(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241001BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/00 N
H05K3/00 K
(21)【出願番号】P 2023568123
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2023007016
(87)【国際公開番号】W WO2024018674
(87)【国際公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022115679
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164952(JP,A)
【文献】特開2014-239186(JP,A)
【文献】特開2018-176355(JP,A)
【文献】特開2015-50369(JP,A)
【文献】特開平4-14284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板に貫通キャビティが設けられており、前記貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部と、壁面が前記厚さ方向に平行な面である鉛直部とを有
し、
前記貫通キャビティを上面視した形状が多角形であり、前記多角形の隅のうちの少なくとも1つ、かつ、前記多角形の隅のみに前記傾斜部が設けられている、基板。
【請求項2】
前記多角形が四角形であり、前記四角形のうちの対向する少なくとも2つの隅に前記傾斜部が設けられている請求項
1に記載の基板。
【請求項3】
前記多角形が四角形であり、前記四角形の4つの隅に前記傾斜部が設けられている請求項
1又は2に記載の基板。
【請求項4】
前記多角形の隅に前記傾斜部が設けられている部分において、前記多角形の隅の曲率半径が30μm以下である、請求項
1又は2に記載の基板。
【請求項5】
前記傾斜部を前記厚さ方向に沿って切断した断面形状において前記傾斜部の底辺の長さが10μm以下である、請求項
1又は2に記載の基板。
【請求項6】
前記樹脂基板は樹脂層を有し、前記樹脂層は樹脂材料とガラスクロスからなる請求項
1又は2に記載の基板。
【請求項7】
前記樹脂材料はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、又はアラミド樹脂である請求項
6に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法及び基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数層形成されたビルドアップ層内に電子部品が内蔵された電子部品内蔵基板の製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献1には、電子部品が内蔵されるキャビティの形成方法として、レーザー加工による方法が開示されている(例えば
図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザー加工によるキャビティの形成は、キャビティの形成に要する加工時間が長いという問題があり、より短時間でキャビティを形成できる方法が望まれている。特許文献1には、キャビティの製造方法として、レーザー加工の他にルーター加工、ドライエッチング、デスミア処理といった方法が挙げられており、これらの方法(レーザー加工を含む)を組み合わせてキャビティを加工することとしてもよいとも記載されている。
【0006】
キャビティをルーター加工で形成すると、レーザー加工よりも短時間でキャビティを形成することができる。一方、ルーター加工であると加工精度が粗いという問題があった。
このようにレーザー加工とルーター加工にはそれぞれ長所と短所があるので、短所を補うために2つの方法を組み合わせて使用することが考えられ、特許文献1にも複数の加工方法を組み合わせることも記載されている。しかしながら、特許文献1には複数の加工方法をどのように組み合わせるのかは記載されておらず、レーザー加工とルーター加工の短所を同時に解決する方法は示されていない。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、貫通キャビティを精度よく、かつ、短時間で形成することができる基板の製造方法、及び、貫通キャビティを有する基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の製造方法は、樹脂基板にルーター加工で貫通キャビティを形成する工程と、前記樹脂基板の一方の主面から前記貫通キャビティの外縁の一部にレーザー光を照射するレーザー加工工程を含む。
【0009】
本発明の基板は、樹脂基板に貫通キャビティが設けられており、前記貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部と、壁面が前記厚さ方向に平行な面である鉛直部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貫通キャビティを精度よく、かつ、短時間で形成することができる基板の製造方法、及び、貫通キャビティを有する基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、基板の製造方法の実施形態の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図1B】
図1Bは、基板の製造方法の実施形態の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図1C】
