(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20241001BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20241001BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/586
H01M50/595
H01M50/593
(21)【出願番号】P 2023104665
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2021536973の分割
【原出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019140287
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】菅野 寅治
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-273931(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106992320(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0105382(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/0587
H01M50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極が積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板が、外装缶に収容された二次電池において、
前記正極は、帯状の正極箔と正極活物質を有し、
前記正極箔は正極活物質被覆部と正極活物質非被覆部を有し、
前記負極は、帯状の負極箔と負極活物質を有し、
前記負極箔は負極活物質被覆部と負極活物質非被覆部を有し、
前記正極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端面の一方において、前記正極集電板と接合され、
前記負極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端面の他方において、前記負極集電板と接合され、
前記電極巻回体の側面部の一部からトップ側のエッジ部を経由して前記正極集電板の一部を覆う第1絶縁テープと、前記電極巻回体の側面部の一部からボトム側のエッジ部を経由して前記負極集電板の一部を覆う第2絶縁テープが設けられている二次電池。
【請求項2】
前記外装缶の開口部において、一又は複数の曲折部分の頂点を含むくびれ部を有し、
前記第1絶縁テープのうち、前記電極巻回体の側面部上での長さをa1(mm)とし、
前記くびれ部の頂点のうち、前記電極巻回体に最も近接した頂点から、前記第1絶縁テープの前記中心軸側の端部までの水平方向の長さをb1(mm)とするとき、
0.5≦b1 かつ 0.5≦a1
を満たす請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2絶縁テープのうち、前記電極巻回体の側面部上での長さをa2(mm)とし、
前記第2絶縁テープのうち、前記電極巻回体の端部上での長さをb2(mm)とするとき、
0.5≦b2 かつ 0.5≦a2
を満たす請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1絶縁テープの長さb3が前記電極巻回体の半径の1/2以下であり、及び/又は、
前記第2絶縁テープの長さb2が前記電極巻回体の半径の1/2以下である請求項1から3の何れかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極集電板と前記負極集電板の少なくとも一方は折り畳まれた帯状部を有し、
前記第1絶縁テープの端部は、前記正極集電板の折り畳まれた帯状部に接触せず、及び/又は、
前記第2絶縁テープの端部は、前記負極集電板の帯状部に接触していないことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記電極巻回体の側面部に貼り付けられた固定テープを有し、
前記第1絶縁テープ又は前記第2絶縁テープの少なくとも一方は、前記固定テープと重ならないように配置される請求項1から5の何れかに記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1絶縁テープ又は前記第2絶縁テープの少なくとも一方の厚さは、前記固定テープの厚さ以下である請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1絶縁テープ又は前記第2絶縁テープの少なくとも一方は、基材層の少なくとも一面に粘着層を有し、前記基材層の材質がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドのうち何れかで構成される粘着テープである請求項1から7の何れかに記載の二次電池。
【請求項9】
前記外装缶内にトップ側絶縁板が設けられており、
前記第1絶縁テープは、前記正極集電板と前記トップ側絶縁板の間に介在している請求項1から8の何れかに記載の二次電池。
【請求項10】
前記外装缶内にボトム側絶縁板が設けられており、
前記第2絶縁テープは、前記負極集電板と前記ボトム側絶縁板の間に介在している請求項1から9の何れかに記載の二次電池。
【請求項11】
前記正極活物質非被覆部の幅は、前記負極活物質非被覆部の幅よりも大きく、
前記正極及び負極の活物質非被覆部の端部はそれぞれ前記セパレータの端部よりも外側に突出しており、且つ、前記正極活物質非被覆部が前記セパレータの幅方向の一端から突出した部分の長さは、前記負極活物質非被覆部が前記セパレータの幅方向の他端から突出した部分の長さよりも大きい請求項1から10の何れかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極活物質非被覆部のうち、前記セパレータを挟んで前記負極に対向する部分に絶縁層を有する請求項1から11の何れかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は自動車や機械などに使用が拡大され、高出力の電池が必要とされてきている。この高出力を生み出す方法の一つとして、ハイレート放電が提案されている。ハイレート放電では電池内部の抵抗が問題となり、これを克服するために、例えば、正極箔と負極箔を電極巻回体の両端面に集める構造を作製し、集電板と多点で溶接をして低抵抗化を図っている。このような構造では、正極箔や負極箔が外装缶と接触する恐れがあり、ショートする可能性が有った。
【0003】
例えば、特許文献1には、巻回された円筒状の電極アセンブリを固定する仕上げテープによって、電極アセンブリの側面と下端面の一部を覆う構造を有する円筒形電池が開示されている。ここでは、仕上げテープによって外部からの衝撃を低減し電極アセンブリの損傷を防止できるということや、電極アセンブリの底面が露出していると電解液が浸透しやすいということを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/141560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、円筒状の電極アセンブリのトップ側の保護や絶縁については何も検討されていない。また、円筒状の電極アセンブリの上下の端面にそれぞれ正極集電板と負極集電板を有する電極アセンブリの絶縁構造、保護構造と電解液の浸透性の両立については検討されていない。
【0006】
従って、本発明は、電解液の注液時間をより短縮して生産性の高い電池を実用化するとともに、電池の組立時における内部ショートや電極アセンブリの損傷や金属粉の発生を防ぐことのできる絶縁部材を有する電池を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極が積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板が、外装缶に収容された二次電池において、
