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特許7563583インペラ、遠心圧縮機、および、インペラの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】インペラ、遠心圧縮機、および、インペラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20241001BHJP
   B23P 15/02 20060101ALI20241001BHJP
   B23C 3/18 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F04D29/30 C
F04D29/30 J
B23P15/02
B23C3/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023516044
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001768
(87)【国際公開番号】W WO2022224512
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021072886
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 太治
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-054997(JP,U)
【文献】特開平03-107600(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002066(WO,A1)
【文献】特開2017-172344(JP,A)
【文献】特開2013-139753(JP,A)
【文献】特開2010-269417(JP,A)
【文献】特開2015-017566(JP,A)
【文献】特開2014-134115(JP,A)
【文献】特開昭62-213913(JP,A)
【文献】特開2002-036020(JP,A)
【文献】特開2019-153298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
B23P 15/02
B23C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの一端に設けられるハブと、
前記ハブの外周に配された羽根と、
前記羽根に形成され、シュラウド側およびハブ側の端部を結ぶ直線とは異なる非線形形状を有するリーディングエッジと、
前記羽根の前記リーディングエッジとトレーリングエッジとの間に形成され、前記シュラウド側および前記ハブ側の端部を結ぶ直線の母線を移動させた軌跡が描く曲面形状を有する翼面と、
を備え
前記リーディングエッジには、スパン方向に沿って隣り合う複数の窪み部が形成され、
前記窪み部は、前記羽根の子午面において、前記リーディングエッジから前記トレーリングエッジに向かう方向に窪んでいる、
インペラ。
【請求項2】
請求項1に記載のインペラを備えた遠心圧縮機。
【請求項3】
インペラの羽根のリーディングエッジとトレーリングエッジとの間の翼面を工具の刃の側面により加工し、
前記リーディングエッジを前記工具の前記刃の先端により加工し、これによって、前記リーディングエッジに、スパン方向に沿って隣り合い、かつ、前記羽根の子午面において前記リーディングエッジから前記トレーリングエッジに向かう方向に窪む、複数の窪み部を形成する、
インペラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インペラ、遠心圧縮機、および、インペラの製造方法に関する。本出願は2021年4月22日に提出された日本特許出願第2021-72886号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハブと、ハブの周囲に配された複数の羽根が一体成形されたコンプレッサインペラについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-50444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、コンプレッサインペラの複数の羽根の翼面の形状は、エンドミルなどの工具の回転軸方向を母線の向きに合わせて、工具の側面を使って一度に幅広く切削して形成される。工具の側面を使って幅広く切削するため、加工時間を比較的短くすることができる。しかし、このようにして切削されるコンプレッサインペラのリーディングエッジの形状は、スパン方向に直線的に形成される。リーディングエッジがスパン方向に直線的に形成されると、リーディングエッジでの流れの衝突損失を低減させることが難しいという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、加工時間を短縮しつつ、リーディングエッジでの流れの衝突損失を低威させることが可能なインペラ、遠心圧縮機、および、インペラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のインペラは、シャフトの一端に設けられるハブと、ハブの外周に配された羽根と、羽根に形成され、シュラウド側およびハブ側の端部を結ぶ直線とは異なる非線形形状を有するリーディングエッジと、羽根のリーディングエッジとトレーリングエッジとの間に形成され、シュラウド側およびハブ側の端部を結ぶ直線の母線を移動させた軌跡が描く曲面形状を有する翼面と、を備え、リーディングエッジには、スパン方向に沿って隣り合う複数の窪み部が形成され、窪み部は、羽根の子午面において、リーディングエッジからトレーリングエッジに向かう方向に窪んでいる
