IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】液体カートリッジ及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B41J2/175 119
B41J2/175 115
B41J2/175 169
B41J2/175 151
B41J2/175 153
B41J2/175 161
B41J2/175 175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023121946
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2021152978の分割
【原出願日】2017-03-27
(65)【公開番号】P2023129638
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 彰人
(72)【発明者】
【氏名】石部 陽雅
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185660(JP,A)
【文献】特開平04-164649(JP,A)
【文献】特開平06-246927(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173565(JP,U)
【文献】特開2007-144802(JP,A)
【文献】特開2013-049168(JP,A)
【文献】特開2012-000863(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02095961(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第103171292(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯留室を有するカートリッジ本体と、前後方向に延び前方に開口された液体流路を有しており当該液体貯留室内の液体を当該液体流路を介して外部に供給する液体供給部と、を備え、カートリッジ装着部に対して装着可能な液体カートリッジであって、
上記液体供給部は、上記液体供給部の外面上記前後方向および上記前後方向と直交し重力方向に沿った上下方向と直交する左右方向の一方側において上方を向き上記液体カートリッジの上記カートリッジ装着部への装着過程において上記液体カートリッジを前方にガイドする一方側のガイド面と、
上記液体供給部の上記外面の上記一方側のガイド面の下方において下方を向き、かつ、後端が前端よりも上方となるように上記一方側のガイド面に対して傾斜する一方側の傾斜面と、を有する液体カートリッジ。
【請求項2】
上記液体供給部は、
上記液体供給部の上記外面の上記左右方向の他方側において上方を向き上記液体カートリッジの上記カートリッジ装着部への装着過程において上記液体カートリッジを前方にガイドする他方側のガイド面と、
上記液体供給部の上記外面の上記左右方向の上記他方側のガイド面の下方において下方を向き、かつ、後端が前端よりも上方となるように上記他方側のガイド面に対して傾斜する他方側の傾斜面と、を有する請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
上記液体供給部よりも上方に設けられた回路基板をさらに有し、
上記一方側のガイド面および上記一方側の傾斜面は、上記回路基板よりも上記左右方向の上記一方側に離れて位置する請求項2に記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
上記他方側のガイド面および上記他方側の傾斜面は、上記回路基板よりも上記左右方向の上記他方側に離れて位置する請求項3に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
上記カートリッジ本体は、上記上下方向における下方を向く下壁と、上記下壁よりも上方にあるサブ下壁と、上記下壁と上記サブ下壁とを接続する段差面とを有し、上記液体供給部は、上記段差面から上記前後方向における前方に延びる請求項1から4いずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項6】
上記液体供給部は、上記液体流路の前端に位置するキャップをさらに備え、
上記一方側のガイド面は上記キャップに位置する請求項1から5いずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項7】
上記液体供給部は、上記液体流路と上記液体供給部の外部とを連通し且つ上記カートリッジ装着部の液体供給管が貫通可能な貫通孔を有するシール部であって、当該貫通孔を貫通した上記液体供給管と上記液体流路との間をシールするシール部を備え、
上記ガイド面の後端は、上記シール部の前端よりも後方に位置する請求項1からのいずれかに記載の液体カートリッジ。
【請求項8】
上記カートリッジ本体は、上記カートリッジ装着部と係合する係合部を備え、
上記係合部は、上記カートリッジ本体が回動されることにより、上記カートリッジ装着部と係合する請求項1からのいずれかに記載の液体カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体貯留室を有する筐体と液体貯留室に貯留された液体を外部へ供給する液体供給部とを備える液体カートリッジ、及び当該液体カートリッジを備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジから供給されたインクを、ノズルを介して吐出する記録ヘッドを備えるプリンタが知られている。例えば、特許文献1に開示されたインクカートリッジは、プリンタの本体に設けられたカートリッジ装着部に装着される。このとき、インクカートリッジに設けられた円筒形状のインク供給部に、カートリッジ装着部に設けられたインクニードルが挿入される。これにより、インクカートリッジからインクニードルを介して記録ヘッドへインクを供給することが可能となる。カートリッジ装着部には、インクニードルの周囲に、円筒形状のガイド部が設けられている。インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着されるとき、円筒形状のインク供給部が、円筒形状のガイド部にガイドされる。これにより、インクニードルがインク供給部の内部へ導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-185650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒形状のインク供給部が、円筒形状のガイド部にガイドされる場合、インク供給部の外周面とガイド部の内周面とが当接することによって、インク供給部がガイド部に対して位置決めされる。しかしながら、円周面同士の当接による位置決めの場合、位置決めの基準となる面が広範囲に及ぶため、インク供給部がガイド部に対してがたつき易い。インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着されるときに、インク供給部がガイド部に対してがたつくと、インクニードルがインク供給部とぶつかり、インクニードルの先端に付着していたインクが、インク供給部の外面に付着するおそれがある。すると、インクカートリッジがカートリッジ装着部から脱抜されたときに、付着したインクによって使用者の手などが汚れるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、がたつきを少なくしつつ液体供給部をガイドできる液体カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る液体カートリッジは、液体貯留室を有するカートリッジ本体と、前方に開口された液体流路を有しており当該液体貯留室内の液体を当該液体流路を介して外部に供給する液体供給部と、を備え、当該液体流路がカートリッジ装着部に設けられた液体供給管に向かう装着方向に、当該カートリッジ装着部に対して装着可能である。上記液体供給部の外面には、上記液体カートリッジの上記カートリッジ装着部への装着過程において、上記カートリッジ装着部に設けられ前後方向へ延びる突起にガイドされるガイド溝が形成されている。上記ガイド溝は、前端が前方に開放されており、上記前後方向に延びた第1ガイド面と、上記第1ガイド面と交差する第2ガイド面と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、ガイド溝が突起にガイドされる。この場合、ガイド溝の位置決めの基準となる面の範囲を円周面よりも狭くできる。これにより、液体供給部が液体供給管とぶつかることなく液体流路内へ液体供給管が挿入されるように、液体供給部を積極的に液体供給管へ向けて案内することができる。
【0008】
(2) 上記ガイド溝は、上記前後方向に直交する第1方向と、上記前後方向及び当該第1方向に直交する第2方向とに、上記液体流路を挟んで4つ設けられている。
【0009】
上記構成によれば、ガイド溝が4つ設けられているため、液体供給部をより確実に液体供給管へ向けて案内することができる。
【0010】
(3) 上記第1ガイド面は、上記第1ガイド面と直交する方向に開放されている。上記第2ガイド面は、上記第2ガイド面と直交する方向に開放されている。
【0011】
上記構成によれば、第1ガイド面及び第2ガイド面は開放されている。つまり、ガイド溝は、第1ガイド面や第2ガイド面と対向する対向面を備えていない。よって、仮に、液体カートリッジが傾いた状態でカートリッジ装着部内へ進入してきた場合であっても、液体供給部と突起との干渉の可能性を低くできる。また、仮に、液体カートリッジが傾いた状態でカートリッジ装着部から取りはずされる場合であっても、液体供給部と突起との干渉の可能性を低くできる。
【0012】
(4) 上記液体供給部の前端は、上記開口を上記前後方向から見たときの投影面が直線的に延びる複数の辺と当該複数の辺同士をつなぐ角部とを有する形状である。上記ガイド溝は、上記角部に形成されている。
【0013】
上記構成によれば、液体供給部の形状を、複数の辺にガイド溝が形成された構成よりも単純化できる。
【0014】
(5) 例えば、上記液体流路の延びる方向とは交差する方向に突出する突起をさらに有する。上記突起の上端または下端は、上記ガイド溝である。
【0015】
(6) 上記液体供給部は、上記液体流路と上記液体供給部の外部とを連通し且つ上記液体供給管が貫通可能な貫通孔を有するシール部であって、当該貫通孔を貫通した上記液体供給管と上記液体流路との間をシールするシール部を備える。上記第1ガイド面の後端は、上記シール部の前端よりも後方に位置する。
【0016】
上記構成によれば、液体カートリッジのカートリッジ装着部への装着過程において、シール部の位置を第1ガイド面によって安定させることができる。これにより、液体供給管を液体流路内へ確実に導くことができる。
【0017】
(7) 上記第1ガイド面よりも後方には、上記前後方向に対して傾斜する方向へ延びた第3ガイド面が形成されている。
【0018】
上記構成によれば、第3ガイド面が傾斜していることによって形成される空間により、仮に、液体カートリッジが傾いた状態でカートリッジ装着部に対して進入してきた場合であっても、液体供給部と突起との干渉の可能性を低くできる。また、仮に、液体カートリッジが傾いた状態でカートリッジ装着部から取りはずされる場合であっても、液体供給部と突起との干渉の可能性を低くできる。
【0019】
(8) 上記第1ガイド面と上記第3ガイド面とは連続している。
【0020】
上記構成によれば、液体供給部のガイドを円滑に実行できる。
【0021】
(9) 上記カートリッジ本体は、第1下壁と、上記第1下壁よりも後方且つ下方に位置する第2下壁と、を備える。上記液体供給部は、上記第1下壁の下方且つ上記第2下壁の前方に位置している。上記第3ガイド面は、下方に開放されている。上記第3ガイド面及び上記第2下壁の下面は、後方へ向かうにしたがって上方へ向かうように、上記前後方向に対して傾斜している。上記第3ガイド面の上記前後方向に対する角度は、上記第2下壁の下面の上記前後方向に対する角度よりも大きい。
【0022】
上記構成によれば、仮に、第2下壁の下面がカートリッジ装着部と当接する程に、液体カートリッジが傾いた状態でカートリッジ装着部に対して挿抜される場合であっても、第3ガイド面が突起と干渉することを防止できる。
【0023】
(10) 上記カートリッジ本体は、上記カートリッジ装着部と係合する係合部を備える。上記係合部は、上記カートリッジ本体が回動されることにより、上記カートリッジ装着部と係合する。
【0024】
上記構成によれば、液体カートリッジのカートリッジ装着部に対する挿抜過程において、カートリッジ本体が回動して傾く。しかし、上述したように、カートリッジ本体が傾いても液体供給部と突起との干渉の可能性を低くできる。
【0025】
(11) 例えば、上記液体供給部は、上記カートリッジ本体から延出しており、内部に上記液体流路を有する筒体と、上記液体流路と上記液体供給部の外部とを連通し且つ上記液体供給管が貫通可能な貫通孔を有するシール部と、上記筒体に被せられた状態で上記筒体との間に上記シール部を挟んで上記シール部を固定させるキャップと、を備える。上記ガイド溝は、上記キャップの外面に形成されている。
【0026】
(12) 上記カートリッジ本体は、上壁を備える。上記上壁には、回路基板が設けられている。上記ガイド溝は、上下方向及び上記前後方向に直交する幅方向において、上記回路基板よりも外方に一対設けられている。
【0027】
上記構成によれば、液体カートリッジのカートリッジ装着部に対する挿抜過程において、ガイド溝は、幅方向における回路基板の両外側において突起と当接する。そのため、当該挿抜過程において回路基板が幅方向に傾く可能性を低くできる。
【0028】
(13) 上記液体流路に、液体を吸収する吸収部材が配置されている。
【0029】
上記構成によれば、吸収部材が、液体供給部から漏れた液体を吸収可能である。そのため、液体供給部から漏れた液体の液体カートリッジの外部への流出を低減できる。
【0030】
(14) 上記吸収部材は、上記開口の周縁部の近傍に配置された第1吸収部材を備える。
【0031】
液体供給部から漏れた液体は、開口を通じて液体カートリッジの外部へ流出する。上記構成によれば、第1吸収部材によって開口を通る液体を吸収することができる。
【0032】
(15) 上記吸収部材は、上記液体流路の下部に配置された第2吸収部材を備える。
【0033】
液体供給部から漏れた液体の多くは重力によって下方へ移動する。上記構成によれば、第2吸収部材が液体流路の下部に配置されているため、液体の多くを第2吸収部材に吸収させることができる。
【0034】
(16) 上記液体流路を画定する面に、上記開口の周縁部の近傍から上記第2吸収部材に至る溝が形成されている。
【0035】
上記構成によれば、液体供給部から漏れた液体を溝を通じて第2吸収部材へ導くことができる。
【0036】
(17) 本発明は、上記液体カートリッジと、上記カートリッジ装着部と、を有するシステムとして捉えることもできる。この場合、上記カートリッジ装着部は、上記液体カートリッジの使用姿勢において上記液体供給部と接続される上記液体供給管と、上記ガイド溝をガイドする上記突起と、を有するものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、がたつきを少なくしつつ液体供給部をガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図2図2は、カートリッジ装着部110の正面図である。
図3図3は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態の縦断面図である。
図4図4は、インクカートリッジ30の前方斜視図である。
図5図5は、インクカートリッジ30の後方斜視図である。
図6図6は、インクカートリッジ30の左側面図である。
図7図7は、インクカートリッジ30の分解斜視図である。
図8図8(A)は、第1内蓋131の下方斜視図であり、図8(B)は、第1内蓋131の上方斜視図である。
図9図9(A)は、第2内蓋132の下方斜視図であり、図9(B)は、第2内蓋132の上方斜視図である。
図10図10は、インクカートリッジ30の縦断面図である。
図11図11は、図6におけるXI-XI断面を示す断面図である。
図12図12は、インク供給部34が分解された状態のインクカートリッジ30の前方斜視図である。
図13図13(A)は、キャップ79の後方斜視図であり、図13(B)は、キャップ79の前方斜視図である。
図14図14は、図6におけるXIV-XIV断面を示す断面図である。
図15図15は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着される途中の状態のカートリッジ装着部110の縦断面図及びインクカートリッジ30の左側面図である。
