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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241001BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
B62D25/20 E
B60K1/04 Z ZHV
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023551355
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035055
(87)【国際公開番号】W WO2023054076
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021157933
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽考
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】陸川 祐太郎
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/150386(WO,A1)
【文献】特開2017-193299(JP,A)
【文献】特開2017-65490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/15
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータに電力を供給する電池パックを、車両の座席の下方であってフロアパネルより車室内側に備える電動車両であって、
前記フロアパネルの車幅方向の端部に車両前後方向に延在して設けられる左右のサイドシルと、
前記フロアパネルの上面側に車幅方向に延在して両端部がそれぞれ前記左右のサイドシルに接続すると共に、前記電池パックの前側に配設される第1クロスメンバと、
前記フロアパネルの上面側に車幅方向に延在して両端部がそれぞれ前記左右のサイドシルに接続すると共に、前記電池パックの後側に配設される第2クロスメンバと、
前記フロアパネルの下面側に、前記サイドシルの車幅方向内側であって前記電池パックより車幅方向外側に車両前後方向に延在して設けられる左右一対のサイドメンバと
を備え、
前記第1クロスメンバ又は前記第2クロスメンバの少なくとも一方において前記電池パックより車幅方向の外側に延びる部位に、前記第1クロスメンバ又は前記第2クロスメンバの少なくとも一方の両端部を前記電池パック側に変位させる屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記サイドメンバより車幅方向外側に位置して設けられることを特徴とする電動車両。
【請求項7】
前記屈曲部を構成する前記内側屈曲部及び前記外側屈曲部は、曲線状の湾曲形状に形成され、前記第1クロスメンバ又は前記第2クロスメンバの少なくとも一方の基部から端部にかけて緩やかに曲げられる形状であることを特徴とする請求項6に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪を駆動する走行用モータを有する電気自動車やハイブリッド車両のような電動車両においては、走行用モータに電力を供給する駆動バッテリを、乗員室又は荷室についての居住性を損なうことなく搭載空間を確保するために、シートの下方に配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、駆動バッテリが車両のシート下方に配置される例が示されている。特許文献1には、車両の乗員室または荷室についての居住性を損なうことなく、電池パックの搭載量を確保するため、電池パックは、フロントシート下のフロアパネルの下に保持されるとともに、電池パックは、左右一対のシートレール、前シートクロスメンバおよび後シートクロスメンバによる床上フレーム枠の内側と重なる位置に配置されることが示されている。
【0004】
そして、この床上フレーム枠の内側と重なる位置に配置されているため、車体の外周またはフロアパネルの外周から離れた位置に搭載されることによって、前後左右からの衝突により車体の外周またはフロアパネルの外周が変形する場合でも、電池パックがその変形の影響を受け難い。電池パックについて高い衝突安全性を確保できることが示されている。
【0005】
特許文献2には、電池パックが、フロントシートの下方のフロアパネルの下に配置されており、電池パックの筐体は、車幅方向に延びるフレーム部材を有し、このフレーム部材の両端部は、フロア下に配置され車体前後方向に延びて車体骨格部材を形成する左右一対のフロアフレームに締結される固定片によってフロアフレームに支持される構成が示されている。そして、この固定片には屈曲部が形成されて、この屈曲部が、側面衝突時に折れ曲がって衝突エネルギを吸収することが示されている。
