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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車載ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B25J17/00 K
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023546783
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2022024893
(87)【国際公開番号】W WO2023037694
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】202111060358.X
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 来強
(72)【発明者】
【氏名】王 立紅
(72)【発明者】
【氏名】陳 亮
(72)【発明者】
【氏名】白 小林
(72)【発明者】
【氏名】駱 育卿
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111216649(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111872945(CN,A)
【文献】国際公開第2012/160659(WO,A1)
【文献】特開2019-123055(JP,A)
【文献】特開2020-089932(JP,A)
【文献】特開2019-130601(JP,A)
【文献】特開2013-013978(JP,A)
【文献】特開2013-205518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
A63H 11/00 - 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に回転可能に取り付けられたベース部材と、
前記ベース部材によって支持された外部材と、
前記外部材の内側に位置し、前記外部材によって支持された内部材と、
前記内部材を前記外部材に対して、前記外部材によって支持された前記内部材の部位を通る第1の軸を中心に回転可能にする第1の動力伝達ユニットと、
前記外部材を、前記ベース部材によって支持された前記外部材の部位を通る第2の軸を中心に回転可能にする第2の動力伝達ユニットと、
前記外部材を、前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれ対しても非平行な第3の軸を中心に回転可能にする第3の動力伝達ユニットと、
を備えることを特徴とする車載ロボット。
【請求項2】
前記第2の軸は前記第1の軸と同一の平面内に位置し前記第1の軸に交差し、
前記第3の軸は前記第1の軸及び前記第2の軸のある前記平面に交差することを特徴とする請求項1に記載の車載ロボット。
【請求項3】
前記第3の軸は前記第1の軸と前記第2の軸との交点を通ることを特徴とする請求項2に記載の車載ロボット。
【請求項4】
前記第3の動力伝達ユニットは、前記ベース部材に固定された案内部材と、前記外部材に固定された移動部材とを有し、前記移動部材と前記案内部材とは相対的に移動可能とすることで、前記外部材が前記ベース部材に対して前記第3の軸を中心に回転するように連動させられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載ロボット。
【請求項5】
前記案内部材はレール部材を有し、
前記移動部材は前記レール部材のレール面に沿って移動可能であることを特徴とする請求項4に記載の車載ロボット。
【請求項6】
前記第3の動力伝達ユニットは、中間歯車によって前記外部材を前記第3の軸を中心に回転させるように駆動する第3の軸モータを有することを特徴とする請求項4に記載の車載ロボット。
【請求項7】
前記移動部材には、前記中間歯車と噛み合う弧状ティース部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車載ロボット。
【請求項8】
前記レール部材は複数設けられ、及び/又は前記移動部材は複数設けられることを特徴とする請求項5に記載の車載ロボット。
【請求項9】
前記レール部材は、それぞれ円弧状とされた第1のレール及び第2のレールを有し、前記第1のレールは前記外部材と前記第2のレールとの間に位置し、前記第1のレールの弧中心と前記第2のレールの弧中心が重なっており、
前記移動部材は第1の移動部材及び第2の移動部材を有し、前記第1の移動部材は前記第1のレールに沿って移動可能であり、前記第2の移動部材は前記第2のレールに沿って移動可能であることを特徴とする請求項5に記載の車載ロボット。
