(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25D 17/24 20060101AFI20241001BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241001BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20241001BHJP
B25D 17/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B25D17/24
B25F5/00 H
B25F5/02
B25D17/04
(21)【出願番号】P 2023533428
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014712
(87)【国際公開番号】W WO2023281866
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021112521
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一橋 直人
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015226410(DE,A1)
【文献】特開2020-157423(JP,A)
【文献】特開2009-090450(JP,A)
【文献】特開2014-148014(JP,A)
【文献】特開2011-136407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D1/00-17/32
B25F1/00-5/02
B25C1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力により第1方向に動作し作業を行う先端工具と、
前記モータ及び前記先端工具を支持する本体部と、
前記第1方向と交差する第2方向に延びるハンドル部と、
前記モータに電力を供給するバッテリパックが装着されるバッテリ装着部と、
を備え、
前記ハンドル部は、
前記本体部に対し前記第1方向の一方側に隣接して配置され、前記第2方向の一端側に設けられる第1接続部と、前記第2方向の他端側に設けられる第2接続部と、を介して前記本体部
における前記第1方向の一方側に接続され
ることで、
前記ハンドル部の少なくとも一部が前記本体部に対して前記第1方向に相対移動可能であり、
前記バッテリ装着部は、
前記ハンドル部に対し前記第2方向の他端側に隣接するとともに、前記本体部に対し前記第1方向の一方側に隣接して配置され、第3接続部を介して前記ハンドル部
における前記第2方向の他端側に接続されるとともに、第4接続部を介して前記本体部
における前記第1方向の一方側に接続される
ことで、前記バッテリ装着部の少なくとも一部が前記本体部及び前記ハンドル部に対して前記第1方向に相対移動可能である、作業機。
【請求項2】
前記第1接続部及び前記第2接続部の少なくとも一方は、弾性体を介して前記ハンドル部と前記本体部とを接続する、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第3接続部は、弾性体を介して前記バッテリ装着部と前記ハンドル部とを接続する、請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第4接続部は、弾性体を介して前記バッテリ装着部と前記本体部とを接続する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の作業機。
【請求項5】
前記バッテリパックは、前記バッテリ装着部に対し前記第1方向にスライドされることで、前記バッテリ装着部に装着される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の作業機。
【請求項6】
前記バッテリ装着部は、複数の前記バッテリパックを装着可能であり、
前記複数のバッテリパックは、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に並んで装着される、請求項1乃至5の何れか一項に記載の作業機。
【請求項7】
前記第1方向において、前記第3接続部と前記第4接続部とは、離間して配置される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマドリルなどの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、モータと、先端工具と、前記モータ及び前記先端工具を支持する本体部と、該本体部に振動低減機構を介して接続されるハンドル部と、前記モータに電力を供給するバッテリパックと、を備えたハンマドリルが知られている。
