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特許7563579路側通信装置、路側通信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】路側通信装置、路側通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/24 20090101AFI20241001BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20241001BHJP
   H04W 52/28 20090101ALI20241001BHJP
【FI】
H04W16/24
H04W4/44
H04W52/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023509911
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013244
(87)【国際公開番号】W WO2022208597
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-294740(JP,A)
【文献】特開2011-061604(JP,A)
【文献】特開2010-118907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する受信手段と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する決定手段と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する送信手段と、
前記通知対象範囲のうち、前記第1の移動体が前記第1の無線信号を送信可能な送信範囲を除いた中継対象範囲を特定する特定手段と、
前記中継対象範囲内に第2の移動体が存在するかどうかを判定する判定手段を備え、
前記送信手段は、前記中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在しない場合、前記第2の無線信号を送信しない、
路側通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記情報の属性、前記交通特性及び前記環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、前記通知対象範囲を変化させる、
請求項1に記載の路側通信装置。
【請求項3】
前記属性は、前記情報の重要度又は緊急度であって、
前記決定手段は、前記重要度又は緊急度に応じて、前記通知対象範囲を変化させる請求項2に記載の路側通信装置。
【請求項4】
前記属性は、前記情報の通知先であって、
前記決定手段は、前記通知先に応じて、前記通知対象範囲を変化させる請求項2又は3に記載の路側通信装置。
【請求項5】
前記交通特性は、前記道路における規制速度又は前記道路を走行する車両の速度の統計値であって、
前記決定手段は、前記規制速度又は前記統計値に応じて、前記通知対象範囲を変化させる請求項2から4の何れか1項に記載の路側通信装置。
【請求項6】
前記環境状態は、前記道路における天候又は照度であって、
前記決定手段は、前記天候又は前記照度に応じて、前記通知対象範囲を変化させる請求項2から5の何れか1項に記載の路側通信装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記第1の移動体の位置及び前記第1の無線信号の伝搬特性に基づいて、前記送信範囲を特定する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の路側通信装置。
【請求項8】
第1の移動体からの第1の無線信号を受信し、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定し、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信し、
前記通知対象範囲のうち、前記第1の移動体が前記第1の無線信号を送信可能な送信範囲を除いた中継対象範囲を特定し、
前記中継対象範囲内に第2の移動体が存在するかどうかを判定し、
前記中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在しない場合、前記第2の無線信号を送信しない、
路側通信方法。
【請求項9】
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する処理と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する処理と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する処理と、
前記通知対象範囲のうち、前記第1の移動体が前記第1の無線信号を送信可能な送信範囲を除いた中継対象範囲を特定する処理と、