【請求項10】
前記移動部材は、前記移動部材の移動方向の両端部に設けられたホイール部及び/又はスライダを有することを特徴とする請求項5に記載の車載ロボット。
【請求項11】
前記内部材は環状に形成され、該内部材の内側には、情報を表示する第1のディスプレイが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載ロボット。
【請求項12】
前記内部材の外周面には、前記内部材の外周面の一部として構成される第2のディスプレイが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の車載ロボット。
【請求項13】
前記第2のディスプレイは表情を模擬した画像を表示することを特徴とする請求項12に記載の車載ロボット。
【請求項14】
前記外部材及び前記内部材は円環状に形成されることを特徴とする請求項11に記載の車載ロボット。
【請求項15】
前記外部材及び前記内部材が前記第1の動力伝達ユニット~前記第3の動力伝達ユニットによって駆動されず、初期位置にある基準状態において、前記第1の軸、前記第2の軸及び前記第3の軸は互いに直交し、
前記内部材が前記第1の軸を中心に前記基準状態から回転する角度範囲は-90°~90°であり、及び/又は
前記外部材が前記第2の軸を中心に前記基準状態から回転する角度は-175°~175°であり、及び/又は
前記外部材が前記第3の軸を中心に前記基準状態から回転する角度は-19°~19°であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載ロボット。
【請求項16】
前記外部材は、内側に延びる互いに対向する一対の軸部を有し、前記内部材は前記一対の軸部によって支持され、前記第1の軸は前記一対の軸部を通り、前記第1の動力伝達ユニットは、前記内部材又は前記外部材に取り付けられた第1の軸モータを有し、
前記内部材が前記第1の軸モータの駆動によって前記一対の軸部を中心に回転可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載ロボット。
【請求項17】
前記第2の動力伝達ユニットは、前記取付対象に対して固定された第2の軸モータを有し、
前記ベース部材、前記外部材、前記内部材、前記第1の動力伝達ユニット及び前記第3の動力伝達ユニットが前記第2の軸モータの駆動によって、前記第2の軸を中心に一体に回転可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ロボット分野に関し、特にインテリジェント車室内の車載ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の智能化に伴い、視覚、音声、フロントエンドのインクリメンタル学習等のAI知覚及び思考の技術が適用された車室が流行っており、ヒューマンコンピュータインタラクションが、益々重要になっている。車載ロボットが主なインタフェースとして使用され、ロボットの頭が乗員の状態、指令に応じて乗員に交流及びフィードバックすることによっては、インタラクションの際の機械的なイメージと指令感を回避でき、より擬人的に、自然的にインタラクションできる。例えば、特許文献1には、ギア間の動力伝達により、ロボットの頭が一定の角度範囲内で上下回転及び左右回転することで、人間の頷き及び頭を振る動作を模擬する車載ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】CN111872945A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、車載ロボットの頭は、上下方向及び左右方向の2つの方向しか回転できないもので、人間の頭が自由に回転する動作を模擬できないため、依然として擬人化、智能化が不足である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、すなわち、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、人間の頭の動作をリアルに、智能的に模擬できる車載ロボットを提供することにある。
【0006】
本発明の第1の態様は、取付対象に回転可能に取り付けられたベース部材と、前記ベース部材によって支持された外部材と、前記外部材の内側に位置し、前記外部材によって支持された内部材と、前記内部材を前記外部材に対して、前記外部材によって支持された前記内部材の部位を通る第1の軸を中心に回転可能にする第1の動力伝達ユニットと、前記外部材を、前記ベース部材によって支持された前記外部材の部位を通る第2の軸を中心に回転可能にする第2の動力伝達ユニットと、前記外部材を、前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれもに対して非平行な第3の軸を中心に回転可能にする第3の動力伝達ユニットと、を備える車載ロボットを提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、前記第2の軸が、前記第1の軸と同一の平面内に位置し前記第1の軸に交差し、前記第3の軸が、前記第1の軸及び前記第2の軸が位置する前記平面に交差する車載ロボットを提供する。