【0003】
上述のようなハンマドリルとして、例えば、特許文献1には、バッテリパックが、ハンドル部に設けられたバッテリ装着部に装着されるハンマドリルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のハンマドリルでは、バッテリパックにかかる振動を低減し、ハンマドリルの信頼性を向上させることが望まれている。そこで、ハンドル部と本体部との間の振動低減機構の剛性を低下させればバッテリパックにかかる振動は低減できるが、先端工具への押付力が伝わりにくくなり作業性が悪化する。
【0006】
また、ハンドル部とバッテリ装着部との間にさらに振動低減機構を追加することも考えられるが、バッテリの重量が大きい場合には振動によって振動低減機構にかかる負荷が大きくなる。したがって、振動低減機構の耐久性を向上させるためには、振動低減機構の剛性を高くする必要があり、この場合には、振動低減機構における振動の低減効果が損なわれる。
【0007】
本発明の目的は、作業性の悪化を抑制しつつ、バッテリパックにかかる振動を低減して信頼性を向上させた作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業機は、モータと、前記モータの駆動力により第1方向に動作し作業を行う先端工具と、前記モータ及び前記先端工具を支持する本体部と、前記第1方向と交差する第2方向に延びるハンドル部と、前記モータに電力を供給するバッテリパックが装着されるバッテリ装着部と、を備え、前記ハンドル部は、前記本体部に対し前記第1方向の一方側に隣接して配置され、前記第2方向の一端側に設けられる第1接続部と、前記第2方向の他端側に設けられる第2接続部と、を介して前記本体部における前記第1方向の一方側に接続されることで、前記ハンドル部の少なくとも一部が前記本体部に対して前記第1方向に相対移動可能であり、前記バッテリ装着部は、前記ハンドル部に対し前記第2方向の他端側に隣接するとともに、前記本体部に対し前記第1方向の一方側に隣接して配置され、第3接続部を介して前記ハンドル部における前記第2方向の他端側に接続されるとともに、第4接続部を介して前記本体部における前記第1方向の一方側に接続されることで、前記バッテリ装着部の少なくとも一部が前記本体部及び前記ハンドル部に対して前記第1方向に相対移動可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機の作業性の悪化を抑制しつつ、バッテリパックにかかる振動を低減して作業機の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す作業機の構造を示す側面図である。
【
図3】
図1に示す作業機の先端工具装着状態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す作業機におけるハンドル部とバッテリ装着部の展開図である。
【
図5】
図1に示す作業機における第1接続部の構造を示す水平断面図である。
【
図6】
図5に示す第1接続部の構造を示す拡大部分断面図である。
【
図7】
図1に示す作業機の第2~第4接続部の構造を示す拡大部分断面図である。
【
図8】本発明の第1変形例の作業機の先端工具装着状態を示す断面図である。
【
図9】
図8に示す作業機の第2~第4接続部の構造を示す拡大部分断面図である。
【
図10】本発明の第2変形例の作業機の先端工具装着状態を示す断面図である。
【
図11】
図10に示す作業機の第2~第4接続部の構造を示す拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本実施の形態では、作業機の一例として、ハンマドリルを取り上げて説明する。本実施の形態に係るハンマドリルの用途は特に限定されないが、コンクリート壁や石材等の対象物に穴を開けたり、対象物を破砕したりする作業に適している。
【0013】
図1~
図4に示されるように、ハンマドリル10は、例えば、ドリルビット等の先端工具8を着脱可能である。ハンマドリル10は、本体部1と、本体部1に接続されたハンドル部2と、を有する。本体部1は、シリンダハウジング1a,中間ハウジング1b及びモータハウジング1cから構成されており、これらは相互に固定されて一体化している。シリンダハウジング1aは全体として円筒形である。シリンダハウジング1aには、
図1及び
