IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乾燥装置及び画像形成システム 図1
  • 特許-乾燥装置及び画像形成システム 図2
  • 特許-乾燥装置及び画像形成システム 図3
  • 特許-乾燥装置及び画像形成システム 図4
  • 特許-乾燥装置及び画像形成システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】乾燥装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 401
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023503787
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007981
(87)【国際公開番号】W WO2022186084
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2021031495
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】穂谷 智也
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】実公昭28-10911(JP,Y1)
【文献】実公昭29-1611(JP,Y1)
【文献】実公昭31-8910(JP,Y1)
【文献】実公昭49-28292(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3052646(JP,U)
【文献】特開2000-330396(JP,A)
【文献】特開2001-5306(JP,A)
【文献】特開2017-196899(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017128397(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成されたシートを搬送しながら乾燥する乾燥装置であって、
シートを所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部の上方に配置され、前記搬送部により搬送されるシートを加熱する加熱部と、
通電によって、前記加熱部によるシートの加熱位置に前記搬送部を支持する支持部と、を備え、
前記支持部への通電が遮断されると、前記搬送部を前記加熱位置に支持する力が弱まり、前記搬送部が前記加熱部から下方に離間した退避位置に下降することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記搬送部は、自重によって前記退避位置に下降することを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
下降した前記搬送部を支持する緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記搬送方向の上流側の端部及び下流側の端部の2つの端部を有し、前記2つの端部の一方を第1端部とし、他方を第2端部としたとき、前記第1端部に設けられた回動支点を中心として前記加熱位置と前記退避位置との間の回動可能に支持され、
前記支持部は、前記搬送部の前記第2端部を支持することを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記回動支点は、前記搬送部において前記加熱部と対向している領域に対して、前記搬送方向の上流側もしくは下流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記回動支点は、前記領域に対して、前記搬送方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記搬送部は、駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに巻き回された無端状の搬送ベルトと、を備え、
前記第1端部に前記従動ローラーが配置され、前記第2端部に前記駆動ローラーが配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記支持部は、
ワイヤーと、
前記加熱位置にある前記搬送部よりも上方の位置に設けられた、前記ワイヤーの配線方向を下方から上方に転換する転換部と、
前記転換部よりも下方に位置し、前記ワイヤーを巻き取る巻取プーリーと、
前記巻取プーリーを回転させる電動モーターと、
前記電動モーターと前記巻取プーリーとの間に配置されたトルクリミッターと、を備え、
前記ワイヤーは、前記巻取プーリーから、前記転換部を経由して、前記第2端部まで架け渡されており、
前記電動モーターに通電されて前記巻取プーリーが回転すると、前記ワイヤーが前記巻取プーリーに巻き取られて前記搬送部の前記第2端部が前記乾燥部に当接するまで上昇して、前記搬送部が前記加熱位置に回動し、
前記搬送部が前記加熱位置に回動している間、前記電動モーターへの通電が継続され、前記モーターは、前記トルクリミッターの作用によって前記巻取プーリーに対して空転し続け、
