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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】エレベータの巻上装置及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20241001BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B66B11/08 F
B66B11/08 A
H02K5/173 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023089351
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田平 尚己
(72)【発明者】
【氏名】中山 陽介
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153486(JP,A)
【文献】特開2011-045200(JP,A)
【文献】実開昭51-149811(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0013516(US,A1)
【文献】特開2011-236014(JP,A)
【文献】特開2004-286081(JP,A)
【文献】特開2013-009461(JP,A)
【文献】実開平04-121371(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00-11/08
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体中央部を備える本体と、
前記本体中央部の前面から突出する軸部と、
前記軸部の外周に配置される軸受と、
前記軸受を介して前記軸部を中心に回転する回転部材と、
前記回転部材と一体として回転する綱車と、
前記本体中央部の前面であって前記軸部よりも外側に形成され、前記本体中央部の前面から窪んだ円環状の油溜め部と、
前記油溜め部の下端と前記本体中央部の背面とを連通する排油経路と、
前記排油経路内の油脂を前記背面へ誘導する油誘導手段と、を備え、
前記油誘導手段は、前記排油経路内に前記背面へ向かう気流を発生させる吸引装置と、前記排油経路と前記吸引装置との間に配置される油脂吸着部と、を備える、エレベータの巻上装置。
【請求項2】
前記油誘導手段は、前記排油経路の出口と前記吸引装置の吸入口の周囲に配置されるとともに、前記排油経路の出口と前記吸引装置の吸入口とに連通する密閉空間を画定するカバーを備える、請求項1に記載のエレベータの巻上装置。
【請求項3】
本体中央部を備える本体と、
前記本体中央部の前面から突出する軸部と、
前記軸部の外周に配置される軸受と、
前記軸受を介して前記軸部を中心に回転する回転部材と、
前記回転部材と一体として回転する綱車と、
前記本体中央部の前面であって前記軸部よりも外側に形成され、前記本体中央部の前面から窪んだ円環状の油溜め部と、
前記油溜め部の下端と前記本体中央部の背面とを連通する排油経路と、
前記排油経路内の油脂を前記背面へ誘導する油誘導手段と、を備える、エレベータの巻上装置であって、
熱を生じる発熱部と、
前記本体と前記回転部材との間の隙間で形成され、前記排油経路の入口と前記巻上装置の外部とを連通する通気経路と、を備え、
前記油誘導手段は、前記排油経路内に前記背面へ向かう気流を発生させる吸引装置を備え、
前記発熱部は、前記通気経路内に配置される、エレベータの巻上装置。
【請求項4】
前記油誘導手段は、前記排油経路の出口と前記吸引装置の吸入口の周囲に配置されるとともに、前記排油経路の出口と前記吸引装置の吸入口とに連通する密閉空間を画定するカバーを備える、請求項3に記載のエレベータの巻上装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータの巻上装置を備えるエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータの巻上装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの巻上装置は、ロープを介してかごや釣合錘を吊り下げる綱車を備えている。綱車を回転させるため、巻上装置の固定部との間には軸受(ベアリング)が設けてある。軸受には内輪と外輪があり、その間に球形や円柱形の部品を複数挟むことによって、内輪と外輪は軸が一致したまま個別に回転できる。軸受の内部には、回転を滑らかにするための潤滑剤として、グリスや油(以下、油脂)が封入される。
【0003】
ところで、この油脂は、軸受より漏れる場合がある。軸受の付近にはシール材等が設けられているが、油脂の漏れを完全に抑えることはできない。漏れた油脂が巻上装置の内部を伝わり、ケーブルや、モータのコイルに付着すると、その表面の絶縁体やコーティングによる絶縁性能を低下させる可能性があるため、短絡による故障や、漏洩電流による他の装置への影響が発生する恐れがある。さらに、油脂がブレーキディスクに回り込むと、制動部によって綱車を十分に制動することができなくなる。