図2に示されるサイドハンドル6が取り付けられている。また、シリンダハウジング1aの長手方向一端とハンドル部2との間に、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cが配置されている。以下の説明では、シリンダハウジング1aの長手方向を前後方向(第1方向)P1と定義する。また、シリンダハウジング1aの長手方向両側のうち、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cが配置されている側を後方と定義し、反対側を前方と定義する。すなわち、中間ハウジング1b及びモータハウジング1cは、シリンダハウジング1aの後端とハンドル部2との間に配置されている。
【0014】
中間ハウジング1bとモータハウジング1cは上下に重なっており、ハンドル部2の一端がモータハウジング1cに接続され、ハンドル部2の他端が中間ハウジング1bに接続されている。以下の説明では、中間ハウジング1bに接続されているハンドル部2の他端を上端、モータハウジング1cに連結されているハンドル部2の一端を下端と定義する。換言すれば、ハンドル部2の延びる方向を、前後方向(第1方向)P1と直交する上下方向(第2方向)Q1と定義する。また、前後方向及び上下方向の双方と直交する方向を左右方向(第3方向)R1と定義する。
【0015】
シリンダハウジング1aの内部には、円筒形のシリンダ17及びリテーナスリーブ25が収容されている。シリンダ17及びリテーナスリーブ25は同心であり、リテーナスリーブ25の一部である先端工具保持部7は、シリンダハウジング1aの先端から突出している。シリンダ17及びリテーナスリーブ25は相対回転不能に係合しており、シリンダ17に回転力が伝達されると、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が中心軸C1を回転軸として一体回転する。また、先端工具8の一部がリテーナスリーブ25の先端工具保持部7に挿入され、先端工具8は、リテーナスリーブ25によって支持される。リテーナスリーブ25の先端工具保持部7に挿入された先端工具8は、リテーナスリーブ25に対して、回転方向には移動不能、かつ、前後方向P1には所定範囲で移動可能に係合する。よって、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が回転すると、リテーナスリーブ25の先端工具保持部7も回転し、これにより、先端工具8に回転力が伝達され、先端工具8が回転する。また、先端工具8に打撃力が伝達されると、先端工具8は前後方向P1に所定範囲で往復動する。すなわち、先端工具8は、モータ19の駆動力により前後方向(第1方向)P1に動作して所望の作業を行うビットである。
【0016】
シリンダ17内にはピストン9及びストライカ22が往復動可能に収容されている。また、シリンダ17とリテーナスリーブ25とに跨ってセカンドハンマ24が往復動可能に収容されている。これらピストン9,ストライカ22及びセカンドハンマ24は、シリンダ17の後方から前方に向かってこの順で一列に並んでいる。さらに、シリンダ17内であってピストン9とストライカ22との間には空気室23が設けられている。
【0017】
モータハウジング1c内には、動力源であるモータ19が収容されている。つまり、モータ19はモータハウジング1cによって支持される。そして、モータ19は、例えば、インナーロータ型のブラシレスモータであって、筒形状のステータ19aと、ステータ19aの内側に配置されたロータ19bと、ロータ19bの内側に配置された出力軸19cと、を有する。出力軸19cはロータ19bに固定されており、ロータ19bを貫通して上下に伸びている。出力軸19cの中心軸とシリンダ17及びリテーナスリーブ25の中心軸とは直交している。
【0018】
ロータ19bから突出している出力軸19cの上部は、モータハウジング1cと中間ハウジング1bとの間の隔壁を貫通して中間ハウジング1bの内側に進入している。中間ハウジング1b内に突出している出力軸19cの上端側にはファン19dが設けられており、さらに上端にはピニオンギヤ19eが設けられている。中間ハウジング1b内であって、出力軸19cの一側には、第1駆動軸30が回転自在に配置され、出力軸19cの他側には、第2駆動軸40が回転自在に配置されている。これら出力軸19c,第1駆動軸30及び第2駆動軸40は互いに平行である。
【0019】
第1駆動軸30の下部にはピニオンギヤ19eと噛合う第1ギヤ31が設けられており、第1駆動軸30の上部には偏心ピン32が設けられおり、この偏心ピン32がコンロッド33を介してピストン9に連結されている。すなわち、往復動機構部18として、コンロッド33とピストン9が設けられている。
【0020】
第2駆動軸40の下部にはピニオンギヤ19eと噛合う第2ギヤ41が設けられており、第2駆動軸40の上部にはベベルギヤ42が設けられており、このベベルギヤ42がシリンダ17の周囲に配置されているリングギヤ43と噛合っている。リングギヤ43は滑り軸受(メタル)を介してシリンダ17の外周面に装着されており、シリンダ17に対して自由に回転する。