前記電動モーターへの通電が遮断されると、前記巻取プーリーが回転自在となり、前記搬送部の自重によって前記巻取プーリーが回転して前記ワイヤーを繰り出し、前記搬送部が前記加熱位置から前記退避位置に自重によって回動することを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記加熱部は、輻射加熱によりシートを加熱することを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項10】
請求項1に記載の乾燥装置と、
シートにインクを吐出して画像を形成し、画像が形成されたシートを前記乾燥装置に搬送する画像形成装置と、
を含むことを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
請求項4に記載の乾燥装置と、
シートにインクを吐出して画像を形成し、画像が形成されたシートを前記乾燥装置の前記搬送部の前記第1端部に搬送する画像形成装置と、
を含むことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置で画像が形成されたシートを搬送しながら加熱して乾燥する乾燥装置及び乾燥装置を含む画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置で画像が形成されたシートは、一般的に、乾燥装置で乾燥される。乾燥装置は、シートを搬送しながら熱源によって加熱して乾燥する。乾燥は、加熱された温風を対流させたり、輻射熱を用いたりして行われる。輻射熱の熱源としては、一般に、赤外線を発するハロゲンヒーター等が使用される。このような乾燥装置では、異常発生時や停電などで装置が停止した場合、熱源に残留した熱によってシートが昇温するという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、フラッシュランプ(熱源)の近傍に温度検出素子を設けた乾燥装置が開示されている。温度検出素子によって検出された温度が一定温度を越えると、異常を警告して装置を停止するようになっている。また、特許文献2には、ハロゲンヒーター(熱源)からの光を遮断することが可能なシャッターを備えたインク乾燥装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-63368号公報
【文献】特開2003-70573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように装置を停止したり、特許文献2にようにシャッターで光を遮断したりしても、熱源に残留した熱によってシートがさらに昇温するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、異常発生時に速やかに熱源からシートを離間させることのできる乾燥装置及び乾燥装置を含む画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乾燥装置は、画像が形成されたシートを搬送しながら乾燥する乾燥装置であって、シートを所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部の上方に配置され、前記搬送部により搬送されるシートを加熱する加熱部と、通電によって、前記加熱部によるシートの加熱位置に前記搬送部を支持する支持部と、を備え、前記支持部への通電が遮断されると、前記搬送部を前記加熱位置に支持する力が弱まり、前記搬送部が前記加熱部から下方に離間した退避位置に下降することを特徴とする。
【0008】
本発明の乾燥装置において、下降した前記搬送部を支持する緩衝部材を備えていることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明の乾燥装置において、前記搬送部は、前記搬送方向の上流側の端部及び下流側の端部の2つの端部を有し、前記2つの端部の一方を第1端部とし、他方を第2端部としたとき、前記第1端部に設けられた回動支点を中心として前記加熱位置と前記退避位置との間の回動可能に支持され、前記支持部は、前記搬送部の前記第2端部を支持することを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の乾燥装置において、前記回動支点は、前記搬送部において前記加熱部と対向している領域に対して、前記搬送方向の上流側もしくは下流側に配置されていることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明の乾燥装置において、前記搬送部は、駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに巻き回された無端状の搬送ベルトと、を備え、前記第1端部に前記従動ローラーが配置され、前記第2端部に前記駆動ローラーが配置されていることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明の乾燥装置において、前記支持部は、ワイヤーと、前記加熱位置にある前記搬送部よりも上方の位置に設けられた、前記ワイヤーの配線方向を下方から上方に転換する転換部と、前記転換部よりも下方に位置し、前記ワイヤーを巻き取る巻取プーリーと、前記巻取プーリーを回転させる電動モーターと、前記電動モーターと前記巻取プーリーとの間に配置されたトルクリミッターと、を備え、前記ワイヤーは、前記巻取プーリーから、前記転換部を経由して、前記第2端部まで架け渡されており、前記電動モーターに通電されて前記巻取プーリーが回転すると、前記ワイヤーが前記巻取プーリーに巻き取られて前記搬送部の前記第2端部が前記乾燥部に当接するまで上昇して、前記搬送部が前記加熱位置に回動し、前記搬送部が前記加熱位置に回動している間、前記電動モーターへの通電が継続され、前記モーターは、前記トルクリミッターの作用によって前記巻取プーリーに対して空転し続け、前記電動モーターへの通電が遮断されると、前記巻取プーリーが回転自在となり、前記搬送部の自重によって前記巻取プーリーが回転して前記ワイヤーを繰り出し、前記搬送部が前記加熱位置から前記退避位置に自重によって回動することを特徴としてもよい。
【0013】
本発明の画像形成システムは、前記乾燥装置と、シートにインクを吐出して画像を形成し、画像が形成されたシートを前記乾燥装置に搬送する画像形成装置と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様の画像形成システムは、前記乾燥装置と、シートにインクを吐出して画像を形成し、画像が形成されたシートを前記乾燥装置の前記搬送部の前記第1端部に搬送する画像形成装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通電が遮断されると、搬送部が加熱位置から退避位置に回動して乾燥部から速やかに離間するので、乾燥部に残留する熱による搬送部の過昇温の可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る乾燥装置を含む画像形成システムを模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乾燥装置(乾燥動作中)の内部を示す正面から見た断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る乾燥装置の乾燥部、搬送部及び支持部を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る乾燥装置の支持部を模式的に示す正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る乾燥装置(待機中)の内部を示す正面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成システム及び乾燥装置について説明する。
【0018】
まず、図1を参照して、乾燥装置を含む画像形成システムについて説明する。図1は、乾燥装置を含む画像形成システムを示す正面図である。各図に適宜付される矢印L、R、
Fr、Rrは、それぞれ乾燥装置の左側、右側、前側、後側を示している。
【0019】
画像形成システム1は、給紙装置3、画像形成装置5、乾燥装置7、後処理装置9、を備えている。給紙装置3は、シートを収容し、画像形成装置5へシートを送給する。画像形成装置5は、給紙装置3の左側に配置され、給紙装置3から送給されたシートに、インクジェット方式によって画像を形成する。乾燥装置7は、画像形成装置5の左側に配置され、画像が形成されたシートを搬送しながら乾燥する。後処理装置9は、乾燥装置7の左側に配置され、乾燥装置7で乾燥されたシートに後処理を施す。
【0020】
次に、乾燥装置7について、図2及び図3を参照して説明する。図2は乾燥装置(乾燥動作中)の内部を示す正面から見た断面図、図3は乾燥部と搬送部と支持部とを示す斜視図である。
【0021】
図2に示されるように、乾燥装置7は、箱状の筐体11を備えている。筐体11は、天板と、底板と、前後の側板と、左右の側板とによって囲まれる直方体状の中空部を有している。筐体11の中空部の画像形成装置5側(右側)には、加熱部13と、搬送部15と、支持部17とが、上側から順に収容されている。筐体11の中空部の後処理装置9側(左側)の上方には、冷却部19が収容されている。
【0022】
筐体11の右側板(画像形成装置5側の側板)の上部には、画像形成装置5からシートが受け入れられる受入口21が形成されている。左側板(後処理装置9側の側板)の上部には、後処理装置9へシートを受け渡す排出口23が形成されている。受入口21から排出口23へ向かう搬送方向に沿って、後述する搬送部15と冷却部19とによってシートが搬送されるようになっている。以降の記載における上流側、下流側は、シートの搬送方向における上流側、下流側をそれぞれ示す。
【0023】
加熱部13は、収容ケース31と、収容ケース31に収容される熱源としてのハロゲンランプ33と、を備えている。収容ケース31は、下面が開口した箱形状を有している。収容ケース31の上流側及び下流側の端部と搬送部15との間には、隙間が開いている。搬送部15によって搬送されるシートは、上流側の隙間から収容ケース31内、すなわち、加熱部13に入り、下流側の隙間から収容ケース31から出る。ハロゲンランプ33は通電されると点灯して赤外線を放出する。加熱部13は、受入口21よりも上方に、長手方向が搬送方向に沿うように、略水平に配置されている。乾燥部13には温度センサー(図示省略)が備えられている。