【0006】
特許文献3には、バッテリの変形を抑制する車両下部構造が示されている。この車両下部構造は、車両上下方向に見た場合に、バッテリの車両前後方向の前側と後側に配置された第1クロスメンバ、第2クロスメンバと、バッテリの車幅方向の両外側に配置された一対のリヤサイドメンバとにより、バッテリが囲まれる。さらに、車幅方向に見た場合にバッテリの少なくとも一部が一対のリヤサイドメンバと重なり、車両前後方向に見た場合にバッテリの少なくとも一部が第1クロスメンバ及び第2クロスメンバと重なり、バッテリの周囲には、車両の骨格部材となる第1クロスメンバ、第2クロスメンバ及び一対のリヤサイドメンバが存在している構造が示されている。
【0007】
そして、車両の衝突時において、衝突荷重が第1クロスメンバ、第2クロスメンバ、一対のリヤサイドメンバに分散して伝達されることで、第1クロスメンバ、第2クロスメンバ、一対のリヤサイドメンバの変形が抑制され、バッテリが収容部に収容されていない構成に比べて、第1クロスメンバ、第2クロスメンバ、一対のリヤサイドメンバとバッテリとが接触し難くなるので、バッテリの変形を抑制できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-77896号公報
【文献】特開2015-81042号公報
【文献】特開2018-75878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1~3には、電池パックが車両のシート下方に配置されるとともに、電池パックの周囲が、車両の骨格部材である車両前後方向に延在して設けられる左右一対のサイドメンバ、及び車幅方向に延在して設けられる前後のクロスメンバによって囲まれていることによって、高い衝突安全性が確保されることが示されている。
【0010】
しかし、これらサイドメンバ及びクロスメンバによる衝突安全性の確保は、衝突荷重が衝突側とは反対側のサイドメンバ及びクロスメンバに分散して伝達されることで、これら骨格部材の変形が抑制されて電池パックの損傷が防止されるものである。
【0011】
このように、特許文献1~3は、衝突荷重の分散による骨格部材の変形抑制によって電池パックを保護するものであり、衝突荷重によってサイドメンバやクロスメンバの骨格部材の一部を積極的に変形させて衝突エネルギを吸収させて、駆動バッテリを保護することについては記載されていない。
【0012】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、側面衝突時に車両側面からの衝突エネルギを、電池パックに隣接して車幅方向に延在するクロスメンバの変形によって吸収して、電池パックの損傷を防ぐことが可能な電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、走行用モータに電力を供給する電池パックを車両の座席の下方であってフロアパネルより車室内側に備える電動車両であって、前記フロアパネルの車幅方向の端部に車両前後方向に延在して設けられる左右のサイドシルと、前記フロアパネルの上面側に車幅方向に延在して両端部がそれぞれ前記左右のサイドシルに接続すると共に、前記電池パックの前側に配設される第1クロスメンバと、前記フロアパネルの上面側に車幅方向に延在して両端部がそれぞれ前記左右のサイドシルに接続すると共に、前記電池パックの後側に配設される第2クロスメンバと、を備え、前記第1クロスメンバ又は前記第2クロスメンバの少なくとも一方において前記電池パックより車幅方向の外側に延びる部位に、前記第1クロスメンバ又は前記第2クロスメンバの少なくとも一方の両端部を前記電池パック側に変位させる屈曲部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、側面衝突時に車両側面からの衝突エネルギを、電池パックに隣接して車幅方向に延在するクロスメンバの変形によって吸収して、電池パックの損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る電動車両を示し、車両のフロアパネルを上方から見た上平面視図である。
図2図1のA部の拡大図である。
図3図2の部分の斜視図である。
図4図3のB部の拡大図である。
図5】側面衝突時のクロスメンバの変形状態を示す図2の対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、説明中の上下前後左右の方向は、運転席から乗員が前方を見た方向で定義するものとする。図中において、「FR」は前方、「RR」後方、「RH」右方、「UPR」は上方を示す。
【0017】
図1に本発明の一実施形態を示す。図1は、電動車両(以下車両という)1の前席(座席)3の部分の床を構成するフロアパネル5を室内側から見た上平面視図であり、主要な骨格部材及び構成部品だけを示す。
【0018】