正極は、帯状の正極箔と正極活物質を有し、
正極箔は正極活物質被覆部と正極活物質非被覆部を有し、
負極は、帯状の負極箔と負極活物質を有し、
負極箔は負極活物質被覆部と負極活物質非被覆部を有し、
正極活物質非被覆部は、電極巻回体の端面の一方において、正極集電板と接合され、
負極活物質非被覆部は、電極巻回体の端面の他方において、負極集電板と接合され、
電極巻回体の側面部の一部からトップ側のエッジ部を経由して正極集電板の一部を覆う第1絶縁テープと、電極巻回体の側面部の一部からボトム側のエッジ部を経由して負極集電板の一部を覆う第2絶縁テープが設けられている二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施の形態によれば、電気的ショートを防止しながら電解液の注入が速く行えるハイレート放電用の電池を実現することができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る電池の概略断面図である。
【
図2】
図2は、電極巻回体における正極、負極とセパレータの配置関係の一例を説明する図である。
【
図4】
図4Aから
図4Fは、一実施の形態に係る電池の組み立て工程を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1絶縁部材の長さa1、b1とb3を示す電池の概略断面図である。
【
図6】
図6は、第2絶縁部材の長さa2とb2を示す電池の概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
【
図8】
図8は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
【
図9】
図9は、本発明の応用例としての無人航空機の説明に使用する接続図である。
【
図10】
図10は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.一実施の形態>
<2.変形例>
<3.応用例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。勿論、リチウムイオン電池以外の他の電池や円筒形状以外の電池が用いられても良い。
【0012】
<1.一実施の形態>
まず、リチウムイオン電池の全体構成に関して説明する。
図1は、円筒型のリチウムイオン電池1の概略断面図である。
【0013】
図1に示すように、リチウムイオン電池1は、例えば、円筒状の外装缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電極巻回体20とを備えている。ただし、リチウムイオン電池1は、例えば、さらに、外装缶11の内部に、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を備えていてもよい。以下、リチウムイオン電池1を単に「電池1」と表現する場合がある。
【0014】
[外装缶]
外装缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この外装缶11は、例えば、一端部が開放されると共に他端部が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、外装缶11は、開放された一端部(開放端部11N)を有している。この外装缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、外装缶11の表面には、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0015】
[絶縁板]
絶縁板12,13のそれぞれは、例えば、電極巻回体20の巻回軸に対して垂直な面、すなわち
図1中のZ軸に垂直な面を有する皿状の板である。また、絶縁板12,13は、それぞれトップ側絶縁板12、ボトム側絶縁板13として機能し、互いに電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0016】
[かしめ構造]
外装缶11の開放端部11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介して、かしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、外装缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その外装缶11は密閉されている。
【0017】
[電池蓋]
電池蓋14は、主に、外装缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その外装缶11の開放端部11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、外装缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0018】
[ガスケット]
ガスケット15は、主に、外装缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ただし、ガスケット15の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0019】
このガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプ口ピレン(PP)などの高分子材料である。中でも、絶縁性材料は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。外装缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0020】
[安全弁機構]
安全弁機構30は、主に、外装缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて外装缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。外装缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0021】
[電極巻回体]
円筒形状のリチウムイオン電池では、帯状の正極21と帯状の負極22がセパレータ23を挟んで渦巻き状に巻回されて、電解液に含浸された状態で、外装缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極活物質層21Bを形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層22Bを形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0022】
正極活物質層21Bと負極活物質層22Bはそれぞれ、正極箔21Aと負極箔22Aとの多くの部分を覆うが、どちらも帯の短軸方向にある片方の端周辺を意図的に被覆していない。この活物質層21B,22Bが被覆されていない部分を、以下、適宜、活物質非被覆部と称する。円筒形状の電池では、電極巻回体20は正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。電極巻回体は、その側面部45に固定テープ46を貼り付けることによってセパレータ23の端部が固定され、巻きゆるみが生じないようになっている。
【0023】
図2に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。正極の活物質非被覆部21C(
図2の上側の斜線部分)の幅はAであり、負極の活物質非被覆部22C(
図2の下側の斜線部分)の幅はBである。一実施の形態ではA>Bであることが好ましく、例えばA=7(mm)、B=4(mm)である。正極の活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した長さはCであり、負極の活物質非被覆部22Cがセパレータ23の幅方向の他端から突出した長さはDである。一実施の形態ではC>Dであることが好ましく、例えば、C=4.5(mm)、D=3(mm)である。
【0024】
正極の活物質非被覆部21Cは例えばアルミニウムなどからなり、負極の活物質非被覆部22Cは例えば銅などからなるので、一般的に正極の活物質非被覆部21Cの方が負極の活物質非被覆部22Cよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施の形態では、A>BかつC>Dがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cとが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、活物質非被覆部21C,22Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、活物質非被覆部21C,22Cと集電板24,25とのレーザ溶接による接合を容易に行うことができる。一実施の形態における接合とは、レーザ溶接により繋ぎ合わされていることを意味するが、接合方法はレーザ溶接に限定されない。
【0025】
正極21は、活物質非被覆部21Cと活物質被覆部21Bとの境界を含む幅3mmの区間が絶縁層101(
図2の灰色の領域部分)で被覆されている。そして、セパレータを介して負極の活物質被覆部22Bに対向する正極の活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極の活物質被覆部22Bと正極の活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときに、電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、電池1に衝撃が加わったときに、その衝撃を吸収し、正極の活物質非被覆部21Cが折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0026】
電極巻回体20は略円柱状の形態を有し、中心には、貫通孔26が空いている。貫通孔26は電極巻回体20の組み立て用の巻き芯と溶接用の電極棒を差し込むための孔である。電極巻回体20は、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、電極巻回体の端部の一方の面(端面41)には、正極の活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端部の他方の面(端面42)には、負極の活物質非被覆部22Cが集まる。電流を取り出すための集電板24,25との接触を良くするために、活物質非被覆部21C,22Cは貫通孔26(中心軸)方向に曲折されて(すなわち、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なって曲折されて)、端面41,42が平坦面となっている。なお、本明細書において「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、活物質非被覆部と集電板が接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む。
【0027】
活物質非被覆部21C,22Cがそれぞれ重なるようにして曲折することで、一見、端面41,42を平坦面にすることが可能に思われるが、曲折する前に何らの加工もないと、曲折するときに端面41,42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41,42が平坦面とならない。ここで、「シワ」や「ボイド」とは曲折した活物質非被覆部21C,22Cに偏りが生じ、端面41,42が平坦面とはならない部分である。このシワやボイドの発生を防止するために、端面41、42には放射方向に溝43(例えば
図4Bを参照)が形成されている。電極巻回体20の中心軸には貫通孔26があり、貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、溶接器具を差し込む孔として使用される。貫通孔26の付近にある、正極21と負極22との巻き始めの活物質非被覆部21C,22Cには切欠きがある。これは貫通孔26に向かって曲折したとき貫通孔26を塞がないようにするためである。溝43は、活物質非被覆部21C,22Cを曲折した後も平坦面内に残っており、溝43の無い部分が、正極集電板24又は負極集電板25と接合(溶接等)されている。なお、平坦面のみならず、溝43が集電板24,25の一部と接合されていてもよい。
なお、ここでは電極巻回体20又は電極巻回体20に正極集電板24と負極集電板25とが溶接された電極巻回体を略円柱とみなした場合、正極側のエッジラインをトップ側のエッジ部51と称し、負極側のエッジラインをボトム側のエッジ部52と称することとする。
電極巻回体20の詳細な構成、すなわち正極21、負極22、セパレータ23及び電解液のそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。
【0028】
[絶縁部材]
絶縁部材の構成について、
図1,
図5及び
図6を参照して説明する。端面41,42に集まっている活物質非被覆部21C,22Cは剥き出しの金属箔なので、活物質非被覆部21C,22Cと外装缶11とが近接したときにショートする可能性がある。また、端面41にある正極集電板24と外装缶11とが近接したときにショートする可能性がある。そのため、外装缶11との電気的絶縁性を持たせるために、トップ側のエッジ部51とボトム側のエッジ部52は、絶縁部材が被覆されている。絶縁部材としては種々の素材を用いることが可能であるが、ここでは絶縁テープ53,54を例に挙げて説明する。絶縁テープ53,54は、例えば、基材層の材質がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドのうち何れかで構成され、基材層の一面に粘着層を有している粘着テープである。絶縁テープ53,54の設置により電極巻回体20の容積を減らさないために、絶縁テープ53,54は側面部45に貼付された固定テープ46と重ならないように配置され、絶縁テープ53,54の厚さは固定テープ46の厚さ以下に設定されている。
【0029】
トップ側のエッジ部51においては、正極集電板24の形状にもよるが(
図3A参照)、正極集電板24が設けられている部分と、正極活物質非被覆部21Cが露出している部分がある。絶縁テープ53は、エッジ部51において、これらの部分を両方覆っていることが好ましい。更には、トップ側のエッジ部51をすべて(円筒型の場合、全周に亘って)覆っていることが好ましい。
ボトム側のエッジ部52においては、負極集電板25の形状にもよるが(
図3B参照)、負極集電板25が設けられている部分と、負極活物質非被覆部22Cが露出している部分がある。絶縁テープ54は、エッジ部52において、これらの部分を両方覆っていることが好ましい。更には、ボトム側のエッジ部52をすべて(円筒型の場合、全周に亘って)覆っていることが好ましい。
【0030】
特に、トップ側のエッジ部51ではショートが起こりやすく、外部から電池1への衝撃で、端面41が外装缶11に形成されるくびれ部11Sと接触して、ショートが起こる可能性が有る。このため、絶縁テープ53(第1絶縁部材)は、電極巻回体20の側面部45の一部からトップ側のエッジ部51を経由して外装缶11のくびれ部11Sの頂点Pの直下を0.5mm以上超える範囲迄を覆っている(
図1)。トップ側の絶縁テープ53(第1絶縁部材)と正極集電板24との配置の関係から、絶縁テープ53は、正極集電板24の折り畳まれた帯状部32に接する位置まで延在させることができる。同様に、ボトム側の絶縁テープ54(第2絶縁部材)と負極集電板25との配置の関係から、絶縁テープ54は、負極集電板25の折り畳まれた帯状部34に接する位置までを延在させることができる(