【0021】
シリンダ17の外周面には、リングギヤ43に加えてスリーブ44が設けられている。スリーブ44は、シリンダ17と一体回転し、かつ、単独でシリンダ17の軸方向(前後方向)にスライドする。スリーブ44はスプリングによって後方に付勢されている。
【0022】
作業者が、
図3に示されるスイッチ5を操作すると、コントローラ16の制御によりモータ19が作動する。そして、モータ19が作動すると、出力軸19cの回転がピニオンギヤ19e及び第1ギヤ31を介して第1駆動軸30に伝達され、第1駆動軸30が回転する。また、出力軸19cの回転がピニオンギヤ19e及び第2ギヤ41を介して第2駆動軸40に伝達され、第2駆動軸40が回転する。
【0023】
第1駆動軸30が回転すると、第1駆動軸30の上端に設けられている偏心ピン32が第1駆動軸30の中心軸を回転軸として回転する。すなわち、第1駆動軸30の中心軸の周囲を偏心ピン32が旋回する。この結果、コンロッド33を介して偏心ピン32と連結されているピストン9がシリンダ17内で往復動する。ピストン9がストライカ22から離反する方向に移動すると、つまりピストン9が後退すると、空気室23内の圧力が低下し、ストライカ22が後退する。一方、ピストン9がストライカ22に近接する方向に移動すると、つまりピストン9が前進すると、空気室23内の圧力が上昇し、ストライカ22が前進する。ストライカ22が前進すると、該ストライカ22によってセカンドハンマ24が打撃され、セカンドハンマ24によって先端工具8が打撃される。このようにして先端工具8に断続的に打撃力が伝達される。
【0024】
第2駆動軸40が回転すると、第2駆動軸40の上端に設けられているベベルギヤ42が回転し、ベベルギヤ42と噛合っているリングギヤ43が回転する。そして、リングギヤ43の回転がスリーブ44を介してシリンダ17に伝達され、シリンダ17及びリテーナスリーブ25が一体回転する。よって、リテーナスリーブ25に保持されている先端工具8には、断続的に打撃力が伝達され、かつ、連続的に回転力が伝達される。これにより、先端工具8によって対象物に所望の作業が行われる。
【0025】
なお、
図3に示されるように、ハンマドリル10において、ハンドル部2は、上下方向(第2方向)Q1の一端側(上端側)に設けられる第1接続部11と、上下方向(第2方向)Q1の他端側(下端側)に設けられる第2接続部12と、を介して本体部1に相対移動可能に接続されている。具体的には、ハンドル部2は、第1接続部11及び第2接続部12を介して、本体部1に回動可能に接続されている。
【0026】
また、本実施の形態のハンマドリル10には、モータ19に電力を供給する電池パック(バッテリパック)4が装着されている。すなわち、ハンマドリル10は、
図1~
図3に示されるように、ハンドル部2の下端側に電池パック4を装着可能な電池装着部(バッテリ装着部)3を備えている。そして、電池装着部3は、
図3に示される第3接続部13を介してハンドル部2に相対移動可能に接続されるとともに、第4接続部14を介して本体部1に相対移動可能に接続される。具体的には、電池装着部3は、第3接続部13及び第4接続部14のそれぞれにおいて、本体部1に前後方向(第1方向)P1に相対移動可能に接続されている。
【0027】
すなわち、ハンマドリル10では、電池装着部3が本体部1及びハンドル部2に別体の部材として取り付けられており、本体部1とは第2接続部12及び第4接続部14で接続している。また、ハンドル部2とは第3接続部13で接続している。
【0028】
なお、電池装着部3には、電池パック4の端子とコンタクトする電池ターミナル20が設けられている。さらに、電池装着部3には、上下方向(第2方向)Q1において電池パック4を保護する電池保護部21が設けられている。また、電池パック4は、電池装着部3に着脱する際に操作する電池パック操作部15を上下方向の2か所に備えており、2か所の電池パック操作部15の両方が押し操作されたときに、電池パック4が電池装着部3から離脱可能である。尚、電池装着部3には2つの電池パック4が装着可能であり、
図4に示されるように、2つの電池パック4は、左右方向(第3方向)R1に並んで、且つ、左右に反転された状態で取り付けられる。2つの電池パック4の電池パック操作部15は、電池パック4の上面及び下面に並んで配置されるため、作業者が連続して2つの電池パック4を取り外したい場合に作業性がよい。尚、
図7に示されるように、ハンドル部2の下端は、電池パック操作部15との間に空間を形成するように切欠き28が形成されており、作業者が電池パック操作部15を押し操作する際にハンドル部2が邪魔にならないようになっている。