【0008】
本発明の第3の態様は、前記第3の軸が前記第1の軸と前記第2の軸との交点を通る車載ロボットを提供する。
【0009】
本発明の第4の態様は、前記第3の動力伝達ユニットが、前記ベース部材に固定された案内部材と、前記外部材に固定された移動部材とを有し、前記移動部材と前記案内部材とは相対的に移動可能とすることで、前記外部材が前記ベース部材に対して前記第3の軸を中心に回転するように連動させられる車載ロボットを提供する。
【0010】
本発明の第5の態様は、前記案内部材がレール部材を有し、前記移動部材が前記レール部材のレール面に沿って移動可能である車載ロボットを提供する。
【0011】
本発明の第6の態様は、前記第3の動力伝達ユニットが、中間歯車によって前記外部材を第3の軸を中心に回転させるように駆動する第3の軸モータを有する車載ロボットを提供する。
【0012】
本発明の第7の態様は、前記移動部材には、前記中間歯車と噛み合う弧状ティース部が設けられている車載ロボットを提供する。
【0013】
本発明の第8の態様は、前記レール部材が複数設けられ、及び/又は前記移動部材が複数設けられる車載ロボットを提供する。
【0014】
本発明の第9の態様は、前記レール部材が、それぞれ円弧状とされた第1のレール及び第2のレールを有し、前記第1のレールが前記外部材と前記第2のレールとの間に位置し、前記第1のレールの弧中心と前記第2のレールの弧中心が重なっており、前記移動部材が第1の移動部材及び第2の移動部材を有し、前記第1の移動部材が前記第1のレールに沿って移動可能であり、前記第2の移動部材が前記第2のレールに沿って移動可能である車載ロボットを提供する。
【0015】
本発明の第10の態様は、前記移動部材が、前記移動部材の移動方向の両端部に設けられたホイール部及び/又はスライダを有する車載ロボットを提供する。
【0016】
本発明の第11の態様は、前記内部材が環状に形成され、該内部材の内側には、情報を表示する第1のディスプレイが設けられている車載ロボットを提供する。
【0017】
本発明の第12の態様は、前記内部材の外周面には、前記内部材の外周面の一部として構成される第2のディスプレイが設けられている車載ロボットを提供する。
【0018】
本発明の第13の態様は、前記第2のディスプレイが表情を模擬した画像を表示する車載ロボットを提供する。
【0019】
本発明の第14の態様は、前記外部材及び前記内部材が円環状に形成される車載ロボットを提供する。
【0020】
本発明の第15の態様は、前記外部材及び前記内部材が前記第1の動力伝達ユニット~前記第3の動力伝達ユニットによって駆動されず、初期位置にある基準状態において、前記第1の軸、前記第2の軸及び前記第3の軸が互いに直交し、前記内部材が前記第1の軸を中心に前記基準状態から回転する角度範囲が-90°~90°であり、及び/又は前記外部材が前記第2の軸を中心に前記基準状態から回転する角度が-175°~175°であり、及び/又は前記外部材が前記第3の軸を中心に前記基準状態から回転する角度が-19°~19°である車載ロボットを提供する。
【0021】
本発明の第16の態様は、前記外部材が、内側に延びる互いに対向する一対の軸部を有し、前記内部材が前記一対の軸部によって支持され、前記第1の軸が前記一対の軸部を通り、前記第1の動力伝達ユニットが、前記内部材又は前記外部材に取り付けられた第1の軸モータを有し、前記内部材が前記第1の軸モータの駆動によって前記一対の軸部を中心に回転可能である車載ロボットを提供する。
【0022】
本発明の第17の態様は、前記第2の動力伝達ユニットが、前記取付対象に対して固定された第2の軸モータを有し、前記ベース部材、前記外部材、前記内部材、前記第1の動力伝達ユニット及び前記第3の動力伝達ユニットが前記第2の軸モータの駆動によって、前記第2の軸を中心に一体に回転可能である車載ロボットを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車載ロボットは、第1の軸、第2の軸及び第3の軸の3つの軸を中心に三次元で独立的に動作することができ、これら動作を統合することもでき、これにより人間の頭の動作をリアルに、智能的に模擬できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の車載ロボットの正面図である。
図2図2は本発明の車載ロボットの側面図である。
図3図3は本発明の車載ロボットの頭の内部構造を示す図である。