図1Cは、基板の製造方法の実施形態の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図1D】
図1Dは、基板の製造方法の実施形態の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図1E】
図1Eは、基板の製造方法の実施形態の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図2A】
図2Aは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図2B】
図2Bは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図2C】
図2Cは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図3C】
図3Cは、
図3Aにおける電子部品の上面と貫通キャビティの外縁の位置関係を模式的に示す上面図である。
【
図3D】
図3Dは、
図3Aにおける電子部品の底面と貫通キャビティの外縁の位置関係を模式的に示す上面図である。
【
図4A】
図4Aは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図4B】
図4Bは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図4C】
図4Cは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
【
図5】
図5は、電子部品内蔵基板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6B】
図6Bは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6C】
図6Cは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6D】
図6Dは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6E】
図6Eは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6F】
図6Fは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6G】
図6Gは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6H】
図6Hは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6I】
図6Iは、電子部品内蔵基板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の基板の製造方法及び基板について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
【0014】
図1Aには、貫通キャビティを形成する前の樹脂基板100を示している。
図1Aに示す樹脂基板は100、樹脂層101の両面に銅箔102が設けられた両面銅貼基板である。両面銅貼基板のように導体層が設けられた樹脂基板も、本発明の樹脂基板に含まれる。樹脂基板は片面銅貼り基板でもよく、導体層が設けられておらず樹脂層のみからなる樹脂基板であってもよい。
【0015】
樹脂層101は、樹脂材料とガラスクロスからなることが好ましい。また、樹脂材料はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、又はアラミド樹脂であることが好ましい。
【0016】
図1Bには、樹脂基板にルーター加工で貫通キャビティを形成する工程を途中まで進めた基板を示す。
図1Cには、ルーター加工で貫通キャビティを形成する工程が完了した基板を示す。
【0017】
ルーター加工により貫通キャビティ110が形成される。ルーター加工に使用するドリルビット径は、樹脂基板のサイズ及び貫通キャビティのサイズによって任意に定めることができるが、例えば、φ100μm以上、φ200μm以下であるものを使用することができる。
図1Cには上面視した形状が略長方形である貫通キャビティ110を示している。貫通キャビティ110の4隅には、ルーターの径に対応して曲線となった部分(R部分)がついており、貫通キャビティ110の上面視形状は、4隅がR面取りされた形状の長方形である。
【0018】
図1Dには、貫通キャビティの外縁の一部に対してレーザー加工工程を途中まで進めた基板を示す。
図1Eには、レーザー加工工程が完了した基板を示す。
【0019】
図1Dに示す貫通キャビティ110の左上隅及び
図1Eに示す貫通キャビティ110の4隅には、貫通キャビティの外縁110aのうちの一部にレーザー加工を行った部位を、点線で囲んだレーザー加工部位120として示している。
図1Dの貫通キャビティ110の右上隅には、右上レーザー加工により描かれる線幅を示しており、この線幅はルーター加工におけるルーターの径より小さい。レーザー加工工程では、レーザー加工により貫通キャビティ110の4隅が曲線となった部分(R部分)を切り取って、貫通キャビティ110の4隅が直角又は略直角になるようにする。このようにして形成された貫通キャビティ13(
図1E参照)は、上面視した形状が長方形となる。上面視した形状が長方形である貫通キャビティを形成する際に、全てをレーザー加工で行うと時間がかかるが、レーザー加工を貫通キャビティの外縁のうちの一部に対してのみ行うことにより、レーザー加工に要する時間を短くすることができる。
【0020】