【0029】
なお、
図4に示されるように、ハンマドリル10において、一方側(左側)のハンドル部2と他方側(右側)のハンドル部2とは、ネジ26やネジ27によって固定される。
【0030】
次に、
図5及び
図6を用いて、ハンマドリル10における第1接続部11の構造及び動作について説明する。第1接続部11には、前後と左右にそれぞれ配置されたゴム製の4つの第1接続部弾性体(弾性体)11dが設けられており、これら4つの第1接続部弾性体(弾性体)11dは、第1接続部ハンドル側部材11bと第1接続部本体側部材11cとによって挟まれて支持されている。この状態でハンドル部2が前方に押されると、ハンドル部2に固定されている第1接続部ハンドル側部材11bも前方に押される。すると、第1接続部本体側部材11cは規制部材11eによって前方への移動が規制されているため、第1接続部ハンドル側部材11bと第1接続部本体側部材11cとの間にある4つの第1接続部弾性体11dがそれぞれ圧縮されて弾性変形する。つまり、第1接続部11においては、ハンドル部2の第1接続部ハンドル側部材11bが、本体部1の第1接続部本体側部材11cに対し前後方向(第1方向)P1に相対移動可能に接続されている。
【0031】
この状態で本体部側において振動が発生すると、その振動は、第1接続部本体側部材11c及び4つの第1接続部弾性体11dを介して第1接続部ハンドル側部材11bに伝達される。すなわち、本体部側において発生した振動は、前方側の左右2つの第1接続部弾性体11dを含む第1振動伝達経路と、後方側の左右2つの第1接続部弾性体11dを含む第2振動伝達経路の2つの振動伝達経路によってハンドル部側に伝達される。このとき、第1振動伝達経路上に配置されている前方側の左右2つの第1接続部弾性体11dは、対向する支持面の間でころがり圧縮を受け、非線形なばね特性を発揮する。この結果、第1振動伝達経路を介して本体部側からハンドル部側へ伝達される振動が吸収される。同じく、第2振動伝達経路上に配置されている後方側の左右2つの第1接続部弾性体11dは、対向する支持面の間でころがり圧縮を受け、非線形なばね特性を発揮する。この結果、第2振動伝達経路を介して本体部側からハンドル部側へ伝達される振動が吸収される。つまり、第1接続部11の動作により、本体部側からハンドル部側へ伝達される振動を吸収することができる。
【0032】
次に、
図7に示されるハンマドリル10における第2接続部12の構造及び動作について説明する。第2接続部12は、本体部1とハンドル部2とを接続する接続部であり、第2接続部12には、本体部1に取り付けられた部材として第2接続部本体側部材12bと、ハンドル部2に取り付けられた部材として第2接続部ハンドル側部材12aとが設けられている。第2接続部本体側部材12bには貫通孔12dが設けられている。一方、第2接続部ハンドル側部材12aは軸状の部材である。これにより、第2接続部12では、第2接続部本体側部材12bの貫通孔12dに軸状の第2接続部ハンドル側部材12aが係合されており、第2接続部本体側部材12bに第2接続部ハンドル側部材12aが回動可能に係合されている。詳細には、
図4に示されるように、ハンドル部2に取り付けられた筒状の第2接続部ハンドル側部材12cに棒状の第2接続部ハンドル側部材12aが挿入され、左側のハンドル部2の第2接続部ハンドル側部材12cと右側のハンドル部2の第2接続部ハンドル側部材12cとが、第2接続部ハンドル側部材12aによって連結されている。そして、第2接続部本体側部材12bの貫通孔12dに左右の第2接続部ハンドル側部材12cが回動可能に装着されている。すなわち、第2接続部12では、本体部1にハンドル部2がヒンジ結合されており、本体部1にハンドル部2が回動可能に装着されている。また、ハンドル部2が本体部1にヒンジ結合されているため、ハンドル部2と本体部1との間の接続部の剛性を確保することができる。なお、ハンマドリル10においては、第1接続部11及び第2接続部12のうちの少なくとも何れか一方が、弾性体を介してハンドル部2と本体部1とが接続される構造となっていることが好ましい。本実施の形態のハンマドリル10では、第1接続部11が弾性体(第1接続部弾性体11d)を介してハンドル部2と本体部1とが接続される構造となっている。
【0033】
以上のようにハンマドリル10では、ハンドル部2は、第1接続部11と第2接続部12とを介して本体部1に相対移動可能、すなわち、回動可能に接続されている。
【0034】
次に、
