(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】前処理装置および前処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20241001BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N35/02 G
G01N1/10 H
(21)【出願番号】P 2023506845
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004321
(87)【国際公開番号】W WO2022196160
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2021045153
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161528(JP,A)
【文献】特開2007-033414(JP,A)
【文献】特開平02-283279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御
し、
前記制御部は、前記第2の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料への前記第2の添加物の添加が実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置。
【請求項2】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御し、
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうおよび前記第2回目の振とうを実行する1つのみの振とう部であり、
前記制御部は、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加の終了後に、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうがさらに実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置。
【請求項3】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御し、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加が並行して実行され、その後、継続されている前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうが並行して実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置。
【請求項4】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御し、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行され、その後、継続されている前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうおよび前記第2の試料への前記第2の添加物の添加が並行して実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置。
【請求項5】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御し、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2回目の振とうが並行して実行され、その後、継続されている前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料への前記第2の添加物の添加が並行して実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置。
【請求項6】
前記第1の添加物の添加は内標の添加であり、前記第1の添加物の添加に要する時間は、前記第1回目の振とうに要する時間よりも長い、請求項
2記載の前処理装置。
【請求項7】
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうを実行し、
前記前処理装置は、各試料に対して、前記第2回目の振とうを実行する第2の振とう部をさらに備える、請求項1記載の前処理装置。
【請求項8】
前記第2回目の振とうが行われた各試料に遠心分離を行う第1の分離部と、
前記第1の分離部により遠心分離が行われた各試料を分注する分注部とをさらに備える、請求項
2記載の前処理装置。
【請求項9】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御し、
各試料を保持して搬送するロボットアームまたはベルトコンベアをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の添加部により前記第3の試料に前記第1の添加物が添加されている間に、前記振とう部から前記第2の添加部に前記第1の試料が搬送されるように前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアの動作を制御する、請求項8記載の前処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1の添加部により前記第3の試料に前記第1の添加物が添加されている間に、前記第1回目の振とうが終了した前記第2の試料が前記振とう部に設けられた載置部に載置されるとともに、前記第2の添加部から前記振とう部に前記第1の試料が搬送されるように前記振とう部と前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアとの動作を制御する、請求項9記載の前処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2回目の振とうが終了した前記第1の試料が前記振とう部から前記第1の分離部に搬送されるように前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアの動作を制御する、請求項9記載の前処理装置。
【請求項12】
前記複数の試料は、各々がキャップを取り付け可能な複数の試料瓶にそれぞれ収容され、
前記前処理装置は、
前記複数の試料瓶のうち、いずれかの試料瓶を前記第1の分離部から前記分注部に搬送する第1の搬送部と、
前記複数の試料瓶のうち、他のいずれかの試料瓶を前記第1の分離部から前記分注部に搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部により搬送される試料瓶から前記キャップを着脱する第1の着脱部と、
前記第2の搬送部により搬送される試料瓶から前記キャップを着脱する第2の着脱部とをさらに備え、
前記複数の試料瓶は、前記第1の試料および前記第2の試料をそれぞれ収容する第1の試料瓶および第2の試料瓶を含み、
前記制御部は、
前記第1の試料瓶に対して、前記キャップの取り外し、前記第1の試料の分注および前記キャップの取り付けが順次実行されるように前記第1の搬送部、前記第1の着脱部および前記分注部の動作を制御するとともに、
前記分注部による前記第1の試料の分注と並行して、前記第2の試料瓶の前記キャップの取り外しが実行されるように前記第2の搬送部および前記第2の着脱部の動作を制御する、請求項8記載の前処理装置。
【請求項13】
前記複数の試料瓶は、前記第3の試料を収容する第3の試料瓶をさらに含み、
前記制御部は、
前記第2の試料瓶に対して、前記第2の試料の分注および前記キャップの取り付けが順次実行されるように前記第2の搬送部、前記第2の着脱部および前記分注部の動作を制御するとともに、
前記分注部による前記第2の試料の分注と並行して、前記第3の試料瓶の前記キャップの取り外しが実行されるように前記第1の搬送部および前記第1の着脱部の動作を制御する、請求項12記載の前処理装置。
【請求項14】
前記分注部により分注が行われた各試料に遠心分離を行う第2の分離部をさらに備える、請求項8記載の前処理装置。
【請求項15】
前記前処理装置は、QuEChERS法を用いて前記複数の試料に順次前処理を実行する、請求項1
~14のいずれか一項に記載の前処理装置。
【請求項16】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理方法であって、
前記複数の試料に対して、第1の添加部により第1の添加物を順次添加するステップと、
前記第1の添加物が添加された前記複数の試料に対して、振とう部により第1回目の振とうを順次行うステップと、