電子部品が内蔵される貫通キャビティの加工精度の良否は、電子部品が内蔵された場合の電子部品の位置決めが良好に行えるかによって評価される。このことから、電子部品の位置決めに関係する箇所の加工精度が良好であれば充分であり、電子部品の位置決めに関係しない箇所の加工精度は重要ではない。そこで、貫通キャビティの外縁のうちの一部の、電子部品の位置決めに関係する部分に対してのみレーザー加工を行うことで、キャビティとしての加工精度は充分に確保することができる。そのため、上記の方法であると、キャビティを精度よく、かつ、短時間で形成することができる。
【0021】
レーザー加工工程で使用するレーザーは特に限定されず、CO2レーザー、YAGレーザー、UVレーザー等を使用することができるが、UVレーザーであることが好ましい。
【0022】
レーザー加工の条件は特に限定されるものではないが、例えば以下の条件とすることができる。
例えば、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部とするレーザー加工の場合は以下の条件とすることができる。
レーザー種:UVレーザー
ビーム強度分布:ガウシアン
ビーム径:φ20μm
発振形態:パルス発振
【0023】
また、壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である鉛直部とするレーザー加工の場合は以下の条件とすることができる。
レーザー種:UVレーザー
ビーム強度分布:トップハット
ビーム径:φ20μm
発振形態:パルス発振
【0024】
レーザー加工を行う位置は、貫通キャビティの外縁の隅であることが好ましく、外縁の隅以外の部分にはレーザー加工を行なわずに、貫通キャビティの外縁の隅のみに対してレーザー加工を行うことが好ましい。
【0025】
レーザー加工前の貫通キャビティを上面視した形状が多角形である場合、貫通キャビティの外縁において多角形の隅の周辺をレーザー加工し、多角形の辺はレーザー加工しないことが好ましい。多角形は四角形であることが好ましく、四角形の4つの隅のみをレーザー加工することが好ましい。
【0026】
本発明の基板の製造方法では、レーザー加工を行った部分を、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部とし、レーザー加工を行わなかった部分を、壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である鉛直部としてもよい。この態様について図面を参照して説明する。
【0027】
図2A、
図2B及び
図2Cは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
図2A、
図2B及び
図2Cは、上面図と、各上面図のF-F線、G-G線、及びH-H線断面図の組み合わせである。
【0028】
図2Aには、レーザー加工前の樹脂基板100を示している。この樹脂基板100は
図1Cに示したものと同じである。
図2Aに示す樹脂基板100では、そのF-F線断面図に示すように、貫通キャビティ110の外縁110aの壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行である鉛直部112となっている。本明細書では、貫通キャビティの壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である部分を鉛直部と呼ぶ。
【0029】
図2B及び
図2Cには、レーザー加工後の基板11を示している。
図2B及び
図2Cには、貫通キャビティ110の外縁110aの一部に対してレーザー加工を行った部位を点線で囲んだレーザー加工部位121として示している。この基板11では、レーザー加工部位121において、貫通キャビティ13の外縁13aの壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部122となっている。本明細書では、貫通キャビティの壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している面である部分を傾斜部と呼ぶ。
【0030】
レーザー加工工程においてレーザーの照射角度を調整することによって、レーザー加工部位において壁面における傾斜部の形成の有無を調整することができる。また、傾斜部の傾きを調整することもできる。樹脂基板の一方の主面からレーザー光を照射する際に、上記主面に直交する向きでレーザー光を照射すると、傾斜部が少し生じる。傾斜部が生じないようにするには、傾斜部が少し生じる角度を考慮して、傾斜部の形成を打ち消すようにレーザー光を樹脂基板の主面から傾けて照射すればよい。また、傾斜部の傾きを大きくするためには、傾斜部が少し生じる角度を考慮して、傾斜部の形成を打ち消す場合と逆の方向に、レーザー光を樹脂基板の主面から傾けて照射すればよい。
また、レーザー加工工程においてビームのビーム強度分布を変更することにより傾斜部の形成の有無を調整することもできる。傾斜部とするためにはガウシアン分布とし、鉛直部とするためにはトップハット分布とする例が挙げられる。
【0031】
図2B及び
図2Cに示す基板は、樹脂基板に貫通キャビティが設けられており、貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部と、壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である鉛直部とを有する基板であり、本発明の基板の一例である。すなわち、本発明の基板の製造方法では本発明の基板を製造することができる。
以下に、本発明の基板について説明する。
【0032】
[基板]
本発明の基板は、樹脂基板に貫通キャビティが設けられており、貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部と、壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である鉛直部とを有する。
【0033】
図3Aは、
図2B及び