【0024】
シートとして、例えば、塗工紙などの低浸透性の記録媒体を用いて画像を形成した場合、インクの一部がシート上に液体の状態で残る時間が長くなるため、掠れなどが生じる虞がある。そのようなシートに対しては、別のシートと重ねられたり、画像形成システム1内で画像形成面が擦れたりする前に、多くの熱を加えて十分に乾燥させる必要がある。特に、毎分50枚以上の多量のシートを乾燥させる場合は、加熱部13が与える熱量を特に多くする必要がある。
【0025】
加熱方法としては、伝熱、対流、輻射を利用する方法があり、このような乾燥装置7では、熱風乾燥、輻射熱乾燥が主に採用される。特に、熱風ドラム乾燥が一般的である。熱風ドラム乾燥では、シーズヒーターなどで加熱された熱風の温度は120℃程度と比較的低いので、乾燥効率が悪く、乾燥時間(乾燥距離)を長くする必要がある。本実施形態では、輻射加熱を採用することで乾燥効率を高めている。ただし、輻射加熱の場合、物体が赤外線を吸収すると温度が上昇し続けることと、温度管理が困難であるという問題がある。例えば、シートへの画像形成中に、加熱部13の真下にシートが長時間滞留すると、シートが過剰に加熱される虞がある。本実施形態の乾燥装置7は、輻射加熱に伴うこのような問題に対して、以下に示されるような構成を備える。
【0026】
搬送部15は、図3に示されるように、ケーシング40と、ケーシング40に収容される無端状の搬送ベルト45と、従動ローラー47及び駆動ローラー49と、吸引装置51(図2参照)と、を備えている。ケーシング40は、前後の側板41と底板43とを有している。従動ローラー47の回転軸47aの両端部は、前後の側板41の上流側の端部間に回転可能に支持されている。駆動ローラー49の回転軸49aの両端部は、前後の側板41の下流側の端部間に回転可能に支持されている。駆動ローラー49の回転軸49aは、電動モーター(図示省略)で駆動されて回転する。
【0027】
搬送ベルト45は、両ローラー47、49間に巻き回されている。駆動ローラー49が図2及び図3の反時計回り方向に回転すると、搬送ベルト45が両ローラー間47、49で図2及び図3の反時計回り方向に循環走行し、搬送ベルト45の上側の面に載置されたシートが、搬送方向に沿って搬送される。両ローラー47、49間に巻き回された搬送ベルト45の上側の走行軌道に沿う面を搬送面45aとする。搬送方向に沿った搬送面45aの長さは、加熱部13の長さと同程度、もしくは加熱部13よりも長く形成される。吸引装置51は、搬送ベルト45の中空部に配置されて、前後の側板41に支持されている。シートの搬送中、吸引装置51によってシートは搬送面45aに吸着される。
【0028】
搬送部15は、上流側と下流側とに、それぞれ端部を有している。2つの端部は、それぞれ、搬送部15の搬送方向における長さの3分の1、好ましくは5分の1、さらに好ましくは10分の1の長さの部分である。2つの端部のうち、後述の回動支点P0が設けられる端部を第1端部15U、他方の端部を第2端部15Dとする。本実施形態では、第1端部15Uは、搬送部15の上流側の端部であり、第2端部15Dは下流側の端部である。また、本実施形態では、第1端部15Uに従動ローラー47が配置され、第2端部15Dに駆動ローラー49が配置される。
【0029】
搬送部15は、加熱部13の下方に配置されている。搬送部15は、搬送ベルト45の搬送面45aが加熱部13のハロゲンランプ33と所定の間隔を開けて略水平に支持される加熱位置P1と、搬送面45aがハロゲンランプ33から下方に離間する退避位置P2と、の間を、第1端部15Uの回動支点P0を中心として回動可能に支持されている。回動支点P0は、加熱部13の上流側の端部よりも上流側に配置されている。別の表現をすると、回動支点P0は、搬送部15において加熱部13と対向している領域に対して、上流側に配置されている。回動支点P0は、従動ローラー47の回転軸47aよりもやや下方に位置している。加熱位置P1において、搬送部15の前側の側板41の一部は、加熱部13の収容ケース31の前側板に当接する。
【0030】
支持部17について、図4も参照して説明する。図4は支持部を模式的に示す正面図である。支持部17は、搬送部15の第2端部15Dを昇降させて、搬送部15を加熱位置P1と退避位置P2とに支持する。支持部17は、搬送部15に設けられる可動プーリー61と、筐体11に設けられる固定プーリー63と、搬送部15の下方で筐体11に設けられる巻取プーリー65と、巻取プーリー65を駆動させる電動モーター67と、筐体11と巻取プーリー65との間に掛け渡される2本のワイヤー69と、を備えている。
【0031】
可動プーリー61は、搬送部15の第2端部15Dのケーシング40の前後の側板41から上方に延びる支持板41aに支持されている。
【0032】
固定プーリー63は、筐体11の前後の側板に支持されている。固定プーリー63は、搬送部15が加熱位置P1に支持された状態において、可動プーリー61よりも下流側(左側)で、可動プーリー61よりもやや上方に支持されている。