前記第1回目の振とうが行われた前記複数の試料に対して、第2の添加部により第2の添加物を順次添加するステップと、
前記第2の添加物が添加された前記複数の試料に対して、前記振とう部により第2回目の振とうを順次行うステップとを含み、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行さ
れ、
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうおよび前記第2回目の振とうを実行する1つのみの振とう部であり、
前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加の終了後に、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうがさらに実行される、前処理方法。
【請求項17】
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理方法であって、
前記複数の試料に対して、第1の添加部により第1の添加物を順次添加するステップと、
前記第1の添加物が添加された前記複数の試料に対して、振とう部により第1回目の振とうを順次行うステップと、
前記第1回目の振とうが行われた前記複数の試料に対して、第2の添加部により第2の添加物を順次添加するステップと、
前記第2の添加物が添加された前記複数の試料に対して、前記振とう部により第2回目の振とうを順次行うステップとを含み、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行され、
前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加が並行して実行され、その後、継続されている前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうが並行して実行される、前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理装置および前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料について種々の分析を行う装置として分析装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数の自動分析装置と検体輸送装置とを備えた自動分析システムが記載されている。各自動分析装置は、ベルトコンベアおよび採取分析部を含むとともに、ベルトコンベア上の検体ラックを採取分析部へ導入する検体導入機構を含む。
【0003】
隣接する2つの自動分析装置において、前段側コンベアの終端側に後段側コンベアの始端がくるように配置される。検体輸送装置は、搬送機構を含み、前段側コンベアと後段側コンベアとの間に配置される。検体輸送装置の搬送機構は、前段側コンベアの終端で検体ラックを保持して後段側コンベアの始端まで搬送する。
【文献】特開2015-1460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置において試料の分析が行われる前に、試料の前処理が行われることがある。試料の分析と同様に、試料の前処理も自動的に行われることが望まれる。しかしながら、前処理は多数の工程を含むため、スループットを向上させつつ多数の試料に前処理を行うことは容易ではない。
【0005】
本発明の目的は、スループットを向上させつつ多数の試料に前処理を行うことが可能な前処理装置および前処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、各試料を振とうする振とう部と、同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する、前処理装置に関する。
【0007】
本発明の他の態様は、順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理方法であって、前記複数の試料に対して、第1の添加部により第1の添加物を順次添加するステップと、前記第1の添加物が添加された前記複数の試料に対して、振とう部により第1回目の振とうを順次行うステップと、前記第1回目の振とうが行われた前記複数の試料に対して、第2の添加部により第2の添加物を順次添加するステップと、前記第2の添加物が添加された前記複数の試料に対して、前記振とう部により第2回目の振とうを順次行うステップとを含み、前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行される、前処理方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スループットを向上させつつ多数の試料に前処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係る前処理装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を示すタイムテーブルである。
【
図3】
図3は第1の変形例のタイムテーブルを示す図である。
【
図4】
図4は第2の変形例のタイムテーブルを示す図である。
【
図5】
図5は第3の変形例のタイムテーブルを示す図である。
【
図6】
図6は第1の期間における第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は第2の期間における第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は第3の期間における第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は第3の期間における第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を説明するための図である。
【
図10】
図10は第4の期間における第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニットの動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は遠心分離ユニットおよび搬送ユニットの動作を説明するための図である。
【
図12】
図12は遠心分離ユニットおよび搬送ユニットの動作を説明するための図である。
【
図13】
図13は遠心分離ユニットおよび搬送ユニットの動作を説明するための図である。
【
図14】
図14は前処理装置により行われる前処理の全体工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)前処理装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る前処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る前処理装置を示す模式図である。
図1に示すように、複数のラック1、複数のラック4および複数のラック7が前処理装置100に導入される。各ラック1は、複数(本例では4個)の試料瓶2を保持する。試料瓶2は、例えば遠沈管であり、試料を収容する。各試料瓶2の上部にねじ式のキャップ3が取り付けられる。各ラック4は、複数のdSPE(分散固相抽出)チューブ5を保持する。各dSPEチューブ5の上部にねじ式のキャップ6が取り付けられる。ラック7は、複数のバイアル8を保持する。
【0011】
前処理装置100は、ラック1に保持された各試料瓶2内の試料にQuEChERS法を用いて前処理を行う。また、前処理装置100は、前処理が行われた試料をガスクロマトグラフ(GC)または液体クロマトグラフ(LC)等の分析装置に供給する。具体的には、前処理装置100は、第1の添加ユニット10、第2の添加ユニット20、遠心分離ユニット30、ロボットアーム40,50,60、搬送ユニット70,80および制御部90を備える。
【0012】
第1の添加ユニット10は、搬送部11、着脱部12、添加部13および振とう部14を含む。搬送部11には、複数のラック1が順次導入される。搬送部11は、ベルトコンベアを含み、導入されたラック1を第1の添加ユニット10内で一方向またはその反対方向に搬送する。着脱部12は、ラック1に保持された各試料瓶2のキャップ3を回転させることにより、各試料瓶2のキャップ3を着脱する。
【0013】
添加部13は、第1の添加部の例であり、ラック1の各試料瓶2に溶媒を注入するとともに、内標(内標準物質)を第1の添加物として添加する。溶媒は、例えばアセトニトリルである。振とう部14には、添加部13により処理が行われた複数のラック1、または第2の添加ユニット20により処理が行われた複数のラック1が順次導入される。振とう部14は、導入されたラック1を振とうすることにより、各試料瓶2の内容物を撹拌する。