図4図4は本発明の車載ロボットが取付対象に取付けられた平面図である。
図5図5は本発明の車載ロボットの斜視図である。
図6図6は本発明の車載ロボットの回転を示す図であり、図6の(a)は車載ロボットの頭が右側に回転したことを示す図であり、図6の(b)は車載ロボットの頭が中央位置にあることを示す図であり、図6の(c)は車載ロボットの頭が左側に回転したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。理解を容易にするために、図示されている各要素の寸法や縮尺などは、実際の寸法や縮尺などとは異なる場合がある。各図面の縮尺は必ずしも一定ではない。また、X軸方向は水平の左右方向に対応し、Y軸方向は上下方向に対応し、Z軸方向はX軸とY軸の両方に直交する方向に対応する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は本発明の車載ロボット100を容易に説明するために設定されており、必ずしも実際の取り付け方向と一致する必要はない。
【0026】
図1図6に示すように、本発明の車載ロボット100は、本体部1と、ベース部材2と、第1の動力伝達ユニット3と、第2の動力伝達ユニット4と、第3の動力伝達ユニット5と、ケース6とを備える。本体部1は、外部材11と内部材12とを備え、ベース部材2は、取り付けベース21と、保持部材22とを備え、ケース6には、第1の動力伝達ユニット3、第2の動力伝達ユニット4及び第3の動力伝達ユニット5の動作を制御する制御部24が固定されている。第1の動力伝達ユニット3は、内部材12を外部材11に対して、外部材11によって支持された内部材12の部位を通る第1の軸A1を中心に回転可能にし、第2の動力伝達ユニット4は、外部材11を、ベース部材2によって支持された外部材11の部位を通る第2の軸A2を中心に回転可能にし、第3の動力伝達ユニット5は、外部材11を、第1の軸A1及び第2の軸A2のいずれもに対して非平行な第3の軸A3を中心に回転可能にする。好ましくは、第1の軸A1と第2の軸A2とは同一の平面内に位置し、かつ、第1の軸A1と第2の軸A2とは交差し、第3の軸A3は、第1の軸A1及び第2の軸A2から形成される平面と交差する。より好ましくは、第3の軸A3は第1の軸A1と第2の軸A2との交点を通る。
【0027】
説明の便宜上、図1に示す状態を基準状態として設定し、基準状態において、本体部1は、第1の動力伝達ユニット3~第3の動力伝達ユニット5によって駆動されず、初期位置にある。初期位置とは、外部材11及び内部材12が全体的に、第1の軸A1及び第2の軸A2から形成される平面内に位置し、かつ、本体部1が直立形態であることを指す。好ましくは、基準状態において、第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3は、互いに直交する。より好ましくは、基準状態において、第1の軸A1は、X軸方向に延び、第2の軸A2は、Y軸方向に延び、第3の軸A3は、Z軸方向に延びる。
【0028】
外部材11及び内部材12は、いずれも円環状に形成され、具体的には、略円環状に形成され、同心円状に配置される。外部材11は、ベース部材2によって支持され、具体的には、外部材11は、取り付けベース21によって回転可能に支持される。内部材12は、外部材11の内側に位置し、外部材11によって支持され、外部材11の内周面と内部材12の外周面との間に、内部材12が回転時に外部材11と干渉しないように、所定の空間が隔てられている。好ましくは、外部材11の内周面と内部材12の外周面とは、同じ円弧度の曲面で形成し、内部材12の外周面は、厚み方向(基準状態においてZ軸方向)において中央が突出する形状に形成され、外部材11の内周面は厚み方向において中央が凹む形状に形成される。図1に示すように、好ましくは、内部材12の内側に、Z軸のプラス方向に第1のディスプレイD1が設けられ、第1のディスプレイD1は略円形に形成され、Z軸のマイナス方向に第1のディスプレイD1と略同じ形状のバックプレート(図示せず)が設けられており、内部材12、第1のディスプレイD1及びバックプレートは、一緒に車載ロボット100の頭を構成しており、内部材12の内部空間Sを画定しており、該内部空間S内には、回路板、ケーブル等の電気素子が内蔵されている。内部材12の外周面には、第2のディスプレイD2が設けられており、基準状態において、第2のディスプレイD2は内部材12のY軸のプラス方向側に位置している。好ましくは、該第2のディスプレイD2は、内部材12の輪郭形状に合うように設けられるフレキシブルディスプレイである。
【0029】
以下、図2図5を参照しながら車載ロボット100の動力伝達構造を説明する。
【0030】