前記中継対象範囲内に第2の移動体が存在するかどうかを判定する処理と、
前記中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在しない場合、前記第2の無線信号を送信しない処理と、
を情報処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な車両に対して、他の車両からの情報を転送可能な路側通信装置、路側通信方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転の支援及び自動運転の実現のために、車両と車両との間での通信を行う車車間通信や、車両が走行する道路に設置された路側通信装置と車両との間で通信を行う路車間通信の技術開発が進展している。
【0003】
例えば、特許文献1には、車車間通信や路車間通信に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-278382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
路車間通信において、路側通信装置は、一方の車両からの情報を受信し、周辺に他の車両が位置する場合には他の車両に対して受信した情報を転送する場合がある。この場合、路側通信装置は、所定の範囲内に位置する車両と通信することで、他方の車両に対して情報を転送する。
【0006】
この際、路側通信装置が受信する情報の属性(例えば重要度など)、道路の交通特性及び道路の環境状態等は様々であるため、路側通信装置は、これらの要因に応じて適切な車両に情報を転送することが求められる。しかし、特許文献1に記載の技術は、路側通信装置が転送する範囲はこれらの要因によって変化するものでは無かったため、適切な車両に対して情報を転送することができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、適切な車両に対して、他の車両からの情報を転送可能な路側通信装置、路側通信方法及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の路側通信装置は、
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する受信部と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する決定部と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する送信部と、
を備える。
【0009】
または、本発明の路側通信方法は、
第1の移動体からの第1の無線信号を受信し、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定し、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する。
【0010】
または、本発明の記憶媒体は、
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する処理と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する処理と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する処理と、
を情報処理装置に実行させるプログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適切な車両に対して、他の車両からの情報を転送可能な路側通信装置、路側通信方法及び記憶媒体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態における路側通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態における路側通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図3】本発明の第2の実施形態における路側通信システムの構成例を説明するための図である。
図4】本発明の第2の実施形態における路側通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図5】本発明の第3の実施形態における路側通信装置の構成例を説明するための図である。
図6】本発明の第3の実施形態における路側通信装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
第1の実施形態における路側通信システム1について、図1及び図2に基づき説明する。図1は、路側通信システム1の構成例を示すブロック図である。また、図2は、路側通信システム1の動作例を示すシーケンス図である。
【0014】
図1に示されるように、路側通信システム1は、第1の移動体10、路側通信装置20及び無線端末30A、30Bを備える。なお、図1に示される通知対象範囲は、後述の決定部22により決定される範囲である。なお、無線端末30A、30Bを区別する必要が無い場合、無線端末30A、30Bの各々を無線端末30とする。