【0004】
油脂が不要な方向へ伝わらないように、油脂だまりを設ける方法があるが、巻上装置が大型化する。そこで、油脂を巻上装置の外部へ排出するための排油経路を設けることが考えられる(例えば、特許文献1)。しかしながら、例えば、油脂が排油経路内に溜まったり、固着したりした場合に、油脂を外部へ適切に排出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-153486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、軸受から漏れた油脂を外部へ適切に排出することができるエレベータの巻上装置及びエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
エレベータの巻上装置は、本体中央部を備える本体と、前記本体中央部の前面から突出する軸部と、前記軸部の外周に配置される軸受と、前記軸受を介して前記軸部を中心に回転する回転部材と、前記回転部材と一体として回転する綱車と、前記本体中央部の前面であって前記軸部よりも外側に形成され、前記本体中央部の前面から窪んだ円環状の油溜め部と、前記油溜め部の下端と前記本体中央部の背面とを連通する排油経路と、前記排油経路内の油脂を前記背面へ誘導する油誘導手段と、を備える。
【0008】
また、エレベータは、前記のエレベータの巻上装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るエレベータの概略図
図2】同実施形態に係る巻上装置の正面図
図3図2のIII-III線断面図
図4図3のIV領域拡大図
図5図4のV領域拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、エレベータの巻上装置及びエレベータにおける一実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0011】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、人が乗るためのかご2と、かご2に接続されるかごロープ3と、かごロープ3に接続される釣合錘4と、かごロープ3を駆動してかご2及び釣合錘4を上下方向D3に走行させる巻上装置5とを備えていてもよい。また、エレベータ1は、例えば、かご2を案内するかごレール6と、釣合錘4を案内する錘レール7と、かご2の走行速度を検出する調速機8と、エレベータ1の各部を制御する処理部9とを備えていてもよい。
【0012】
また、本実施形態においては、かごロープ3の一端がかご2に固定され、かごロープ3の他端が釣合錘4に固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ3の両端がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ3がかご2のシーブ及び釣合錘4のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ3がかご2及び釣合錘4にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0013】
また、本実施形態に係るエレベータ1においては、巻上装置5は、昇降路X1の上部に設けられる機械室X2の内部に配置されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、巻上装置5は、昇降路X1の内部に配置されている、という構成でもよい。
【0014】
調速機8は、例えば、かご2に接続される無端環状のガバナロープ8aと、かご2の速度を検出するために、ガバナロープ8aが巻き掛けられるガバナ車8bと、ガバナロープ8aに張力を付与するために、ガバナロープ8aに吊り下げられる張り車8cと、ガバナロープ8aを把持する把持部8dとを備えていてもよい。これにより、調速機8は、ガバナ車8bの回転速度に基づいて、かご2の走行速度を検出する。
【0015】
かご2は、例えば、かごレール6を挟むことによってかご2を停止させる停止部2aと、調速機8の動作を停止部2aへ伝達する伝達部2bとを備えていてもよい。そして、例えば、かご2の速度が設定速度を超えた場合に、把持部8dがガバナロープ8aを把持し、ガバナロープ8aの走行が停止されることによって、かご2の停止部2aは、作動する、という構成でもよい。
【0016】
図2及び図3に示すように、巻上装置5は、例えば、かごロープ3が巻き掛けられる綱車10と、綱車10と一体的に回転するディスク11と、綱車10を制動するために、ディスク11の回転軸方向である第1横方向D1でディスク11を挟む制動部12とを備えていてもよい。なお、第1横方向D1のうち、第1側D11は、前面側D11ともいい、第2側D12は、背面側D12ともいう。
【0017】
綱車10の回転中心は、例えば、第1横方向D1視において、ディスク11の回転中心と同じになっていてもよい。また、ディスク11の外径は、例えば、綱車10の外径よりも大きくなっており、円環状で且つ板状に形成されていてもよい。
【0018】