図1図3を参照しながら車載ロボット100の内部材12が第1の軸A1を中心に回転する構造を説明する。図1は車載ロボット100の正面図であり、図2は車載ロボット100のケース6を省略した側面図であり、図3は車載ロボット100の頭の第1のディスプレイD1を省略した部分断面図である。外部材11の内周面のY軸方向中央位置には、内側に延びる互いに対向する軸部31がそれぞれ設けられており、第1の軸A1は一対の軸部31を通る。内部材12の対応位置に2つの第1の軸受32が設けられ、内部材12は第1の軸受32によって軸部31に回転可能に取付けられる。第1の軸モータ33は内部材12に固定される。軸部31、第1の軸受32及び第1の軸モータ33は一緒に第1の動力伝達ユニット3を構成する。第1の軸モータ33の出力軸(図示せず)が軸部31に接続され、第1の軸モータ33が駆動する時、出力軸の反力によって内部材12を外部材11に対して第1の軸A1を中心に回転させる。好ましくは、第1の軸モータ33の正転及び反転により、内部材12が第1の軸A1を中心に基準状態から回転する角度範囲が-90°~90°であり、これにより人間の上下頷きの動作を模擬する。
【0031】
図1図4を参照しながら車載ロボット100の外部材11が第2の軸A2を中心に回転する構造を説明する。保持部材22は取り付けベース21の下面に固定され、図4に示すように、取り付けベース21は、第2の軸受25によって回転可能に取付対象、例えば車両のダッシュボード200に支持される。本体部1、ベース部材2、第1の動力伝達ユニット3及び後述する第3の動力伝達ユニット5は、一緒に組み立てられて組立体を構成する。取り付けベース21、保持部材22、第2の軸受25及び第2の軸モータ41が一緒に第2の動力伝達ユニット4を構成する。ケース6は、ダッシュボード200の下面に固定され、保持部材22、第2の軸モータ41及び第3の動力伝達ユニット5は、ケース6の内部に位置する。第2の軸モータ41は、保持部材22の下方でケース6に固定されることで、ダッシュボード200に対して固定され、その出力軸(図示せず)が保持部材22に接続される。第2の軸モータ41が駆動する時、組立体は第2の軸A2を中心に回転する。好ましくは、第2の軸モータ41の正転及び反転により、外部材11が第2の軸A2を中心に基準状態から回転する角度範囲が、-175°~175°であり、これにより人間の首を回す動作を模擬する。
【0032】
図5図6を参照しながら車載ロボット100の外部材11が第3の軸A3を中心に回転する構造を説明する。外部材11の最下方には柱状部材13が設けられ、外部材11は柱状部材13によって第3の動力伝達ユニット5に接続される。柱状部材13には案内部材としてのレール部材51が設けられており、レール部材51は保持部材22に設けられることで、ベース部材2に対して固定される。レール部材51は第1のレール511及び第2のレール512を含み、第1のレール511及び第2のレール512はそれぞれ円弧状に形成され、第1のレール511の弧中心と第2のレール512の弧中心が重なっている。好ましくは、第1のレール511及び第2のレール512は外部材11と同心に配置される。第1のレール511及び第2のレール512のレール面が上方に向く。第1のレール511は外部材11と第2のレール512との間に設けられる。第1のレール511及び第2のレール512はそれぞれ第2の軸A2に対して軸対称に配置され、第1のレール511は第2のレール512よりも長さが短い。第1のレール511及び第2のレール512の両端にはそれぞれ位置規制構造(図示せず)が設けられ、後述する第1の移動部材521及び第2の移動部材522の左右摺動の位置を制限する。柱状部材13には移動部材52が設けられており、移動部材52は外部材11に対して固定されレール部材51によって支持され、後述するモータ53の駆動によって、レール部材51に沿って移動可能である。好ましくは、移動部材52は第1の移動部材521及び第2の移動部材522を含み、第1の移動部材521及び第2の移動部材522は円弧状に形成され、外部材11と同心に配置される。第1の移動部材521は第1のレール511に沿って移動し、第2の移動部材522は第2のレール512に沿って移動する。好ましくは、移動部材52には、弧状ティース部523が設けられ、弧状ティース部523は第2の移動部材522の下面に形成される。好ましくは、第1の移動部材521及び第2の移動部材522はそれぞれ柱状部材13に対して対称的に配置され、換言すれば、Z方向から観察する時、柱状部材13は第1の移動部材521及び第2の移動部材522のそれぞれの中点位置に配置される。好ましくは、初期位置に位置する時、本体部1、柱状部材13、レール部材51及び移動部材52は、第2の軸A2に対して軸対称に配置される。好ましくは、図5、6に示すように、第1の移動部材521及び第2の移動部材522の移動方向の両端部にそれぞれホイール部524が固定されており、第1の移動部材521及び第2の移動部材522それぞれのホイール部524は第1のレール511及び第2のレール512のレール面に沿って摺動可能である。