【0015】
本路側通信システム1においては、第1の移動体10から、周辺に位置する無線端末30に対して、第1の移動体10の位置情報、移動速度、走行状況、乗員の情報等を含む第1の無線信号が送信されても良い。路側通信装置20は、これらの情報を他の無線端末30に転送する。これにより、例えば、無線端末30が車両に搭載された車載装置である場合には、無線端末30は、転送された情報を用いて、車両の自動運転や車両の乗員への運転サポートなどを行っても良い。このように、第1の移動体10からの情報により無線端末30が搭載された車両に、安全な運転を実行させることができる。
【0016】
第1の移動体10は、路側通信装置20に対して第1の無線信号を送信する。第1の移動体10は、例えば、車両、車両に備えられた車載装置及び車両の乗員が所持する通信端末である。また、第1の移動体10は、歩行者が所持する通信端末であってもよい。
【0017】
第1の無線信号は、第1の移動体が有する様々な情報を含む。例えば、第1の移動体が自身の位置情報を取得可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)や、GPS(Global Positioning System)等の測位手段を有している場合、第1の無線信号は、第1の移動体10の位置を示す情報を含んでも良い。また、第1の移動体10が車両又は車載装置である場合、第1の移動体10は、例えば車両に備えられた速度計から自身の速度を取得し、第1の無線信号に自身の速度を示す情報を含めても良い。上記の情報は一例であり、第1の無線信号は、その他の情報を含んでいても良い。
【0018】
路側通信装置20は、受信部21、決定部22及び送信部23を備える。路側通信装置20は、例えば、車両が走行する道路や、歩道などに設置される。なお、受信部21、決定部22及び送信部23は、一つの路側通信装置20に設けられている必要はなく、それぞれが別の装置に設けられたうえで一つのシステムとして動作しても良い。また、受信部21、決定部22及び送信部23の各々をコンピュータ等の情報処理装置に実現させるプログラムが、ハードディスクドライブなどの記憶媒体により格納されてもよい。受信部21、決定部22及び送信部23の各々は、受信手段、決定手段及び送信手段の各々に対応する。
【0019】
受信部21は、第1の移動体10からの第1の無線信号を受信する。受信部21は、第1の無線信号に含まれている情報を取得し、決定部22及び送信部23に出力する。
【0020】
決定部22は、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体が位置する道路の交通特性及び道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する。また、決定部22は、決定した通知対象範囲を送信部23に通知しても良い。
【0021】
例えば、決定部22は、受信部21から取得した情報に、当該情報の重要度及び緊急度の少なくとも一方が含まれている場合、当該重要度及び緊急度が高いほど、通知対象範囲を広く決定する。一方で、決定部22は、当該重要度及び緊急度が低いほど、通知対象範囲を狭く決定しても良い。これにより、路側通信装置20は、情報の重要度が高いほどより多くの無線端末に情報を転送することができる。
【0022】
また、例えば、受信部21から取得した情報に当該情報の通知先が示されている場合、決定部22は、当該通知先に応じて通知対象範囲を決定する。例えば、情報の通知先とは、車載装置やスマートフォンなどの無線端末30の種類を指す。例えば、当該情報の通知先が車両に搭載された車載装置である場合、決定部22は、通知対象範囲を広く設定する。一方で、当該情報の通知先が、ユーザが所持するスマートフォンや携帯電話などの無線通信端末である場合、決定部22は、通知対象範囲を狭く設定する。これにより、路側通信装置20は、情報に示された通知先に応じた数の無線端末に情報を転送することができる。
【0023】
また、例えば、道路の交通特性が、該道路における規制速度又は当該道路を走行する車両の速度の統計値であるとする。この場合、受信部21から取得した情報に第1の移動体10の位置情報が含まれている際には、決定部22は、当該第1の移動体10が位置する道路を特定し、当該道路における規制速度又は当該道路を走行する車両の速度の統計値に応じて、通知対象範囲を決定する。例えば、決定部22は、道路と位置情報との対応関係を記憶しておき、受信部21から取得した情報に含まれている第1の移動体10の位置情報に対応する道路を特定する。なお、前述の対応関係においては、各道路の路線名や路線番号ごとに位置情報が対応付けられていても良い。決定部22は、更に道路毎に規制速度又は車両の速度の統計値を記憶しておき、特定した道路における規制速度又は速度の統計値を求める。なお、速度の統計値は、例えば、道路を走行する車両の速度を計測可能な不図示の装置により、所定の期間において測定された速度の平均値である。決定部22は、求めた規制速度が速いほど又は速度の統計値が大きいほど、通知対象範囲を広く設定する。一方で、決定部22は、求めた規制速度が遅いほど又は速度の統計値が小さいほど、通知対象範囲を狭く設定する。なお、決定部22は、前述の道路と位置情報との対応関係、道路毎の規制速度、及び道路毎の車両の速度の統計値を記憶している必要はなく、外部のサーバからこれらの情報を取得しても良い。