図16図16は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着される途中の状態の縦断面図である。
図17図17は、カートリッジ装着部110内でインクカートリッジ30が回動した状態のカートリッジ装着部110の縦断面図及びインクカートリッジ30の左側面図である。
図18図18は、カートリッジ装着部110内でインクカートリッジ30が回動した状態の縦断面図である。
図19図19は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態のカートリッジ装着部110の縦断面図及びインクカートリッジ30の左側面図である。
図20】ブラックのインクが貯留されたインクカートリッジ30の前方斜視図である。
図21図21は、図20におけるXXI-XXI断面を示す断面図である。
図22図22は、図20におけるXXII-XXII断面を示す断面図である。
図23図23は、変形例における第1内蓋131の下面図である。
図24図24は、変形例におけるインクカートリッジ30の前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0040】
また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される方向が前方向51と定義される。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から抜き出される方向が後方向52と定義される。以下では、インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に対して水平方向に挿入及び脱抜される。したがって、前方向51及び後方向52は水平方向である前提として説明がなされるが、必ずしも前方向51及び後方向52は水平方向でなくてもよい。また、前方向51及び後方向52のいずれかに直交する方向が下方向53と定義される。下方向53の反対となる方向が上方向54と定義される。前方向51及び下方向53と直交する方向が右方向55と定義される。右方向55と反対方向が左方向56と定義される。したがって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されて使用される状態において、重力方向が下方向53であり、重力方向と反対方向が上方向54であることを前提として説明がなされる。つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されて使用される状態において、筐体130のメイン下壁42の外面が重力方向の下方を向く。また、前方向51及び下方向53と直交する方向が、右方向55及び左方向56と定義される。より具体的には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されて使用される状態で、インクカートリッジ30を後方から前方に視た場合において、右方に向く方向が右方向55と定義され、左方に向く方向が左方向56と定義される。なお、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されて使用される状態とは、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の装着位置まで挿入された状態である。装着位置は、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル102がインクカートリッジ30に設けられたインク供給部34に挿入されて互いに連結され、且つインクカートリッジ30に設けられたIC基板64がカートリッジ装着部110に設けられた接点106と接触する位置である。また、以下では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されて使用される状態の、当該インクカートリッジ30の姿勢を使用姿勢と称する。
【0041】
また、前方向51及び後方向52は、前後方向と定義される。また、上方向54及び下方向53は、上下方向と定義される。また、右方向55及び左方向56は、左右方向(幅方向の一例)と定義される。
【0042】
また、以下の説明では、「前方を向く」とは、前方の成分を含む方向を向くことを含み、「後方を向く」とは、後方の成分を含む方向を向くことを含む。また、「下方を向く」とは、下方の成分を含む方向を向くことを含み、「上方を向く」とは、上方の成分を含む方向を向くことを含む。例えば、「前面が前方を向く」とは、前面が前方を向いていてもよいし、前面が前方に対して傾斜した方向を向いていてもよい。
【0043】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10(システムの一例)は、インクジェット記録方式に基づいて、用紙に対してインク滴を吐出することにより画像を記録する画像記録装置であり、例えばインクジェットプリンタである。プリンタ10は、記録ヘッド21と、インク供給装置100と、記録ヘッド21及びインク供給装置100を接続するインクチューブ20とを備えている。インク供給装置100は、カートリッジ装着部110を備える。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30(液体カートリッジの一例)が装着される。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が形成されている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジ装着部110に前方へ挿入され、或いは開口112を通じてカートリッジ装着部110から後方へ抜き出される。
【0044】
インクカートリッジ30は、液体を貯留しており、例えばプリンタ10で使用可能なインク(液体の一例)を貯留する。カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とは、インクチューブ20を介して接続されている。記録ヘッド21は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留するダンパ室28を有する。記録ヘッド21は、ダンパ室28から供給されたインクを複数のノズル29から吐出する。具体的には、記録ヘッド21が備えるヘッド制御基板が、複数のノズル29に対応して設けられた複数のピエゾ素子29Aに選択的に駆動電圧を印加する。これにより、ノズル29から選択的にインクが吐出される。つまり、記録ヘッド21は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30に貯留されたインクを消費する。
【0045】
プリンタ10は、給紙トレイ15と、給紙ローラ23と、搬送ローラ対25と、プラテン26と、排出ローラ対27と、排紙トレイ16と、を備えている。給紙ローラ23は、給紙トレイ15上の用紙を搬送路24へ向けて給送する。搬送路24へ給送された用紙は、やがて搬送ローラ対25に到達する。搬送ローラ対25は、搬送ローラ対25に到達した用紙をプラテン26上へ搬送する。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した用紙は、排出ローラ対27に到達する。排出ローラ対27は、排出ローラ対27に到達した用紙を、搬送路24の最下流側に位置する排紙トレイ16に排出する。
【0046】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100は、記録ヘッド21にインクを供給する。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110、タンク103、インクチューブ20を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態が示されている。つまり、図1において、インクカートリッジ30は装着状態である。この状態にあるインクカートリッジ30の姿勢が、使用姿勢である。
【0047】
[カートリッジ装着部110]
図1図3に示されるように、カートリッジ装着部110は、カートリッジケース101と、インクニードル102(液体供給管の一例)と、凸板111と、光学センサ113と、複数の接点106と、を備えている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。また、インクニードル102、凸板111、及び光学センサ113は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。また、複数の接点106について、1つのインクカートリッジ30に対応して4つの接点106が設けられ、4つのインクカートリッジ30に対して16個の接点106が設けられる。タンク103及びインクチューブ20は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。
【0048】
[カートリッジケース101]
図2に示されるように、カートリッジケース101は、カートリッジ装着部110の筐体を形成する。カートリッジケース101は、天面57と、底面と、右側面107と、左側面108と、終面59と、開口112とを有する箱形状である。天面57は、カートリッジケース101の内部空間の上部である天部を画定する。底面は、カートリッジケース101の内部空間の下部である底部を画定する。右側面107は、カートリッジケース101の内部空間の右部を画定する。左側面108は、カートリッジケース101の内部空間の左部を画定する。終面59は、天面57と底面と右側面107と左側面108とをつないでいる。開口112は、終面59と前後方向に対向する位置において、カートリッジケース101に形成されている。開口112は、ユーザがプリンタ10を使用するときに対面する面であるプリンタ10のユーザインタフェース面に露出し得る。
【0049】
インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジケース101へ挿入され、開口112を通じてカートリッジケース101から抜き出される。カートリッジケース101の底部にはガイド溝109が形成されている。インクカートリッジ30は、ガイド溝109に、インクカートリッジ30の下端部が挿入されることによって、前後方向(図2における紙面と直交する方向)に沿って案内される。カートリッジケース101は、内部空間を上下方向に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート104を備える。複数のプレート104によって仕切り分けられた各空間それぞれに1つのインクカートリッジ30が収容される。
【0050】
[インクニードル102]
図2及び図3に示されるように、インクニードル102は、中空の管状となっており、カートリッジケース101の終面59の下部に位置している。インクニードル102は、カートリッジケース101の終面59において、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34(液体供給部の一例)に対応する位置に配置されている。インクニードル102は、カートリッジケース101の終面59から後方へ突出しており、その先端が後方に向けて開口している。なお、インクニードル102の先端は、平坦であってもよく、尖っていてもよい。
【0051】
図2に示されるように、カートリッジケース101における右側面107、左側面108、及びプレート104には、突起105が形成されている。突起105は、カートリッジケース101におけるインクニードル102の周囲に形成されている。本実施形態において、突起105は、各インクニードル102につき4つ形成されている。具体的には、突起105は、カートリッジケース101を挿入方向に見た場合にインクニードル102の右斜め上、左斜め上、右斜め下、及び左斜め下に形成されている。つまり、4つの突起105は、インクニードル102の右斜め上に形成された突起105A、インクニードル102の左斜め上に形成された突起105B、インクニードル102の右斜め下に形成された突起105C、及びインクニードル102の左斜め下に形成された突起105Dである。以下、4つの突起105A、105B、105C、105Dを総称して突起105と記す。図15に示されるように、突起105は、前後方向に延びている。
【0052】
突起105は、第1ガイド面196及び第2ガイド面197を備えている。なお、図2において、カートリッジケース101における4つに仕切り分けられた空間のうち、最も右側の空間に形成された突起105A、105B、105C、105Dについてのみ、第1ガイド面196及び第2ガイド面197が図示されている。
【0053】
第1ガイド面196は、前後方向及び左右方向に拡がった平面である。第2ガイド面197は、前後方向及び上下方向に拡がった平面である。第2ガイド面197は、第1ガイド面196と繋がっている。なお、第1ガイド面196及び第2ガイド面197は、繋がっていなくてもよい。
【0054】
突起105Aの第1ガイド面196と、突起105Cの第1ガイド面196とは、上下方向に間隔をあけて対向している。突起105Bの第1ガイド面196と、突起105Dの第1ガイド面196とは、上下方向に間隔をあけて対向している。突起105Aの第2ガイド面197と、突起105Bの第2ガイド面197とは、左右方向に間隔をあけて対向している。突起105Cの第2ガイド面197と、突起105Dの第2ガイド面197とは、左右方向に間隔をあけて対向している。
【0055】
なお、突起105の位置は、インクニードル102の右斜め上、左斜め上、右斜め下、及び左斜め下に限らない。例えば、突起105は、インクニードル102の右方、左方、上方、及び下方に形成されていてもよい。また、突起105は、各インクニードルにつき、3つ以下または5つ以上形成されていてもよい。
【0056】
[凸板111]
図3に示されるように、カートリッジケース101において1つのインクカートリッジ30が挿入される内部空間の天面57における開口112付近には、天面57から下方へ突出した凸板111が形成されている。凸板111の左右方向の長さは、後述するインクカートリッジ30の凸部43の一対の壁114(図4参照)の間隔よりも短い。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入された状態において、凸板111は、左右方向において、一対の壁114の間に位置する。よって、凸板111は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、後述するインクカートリッジ30の凸部43の一対の壁114(図4参照)の間へ挿入される。凸板111の下面111Aは、後述する弁機構135のレバー163と当接可能し得る。
【0057】
[接点106]
図3に示されるように、カートリッジケース101において1つのインクカートリッジ30が挿入される内部空間の天面57における凸板111の前方には4つの接点106が配置されている。4つの接点106は、天面57からカートリッジケース101の1つのインクカートリッジ30が挿入される内部空間へ向けて下方に突出している。各図には詳細に示されていないが、4つの接点106それぞれは、左右方向に離れて配置されている。4つの接点106の配置は、後述される1つのインクカートリッジ30の4つの電極65(図4参照)の配置に対応している。各接点106は、導電性及び弾性を有する部材で構成されており、上方へ弾性的に変形可能である。4つの接点106は、カートリッジケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して、4組が配置されている。すなわち、カートリッジケース101には、16個の接点106が配置されている。なお、接点106の個数及び電極65の個数は任意である。
【0058】
各接点106は、電気回路を介して演算装置に電気的に接続されている。演算装置は、例えばCPU,ROM,RAMなどからなるものであり、例えばプリンタ10のコントローラとしての機能を果たす。各接点106と、当該各接点106と対応する各電極65とが接触して電気的に導通されることによって、電圧Vcが1つ目の電極65に印加されたり、2つ目の電極65がアースされたり、3つ目の電極65にデータを示す信号が送電されたり、4つ目の電極65に演算装置から同期信号が送電されたりする。各接点106と、当該各接点106と対応する各電極65との電気的に導通により、演算装置が、インクカートリッジ30のICに格納されたデータにアクセス可能となる。各接点106から電気回路を通じた出力は演算装置に入力される。
【0059】
[光学センサ113]