【0014】
第2の添加ユニット20は、搬送部21、着脱部22および添加部23を含む。搬送部21には、第1の添加ユニット10から複数のラック1が順次導入される。搬送部21は、搬送部11と同様の構成を有し、導入されたラック1を第2の添加ユニット20内で搬送する。着脱部22は、着脱部12と同様の構成を有し、ラック1に保持された各試料瓶2のキャップ3を着脱する。添加部23は、第2の添加部の例であり、ラック1の各試料瓶2に所定の粉体を第2の添加物として添加する。
【0015】
遠心分離ユニット30は、分離部31、搬送部32,33および着脱部34,35を含む。分離部31には、第1の添加ユニット10から複数のラック1が順次導入される。分離部31においては、複数(例えば4個)のラック1が等角度間隔で配置される。分離部31は、第1の分離部の例であり、遠心分離機を含む。分離部31は、導入された複数のラック1に遠心力を印加することにより、複数のラック1の各試料瓶2の内容物を成分ごとに分離する。
【0016】
搬送部32,33は、それぞれ第1および第2の搬送部の例であり、搬送部11と同様の構成を有する。搬送部32,33は、並列に配置され、分離部31に導入された複数のラック1を遠心分離ユニット30内で交互に搬送する。着脱部34,35は、それぞれ第1および第2の着脱部の例であり、着脱部12と同様の構成を有する。着脱部34,35は、搬送部32,33にそれぞれ対応するように配置され、搬送部32,33によりそれぞれ搬送されるラック1に保持された各試料瓶2のキャップ3を着脱する。
【0017】
ロボットアーム40は、ロボットアームの例であり、ラック1を保持して第1の添加ユニット10と、第2の添加ユニット20と、遠心分離ユニット30との間で搬送する。この場合、各ラック1を他のラック1と干渉させることなくラック1を搬送することができる。これにより、後述するように、複数のラック1に対する処理を並列的に実行することができる。
【0018】
本例では、ロボットアーム40は2つのアーム部を含む。一方のアーム部は、搬送部11と、振とう部14と、搬送部21との間でラック1を搬送する。他方のアーム部は、搬送部11と、図示しない遠心分離ユニット30の搬送部と、分離部31と、搬送部32,33との間でラック1を搬送する。
【0019】
ロボットアーム50は、分注部の一例であり、遠心分離ユニット30と搬送ユニット70,80との間に設けられる。ロボットアーム50には、試料を吸引可能なピペットが取り付けられる。ロボットアーム50は、遠心分離ユニット30の搬送部32,33により搬送されるラック1の試料瓶2から比較的大容量の試料をGC用試料として吸引し、搬送ユニット70内でラック4により保持されたdSPEチューブ5に注入する。また、ロボットアーム50は、遠心分離が行われた後のdSPEチューブ5からGC用試料を吸引し、ラック7により保持されたバイアル8に注入する。これにより、試料の分注が行われる。
【0020】
ロボットアーム60は、分注部の他の例であり、遠心分離ユニット30と搬送ユニット70,80との間に設けられる。ロボットアーム60には、試料を吸引可能なピペットが取り付けられる。ロボットアーム60は、遠心分離ユニット30の搬送部32,33により搬送されるラック1の試料瓶2から比較的小容量の試料をLC用試料として吸引し、搬送ユニット80内でラック7により保持されたバイアル8に注入する。これにより、試料の分注が行われる。
【0021】
搬送ユニット70は、搬送部71、着脱部72、振とう部73および分離部74を含む。搬送部71には、複数のラック4が順次導入される。搬送部71は、搬送部11と同様の構成を有する。搬送部71は、導入された複数のラック4を搬送ユニット70内で搬送する。ラック4の各dSPEチューブ5には、夾雑物除去(クリーンアップ)用の充填剤が収容されている。
【0022】
着脱部72は、着脱部12と同様の構成を有し、ラック4に保持された各dSPEチューブ5のキャップ6を回転させることにより、各dSPEチューブ5のキャップ6を着脱する。試料を収容するラック1の試料瓶2の上澄み液がロボットアーム50によりdSPEチューブ5に分注される。振とう部73は、振とう部14と同様の構成を有し、導入されたラック4を振とうすることにより、dSPEチューブ5の内容物を撹拌する。
【0023】
分離部74には、振とう部73により処理が行われた複数のラック4が順次導入される。分離部74は、第2の分離部の例であり、分離部31と同様の構成を有する。分離部74は、導入された複数のラック4に遠心力を印加することにより、各ラック4の複数のdSPEチューブ5の内容物を成分ごとに分離する。分離部74により処理が行われたラック4は、搬送部71によりロボットアーム50に搬送される。
【0024】
搬送ユニット80は、搬送部81,82および圧縮ろ過ユニット83を含む。搬送部81,82には、複数のラック7が順次導入される。搬送部81,82は、搬送部11と同様の構成を有し、並列に配置される。搬送部81は、LC用のバイアル8を保持するラック7を搬送ユニット80内で搬送する。搬送部82は、GC用のバイアル8を保持するラック7を搬送ユニット80内で搬送する。
【0025】
試料を含むラック1の試料瓶2の上澄み液は、搬送部81において、ロボットアーム60によりラック7の各LC用のバイアル8に分注される。なお、LC用のバイアル8は、例えばMini-UniPrepである。その後、ラック7は、搬送部81により圧縮ろ過ユニット83に搬送され、圧縮ろ過ユニット83においてLC用のバイアル8が圧縮ろ過される。これにより、LC用試料が完成する。LC用試料を収容するバイアル8が保持されたラック7は、搬送部81により分析装置に搬送される。
【0026】
また、搬送ユニット70において遠心分離が行われたdSPEチューブ5の上澄み液は、搬送部82において、ロボットアーム50によりラック7の各GC用のバイアル8に分注される。これにより、GC用試料が完成する。GC用試料を収容するバイアル8が保持されたラック7は、搬送部82により分析装置に搬送される。
【0027】
制御部90は、例えばCPU(中央演算処理装置)を含む。制御部90は、第1の添加ユニット10、第2の添加ユニット20、遠心分離ユニット30、ロボットアーム40,50,60および搬送ユニット70,80の動作を制御する。
【0028】
(2)前処理装置の動作
(a)第1の添加ユニットおよび第2の添加ユニット
以下の説明では、第1の添加ユニット10に順次導入される複数のラック1を区別する場合は、複数のラック1をそれぞれラック1A,1B,1C,1D,…と呼ぶ。
図2は、第1の添加ユニット10および第2の添加ユニット20の動作を示すタイムテーブルである。
図2に示すように、連続する複数の期間T1~T4において、ラック1A~1Dがそれぞれ第1の添加ユニット10に導入され、導入されたラック1A~1Dに処理が開始される。
【0029】
本実施の形態においては、添加部13による処理は、比較的長時間を要する。そこで、第1の期間T1においては、添加部13によるラック1Aの処理が行われる。これに対して、第2の期間T2においては、添加部13によるラック1Bの処理が行われる間に、振とう部14による1つ前のラック1Aの処理が並列して行われる。
【0030】
第3の期間T3においては、添加部13によるラック1Cの処理が行われる間に、振とう部14による1つ前のラック1Bの処理および添加部23による2つ前のラック1Aの処理が並列して行われる。また、振とう部14によるラック1Bの処理および添加部23によるラック1Aの処理の終了後、添加部13によるラック1Cの処理の継続中に、振とう部14によるラック1Aの処理が行われる。
【0031】
同様に、第4の期間T4においては、添加部13によるラック1Dの処理が行われる間に、振とう部14による1つ前のラック1Cの処理および添加部23による2つ前のラック1Bの処理が並列して行われる。また、振とう部14によるラック1Cの処理および添加部23によるラック1Bの処理の終了後、添加部13によるラック1Dの処理の継続中に、振とう部14によるラック1Bの処理が行われる。その後、同様の動作が繰り返される。
【0032】
ここで、本実施の形態における各処理に要する時間について説明する。添加部13による内標の添加を行う時間は、好ましくは60秒よりも長い。一例として、本実施の形態では、内標の添加を行う時間は90秒である。これは、内標を含有する200μLの溶媒(例えば、アセトニトリル)と、5mL~10mLの溶媒(例えば、アセトニトリル)とを添加するが、60秒未満の短時間で添加すると、気泡の発生が生じ、その後の液体クロマトグラフ等の分析装置による分析の精度に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0033】