図2Cに示す基板に電子部品を収納した形態を模式的に示す上面図及び断面図である。
図3Aは、上面図と、上面図のI-I線断面図の組み合わせである。
【0034】
図3Aに示す基板11の貫通キャビティ13には、電子部品200が収納されている。電子部品200の形状は直方体状であり、電子部品200の上面201及び底面202の形状はともに長方形であり、貫通キャビティ13を上面視した長方形よりも少し小さくなっている。
基板11に収納する電子部品200は特に限定されるものではないが、CPU、メモリ等の半導体部品、コンデンサ(例えば積層セラミックコンデンサ(MLCC))、インダクタ等の受動部品が挙げられる。
【0035】
図3Bは、
図3Aに示す断面図において点線で囲んだ領域Pの拡大断面図である。
図3Cは、
図3Aにおける電子部品の上面と貫通キャビティの外縁の位置関係を模式的に示す上面図である。
図3Dは、
図3Aにおける電子部品の底面と貫通キャビティの外縁の位置関係を模式的に示す上面図である。
【0036】
なお、
図3C及び
図3Dでは、貫通キャビティ110の4隅が曲線となった部分(R部分)があるように描いているが、拡大図であるために曲線部分があるように描いているものであり、拡大図ではない場合(
図3Aの程度)であれば貫通キャビティ110の4隅はほぼ直角として見える。貫通キャビティの隅がこのように小さいR部分を有していても、貫通キャビティの上面視形状は多角形とみなしてよい。
なお、多角形の隅に傾斜部が設けられている部分において、多角形の隅の曲率半径が30μm以下であることが好ましい。このような小さな曲率半径は、ルーター加工により曲線となった部分(R部分)よりは遥かに小さいので、明確に区別される。
また、多角形の隅に傾斜部が設けられている部分において、多角形の隅の曲率半径が10μm以上であることが好ましい。
なお、多角形の隅が傾斜部となっており、曲率半径が上面と底面で異なる場合、貫通キャビティの大きさが大きい方の面(
図3Cに示す位置)で定める。
【0037】
図3Bに示すように、貫通キャビティ13の外縁13aには、壁面が樹脂基板の厚さ方向に傾斜している傾斜部122が存在する。
本発明の基板の製造方法により本発明の基板を製造する場合には、貫通キャビティの外縁にレーザー加工が行われた部位を傾斜部とすることができる。
【0038】
電子部品の位置決めが良好に行われる基板を製造するためには、まず、電子部品を貫通キャビティに収納した場合に電子部品が貫通キャビティの外縁に接触する箇所が生じるような寸法でのルーター加工を行う。ルーター加工後の基板では、電子部品が貫通キャビティの外縁に接触して引っかかるので電子部品を貫通キャビティに収納することができない。
そして、「電子部品が貫通キャビティの外縁に接触する箇所」に対してレーザー加工を行い、樹脂基板の一部を削り取ることによって貫通キャビティに電子部品を収納できるようにする。レーザー加工において傾斜部を設けることにより、電子部品が貫通キャビティに入りやすくなり、かつ、電子部品が貫通キャビティの中でずれにくくなる。すなわち、電子部品の位置決め後の移動を抑えることができる。
そして、レーザー加工を行う箇所である、電子部品が貫通キャビティの外縁に接触する箇所が、貫通キャビティの4隅であることが好ましい。
【0039】
図3Cには電子部品200の上面201と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W1を示しており、
図3Dには、電子部品200の底面202と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W2を示している。最短距離W1及び最短距離W2は傾斜部における電子部品200と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離であり、最短距離W1が最短距離W2よりも大きいこととする。また、
図3C及び
図3Dには、鉛直部112における電子部品200と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W3を示している。
【0040】
貫通キャビティ13の外縁13aに傾斜部122が存在する基板11には、貫通キャビティ13の寸法が大きい面と、小さい面が存在する。
図3Bの上側及び
図3Cに示す面が貫通キャビティ13の寸法が大きい面であり、
図3Bの下側及び
図3Dに示す面が貫通キャビティ13の寸法が小さい面である。電子部品200を貫通キャビティ13に収納する際には、貫通キャビティ13の寸法が大きい面(
図3Bの上側及び
図3Cに示す面)から電子部品200を入れる。この方向から電子部品200を入れると、電子部品200の上面201と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W1は広く、余裕があるので、電子部品200が貫通キャビティ13に入りやすくなる。そして、電子部品200が貫通キャビティ13に収納されたときには、
図3Dに示すように電子部品200の底面202と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W2は狭くなっているので、電子部品200の位置が貫通キャビティ13の中でずれにくくなる。すなわち、電子部品200の位置決めが容易になる。
【0041】
最短距離W2は、鉛直部112における電子部品200と貫通キャビティ13の外縁13aとの最短距離W3よりも小さくなっている。レーザー加工では最短距離W2が最短距離W3よりも小さくなる程度にレーザー加工を行うようにする。このようにレーザー加工する場合、最短距離W2を得るための加工の加工精度に依拠して貫通キャビティ13内での電子部品200の位置決め精度が決定される。最短距離W2はレーザー加工された傾斜部122により得られる寸法であるので、貫通キャビティ13内での電子部品200の位置決め精度が良好になる。