また、図3に示すように、巻上装置5は、例えば、機械室X2に固定される本体13と、本体13から前面側D11に突出する軸部14と、軸部14を中心に回転する回転部材15とを備えていてもよい。また、巻上装置5は、軸部14の外周に配置される軸受16を備えていてもよい。回転部材15は、軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。
【0019】
本体13は、例えば、機械室X2の設置面に固定されるベース部18と、ベース部18から上下方向D3に延びるフレーム部19とを備えていてもよい。なお、ベース部18と機械室X2の設置面との固定方法は、特に限定されない。
【0020】
制動部12は、例えば、フレーム部19に取り付けられている、という構成でもよい。なお、制動部12の個数は、特に限定されないが、例えば、本実施形態においては、四つとしている。
【0021】
また、本体13は、ハウジング部20を備えていてもよい。ハウジング部20は、フレーム部19から背面側D12に向かって窪んだ環状凹部であり、後述するステータ17を収容する。ハウジング部20は、円筒状の外筒部20aと、円筒状の内筒部20bと、外筒部20aと内筒部20bの背面側D12の端部同士を接続する円環状の底部20cと、を備えていてもよい。外筒部20aと内筒部20bは、同軸上に配置されている。
【0022】
本体13は、ハウジング部20の外筒部20aの内周面に固定されたステータ17を備えていてもよい。ステータ17は、周方向に間隔をあけて設けられた複数のコイル17aを備えている。ステータ17は、後述のロータ部15b(永久磁石15d)とともにモータを構成する。ハウジング部20の外筒部20aの外周面は、モータから生じる熱を効果的に放熱するため複数の突条を備えていてもよい。外筒部20aの下部は、ベース部18と接続されている。
【0023】
本体13は、ハウジング部20の内周側に円環部21を備えている。円環部21は、本体13の中央部に配置されている。円環部21の前面21aは、第1横方向D1においてフレーム部19の前面と略面一となっている。円環部21の外周縁は、内筒部20bの前面側D11の端部と接続されている。また、円環部21の内周縁は、軸部14の背面側D12の端部と接続されている。すなわち、軸部14は、円環部21の前面21aから前面側D11へ向かって突出している。円環部21は、軸部14と同軸上に配置されてもよい。
【0024】
本体13は、図5に示すように、円環部21の前面21aから窪んだ円環状の油溜め部22を備えている。油溜め部22は、円環部21の前面21aであって軸部14よりも外側に形成されている。油溜め部22は、例えば、円環部21の前面21aを切削加工して形成される。油溜め部22の底面22aは、第2横方向D2及び上下方向D3に沿って配置されている。また、油溜め部22の外周面22b(円環部21の前面21aと油溜め部22の底面22aとを接続する面)は、前面側D11に向かってテーパ状に縮径されている。これにより、油溜め部22に溜まった油脂が前面側D11へ流れ落ちることを抑制できる。
【0025】
本体13は、油溜め部22の下端と円環部21の背面21bとを連通する排油経路23を備えている。排油経路23は、円環部21を第1横方向D1に貫通する貫通孔である。排油経路23は、例えば、直径5~10mmの円孔である。排油経路23は、特に限定されないが、第1横方向D1に沿って形成されている。排油経路23は、油溜め部22の底面22aに開口する入口23aと、円環部21の背面21bに開口する出口23bとを備えている。
【0026】
軸部14は、図3に示すように、円環部21から前面側D11に向かって延びている。軸部14の外周には軸受16が配置されている。軸受16は、第1横方向D1に沿って複数設けられてもよい。軸受16は、例えば、本実施形態のように、2つ設けられてもよい。
【0027】
軸部14と本体13は、例えば、鋳造などによって一体成形されてもよい。なお、軸部14は、中心に貫通孔が形成されており、不図示のエンコーダが配置されてもよい。
【0028】
回転部材15は、図3に示すように、軸受16に嵌合する軸受嵌合部15aと、モータを構成する円筒状のロータ部15bと、ディスク11を構成するディスク部15cとを備えていてもよい。
【0029】
回転部材15は、軸受16を介して軸部14に回転自在に軸支されている。また、綱車10は、軸受嵌合部15aの外周面に固定されており、回転部材15と一体として回転する。すなわち、綱車10は、軸部14に軸受16及び回転部材15を介して回転自在に軸支されている。なお、回転部材15と綱車10は一体に構成されてもよい。
【0030】
ロータ部15bは、軸受嵌合部15aの外周部からハウジング部20の底部20cに向かって延びている。
【0031】
ディスク部15cは、ロータ部15bの外周側の根元に配置されている。また、ディスク部15cは、軸受嵌合部15aの外周側に円環状に形成されている。制動部12は、ディスク部15cを第1横方向D1の両側から挟むことにより、綱車10にブレーキを付与することができる。
【0032】
回転部材15は、ロータ部15bの外周面に固定された永久磁石15dを備えている。永久磁石15dは、ステータ17の内周側に、ステータ17と径方向に隙間をあけて配置される。また、永久磁石15dは、ディスク部15cよりも背面側D12に配置されている。