ただし、添加する内標および溶媒の量に応じて、添加の時間は60秒未満、例えば、50秒等であってもよい。振とう部14による振とうに要する時間は、例えば60秒である。この60秒という時間は、QuEChERS法のプロトコルで規定されている。添加部23による粉体の添加には、例えば、10秒必要である。添加部13による内標の添加よりも短時間で粉体を添加できるのは、予め計量された粉体を添加するだけでよいことに起因する。ただし、添加部23による粉体の添加に要する時間は、10秒よりも長くてもよい。
【0034】
本発明の1つ目の特徴は、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加が行われる間(T3)に、振とう部14による1つ前のラック(例えばラック1B)の振とうが並行して行われることである。これにより、前処理全体の処理時間を短縮することができる。詳細には、比較例として、例えば、ラック1Bについて、添加部13による内標の添加およびその後の振とう部14による第1回目の振とうを行った後、次のラック1Cについて、添加部13による内標の添加および振とう部14による第1回目の振とうを行う場合を考える。
【0035】
この比較例は、添加および振とうが組となって1つの処理工程であるとの考えに基づいている。この比較例では、振とう部14による第1回目の振とうの時間分だけ処理時間が長くなる。これに対して、本発明は、上記の通り、1つ前のラック1Bについて振とう部14による第1回目の振とうを行うことと並行して、次のラック1Cについて添加部13による内標の添加を行うことで、振とう部14による第1回目の振とうの時間分だけ処理時間を短くすることができる。
【0036】
本発明の他の特徴は、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加が行われている間であって、かつ、振とう部14による1つ前のラック(例えばラック1B)の第1回目の振とうが終わった後に、振とう部14による2つ前のラック(例えばラック1A)の第2回目の振とうが行われることである。
【0037】
このように、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加が行われている最中に、並行して振とう部14による第1回目の振とうおよび第2回目の振とうを行うことにより、さらに処理時間を短縮することができる。このような処理が可能であるのは、上記の通り、添加部13による内標の添加に要する時間(例えば90秒)が、振とう部14による振とうに要する時間(例えば60秒)よりも長いからである。
【0038】
なお、実際には、添加部13による内標の添加に要する時間と、振とう部14による振とうに要する時間×2とを合わせるため、添加部13では、内標の添加を行った後に30秒間の待機時間を設けている。したがって、30秒間の処理時間の遅れは生じるが、その反面、1つの振とう部14により第1回目の振とうおよび第2回目の振とうの両方を交互に行うことができるので、第1回目の振とうを行う振とう部および第2回目の振とうを行う振とう部を別個に設ける必要がない。これにより、部品点数の削減、コスト削減および装置全体の小型化等の付随的効果を得ることができる。
【0039】
なお、添加部13による内標の添加に要する時間が例えば50秒であり、振とう部14による振とうに要する時間が例えば60秒である場合には、添加部13による内標の添加に要する時間と、振とう部14による振とうに要する時間×2とを合わせるため、添加部13では、内標の添加を行った後に70秒間の待機時間を設けることになる。
【0040】
また、振とう部14による2つ前のラック(例えばラック1A)の第2回目の振とうを行う前には、添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への第2の添加が終了している必要がある。一例として、本実施の形態では、添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への第2の添加は、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加が行われている間であって、かつ、振とう部14による1つ前のラック(例えばラック1B)の第1回目の振とうと並行して行われる。したがって、添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への第2の添加の直後に、振とう部14による2つ前のラック(例えばラック1A)への振とうを行うことが可能となり、粉体が固まることを防止することができる。粉体を添加した後、すぐに振とうすることは、QuEChERS法のプロトコルでも規定されている。
【0041】
続いて、タイムテーブルの変形例について説明する。
図3は、第1の変形例のタイムテーブルを示す図である。上記の通り、添加部23による粉体の添加の直後に、振とう部14による2回目の振とうを行うことが、添加した粉体が固まらないようにするためには好ましい。しかしながら、添加する粉体の量によっては、短時間であれば、添加部23による粉体の添加の後、振とう部14による2回目の振とうまでに間を空けることも可能である。
【0042】
そこで、
図3に示すように、第1の変形例においては、
図2のタイムテーブルと比較して、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を開始する前に、添加部23によるラック(例えばラック1A)への第2の添加を行うように変更する。具体的には、添加部13によるラック(例えばラック1B)への内標の添加を行う最中、または、添加部13によるラック(例えばラック1B)への内標の添加を行った後、添加部13が待機を行う間に(すなわちT2の期間に)、添加部23によるラック(例えばラック1A)への第2の添加を行う。
【0043】
図4は、第2の変形例のタイムテーブルを示す図である。
図2および
図3では、1つの振とう部14のみで、第1回目の振とうおよび第2回目の振とうを行う。一方、
図4に示すように、第2の変形例では、
図3と比較して、第2回目の振とうを行う専用の振とう部14Bが別途設けられる。添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を開始する前に(詳細には、添加部13による1つ前のラック(例えばラック1B)への内標の添加と並行して)、添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への粉体の添加が行われる。
【0044】
続いて、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を行う最中に、並行して振とう部14によるラック(例えばラック1B)の振とうおよび振とう部14Bによるラック(例えばラック1A)の振とうが行われる。さらに、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を行う最中であって、振とう部14によるラック(例えばラック1B)の振とうの後に、添加部23によるラック(例えばラック1B)への粉体の添加が行われる。
【0045】
図5は、第3の変形例のタイムテーブルを示す図である。
図5に示すように、第3の変形例では、
図2または
図3と比較して、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を行う最中に、並行して振とう部14による1つ前のラック(例えばラック1B)の振とうおよび添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への粉体の添加が行われる。さらに、添加部13によるラック(例えばラック1C)への内標の添加を行う最中であって、添加部23による2つ前のラック(例えばラック1A)への粉体の添加が行われた後、振とう部14Bによる4による2つ前のラック(例えばラック1A)の振とうが行われる。
【0046】
以下、
図2のタイムテーブルの場合を例に説明を続ける。
図6は、第1の期間T1における第1の添加ユニット10および第2の添加ユニット20の動作を説明するための図である。
図6に示すように、第1の期間T1においては、第1の添加ユニット10の搬送部11にラック1Aが導入される。次に、矢印A1で示すように、搬送部11は、ラック1Aを着脱部12に搬送する。着脱部12は、ラック1Aの各試料瓶2からキャップ3を取り外し、取り外したキャップ3を保持する。
【0047】
続いて、矢印A2で示すように、搬送部11は、ラック1Aを添加部13に搬送する。添加部13は、ラック1Aの各試料瓶2に内標を添加する。その後、矢印A3で示すように、搬送部11は、ラック1Aを着脱部12に搬送する。着脱部12は、保持されたキャップ3をラック1Aの各試料瓶2に取り付ける。