【0033】
巻取プーリー65は、回転軸71と、所定の間隔を開けて回転軸71に固定された前後の巻取ローラー73と、を有している。巻取プーリー65は、従動ローラー47の回転軸47aと平行な姿勢で、固定プーリー63の下方に所定の間隔を開けて配置されている。回転軸71の一端(前端)には、駆動ギア75が固定されている。回転軸71と駆動ギア75との間にはトルクリミッター77が配置されている。
【0034】
2本のワイヤー69の一端は、巻取プーリー65の前後の巻取ローラー73のそれぞれに接続されて固定されている。2本のワイヤー69の他端は、筐体11の前後の側板の固定部W1にそれぞれ固定されている。ワイヤー69は、上端から順に、可動プーリー61と固定プーリー63とに巻き回されている。なお、可動プーリー61を設けずに、2本のワイヤー69の他端を、搬送部15の第2端部15Dに固定してもよい。すなわち、2本のワイヤー69の他端は、搬送部15の第2端部15Dに、間接的あるいは直接的に接続される。また、本実施形態では、固定部W1は、搬送部15の第2端部15Dの側で筐体11に形成されているが、第1端部15Uの側で筐体11に固定されてもよい。2本のワイヤー69の下端は、巻取プーリー65の前後の巻取ローラー73のそれぞれに固定されている。ワイヤー69は、上端の側から順に、可動プーリー61と固定プーリー63とに巻き回されている。
【0035】
電動モーター67の出力軸67aには、ギア79が固定されている。電動モーター67は、ギア79が巻取プーリー65の駆動ギア75と噛み合うように配置されている。電動モーター67が一方向に駆動されて巻取プーリー65が図3及び図4の反時計回り方向に回転すると、ワイヤー69が巻取プーリー65の巻取ローラー73に巻き取られ、可動プーリー61が上昇して、搬送部15の第2端部15Dが上昇する。また、電動モーター67が他方向に駆動されて巻取プーリー65が図3及び図4の時計方向に回転すると、ワイヤー69が巻取ローラー73から繰り出され、可動プーリー61が下降して、搬送部15の第2端部15Dが下降する。このように、電動モーター67を一方向及び他方向に回転させることで、搬送部15を加熱位置P1と退避位置P2との間を回動させることができる。
【0036】
一般的に表せば、ワイヤー69は、巻取プーリー65から、ワイヤー69の配線方向を下方から上方に転換する転換部を経由して、搬送部15まで架け渡されている。本実施形態において、固定プーリー63は転換部の一例である。転換部は、加熱位置P1にある搬送部15よりも上方に配置される。巻取プーリー65は、転換部よりも下方に配置され、さらに加熱位置P1にある搬送部15よりも下方に配置される。トルクリミッター77は、転換部よりも下方に配置され、さらに加熱位置P1にある搬送部15よりも下方に配置される。電動モーター67は、転換部よりも下方に配置され、さらに加熱位置P1にある搬送部15よりも下方に配置される。
【0037】
以上のような構成にすることにより、加熱位置P1にある搬送部15より上方に配置される駆動機構を、実質的に転換部だけにすることができる。これにより、スペースが限られ、熱により環境が厳しい加熱部13の近くに設けた駆動機構により、搬送部15の駆動が実現できる。
【0038】
さらに、筐体11内には、緩衝部材81が配置されている。緩衝部材81は、搬送部15が加熱位置P1から退避位置P2へ回動した際の衝撃を吸収するためのものである。緩衝部材81は、例えば、エアシリンダである。緩衝部材81は、電動モーター67の上流側(右側)において、ピストンの伸縮方向が、搬送部15の回動軌跡に沿う姿勢で配置されている。搬送部15が加熱位置P1から退避位置P2へ回動する途中で、搬送部15の底板43が緩衝部材81に当接する。
【0039】
図2に示されるように、冷却部19は、搬送部15の下流側の端部から排出口23に向かうように形成されている。
【0040】
上記構成を有する乾燥装置7の乾燥動作の一例について、図2図4図5を参照して説明する。図5は乾燥装置(待機中)の内部を示す正面から見た断面図である。
【0041】
図5に示される待機時、電動モーター67には通電されておらず、搬送部15は退避位置P2に回動している。乾燥動作の開始時には、ハロゲンランプ33が通電されて点灯し赤外線を放出する。さらに、電動モーター67が通電されて一方向に回転し、前述のように、ワイヤー69が巻取プーリー65に巻き取られて搬送部15の第2端部15Dが上昇する。搬送部15の第2端部15Dは、前側の側板41の一部が、加熱部13の収容ケース31の前側板に当接するまで上昇して、図2に示されるように、搬送部15は加熱位置P1に回動する。搬送部15が加熱位置P1に回動している間、すなわち、乾燥動作中、電動モーター67は通電され続けている。ただし、電動モーター67と巻取プーリー65との間にはトルクリミッター77が配置されているので、この間、電動モーター67は、トルクリミッター77の作用によって巻取プーリー65に対して空転し続ける。
【0042】