図2に示されるように、カートリッジケース101の天面には、光学センサ113が配置されている。光学センサ113は、4つの接点106よりも前方に位置している。光学センサ113は、発光器及び受光器を備える。発光器は、受光器よりも右方または左方に、受光器と間隔を空けて設けられている。カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の後述する遮光板67(図4参照)は、発光器及び受光器の間に配置される。換言すれば、発光器及び受光器は、カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の遮光板67が、当該発光器及び受光器の間に位置するよう、互いに対向して配置されている。
【0060】
光学センサ113は、発光器から左右方向に沿って照射された光が受光器で受光されたか否かに応じて異なる検知信号を出力する。例えば、光学センサ113は、発光器から出力された光が受光器で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号を出力する。一方、光学センサ113は、発光器から出力された光が受光器で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号を出力する。
【0061】
[ロックシャフト145]
図3に示されるように、ロックシャフト145が、カートリッジケース101の天面57付近且つ開口112付近において、カートリッジケース101の左右方向に延出されている。ロックシャフト145は、左右方向に沿って延びる棒状の部材である。ロックシャフト145は、例えば、金属の円柱である。ロックシャフト145の左右方向の両端は、カートリッジケース101の左右方向の両端を画定している壁に固定されている。したがって、ロックシャフト145は、カートリッジケース101に対して回動等の相対移動をしない。ロックシャフト145は、4つのインクカートリッジ30が収納可能な4つの空間に渡って左右方向に延びている。インクカートリッジ30が収容される各空間において、ロックシャフト145の周囲には空間が存在する。したがって、ロックシャフト145に対して、上方へ向かって、また、後方へ向かってインクカートリッジ30のロック面151(係合部の一例)などがアクセスすることができる。
【0062】
ここで、アクセスとは、ロックシャフト145がロック面151に当接するような物理的な接触でもよいし、後述する遮光板67に光学センサ113からの光が当たるような光学的なアクセスでもよいし、後述するIC基板64の電極65に接点106が接触することで電極65と接点106との間で電流が流れるような電気的なアクセスでもよい。また、アクセスされる方向は、上下方向であってもよいし、左右方向であってもよい。
【0063】
ロックシャフト145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着位置に保持するためのものである。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に挿入されて、使用姿勢に回動されることにより、ロックシャフト145に係合する。さらに、ロックシャフト145は、インクカートリッジ30のコイルバネ78がインクカートリッジ30を後方へ押す力に抗してインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に保持する。
【0064】
[タンク103]
図1に示されるように、カートリッジケース101の前方にはタンク103が配置されている。タンク103は、内部にインクを貯留可能な箱形状である。タンク103の上部は、大気連通ポート124によって外部へ開口している。これにより、タンク103の内部空間は、大気開放されている。タンク103の内部空間は、後方においてインクニードル102の内部空間と連通している。これにより、インクニードル102を通じてインクカートリッジ30から流出したインクがタンク103に貯留される。4つのタンク103には、それぞれにインクチューブ20が接続されている。これにより、タンク103の内部空間に貯留されたインクがインクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ供給される。
【0065】
[インクカートリッジ30の全体構造]
インクカートリッジ30は液体であるインクが貯留される容器である。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が、カートリッジ装着部110に装着可能である。4つのインクカートリッジ30のうち、シアン、マゼンタ、イエローに対応する3つのインクカートリッジ30の構成は、図4に示されるように同一である。一方、ブラックに対応するインクカートリッジ30の構成は、図20に示されるように、他の3つのインクカートリッジ30よりも左右方向に長い点において、他の3つのインクカートリッジ30の構成とは異なるが、その他の点において、他の3つのインクカートリッジ30の構成と略同一である。
【0066】
以下では、シアン、マゼンタ、イエローに対応する3つのインクカートリッジ30の構成が説明される。そして、ブラックに対応するインクカートリッジ30の構成については、他の3つのインクカートリッジ30と異なる点について、変形例で説明される。
【0067】
図4図6に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、インクカートリッジ30が使用姿勢にあるときの姿勢、すなわち使用姿勢である。インクカートリッジ30は、前壁40、82と、後壁41、83と、上壁39と、下壁と、側壁37、84と、側壁38、85とを備える。
【0068】
前壁40は、インクカートリッジ30が使用姿勢において、前方を向く壁である。本実施形態において、前壁40は、曲面117、118と、その反対側の面として表面117A、118Aを有している。
【0069】
後壁41は、インクカートリッジ30が使用姿勢において、後方を向く壁である。上壁39は、インクカートリッジ30が使用姿勢において、上方を向き、前端が前壁82の上端と接続され、後端が後壁83の上端と接続されている。
【0070】
下壁は、インクカートリッジ30が使用姿勢において、下方を向き、前端が前壁40の下端と接続され、後端が後壁41の下端と接続されている。本実施形態において、下壁は段差面49を有している。本実施形態では、下壁は、メイン下壁42と、サブ下壁48とを備える。メイン下壁42は、下壁のうち、後壁41の下端と段差面49の下端とを繋ぐ壁である。サブ下壁48は、下壁のうち、前壁40の下端と段差面49の上端とを繋ぐ壁である。本実施形態において、サブ下壁48は、曲面115、116と、その反対側の面として表面115A、116Aを有している。
【0071】
インクカートリッジ30は、使用姿勢においては、後壁41から前壁40に向かう方向が前方向51に一致し、前壁40から後壁41に向かう方向が後方向52に一致する姿勢である。また、インクカートリッジ30は、使用姿勢においては、上壁39から下壁に向かう方向が下方向53(重力方向)に一致し、下壁から上壁39に向かう方向が上方向54に一致する姿勢である。また、インクカートリッジ30は、使用姿勢においては、側壁38から側壁37に向かう方向が右方向55に一致し、側壁37から側壁38に向かう方向が左方向56に一致する。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるときに、前壁40の外面は前方を向き、後壁41の外面は後方を向き、下壁の外面は下方を向き、上壁39の外面は、上方を向く。
【0072】
図4図6に示されるように、インクカートリッジ30は、全体として、左右方向に沿った寸法が短く、上下方向及び前後方向それぞれに沿った寸法が、左右方向に沿った寸法よりも長い扁平形状である。
【0073】
図7に示されるように、インクカートリッジ30は、筐体130と、第1内蓋131と、第2内蓋132と、半透膜141と、フィルム133、146と、外蓋134と、弁機構135と、支持部材150とを備える。筐体130及び外蓋134はカートリッジ本体の一例である。
【0074】
[筐体130]
図7に示されるように、筐体130は、上方が開放された箱形状である。つまり、筐体130の上端には、開口95が形成されている。本実施形態では、筐体130は、樹脂によって形成された容器である。図10に示されるように、筐体130の内部に、第1貯留室32及び第2貯留室33が形成されている。第1貯留室32及び第2貯留室33は液体貯留室の一例である。
【0075】
図4図7に示されるように、筐体130は、外壁として、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38と、メイン下壁42(第2下壁の一例)と、サブ下壁48(第1下壁の一例)とを備える。前壁40と後壁41との間の間隔は、側壁37と側壁38との間の間隔よりも長い。前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38と、メイン下壁42と、サブ下壁48とが、第1貯留室32を画定している。
【0076】
インクカートリッジ30が使用姿勢において、前方を向く筐体130の面が前壁40であり、後方を向く筐体130の面が後壁41である。側壁37、38は、前壁40及び後壁41とそれぞれ交差して延びている。側壁37、38は、前壁40と後壁41とメイン下壁42とサブ下壁48とを繋いでいる。使用姿勢において、側壁37の外面は右方を向いており、側壁38の外面は左方を向いている。
【0077】
筐体130において、少なくとも前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とは、第1貯留室32及び第2貯留室33に貯留されたインクを外部から視認可能な透光性を有するものである。具体的には、第1貯留室32及び第2貯留室33内のインクの色や、第1貯留室32内のインクの液面が視認可能である。特に、第1貯留室32にインクが貯留されていない状態において、インクカートリッジ30を外部から視認した場合、前壁40、後壁41、側壁37、側壁38を介して、後述する下壁45の上面45Aを視認可能である。なお、本実施形態では、液体貯留室が第1貯留室32と第2貯留室33とに分かれているが、液体貯留室は1つであっても良い。すなわち、下壁45は無くてもよい。
【0078】
図14に示されるように、側壁37は、下方へ向かうにしたがって左方へ向かうように、上下方向に対して傾斜している。これにより、側壁37の内面37Aも、下方へ向かうにしたがって左方へ向かうように、上下方向に対して傾斜している。側壁38は、下方へ向かうにしたがって右方へ向かうように、上下方向に対して傾斜している。これにより、側壁38の内面38Aも、下方へ向かうにしたがって左方へ向かうように、上下方向に対して傾斜している。以上より、側壁37の内面37Aと側壁38の内面38Aとの左右方向の間隔は、下方である程に狭くなっている。なお、側壁37の内面37Aと側壁38の内面38Aとが上下方向に対して傾斜している一方で、側壁37、38は上下方向に延びていてもよい。また、側壁37、38及びそれらの内面は、共に上下方向に対して傾斜していなくてもよい。
【0079】
図6に示されるように、メイン下壁42は、後端が前端よりも上方に位置するように、前後方向に対して傾斜した傾斜面である。メイン下壁42の前端は、後述するロック面151よりも前方に位置している。メイン下壁42の後端は、後壁41の下端と繋がっている。つまり、メイン下壁42は、後壁41の下端から前方へ延びている。サブ下壁48は、メイン下壁42より上方且つ前方に位置している。
【0080】
前壁40、後壁41、側壁37、及び側壁38の各々の上端部には、筐体130の外方へ突出した係合爪88が形成されている。係合爪88は、外蓋134に形成された開口86と係合する。なお、本実施形態において、係合爪88は、前壁40、後壁41、側壁37、及び側壁38の各々に一つずつ形成されているが、係合爪88の数は各壁に一つずつに限らない。
【0081】
[第1内蓋131]
図8に示される第1内蓋131は、筐体130の開放された上方の開口95を閉塞するものである。図8に示されるように、第1内蓋131は、上方が開放された箱形状である。第1内蓋131は、底壁136と、底壁136の周縁から立設した側壁137とを備える。側壁137は、その外周面から外方へ突出した張出壁138を備える。
【0082】
底壁136には、上下方向に貫通した貫通孔46が形成されている。図10に示されるように、貫通孔46は、後述する大気連通流路72の空気室36の前後方向の中央位置よりも後側に形成されている。底壁136の上面136Aは、貫通孔46へ向けて下方へ傾斜している。
【0083】
なお、貫通孔46が形成される位置は、図3及び図10に示される位置に限らず、例えば空気室36の前後方向の中央よりも前側に形成されていてもよい。また、上面136Aは、前記のように傾斜していなくてもよい。
【0084】
図10に示されるように、第1内蓋131は、筐体130における開放された上方から筐体130の内部空間に配置され、当該内部空間において筐体130によって支持される。詳細には、第1内蓋131が筐体130の内部空間に位置する状態において、第1内蓋131の前端部における張出壁138の下面は、筐体130の前壁40の内面の上端部に形成された段差面40Bに支持されている。また、第1内蓋131の後端部における張出壁138の下面は、筐体130の後壁41の内面の上端部に形成された段差面41Bに支持されている。第1内蓋131が筐体130に支持された状態において、第1内蓋131の側壁137の上端面137Aと、筐体130の上端面130Aとは、前後方向及び左右方向に拡がる同一の仮想面上にある。
【0085】
図8に示されるように、底壁136の下面136Bには、2つの第1リブ185及び2つの第2リブ186が形成されている。換言すると、底壁136の下面136Bには、第1リブ185及び第2リブ186が2組形成されている。
【0086】
第1リブ185及び第2リブ186は、下面136Bから下方へ突出している。2つの第1リブ185及び2つの第2リブ186の下端は、同一の高さである。
【0087】
第1リブ185及び第2リブ186は、下面136Bに沿って延びている。2つの第1リブ185は、前後方向に間隔を空けて形成されている。2つの第2リブ186は、前後方向に間隔を空けて形成されている。第1リブ185及び第2リブ186は、貫通孔46よりも前方に形成されている。1つの第1リブ185と1つの第2リブ186とは、左右方向において隙間を空けて対向している。
【0088】
第1リブ185は、延出部185Aと傾斜部185Bとを備える。第2リブ186は、延出部186Aと傾斜部186Bとを備える。
【0089】
第1内蓋131が筐体130に支持された状態において、延出部185Aは側壁37の内面と当接しており、延出部186Aは側壁38の内面と当接している。延出部185Aは、側壁37の内面との当接位置である基端から左方へ延びている。延出部186Aは、側壁38の内面との当接位置である基端から右方へ延びている。
【0090】
傾斜部185Bは、延出部185Aの先端(換言すると延出部185Aの左端)から、左方へ向かうにしたがって後方へ向かうように前後方向に対して傾斜しつつ延びている。傾斜部186Bは、延出部186Aの先端(換言すると延出部186Aの右端)から、右方へ向かうにしたがって後方へ向かうように前後方向に対して傾斜しつつ延びている。つまり、傾斜部185B、186Bは、延出部185A、186Aの基端から離れるにしたがって前後方向において貫通孔46へ向かうように、前後方向に対して傾斜しつつ延びている。
【0091】
第1リブ185の傾斜部185Bの先端(換言すると傾斜部185Bの後端)は、当該第1リブ185と左右方向に対向する第2リブ186の傾斜部186Bの先端(換言すると傾斜部186Bの後端)よりも後方に位置している。つまり、第1リブ185の傾斜部185Bの先端は、当該第1リブ185と左右方向に対向する第2リブ186の傾斜部186Bの先端よりも貫通孔46に近い位置にある。
【0092】
なお、第1リブ185及び第2リブ186の数は、2つずつに限らない。また、第1リブ185及び第2リブ186は、貫通孔46よりも後方に設けられていてもよい。また、第2リブ186の傾斜部186Bの先端が、当該第2リブ186と左右方向に対向する第1リブ185の傾斜部185Bの先端よりも後方に位置していてもよい。
【0093】
[第2内蓋132]
図9に示されるように、第2内蓋132は、概ね板形状である。
【0094】
第2内蓋132は、第1内蓋131における開放された上方から第1内蓋131の内部空間に配置され、当該内部空間において第1内蓋131によって支持される。詳細には、第2内蓋132が第1内蓋131の内部空間に位置する状態において、第2内蓋132の下面132Bが、第1内蓋131の側壁137の内周面に形成され且つ上方を向く段差面137B(図8(B)参照)に、上方から当接している。
【0095】