【0024】
第1の移動体10と情報の転送先の無線端末が同じ道路を移動している場合、第1の移動体10の移動速度が速ければ、転送先の無線端末も速い速度で移動している傾向がある。時間に余裕をもって情報を処理するためには、速い速度で移動している無線端末は、早い時点で情報を取得することが好ましい。そこで、決定部22は、求めた規制速度が速いほど又は速度の統計値が大きいほど、通知対象範囲を広く設定する。これにより、路側通信装置20は、早い速度で移動していると推測される無線端末30に対して、早いタイミングで情報を転送することができる。したがって、例えば、無線端末30が自動運転を行う車載装置である場合、車載装置は時間に余裕をもって、第1の移動体10からの情報を処理できるため、安全な自動運転を行うことができる。
【0025】
また、例えば、決定部22は、道路の環境状態に基づいて、通知対象範囲を決定してもよい。環境状態とは、第1の移動体10が位置する道路における天候又は照度を指す。例えば、決定部22は、受信部21から第1の移動体10の位置情報を取得する。決定部22は、気象庁などのサーバにアクセスし、取得した位置情報が示す位置における天候を把握する。決定部22は、天候が雨の場合は、通知対象範囲を広く決定する。また、決定部22は、天候が晴れの場合は、通知対象範囲を狭く決定する。また、決定部22は、受信部21から取得した情報に第1の移動体10における照度が含まれている場合、照度が低いほど通知対象範囲を広く決定する。なお、決定部22は、路側通信装置20又は道路に備えられた不図示の照度センサから取得された照度に基づいて、通知対象範囲を決定しても良い。
【0026】
例えば、転送先の無線端末30が車両の乗員に対して第1の移動体10からの情報を通知する場合、当該情報を把握した乗員や車載装置が、当該情報及び周囲の状況に合わせて車両の操作を行うことがある。この際、夜や雨などにより周囲の照度が低い場合、決定部22は、天候や照度に基づいて、通知対象範囲を広く設定することで、早いタイミングで情報を無線端末30に転送することができる。これにより、乗員や車載装置は、早いタイミングで情報を把握できるため、適切な操作を行うことができる、また、昼や晴れ等により周囲の照度が高い場合は、早いタイミングで情報を把握せずとも適切な操作が可能であるため、夜や雨などにより周囲の照度が低い場合に比べて、通知対象範囲を狭く設定する。これにより、後述の第2の無線信号の送信に必要な電力を抑制することができる。
【0027】
送信部23は、通知対象範囲内の無線端末に、第1の移動体10からの情報を含む第2の無線信号を送信する。
【0028】
送信部23は、受信部21から取得した第1の無線信号に含まれる情報に基づいて、第2の無線信号を生成する。第2の無線信号は、例えば、第1の移動体10の位置情報や速度等を含んでも良い。
【0029】
送信部23は、決定部22から通知された通知対象範囲に基づいて、第2の無線信号を送信する。例えば、送信部23は、通知対象範囲が広い場合には、高い強度で第2の無線信号を送信する。これにより、第2の無線信号は、より広い範囲内に位置する無線端末30により受信される。また、例えば、図1に示されるように、第2の無線信号は、通知対象範囲内に位置する無線端末30Aにより受信される一方で、通知対象範囲外に位置する無線端末30Bにより受信されない。なお、無線端末30は、車両、車両に備えられた車載装置及び車両の乗員が所持する通信端末である。また、無線端末30は、歩行者が所持する通信端末であってもよい。なお、送信部23は、決定部22から新たな通信対象範囲が通知された場合には、例えば第2の無線信号の強度を変更することにより、第2の無線信号の送信範囲を変更する。
【0030】
次に、図2を用いて、路側通信システム1の動作について説明する。図2は、路側通信システム1の動作を示すシーケンス図である。
【0031】
第1の移動体10は、第1の無線信号を送信する(S101)。受信部21は、第1の無線信号に含まれる情報を取得する(S102)。受信部21は、取得した情報を決定部22に出力する(S103)。また、受信部21は、取得した情報を送信部23に出力する(S104)。送信部23は、取得した情報を含む第2の無線信号を生成する(S105)。
【0032】