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の遠心圧縮機は、上記インペラを備える。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のインペラの製造方法は、インペラの羽根のリーディングエッジとトレーリングエッジとの間の翼面を工具の刃の側面により加工し、リーディングエッジを工具の刃の先端により加工し、これによって、リーディングエッジに、スパン方向に沿って隣り合い、かつ、羽根の子午面においてリーディングエッジからトレーリングエッジに向かう方向に窪む、複数の窪み部を形成する
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、加工時間を短縮しつつ、リーディングエッジでの流れの衝突損失を低威させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、過給機の概略断面図である。
図2図2は、コンプレッサインペラの斜視図である。
図3図3は、羽根の形状を説明するための説明図である。
図4図4は、コンプレッサインペラの加工装置の外観図である。
図5図5は、加工装置がコンプレッサインペラの素材を加工する様子を示す。
図6図6は、コンプレッサインペラの加工処理を説明するための第1の説明図である。
図7図7は、コンプレッサインペラの加工処理を説明するための第2の説明図である。
図8図8は、コンプレッサインペラの加工処理を説明するための第3の説明図である。
図9図9は、コンプレッサインペラの加工処理を説明するための第4の説明図である。
図10図10は、コンプレッサインペラの加工方法(製造方法)を説明するフローチャート図である。
図11図11は、本実施形態の羽根のリーディングエッジの部分拡大図である。
図12図12は、本実施形態のリーディングエッジの形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、過給機TCの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング4と、コンプレッサハウジング6とを含む。タービンハウジング4は、ベアリングハウジング2の左側に締結ボルト3によって連結される。コンプレッサハウジング6は、ベアリングハウジング2の右側に締結ボルト5によって連結される。
【0014】
ベアリングハウジング2には、軸受孔2aが形成される。軸受孔2aは、ベアリングハウジング2を過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔2aには、軸受が配される。本実施形態では、軸受は、フルフローティング軸受である。ただし、軸受は、セミフローティング軸受や転がり軸受など他の軸受であってもよい。シャフト7は、軸受により回転可能に支持される。シャフト7の右端部には、コンプレッサインペラ8(インペラ)が設けられる。コンプレッサインペラ8は、コンプレッサハウジング6に回転可能に収容される。シャフト7の左端部には、タービン翼車9が設けられる。タービン翼車9は、タービンハウジング4に回転可能に収容される。本開示において、シャフト7、コンプレッサインペラ8およびタービン翼車9の「軸方向」、「径方向」および「周方向」は、それぞれ単に「軸方向」、「径方向」および「周方向」と称され得る。
【0015】
コンプレッサハウジング6には、吸気口10が形成される。吸気口10は、過給機TCの右側に開口する。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6の面によって、ディフューザ流路11が形成される。ディフューザ流路11は、空気を加圧する。ディフューザ流路11は、環状に形成される。ディフューザ流路11は、径方向内側において、コンプレッサインペラ8を介して吸気口10に連通している。コンプレッサハウジング6の内面のうち、コンプレッサインペラ8と径方向に対向する面が、シュラウド面6aとして形成される。
【0016】
コンプレッサハウジング6には、コンプレッサスクロール流路12が設けられる。コンプレッサスクロール流路12は、例えば、ディフューザ流路11よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路11とに連通している。コンプレッサインペラ8が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ8の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12でさらに加圧される。加圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0017】