第2内蓋132の上面132Aには、上面132Aの周縁部から上方へ突出したリブ149が形成されている。図10に示されるように、第2内蓋132が第1内蓋131に支持され、且つ第1内蓋131が筐体130に支持された状態において、第2内蓋132のリブ149の上端面149Aは、第1内蓋131の側壁137の上端面137A、及び筐体130の上端面130Aと、前後方向及び左右方向に拡がる同一の仮想面上にある。
【0096】
図9に示されるように、第2内蓋132には、貫通孔139が形成されている。貫通孔139は、第2内蓋132が第1内蓋131に支持された状態において、第1内蓋131の貫通孔46の上方に貫通孔46と対向している。
【0097】
第2内蓋132の下面132Bには、下方へ突出したリブ140が形成されている。リブ140は、貫通孔139より前方に位置している。リブ140は、第2内蓋132を下方から見て矩形状である。なお、リブ140の形状は、第2内蓋132を下方から見て閉じている形状であれば、矩形状に限らない。例えば、リブ140は、第2内蓋132を下方から見て円形状であってもよい。
【0098】
リブ140の下端面に、半透膜141(図7参照)が溶着されている。半透膜141は、インクの通過を遮断し且つ気体の通過を許容する微小な孔を有する多孔質膜である。例えば、半透膜141は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。
【0099】
リブ140の下端面に半透膜141が溶着されることにより、リブ140と、第2内壁132の下面132Bと、半透膜141とによって画定される空間89が形成される。
【0100】
下面132Bにおいて第2内蓋132を下方から見てリブ140の内方には、貫通孔142が形成されている。換言すると、貫通孔142は、下面132Bのうち空間89を画定する部分に形成されている。つまり、貫通孔142は、空間89と繋がっている。すなわち、貫通孔142と半透膜141とは、上下方向に空間89を挟んで並んでいる。貫通孔142は、大気連通流路72の空気室36の前後方向の中央位置よりも前側に形成されている。貫通孔142は、リブ140の内方における右前端部に形成されている。
【0101】
なお、貫通孔142が形成される位置は、図9に示される位置に限らず、例えば、空気室36の前後方向の中央よりも後側に形成されていてもよいし、リブ140の内方における左前端部や後端部であってもよい。
【0102】
第2内蓋132の上面132Aには、屈曲流路143が形成されている。屈曲流路143は、上面132Aと、上面132Aに形成されたリブ144と、リブ144の上端面に溶着されたフィルム146(図7参照)とによって区画されている。
【0103】
リブ144は、前後方向に延びており且つ左右方向に並んで複数設けられている。これにより、屈曲流路143は、前後方向のUターンを繰り返しつつ左方へ延びる連通路となっている。なお、屈曲流路143の形状は、図9に示された形状に限らない。例えば、屈曲流路143は、左右方向のUターンを繰り返しつつ前後方向へ延びる連通路であってもよい。
【0104】
屈曲流路143の一端は、貫通孔142と連通している。屈曲流路143の他端は、連通孔147と連通している。
【0105】
連通孔147は、上方を向いた円形状の孔である。連通孔147は、上面132Aと、上面132Aから上方へ突出した円筒形状のリブ148とによって区画されている。リブ148は、リブ144と繋がっている。これにより、リブ148は、屈曲流路143と連通している。リブ148の上端面には、液体及び気体不透性の材料からなるフィルム146及びフィルム133(図7参照)が溶着されていない。これにより、連通孔147は、上方に開口されており、大気に連通している。すなわち、連通孔147が大気連通流路72の終端である。
【0106】
連通孔147の面積(詳細には連通孔147を上方から見たときの面積)は、屈曲流路143の空気流通方向の断面積(換言すると屈曲流路143を前後方向に見たときの面積)よりも大きい。
【0107】
なお、連通孔147は、円形状に限らない。また、連通孔147は、上以外の方向を向いていてもよい。
【0108】
第2内蓋132の上面132Aにおける貫通孔139の周囲には、リブ156、157、158が形成されている。
【0109】
リブ156は、貫通孔139の周縁に沿って突出しており、円筒形状である。リブ156は、貫通孔139に挿入された弁機構135の弁体161のロッド165(図7及び図10参照)を、左右方向及び前後方向に位置決めする。
【0110】
リブ157は、前後方向においてリブ156を挟むように一対形成されている。各リブ157は、上方から見てリブ156を向いたU字形状である。リブ157は、弁機構135の弁体161のロッド165(図7参照)を、左右方向及び前後方向に位置決めする。
【0111】
リブ158は、前後方向においてリブ156、157を挟むように一対形成されている。各リブ158の先端は屈曲している。この屈曲した部分が、支持部材150の被係合部152と係合する(図10参照)。
【0112】
[フィルム133]
図7に示されるように、フィルム133は、矩形状である。図10に示されるように、フィルム133は、筐体130の上端面130A、第1内蓋131の側壁137の上端面137A、及び第2内蓋132のリブ149の上端面149Aに溶着される。なお、フィルム133の形状は、前述した溶着が可能であれば、矩形以外の形状であってもよい。
【0113】
図7に示されるように、フィルム133には、2つの開口159、160が形成されている。開口159は、フィルム133が溶着された状態におけるリブ144に対応する位置に形成されている。これにより、フィルム133が溶着された状態において、リブ144に溶着されたフィルム146が上方へ露出された状態となる。開口160は、フィルム133が溶着された状態におけるリブ156、157、158及び弁機構135に対応する位置に形成されている。これにより、フィルム133が溶着された状態において、リブ156、157、158及び弁機構135は上方へ露出された状態となる。
【0114】
[外蓋134]
図7に示されるように、外蓋134は、下方が開放された箱形状である。外蓋134は、上壁39と、前壁82と、後壁83と、側壁84と、側壁85とを備える。前壁82は、上壁39の前端から下方へ延びている。前壁82は、下端において筐体130の前壁40と連続しており、外蓋134の前壁82と筐体130の前壁40とで、インクカートリッジ30の前壁を構成している。後壁83は、上壁39の後端から下方へ延びている。後壁83は、下端において筐体130の後壁41と連続しており、外蓋134の後壁83と筐体130の後壁41とで、インクカートリッジ30の後壁を構成している。側壁84は、上壁39の右端から下方へ延びており、前壁82及び後壁83を繋いでいる。側壁84は、下端において筐体130の側壁37と連続しており、外蓋134の側壁84と筐体130の側壁37とで、インクカートリッジ30の側壁を構成している。側壁85は、上壁39の左端から下方へ延びており、前壁82及び後壁83を繋いでいる。側壁85は、下端において筐体130の側壁38と連続しており、外蓋134の側壁85と筐体130の側壁38とで、インクカートリッジ30の側壁を構成している。
【0115】
前壁82、後壁83、側壁84、及び側壁85の各々には、開口86が形成されている。各開口86には、筐体130の係合爪88が係合される。これにより、外蓋134は、筐体130の上方から筐体130に被せられた状態となる。なお、本実施形態では、外蓋134に開口86が形成され、筐体130に係合爪88が形成されているが、外蓋134に係合爪88が形成され、筐体130に開口86が形成されていてもよい。
【0116】
図4及び図5に示されるように、上壁39には、前後方向に延びた開口44が形成されている。開口44は、第2内蓋132のリブ156、157、158の上方に形成されている。
【0117】
上壁39には、上方へ突出した凸部43が形成されている。凸部43は、右方、左方、及び後方から開口44を囲むように形成されている。凸部43には、外部からロックシャフト145がアクセス可能である。
【0118】
図6に示されるように、凸部43において後方を向く面がロック面151である。ロック面151は、上壁39よりも上方に位置している。ロック面151は、上下方向に沿って延びている。ロック面151は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、ロックシャフト145と後方へ向かって接触し得る面である。ロック面151がロックシャフト145と後方へ向かって接触することにより、インクカートリッジ30がコイルバネ78の付勢力に抗してカートリッジ装着部110に保持される。
【0119】
図4及び図5に示されるように、凸部43において、ロック面151より前方には、開口44を挟んで一対の壁114が形成されている。一対の壁114の上端面は、水平面154及び傾斜面155で構成されている。水平面154の後端は、ロック面151と連続している。傾斜面155は、水平面154より前方に位置している。傾斜面155は、水平面154の前端と連続している。傾斜面155は、上方且つ前方を向いている。傾斜面155は、その前端がその後端よりも下方となるように傾斜している。水平面154を介してロック面151と傾斜面155とが連続しているので、ロック面151と傾斜面155との境界が尖った山形状とならない。傾斜面155及び水平面154により、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、ロックシャフト145が傾斜面155及び水平面154に当接しながらロック面151より後方まで円滑に案内される。
【0120】
上壁39において、ロック面151より後方には、操作部90が形成されている。操作部90は、ユーザによりアクセスされて操作されるものである。上壁39の後方に、サブ上面91が形成されている。サブ上面91の上方に、サブ上面91と空間を隔てて操作部90が配置されている。操作部90は、上壁39と、サブ上面91との境界付近から上方へ向けて凸部43と同程度まで上方へ突出した平板形状である。操作部90は、その上端位置が下端位置よりも前方に位置している。図5及び図6に示されるように、操作部90と後方のサブ上面91との間には、リブ94が形成されている。リブ94は、操作部90及び後方のサブ上面91に連続しており、且つ後方へ延びている。左右方向に沿ったリブ94の寸法は、左右方向に沿った操作部90の寸法及び後方のサブ上面91の寸法のそれぞれより小さい。リブ94によって、操作部90の後方部分が上下方向に変形することが抑制される。
【0121】
操作部90において、上方且つ後方を向く面が操作面92である。操作面92の後方部分と後方のサブ上面91とは、前後方向に沿った方向における位置が重複している。換言すれば、インクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30よりも上方から下方に視たとき、操作面92の後方部分と後方のサブ上面91とは重複した位置にある。操作面92には、複数の突起、例えば、左右方向に沿って延出する複数の凸リブ93が、前後方向に間隔を隔てて形成されている。複数の突起としての凸リブ93により、ユーザが操作面92を認識しやすくなり、また、ユーザが操作面92を指で操作するときに、指が操作面92に対して滑りにくくなる。
【0122】
操作面92は、インクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30より上方から下方に視たときに視認可能であり、且つ、インクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30より後方から前方に視たときに視認可能である。操作面92は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態からインクカートリッジ30を抜き出すために、ユーザが操作するための面である。なお、操作部90は、外蓋134と一体に成型されている。これにより、操作部90は、外蓋134に対して固定されており、外蓋134に対して回動などの相対移動をしない。したがって、操作面92にユーザから加えられる力は、方向を変えずに外蓋134にそのまま伝達される。
【0123】
なお、インクカートリッジ30の前壁40、後壁41、上壁39、下壁、及び側壁37,38の各外面は、必ずしも1つの平面をなしている必要はない。すなわち、使用姿勢のインクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30よりも前方から後方に視たときに視認し得る面であり、且つ、使用姿勢のインクカートリッジ30の前後方向の中心よりも前方に位置する面が前壁40の外面である。使用姿勢のインクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30よりも後方から前方に視たときに視認し得る面であり、且つ、使用姿勢のインクカートリッジ30の前後方向の中心よりも後方に位置する面が後壁41の外面である。使用姿勢のインクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30よりも上方から下方に視たときに視認し得る面であり、且つ、使用姿勢のインクカートリッジ30の上下方向の中心よりも上方に位置する面が上壁39の外面である。使用姿勢のインクカートリッジ30を、当該インクカートリッジ30よりも下方から上方に視たときに視認し得る面であり、且つ、使用姿勢のインクカートリッジ30の上下方向の中心よりも下方に位置する面が下壁の外面である。側壁37,38の各外面に関しても同様である。
【0124】
図4図6に示されるように、上壁39の外面には、上方に突出する遮光板67が形成されている。遮光板67は、前後方向に沿って延びている。遮光板67は、凸部43よりも前方に位置している。遮光板67は、後述するIC基板64(回路基板の一例)よりも前方に位置している。
【0125】
遮光板67の右面及び左面は、左右方向に沿って進行する光学センサ113(図2参照)の光を遮断する。つまり、遮光板67は、外部から光がアクセス可能である。より詳細には、光学センサ113の発光器から出力された光が受光器に到達するまでの間に遮光板67に当たることによって、受光器に到達する光の強度が所定の強度未満、例えば、ゼロとなる。遮光板67は、光が左右方向に沿って進むのを完全に遮断してもよいし、光を部分的に減衰させてもよいし、光の進行方向を曲げてもよいし、光を全反射させてもよい。また、遮光板67には切欠き66が形成されている。切欠き66は、遮光板67の上端から下方へ凹む空間であり、前後方向に拡がっている。切欠き66が光学センサ113に位置することにより、光学センサ113の発光器から出力された光は、受光器に到達するまでに遮断されない。このような切欠き66の有無によって、インクカートリッジ30の種別、すなわちインクカートリッジ30が貯留するインクの種類や初期量などを、例えばユーザ又はプリンタ10が判別可能となる。
【0126】
図4図6に示されるように、上壁39の外面であって、前後方向における遮光板67と凸部43との間には、IC基板64が配置されている。IC基板64は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される途中において4つの接点106と導通し、かつインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態においても4つの接点106と導通する。
【0127】
IC基板64は、基板と、IC(各図には現れていない)と、4つの電極65とを備える。基板は、ICを支持している。また、基板には4つの電極65が形成されている。4つの電極65とICとは電気的に接続されている。4つの電極65は、それぞれが前後方向に沿って延出しており、4つの電極65は左右方向に並んでいる。4つの電極65は、IC基板64の上面に電気的にアクセス可能に露出されている。これにより、カートリッジケース101の4つの接点106それぞれと、4つの電極65それぞれとが、直接に接することが可能となる。ICは、集積回路であり、インクカートリッジ30に関する情報、例えば、ロット番号や製造年月日、インク色などの情報を示すデータが読み出し可能に格納されている。なお、基板は、いわゆるリジット基板であってもよいし、柔軟性のあるフレキシブル基板であってもよい。
【0128】
[インクカートリッジ30の内部構造]
図10に示されるように、インクカートリッジ30の内部には、第1貯留室32、第2貯留室33、インクバルブ室35(液体流路の一例)、及び大気連通流路72が形成されている。
【0129】
インクカートリッジ30は、その内部に、下壁45を備える。下壁45は、前後方向及び左右方向に拡がる壁である。筐体130が第1内蓋131を支持した状態において、下壁45と第1内蓋131の底壁136とは、上下方向において互いに対向している。
【0130】