図5)。
絶縁テープ53の端部が、正極集電板24の帯状部32の折り返し部を超えて接触した場合には、電池の中心軸方向のスペースが足りず、組立て不良が発生する。また、絶縁テープ54の端部が、負極集電板25の帯状部34の折り返し部を超えて接触した場合には、電池の中心軸方向のスペースが足りず、同様に組立て不良が発生する。
【0031】
[集電板]
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極との一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、一実施の形態のリチウムイオン電池では、端面41,42に正極集電板24と負極集電板25とを配置し、端面41,42に存在する正極や負極の活物質非被覆部21C,22Cと多点で溶接することで、電池の内部抵抗を低く抑えている。端面41,42が曲折して平坦面となっていることも低抵抗化に寄与している。
【0032】
図3A及び
図3Bに、集電板の一例を示す。
図3Aが正極集電板24であり、
図3Bは負極集電板25である。正極集電板24の材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板であり、負極集電板25の材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材でできた金属板である。
図3Aに示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした扇状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。扇状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26に対応する位置である。
【0033】
図3Aの斜線で示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面の斜線部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0034】
負極集電板25の形状は正極集電板24と殆ど同じ形状だが、帯状部が異なっている。
図3Bの負極集電板の帯状部34は、正極集電板の帯状部32より短く、絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部(プロジェクション)37がある。抵抗溶接時には、電流が突起部に集中し、突起部が溶けて帯状部34が外装缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には扇状部33の中央付近に孔36があいていて、孔36の位置は貫通孔26に対応する位置である。正極集電板24の扇状部31と負極集電板25の扇状部33は扇形の形状をしているため、端面41,42の一部を覆うようになっている。全部を覆わない理由は、電池を組み立てる際に電極巻回体へ電解液を円滑に浸透させる為、あるいは電池が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスを電池外へ放出しやすくする為である。
【0035】
[正極]
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましく、より具体的にはリチウム含有複合酸化物及びリチウム含有リン酸化合物などであることが好ましい。
【0036】
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと1種類又は2種類以上の他元素(リチウム以外の元素)とを構成元素として含む酸化物であり、例えば、層状岩塩型及びスピネル型などのうちのいずれかの結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、リチウムと1種類又は2種類以上の他元素とを構成元素として含むリン酸化合物であり、例えば、オリビン型などの結晶構造を有している。
【0037】
正極結着剤は、例えば、合成ゴム及び高分子化合物などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデン及びポリイミドなどである。
【0038】
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどである。ただし、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料及び導電性高分子などでもよい。
【0039】
[負極]
負極箔22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極箔22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極箔22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極箔22Aの表面に微粒子が形成されるため、その負極箔22Aの表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
【0040】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。
【0041】
負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層22Bの導電性が向上するからである。
【0042】
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素及び黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛における(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭及びカーボンブラック類などである。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂及びフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状及び鱗片状のうちのいずれでもよい。
【0043】
リチウムイオン電池1では、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、その完全充電時の開回路電圧が4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
【0044】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22との間に介在しており、正極21と負極22との接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。セパレータ23は、例えば、合成樹脂及びセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類又は2種類以上であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。
【0045】
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の片面又は両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、電池膨れが抑制される。
【0046】
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン以外でもよい。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などに高分子化合物が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。この高分子化合物層は、例えば、無機粒子などの絶縁性粒子のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。無機粒子の種類は、例えば、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムなどである。