【0048】
図7は、第2の期間T2における第1の添加ユニット10および第2の添加ユニット20の動作を説明するための図である。
図7に示すように、第2の期間T2においては、第1の添加ユニット10の搬送部11にラック1Bが導入される。また、搬送部11は、ラック1Aを振とう部14に搬送する。振とう部14は、ラック1Aを振とうする。振とうの終了後、矢印A4で示すように、振とう部14は、ラック1Aを所定の載置部(振とう部14のアーム部14a)に載置する。一方、ラック1Bには、
図6におけるラック1Aと同様の処理が行われる。
【0049】
図8および
図9は、第3の期間T3における第1の添加ユニット10および第2の添加ユニット20の動作を説明するための図である。
図8に示すように、第3の期間T3においては、第1の添加ユニット10の搬送部11にラック1Cが導入される。また、ロボットアーム40はラック1Aを第2の添加ユニット20の搬送部21に搬送し、搬送部11はラック1Bを振とう部14に搬送する。
【0050】
次に、矢印A5で示すように、搬送部21は、ラック1Aを着脱部22に搬送する。着脱部22は、ラック1Aの各試料瓶2からキャップ3を取り外し、取り外したキャップ3を保持する。続いて、矢印A6で示すように、搬送部21は、ラック1Aを添加部23に搬送する。添加部23は、ラック1Aの各試料瓶2に粉体を添加する。その後、矢印A7で示すように、搬送部21は、ラック1Aを着脱部22に搬送する。着脱部22は、保持されたキャップ3をラック1Aの各試料瓶2に取り付ける。
【0051】
一方、ラック1Bには、
図7におけるラック1Aと同様の処理が行われる。また、ラック1Cには、
図7におけるラック1Bと同様の処理が行われる。添加部23によるラック1Aの処理が終了した時点では、振とう部14によるラック1Bの処理が終了しているが、添加部13によるラック1Cへの処理は継続中である。
【0052】
そこで、
図9に示すように、ロボットアーム40は、ラック1Aを第1の添加ユニット10の振とう部14に搬送する。振とう部14は、ラック1Aを振とうする。その間に、添加部13によるラック1Cへの処理が並列して行われる。添加部13によるラック1Cへの処理の終了後、着脱部12によりキャップ3がラック1Cの各試料瓶2に取り付けられる。
【0053】
図10は、第4の期間T4における第1の添加ユニット10および第2の添加ユニット20の動作を説明するための図である。
図10に示すように、第4の期間T4においては、第1の添加ユニット10の搬送部11にラック1Dが導入される。また、ロボットアーム40は、一方のアーム部によりラック1Aを遠心分離ユニット30の分離部31に搬送する。さらに、ロボットアーム40は、他方のアーム部によりラック1Bを第2の添加ユニット20の搬送部21に搬送し、搬送部11はラック1Cを振とう部14に搬送する。
【0054】
ラック1B~1Dには、
図8および
図9におけるラック1A~1Cとそれぞれ同様の処理が行われる。以降、後続のラック1について同様の処理が繰り返される。これにより、遠心分離ユニット30の分離部31に所定数(本例では4個)のラック1が導入される。
【0055】
(b)遠心分離ユニットおよび搬送ユニット
図11~
図13は、遠心分離ユニット30および搬送ユニット70の動作を説明するための図である。
図11に示すように、遠心分離ユニット30の分離部31に所定数のラック1が導入される。この状態で、分離部31は、導入された複数のラック1に遠心力を印加する。次に、矢印B1で示すように、搬送部32は、ラック1Aを着脱部34に搬送する。着脱部34は、ラック1Aの各試料瓶2からキャップ3を取り外し、取り外したキャップ3を保持する。
【0056】
続いて、矢印B2で示すように、搬送部32は、ラック1Aをロボットアーム50またはロボットアーム60に搬送する。ここで、ラック1Aに保持された各試料瓶2の試料の一部はLC用試料として用いられ、他の一部はGC用試料として用いられる。
【0057】
そこで、LC用試料の分注の際には、搬送ユニット80において、搬送部81は、ラック7をロボットアーム60に搬送する。ロボットアーム60は、搬送部32のラック1Aの複数の試料瓶2から内容物を吸引し、搬送部81のラック7の複数のバイアル8に注入する。分注の終了後、搬送部81は、ラック7を圧縮ろ過ユニット83に搬送する。また、搬送部81に新しいラック7が導入される。
【0058】
一方、GC用試料の分注の際には、搬送ユニット70において、搬送部71は、ラック4をロボットアーム50に搬送する。着脱部72は、ラック4の各dSPEチューブ5からキャップ6を取り外し、取り外したキャップ6を保持する。また、搬送ユニット80において、搬送部82は、ラック7をロボットアーム50に搬送する。ロボットアーム50は、搬送部32のラック1Aの複数の試料瓶2から内容物を吸引し、搬送部71のラック4の複数のdSPEチューブ5に注入する。その後、着脱部72は、保持されたキャップ6をラック4の各dSPEチューブ5に取り付ける。
【0059】
次に、搬送部71は、ラック4を振とう部73に搬送する。振とう部73は、ラック4を振とうする。これにより、ラック4の各dSPEチューブ5に振とう動作が施される。振とう動作の終了後、搬送部71は、ラック4を分離部74に搬送する。分離部74は、所定数(本例では4個)のラック4が導入された場合、導入されたラック4に遠心力を印加する。これにより、遠心分離が行われる。遠心分離の終了後、着脱部72は、ラック4の各dSPEチューブ5からキャップ6を取り外し、取り外したキャップ6を保持する。また、搬送部71は、ラック4をロボットアーム50に順次搬送する。
【0060】
ロボットアーム50は、遠心分離が施された複数のdSPEチューブ5から内容物を吸引し、搬送部82のラック7の複数のバイアル8に注入する。分注の終了後、搬送部82は、ラック7を分析装置に搬送する。その後、着脱部72は、保持されたキャップ6を分注終了後のラック4の各dSPEチューブ5に取り付ける。搬送部71は、使用済みのラック4を図示しない廃棄に搬送する。また、搬送部71に新しいラック4が導入され、搬送部82に新しいラック7が導入される。
【0061】
上記の分注が行われている間、
図12に示すように、搬送部33は、ラック1Bを着脱部35に搬送する。着脱部35は、ラック1Bの各試料瓶2からキャップ3を取り外し、取り外したキャップ3を保持する。これにより、ラック1Aの処理の終了後、即座にラック1Bの処理を開始することができる。
【0062】
ラック1Aの処理の終了後、
図13に示すように、搬送部32はラック1Aを着脱部34に搬送し、搬送部33はラック1Bをロボットアーム50またはロボットアーム60に搬送する。着脱部34は、保持されたキャップ3をラック1Aの各試料瓶2に取り付ける。その後、搬送部32は、ラック1Aを図示しない廃棄装置に搬送する。
【0063】
一方、ラック1Bには、
図11および
図12におけるラック1Aと同様の処理が行われる。また、ラック1Bの処理が行われている間、搬送部32は、ラック1Cを着脱部34に搬送する。着脱部34は、ラック1Cの各試料瓶2からキャップ3を取り外し、取り外したキャップ3を保持する。これにより、ラック1Bの処理の終了後、即座にラック1Cの処理を開始することができる。以降、後続のラック1について同様の処理が繰り返される。
【0064】
(3)前処理のフローチャート
(a)前処理の全体工程
図14は、前処理装置100により行われる前処理の全体工程を示す図である。
図14においては、各処理を示す矩形に固有のハッチングパターンまたはドットパターンが付されている。
図14に示すように、前処理は、第1~第5の工程を含む。
【0065】
第1の工程では、内標の添加および振とうが行われた後、粉体の添加および振とうが行われる。第2の工程では、試料の分離が行われる。第3の工程では、LC用試料のバイアル8への分注および圧縮ろ過が行われるとともに、GC用試料のdSPEチューブ5への分注が行われる。第4の工程では、dSPEチューブ5内のGC用試料の振とうおよび分離が行われる。第5の工程では、バイアル8へのGC用試料の分注が行われる。以下、各工程をフローチャートを用いて説明する。
【0066】
(b)第1の工程
図15および
図16は、第1の工程を示すフローチャートである。なお、
図15および
図16のフローチャートでは、試料瓶2のキャップ3を着脱する工程の説明を省略する。第1の添加ユニット10の搬送部11には、図示しない搬送装置により複数のラック1が順次導入される。搬送部11は、新たに導入されたラック1を添加部13に搬送する(ステップS1)。添加部13は、ステップS1で搬送されたラック1の各試料瓶2に内標を添加する(ステップS2)。
【0067】