保持部材22には第3の軸モータ53が固定されており、第3の軸モータ53の出力軸(図示せず)には中間歯車54が設けられており、中間歯車54は弧状ティース部523と噛み合うことができる。レール部材51、移動部材52、第3のモータ53及び中間歯車54は一緒に第3の動力伝達ユニット5を構成する。第3の軸モータ53は、中間歯車54によって外部材11を第3の軸A3を中心に回転させる。第3の軸モータ53が駆動する時、第1の移動部材521及び第2の移動部材522はそれぞれ第1のレール511及び第2のレール512に沿って摺動可能であることで、外部材11を第3の軸A3を中心に回転させる。好ましくは、第3の軸モータ53の正転及び反転により、外部材11が第3の軸A3を中心に基準状態から回転する角度範囲が-19°~19°であり、これにより人間の頭を横に傾ける動作を模擬する。
【0033】
以下、車載ロボット100の動作を説明する。
【0034】
第1のディスプレイD1は、例えば車両状態、天気、車内温度等の様々な情報を表示するようにしてもよい。第2のディスプレイD2は、例えば、実行する動作に合わせて目の動きを表示する画面など、人間の表情を模擬した画面を表示するようにしてもよい。指令を受けていない時、図1に示すように、車載ロボット100は基準状態であり、第2のディスプレイD2はオフ状態であり、車載ロボット100は第1のディスプレイD1が乗員に面する状態である。指令を受け取った後、制御部24は第1の動力伝達ユニット3、第2の動力伝達ユニット4及び第3の動力伝達ユニット5の少なくとも一方を制御することで、車載ロボット100の頭が、上下頷き動作、頭を横に傾ける動作又は首を回す動作、又はこれら動作の複合動作をするように駆動する。例えば、車載ロボット100は、他の車載のセンサによって音声指令を出した乗員の位置を判断し、第2のディスプレイD2を乗員の位置に面するように回転させることができる。指令の動作完了後、第2のディスプレイD2がオフになると、車載ロボット100は、第1のディスプレイD1が乗員に面する状態に戻る。
(その他の実施例)
【0035】
上記実施形態において、基準状態では、第1の軸、第2の軸及び第3の軸は互いに直交しているが、第3の軸は、第1の軸及び第2の軸から形成される平面と交差してもよく、第1の軸、第2の軸及び第3の軸は、他の角度で交差してもよい。また、第1の軸、第2の軸及び第3の軸は、同一点に交差しなくてもよく、例えば第3の軸は、第1の軸と第2の軸との交点の下方に位置してもよい。また、第1の軸と第2の軸とは、同一の平面内に位置しなくてもよい。
【0036】
上記実施形態において、車載ロボットの外部材は円環状に形成されているが、これに限らず、内部材を第1の軸を中心に回転可能に支持できる構造であれば、例えば必要に応じて多角形、楕円状等の他の形状に形成されてもよく、一部が切り欠かれた環状等の開放形状に形成されもよい。
【0037】
上記実施形態において、Z軸のマイナス方向に円形のバックプレートが設けられているが、これに限らず、必要に応じてZ軸のマイナス方向に第3のディスプレイを別に設けてもよい。また、第1のディスプレイ及び第3のディスプレイの形状は、円形に限らず、必要に応じて楕円形、多角形等の他の形状に形成されてもよい。
【0038】
上記実施形態において、第1の軸モータは内部材に固定されているが、外部材に固定されてもよい。また、第1の軸モータは2つの軸部のそれぞれに対して別々に設けられてもよい。
【0039】
上記実施形態において、第3の動力伝達ユニットは、中間歯車によって外部材を第3の軸を中心に回転させるように駆動するが、これに限らず、外部材を第3の軸を中心に回転させるように駆動できる構造であれば、例えばスペース、レイアウト等に応じてウォームギア動力伝達、チェーン動力伝達、ベルト動力伝達等の他の動力伝達方式を採用してもよい。
【0040】
上記実施形態において、レール部材はベース部材に固定されているが、レール部材を外部材に固定しベース部材にホイール部を設けるようにしてもよい。この場合、ホイール部は案内部材として機能する。
【0041】
上記実施形態において、案内部材として、レール部材が開示されているが、移動部材の移動を案内できる構造であれば、例えば溝、ガイドピン、ガイドローラ等の構造を採用してもよい。
【0042】
上記実施形態において、第3の動力伝達ユニットは2つのレール及び2つの移動部材を備えるが、これに限らず、外部材をスムーズに回転可能にする構造であれば、例えば1つのレール及び1つの移動部材を採用してもよく、3つ以上のレール及び3つ以上の移動部材を採用してもよく、また、レールの数と移動部材の数が異なってもよい。
【0043】
上記実施形態において、第3の動力伝達ユニットは、ホイール部がレールのレール面を摺動する構造を採用しているが、これに限らず、外部材をスムーズに回転可能にする構造であれば、例えばスライダがレール面を摺動する構造を採用してもよく、レールと移動部材の嵌合の代わりに軸受を採用してもよい。