図7に示されるハンマドリル10における第3接続部13の構造及び動作について説明する。第3接続部13は、ハンドル部2と電池装着部3とを接続する接続部であり、第3接続部13には、ハンドル部2に取り付けられた部材として第3接続部ハンドル側部材13bと、電池装着部3に取り付けられた部材として第3接続部電池装着部側部材13aとが設けられている。そして、第3接続部電池装着部側部材13aには貫通孔13eが設けられている。該貫通孔13eは、前後方向(第1方向)P1に平行な方向の径(長さ)が上下方向(第2方向)Q1に平行な方向の径(幅)より長い長孔となっている。一方、第3接続部ハンドル側部材13bは外周の断面形状が円形を成す軸状の部材である。これにより、第3接続部13では、第3接続部電池装着部側部材13aの長孔の貫通孔13eに円形の軸状の第3接続部ハンドル側部材13bが係合されている。その際、第3接続部ハンドル側部材13bの外周には筒状のゴム製の第3接続部弾性体13cが装着されている。すなわち、第3接続部ハンドル側部材13bと第3接続部電池装着部側部材13aとの間に、断面形状が円形の筒状の第3接続部弾性体13cが介在されている。つまり、第3接続部13は、第3接続部弾性体13cを介して電池装着部3とハンドル部2とを接続している。そして、貫通孔13eは、前後方向(第1方向)P1の長さが上下方向(第2方向)Q1の幅より長い長孔であり、一方、筒状のゴム製の第3接続部弾性体13cは断面形状は円形である。したがって、長孔の貫通孔13eにおいて、筒状の第3接続部弾性体13cの前方側と後方側には、それぞれ第3接続部往復動方向隙間13dが形成される。すなわち、第3接続部弾性体13cの前側と後側に隙間が形成された状態で電池装着部3とハンドル部2とが接続されている。これにより、電池装着部3は、ハンドル部2に前後方向(第1方向)P1に僅かに移動可能なように接続されている。言い換えると、電池装着部3は、第3接続部13を介してハンドル部2に相対移動可能、すなわち、前後移動可能に接続されている。
【0035】
次に、
図7に示されるハンマドリル10における第4接続部14の構造及び動作について説明する。第4接続部14は、電池装着部3と本体部1とを接続する接続部であり、本実施の形態のハンマドリル10では、第4接続部14として上側(第2接続部12に近い側)と下側(第2接続部12から離れた側)の2箇所に第4接続部14が設けられており、電池装着部3と本体部1とが2箇所の第4接続部14で接続されている。
【0036】
第4接続部14には、本体部1に取り付けられた部材として第4接続部本体側部材14cと、電池装着部3に取り付けられた部材として第4接続部電池装着部側部材14bとが設けられている。そして、第4接続部電池装着部側部材14bには貫通孔14fが設けられている。該貫通孔14fは、第3接続部13の貫通孔13eと同様に、前後方向(第1方向)P1に平行な方向の径(長さ)が上下方向(第2方向)Q1に平行な方向の径(幅)より長い長孔となっている。一方、第4接続部本体側部材14cは外周形状が円形の軸状の部材である。これにより、第4接続部14においても、第4接続部電池装着部側部材14bの長孔の貫通孔14fに断面形状が円形の軸状の第4接続部本体側部材14cが係合されている。その際、第4接続部本体側部材14cの外周には筒状のゴム製の第4接続部弾性体14dが装着されている。すなわち、第4接続部本体側部材14cと第4接続部電池装着部側部材14bとの間に、断面形状が円形の筒状の第4接続部弾性体14dが介在されている。つまり、第4接続部14は、第4接続部弾性体14dを介して電池装着部3と本体部1とを接続している。なお、貫通孔14fは、前後方向(第1方向)P1の長さが上下方向(第2方向)Q1の幅より長い長孔であり、一方、筒状のゴム製の第4接続部弾性体14dは外周の断面形状が円形である。したがって、長孔の貫通孔14fにおいて、筒状の第4接続部弾性体14dの前方側と後方側には、それぞれ第4接続部往復動方向隙間14eが形成される。すなわち、第4接続部弾性体14dの前側と後側に隙間が形成された状態で電池装着部3と本体部1とが接続されている。これにより、電池装着部3は、本体部1に前後方向(第1方向)P1に移動可能なように接続されている。言い換えると、電池装着部3は、第4接続部14を介して本体部1に相対移動可能、すなわち、前後移動可能に接続されている。なお、上側と下側の2箇所の第4接続部14は、
図4に示されるように、第4接続部カバー14aによって覆われる。
【0037】