【0033】
軸受嵌合部15aは、軸受16を介して軸部14と連結されている。軸受16が配置される軸受嵌合部15aと軸部14との間の空間は、油脂が充填されており、第1横方向D1の両端において、オイルシール15e,15fによって封じられている。
【0034】
また、軸受嵌合部15aの背面側D12の端面と、円環部21の前面21aとの間には、オイルシール15gが配置されている。より具体的には、オイルシール15gは、図5に示すように、軸受嵌合部15aの背面側D12の端面と、油溜め部22の底面22aとの間に配置されている。オイルシール15gは、回転部材15とともに回転する。オイルシール15fから漏れた油脂は、オイルシール15gと油溜め部22の底面22aとの間の隙間を通って落下し、その後、油溜め部22に回収される。油溜め部22に回収された油脂は、排油経路23を通して円環部21の背面側D12に排出される。
【0035】
巻上装置5は、図4及び図5に示すように、排油経路23内の油脂を背面側D12へ誘導する油誘導手段24を備えている。これにより、油脂が排油経路23内に溜まるのを抑制し、油脂を排油経路23を通して外部へ適切に排出することができる。
【0036】
油誘導手段24は、吸引装置25を備えていてもよい。吸引装置25は、吸引機能を有しており、例えば、ファン、ブロア、ポンプ等である。本実施形態の吸引装置25はファンである。吸引装置25は、ハウジング部20の内筒部20bの内周面に隙間なく固定されている。
【0037】
吸引装置25は、円環部21の背面21bに対向して配置されている。吸引装置25は、好ましくは、排油経路23の出口23bに対向して配置される。吸引装置25は、前面側D11に位置して空気を吸入する吸入口25aと、背面側D12に位置して空気を排出する排出口25bと、を有する。これにより、吸引装置25は、排油経路23内に出口23bへ向かう気流を発生させることができる。吸引装置25は、常時又は間欠的に駆動する。ここで、吸引装置25が間欠的に駆動するとは、数秒~数十秒ごとに駆動と停止を繰り返すことである。また、吸引装置25は、回転部材15の回転中に駆動してもよく、回転部材15の停止中に駆動してもよい。
【0038】
また、油誘導手段24は、排油経路23の出口23bと吸引装置25の吸入口25aの周囲に配置されるカバー26を備えていてもよい。カバー26は、例えば、本実施形態のように、吸引装置25を上方から覆う断面U字状の部材であってもよい。カバー26の周縁は、例えばゴムで形成されたシール部材で覆われており、円環部21及び内筒部20bに対して密着している。すなわち、カバー26は、円環部21と内筒部20bとともに、排油経路23の出口23bと吸引装置25の吸入口25aとに連通する密閉空間を画定する。これにより、吸引装置25は排油経路23内に強い気流を発生させることができる。
【0039】
また、油誘導手段24は、排油経路23と吸引装置25との間に配置される油脂吸着部27を備えていてもよい。油脂吸着部27は、例えば、本実施形態のように、内筒部20bの内周面の下端に配置される。油脂吸着部27は、例えば、シート状のスポンジで形成される。これにより、油脂吸着部27が排油経路23から排出された油脂を吸着するため、吸引装置25に油脂が付着することを防止でき、保守性が向上する。油脂吸着部27は、交換可能に構成される。油脂吸着部27の交換を容易にするため、例えば、カバー26は本体13に対して着脱可能とすることが好ましい。
【0040】
巻上装置5は、図4に示すように、本体13と回転部材15との間の隙間で形成される通気経路28を備えている。通気経路28は、例えば、本実施形態のように、本体13の円環部21と回転部材15の軸受嵌合部15aとの間の隙間、本体13のハウジング部20と回転部材15のロータ部15bとの間の隙間、及び、本体13のベース部18と回転部材15のディスク部15cとの間の隙間で形成されてもよい。
【0041】
通気経路28は、図4に示すように、本体13のベース部18と回転部材15のディスク部15cとの間の隙間であって巻上装置5の外部に露出する吸気口28aを有する。また、排油経路23の入口23aは、通気経路28に開口している。すなわち、通気経路28は、排油経路23の入口23aと巻上装置5の外部とを連通している。これにより、吸引装置25によって生じた排油経路23内の気流によって、通気経路28内には吸気口28aから空気が外部より吸入される。吸気口28aから吸入された空気は、図4に矢印で示すように、通気経路28内を流れて排油経路23の入口23aに達した後、排油経路23を介して本体13の背面側D12に排出される。
【0042】
通気経路28内、具体的には、本体13のハウジング部20と回転部材15のロータ部15bとの間の隙間には、モータを構成するステータ17及び永久磁石15dが配置されている。そのため、ステータ17は、モータの回転に伴って発熱するが、通気経路28内を流れる空気によって冷却される。
【0043】
[1]