【0044】
上記実施形態において、2つの移動部材はそれぞれのレールの上方に位置しているが、これに限らず、外部材をスムーズに回転可能し外部材を安定的に支持できる構造であれば、例えば、第1の移動部材が第1のレールの下面に設けられるレール面を摺動してもよく、第2の移動部材が第2のレールの下面に設けられるレール面を摺動してもよい。
【0045】
上記実施形態において、第1の移動部材及び第2の移動部材は円弧状に形成されているが、これに限らず、第1の移動部材及び第2の移動部材が第1のレール及び第2のレールの弧中心を中心に回転できる構造であればよい。例えば、第1の移動部材は長尺状に形成されてもよい。
【0046】
上記実施形態において、ケースが設けられているが、これに限らず、スペース、レイアウト等に応じてケースを省略してもよい。この場合、制御部を保持部材に固定し、第2の軸モータを取付対象に固定するようにしてもよい。
【0047】
以下、本実施形態の効果を説明する。
【0048】
本実施形態では、該車載ロボット100は、取付対象200に回転可能に取り付けられたベース部材2と、ベース部材2によって支持された外部材11と、外部材11の内側に位置し、外部材11によって支持された内部材12と、内部材12を外部材11に対して、外部材11によって支持された内部材12の部位を通る第1の軸A1を中心に回転可能にする第1の動力伝達ユニット3と、外部材11を、ベース部材2によって支持された外部材11の部位を通る第2の軸A2を中心に回転可能にする第2の動力伝達ユニット4と、外部材11を、第1の軸A1及び第2の軸A2のいずれに対して非平行な第3の軸A3を中心に回転可能にする第3の動力伝達ユニット5と、を備える。これにより、車載ロボット100は、第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3の3つの軸を中心に三次元で独立的に動作することができ、これら動作を統合することもできるため、人間の頭の動作をリアルに、智能的に模擬できる。
【0049】
本実施形態では、第2の軸A2は第1の軸A1と同一の平面内に位置し前記第1の軸A1に交差し、第3の軸A3は第1の軸A1及び第2の軸A2が位置する平面に交差する。これにより、車載ロボット100が第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3の3つの軸を中心に三次元で動作することを簡単に設定することができ、よりリアルな擬人化効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、第3の軸A3は第1の軸A1と第2の軸A2との交点を通る。これにより、車載ロボット100が第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3の3つの軸を中心に三次元で動作することをより簡単に設定することができ、よりリアルな擬人化効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、第3の動力伝達ユニット5は、ベース部材2に固定された案内部材51と、外部材11に固定された移動部材52とを有し、移動部材52と案内部材51とは相対的に移動可能とすることで、外部材11がベース部材2に対して第3の軸A3を中心に回転するように連動させられる。これにより、簡単な構造により外部材11が第3の軸A3を中心に回転することを案内することができる。
【0052】
本実施形態では、案内部材51はレール部材51を有し、移動部材52はレール部材51のレール面に沿って移動可能である。これにより、レール部材51によって、外部材11がスムーズに第3の軸A3を中心に回転できるように移動部材52を案内し支持することができる。
【0053】
本実施形態では、第3の動力伝達ユニット5は、中間歯車54によって外部材11を第3の軸A3を中心に回転させるように駆動する第3の軸モータ53を有する。これにより、ギア動力伝達によって、外部材11を第3の軸A3を中心に回転させるように確実に駆動することができ、外部材11の回転の角度を正確に制御することができるため、外部材11を所望の姿勢に維持することができる。
【0054】
本実施形態では、移動部材52には、中間歯車54と噛み合う弧状ティース部523が設けられている。これにより、中間歯車54によって移動部材52を直接駆動することができるため、移動部材52を案内部材51に沿って確実に移動させることができる。
【0055】
本実施形態では、レール部材51は複数設けられ、及び/又は移動部材52は複数設けられる。これにより、複数のレール部材51及び移動部材52の組み合わせによって、外部材11が第3の軸A3を中心に回転することを確実に支持し案内することができる。