本実施の形態のハンマドリル10では、電池装着部3が、本体部1及びハンドル部2に別体の部材として取り付けられている。さらに、電池装着部3は、本体部1とは第2接続部12及び第4接続部14で接続しており、かつ、ハンドル部2とは第3接続部13で接続している。そして、電池装着部3は、本体部1に第2接続部12では回動可能に接続され、第4接続部14では前後移動可能に接続されている。さらに、電池装着部3は、ハンドル部2に第3接続部13で前後移動可能に接続されている。つまり、ハンマドリル10では、電池装着部3が本体部1とハンドル部2の両方に接続され、かつ、前後方向(第1方向)P1に移動可能である。さらに、電池装着部3は、第3接続部13と2箇所の第4接続部14とにおいて、それぞれ弾性体を介して支持されている。したがって、電池パック4にかかる振動を抑制することができる。すなわち、ハンマドリル10においては、第1接続部11によりハンドル部2と本体部1との間の振動を低減しつつ、第2接続部12によりハンドル部2と本体部1との間の接続部の剛性を確保して先端工具8への押付力を維持することができる。その結果、ハンマドリル10の作業性が悪化することを抑制できる。さらに、電池パック4にかかる振動を抑制することができるため、ハンマドリル10の信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、ハンマドリル10においては、バッテリの高容量化の要望に応えるため、複数の電池パック4を装着することが考えられる。例えば、本実施の形態のハンマドリル10においては、2つの電池パック4が装着されている。このように複数の電池パック4を装着した場合、電池パック4の重量が増加するため、電池装着部3がハンドル部2のみによって支持された構造の場合には、ハンドル部2と電池装着部3の接続部における強度不足が考えられる。しかしながら、本実施の形態のハンマドリル10では、電池装着部3が本体部1とハンドル部2とによって支持されていることで、電池装着部3の支持強度を高めることができる。すなわち、電池装着部3を支持する構造において信頼性を高めることができる。なお、電池装着部3に振動が伝播すると、電池装着部3の端子と電池パック4の端子との接触部においてチャタリングが発生し、そこで発熱する等の不具合が起こる可能性がある。本実施の形態のハンマドリル10では、電池パック4にかかる振動を抑制することができ、かつ、電池装着部3の支持強度を高めることができるため、電池装着部3の端子と電池パック4の端子との接触部における不具合の発生を抑制することができる。
【0039】
なお、ハンマドリル10では、電池パック4は、電池装着部3に対して前後方向(第1方向)P1にスライドされることで、電池装着部3に装着される。本実施の形態のハンマドリル10は、前後方向(第1方向)P1における電池パック4の振動を抑制することができるため、電池装着部3の端子と電池パック4の端子との接触部における不具合の発生をさらに抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、電池装着部3に、2つの電池パック4を装着可能なハンマドリル10を取り上げており、
図4に示されるように、2つの電池パック4は、左右方向(第3方向)R1に並んで装着される。すなわち、本体部1に対して2つの電池パック4が並列的に配置されている。これにより、ハンマドリル10の小型化を図ることができる。さらに、本体部1の左右方向(第3方向)R1に2つの電池パック4の重量を均等にかけることができ、ハンマドリル10の作業性を向上させることができる。
【0041】
また、電池パック4が複数装着されると、電池パック4の重量が大きくなるため、電池装着部3を支持する部分にかかる荷重も大きくなる。この場合、電池装着部3の支持が第3接続部13のみによると電池装着部3が捻じれる方向に振動することが懸念される。そこで、本実施の形態のハンマドリル10では、前後方向(第1方向)P1において、第3接続部13と第4接続部14とが離間して配置されている。つまり、第3接続部13と第4接続部14とを前後方向(第1方向)P1において離間することにより、上述の捻じれを引き起こすような振動の発生を抑制することができる。
【0042】
次に、本実施の形態のハンマドリル10の変形例について説明する。
図8及び
図9に示される第1変形例では、第2接続部12において、第2接続部本体側部材12bと第2接続部ハンドル側部材12aとの間にゴム製の筒状の第2接続部弾性体(弾性体)50を介在させた構造となっている。すなわち、第2接続部本体側部材12bの貫通孔12d内において、第2接続部ハンドル側部材12aの外周部にゴム製の筒状の第2接続部弾性体(弾性体)50が設けられており、第2接続部12においても電池装着部3が前後移動可能になっている。
【0043】
これにより、第1変形例のハンマドリル10においても、電池装着部3が本体部1とハンドル部2の両方に接続され、かつ、電池装着部3の本体部1とハンドル部2との接続部において弾性体が介在されているため、電池装着部3はさらに前後方向(第1方向)P1に移動可能である。したがって、第1変形例のハンマドリル10においても、電池パック4にかかる振動を抑制することができる。また、第1接続部11と第2接続部12の両方が弾性体を介してハンドル部2と本体部1とが接続される構造であるため、ハンドル部2全体において本体部1から伝達される振動を低減することができる。