このようなコンプレッサハウジング6およびベアリングハウジング2により、遠心圧縮機CCが構成される。本実施形態では、遠心圧縮機CCが過給機TCに搭載される例ついて説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0018】
タービンハウジング4には、吐出口13が形成される。吐出口13は、過給機TCの左側に開口する。吐出口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング4には、タービンスクロール流路14と、連通路15とが形成される。タービンスクロール流路14は、例えば、連通路15よりも径方向外側に位置する。タービンスクロール流路14は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。連通路15は、タービン翼車9を介してタービンスクロール流路14と吐出口13とを接続する。ガス流入口からタービンスクロール流路14に導かれた排気ガスは、連通路15、タービン翼車9を介して吐出口13にさらに導かれる。吐出口13に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービン翼車9を回転させる。
【0019】
タービン翼車9の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ8に伝達される。コンプレッサインペラ8が回転すると、上記のとおりに空気が加圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0020】
図2は、コンプレッサインペラ8の斜視図である。図2に示すように、コンプレッサインペラ8は、ハブ16(ホイール)と、複数の羽根17とを有する。
【0021】
ハブ16は、上面16a、底面16b、外周面16c、貫通孔16dを備える。上面16aの面積は、底面16bの面積より小さい。外周面16cは、上面16aと底面16bに接続され、上面16aから底面16bに向かって径方向外側に広がる。
【0022】
貫通孔16dは、上面16aから底面16bまで貫通する。貫通孔16dには、シャフト7が挿通される。シャフト7の端部は、上面16aから突出する。上面16aから突出したシャフト7の端部には、ネジ溝が形成される。このネジ溝にナットを締結することで、シャフト7の一端にハブ16が設けられる。ハブ16は、貫通孔16dの中心を回転軸として回転する回転体である。
【0023】
羽根17は、ハブ16と一体成形された薄板形状の部材である。ハブ16の外周面16cには、互いに周方向に離隔して複数の羽根17が配される。隣り合う羽根17の周方向の隙間(翼間17a)が空気(流体)の流路となる。羽根17は、ハブ16の外周面16cからシュラウド面6a(図1参照)に向かって径方向外側に延在し、周方向に傾斜するように湾曲している。
【0024】
羽根17は、全羽根18(長羽根)と、全羽根18より軸方向の長さが短い半羽根19(短羽根)とを含む。全羽根18と半羽根19とが周方向に交互に配されている。このように、半羽根19を全羽根18の間に配する構成により、同数の羽根17をすべて全羽根18で構成する場合に比べ、過給機TCは、空気の吸引効率を向上することができる。以下、単に羽根17という場合、全羽根18および半羽根19の両方を示す。
【0025】
図3は、羽根17の形状を説明するための説明図である。図3では、本実施形態の羽根17の子午面形状を一点鎖線で示す。子午面形状は、一枚の羽根17の輪郭を、ハブ16の径方向の位置を変えずに、ハブ16の回転軸周りに回転して、ハブ16の回転軸に平行な平面に投影させた形状である。図3中、左右方向がシャフト7の軸方向であって、右側がハブ16の底面16b側となり、左側がハブ16の上面16a側となる。図3中、上下方向が羽根17のスパン方向(翼長方向)であって、上側がシュラウド面6a側(以下、単にシュラウド側という)となり、下側がハブ16の外周面16c側(以下、単にハブ側という)となる。
【0026】
図3に示すように、羽根17は、コンプレッサインペラ8を通過する空気の流れ方向(以下、単に流れ方向と称す)の上流側の端部となるリーディングエッジ17bを有する。なお、半羽根19の軸方向の一端であるリーディングエッジ17bは、全羽根18の軸方向の一端であるリーディングエッジ17bより流れ方向の下流側に位置する。
【0027】
羽根17は、流れ方向の下流側の端部となるトレーリングエッジ17cを有する。翼面17dは、羽根17のうち、リーディングエッジ17bとトレーリングエッジ17cの間に形成され、翼間17aに形成される流路に面する曲面である。
【0028】
図3に示すように、子午面形状においては、リーディングエッジ17bは、径方向に大凡平行である。トレーリングエッジ17cは、軸方向に大凡平行である。
【0029】