第1貯留室32は、第1内蓋131の底壁136の下面136Bにより上端が画定され、下壁45の上面45A及びサブ下壁48の上面により下端が画定される。第1貯留室32は、前壁40の内面により前端が画定され、後壁41の内面により後端が画定される。第1貯留室32は、側壁37,38の各内面により左右両側端がそれぞれ画定される。つまり、第1貯留室32は、第1内蓋131の底壁136の下面136B、下壁45の上面45A及びサブ下壁48の上面、前壁40の内面、後壁41の内面、及び側壁37,38の各内面によって画定された空間である。つまり、第1貯留室32の前後方向の寸法は、第1貯留室32の左右方向の寸法より長い。なお、前壁40、後壁41、及び側壁37,38と第1内蓋131との隙間は、フィルム133によって液密に封止されている。
【0131】
第1貯留室32を画定する各内面のうち、第1内蓋131の底壁136の下面136Bからは、第1リブ185及び第2リブ186が第1貯留室32へ向けて突出している。
【0132】
一方、第1貯留室32を画定する各内面のうち、下面136B以外の面からは、リブが突出していない。つまり、下壁45の上面、前壁40の内面、後壁41の内面、及び側壁37,38の各内面から第1貯留室32へ延びた内壁が形成されていない。なお、下壁45の上面、前壁40の内面、後壁41の内面、及び側壁37,38の各内面には、当該内壁が形成されていないことが好ましいものの、当該内壁が形成されていてもよい。
【0133】
インクカートリッジ30の製造時点において、第1貯留室32に貯留されているインクは、下壁45の上面、前壁40の内面、後壁41の内面、及び側壁37,38の各内面に接する。
【0134】
上述したように、第1内蓋131の底壁136には、貫通孔46が形成されている。貫通孔46によって、第1貯留室32と大気連通流路72の空気室36とが連通されている。
【0135】
第2貯留室33は、筐体130の内部空間において、使用姿勢における第1貯留室32の下方に位置してインクを貯留する。第2貯留室33がインクを貯留可能な容積は、第1貯留室32がインクを貯留可能な容積より小さい。
【0136】
第2貯留室33は、下壁45の下面により上端が画定され、メイン下壁42の上面により下端が画定される。第2貯留室33は、後壁41の内面により後端が画定される。第2貯留室33は、側壁37,38の各内面により左右両側端が画定される。第2貯留室33とインクバルブ室35との間には隔壁50が形成されている。隔壁50の第2貯留室33に近い面により、第2貯留室33の前端が画定されている。つまり、第2貯留室33は、下壁45の下面、メイン下壁42の上面、後壁41の内面、側壁37,38の各内面、及び隔壁50の内面により画定された空間である。
【0137】
インクカートリッジ30の製造時点において、第2貯留室33に貯留されているインクは、下壁45の下面、メイン下壁42の上面、後壁41の内面、及び側壁37,38の各内面、及び隔壁50の第2貯留室33を画定する面に接する。
【0138】
第2貯留室33は、下壁45に形成された連通孔47(図11参照)によって第1貯留室32と連通されている。図11に示されるように、連通孔47は、下壁45の後端部且つ右端部に形成されている。また、図10に示されるように、第2貯留室33は、隔壁50に形成された貫通孔99によって、インクバルブ室35と連通されている。
【0139】
図10に示されるように、下壁45の上面45A及びサブ下壁48の上面48Aは、曲面をなしている。下壁45の上面45A及びサブ下壁48の上面48Aは、後方へ向かうにしたがって下方へ向かうように前後方向に対して傾斜している。つまり、下壁45の上面45Aサブ下壁48の上面48Aは、連通口47へ向かうにしたがって下方へ向かうように前後方向に対して傾斜している。
【0140】
なお、連通孔47が形成される位置は、下壁45の後端部且つ右端部に限らない。例えば、連通孔47は、下壁45の前後方向の中央部に形成されていてもよいし、左右方向の全域に亘って形成されていてもよいし、サブ下壁48に形成されていてもよい。
【0141】
また、本実施形態において、下壁45の上面45Aは、連通口47へ向かうにしたがって下方へ向かうように前後方向に対して傾斜しているが、下壁45の上面45Aは必ずしも前記のように傾斜している必要はない。
【0142】
図14に示されるように、側壁37の内面37Aの下端から曲面115が下方へ延出しており、側壁38の内面38Aの下端から曲面116が下方へ延出している。本実施形態において、曲面115、116は、サブ下壁48の内面が湾曲することによって形成されている。なお、図示されていないが、下壁45の内面によっても曲面が形成されている。そして、サブ下壁48によって形成された曲面115、116の曲率半径は、下壁45によって形成された曲面の曲率半径よりも大きい。曲面115は、下方へ向かうにしたがって左方へ向かうように湾曲している。曲面116は、下方へ向かうにしたがって右方へ向かうように湾曲している。曲面115、116は、筐体130の外方へ膨らむように湾曲している。曲面115の下端は、曲面116の下端と接続されている。ここで、曲面115の下端及び曲面116の下端は、第1貯留室32の前部における最下部となる。つまり、曲面115の下端は、曲面116の下端(第1貯留室32の前部における最下部)と接続されており、曲面116の下端は、曲面115の下端(第1貯留室32の前部における最下部)と接続されている。これによって、サブ下壁48の内面には側壁37から側壁38までを連続的に接続するU字状の内面が形成される。
【0143】
サブ下壁48の表面115Aは、曲面115と概ね平行に湾曲している。つまり、表面115Aは、曲面115を同じ方向へ湾曲した曲面で構成されている。サブ下壁48の表面116Aは、曲面116と概ね平行に湾曲している。つまり、表面116Aは、曲面116を同じ方向へ湾曲した曲面で構成されている。なお、表面115A、116Aは、必ずしも湾曲している必要はなく、例えば屈曲していてもよい。
【0144】
図11に示されるように、側壁37の内面37Aの前端から曲面117が前方へ延出しており、側壁38の内面38Aの前端から曲面118が前方へ延出している。本実施形態において、曲面117、118は、前壁40が湾曲することによって形成されている。曲面117は、前方へ向かうにしたがって左方へ向かうように湾曲している。曲面118は、前方へ向かうにしたがって右方へ向かうように湾曲している。曲面117、118は、筐体130の外方へ膨らむように湾曲している。曲面117の前端は、前壁40の内面40Aの右端と接続されている。曲面118の前端は、前壁40の内面40Aの左端と接続されている。ここで、前壁40の内面40Aの左右方向の中央部は、第1貯留室32の最前部となる。つまり、つまり、曲面117の前端及び曲面118の前端は、第1貯留室32の最前部を含む面(前壁40の内面40A)と接続されている。
【0145】
前壁40の表面117Aは、曲面117と概ね平行に湾曲している。つまり、表面117Aは、曲面117を同じ方向へ湾曲した曲面で構成されている。前壁40の表面118Aは、曲面118と概ね平行に湾曲している。つまり、表面118Aは、曲面118を同じ方向へ湾曲した曲面で構成されている。なお、表面117A、118Aは、必ずしも湾曲している必要はなく、例えば屈曲していてもよい。
【0146】
なお、曲面115と曲面117との境界部分、曲面116と曲面118との境界部分、表面115Aと表面117Aとの境界部分、及び表面116Aと表面118Aとの境界部分は、滑らかに繋がって概ね球面状に構成されている。この球面状の部分は、図7に符号200で示されている。
【0147】
また、上記では、曲面115の下端と曲面116の下端とが接続されていたが、曲面115の下端と曲面116の下端とは、変形例において後述するブラックに対応するインクカートリッジ30の曲面115、116と同様に、サブ下壁48の上面と接続されていてもよい。また、上記では、曲面117の前端と曲面118の前端とは前壁40の内面40Aと接続されていたが、曲面117の前端と曲面118の前端とが接続されていてもよい。
【0148】
また、上記では、側壁37、38の下端及び前端から曲面が延出した構成が説明されたが、曲面は、側壁37、38の後端、前壁40、後壁41、メイン下壁42、及びサブ下壁48から延出していてもよい。また、曲面は、前述した各壁の内面の少なくとも一つの端から延出していればよい。
【0149】
また、曲面115,116の曲率半径は、例えば1mm以上、1mm~3mmである。また、表面115A、116Aの曲率半径は、例えば7mm以上である。
【0150】
[大気連通流路72]
大気連通流路72は、第1貯留室32とインクカートリッジ30の外部とを連通する空間であり、筐体130の上方に形成されている。図10に示されるように、大気連通流路72は、空気室36と、上述した屈曲流路143とで構成されている。
【0151】
空気室36は、大気連通流路72において、一方が第1貯留室32に連通し、他方が屈曲流路143に連通した空間である。空気室36は、一部が第1貯留室32の上方かつ屈曲流路143の下方に配置されている。空気室36は、第1内蓋131の底壁136の上面136Aにより下端が画定され、第2内蓋132の下面132Bにより上端が画定される。空気室36は、第1内蓋131の側壁137(図8参照)の内面により前端、後端、右端、及び左端が画定される。なお、第2内蓋132と第1内蓋131の側壁137との隙間は、フィルム133によって液密に封止されている。
【0152】
なお、上述したように、第1貯留室32は、第1内蓋131の底壁136の下面136Bにより上端が画定されている。つまり、底壁136は、第1貯留室32と空気室36とを仕切っている。
【0153】
空気室36は、底壁136に上下方向に貫通された貫通孔46によって第1貯留室32と連通されている。空気室36は、第2内蓋132に形成された貫通孔142(図9参照)によって屈曲流路143と連通されている。上述したように、第2内蓋132のリブ140の下端面に、半透膜141(図7参照)が溶着されている。これにより、貫通孔46を通じて第1貯留室32から流通してきたインクは、半透膜141に阻まれて貫通孔142に到達しない。その結果、インクの屈曲流路143への流通は防止される。
【0154】
上述したように、屈曲流路143は、上面132A及びリブ144(図9参照)と、フィルム146(図7参照)とによって区画されており、前後方向のUターンを繰り返しつつ左方へ延びる連通路であり、上端がフィルム146で覆われた溝として形成されている。屈曲流路143は、第2内蓋132に形成された貫通孔142によって空気室36と連通されている。屈曲流路143は、空気室36の上面(本実施形態では第2内蓋132の内面)とは反対側の面に形成されている。屈曲流路143は、連通孔147(図7参照)によって外蓋134の内部空間134Aに連通している。内部空間134Aは、外蓋134の上壁39に形成された開口44や、外蓋134と筐体130との隙間を通じてインクカートリッジ30の外部と連通している。つまり、屈曲流路143は、連通孔147によって大気に連通している。
【0155】
[弁機構135及び支持部材150]
弁機構135は、第1貯留室32と大気との間の連通の有無を切り替える機能を有する機構である。以下に本実施形態における弁機構135の構成が説明されるが、弁機構135の構成は前述した機能を有することを条件として本実施形態における構成とは異なる構成であってもよい。例えば、後述する弁体161が上下方向以外の方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0156】
図7及び図10に示されるように、弁機構135 は、弁体161と、コイルバネ162と、レバー163とを備える。弁体161は、ロッド165と、ロッド165に外嵌されたシール部材166とを備えている。図10に示されるように、弁機構135のうちロッド165の一部と、シール部材166は、大気連通流路72に配置されている。弁機構135のロッド165の一部以外の部分と、コイルバネ162とは、外蓋134の内部空間134Aに配置されている。なお、弁機構135の配置は、前述した配置に限らない。例えば、弁機構135の全部が大気連通流路72に配置されていてもよい。
【0157】
図7に示される支持部材150は、弁機構135(詳細には後述するレバー163)を回動可能に支持する部材である。支持部材150の内部には、弁機構135の一部を配置可能な空間が形成されている。図10に示されるように、支持部材150は、その前端部及び後端部に被係合部152を備えている。被係合部152が第2内蓋132のリブ158の屈曲部分と係合することにより、支持部材150は第2内蓋132に支持される。
【0158】
また、ロッド165は、第2内蓋132のリブ157(図9参照)の間に配置されている。ロッド165の上面は、前部165Aが後部165Bよりも上方に位置するように段差面165Cが形成されている。
【0159】
ロッド165は、上下方向に延びている。ロッド165は、第2内蓋132の貫通孔139(図9参照)に挿入されている。シール部材166は、ゴムなどの弾性を有する材料で構成されている。シール部材166は、ロッド165に対して隙間無く圧接されている。これにより、シール部材166とロッド165との間は、閉塞されている。
【0160】
弁体161は、図10及び図16に示される閉塞位置と、図3に示される開放位置との間を上下方向に沿って移動可能である。なお、弁体161の左右方向及び前後方向への移動は、第2内蓋132のリブ156、157(図9参照)によって規制されている。
【0161】
図10及び図16に示されるように、弁体161が閉塞位置の状態において、ロッド165の前後両側から突出した部分の下面は、第2内蓋132の上面と当接して支持されている。また、シール部材166は、貫通孔46の周縁部を覆っている。これにより、シール部材166と貫通孔46との間は、閉塞されている。つまり、貫通孔46がシール部材166及びロッド165によって閉塞されることにより、第1貯留室32と大気との間の連通が遮断された状態となる。
【0162】
図3に示されるように、開放位置の弁体161は、閉塞位置の弁体161(図10及び図16参照)よりも上方に位置する。弁体161が開放位置の状態において、ロッド165の前後両側から突出した部分の下面は、第2内蓋132の上面から上方へ離間している。また、シール部材166は、貫通孔46の周縁部から上方へ離間している。これにより、貫通孔46が開放される。その結果、貫通孔46を通じて第1貯留室32と大気との間が連通された状態となる。一方、シール部材166は、下方から貫通孔139に圧接して、貫通孔139の周縁部を覆っている。これにより、シール部材166と貫通孔139との間は、閉塞されている。つまり、貫通孔139がシール部材166及びロッド165によって閉塞されている。
【0163】
図10に示されるように、コイルバネ162は、ロッド165の周りに配置される。コイルバネ162の上端は、弁体161のロッド165と当接している。コイルバネ162の下端は、第2内蓋132の上面132Aと当接している。弁体161が閉塞位置の状態において、コイルバネ162は、自然長よりも短い状態である。よって、弁体161が閉塞位置の状態において、コイルバネ162は、弁体161を上方へ、つまり開放位置への向きへ付勢している。なお、弁体161を付勢するのは、コイルバネ162に限らず、板バネや、ゴムなどの弾性体などであってもよい。
【0164】
図7及び図10に示されるように、レバー163は、回動軸167と、回動軸167から延出した第1の突起168及び第2の突起169とを備える。
【0165】
回動軸167は、本実施形態において、貫通孔の中心である。図10に示されるように、支持部材150の内部空間の右端を区画する右内面と、支持部材150の内部空間の左端を区画する左内面とから、それぞれ突出した一対の突起170が、回動軸167に挿入されている。当該右内面から突出した突起170は、右方から回動軸167に挿入されている。当該左内面から突出した突起170は、左方から回動軸167に挿入されている。これにより、レバー163は、支持部材150によって回動可能に支持されている。なお、回動軸167は、レバー163から右方及び左方へ突出した突起であってもよい。この場合、支持部材150の右内面及び左内面には、それぞれ開口が形成されており、突起である回動軸167は、当該開口に挿入される。
【0166】
図7及び図10に示されるように、第1の突起168及び第2の突起169は、回動軸167を挟んで互いに逆方向へ延出している。
【0167】
レバー163は、図10及び図16に示される第1位置と、図3に示される第2位置との間を回動可能である。
【0168】