次に、搬送部11は、添加部13のラック1を振とう部14に搬送する(ステップS3)。また、搬送部11は、ステップS1と同様に、新たに導入されたラック1を添加部13に搬送する(ステップS4)。振とう部14は、ステップS3で搬送されたラック1を振とうする(ステップS5)。添加部13は、ステップS2と同様に、ステップS4で搬送されたラック1の各試料瓶2に内標を添加する(ステップS6)。ステップS3,S5と、ステップS4,S6とは並列的に実行される。
【0068】
次に、ロボットアーム40は、振とう部14のラック1を第2の添加ユニット20の添加部23に搬送する(ステップS7)。搬送部11は、ステップS3と同様に、添加部13のラック1を振とう部14に搬送する(ステップS8)。また、搬送部11は、ステップS4と同様に、新たに導入されたラック1を添加部13に搬送する(ステップS9)。
【0069】
添加部23は、ステップS7で搬送されたラック1の各試料瓶2に粉体を添加する(ステップS10)。振とう部14は、ステップS5と同様に、ステップS8で搬送されたラック1を振とうする(ステップS11)。添加部13は、ステップS6と同様に、ステップS9で搬送されたラック1の各試料瓶2に内標を添加する(ステップS12)。
【0070】
続いて、ロボットアーム40は、添加部23のラック1を第1の添加ユニット10の振とう部14に搬送する(ステップS13)。振とう部14は、ステップS13で搬送されたラック1を振とうする(ステップS14)。その後、ロボットアーム40は、振とう部14のラック1を遠心分離ユニット30の分離部31に搬送する(ステップS15)。ステップS7,S10,S13~S15と、ステップS8,S11と、ステップS9,S12とは並列的に実行される。
【0071】
次に、制御部90は、第1の添加ユニット10の搬送部11に所定数(本例では120個)のラック1が導入されたか否かを判定する(ステップS16)。所定数のラック1が導入された場合、処理はステップS5,S6とステップS7~S9との間に戻る。所定数のラック1が導入されるまで、ステップS7~S16が繰り返される。
【0072】
所定数のラック1が導入された場合、ロボットアーム40は、ステップS7と同様に、振とう部14のラック1を第2の添加ユニット20の添加部23に搬送する(ステップS17)。搬送部11は、ステップS8と同様に、添加部13のラック1を振とう部14に搬送する(ステップS18)。次に、添加部23は、ステップS10と同様に、ステップS17で搬送されたラック1の各試料瓶2に粉体を添加する(ステップS19)。振とう部14は、ステップS11と同様に、ステップS18で搬送されたラック1を振とうする(ステップS20)。
【0073】
続いて、ロボットアーム40は、ステップS13と同様に、添加部23のラック1を第1の添加ユニット10の振とう部14に搬送する(ステップS21)。振とう部14は、ステップS14と同様に、ステップS21で搬送されたラック1を振とうする(ステップS22)。その後、ロボットアーム40は、ステップS15と同様に、振とう部14のラック1を遠心分離ユニット30の分離部31に搬送する(ステップS23)。ステップS17,S19,S21~S23と、ステップS18,S20とは並列的に実行される。
【0074】
次に、ロボットアーム40は、ステップS17と同様に、振とう部14のラック1を第2の添加ユニット20の添加部23に搬送する(ステップS24)。添加部23は、ステップS19と同様に、ステップS17で搬送されたラック1の各試料瓶2に粉体を添加する(ステップS25)。
【0075】
続いて、ロボットアーム40は、ステップS21と同様に、添加部23のラック1を第1の添加ユニット10の振とう部14に搬送する(ステップS26)。振とう部14は、ステップS22と同様に、ステップS26で搬送されたラック1を振とうする(ステップS27)。その後、ロボットアーム40は、ステップS23と同様に、振とう部14のラック1を遠心分離ユニット30の分離部31に搬送する(ステップS28)。これにより、第1の工程が終了する。
【0076】
(c)第2の工程
図17は、第2の工程を示すフローチャートである。遠心分離ユニット30の分離部31には、第1の工程のステップS15,S23,S28が実行されることにより複数のラック1が順次導入される。制御部90は、分離部31に特定の数(本例では4個)のラック1が導入されたか否かを判定する(ステップS31)。特定の数のラック1が導入されていない場合、制御部90は、特定の数のラック1が導入されるまで待機する。
【0077】
特定の数のラック1が導入された場合、分離部31は、導入されたラック1に遠心力を印加する(ステップS32)。その後、処理はステップS31に戻る。
【0078】
(d)第3の工程
図18および
図19は、第3の工程を示すフローチャートである。搬送ユニット70の搬送部71には、図示しない搬送装置により複数のラック4が順次導入される。また、搬送部81,82の各々には、図示しない搬送装置により複数のラック7が順次導入される。遠心分離ユニット30の搬送部32は、分離部31のラック1を着脱部34に搬送する(ステップS1)。着脱部34は、ステップS41で搬送されたラック1の各試料瓶2からキャップ3を取り外す(ステップS42)。
【0079】
搬送部32は、着脱部34のラック1をロボットアーム60に搬送する(ステップS43)。また、搬送ユニット80の搬送部81は、新たに導入されたラック7をロボットアーム60に搬送する(ステップS44)。ステップS44は、ステップS43と並列的に実行されてもよい。
【0080】
ロボットアーム60は、ステップS43で搬送されたラック1の試料瓶2からLC用試料を吸引し、ステップS44で搬送されたラック7のバイアル8に注入する。また、搬送部81は、ラック7を圧縮ろ過ユニット83に搬送する。これにより、LC用試料の分注および圧縮ろ過が行われる(ステップS45)。次に、搬送部81は、ロボットアーム60のラック7を分析装置に搬送する(ステップS46)。
【0081】
続いて、搬送部32は、ロボットアーム60のラック1をロボットアーム50に搬送する(ステップS47)。また、搬送部71は、新たに導入されたラック4をロボットアーム50に搬送する(ステップS48)。このとき、ラック4の各dSPEチューブ5のキャップ6の取り外しおよびキャップ6の保持が着脱部72により行われる。ステップS48は、ステップS47と並列的に実行されてもよい。
【0082】
ロボットアーム50は、ステップS47で搬送されたラック1の試料瓶2からGC用試料を吸引し、ステップS48で搬送されたラック4のdSPEチューブ5に注入することにより、GC用試料の分注を行う(ステップS49)。その後、搬送部71は、ロボットアーム50のラック4を振とう部73に搬送する(ステップS50)。このとき、ラック4の各dSPEチューブ5にキャップ6の取り付けが着脱部72により行われる。
【0083】
また、搬送部32は、ロボットアーム50のラック1を着脱部34に搬送する(ステップS51)。着脱部34は、ステップS51で搬送されたラック1の各試料瓶2にステップS42で取り外されたキャップ3を取り付ける(ステップS52)。ステップS51,S52は、ステップS50と並列的に実行されてもよい。ステップS52で各試料瓶2にキャップ3が取り付けられたラック1は、図示しない廃棄装置に搬送される。
【0084】
さらに、搬送部33は、分離部31のラック1を着脱部35に搬送する(ステップS53)。着脱部35は、ステップS53で搬送されたラック1の各試料瓶2からキャップ3を取り外す(ステップS54)。ステップS53,S54は、ステップS43~S50と並列的に実行される。
【0085】
次に、搬送部33は、着脱部35のラック1をロボットアーム60に搬送する(ステップS55)。また、搬送部81は、新たに導入されたラック7をロボットアーム60に搬送する(ステップS56)。ステップS56は、ステップS55と並列的に実行されてもよい。
【0086】
ロボットアーム60は、ステップS55で搬送されたラック1の試料瓶2からLC用試料を吸引し、ステップS56で搬送されたラック7のバイアル8に注入する。また、搬送部81は、ラック7を圧縮ろ過ユニット83に搬送する。これにより、LC用試料の分注および圧縮ろ過が行われる(ステップS57)。次に、搬送部81は、ロボットアーム60のラック7を分析装置に搬送する(ステップS58)。
【0087】
続いて、搬送部33は、ロボットアーム60のラック1をロボットアーム50に搬送する(ステップS59)。また、搬送部71は、新たに導入されたラック4をロボットアーム50に搬送する(ステップS60)。このとき、ラック4の各dSPEチューブ5のキャップ6の取り外しおよびキャップ6の保持が着脱部72により行われる。ステップS60は、ステップS59と並列的に実行されてもよい。
