても除去する必要がなくなる。或いはバリ処理を行っても仕上げレベルを簡略化することができる。
【0016】
このように、第1の構成に係る成形体40は、樹脂材料で形成され、厚み方向の一方の面が凸面30a、他方の面が凹面30bとなる板状の基材30と、ウレタン(第2の樹脂材料の一例)で形成され、基材30の少なくとも凸面30aを被覆する内側層36と、塗料25(第3の樹脂材料の一例)で形成され、内側層36の少なくとも凸面30aの被覆領域を被覆する外側層37とを含んでなり、取付対象部材41へ凸面30aを外側に向けて取り付けられる。
そして、厚み方向と交差する方向での基材30の左右端部31,32(両端部の一例)のうちの左端部31(何れか一方の端部の一例)において、左端部31を被覆する内側層36には、射出成形によるアンダーカット部23aが形成されており、外側層37は、少なくともアンダーカット部23aまで被覆している。
よって、インモールドコーティングにより表面に塗料25による外側層37が形成されていても、パーティングラインPL1による見栄えの悪化を防止して意匠性を向上させることができる。また、塗料25は下型20にのみ塗布すれば良いため、製造工程の短縮化及びコストダウンを図ることができる。
【0017】
内側層36におけるアンダーカット部23aの凹面30b側の端部に、パーティングラインPL1が形成されており、外側層37は、パーティングラインPL1の位置まで被覆している。
よって、パーティングラインPL1が成形体40の裏側に近い位置となり、目立ちにくくなる。
パーティングラインPL1は、取付対象部材41に取り付けられた状態で取付対象部材41によって隠れる位置にある。
よって、パーティングラインPL1にバリが発生してもバリ処理が不要若しくはバリ処理の仕上げレベルを簡略化できる。このため、製造工程の短縮化を図ることができる。
基材30の右端部32(他方の端部の一例)を被覆する内側層36は、基材30の凹面30b側へ折り返されて凹面30bを被覆しており、凹面30bを被覆している内側層36の端部に、パーティングラインPL2(第2のパーティングラインの一例)が形成されていると共に、外側層37も、基材30の凹面30b側へ折り返されて、パーティングラインPL2の位置まで凹面30bを被覆している。
よって、左端部31のように下型20にアンダーカット部23を設けてパーティングラインPL1を凹面30b側へずらさなくても、パーティングラインPL2を裏側へ隠すことができる。
【0018】
このように、第2の構成に係る成形体40の成形方法は、一対の上合わせ面11A,11B(第1合わせ面の一例)と、一対の上合わせ面11A,11Bの内側端縁(第1内側端縁の一例)から型合わせ方向に凸設され、成形体40の凹面に対応した外面となる内側成形面12とを有する上型10(第1の金型の一例)と、一対の上合わせ面11A,11Bと型合わせ方向に対向して配置される一対の下合わせ面21A,21B(第2合わせ面の一例)と、一対の下合わせ面21A,21Bの内側端縁(第2内側端縁の一例)から型合わせ方向に凹設され、成形体40の凸面に対応した外面となる外側成形面22とを有する下型20(第2の金型の一例)と、を用いる。
そして、塗料54(外側樹脂材料の一例)を下型20の外側成形面22に塗布し、
上型10の内側成形面12に、樹脂材料で形成され、外側成形面22側が凸面30a、内側成形面12側が凹面30bとなる板状の基材30を固定した状態で、上型10と下型20とを型締めして内側成形面12と外側成形面22との間に形成されるキャビティ35内にウレタン(内側樹脂材料の一例)を射出して、基材30の凸面30aに、ウレタンからなる内側層36と、塗料54からなる外側層37とを被覆してなる成形体40を成形する。
【0019】
さらに、この成型方法では、外側成形面22における下合わせ面21A側(何れか一方の第2合わせ面側の一例)で内側端縁と連続する所定の領域が、キャビティ35側に突出するアンダーカット部23となり、
塗料54を外側成形面22に塗布する工程では、塗料54を、アンダーカット部23を含む外側成形面22と、アンダーカット部23に連続する下合わせ面21Aとに塗布し、
成形体40をキャビティ35から取り出した後、外側層37を、内側端縁の位置又は内側端縁に連続する下合わせ面21Aの所定の位置で切除する。
この方法によれば、インモールドコーティングにより表面に塗料25による外側層37が形成されていても、パーティングラインPL1による見栄えの悪化を防止して意匠性を向上させることができる。また、塗料25は下型20にのみ塗布すれば良いため、製造工程の短縮化及びコストダウンを図ることができる。
【0020】
特に、内側成形面12におけるアンダーカット部23と反対側の上合わせ面11B側には、キャビティ35の形成領域を越えて内側端縁に連続する上余長成形凹部15(第1余長成形部の一例)が形成されると共に、内側成形面12には、基材30の端部が配置されてキャビティ35の端部を形成する右側凹部14(凹部の一例)が形成されて、
外側成形面22におけるアンダーカット部23と反対側の下合わせ面21B側には、キャビティ35の形成領域を越えて内側端縁に連続し、上余長成形凹部15と対向する下余長成形面24(第2余長成形部の一例)が形成されており、
塗料25を外側成形面22に塗布する工程では、塗料25を、下余長成形面24にも塗布し、
成形体40をキャビティ35から取り出した後、内側層36及び外側層37の余長分38(第1、第2余長成形部側の端部の一例)を基材30の凹面30b側に折り返して凹面30bに固定する。
よって、基材30の右側でもパーティングラインPL2を外部から見えない位置に隠すことができる。
【0021】
以下、本開示の変更例について説明する。
内側層に形成されるアンダーカット部は、上記形態と反対側の端部に設けられていてもよい。アンダーカット部の領域や角度は、適宜変更できる。
基材の形状や厚み等は、上記形態に限らない。例えば、基材は、横断面台形状でなく、横断面円弧状や横断面円形状、横断面三角形状等であってもよい。基材は、薄肉部分と厚肉部分とが混在するものであってもよい。基材は、2つの金型で成形できれば突出部分があってもよい。
第1の金型及び第2の金型の形状も変更可能である。例えば、上記形態の上型と下型とを上下逆にして、上型に設けた外側成形面に塗料を塗布し、下型に設けた内側成形面に基材を固定して成形を行ってもよい。
2つの金型の配置は、上下に限らず、左右であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
10・・上型、11A,11B・・上合わせ面、12・・内側成形面、13・・左側凹部、14・・右側凹部、15・・上余長成形凹部、20・・下型、21A,21B・・下合わせ面、22・・外側成形面、23・・アンダーカット部、24・・下余長成形面、25・・塗料、30・・基材、31・・左端部、32・・右端部、35・・キャビティ、36・・内側層、37・・外側層、40・・成形体、41・・取付対象部材、PL1,PL2・・パーティングライン。