【0047】
[電解液]
電解液は、溶媒及び電解質塩を含んでいる。ただし、電解液は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル及びニトリル(モノニトリル)などである。
【0048】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
【0049】
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6H5)4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)、塩化リチウム(LiCl)及び臭化リチウム(LiBr)などである。
【0050】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム及び六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類又は2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0051】
[リチウムイオン電池の作製方法]
図4Aから
図4Fを参照して、一実施の形態のリチウムイオン電池1の作製方法について述べる。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極21の被覆部とし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極22の被覆部とした。このとき、正極21の短手方向の一端と負極22の短手方向の一端に、正極活物質と負極活物質が塗着されていない活物質非被覆部21C,22Cを作製した。活物質非被覆部21C,22Cの一部であって、巻回するときの巻き始めに当たる部分に、切欠きを作製した。正極21と負極22とには乾燥等の工程を行った。そして、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように、且つ、作製した切欠きが中心軸付近に配置されるように、渦巻き状に巻回して、最外周に固定テープ46を貼り付けて、
図4Aのような電極巻回体20を作製した。
【0052】
次に、
図4Bのように、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41,42に対して垂直に押し付けることで、端面41,42を局所的に折り曲げて溝43を作製した。この方法で貫通孔26から放射方向に、中心軸に向かって延びる溝43を作製した。
図4Bに示される、溝43の数や配置はあくまでも一例である。そして、
図4Cのように、両極側から同時に同じ圧力を端面41,42に対して略垂直方向に加え、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cを折り曲げて、端面41,42が平坦面となるように形成した。このとき、端面41,42にある活物質非被覆部21C,22Cが、貫通孔26側に向かって重なって曲折するように、平板の板面などで荷重を加えた。その後、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザ溶接し、端面42に負極集電板25の扇状部33をレーザ溶接した。
【0053】
その後、
図4Dのように、トップ側のエッジ部51とボトム側のエッジ部52とに、それぞれ絶縁テープ53,54を貼付けた。そして、集電板24,25の帯状部32,34を折り曲げ、トップ側絶縁板12、ボトム側絶縁板13の穴にそれぞれ挿通し、
図4Eに示される外装缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入し、外装缶11の底と負極集電板25の溶接を行った。次に、外装缶11の開口部近傍にくびれ部11Sを形成した。電解液を外装缶11内に注入後、正極集電板の帯状部32と安全弁機構30を溶接した。
図4Fのように、くびれ部11Sを利用してガスケット15、安全弁機構30及び電池蓋14で密封した。
【実施例】
【0054】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用い、ショート率の違いや注液時間の違いなどを比較した実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0055】
以下の全ての実施例と比較例において、電池サイズは21700とし、絶縁テープ53の基材層の材質をポリイミドとした。
まずは、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53のうち、電極巻回体20の端面41上での長さ(b1)と内部ショート率の関係を求めた。
図5は電池1のトップ側を表示した図である。前記長さ(b1)とは、
図5に示すようにくびれ部11Sの頂点Pの直下の位置から絶縁テープ53の端部までの長さを意味する。なお、くびれ部の表面(缶の内面)のうち、前記電極巻回体20に最も近接した点を頂点Pと定義する(
図5参照)。
【0056】
[実施例1]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、b1=1.5(mm)とした。
【0057】
[実施例2]
実施例1と同様に絶縁テープ53を貼付し、b1=1.0(mm)とした。
【0058】
[実施例3]
実施例1と同様に絶縁テープ53を貼付し、b1=0.5(mm)とした。
【0059】
[比較例1]
実施例1と同様に絶縁テープ53を貼付し、b1=0.3(mm)とした。
【0060】
[比較例2]
実施例1と同様に絶縁テープ53を貼付し、b1=0(mm)とした。
【0061】
[評価]
上記電池について、評価を行った。100本の組み立て終了後の電池1に対する、初回充電中に内部短絡した電池(充電ができない電池)の本数の割合を内部ショート率とした。
【0062】
【0063】
実施例1から実施例3の内部ショート率は0%と小さかったが、比較例1と比較例2の内部ショート率は比較的大きかった。表1の結果より、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53のうち、電極巻回体20の端面41上での長さ(b1)が0.5(mm)以上のとき、内部ショートを防ぐことができた。
【0064】
次に、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53のうち、電極巻回体20の側面部45上での長さ(a1)と内部ショート率の関係を求めた。なお、
図5に示すように、長さa1は、端面41を覆う絶縁テープ53の表面から(絶縁テープ53の厚みを含んで)、側面部45における絶縁テープ53の下端までの長さを指す。
【0065】
[実施例4]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、a1=1.5(mm)とした。
【0066】
[実施例5]
実施例4と同様に絶縁テープ53を貼付し、a1=1.0(mm)とした。
【0067】
[実施例6]
実施例4と同様に絶縁テープ53を貼付し、a1=0.5(mm)とした。
【0068】
[比較例3]
実施例4と同様に絶縁テープ53を貼付し、a1=0.3(mm)とした。
【0069】
[比較例4]
実施例4と同様に絶縁テープ53を貼付し、a1=0(mm)とした。
【0070】
[評価]
上記電池について、評価を行った。100本の組み立て終了後の電池1に対する、初回充電中に内部短絡した電池(充電ができない電池)の本数の割合を内部ショート率とした。
【0071】
【0072】
実施例4から実施例6の内部ショート率は0%と小さかったが、比較例3と比較例4の内部ショート率は比較的大きかった。表2より、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53のうち、電極巻回体20の側面部45上での長さ(a1)が0.5(mm)以上であるとき、内部ショートを防止できた。