図1に示すように、車両1は、車輪を駆動する図示しない走行用モータを備えるとともに、走行用モータに電力を供給する電池パック7を備えている。この電池パック7は、複数のバッテリが容器内に収納されさらに走行用モータへの電力供給に必要な電装機器のインバータ等が設置されて一体となっている。
【0019】
この電池パック7は、図1に示すように上平面視図で略長方形状をしており、長手方向を車幅方向として車両1の中央部分のフロアパネル5上に配置されている。
【0020】
なお、車両1の駆動形態については、2輪駆動車であっても4輪駆動車であってもよく限られるものではない。さらに、車両タイプにおいても乗用車タイプやトラックタイプであってもよく限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、車両1には、フロアパネル5の車幅方向の両端部に車両前後方向に延在し、フロアパネル5から上方に突出している左右一対のサイドシル9が形成されている。
【0022】
また、車両1は、フロアパネル5の上面側に車幅方向に延在して両端部が左右のサイドシル9に接続すると共に、電池パック7の前側に電池パック7に沿って配設される第1シートクロスメンバ(第1クロスメンバ)11と、フロアパネル5の上面側に車幅方向に延在して両端部が左右のサイドシル9に接続すると共に、電池パック7の後側に電池パック7に沿って配設される第2シートクロスメンバ(第2クロスメンバ)13と、を備えている。すなわち、電池パック7は、車室内の第1シートクロスメンバ11と第2シートクロスメンバ13との間に搭載されている。
【0023】
フロアパネル5と、第1シートクロスメンバ11と、第2シートクロスメンバの上面には内装部材のフロアカーペット(不図示)が貼り付けられる。
【0024】
第1シートクロスメンバ11、及び第2シートクロスメンバ13は、図3、4に示すように、室内側に凸なるハット形断面形状を有して、ハット形の開放端側のフランジがフロアパネル5の上面にスポット溶接によって接合されている。
【0025】
また、第1シートクロスメンバ11、及び第2シートクロスメンバ13の上面部には、前席3を車両前後方向にスライド可能に支持する左右のシートレール15を支持するシートレール取付部17が設けられ、ボルトまたはウエルドボルトによって取り付けられる。シートレール15の前側が第1シートクロスメンバ11に取り付けられ、後側が第2シートクロスメンバ13に取り付けられる。
【0026】
また、フロアパネル5の下面側には、サイドシル9の車幅方向内側であって電池パック7より車幅方向外側に車両前後方向に延在して、骨格部材の一部を構成する左右一対のサイドメンバ19が形成されている。左右一対のサイドメンバ19は、室外側に凸なるハット形断面形状を有して、ハット形の開放端側のフランジがフロアパネル5の下面にスポット溶接によって接合されている。
【0027】
図2に示すように、電池パック7は、第1シートクロスメンバ11及び第2シートクロスメンバ13に設けられた電池パック取付部21にボルトまたはウエルドボルトによって取り付けられる。さらに、電池パック7は、図3に示すようにフロアパネル5の前席3の下方側で車幅方向の中央部分に凹状に形成された電池パック収容凹部23の内側に配置されるようになっている。
【0028】
また、図2に示すように、第1シートクロスメンバ11は、車幅方向の中央部を車幅方向に延びるクロスメンバ基部11aと、左右のサイドシル9に接続する部分のクロスメンバ端部11bと、クロスメンバ基部11aとクロスメンバ端部11bとの間のクロスメンバ屈曲部11cと、を有している。
【0029】
クロスメンバ端部11bは、クロスメンバ基部11aより車両前後方向において電池パック7側(後方側)に変位している。また、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pは、第1シートクロスメンバ11の電池パック7より車幅方向の外側に延びる部位に位置されている。
【0030】
このように、第1シートクロスメンバ11は、電池パック7より車幅方向の外側において、クロスメンバ屈曲部11cによって、クロスメンバ端部11bの位置がクロスメンバ基部11aより車両前後方向において電池パック側(後方側)に変位されている。また、第2シートクロスメンバ13は、車幅方向に直線状に延びて左右のサイドシル9に接続されている。
【0031】
なお、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pは、図2示すように、クロスメンバ屈曲部11cを構成する傾斜部11caの車両上方からの上平面視における長さの中央位置をいう。
【0032】
また、このクロスメンバ屈曲部11cについては、第1シートクロスメンバ11に形成した例を説明したが、第2シートクロスメンバ13に形成して、第2シートクロスメンバ13のクロメンバ端部13bの位置を電池パック側(前方側)に変位させてもよく、また、第1シートクロスメンバ11と第2シートクロスメンバ13との両方に設けてもよい。以下に説明する実施形態においても同様である。
【0033】