【0044】
また、
図10及び
図11に示される第2変形例は、第1変形例と同様の構造であるが、該第1変形例の構造の第3接続部13において、第3接続部電池装着部側部材13aと第3接続部ハンドル側部材13bとの間に、筒状の第3接続部樹脂体51を介在させた構造となっている。第3接続部樹脂体51は、例えば、硬質樹脂材からなる。つまり、第3接続部電池装着部側部材13aの貫通孔13e内において、第3接続部ハンドル側部材13bの外周部に筒状の第3接続部樹脂体51が設けられており、第3接続部13では、ハンドル部2に電池装着部3がヒンジ結合されている。なお、第2変形例の構造においても、第2接続部12において電池装着部3が前後移動可能になっている。
【0045】
これにより、第2変形例のハンマドリル10においても、電池装着部3が本体部1とハンドル部2の両方に接続され、かつ、電池装着部3の本体部1との接続において、弾性体が介在されているため、電池装着部3は前後方向(第1方向)P1に移動可能である。したがって、第2変形例のハンマドリル10においても、電池パック4にかかる振動を抑制することができる。また、第3接続部13ではハンドル部2に電池装着部3がヒンジ結合されているため、電池装着部3が本体部1に対して過剰に変位しやすくなることによる、耐久性の低下などが抑制できる。
【0046】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態で説明した電池装着部3の電池装着部側部材に設けられた貫通孔の形状は、楕円であってもよく、該貫通孔内に配置される弾性体の断面形状も楕円であってもよい。すなわち、貫通孔内において弾性体の前側と後側とに隙間が形成されていればよい。第1接続部11は、
図5、
図6に示されるように第1接続部ハンドル側部材11bと第1接続部本体側部材11cとの間にゴム製の第1接続部弾性体11dを介在させる代わりに、金属製のコイルスプリングや、その他のバネ性を有する弾性体を介在させる構成としてもよい。さらに、第3接続部弾性体13cや第4接続部弾性体14dを金属製のコイルスプリングや、その他のバネ性を有する弾性体に置き換えてもよい。また、上記実施の形態のハンマドリル10では、第1接続部11が弾性体(第1接続部弾性体11d)を介してハンドル部2と本体部1とが接続される構造となっているが、第1接続部11がヒンジ結合によりハンドル部2と本体部1とが接続される構造で、且つ、第2接続部12が弾性体を介してハンドル部2と本体部1とが接続される構造であってもよい。第3接続部13が弾性体を介してハンドル部2と電池装着部3が接続される構造としながら、第4接続部14の何れか一方をヒンジ結合により本体部1と電池装着部3が接続される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…本体部、1a…シリンダハウジング、1b…中間ハウジング、1c…モータハウジング、2…ハンドル部、3…電池装着部(バッテリ装着部)、4…電池パック(バッテリパック)、5…スイッチ、6…サイドハンドル、7…先端工具保持部、8…先端工具、9…ピストン、10…ハンマドリル、11…第1接続部、11a…第1接続部カバー、11b…第1接続部ハンドル側部材、11c…第1接続部本体側部材、11d…第1接続部弾性体(弾性体)、11e…規制部材、12…第2接続部、12a…第2接続部ハンドル側部材、12b…第2接続部本体側部材、12c…第2接続部ハンドル側部材、12d…貫通孔、13…第3接続部、13a…第3接続部電池装着部側部材、13b…第3接続部ハンドル側部材、13c…第3接続部弾性体(弾性体)、13d…第3接続部往復動方向隙間、13e…貫通孔、14…第4接続部、14a…第4接続部カバー、14b…第4接続部電池装着部側部材、14c…第4接続部本体側部材、14d…第4接続部弾性体(弾性体)、14e…第4接続部往復動方向隙間、14f…貫通孔、15…電池パック操作部、16…コントローラ、17…シリンダ、18…往復動機構部、19…モータ、19a…ステータ、19b…ロータ、19c…出力軸、19d…ファン、19e…ピニオンギヤ、20…電池ターミナル、21…電池保護部、22…ストライカ、23…空気室、24…セカンドハンマ、25…リテーナスリーブ、26,27…ネジ、28…切欠き、30…第1駆動軸、31…第1ギヤ、32…偏心ピン、33…コンロッド、40…第2駆動軸、41…第2ギヤ、42…ベベルギヤ、43…リングギヤ、44…スリーブ、50…第2接続部弾性体(弾性体)、51…第3接続部樹脂体、C1…中心軸、P1…第1方向(前後方向)、Q1…第2方向(上下方向)、R1…第3方向(左右方向)