【0088】
ロボットアーム50は、ステップS59で搬送されたラック1の試料瓶2からGC用試料を吸引し、ステップS60で搬送されたラック4のdSPEチューブ5に注入することにより、GC用試料の分注を行う(ステップS61)。その後、搬送部71は、ロボットアーム50のラック4を振とう部73に搬送する(ステップS62)。このとき、ラック4の各dSPEチューブ5にキャップ6の取り付けが着脱部72により行われる。
【0089】
また、搬送部33は、ロボットアーム50のラック1を着脱部35に搬送する(ステップS63)。着脱部35は、ステップS63で搬送されたラック1の各試料瓶2にステップS54で取り外されたキャップ3を取り付ける(ステップS64)。ステップS63,S64は、ステップS62と並列的に実行されてもよい。ステップS64で各試料瓶2にキャップ3が取り付けられたラック1は、図示しない廃棄装置に搬送される。
【0090】
その後、処理はステップS41に戻る。この場合、次のステップS41,S42は、前のステップS55~S62と並列的に実行される。
【0091】
(e)第4の工程
図20は、第4の工程を示すフローチャートである。搬送ユニット70の振とう部73には、第3の工程のステップS50,S62が実行されることにより複数のラック4が順次導入される。振とう部73は、導入されたラック4を振とうする(ステップS71)。次に、搬送部71は、振とう部73のラック4を分離部74に搬送する(ステップS72)。これにより、分離部74にラック4が導入される。
【0092】
続いて、制御部90は、分離部74に特定の数(本例では4個)のラック4が導入されたか否かを判定する(ステップS73)。特定の数のラック4が導入されていない場合、処理はステップS71に戻る。特定の数のラック4が導入されるまでステップS71~S73が繰り返される。特定の数のラック4が導入された場合、分離部74は、導入されたラック4に遠心力を印加する(ステップS74)。その後、処理はステップS71に戻る。
【0093】
第4の工程においては、遠心分離ユニット30の分離部31とは別個の分離部74を用いて試料の遠心分離が行われる。そのため、遠心分離ユニット30および搬送ユニット70の各々において、試料に遠心分離を行うための待機時間が短縮される。これにより、スループットを向上させることができる。
【0094】
(f)第5の工程
図21は、第5の工程を示すフローチャートである。搬送ユニット70の搬送部71は、分離部74のラック4をロボットアーム50に搬送する(ステップS81)。このとき、ラック4の各dSPEチューブ5のキャップ6の取り外しおよびキャップ6の保持が着脱部72により行われる。また、搬送部81は、新たに導入されたラック7をロボットアーム50に搬送する(ステップS82)。ステップS82は、ステップS81と並列的に実行されてもよい。
【0095】
ロボットアーム50は、ステップS81で搬送されたラック4のdSPEチューブ5からGC用試料を吸引し、ステップS82で搬送されたラック7のバイアル8に注入することにより、GC用試料の分注を行う(ステップS83)。次に、搬送部81は、ロボットアーム50のラック7を分析装置に搬送する(ステップS84)。その後、処理はステップS81に戻る。なお、ステップS83の終了後、ラック4の各dSPEチューブ5にキャップ6の取り付けが着脱部72により行われ、ラック4は廃棄される。
【0096】
(4)効果
本実施の形態に係る前処理装置100においては、複数のラック1の試料瓶2に収容された試料に対して、添加部13により内標が順次添加される。内標が添加された複数の試料に対して、振とう部14により第1回目の振とうが順次行われる。第1回目の振とうが行われた複数の試料に対して、添加部23により粉体が順次添加される。粉体が添加された複数の試料に対して、振とう部14により第2回目の振とうが順次行われる。
【0097】
ラック1Cの試料への内標の添加と並行して、ラック1Bの試料の第1回目の振とうおよびラック1Aの試料への粉体の添加が実行される。また、ラック1Bの試料の第1回目の振とうおよびラック1Aの試料への粉体の添加の終了後に、ラック1Cの試料への内標の添加と並行して、ラック1Aの試料の第2回目の振とうがさらに実行される。後続のラック1の試料に対しても同様の処理が繰り返される。
【0098】
この場合、各ラック1の試料の前処理と他のラック1の試料の前処理とを干渉させることなく、複数の前処理を並列的に実行することができる。これにより、複数の試料の前処理に要する時間が短縮される。その結果、スループットを向上させつつ多数の試料に前処理を行うことができる。
【0099】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、ラック1は4個の試料瓶2を保持するが、実施の形態はこれに限定されない。ラック1は、3個以下の試料瓶2を保持してもよいし、5個以上の試料瓶2を保持してもよい。
【0100】
(b)上記実施の形態において、搬送ユニット70は振とう部73および分離部74を含むが、実施の形態はこれに限定されない。GC用試料の前処理が行われない場合には、搬送ユニット70は、振とう部73および分離部74を含まなくてもよい。あるいは、前処理装置100が十分なスループットを有する場合には、遠心分離ユニット30の分離部31によりGC用試料の分離が行われてもよい。この場合、搬送ユニット70は分離部74を含まなくてもよい。
【0101】
(c)上記実施の形態において、遠心分離ユニット30は並行に設けられた2つの搬送部32,33を含むが、実施の形態はこれに限定されない。前処理装置100が十分なスループットを有する場合には、遠心分離ユニット30は、1つの搬送部を含んでもよい。
【0102】
(d)上記実施の形態において、前処理装置100はロボットアーム40を含むが、実施の形態はこれに限定されない。前処理装置100は、ロボットアーム40に代えて、ロボットアーム40と同様のラック1の搬送を行うベルトコンベアを含んでもよい。
【0103】
(e)上記実施の形態において、前処理装置100は、分注の終了後、ラック7を搬送ユニット80の搬送部81,82により分析装置に搬送するが、実施の形態はこれに限定されない。前処理装置100は、分注の終了後、ラック7を分析装置に搬送しなくてもよい。
【0104】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0105】
(第1項)一態様に係る前処理装置(以下の全ての項も含めて、前処理方法についても同様である。)は、
順次導入される複数の試料に前処理を実行する前処理装置であって、
各試料に第1の添加物を添加する第1の添加部と、
各試料に第2の添加物を添加する第2の添加部と、
各試料を振とうする振とう部と、
同一の試料に対して前記第1の添加物の添加、第1回目の振とう、前記第2の添加物の添加および第2回目の振とうが順次実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御する制御部とを備え、
前記複数の試料は、この順で導入される第1の試料、第2の試料および第3の試料を含み、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうが実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御してもよい。
【0106】
この前処理装置においては、第3の試料への第1の添加物の添加と並行して、第2の試料の第1回目の振とうが実行される。この場合、各試料の前処理と他の試料の前処理とを干渉させることなく、複数の前処理を並列的に実行することができる。これにより、複数の試料の前処理に要する時間が短縮される。その結果、スループットを向上させつつ多数の試料に前処理を行うことができる。
【0107】
比較例として、例えば、第2の試料について、前記第1の添加物の添加およびその後の第1回目の振とうを順番に行った後、次の第3の試料について、前記第1の添加物の添加およびその後の第1回目の振とうを順番に行う場合を考える。この比較例では、振とう部による第1回目の振とうの時間分、本実施の形態に比べて処理時間が長くなる。これに対して、本実施の形態では、第3の試料への第1の添加物の添加と並行して、1つ前の第2の試料の第1回目の振とうが実行されるので、振とう部による第1回目の振とうの時間分、処理時間を短くすることができる。これは、
図2~
図5の全てにおいて適用され得る。
【0108】
(第2項)第1項に記載の前処理装置において、
前記制御部は、前記第2の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料への前記第2の添加物の添加が実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御してもよい。