決定部22は、受信部21から出力された情報から、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体10が位置する道路の交通特性及び第1の移動体10が位置する道路の環境状態のうち、少なくとも一つを取得する(S106)。また、決定部22は、通知対象範囲を決定する(S107)。通知対象範囲の決定の詳細例は、上述の決定部22についての説明の通りである。決定部22は、送信部23に対して通知対象範囲を出力する(S108)。送信部23は、通知された通知対象範囲に応じた強度で、第2の無線信号を出力する。(S109)。この際、例えば、図1に示されるように、第2の無線信号は、通知対象範囲内に位置する無線端末30Aにより受信される一方で、通知対象範囲外に位置する無線端末30Bにより受信されない。
【0033】
以上のように、路側通信装置20によれば、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体10が位置する道路の交通特性及び第1の移動体10が位置する道路の環境状態のうち少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する。そのため、路側通信装置20は、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体10が位置する道路の交通特性及び第1の移動体10が位置する道路の環境状態のうち少なくとも一つに応じて適切な車両に対して、第1の移動体10からの情報を転送することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
第2の実施形態における路側通信システム2について、図3及び図4に基づき説明する。図3は、路側通信システム2の構成例を示すブロック図である。また、図4は、路側通信システム2の動作例を示すシーケンス図である。路側通信システム2は、第1の移動体10、路側通信装置20及び無線端末30A、30B、30Cを備える。なお、図2に示される送信範囲は、後述の特定部24により決定される範囲である。なお、無線端末30A、30B、30Cを区別する必要が無い場合、無線端末30A、30B、30Cの各々を無線端末30と記載する。
【0035】
路側通信システム2における路側通信装置20は、更に特定部24及び判定部25を備える点において、路側通信システム1における路側通信装置20と相違する。なお、受信部21、決定部22、送信部23、特定部24及び判定部25は、一つの路側通信装置20に設けられている必要はなく、それぞれが別の装置に設けられたうえで一つのシステムとして動作しても良い。また、受信部21、決定部22、送信部23、特定部24及び判定部25の各々をコンピュータ等の情報処理装置に実現させるプログラムが、ハードディスクドライブなどの記憶媒体により格納されてもよい。特定部24及び判定部25の各々は、特定手段及び判定手段の各々に対応する。
【0036】
特定部24は、第1の移動体10が第1の無線信号を送信可能な送信範囲を特定する。例えば、受信部21は第1の無線信号に含まれている情報を更に特定部24に出力し、特定部24は、当該情報に基づいて送信範囲を特定する。例えば、特定部24は、端末の種別と送信範囲の対応関係を予め記憶しておき、取得した情報に端末の種別が含まれている場合は当該端末の種別に対応する送信範囲を特定する。
【0037】
なお、特定部24は、当該対応関係を外部のサーバから取得しても良い。また、特定部24は、受信部21から取得した情報に送信範囲が示されている場合は、対応関係から送信範囲を特定せず、取得した情報から直接送信範囲を特定しても良い。また、特定部24は、受信部21から取得した情報を参照せず、予め定められた範囲を送信範囲として特定しても良い。
【0038】
また、特定部24は、受信した情報に第1の移動体10の位置が含まれている場合、第1の移動体10の位置及び第1の無線信号の伝搬特性に基づいて送信範囲を特定してもよい。第1の無線信号の伝搬特性とは、例えば、第1の無線信号が通信装置により受信可能な強度で伝搬する距離のことを指す。第1の無線信号の伝搬特性は、例えば、第1の移動体10の種別から特定される。この場合、特定部24は、第1の移動体10の位置を中心とし、第1の無線信号が通信装置により受信可能な強度で伝搬する距離を半径とする範囲を、送信範囲として特定する。
【0039】
更に、特定部24は、決定部22により決定された通知対象範囲のうち、送信範囲を除いた中継対象範囲を特定する。具体的には、例えば、特定部24は、決定部22から通知対象範囲の位置情報を取得し、通知対象範囲内であって送信範囲外である位置情報に対応する範囲を中継対象範囲として特定する。図3の例では、無線端末30Aは中継対象範囲に含まれるが、無線端末30Bと無線端末30Cは中継対象範囲には含まれない。特定部24は、特定した中継対象範囲を判定部25に出力する。
【0040】
判定部25は、中継対象範囲内に他の移動体(第2の移動体)が存在するかどうかを判定する。例えば、判定部25は、路側通信装置20と通信可能に設けられた監視手段の監視結果に基づいて、中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在するかどうかを判定する。例えば、監視手段がカメラである場合、当該カメラは中継対象範囲内に対応する実際の空間を撮像し、判定部25は、撮像した画像または動画の中に車両等が含まれている場合は、中継対象範囲内に他の移動体(第2の移動体)が存在すると判定する。判定部25は、中継対象範囲内に他の移動体が存在するかどうかを示す判定結果を送信部23に出力する。判定部25は、中継対象範囲内に他の移動体が存在すると判定した場合、更に中継対象範囲内の位置情報を送信部23に送信する。