翼面17dは、リーディングエッジ17bと、トレーリングエッジ17cとを端部として含み、羽根17の直線の母線17e(図3中、破線で示す)を連続的に移動させた軌跡が描く曲面形状(線織面)である。すなわち、母線17eは、シュラウド側の端部とハブ側の端部を結ぶ直線(線分)の移動軌跡によって描かれる線織面に対し、当該直線の移動軌跡における、いずれかの位置の直線である。このように、コンプレッサインペラ8は、所謂母線インペラで構成されている。以下、コンプレッサインペラ8の加工装置について説明した後、コンプレッサインペラ8の製造方法(加工方法)について説明する。
【0030】
図4は、コンプレッサインペラ8の加工装置20の外観図である。図5は、加工装置20がコンプレッサインペラ8の素材Mを加工する様子を示す。
【0031】
加工装置20は、例えば、同時5軸マシニングセンタで構成される。図4に示すように、加工装置20は、回転部21と、移動部22と、保持部23と、移動部24と、制御部25と、操作部26とを備える。回転部21は、図5に示すように、エンドミルなどの工具Tを支持するチャック部21aと、不図示のモータとを有する。チャック部21aが工具Tを支持した状態で、モータの動力によってチャック部21aごと工具Tを回転させる。チャック部21aは、チャック部21aの回転軸が工具Tの軸中心と一致する状態で、工具Tを支持する。
【0032】
移動部22は、例えば、不図示のモータによって、互いに直交する3軸の移動が可能な自動ステージで構成される。移動部22は、回転部21を支持し、回転部21を3軸のいずれの方向にも移動させることができる。
【0033】
保持部23は、例えば、クランプ装置で構成される。保持部23は、コンプレッサインペラ8の素材Mを保持する。素材Mには、予め、ハブ16の貫通孔16dとなる孔が形成されている。保持部23は、素材Mの外周面を保持する第1クランプ23aを有する。素材Mを挟んで第1クランプ23aと反対側には、第2クランプ23bが配される。第2クランプ23bには、ピン23cが固定されている。ピン23cは、先端ほど径が小さいテーパ形状を含む。ピン23cの先端は、素材Mのうち、ハブ16の貫通孔16dとなる孔に挿通される。第1クランプ23aとピン23cにより、素材Mが挟持されている。
【0034】
移動部24は、保持部23を支持する。移動部24は、例えば、不図示のモータによって、保持部23ごと素材Mを、互いに異なる2軸の軸周りに旋回させることができる。
【0035】
移動部22、24が協働することで、工具Tおよび素材Mの相対的な位置および姿勢を高い自由度で変化させることができる。
【0036】
制御部25は、操作部26を通じて入力された加工パスなどの情報に応じ、回転部21による工具Tの回転、および、移動部22、24による工具Tと素材Mの相対的な位置および姿勢を制御する。以下、制御部25によるコンプレッサインペラ8の加工処理の流れを詳述する。
【0037】
図6は、コンプレッサインペラ8の加工処理を説明するための第1の説明図である。図7は、コンプレッサインペラ8の加工処理を説明するための第2の説明図である。図8は、コンプレッサインペラ8の加工処理を説明するための第3の説明図である。図9は、コンプレッサインペラ8の加工処理を説明するための第4の説明図である。図6~9においては、理解を容易とするため、加工装置20は図示を省略する。
【0038】
母線インペラの加工においては、工具Tの回転軸方向を母線17eの向きに合わせて、工具Tの刃の側面Taを使ってコンプレッサインペラ8の素材Mを切削する。
【0039】
制御部25は、移動部22、24、および、回転部21を制御し、図6~8に示すように、工具Tの回転軸を母線17eの向きに合わせて、工具Tの側面Taを使って素材Mを切削する。すなわち、制御部25は、工具Tを回転させ、リーディングエッジ17bからトレーリングエッジ17cに向かって、側面Taで複数の羽根17の隙間(翼間17a)となる部分の素材Mを切削する。このとき、制御部25は、工具Tの傾斜角を、工具Tの軸方向がリーディングエッジ17bからトレーリングエッジ17cの向きに近づく方向に連続的に大きくさせる。このように、制御部25は、羽根17のリーディングエッジ17bとトレーリングエッジ17cとの間の翼面17dを工具Tの刃の側面Taにより切削加工する。
【0040】
翼面17dに対し切削加工を施した後、工具Tの回転軸方向をシャフト7の軸方向と交差する方向(リーディングエッジ17bのスパン方向)に合わせて、工具Tの刃の先端Tbを使って素材Mのリーディングエッジ17bに対応する部位を切削する。
【0041】
制御部25は、移動部22、24、および、回転部21を制御し、図9に示すように、工具Tを回転させ、羽根17の厚さ方向(翼厚方向)に沿って刃の先端Tbでリーディングエッジ17bとなる部分の素材Mを切削する。翼厚方向に切削後、制御部25は、図9中、破線で示すように切削部位とスパン方向に隣り合う位置に工具Tを移動させ、再度、翼厚方向に沿って刃の先端Tbでリーディングエッジ17bとなる部分の素材Mを切削する。これを繰り返し、制御部25は、工具Tをリーディングエッジ17bのシュラウド側の端部からハブ側の端部まで移動させ、素材Mを切削する。このように、制御部25は、リーディングエッジ17bを工具Tの刃の先端Tbにより切削加工する。