以上より、エレベータ1の巻上装置5は、本体中央部(本実施形態では、円環部21)を備える本体13と、前記本体中央部の前面(本実施形態では、円環部21の前面21a)から突出する軸部14と、前記軸部14の外周に配置される軸受16と、前記軸受16を介して前記軸部14を中心に回転する回転部材15と、前記回転部材15と一体として回転する綱車10と、前記本体中央部の前面(本実施形態では、円環部21の前面21a)であって前記軸部14よりも外側に形成され、前記本体中央部の前面(本実施形態では、円環部21の前面21a)から窪んだ円環状の油溜め部22と、前記油溜め部22の下端と前記本体中央部の背面(本実施形態では、円環部21の背面21b)とを連通する排油経路23と、前記排油経路23内の油脂を前記背面(本実施形態では、円環部21の背面21b)へ誘導する油誘導手段24と、を備える、という構成が好ましい。
【0044】
斯かる構成によれば、排油経路23内の油脂が油誘導手段24によって本体13の背面側D12へ誘導されるため、油脂が排油経路23内に溜まるのを抑制できる。その結果、軸受16から漏れた油脂を排油経路23を通して外部へ適切に排出することができる。
【0045】
[2]
また、上記[1]のエレベータ1の巻上装置5においては、前記油誘導手段24は、前記排油経路23内に前記背面(本実施形態では、円環部21の背面21b)へ向かう気流を発生させる吸引装置25を備える、という構成が好ましい。
【0046】
斯かる構成によれば、排油経路23内の油脂が、吸引装置25による気流によって本体13の背面側D12へ誘導されるため、軸受16から漏れた油脂を排油経路23を通して外部へ適切に排出することができる。
【0047】
[3]
また、上記[2]のエレベータ1の巻上装置5においては、前記油誘導手段24は、前記排油経路23と前記吸引装置25との間に配置される油脂吸着部27を備える、という構成が好ましい。
【0048】
斯かる構成によれば、油脂吸着部27が排油経路23から排出された油脂を吸着するため、吸引装置25に油脂が付着することを防止でき、保守性が向上する。
【0049】
[4]
また、上記[2]又は[3]のエレベータ1の巻上装置5においては、前記油誘導手段24は、前記排油経路23の出口23bと前記吸引装置25の吸入口25aの周囲に配置されるとともに、前記排油経路23の出口23bと前記吸引装置25の吸入口25aとに連通する密閉空間を画定するカバー26を備える、という構成が好ましい。
【0050】
斯かる構成によれば、吸引装置25は、排油経路23内に本体13の背面側D12へ向かう強い気流を発生させることができるため、排油経路23内の油脂を本体13の背面側D12へ確実に誘導することができる。
【0051】
[5]
また、上記[2]~[4]の何れか1つのエレベータ1の巻上装置5においては、熱を生じる発熱部(本実施形態では、ステータ17)と、前記本体13と前記回転部材15との間の隙間で形成され、前記排油経路23の入口23aと前記巻上装置5の外部とを連通する通気経路28と、を備え、前記発熱部(本実施形態では、ステータ17)は、前記通気経路28内に配置される、という構成が好ましい。
【0052】
斯かる構成によれば、通気経路28内を流れる空気によって発熱部を冷却することができる。
【0053】
[6]
また、エレベータ1は、上記[1]~[5]の何れか1つの巻上装置5を備える、という構成が好ましい。
【0054】
斯かる構成によれば、軸受16から漏れた油脂を排油経路23を通して外部へ適切に排出することができる。
【0055】
なお、エレベータ1及び巻上装置5は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及び巻上装置5は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0056】
(A)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、油誘導手段24は、排油経路23内に円環部21の背面21bへ向かう気流を発生させる吸引装置25を備える、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、油誘導手段24は、排油経路23内に挿入され、排油経路23内の油脂を掻き出すスクリューを備える、という構成でもよい。また、例えば、油誘導手段24は、排油経路23に形成された雌ねじ状の内壁と、排油経路23内に挿入される雄ねじ状のロータと、を有する一軸偏心ねじポンプを備える、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、吸引装置25は、円環部21の背面21bに対向して配置される、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、吸引装置25は、ハウジング部20の内筒部20bの内周面に対向して配置される、という構成でもよい。このとき、カバー26は、円環部21の背面21bに対向する壁面も有し、排油経路23の出口23bと吸引装置25の吸入口25aとに連通する密閉空間を画定する。
【0057】