レバー163が第1位置の状態において、第1の突起168は下方へ延出している。第1の突起168の先端は、回転軸167よりも後方に位置している。詳細には、図10に示されるように、回転軸167と第1の突起168の先端とを結んだ仮想線172は、回転軸167から重力方向に延ばした仮想線172に対して所定角度θ3(本実施形態では5度)、後方へ傾いている。第1の突起168の下端部は、弁体161のロッド165の上面の後部165Bと当接して、弁体161を下方へ押している。これにより、弁体161は、閉塞位置に位置する。また、第2の突起169は上方(詳細には後斜め上方)へ延出している。第2の突起169は、凸部43の一対の壁114に挟まれるように配置されている。第2の突起169の上端は、一対の壁114よりも上方へ突出していない。
【0169】
レバー163が第1位置の状態において、第1の突起168の前方への回動、つまり図10におけるレバー163の第2位置へ向けての時計回りへの回動は、第1の突起168の先端が回転軸167よりも後方に位置していること、及び弁体161のロッド165の段差面165Cによって規制されている。なお、当該規制がなされるように、コイルバネ162の上方への付勢力は、第1の突起168が弁体161のロッド165の上面の後部165Bから前部165Aへ移動するために必要な力よりも小さく設定されている。なお、ロッド165の上面における段差面165Cの有無は任意である。仮に、段差面165Cが無く、ロッド165の上面がフラットであったとしても、第1の突起168の先端が回転軸167よりも後方に位置していることによって、図10におけるレバー163の第2位置へ向けての時計回りへの回動は規制可能である。
【0170】
一方、第1の突起168の後方への回動、つまり図10におけるレバー163の反時計回りへの回動は、支持部材150の右内面に形成された突起171がレバー163と当接することによって規制されている。以上の規制により、レバー163は、第1位置に保持されている。また、第1位置のレバー163は、弁体161の開放位置への移動を妨害して、弁体161を閉塞位置に保持している。
【0171】
図3に示されるように、レバー163が第2位置の状態において、レバー163は凸板111から離間している。また、第1の突起168は前方へ延出している。また、第2の突起169は下方(詳細には後斜め下方)へ延出している。また、弁体161は、開放位置に位置している。
【0172】
[インク供給部34]
図6に示されるように、インク供給部34は、サブ下壁48の下方、且つメイン下壁42の上方且つ前方において、段差面49から前方へ延びている。図10に示されるように、インク供給部34は、下壁45より下方に位置している。また、インク供給部34は、前壁40よりも下方且つ後方に位置している。
【0173】
図12に示されるように、インク供給部34は、筒体75と、パッキング76(シール部の一例)と、バルブ77と、コイルバネ78と、キャップ79と、スナップフィット機構74とを備える。
【0174】
筒体75は、円筒形状の外形をなしている。なお、筒体75は、筒形状であれば円筒以外の形状であってもよい。筒体75の先端は、前方を向いている。筒体75の先端は、前壁40よりも下方且つ後方に位置している。筒体75の前端は開口している。筒体75の内部空間が、インクバルブ室35である。
【0175】
パッキング76は、円盤形状の部材である。パッキング76は、例えば、ゴムやエラストマのような弾性材料から形成されている。図10に示されるように、パッキング76は、筒体75の前端の開口を覆うように、筒体75の前端部に配置されている。パッキング76の中央が前後方向に貫通されて筒状の内周面が形成されている。当該筒状の内周面により、パッキング76に貫通孔73が形成されている。貫通孔73の内径は、インクニードル102の外径より若干小さい。
【0176】
図10に示されるように、バルブ77及びコイルバネ78は、インクバルブ室35に収容されている。バルブ77は、前後方向に沿って移動することにより、パッキング76と接離可能である。バルブ77がパッキング76と接離することにより、パッキング76の中央に貫通された貫通孔73が開閉される。コイルバネ78はバルブ77を前方へ付勢している。したがって、外力が付与されていない状態において、バルブ77は、パッキング76の貫通孔73を閉じている。
【0177】
図13に示されるように、キャップ79は、概ね直方体の外形をなしている。キャップ79は中空である。なお、キャップ79は、前端及び後端が開口された中空の部材であれば、直方体以外の外形であってもよい。
【0178】
キャップ79の後端には、開口87が形成されている。開口87を通じて、筒体75及びパッキング76が、キャップ79の内部空間に挿入される。これにより、キャップ79は、前方から筒体75及びパッキング76に被せられる。図10に示されるように、キャップ79が筒体75に被せられた状態において、キャップ79の下端は、上下方向において、筐体130の下端と略同じ位置である。
【0179】
キャップ79の前面79Aには、インク供給口71が形成されている。キャップ79が筒体75及びパッキング76に被せられた状態において、インクバルブ室35は、パッキング76の貫通孔73及びキャップ79のインク供給口71を通じて、インクカートリッジ30の外部と連通している。
【0180】
図10に示されるように、キャップ79の内部空間には、第1吸収部材182及び第2吸収部材183が配置されている。第1吸収部材182及び第2吸収部材183は吸収部材の一例である。第1吸収部材182及び第2吸収部材183は、発泡ポリウレタンなどの多孔材料からなる。多孔材料に形成された孔にインクが進入することにより、インクは第1吸収部材182及び第2吸収部材183に吸収される。
【0181】
第1吸収部材182は、円環状である。第1吸収部材182は、インク供給口71を区画する周面に沿って配置されている。つまり、第1吸収部材182は、インク供給口71の周縁部の近傍に配置されている。なお、第1吸収部材182の形状は円環状に限らない。例えば、第1吸収部材182は、矩形状であり、インク供給口71を区画する周面の下部にのみ配置されていてもよい。
【0182】
第2吸収部材183は、板形状である。第2吸収部材183は、第1吸収部材182より後方に配置されている。第2吸収部材183は、キャップ79の内部空間の下部に配置されており、キャップ79の内部空間を区画する下面に支持されている。なお、第2吸収部材183の形状は板形状に限らない。例えば、第2吸収部材183は、キャップ79の内部空間を区画する内面の全域に亘って配置されていてもよい。
【0183】
図10及び図13に示されるように、キャップ79の内部空間を区画する下面には、前後方向に沿って延びた溝184が、少なくとも1本形成されている。溝184の前端は、第1吸収部材182と繋がっている、または、第1吸収部材182の近傍に位置している。溝184の後端は、第2吸収部材183と繋がっている、または、第2吸収部材183の近傍に位置している。つまり、溝184は、インク供給口71の周縁部から第2吸収部材183に亘って形成されている。
【0184】
なお、キャップ79の内部空間に、第1吸収部材182及び第2吸収部材183が配置されていなくてもよい。また、キャップ79の内部空間を区画する下面に、溝184が形成されていなくてもよい。
【0185】
図13に示されるように、キャップ79の外周面には、4つのガイド溝175A、175B、175C、175Dが形成されている。ガイド溝175Aは、キャップ79の右上端に形成されている。ガイド溝175Bは、キャップ79の左上端に形成されている。ガイド溝175Cは、キャップ79の右下端に形成されている。ガイド溝175Dは、キャップ79の左下端に形成されている。つまり、ガイド溝175Aとガイド溝175Dとは、前後方向に直交する第1方向においてインクバルブ室35を挟んでおり、ガイド溝175Bとガイド溝175Cとは、前後方向及び第1方向と直交する第2方向においてインクバルブ室35を挟んでいる。上述したように、キャップ79は、概ね直方体の外形をなしている。つまり、キャップ79は、前後方向から見たときの投影面が直線的に延びる4つの辺と当該辺同士をつなぐ4つの角部とを有する形状である。そして、4つのガイド溝175A、175B、175C、175Dの各々は、4つの角部の各々に形成されている。言い換えると、ガイド溝175A、175B、175C、175Dは、キャップ79の外周面に形成された突起によって形成されている。すなわち、キャップ79のインク供給口71を左右方向から挟む位置にはキャップ79の外表面から右方向および左方向に突出する突起が設けられている。この突起の上端面がガイド溝A、175Bの第1ガイド面176を形成している。また、この突起の下端面がガイド溝C、175Dの第1ガイド面176を形成している。
【0186】
以下、4つのガイド溝175A、175B、175C、175Dを総称してガイド溝175と記す。ガイド溝175は、前後方向に長手方向を成すように延びている。
【0187】
ガイド溝175A、175Cは、IC基板64よりも右方に形成されている。ガイド溝175B、175Dは、IC基板64よりも左方に形成されている。つまり、ガイド溝175は、左右方向においてIC基板64よりも外方に一対設けられている。なお、ガイド溝175の位置は、左右方向におけるIC基板64よりも外方に限らない。
【0188】
ガイド溝175A、175Bは、第1ガイド面176と第2ガイド面177とで構成されている。ガイド溝175C、175Dは、第1ガイド面176と第2ガイド面177と第3ガイド面178とで構成されている。なお、図13において、ガイド溝175Dの第3ガイド面178は、隠れた位置にあるために記載されていない。
【0189】
第1ガイド面176は、前後方向及び左右方向に拡がった平面である。第3ガイド面178は、後端が前端よりも上方となるように前後方向に対して傾斜した方向及び左右方向に拡がった平面である。第3ガイド面178は、第1ガイド面176より後方に位置している。第3ガイド面178の前端は、第1ガイド面176の後端と連続している。第2ガイド面177は、前後方向及び上下方向に拡がった面である。第2ガイド面177は、第1ガイド面176及び第3ガイド面178と繋がっている。なお、第1ガイド面176、第2ガイド面177、及び第3ガイド面178は、繋がっていなくてもよい。
【0190】
図6に示されるように、第3ガイド面178の前後方向に対する角度θ1は、メイン下壁42の前後方向に対する角度θ2よりも大きい。
【0191】
第1ガイド面176の後端は、パッキング76の前端よりも後方に位置する。
【0192】
ガイド溝175A、175Bの第1ガイド面176は上方を向いており、ガイド溝175C、175Dの第1ガイド面176及び第3ガイド面178は下方を向いている。ガイド溝175A、175Cの第2ガイド面177は右方を向いており、ガイド溝175B、175Dの第2ガイド面177は左方を向いている。
【0193】
ガイド溝175A、175B、175C、175Dは、上述した第1ガイド面176、第2ガイド面177によって形成される、前後方向に見てL字状の溝である。具体的には、第1ガイド面176、第2ガイド面177、及び第3ガイド面178と対向する位置には、面が存在していない。つまり、第1ガイド面176、第2ガイド面177、及び第3ガイド面178は、それぞれの面と直交する方向に開放されている。具体的には、ガイド溝175A、175Bの第1ガイド面176は上方に開放されており、ガイド溝175C、175Dの第1ガイド面176は下方に開放されている。また、ガイド溝175A、175Cの第2ガイド面177は右方に開放されており、ガイド溝175B、175Dの第2ガイド面177は左方に開放されている。また、第3ガイド面178は下方に開放されている。第1ガイド面176と第2ガイド面177とは、所定の角度をなしており、例えば90度である。第1ガイド面176の左右方向の寸法よりも、第2ガイド面177の上下方向の寸法のほうが長い。
【0194】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に前方へ挿入される過程において、インクニードル102の右斜め上に形成された突起105Aがガイド溝175Aに進入し、インクニードル102の左斜め上に形成された突起105Bがガイド溝175Bに進入し、インクニードル102の右斜め下に形成された突起105Cがガイド溝175Cに進入し、インクニードル102の左斜め下に形成された突起105Dがガイド溝175Dに進入する。そして、ガイド溝175は突起105にガイドされる。
【0195】
詳細には、ガイド溝175Aの第1ガイド面176が突起105Aの第1ガイド面196にガイドされ、ガイド溝175Aの第2ガイド面177が突起105Aの第2ガイド面197にガイドされる。また、ガイド溝175Bの第1ガイド面176が突起105Bの第1ガイド面196にガイドされ、ガイド溝175Bの第2ガイド面177が突起105Bの第2ガイド面197にガイドされる。また、ガイド溝175Cの第1ガイド面176が突起105Cの第1ガイド面196にガイドされ、ガイド溝175Cの第2ガイド面177が突起105Cの第2ガイド面197にガイドされる。また、ガイド溝175Dの第1ガイド面176が突起105Dの第1ガイド面196にガイドされ、ガイド溝175Dの第2ガイド面177が突起105Dの第2ガイド面197にガイドされる。
【0196】
さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に前方へ挿入されると、インクニードル102の右斜め下及び左斜め下に形成された突起105の上方に、ガイド溝175C、175Dの第3ガイド面178が位置するようになる。これにより、突起105の第1ガイド面196と第3ガイド面178との間に、上下方向の隙間が生じる。その結果、インクカートリッジ30は、カートリッジケース101内で、当該隙間の分だけ回動可能となる。
【0197】
なお、ガイド溝175の位置は、カートリッジ装着部110の突起105に対応する位置であることを条件として、キャップ79の右上端、左上端、右下端、及び左下端に限らない。例えば、ガイド溝175は、キャップ79の上面の左右方向中央部、キャップ79の下面の左右方向中央部、キャップ79の右面の上下方向中央部、及びキャップ79の左面の上下方向中央部に形成されていてもよい。また、ガイド溝175は、キャップ79に、3つ以下または5つ以上形成されていてもよい。
【0198】
また、ガイド溝175は、第1ガイド面176と対向する面を有していてもよい。この場合、ガイド溝175は、少なくとも当該面と第1ガイド面176と第2ガイド面177とで構成され、第1ガイド面176は第1ガイド面176と直交する方向に開放されていない。また、ガイド溝175は、第2ガイド面177と対向する面を有していてもよい。この場合、ガイド溝175は、少なくとも当該面と第1ガイド面176と第2ガイド面177とで構成され、第2ガイド面177は第2ガイド面177と直交する方向に開放されていない。
【0199】
また、ガイド溝175C、175Dは、第3ガイド面178を備えていなくてもよい。この場合、ガイド溝175C、175Dは、ガイド溝175A、175Bと同様に、第1ガイド面176と第2ガイド面177とで構成される。
【0200】
図12に示されるスナップフィット機構74は、キャップ79と筐体130または筒体75とを係合するものである。本実施形態において、スナップフィット機構74は、キャップ79と筐体130とを係合する。
【0201】
図12に示されるように、スナップフィット機構74は、筐体130の側壁37、38の各々に2つずつ形成された4つの凸部179と、キャップ79に形成された2つの突起180とを備えている。
【0202】
2つの凸部179が上下方向に間隔を空けて、側壁37から右方へ突出している。なお、図12において、側壁37から突出した2つの凸部179は、隠れた位置にあるため記載されていない。図12に示されるように、2つの凸部179が上下方向に間隔を空けて、側壁38から左方へ突出している。なお、凸部179は、インク供給部34の筒体75から突出していてもよい。図6に示されるように、凸部179は、後方を向く係合面179Aを備えている。
【0203】
図13に示されるように、突起180は、キャップ79の開口87の縁部からキャップ79の軸方向に沿って突出している。インクカートリッジ30の使用姿勢において、キャップ79の軸方向は前後方向であり、突起180は後方へ突出している。
【0204】
2つの突起180の一方は、開口87の右方から後方へ突出している。2つの突起180の他方は、開口87の左方から後方へ突出している。つまり、2つの突起180は、左右方向において開口87を挟んで対向配置されている。キャップ79が筒体75に被せられた状態において、2つの突起180の一方は、左右方向において側壁37と対向しており、2つの突起180の他方は、左右方向において側壁38と対向している。つまり、キャップ79が筒体75に被せられた状態において、2つの突起180は、筐体130を挟んで左右方向に対向配置されている。なお、凸部179が筒体75から突出している場合、2つの突起180は、筒体75を挟んで対向配置される。
【0205】