【0042】
図10は、コンプレッサインペラ8の加工方法(製造方法)を説明するフローチャート図である。図10に示すフローチャートは、加工装置20の制御部25により実行される。まず、制御部25は、図6~8に示すように、羽根17のリーディングエッジ17bとトレーリングエッジ17cとの間の翼面17dを工具Tの刃の側面Taにより加工する(ステップS11)。つぎに、制御部25は、図9に示すように、リーディングエッジ17bを工具Tの刃の先端Tbにより加工する(ステップS12)。これにより、コンプレッサインペラ8の羽根17が形成される。ただし、加工の順番は、これに限定されず、例えば、リーディングエッジ17bを加工(ステップS12)した後、翼面17dを加工(ステップS11)してもよい。
【0043】
図11は、本実施形態の羽根17のリーディングエッジ17bの部分拡大図である。上述したように、本実施形態のリーディングエッジ17bは、羽根17の厚さ方向に沿って移動する工具Tの刃の先端Tbにより切削加工される。そのため、図11に示すように、リーディングエッジ17bには、スパン方向に沿って隣り合って連続する複数の窪み部30が形成される。複数の窪み部30は、例えば、リーディングエッジ17bのスパン方向と交差(直交)する方向に延在する溝である。窪み部30は、工具Tの刃の先端Tb形状に依存した形状となる。
【0044】
図12は、本実施形態のリーディングエッジ17bの形状を説明するための図である。図12に示すように、本実施形態のリーディングエッジ17bの形状は、シュラウド側の端部SHとハブ側の端部HBを結ぶ直線LI(図11中、破線)とは異なる非線形形状を有する。非線形形状は、例えば、円弧形状、楕円弧形状、湾曲形状などを含む。
【0045】
リーディングエッジ17bは、シュラウド側の端部SHとハブ側の端部HBの間に中間部MDを有する。本実施形態では、リーディングエッジ17bは、シュラウド側の端部SHおよびハブ側の端部HBに対し、中間部MDがコンプレッサインペラ8の回転方向後方側に位置する円弧形状を有する。具体的に、リーディングエッジ17bのスパン方向の中央は、シュラウド側の端部SHおよびハブ側の端部HBに対し、最も回転方向後方側に位置する。このように、リーディングエッジ17bは、コンプレッサインペラ8の回転方向後方側に突出する円弧形状を有する。
【0046】
ただし、これに限定されず、羽根17は、例えば、図12中、一点鎖線で示すようなリーディングエッジ117bを有してもよい。リーディングエッジ117bは、シュラウド側の端部SHおよびハブ側の端部HBに対し、中間部MDがコンプレッサインペラ8の回転方向前方側に位置する円弧形状を有する。具体的に、リーディングエッジ117bのスパン方向の中央は、シュラウド側の端部SHおよびハブ側の端部HBに対し、最も回転方向前方側に位置する。このように、リーディングエッジ117bは、コンプレッサインペラ8の回転方向前方側に突出する円弧形状を有する。
【0047】
以上のように、本実施形態の羽根17の翼面17dは、工具Tの刃の側面Taにより加工される。これにより、羽根17の翼面17dが工具Tの刃の先端Tbにより加工される場合に比べ、加工時間を短縮することができる。
【0048】
また、本実施形態の羽根17のリーディングエッジ17b、117bは、工具Tの刃の先端Tbにより加工される。工具Tの刃の先端Tbは、側面Taのように直線状に延在していない。そのため、工具Tの刃の先端Tbにより加工することで、リーディングエッジ17b、117bの形状を、シュラウド側の端部SHとハブ側の端部HBとを結ぶ直線LIと異なる非線形形状にすることができる。その結果、リーディングエッジ17b、117bでの流れの衝突損失を低減させることができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載
された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
上記実施形態では、翼面17dを工具Tの側面Taによって加工し、リーディングエッジ17bを工具Tの先端Tbによって加工する例について説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、リーディングエッジ17bに加え、翼面17dの一部を工具Tの先端Tbによって加工するようにしてもよい。例えば、翼面17dのうちリーディングエッジ17b側を工具Tの先端Tbによって加工し、翼面17dのうちトレーリングエッジ17c側を工具Tの側面Taによって加工するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
CC 遠心圧縮機
T 工具
Ta 側面
Tb 先端
8 コンプレッサインペラ(インペラ)
16 ハブ
17 羽根
17b リーディングエッジ
17c トレーリングエッジ
17d 翼面
18 全羽根
19 半羽根
117b リーディングエッジ
図1
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図12