【0073】
次に、ボトム側のエッジ部52とへの、絶縁テープ54の貼付による、組立時脱落金属の発生率について求めた。
図6は電池1のボトム側を表示した図である。
【0074】
[実施例7]
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、b2=1.5(mm)とした。
【0075】
[実施例8]
実施例7と同様に絶縁テープ54を貼付し、b2=1.0(mm)とした。
【0076】
[実施例9]
実施例7と同様に絶縁テープ54を貼付し、b2=0.5(mm)とした。
【0077】
[比較例5]
実施例7と同様に絶縁テープ54を貼付し、b2=0.3(mm)とした。
【0078】
[比較例6]
実施例7と同様に絶縁テープ54を貼付し、b2=0(mm)とした。
【0079】
[評価]
100本の電極巻回体20を外装缶11に挿入する工程において、負極箔22C及び負極集電板25が外装缶11に接触して金属粉が発生した場合を組立時脱落金属が有りとし、その発生率(%)を算出した。
【0080】
【0081】
実施例7から実施例9の組み立て時脱落金属の発生率は0%と小さかったが、比較例5と比較例6の組み立て時脱落金属の発生率は比較的大きかった。表3より、b2≧0.5(mm)のとき、組立時脱落金属が無かったことが分かった。
【0082】
[実施例10]
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、a2=1.5(mm)とした。
【0083】
[実施例11]
実施例10と同様に絶縁テープ54を貼付し、a2=1.0(mm)とした。
【0084】
[実施例12]
実施例10と同様に絶縁テープ54を貼付し、a2=0.5(mm)とした。
【0085】
[比較例7]
実施例10と同様に絶縁テープ54を貼付し、a2=0.3(mm)とした。
【0086】
[比較例8]
実施例10と同様に絶縁テープ54を貼付し、a2=0(mm)とした。
【0087】
[評価]
100本の電極巻回体20を外装缶11に挿入する工程において、負極箔22C及び負極集電板25が外装缶11に接触して金属粉が発生した場合を組立時脱落金属が有りとし、その発生率(%)を算出した。
【0088】
【0089】
実施例10から実施例12の組み立て時脱落金属の発生率は0%と小さかったが、比較例7と比較例8の組み立て時脱落金属の発生率は比較的大きかった。表4より、a2≧0.5(mm)のとき、組立時脱落金属が無かったことが分かった。したがって、b2≧0.5(mm)、且つ、a2≧0.5(mm)のとき、電池1の組立時における金属粉が発生しないと言える。
【0090】
次に、トップ側のエッジ部51とボトム側のエッジ部52とへの、絶縁テープ53の貼付の有無による、内部ショート率と組み立て時脱落金属の有無について求めた。
【0091】
[実施例15]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、a1=6.0(mm)、b1=3.0(mm)とし、
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ53を貼付し、a2=6.0(mm)、b2=3.0(mm)とした。
【0092】
[比較例11]
トップ側のエッジ部51にもボトム側のエッジ部52にも絶縁テープ53,54を貼付しなかった。
【0093】
[比較例12]
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、a2=6.0(mm)、b2=3.0(mm)とした。トップ側のエッジ部51には絶縁テープ53を貼付しなかった。
【0094】
[比較例13]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、a1=6.0(mm)、b1=3.0(mm)とした。ボトム側のエッジ部52には絶縁テープ54を貼付しなかった。
【0095】
[評価]
上記電池について、評価を行った。100本の組み立て終了後の電池1に対する、初回充電中に内部短絡した電池(充電ができない電池)の本数の割合を内部ショート率とした。電極巻回体20を外装缶11に挿入する工程において、負極箔22C及び負極集電板25が外装缶11に接触して金属粉が発生した場合を組立時脱落金属が有りとし、金属粉が発生しない場合を組立時脱落金属が無しとした。
【0096】
【0097】
実施例15では内部ショート率が0%と小さい値であり、且つ、組立時脱落金属は無かったのに対し、比較例11から比較例13では、内部ショート率が比較的大きい値であった、又は/及び、組み立て時脱落金属が有りだった。トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53が貼付されているとき、内部ショート率は0%であり、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54が貼付されているとき、組立時脱落金属が無かった。組立時脱落金属はコンタミネーションとして、電池1に悪い影響を及ぼす可能性が有る。表5より、トップ側のエッジ部51とボトム側のエッジ部52との両方に絶縁テープ53,54を貼付した場合には、内部ショートを防ぐことができ、組立時脱落金属の発生が無いことが分かった。
【0098】
次に、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53のうち、電極巻回体20の端面41上での長さ(b3)、ボトム側のエッジ部52を被覆する絶縁テープ54のうち、電極巻回体20の端面42上での長さ(b2)と電解液の注液時間の関係を求めた。なお、
図5に示すように、長さb3は、側面部45における絶縁テープ53の表面から(絶縁テープの厚みを含んで)、端面41を覆う絶縁テープ53の中心軸側の端までの長さを指し、
図6に示すように、長さb2は、側面部45における絶縁テープ54の表面から(絶縁テープの厚みを含んで)、端面42を覆う絶縁テープ54の中心軸側の端までの長さを指す。
【0099】
[実施例21]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、b3=b2=1(mm)とした。
【0100】
[実施例22]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=2(mm)とした。
【0101】
[実施例23]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=3(mm)とした。
【0102】
[実施例24]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=4(mm)とした。
【0103】
[実施例25]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=5(mm)とした。
【0104】
[比較例21]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=6(mm)とした。
【0105】
[比較例22]
実施例21と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、b3=b2=7(mm)とした。
【0106】
[評価]
上記電池について、評価を行った。電解液を注入し始めてから注入が完了するまでの時間を計測し、注入時間とした。
【0107】
【0108】
実施例21から実施例25では、注液時間の値が比較的小さかったのに対し、比較例21と比較例22の注液時間の値は比較的大きかった。表6より、b3とb2とが5mm以下、即ち、電極巻回体20の半径に対するb3の割合と電極巻回体20の半径に対するb2の割合とが50%以下のとき、電解液の注液時間の増大が比較的小さかった。したがって、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープ53(第1絶縁部材)は、エッジ部51から貫通孔26に向かって、電極巻回体20の半径の半分以下離れた位置までを被覆し、ボトム側のエッジ部52を被覆する絶縁テープ54(第2絶縁部材)は、エッジ部52から貫通孔26に向かって、電極巻回体20の半径の半分以下離れた位置までを被覆するとき、電解液の注液時間の増大が抑えられることが分かった。