【0109】
これは、特に、
図3および
図4において適用され得る。
【0110】
(第3項)第1項または第2項に記載の前処理装置において、
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうおよび前記第2回目の振とうを実行する1つのみの振とう部であり、
前記制御部は、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加の終了後に、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第1の試料の前記第2回目の振とうがさらに実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御してもよい。
【0111】
この場合、第3の試料への第1の添加物の添加と並行して、第1の試料の第2回目の振とうがさらに実行されるので、複数の試料の前処理に要する時間がより短縮される。これにより、スループットをより向上させることができる。
【0112】
さらに、1つの振とう部により第1回目の振とうおよび第2回目の振とうの両方を交互に行うことができるので、第1回目の振とうを行う振とう部および第2回目の振とうを行う振とう部を別個に設ける必要がない。これにより、部品点数の削減、コスト削減および装置全体の小型化等の付随的効果を得ることができる。これは、特に、
図2および
図3において適用され得る。
【0113】
(第4項)第1項または第2項に記載の前処理装置において、
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうおよび前記第2回目の振とうを実行する1つのみの振とう部であり、
前記制御部は、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加の終了後に、前記第1の試料の前記第2回目の振とうがさらに実行されるように前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御してもよい。
【0114】
(第5項)第3項または第4項に記載の前処理装置において、
前記制御部は、前記第3の試料への前記第1の添加物の添加と並行して、前記第2の試料の前記第1回目の振とうおよび前記第1の試料への前記第2の添加物の添加が並行して実行されるように、前記第1の添加部、前記第2の添加部および前記振とう部の動作を制御してもよい。
【0115】
この場合、第1の試料への第2の添加物の添加の後、直ちに、第1の試料への第2回目の振とうを行うことができる。その結果、第2の添加物が粉体である場合でも、直ちに振とうが行われないことにより粉体が固まるという不具合を防止することができる。これは、特に、
図2において適用され得る。
【0116】
(第6項)第3項~第5項のいずれか一項に記載の前処理装置において、
前記第1の添加物の添加は内標の添加であり、前記第1の添加物の添加に要する時間は、前記第1回目の振とうに要する時間よりも長くてもよい。
【0117】
(第7項)第1項に記載の前処理装置において、
前記振とう部は、各試料に対して、前記第1回目の振とうを実行し、
前記前処理装置は、各試料に対して、前記第2回目の振とうを実行する第2の振とう部をさらに備えてもよい。
【0118】
これは、特に、
図4および
図5において適用され得る。
【0119】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載の前処理装置は、
前記第2回目の振とうが行われた各試料に遠心分離を行う第1の分離部と、
前記第1の分離部により遠心分離が行われた各試料を分注する分注部とをさらに備えてもよい。
【0120】
この場合、前処理が行われた試料の分注を行うことができる。
【0121】
(第9項)第8項に記載の前処理装置は、
各試料を保持して搬送するロボットアームまたはベルトコンベアをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の添加部により前記第3の試料に前記第1の添加物が添加されている間に、前記振とう部から前記第2の添加部に前記第1の試料が搬送されるように前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアの動作を制御してもよい。
【0122】
この場合、第1の試料を他の試料と干渉させることなく容易に第2の添加部に搬送することができる。これにより、第3の試料への第1の添加物の添加と並行して、第1の試料への第2の添加物の添加を容易に実行することができる。
【0123】
(第10項)第9項に記載の前処理装置において、
前記制御部は、前記第1の添加部により前記第3の試料に前記第1の添加物が添加されている間に、前記第1回目の振とうが終了した前記第2の試料が前記振とう部に設けられた載置部に載置されるとともに、前記第2の添加部から前記振とう部に前記第1の試料が搬送されるように前記振とう部と前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアとの動作を制御してもよい。
【0124】
この場合、第1の試料を他の試料と干渉させることなく容易に振とう部に搬送することができる。これにより、第3の試料への第1の添加物の添加と並行して、第1の試料の第2回目の振とうを容易に実行することができる。
【0125】
(第11項)第9項または第10項に記載の前処理装置において、
前記制御部は、前記第2回目の振とうが終了した前記第1の試料が前記振とう部から前記第1の分離部に搬送されるように前記ロボットアームまたは前記ベルトコンベアの動作を制御してもよい。
【0126】
この場合、第1の試料を他の試料と干渉させることなく容易に第1の分離部に搬送することができる。これにより、後続の試料について、第1~第3の試料と同様の前処理を容易に繰り返すことができる。
【0127】
(第12項)第8項~第11項のいずれか一項に記載の前処理装置において、
前記複数の試料は、各々がキャップを取り付け可能な複数の試料瓶にそれぞれ収容され、
前記前処理装置は、
前記複数の試料瓶のうち、いずれかの試料瓶を前記第1の分離部から前記分注部に搬送する第1の搬送部と、
前記複数の試料瓶のうち、他のいずれかの試料瓶を前記第1の分離部から前記分注部に搬送する第2の搬送部と、
前記第1の搬送部により搬送される試料瓶から前記キャップを着脱する第1の着脱部と、
前記第2の搬送部により搬送される試料瓶から前記キャップを着脱する第2の着脱部とをさらに備え、
前記複数の試料瓶は、前記第1の試料および前記第2の試料をそれぞれ収容する第1の試料瓶および第2の試料瓶を含み、
前記制御部は、
前記第1の試料瓶に対して、前記キャップの取り外し、前記第1の試料の分注および前記キャップの取り付けが順次実行されるように前記第1の搬送部、前記第1の着脱部および前記分注部の動作を制御するとともに、
前記分注部による前記第1の試料の分注と並行して、前記第2の試料瓶の前記キャップの取り外しが実行されるように前記第2の搬送部および前記第2の着脱部の動作を制御してもよい。
【0128】
この場合、第1の試料の分注の終了後、即座に第2の試料の分注を開始することが可能になる。これにより、スループットをより向上させることができる。
【0129】
(第13項)第12項に記載の前処理装置において、
前記複数の試料瓶は、前記第3の試料を収容する第3の試料瓶をさらに含み、
前記制御部は、
前記第2の試料瓶に対して、前記第2の試料の分注および前記キャップの取り付けが順次実行されるように前記第2の搬送部、前記第2の着脱部および前記分注部の動作を制御するとともに、
前記分注部による前記第2の試料の分注と並行して、前記第3の試料瓶の前記キャップの取り外しが実行されるように前記第1の搬送部および前記第1の着脱部の動作を制御してもよい。
【0130】
この場合、第2の試料の分注の終了後、即座に第3の試料の分注を開始することが可能になる。これにより、スループットをさらに向上させることができる。
【0131】
(第14項)第8項~第13項のいずれか一項に記載の前処理装置は、
前記分注部により分注が行われた各試料に遠心分離を行う第2の分離部をさらに備えてもよい。
【0132】
この場合、第1の分離部とは別個の第2の分離部を用いて分注後の各試料の遠心分離が行われるので、各試料に遠心分離を行うための待機時間が短縮される。これにより、スループットをより向上させることができる。
【0133】
(第15項)第1項~第14項のいずれか一項に記載の前処理装置は、
QuEChERS法を用いて前記複数の試料に順次前処理を実行してもよい。
【0134】
この場合、多量の試料が効率よく前処理される。これにより、スループットをより向上させることができる。