(B)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、油誘導手段24は、排油経路23と吸引装置25との間に配置される油脂吸着部27を備える、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、油誘導手段24は、排油経路23と吸引装置25との間に配置される第2の油溜め部を備える、という構成でもよい。第2の油溜め部としては、例えば、内筒部20bの内周面の下端に形成される凹部であってもよい。
【0058】
(C)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、油誘導手段24は、排油経路23の出口23bと吸引装置25の吸入口25aの周囲に配置されるとともに、排油経路23の出口23bと吸引装置25の吸入口25aとに連通する密閉空間を画定するカバー26を備える、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、油誘導手段24は、排油経路23の出口23bと近接して対向配置される吸引装置25を備える、という構成でもよい。すなわち、油誘導手段24は、必ずしもカバー26を必要としない。
【0059】
(D)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、熱を生じるステータ17と、本体13と回転部材15との間の隙間で形成され、排油経路23の入口23aと巻上装置5の外部とを連通する通気経路28と、を備え、ステータ17は、通気経路28内に配置される、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、ステータ17は、通気経路28内に配置されていなくてもよい。また、例えば、ステータ17以外の発熱部が、通気経路28内に配置されてもよい。
【0060】
(E)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、排油経路23は、第1横方向D1に沿って形成されている、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、排油経路23は、入口23aから出口23bへ向かって下り傾斜となるように形成されている、という構成でもよい。
【0061】
(F)上記実施形態に係るエレベータ1の巻上装置5においては、制動部12がディスク部15cを第1横方向D1の両側から挟むことにより、綱車10にブレーキを付与する、という構成である。しかしながら、エレベータ1の巻上装置5は、斯かる構成に限られない。例えば、ブレーキシューがブレーキドラムを押圧することにより、綱車10にブレーキを付与する、という構成でもよい。
【0062】
(G)上記実施形態に係るエレベータ1においては、巻上装置5は、昇降路X1の上部に設けられる機械室X2の内部に配置されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、巻上装置5は、昇降路X1の内部に配置されている、という構成でもよい。このとき、巻上装置5は、図3の上下を反対として使用されてもよい。巻上装置5が上下を反対として使用される場合、例えば、本体13のベース部18が、昇降路X1内の梁に下側から固定される。このとき、詳細な説明は省略するが、図3の巻上装置5において、排油経路23及び油誘導手段24は、軸部14を中心として上下反対の位置に設けられ、巻上装置5が固定された状態にて軸部14よりも下方に位置するように構成される。
【符号の説明】
【0063】
1…エレベータ、2…かご、2a…停止部、2b…伝達部、3…かごロープ、4…釣合錘、5…巻上装置、6…かごレール、7…錘レール、8…調速機、8a…ガバナロープ、8b…ガバナ車、8c…張り車、8d…把持部、9…処理部、10…綱車、11…ディスク、12…制動部、13…本体、14…軸部、15…回転部材、15a…軸受嵌合部、15b…ロータ部、15c…ディスク部、15d…永久磁石、15e…オイルシール、15f…オイルシール、15g…オイルシール、16…軸受、17…ステータ、17a…コイル、18…ベース部、19…フレーム部、20…ハウジング部、20a…外筒部、20b…内筒部、20c…底部、21…円環部、21a…前面、21b…背面、22…油溜め部、22a…底面、22b…外周面、23…排油経路、23a…入口、23b…出口、24…油誘導手段、25…吸引装置、25a…吸入口、25b…排出口、26…カバー、27…油脂吸着部、28…通気経路、28a…吸気口、D1…第1横方向、D11…前面側、D12…背面側、D2…第2横方向、D3…上下方向、X1…昇降路、X2…機械室
【要約】
【課題】 軸受から漏れた油脂を外部へ適切に排出することができるエレベータの巻上装置及びエレベータを提供する。
【解決手段】 エレベータの巻上装置は、本体中央部を備える本体と、本体中央部の前面から突出する軸部と、軸部の外周に配置される軸受と、軸受を介して軸部を中心に回転する回転部材と、回転部材と一体として回転する綱車と、本体中央部の前面であって軸部よりも外側に形成され、本体中央部の前面から窪んだ円環状の油溜め部と、油溜め部の下端と本体中央部の背面とを連通する排油経路と、排油経路内の油脂を背面へ誘導する油誘導手段と、を備える。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5