【0109】
次に、トップ側のエッジ部51を被覆する絶縁テープの53うち、電極巻回体20の側面部45上での長さ(a1)、ボトム側のエッジ部52を被覆する絶縁テープ54のうち、電極巻回体20の側面部45上での長さ(a2)と電解液の注液時間の関係を求めた。なお、
図6に示すように、長さa2は、端面42を覆う絶縁テープ54の表面から(絶縁テープ54の厚みを含んで)、側面部45における絶縁テープ54の上端までの長さを指す。
【0110】
[実施例31]
図5のように、トップ側のエッジ部51に絶縁テープ53を貼付し、
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、a1=a2=1(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0111】
[実施例32]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=2(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0112】
[実施例33]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=3(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0113】
[実施例34]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=4(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0114】
[実施例35]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=5(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0115】
[実施例36]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=6(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0116】
[実施例37]
実施例31と同様に絶縁テープ53,54を貼付し、a1=a2=7(mm)とし、b3=b2=1(mm)とした。
【0117】
[比較例31]
図6のように、ボトム側のエッジ部52に絶縁テープ54を貼付し、a2=30(mm)とし、b2=1(mm)とした。トップ側のエッジ部51には絶縁テープ53を貼付しなかった。
【0118】
[評価]
上記電池について、評価を行った。電解液を注入し始めてから注入が完了するまでの時間を計測し、注入時間とした。
【0119】
【0120】
実施例31から実施例37の注液時間の値は比較的小さかったのに対し、比較例31の注液時間の値は比較的大きかった。表7より、a1とa2とが7(mm)以下のとき、電解液の注液を速くできた。また、表7の結果から、表6においてa1とa2と注液時間との関係はとても小さいことが分かった。表7のデータは、表6のサポートデータとなることが判明した。
【0121】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0122】
溝43の数や配置は図で例示したもの以外であってもよい。
正極集電板24と負極集電板25は、扇形の形状をした扇状部31,33を備えていたが、それ以外の形状であってもよい。
【0123】
<3.応用例>
「電池パックの例」
図7は、本発明の一実施の形態に係る電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パック330に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0124】
また、電池パック300は、正極端子321及び負極端子322を備え、充電時には正極端子321及び負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321及び負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0125】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。この二次電池301aは本発明の二次電池である。なお、
図7では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0126】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302a及びダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303a及びダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0127】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチ302aのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0128】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0129】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0130】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧若しくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電及び過放電、過電流充放電を防止する。
【0131】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0132】
充放電スイッチは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302b及び303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DO及びCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電及び放電動作では、制御信号CO及びDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0133】
そして、例えば過充電若しくは過放電の際には、制御信号CO及びDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0134】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値などが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0135】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行ったりする。
【0136】
「蓄電システムなどの例」
上述した本発明の一実施の形態に係る電池は、例えば電子機器や電動車両、電動式航空機、蓄電装置などの機器に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0137】
電子機器として、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機などが挙げられる。