突起180の上端は、キャップ79の上端よりも下方に位置する。突起180の下端は、キャップ79の下端よりも上方に位置する。キャップ79を後方から見て、突起180は、キャップ79の外縁よりも外方にはみ出していない。換言すると、キャップ79を後方から見て、突起180は、キャップ79の外縁よりも内方に位置する。
【0206】
なお、キャップ79を後方から見て、突起180の一部が、キャップ79の外縁よりも外方に位置していてもよい。例えば、突起180の上端がキャップ79の上端よりも上方に位置していてもよいし、突起180の下端がキャップ79の下端よりも下方に位置していてもよい。
【0207】
突起180の幅(突起180の上下方向の長さ)は、後方である程に短くなっている。つまり、突起180は、その先端部に近い程に上下方向の長さが短くなるテーパ形状である。なお、突起180は、前述したようなテーパ形状でなくてもよい。
【0208】
突起180の先端部180Aには、一対の係合爪181が形成されている。一対の係合爪181の一方は、先端部180Aの上面から上方へ(詳細には前斜め上方へ)突出している。一対の係合爪181の他方は、先端部180Aの下面から下方へ(詳細には前斜め下方へ)突出している。係合爪181は、突起180の他の部分に比べて細く形成されている。そのため、係合爪181は、突起180の先端部180Aに対し相対移動可能に弾性変形可能である。係合爪181は、その基端(先端部180Aとの接合部)を中心として上下方向に回動するように弾性変形し易く構成されている。
【0209】
キャップ79が前方から筒体75及びパッキング76に被せられた状態において、一対の係合爪181は、凸部179の係合面179Aと係合している(図6参照)。詳細には、2つの突起180のうちの開口87の右方に位置する突起180に形成された一対の係合爪181は、側壁37から右方へ突出した2つの凸部179の係合面179Aとそれぞれ係合する。2つの突起180のうちの開口87の左方に位置する突起180に形成された一対の係合爪181は、側壁38から左方へ突出した2つの凸部179の係合面179Aとそれぞれ係合する。これにより、キャップ79は、筐体130に取り付けられた状態に保持される。
【0210】
また、図10に示されるように、キャップ79が前方から筒体75及びパッキング76に被せられた状態において、キャップ79の前面79Aの裏面である内面79Bが前方からパッキング76と圧接しており、筒体75の前端が後方からパッキング76と圧接している。これにより、パッキング76は、キャップ79と筒体75との間に挟まれた状態で固定される。そして、パッキング76と筒体75との隙間、及びパッキング76とキャップ79との隙間は、液密に封止される。
【0211】
また、キャップ79が前方から筒体75及びパッキング76に被せられた状態において、キャップ79は、前壁40よりも下方且つ後方に位置している。
【0212】
[インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される動作]
以下、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程が説明される。
【0213】
図10に示されるように、カートリッジ装着部110に装着される前のインクカートリッジ30において、バルブ77は、パッキング76と当接して貫通孔73を閉じている。これにより、インクバルブ室35からインクカートリッジ30の外部へインクの流通が遮断されている。また、レバー163は第1位置に位置している。弁体161は、第1位置のレバー163の第1の突起168に下方へ押された状態であることにより、閉塞位置に位置している。このとき、貫通孔46は、弁体161のシール部材166及びロッド165によって閉塞されている。これにより、第1貯留室32は、大気開放されていない。
【0214】
図15及び図16に示されるように、インクカートリッジ30は、筐体31の前壁40が前方を向いており、且つ上壁39が上方を向いた姿勢で、カートリッジ装着部110の開口112を通じてカートリッジケース101へ挿入される。ユーザは、後壁41を押しつつインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110に対して前方へ挿入する。インクカートリッジ30の下部は、カートリッジケース101の下方のガイド溝109に進入した状態となる。
【0215】
インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されると、図15に示されるように、インク供給部34のガイド溝175に突起105が進入して、ガイド溝175が突起105にガイドされる。
【0216】
ガイド溝175に突起105が進入すると、ガイド溝175C、175Dの第1ガイド面176が、インクニードル102の右斜め下及び左斜め下に形成された突起105に支持された状態となる。また、ガイド溝175A、175Bの第1ガイド面176の上方に近接して、インクニードル102の右斜め上及び左斜め上に形成された突起105が位置する。これにより、インク供給部34がカートリッジケース101に対して上下方向に位置決めされる。
【0217】
また、ガイド溝175に突起105が進入すると、ガイド溝175A、175Cの第2ガイド面177の右方に近接して、インクニードル102の右斜め上及び右斜め下に形成された突起105が位置する。また、ガイド溝175B、175Dの第2ガイド面177の左方に近接して、インクニードル102の左斜め上及び左斜め下に形成された突起105が位置する。これにより、インク供給部34がカートリッジケース101に対して左右方向に位置決めされる。
【0218】
更に、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されると、インクニードル102が、インク供給口71を介してキャップ79の内部空間に進入し、パッキング76の貫通孔73に圧入される。このとき、上述したように、インク供給部34がカートリッジケース101に対して上下方向及び左右方向に位置決めされている。そのため、インクニードル102は、キャップ79の当接することなく、インク供給口71の中央部においてインク供給口71を通過することができる。
【0219】
その後、更に、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されると、インクニードル102がインクバルブ室35へ進入して、バルブ77をコイルバネ78の付勢力に抗してパッキング76から離間させる(図18参照)。これにより、インクニードル102とインク供給部34とが互いに連結され、第1貯留室32及び第2貯留室33からインクバルブ室35を介してインクニードル102の内部空間へ、インクの流通が可能となる。このとき、インクカートリッジ30には、コイルバネ78の付勢力が後方へ付与される。
【0220】
その後、更に、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されると、突起105の後端が第1ガイド面176を通過して第3ガイド面178の下方に位置する。これにより、第3ガイド面178と突起105との間には、上下方向の隙間が生じる。また、上述したように、筐体130のメイン下壁42は、前端が後端よりも下方に位置するように、前後方向に対して傾斜している。よって、カートリッジケース101の底部とメイン下壁42との間には、上下方向の隙間が生じている。上記のような隙間が生じることにより、インクカートリッジ30は、インクニードル102が圧入されることでインクニードル102と当接しているパッキング76の貫通孔73の位置を回動中心として、その後部が下方へ移動するように回動可能な状態となる。
【0221】
インクカートリッジ30が回動可能な状態となってから、更に、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されると、カートリッジ装着部110のロックシャフト145が傾斜面155に当接して傾斜面155に沿って案内される。これにより、傾斜面155がロックシャフト145から下向きの反力を受ける。その結果、インクカートリッジ30は、その後部が下方へ移動するように回動する(図17及び図18参照)。
【0222】
更に、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されて、インクカートリッジ30の前壁40がカートリッジケース101の終面付近に近づいてくると、図18に示されるように、一対の壁114の間に、カートリッジ装着部110の凸板111が入り込んでくる。しかし、インクカートリッジ30の回動により、レバー163が下方へ移動しているため、この時点においては、凸板111の下面111Aは、レバー163の上方に位置するものの、レバー163に当接していない。
【0223】
また、インクカートリッジ30の前壁40がカートリッジケース101の終面付近に近づいてくると、図18に示されるように、ロックシャフト145は、傾斜面155から水平面154を介してロック面151よりも後方に位置するようになる。つまり、ロックシャフト145はインクカートリッジ30から離間する。また、このとき、ロックシャフト145の下方には、空間が存在する。すると、インクカートリッジ30はロックシャフト145の反力を受けなくなる。その結果、インクカートリッジ30は、パッキング76の貫通孔73の位置を回動中心として、その後部が上方へ移動するように回動する(図3及び図19参照)。なお、図3及び図19に示された状態におけるインクカートリッジ30の姿勢が、使用姿勢である。
【0224】
インクカートリッジ30が回動すると、レバー163が上方に移動する。これにより、レバー163の第2の突起169の先端面169Aが凸板111の下面111Aに下方から当接する。つまり、レバー163は、凸板111に対し上方にアクセスする。また、レバー163が凸板111の下面111Aに当接するのは、インクニードル102がインクバルブ室35へ進入した後、つまりインクニードル102がインク供給部34に接続された後である。
【0225】
レバー163の第2の突起169の先端面169Aが凸板111の下面111Aに当接すると、第2の突起169は、凸板111から下向きの反力を受ける。つまり、レバー163は、図18における時計回りへ回動するような力を受ける。当該力は、第1の突起168が弁体161のロッド165の上面の後部165Bから前部16Aへ移動するために必要な力よりも大きい。よって、レバー163は、第1位置から第2位置へ向けて、図18における時計回りへ回動する(図3参照)。このとき、レバー163の第1の突起168は、段差面165Cを乗り越えて、弁体161のロッド165の上面の後部165Bから前部165Aへ移動する。このとき、弁体161は、ロッド165によって押されて若干下方へ移動する。これにより、レバー163の第1の突起168は弁体161を下方へ押さなくなる。すると、弁体161は、レバー163によって閉塞位置へ保持されない状態となる。つまり、第2位置のレバー163は、弁体161の開放位置への移動の妨害を解除している。これにより、弁体161は、コイルバネ162の付勢力によって、閉塞位置から開放位置へ向けて上方へ移動する(図3参照)。これにより、貫通孔46が開放される。その結果、第1貯留室32が、貫通孔46、空気室36、屈曲流路143、及び連通孔147を介して大気開放される。
【0226】
なお、上述したように、第2位置のレバー163は、凸板111から離間している。また、シール部材166は、下方から貫通孔139に圧接して、貫通孔139の周縁部を覆っている。これにより、シール部材166と貫通孔139との間は、閉塞されている。
【0227】
また、最終的に、第1貯留室32が大気開放されるには、弁体161が一旦下方へ押し込まれてから上方へ移動する必要がある。これにより、弁体161が誤って開放位置へ移動することが抑制される。
【0228】
また、インクカートリッジ30が回動して図3及び図19に示される状態となると、光学センサ113(図2参照)の発光部と受光部との間に、遮光板67が位置する。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されたことが認識される。なお、図3及び図15図19において、光学センサ113は省略されている。
【0229】
また、インクカートリッジ30が回動して図3及び図19に示される状態となると、IC基板64の各電極65は、接点106を上方へ弾性変形させつつ電気的に接触する。
【0230】
また、インクカートリッジ30が回動すると、ロック面151は上方に移動する。そして、図3及び図19に示される状態となると、ロック面151は、後方へ向かってロックシャフト145と向かい合う。ユーザがインクカートリッジ30を前方へ押し込むことを止めると、インクカートリッジ30は、コイルバネ78の付勢力によって後方へ移動する。ロック面151は後方へ向かってロックシャフト145と向かい合っている。そのため、インクカートリッジ30が後方へ移動すると、ロック面151がロックシャフト145と当接して係合する。これにより、インクカートリッジ30が後方へ移動することが規制される。以上より、インクカートリッジ30は、ロックシャフト145(詳細にはロックシャフト145の前側の面)に対し上方にアクセスすることで使用姿勢をとるものである。
【0231】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜されるときには、ユーザは、図3及び図19に示される状態において操作面92を下方へ押す。これにより、インクカートリッジ30が、パッキング76の貫通孔73の位置を回動中心として、その後部が下方へ移動するように回動する(図17及び図18参照)。これにより、ロック面151がロックシャフト145よりも下方へ位置するようになり、インクカートリッジ30の後方への移動の規制が解除される。すると、コイルバネ78の付勢力によって、インクカートリッジ30はカートリッジ装着部110に対して後方へ移動する。これにより、ユーザは筐体130を挟み持ってインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110から取り出すことができる。
【0232】
[変形例]
図20に示されるように、ブラックに対応するインクカートリッジ30は、シアン、マゼンタ、イエローに対応する3つのインクカートリッジ30(図4参照)に対して、前壁40及び後壁41が右方へ膨出された構成である。インク供給部34、IC基板64、凸部43、及び操作部90は、インクカートリッジ30の左右方向の中央よりも左方に位置している。一方、遮光板67は、インクカートリッジ30の左右方向の中央部に位置している。
【0233】
ブラックに対応するインクカートリッジ30は、前壁40及び後壁41が右方へ膨出されていることにより、以下の点において、シアン、マゼンタ、イエローに対応する3つのインクカートリッジ30と相違点を有する。以下、相違点が説明される。
【0234】
図21に示されるように、サブ下壁48の上面48Aは、平面をなしている。サブ下壁48の上面48Aは、左方へ向かうにしたがって下方へ向かうように左右方向に対して傾斜している。これにより、サブ下壁48の上面48Aは、その左端が最も下方に位置する。なお、サブ下壁48の上面48Aは、右方へ向かうにしたがって下方へ向かうように左右方向に対して傾斜していてもよいし、左右方向に対して傾斜していない、すなわち水平方向に対し平行な平面であってもよい。サブ下壁48の上面48Aを平面とし、曲面116によって上面48Aと側壁38の内面38Aとを接続することで、図14に記した例に比べて、第1貯留室32の幅方向の寸法を大型化してインク貯留量を大容量化することが容易である。
【0235】
側壁37の内面37Aの下端から曲面115が下方へ延出しており、側壁38の内面38Aの下端から曲面116が下方へ延出している。曲面115の下端は、サブ下壁48の上面48Aの右端と接続されている。曲面116の下端は、サブ下壁48の上面48Aの左端と接続されている。ここで、サブ下壁48の上面48Aの左端は、第1貯留室32の前部における最下部となる。つまり、曲面115の下端及び曲面116の下端は、第1貯留室32の前部における最下部を含む面(サブ下壁48の上面48A)と接続されている。
【0236】
曲面117、118の構成については、前壁40の内面40Aが左右方向に長くなった点を除いては、上記実施形態と同構成である(図22参照)。
【0237】
なお、上記では、曲面115の下端と曲面116の下端とは、サブ下壁48の上面と接続されていたが、曲面115の下端と曲面116の下端とが接続されていてもよい。
【0238】
上記実施形態では、第1リブ185及び第2リブ186は、図8に示されるような形状であった。しかし、第1リブ185及び第2リブ186は、左右方向に隙間を空けて配置されており、且つ傾斜部185B、186Bを備えていることを条件として、図8に示されるような形状でなくてもよい。
【0239】