また、図1~5に示す図は、主に車両の右側部分を示すが、左側についても同様の構造を有している。
【0034】
以上説明した一実施形態によれば、車両の側面衝突時に、車両前後方向から見て、衝突側のサイドシル9が車幅方向内側に侵入してくる。これにより、第1シートクロスメンバ11の衝突側のクロスメンバ端部11bには車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用し、クロスメンバ屈曲部11cが折れ曲がりクロスメンバ端部11bが電池パック7側に近づく。このクロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりによって衝突エネルギが吸収される。
【0035】
また、クロスメンバ屈曲部11cの電池パック7側への折れ曲がりによって電池パック7の車幅方向側がクロスメンバ端部11b側によって保護される。すなわち、クロスメンバ屈曲部11cの曲がりによってクロスメンバ端部11bが電池パック7の車幅方向側の面を覆うように変形するため、車幅方向内側に侵入してくるサイドシル9が直接的に電池パック7の車幅方向側の面に強接触して損傷を与えることを防ぐことができる。
【0036】
さらに、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pが、電池パック7より車幅方向の外側に延びる部位に配置されるので、側面衝突時のクロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりが電池パック7の車幅方向外側で生じる。このため、第1シートクロスメンバ11が仮に直線状の場合には、折れ位置が特定されないことから折れ位置や折れ方向によっては、第1シートクロスメンバ11が電池パック7に強接触して損傷を与える虞があるが、本実施形態ではこのような損傷を防ぐことができる。
【0037】
さらに、クロスメンバ屈曲部11cが、電池パック7の前側に配設される第1シートクロスメンバ11に形成されるので、クロスメンバ端部11bが電池パック7側に変位されることによって、前席3に着座する乗員の足元スペースが拡大されて、居住性が確保される。
【0038】
幾つかの実施形態では、図2に示すように、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pは、サイドシル9の車幅方向内側であって電池パック7の車幅方向外側に車両前後方向に延在して設けられる左右一対のサイドメンバ19より車幅方向外側に位置して設けられている。図2に示すように、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pは、サイドメンバ19のフランジ19aの直ぐ外側に設けられている。
【0039】
このような構成によれば、クロスメンバ屈曲部11cが、電池パック7より車幅方向外側であって、さらに車体の骨格部材であるサイドメンバ19より車幅方向外側に位置して設けられるので。側面衝突時、第1シートクロスメンバ11の衝突側のクロスメンバ端部11bに車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用したとき、クロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりがサイドメンバ19で受け止められるため、クロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりの影響が電池パック7側へ及ぶことを確実に防ぐことができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、図2、3に示すように、クロスメンバ屈曲部11cが形成される第1シートクロスメンバ11には、車幅方向の中央側からクロスメンバ屈曲部11cの位置Pまで、補強部材25が設けられている。
【0041】
補強部材25は、例えば、第1シートクロスメンバ11のハット形断面形状の内側に重なるように金属製のハット形断面形状を有し、補強部材25及び第1シートクロスメンバ11のそれぞれのハット形断面形状の側壁面がスポット溶接で接合される。
【0042】
このような構成によれば、第1シートクロスメンバ11の車幅方向の中央側からクロスメンバ屈曲部11cまで、ハット形断面形状の内側に補強部材25が設けられるので、側面衝突時、第1シートクロスメンバ11の衝突側のクロスメンバ端部11bに車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用したとき、クロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりが第1シートクロスメンバ11の中央側へ拡大するのが防止される。
【0043】