【0138】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などが挙げられ、これらの駆動用電源又は補助用電源として用いられる。蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0139】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本発明の電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0140】
「電動工具の一例」
図8を参照して、本発明が適用可能な電動工具例えば電動ドライバの一例について概略的に説明する。電動ドライバ431は、本体内にDCモータ等のモータ433が収納されている。モータ433の回転がシャフト434に伝達され、シャフト434によって被対象物にねじが打ち込まれる。電動ドライバ431には、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。
【0141】
電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430として電池パック300を使用することができる。モータ制御部435は、モータ433を制御する。モータ433以外の電動ドライバ431の各部が、モータ制御部435によって制御されてもよい。図示しないが電池パック430と電動ドライバ431はそれぞれに設けられた係合部材によって係合されている。後述するように、電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれにマイクロコンピュータが備えられている。電池パック430からモータ制御部435に対して電池電源が供給されると共に、両者のマイクロコンピュータ間で電池パック430の情報が通信される。
【0142】
電池パック430は、例えば、電動ドライバ431に対して着脱自在とされる。電池パック430は、電動ドライバ431に内蔵されていてもよい。電池パック430は、充電時には充電装置に装着される。なお、電池パック430が電動ドライバ431に装着されているときに、電池パック430の一部が電動ドライバ431の外部に露出し、露出部分をユーザが視認できるようにしてもよい。例えば、電池パック430の露出部分にLEDが設けられ、LEDの発光及び消灯をユーザが確認できるようにしてもよい。
【0143】
モータ制御部435は、例えば、モータ433の回転/停止、並びに回転方向を制御する。さらに、過放電時に負荷への電源供給を遮断する。トリガースイッチ432は、例えば、モータ433とモータ制御部435の間に挿入され、ユーザがトリガースイッチ432を押し込むと、モータ433に電源が供給され、モータ433が回転する。ユーザがトリガースイッチ432を戻すと、モータ433の回転が停止する。
【0144】
「無人航空機」
本発明を電動式航空機用の電源に適用した例について、
図9を参照して説明する。本発明は、無人航空機(所謂ドローン)の電源に対して適用できる。
図9は、無人航空機の平面図である。中心部としての円筒状又は角筒状の胴体部と、胴体部の上部に固定された支持軸442a~442fとから機体が構成される。一例として、胴体部が6角筒状とされ、胴体部の中心から6本の支持軸442a~442fが等角間隔で放射状に延びるようになされている。胴体部及び支持軸442a~442fは、軽量で強度の高い材料から構成されている。
【0145】
支持軸442a~442fの先端部には、回転翼の駆動源としてのモータ443a~443fがそれぞれ取り付けられている。モータ443a~443fの回転軸に回転翼444a~444fが取り付けられている。各モータを制御するためのモータ制御回路を含む回路ユニット445は支持軸442a~442fが交わる中心部(胴体部の上部)に取り付けられている。
【0146】
さらに、胴体部の下側の位置に動力源としてのバッテリ部が配置されている。バッテリ部は、180度の対向間隔を有するモータ及び回転翼の対に対して電力を供給するように3個の電池パックを有している。各電池パックは、例えばリチウムイオン二次電池と充放電を制御するバッテリ制御回路とを有する。電池パックとして電池パック300を使用することができる。モータ443a及び回転翼444aと、モータ443d及び回転翼444dとが対を構成する。同様に、(モータ443b,回転翼444b)と(モータ443e,回転翼444e)とが対を構成し、(モータ443c,回転翼444c)と(モータ443f,回転翼444f)とが対を構成する。これらの対と電池パックとが等しい数とされている。
【0147】
「車両用蓄電システム」
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例について、
図10を参照して説明する。
図10に、本発明が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0148】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置603、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608に対して、上述した本発明の電池パック300が適用される。
【0149】
ハイブリッド車両600は、電力駆動力変換装置603を動力源として走行する。電力駆動力変換装置603の一例は、モータである。バッテリ608の電力によって電力駆動力変換装置603が作動し、この電力駆動力変換装置603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。なお、必要な個所に直流-交流(DC-AC)あるいは逆変換(AC-DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置603が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ610には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0150】
エンジン601の回転力は発電機602に伝えられ、その回転力によって発電機602により生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。
【0151】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置603に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置603により生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。
【0152】
バッテリ608は、ハイブリッド車両600の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口611を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0153】
図示しないが、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0154】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本発明は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本発明は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
1・・・リチウムイオン電池,12・・・絶縁板,20・・・電極巻回体,21・・・正極,21A・・・正極箔,21B・・・正極活物質層,21C・・・正極の活物質非被覆部,22・・・負極,22A・・・負極箔,22B・・・負極活物質層,22C・・・負極の活物質非被覆部,23・・・セパレータ,24・・・正極集電板,25・・・負極集電板,26・・・貫通孔,41,42・・・端部,43・・・溝,45・・・側面部,46・・・固定テープ,51・・・トップ側のエッジ部,52・・・ボトム側のエッジ部,53,54・・・絶縁テープ,101・・・絶縁層