【0041】
送信部23は、判定部25から判定結果が中継対象範囲内に他の移動体が存在しないことを示す場合、第二の無線信号を送信しない。一方で、送信部23は、判定部25からの判定結果が中継対象範囲内に他の移動体が存在することを示す場合、第二の無線信号を送信する。この場合、送信部23は、例えば、中継対象範囲の広さに応じた強度で第二の無線信号を送信することにより、中継対象範囲内の無線端末30に第二の無線信号を送信する。この際、送信部23は、既知のビームフォーミング制御を行うことによって、中継対象範囲の形状に応じた指向性を第2の無線信号に持たせても良い。
【0042】
路側通信システム2の動作について、図4に基づいて説明する。図4に示されるS101~S109の処理については、図2に示される路側通信システム1のS101~S109の処理と同様であるため、説明を省略する。なお、路側通信システム2の動作のS108の処理においては、決定部22は特定部24に対して通知対象範囲を出力する。
【0043】
路側通信システム2において、受信部21は、第1の無線信号に含まれる情報を特定部24に出力する。特定部24は、受信部21から取得した情報に基づいて、第1の無線信号の送信範囲を特定する(S202)。特定部24は、更に、決定部22から出力された通知対象範囲内であって送信範囲外である中継対象範囲を特定する(S203)。特定部24は、中継対象範囲を判定部25に出力する(S204)。判定部25は、中継対象範囲に移動体が存在するかどうかを判定する(S205)。判定部25は、中継対象範囲に移動体が存在するかどうかを示す判定結果を送信部23に出力する(S206)。送信部23は、判定部25からの判定結果が中継対象範囲内に他の移動体が存在しないことを示す場合、第二の無線信号を送信しない。一方で、送信部23は、判定部25から判定結果が中継対象範囲内に他の移動体が存在することを示す場合、S109の処理と同様に第二の無線信号を送信する。
【0044】
以上のように、路側通信システム2において、送信部23は、判定部25からの判定結果が中継対象範囲内に他の移動体が存在しないことを示す場合、第二の無線信号を送信しない。これにより、送信部23は、第1の移動体10から直接第1の無線信号を送信することが可能な送信範囲内の無線端末30に対しては、第2の無線信号を送信しない。そのため、路側通信システム2によれば、送信部23が行う処理を簡素にできる。
【0045】
また、路側通信システム2における路側通信装置20は、路側通信システム1における路側通信装置20と同様に、受信部21、決定部22及び送信部23を備えるため、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体10が位置する道路の交通特性及び第1の移動体10が位置する道路の環境状態のうち少なくとも一つに応じて適切な車両に対して、第1の移動体10からの情報を転送することができる。
【0046】
<第3の実施形態>
第3の実施形態における路側通信装置20について、図5及び図6に基づいて説明する。路側通信装置20は、図5に示されるように、受信部21、決定部22及び送信部23を備える。図6は、路側通信装置20の動作を示すフローチャートである。なお、受信部21、決定部22及び送信部23は、一つの装置に設けられている必要はなく、異なる装置に設けられたうえで一つのシステムとして動作しても良い。また、受信部21、決定部22及び送信部23の各々をコンピュータ等の情報処理装置に実現させるプログラムは、ハードディスクドライブなどの記憶媒体により格納されてもよい。
【0047】
受信部21は、第1の移動体からの第1の無線信号を受信する。受信部21は、上述の路側通信システム1、2における受信部21と同様の機能及び接続関係を備えていても良い。
【0048】
決定部22は、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体が位置する道路の交通特性及び道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する。決定部22は、上述の路側通信システム1、2における決定部22と同様の機能及び接続関係を備えていても良い。
【0049】
送信部23は、決定部22により決定された通知対象範囲内の無線端末に、第1の無線信号に含まれていた情報を含む第2の無線信号を送信する。送信部23は、上述の路側通信システム1、2における送信部23と同様の機能及び接続関係を備えていても良い。
【0050】
次に、路側通信装置20の動作について、図6に基づき説明する。
【0051】