【0056】
本実施形態では、レール部材51は、それぞれ円弧状とされた第1のレール511及び第2のレール512を有し、第1のレール511は外部材11と第2のレール512との間に位置し、第1のレール511の弧中心と第2のレール512の弧中心が重なっており、移動部材52は第1の移動部材521及び第2の移動部材522を有し、第1の移動部材521は第1のレール511に沿って移動可能であり、第2の移動部材522は第2のレール512に沿って移動可能である。これにより、外部材11を二重に支持し案内することができるため、一方のレール部材51及び移動部材52の間の嵌合不良による外部材11の意図しない動作を回避することができる。
【0057】
本実施形態では、移動部材52は、移動部材52の移動方向の両端部に設けられたホイール部524及び/又はスライダを有する。これにより、簡単な構造によって、外部材11が第3の軸A3を中心に回転することを案内することができ、移動方向の両端部にホイール部524及び/又はスライダを設けることによって、移動部材52の加工精度及び寸法の要求を低くすることができるため、コストの削減及び軽量化を図ることができる。
【0058】
本実施形態では、内部材12は環状に形成され、該内部材12の内側には、情報を表示する第1のディスプレイD1が設けられている。これにより、外観性を向上させ、より多くの情報を表示できるように表示面積を大きくすることができる。
【0059】
本実施形態では、内部材12の外周面には、内部材12の外周面の一部として構成される第2のディスプレイD2が設けられている。これにより、人間の頭の行為をリアルに模擬することができるため、擬人性及び智能性を向上させることができ、より良いユーザーエクスペリエンスを図ることができる。
【0060】
本実施形態では、第2のディスプレイD2は表情を模擬した画像を表示する。これにより、擬人性及び智能性を向上させることができ、より良いユーザーエクスペリエンスを図ることができる。
【0061】
本実施形態では、外部材11及び内部材12は円環状に形成される。これにより、車載ロボット100の構造を簡素化し、良好な擬人性を図ることができ、より良いユーザーエクスペリエンスを図ることができる。
【0062】
本実施形態では、外部材11及び内部材12が第1の動力伝達ユニット3~第3の動力伝達ユニット5によって駆動されず、初期位置にある基準状態において、第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3は互いに直交し、内部材12が第1の軸A1を中心に基準状態から回転する角度範囲は-90°~90°であり、及び/又は外部材11が第2の軸A2を中心に基準状態から回転する角度は-175°~175°であり、及び/又は外部材11が第3の軸A3を中心に基準状態から回転する角度は-19°~19°である。これにより、車載ロボット100が第1の軸A1、第2の軸A2及び第3の軸A3の3つの軸を中心に三次元で動作することをより簡単に設定することができ、よりリアルな擬人化効果を図ることができ、人間の頭の上下頷き動作、首を回す動作、頭を横に傾ける動作及びこれら動作の複合動作をよりリアルに、智能的に模擬することができるため、擬人性及び智能性を向上させ、より良いユーザーエクスペリエンスを図ることができ、車載ロボット100の回転の時間及びストロークを節約することができる。
【0063】
本実施形態では、外部材11は、内側に延びる互いに対向する一対の軸部31を有し、内部材12は一対の軸部31によって支持され、第1の軸A1は一対の軸部31を通り、第1の動力伝達ユニット3は、内部材12又は外部材11に取り付けられた第1の軸モータ33を有し、内部材12が第1の軸モータ33の駆動によって一対の軸部31を中心に回転可能である。これにより、簡単な構造によって車載ロボット100を第1の軸A1を中心に回転させることができ、車載ロボット100のコンパクト化を図ることができる。
【0064】
第2の動力伝達ユニット4は、取付対象に対して固定された第2の軸モータを有し、ベース部材2、外部材11、内部材12、第1の動力伝達ユニット3及び第3の動力伝達ユニット5が第2の軸モータの駆動によって、第2の軸A2を中心に一体に回転可能である。これにより、簡単な構造によって、車載ロボット100を第2の軸A2を中心に回転させることができ、車載ロボット100のコンパクト化を図ることができる。
【0065】
上記の実施形態は単なる例示であり、本発明を限定することを意図するものではないと理解すべきである。当業者は、本発明の教示の下で、その主旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態を種々変形して実施可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6