例えば、図23(A)に示されるように、第1リブ185の傾斜部185Bの先端(換言すると傾斜部185Bの後端)は、前後方向において、当該第1リブ185と左右方向に対向する第2リブ186の傾斜部186Bの先端(換言すると傾斜部186Bの後端)と同位置であってもよい。また、例えば、図23(B)、(C)に示されるように、第1リブ185または第2リブ186の少なくとも一方は、延出部185A、186Aを備えていなくてもよい。なお、図23(B)、(C)には、第1リブ185及び第2リブ186の双方が、延出部185A、186Aを備えていない構成が示されている。
【0240】
上記実施形態では、第1リブ185及び第2リブ186の各々の下端は、同一の高さであったが、異なる高さであってもよい。例えば、複数の第1リブ185及び複数の第2リブ186において、側壁37、38の前後方向の中央位置に近いリブほど、下方へ長く突出していてもよい。
【0241】
第1リブ185及び第2リブ186の下方への突出長は、第1リブ185の第2リブ186の全範囲において一定である必要はない。例えば、第1リブ185及び第2リブ186のうち、側壁37、38の内面と当接する延出部185A、186Aの基端及びその近傍、つまり延出部185A、186Aの基端部の下方への突出長が、当該基端部以外の部分の下方への突出長よりも長くてもよい。
【0242】
上記実施形態では、筐体130において、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とは、第1貯留室32及び第2貯留室33に貯留されたインクの液面を外部から視認可能な透光性を有するものであった。また、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とは、外蓋134との係合部分である上端部を除く全てが外部に露出されて筐体130の外壁を構成していた。
【0243】
しかし、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とは、その少なくとも一部が筐体130の外壁、すなわち外部に露出する面を有する壁を構成していればよい。
【0244】
例えば、前壁40、後壁41、側壁37、または側壁38の外面の一部にラベルが貼付されることにより、当該一部において、第1貯留室32及び第2貯留室33に貯留されたインクの液面を外部から視認できなくてもよい。この場合、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とにおいて、ラベルが貼付された部分以外が、筐体130の外壁を構成している。このように、インクカートリッジ30内の液体貯留室があらゆる位置から視認可能である必要はないが、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38いずれの壁にも外部から液面が視認可能な領域があることが望ましい。
【0245】
また、例えば、筐体130がカバーに覆われている構成でもよい。但し、この場合、当該カバーが、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38との各々の一部を外部に露出させるように構成されている必要がある。例えば、当該カバーは、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38との各々と対向する壁の各々に開口を備えていればよい。この場合、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38とにおいて、当該開口を通じて外部に露出された部分が、筐体130の外壁を構成している。
【0246】
なお、前壁40と、後壁41と、側壁37と、側壁38との一部のみが筐体130の外壁を構成している場合、特に各壁の下部が外部に露出されていることが好ましい。
【0247】
上記実施形態では、インクカートリッジ30は、筐体130、第1内蓋131、第2内蓋132、外蓋134、及び支持部材150が組み合わされることによって構成されていた。しかし、筐体130、第1内蓋131、第2内蓋132、外蓋134、または支持部材150の少なくとも一部が、一体成型されていてもよい。例えば、筐体130と外蓋134とが一体成型されていてもよいし、第2内蓋132と支持部材150とが一体成型されていてもよい。
【0248】
上記実施形態では、ロックシャフト145がロック面151と接触することにより、インクカートリッジ30が装着位置に保持されていた。しかし、インクカートリッジ30を装着位置に保持する構成は、ロックシャフト145とロック面151とによるものに限らず、他の公知の構成が採用されてもよい。
【0249】
上記実施形態では、半透膜141は、リブ140の下端面に溶着されていた。しかし、半透膜141は、貫通孔46から空気室36へ流入したインクの屈曲流路143への流出を防止可能な位置であるならば、他の位置に溶着されていてもよい。また、上記実施形態では、半透膜141が溶着されていたが、半透膜141が溶着されていなくてもよい。
【0250】
上記実施形態では、キャップ79に形成された2つの突起180は、左右方向に対向配置されていたが、2つの突起180の左右方向以外、例えば上下方向に対向配置されていてもよい。
【0251】
上記実施形態では、弁機構135は、貫通孔46を開閉することによって、第1貯留室32と大気との間の連通の有無を切り替えていた。しかし、弁機構135は大気連通流路72における貫通孔46以外の部分を開閉するように構成されていてもよい。
【0252】
また、上記実施形態では、弁機構135が貫通孔46から離間するのは、インクカートリッジ30が下から上(重力方向と反対方向)に向かって移動してロック面151がロックシャフト145に係合する過程であったが、インクカートリッジ30が装着方向に移動する過程、すなわち重力方向と交差する方向に移動する過程であってもよい。
【0253】
上記実施形態では、インク供給部34は、筒体75と、筒体75に被せられるキャップ79とを備えていた。しかし、インク供給部34は、キャップ79を備えていなくてもよい。この場合、上記実施形態においてキャップ79に形成されていたガイド溝175は、筒体75の外周面に形成される。
【0254】
上記実施形態では、インク供給部34の外部との連通の有無が、バルブ77によって切り替えられるように構成されていたが、このような構成に限らない。例えば、筒体75の前端の開口が、貫通孔を有さない弾性樹脂などのシール部材において、ニードルなどが穿刺されることによって形成され、ニードルがシール部材から抜き出されると、シール部材の弾性によって封止されるように構成されてもよい。
【0255】
上記実施形態では、メイン下壁42の前後方向の寸法は、サブ下壁48の前後方向の寸法よりも長かった。しかし、メイン下壁42の前後方向の寸法は、サブ下壁48の前後方向の寸法以下であってもよい。つまり、段差面49は、前後方向におけるインクカートリッジ30の中央位置に配置されていてもよいし、前壁40よりも後壁41に近い位置に配置されていてもよい。
【0256】
上記実施形態では、インクカートリッジ30は、図4及び図5に示されるような外形であった。また、インク供給部34は、段差面49から前方へ延びており、前壁40の下方且つ後方に位置していた。しかし、インクカートリッジ30の外形や、インク供給部34の位置は、図4及び図5に示されるような構成に限らない。
【0257】
例えば、インクカートリッジ30において、側壁37と側壁38との間の間隔が、前壁40と後壁41との間の間隔より長くてもよい。また、例えば、インクカートリッジ30の外形は、単純な矩形状であってもよい。また、例えば、インク供給部34は、前壁40から前方へ延びていてもよいし、下壁42から下方へ延びて先端部が屈曲または湾曲することでインク供給口71が前方を向いていてもよい。
【0258】
また、例えば、インクカートリッジ30は、図24(A)に示されるような外形であってもよい。この場合、インクカートリッジ30の外形は、概ね直方体の筐体130で構成されており、第1内蓋131、第2内蓋132、及び外蓋134などを備えていない。すなわち、本変形例においてインクカートリッジ30の上壁188は、筐体130の一部として前壁と、後壁と、側壁191、192とに接続されており、筐体130の貯留室190は、筐体130の前壁と、後壁と、下壁と、上壁188と、側壁191、192によって画定されている。しかし、筐体130は、必ずしも樹脂で一体成型されている必要はなく、例えば側壁191、192が溶着されたフィルムで構成されていてもよい。
【0259】
また、この場合、インク供給部34は、インクカートリッジ30の外形を構成する壁から突出していない。この場合、インクカートリッジ30の側面のうち、インク供給口71の左右方向両端には、一対の突起193が形成されている。突起193は、液体流路194に沿って前後方向に延びている。突起193の上端および下端の少なくともいずれか一方が、ガイド溝175であってもよい。
【0260】
また、インク供給部34は、筒体75と、パッキング76と、バルブ77と、コイルバネ78と、キャップ79と、スナップフィット機構74とを備えていない。インク供給口71には、フィルム(不図示)が貼付されている。これにより、インクの貯留室190とインクカートリッジ30の外部との間が液密に封止されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される際にインクニードル102がフィルムを突き破ることにより、貯留室190からインクニードル102へのインクの流通が可能となる。
【0261】
また、この場合、被アクセス部材(凸部43、操作部90、遮光板67、IC基板64の電極65など)は、筐体130の上壁188に配置されている。なお、被アクセス部材とは、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、外部からアクセスされる部材である。図24(A)では、被アクセス部材としてIC基板64が筐体130の上壁188に配置されているが、被アクセス部材として凸部43や遮光板67が筐体130の上壁188に配置されていてもよいし、凸部43および遮光板67がIC基板64とともに上壁188に配置されていてもよい。
【0262】
また、上記変形例では、インク供給部34が前方へ突出しておらず、キャップ79も有していなかった。しかし、図24(B)に示されるように、インク供給部34が段差面49から突出しているがキャップ79を有していなくてもよい。この場合、筒状のインク供給部34が段差面49から前方へ向けて突出している。そして、筒状のインク供給部34の外面から左右方向に向けて突起193が突出している。これによって、突起193の上端または下端の少なくとも一方がガイド溝175として機能するようにしてもよい。
【0263】
また、先の実施形態では、ガイド溝175は、前後方向に延びる部分と、前後方向に対して傾斜する部分を有していたが、図24に示された変形例のように、前後方向に延びる部分だけでもよい。
【0264】
上記実施形態では、インクが液体の一例として説明されているが、例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って用紙などに吐出される前処理液が液体カートリッジに貯留されていてもよい。また、記録ヘッド21を洗浄するための水が液体カートリッジに貯留されていてもよい。すなわち、本開示のインクカートリッジ30は、インクを貯留するためのカートリッジである必要はなく、プリンタ10が消費する液体を貯留するためのカートリッジであってもよい。
【0265】
[作用効果]
上記実施形態によれば、ガイド溝175が突起105にガイドされる。この場合、ガイド溝175の位置決めの基準となる面の範囲を円周面よりも狭くできる。これにより、インク供給部34がインクニードル102とぶつかることなくインクバルブ室35内へインクニードル102が挿入されるように、インク供給部34を積極的にインクニードル102へ向けて案内することができる。
【0266】
また、上記実施形態によれば、ガイド溝175が4つ設けられているため、インク供給部34をより確実にインクニードル102へ向けて案内することができる。
【0267】
また、上記実施形態によれば、第1ガイド面176及び第2ガイド面177は開放されている。つまり、ガイド溝175は、第1ガイド面176や第2ガイド面177と対向する対向面を備えていない。よって、仮に、インクカートリッジ30が傾いた状態でカートリッジ装着部110内へ進入してきた場合であっても、インク供給部34と突起105との干渉の可能性を低くできる。また、仮に、インクカートリッジ30が傾いた状態でカートリッジ装着部110から取りはずされる場合であっても、インク供給部34と突起105との干渉の可能性を低くできる。
【0268】
また、上記実施形態によれば、キャップ79は、前後方向から見たときの投影面が直線的に延びる4つの辺と当該辺同士をつなぐ4つの角部とを有する形状である。そして、ガイド溝は、4つの角部の各々に形成されている。この場合、キャップ79の形状を、4つの辺にガイド溝175が形成された構成よりも単純化できる。
【0269】
また、上記実施形態によれば、第1ガイド面176の後端は、パッキング76の前端よりも後方に位置する液体ため、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への装着過程において、パッキング76の位置を第1ガイド面176によって安定させることができる。これにより、インクニードル102をインクバルブ室35内へ確実に導くことができる。
【0270】
また、上記実施形態によれば、第3ガイド面178が傾斜していることによって形成される空間により、仮に、インクカートリッジ30が傾いた状態でカートリッジ装着部110に対して進入してきた場合であっても、インク供給部34と突起105との干渉の可能性を低くできる。また、仮に、インクカートリッジ30が傾いた状態でカートリッジ装着部110から取りはずされる場合であっても、インク供給部34と突起105との干渉の可能性を低くできる。
【0271】
また、上記実施形態によれば、第1ガイド面176と第3ガイド面178とは連続しているため、インク供給部34のガイドを円滑に実行できる。
【0272】
また、上記実施形態によれば、第3ガイド面178の前後方向に対する角度は、下壁42の下面の前後方向に対する角度よりも大きい。よって、仮に、下壁42の下面がカートリッジ装着部110と当接する程に、インクカートリッジ30が傾いた状態でカートリッジ装着部110に対して挿抜される場合であっても、第3ガイド面178が突起105と干渉することを防止できる。
【0273】
また、上記実施形態によれば、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110に対する挿抜過程において、筐体130及び外蓋134が回動して傾く。しかし、上述したように、筐体130及び外蓋134が傾いてもインク供給部34と突起105との干渉の可能性を低くできる。
【0274】
また、上記実施形態によれば、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110に対する挿抜過程において、ガイド溝175は、左右方向におけるIC基板64の両外側において突起105と当接する。そのため、当該挿抜過程においてIC基板64が左右方向に傾く可能性を低くできる。
【0275】
また、上記実施形態によれば、第1吸収部材182及び第2吸収部材183が、インク供給部34から漏れたインクを吸収可能である。そのため、インク供給部34から漏れたインクのインクカートリッジ30の外部への流出を低減できる。
【0276】
また、インク供給部34から漏れたインクは、インク供給口71を通じてインクカートリッジ30の外部へ流出する。上記実施形態によれば、第1吸収部材182によってインク供給口71を通るインクを吸収することができる。
【0277】
また、インク供給部34から漏れたインクの多くは重力によって下方へ移動する。上記実施形態によれば、第2吸収部材183がキャップ79の内部空間の下部に配置されているため、インクの多くを第2吸収部材183に吸収させることができる。
【0278】
また、上記実施形態によれば、インク供給部34から漏れたインクを溝184を通じて第2吸収部材183へ導くことができる。
【符号の説明】
【0279】
10・・・プリンタ(システム)
30・・・インクカートリッジ(液体カートリッジ)
32・・・第1貯留室(液体貯留室)
33・・・第2貯留室(液体貯留室)
34・・・インク供給部(液体供給部)
35・・・インクバルブ室(液体流路)
79・・・キャップ
102・・・インクニードル(液体供給管)
105・・・突起
110・・・カートリッジ装着部
130・・・筐体(カートリッジ本体)
134・・・外蓋(カートリッジ本体)
175・・・ガイド溝
176・・・第1ガイド面
177・・・第2ガイド面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24