搬送部15が加熱位置P1に回動した後、受入口21から搬送部15の搬送ベルト45の搬送面45aに、画像形成装置5から画像が形成されたシートが受け入れられる。受け入れられたシートは、吸引装置51によって搬送ベルト45の搬送面45aに吸着し、駆動ローラー49が回転することで搬送される。この間、ハロゲンランプ33から放出された赤外線によって、インク中の水分が蒸発してシートが乾燥する。シートは、搬送部15から冷却部19に搬送されて冷却された後、排出口23から後処理装置9に排出される。
【0043】
乾燥動作中に乾燥装置7や画像形成装置5で異常が発生した場合や停電が発生した場合には、乾燥装置7への通電が自動的に遮断される。すると、ハロゲンランプ33が消灯するとともに、電動モーター67の回転が停止する。その結果、電動モーター67によって搬送部15を加熱位置P1に支持する力が弱まって実質的に消滅し、巻取プーリー65が回転自在となり、搬送部15の自重で巻取プーリー65が回転してワイヤー69を繰り出す。これにより、図5に示されるように、搬送部15が加熱位置P1から退避位置P2に自重によって回動する。回動途中、搬送部15のケーシング40の底板43は緩衝部材81に受け止められ、緩衝部材81に支持されながら退避位置P2へ回動する。異常や停電が解消された際には、搬送部15等にシートが残っていないことや、温度センサーで検知された加熱部13の温度を確認した後、電動モーター67を駆動して、搬送部15を退避位置P2から加熱位置P1に上昇させる。
【0044】
なお、乾燥動作が正常に終了した後は、電動モーター67の回転方向が切り換えられて他方向へ回転し、ワイヤー69が巻取プーリー65から繰り出される。これにより、搬送部15の第2端部15Dが下降して、搬送部15が退避位置P2に回動する。
【0045】
上記説明したように、本発明の乾燥装置7によれば、乾燥装置7や画像形成装置5で異常が発生した場合や停電が発生した場合には、乾燥装置7への通電が遮断されて、搬送部15が加熱位置P1から退避位置P2に自動的に回動する。このように搬送部15が加熱部13から速やかに離間するので、加熱部13に残留する熱による搬送部15の過昇温の可能性を低減できる。
【0046】
さらに、搬送部15の退避位置P2への回動が緩衝部材81で緩衝されるので、衝突音の発生や搬送部15の損傷を低減できる。
【0047】
さらに、搬送部15は、第1端部15Uを中心として加熱位置P1と退避位置P2との間を回動可能に支持されているので、例えば、搬送部15の全体を上下に移動させる構成と比較して、搬送部15を支持する構成を単純にできる。
【0048】
さらに、搬送部15において、画像形成装置5から搬送されたシートを、移動量の少ない第1端部15Uの側で受け取ることができるため、画像形成装置5のシート排出部の構造、あるいは、画像形成装置5と乾燥装置7との接続構造を簡易化できる。
【0049】
さらに、画像形成装置5からシートを受け取る側の、搬送部15の第1端部15Uには、従動ローラー47が配置されている。駆動ローラー49の周囲には駆動機構が存在しているため、従動ローラー47の周囲よりも構造が複雑になる。このため、画像形成装置5と接続される第1端部15Uに従動ローラー47を配置することで、画像形成装置5と乾燥装置7との接続構造を簡易化できる。
【0050】
さらに、搬送部15の第1端部15Uは、加熱部13の上流側の端部よりも上流側に配置されている。このため、搬送部15が退避位置P2に回動した際の、搬送部15の第1端部15Uと加熱部13との間の距離をできるだけ長くすることができる。したがって、搬送部15の全体の過昇温の可能性をより低減できる。
【0051】
本実施形態では、回動支点P0は、搬送部15において加熱部13と対向している領域に対して、上流側に配置されている。回動支点P0を有する第1端部15Uを、搬送部15の下流側に配置する場合は、回動支点P0は、搬送部15において加熱部13と対向している領域に対して、下流側に配置する。そのようにすることで、本実施形態と同様に搬送部15の全体の過昇温の可能性をより低減できる。
【0052】
なお、搬送部15を、ソレノイド101(図4参照)によって加熱位置P1に支持されるようにしてもよい。この場合、ソレノイド101は、プランジャー101aが水平方向に伸縮するように筐体11(図2参照)に支持されている。支持部17が通電されて搬送部15を加熱位置P1に上昇させた後、ソレノイド101に通電してプランジャー101aを進出させ、プランジャー101aで搬送部15を加熱位置P1に支持する。その後、支持部17への通電を停止し、支持部17の電動モーター67を停止させる。
【0053】
乾燥装置7や画像形成装置5で異常が発生した場合や停電が発生した場合には、ソレノイド101への通電が遮断されてプランジャー101aがばね等の押圧力で引かれる。すると、搬送部15を加熱位置P1に支持させておく力が消滅し、搬送部15が加熱位置P1から退避位置P2に回動する。この場合、乾燥動作中に電動モーター67を通電させておく必要がないので、電動モーター67の消費電力の増加や騒音の発生を低減できる。なお、ソレノイド101で搬送部15を支持する場合には、搬送部15を退避位置P2から加熱位置P1へ手動で上昇させてもよい。
【0054】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
図1
図2
図3
図4
図5