従って、補強部材25のクロスメンバ屈曲部11c側の位置や、中央側の位置によって補強部材25の長さをコントロールすることで、また、補強部材25の板厚をコントロールすることで、クロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりモードを制御でき、折れ曲がりによって第1シートクロスメンバ11やサイドシル9が電池パック7側に入り込んで強接触して損傷を与えることを抑制できる。
【0044】
幾つかの実施形態では、図2~4に示すように、第1シートクロスメンバ11の電池パック7側の側壁面であって、クロスメンバ屈曲部11cの位置Pに対応する位置に、すなわち、補強部材25のクロスメンバ屈曲部11c側の先端部に対応する位置に、凹状の折れビード27が形成されている。
【0045】
折れビード27は、クロスメンバ屈曲部11cを側面衝突時にクロスメンバ端部11bから作用する衝突荷重によって電池パック7側に折り曲げる起点となるように形成されている。また、この折れビード27の位置は、図2に示すように、上平面視においてサイドメンバ19(サイドメンバ19のフランジ19a)の直ぐ外側に形成されている。
【0046】
このような構成によれば、折れビード27が、クロスメンバ屈曲部11cを側面衝突時に電池パック7側に折り曲げる起点となるので、側突時のクロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がり位置及び折れ曲がり方向を確実に制御できる。
【0047】
幾つかの実施形態では、図2に示すように、クロスメンバ屈曲部11cは、上平面視において、第1シートクロスメンバ11のクロスメンバ端部11bを電池パック7側に変位させる傾斜部11caと、傾斜部11caの車幅方向の内側に形成される内側屈曲部11cbと、車幅方向の外側に形成される外側屈曲部11ccと、を有し、内側屈曲部11cbは車幅方向に延びるクロスメンバ基部11aに接続され、外側屈曲部11ccは車幅方向に延びるクロスメンバ端部11bに接続される。
【0048】
このような構成によれば、クロスメンバ屈曲部11cは内側屈曲部11cbと外側屈曲部11ccとを有して、二箇所によって折り曲げ変形が生じるので、衝突エネルギの吸収が確実に行われる。
【0049】
さらに、内側屈曲部11cb及び外側屈曲部11ccは、曲線状の湾曲形状に形成され、クロスメンバ基部11aからクロスメンバ端部11bにかけて緩やかに曲げられる形状を有している。
【0050】
クロスメンバ屈曲部11cが緩やかに曲げられる湾曲形状であるため、側突時の衝突荷重が第1シートクロスメンバ11のクロスメンバ端部11bから車幅方向内側に作用したとき、内側屈曲部11cb及び外側屈曲部11ccでの急激な折れ曲がりが防止されて、クロスメンバ屈曲部11cによる衝突エネルギの吸収が確実に行われる。
【0051】
図5には、側面衝突時の第1シートクロスメンバ11の変形状態を示す。この図5は、図2の側面衝突前の状態に対応する図である。図5に示すように、クロスメンバ屈曲部11c、補強部材25、及び折れビード27の構成を備え、車両の側面衝突時に、例えば、電柱等のポール29との側突時に、電池パック7及びサイドメンバ19の外側で第1シートクロスメンバ11の変形がどのように制御されるかを示す。
【0052】
衝突物のポール29に側突した場合、車両前後方向から見て、衝突側のサイドシル9が車幅方向内側に侵入してくる。これにより、第1シートクロスメンバ11の衝突側のクロスメンバ端部11bには車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用する。このとき、クロスメンバ屈曲部11cが折れビード27を起点として電池パック7側に折れ曲がりクロスメンバ端部11bが電池パック7側に近づく。このクロスメンバ屈曲部11cの折れ曲がりによって衝突エネルギが吸収される。
【0053】
さらに、クロスメンバ屈曲部11cが、電池パック7より車幅方向外側で、且つサイドメンバ19より車幅方向外側に位置している。また、補強部材25が、車幅方向の中央側からクロスメンバ屈曲部11cまで設けられている。また、折れビード27が、クロスメンバ屈曲部11cに対応する第1シートクロスメンバ11の側壁面に形成されている。
【0054】
これらの構成によって、第1シートクロスメンバ11は、電池パック7より車幅方向外側で且つサイドメンバ19より車幅方向外側で、クロスメンバ屈曲部11cの折り曲げの変形が行われるように制御されることが図5に示される。
【符号の説明】
【0055】
1 車両(電動車両)
3 前席(座席)
5 フロアパネル
7 電池パック
9 サイドシル
11 第1シートクロスメンバ(第1クロスメンバ)
11a クロスメンバ基部(基部)
11b クロスメンバ基部(端部)
11c クロスメンバ屈曲部(屈曲部)
11ca 傾斜部
11cb 内側屈曲部
11cc 外側屈曲部
13 第2シートクロスメンバ(第2クロスメンバ)
15 シートレール
17 シートレール取付部
19 サイドメンバ
19a サイドメンバのフランジ
21 電池パック取付部
23 電池パック収容凹部
25 補強部材
27 折れビード
P クロスメンバ屈曲部の位置
図1
図2
図3
図4
図5