受信部21は、第1の移動体からの第1の無線信号を受信する(S301)。決定部22は、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体が位置する道路の交通特性及び道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する(S302)。送信部23は、通知対象範囲内の無線端末に、第1の無線信号に含まれていた情報を含む第2の無線信号を送信する(S303)。
【0052】
以上のように、路側通信装置20によれば、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体が位置する道路の交通特性及び第1の移動体が位置する道路の環境状態のうち少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する。そのため、路側通信装置20は、第1の無線信号に含まれる情報の属性、第1の移動体が位置する道路の交通特性及び第1の移動体10が位置する道路の環境状態のうち少なくとも一つに応じて適切な車両に対して、第1の移動体からの情報を転送することができる。
【0053】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する受信手段と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する決定手段と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する送信手段と、
を備える、路側通信装置。
(付記2)
前記決定手段は、前記情報の属性、前記交通特性及び前記環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、前記通知対象範囲を変化させる、
付記1に記載の路側通信装置。
(付記3)
前記属性は、前記情報の重要度又は緊急度であって、
前記決定手段は、前記重要度又は緊急度に応じて、前記通知対象範囲を変化させる付記2に記載の路側通信装置。
(付記4)
前記属性は、前記情報の通知先であって、
前記決定手段は、前記通知先に応じて、前記通知対象範囲を変化させる付記2又は3に記載の路側通信装置。
(付記5)
前記交通特性は、前記道路における規制速度又は前記道路を走行する車両の速度の統計値であって、
前記決定手段は、前記規制速度又は前記統計値に応じて、前記通知対象範囲を変化させる付記2から4の何れか1つに記載の路側通信装置。
(付記6)
前記環境状態は、前記道路における天候又は照度であって、
前記決定手段は、前記天候又は前記照度に応じて、前記通知対象範囲を変化させる付記2から5の何れか1つに記載の路側通信装置。
(付記7)
前記通知対象範囲のうち、前記第1の移動体が前記第1の無線信号を送信可能な送信範囲を除いた中継対象範囲を特定する特定手段と、
前記中継対象範囲内に第2の移動体が存在するかどうかを判定する判定手段を更に備え、
前記送信手段は、前記中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在しない場合、前記第2の無線信号を送信しない、
付記1から6の何れか1つに記載の路側通信装置。
(付記8)
前記特定手段は、前記第1の移動体の位置及び前記第1の無線信号の伝搬特性に基づいて、前記送信範囲を特定する、
付記7に記載の路側通信装置。
(付記9)
前記中継対象範囲内を監視する監視手段を更に備え、
前記判定手段は、前記監視手段の監視結果に基づいて、前記中継対象範囲内に前記第2の移動体が存在するかどうかを判定する、
付記7又は8に記載の路側通信装置。
(付記10)
前記送信手段は、前記中継対象範囲に応じて、前記第2の無線信号の前記送信範囲を変更する付記7から9の何れか1つに記載の路側通信装置。
(付記11)
前記送信手段は、前記通知対象範囲に応じて、前記第2の無線信号の前記送信範囲を変更する付記1から10の何れか1つに記載の路側通信装置。
(付記12)
第1の移動体からの第1の無線信号を受信し、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定し、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する、
路側通信方法。
(付記13)
第1の移動体からの第1の無線信号を受信する処理と、
前記第1の無線信号に含まれる情報の属性、前記第1の移動体が位置する道路の交通特性及び前記道路の環境状態のうち、少なくとも一つに基づいて、通知対象範囲を決定する処理と、
前記通知対象範囲内の無線端末に、前記情報を含む第2の無線信号を送信する処理と、
を情報処理装置に実行させるプログラムを記憶する、
記憶媒体。
【0054】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1、2、 路側通信システム
10 第1の移動体
20 路側通信装置
21 受信部
22 決定部
23 送信部
24 特定部
25 判定部
30、30A,30B、30C 無線端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6