【0042】
また、貫通キャビティ内での電子部品の位置決め精度に関して、回転方向(時計回り及び反時計回り)における位置決め精度も確保されることが好ましい。回転方向における位置決め精度を高めるためには、
図3Dに示す、最短距離W2が得られる面において、貫通キャビティの隅の角の曲率半径が、電子部品を回転させた場合描かれる電子部品の頂点の軌跡の曲率半径よりも小さくなっていることが好ましい。この関係が成り立つ場合、電子部品が貫通キャビティ内で回転しにくく、回転方向における位置決め精度が良好になる。
【0043】
本発明の基板の貫通キャビティの外縁に、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部が設けられている場合に、貫通キャビティに電子部品を収納した電子部品内蔵基板においては、鉛直部における電子部品と貫通キャビティの外縁との最短距離W3よりも、傾斜部における電子部品と貫通キャビティの外縁との最短距離のうち短い方の距離である最短距離W2が小さいことが好ましい。最短距離W3と最短距離W2がこのような関係となっていると、電子部品内蔵基板における電子部品の位置決め精度が高くなる。
【0044】
傾斜部122を樹脂基板の厚さ方向に沿って切断した断面形状において、傾斜部122の底辺の長さが10μm以下であることが好ましい。
図3Bには、傾斜部122の底辺の長さを両矢印Xで示している。この長さが10μm以下であると、傾斜部122における貫通キャビティ13の外縁13aと電子部品200の底面202との最短距離W2、電子部品200の上面201との最短距離W1の差が大きくなり過ぎないので、電子部品200が貫通キャビティ13にちょうど良く収納される。
また、傾斜部122の底辺の長さが1μm以上であることが好ましい。
【0045】
電子部品が貫通キャビティに収納された後には、電子部品と貫通キャビティ壁面の隙間に封止材としての樹脂が充填されるが、電子部品が貫通キャビティにちょうど良く収納されていると、電子部品と貫通キャビティの間の空間の体積が小さく、空間を封止する樹脂の量が少なくなる。樹脂の量が少ないと、樹脂と電子部品の熱膨張係数の差に起因して発生する応力が小さくなる。そのため、基板に電子部品を収納して貫通キャビティを封止材で封止した電子部品内蔵基板における反りが小さくなる。
【0046】
また、電子部品が貫通キャビティにちょうど良く収納されており、貫通キャビティを封止する樹脂の量が少ない場合、貫通キャビティを封止した後に再配線層(RDL)を設けた際に、封止材の上に形成される再配線層に加わる応力を小さくすることができる。そのため、再配線層の信頼性を向上させることができる。
【0047】
貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行な面である鉛直部を有する。
図3Eは、
図3Aに示す上面図のJ-J線断面図である。基板11において、貫通キャビティ13を上面視した形状の隅以外の部分には鉛直部112が設けられている。
電子部品の位置決めを容易にするためには貫通キャビティ13の外縁の一部に傾斜部があればよく、貫通キャビティ13の外縁の全体が傾斜部である必要はない。むしろ、電子部品200を貫通キャビティ13に入れやすくするためには貫通キャビティ13の外縁の全体が傾斜部122ではないほうが好ましいので、貫通キャビティ13の外縁には鉛直部112を有するようにする。
本発明の基板の製造方法により本発明の基板を製造する場合には、ルーター加工により形成され、さらにレーザー加工が行われなかった部位を鉛直部とすることができる。
【0048】
本発明の基板において、貫通キャビティのサイズは、例えば0.5mm×3.0mm以上、3.0mm×3.0mm以下、とすることができる。このサイズの貫通キャビティに収納する電子部品のサイズは、例えば0.4mm×0.2mm以上、2.5mm×2.5mm以下、とすることができる。
なお、貫通キャビティのサイズは、貫通キャビティの寸法が大きい面(
図3Bの上側及び
図3Cに示す面)において定める。
【0049】
これまで説明した基板は、貫通キャビティを上面視した形状が四角形(長方形)であり、四角形の4つの隅に傾斜部が設けられているものである。このような形態であると直方体状の電子部品を収納する場合に適しているが、基板の形状はこのような形態に限定されるものではない。
【0050】
以下に、本発明の基板における貫通キャビティを上面視した形状の好ましい形態と、傾斜部が設けられる位置の好ましい形態の例について説明する。
【0051】
本発明の基板においては、貫通キャビティを上面視した形状が多角形であり、多角形の隅のうちの少なくとも1つに傾斜部が設けられていることが好ましい。
多角形としては、四角形の他に五角形以上の多角形、例えば六角形、八角形、十二角形等が挙げられる。また、四角形の場合には、長方形の他に平行四辺形、ひし形、正方形、台形等であってもよい。また、多角形の隅のうちの少なくとも1つに傾斜部を設けて、当該傾斜部により電子部品の位置決めを容易にするようにしてもよい。
また、貫通キャビティを上面視した形状は、上記の多角形の角を切り落とした(面取りした)形状であってもよい。
また、多角形の隅に傾斜部が設けられる場合、多角形の隅のみに傾斜部が設けられていてもよい。
【0052】
本発明の基板においては、貫通キャビティを上面視した形状が多角形であり、多角形の辺の一部に傾斜部が設けられていてもよい。傾斜部の位置は多角形の隅に限定されるものでなく、多角形の辺に設けられていてもよく、多角形の辺に傾斜部を設けて、当該傾斜部により電子部品の位置決めを容易にするようにしてもよい。
多角形の辺に傾斜部を設ける場合は、当該辺の全体を傾斜部としてもよく、当該辺の一部を傾斜部として、辺としては傾斜部と鉛直部の両方を含むようにしてもよい。
また、傾斜部を多角形の隅と多角形の辺にそれぞれ設けてもよい。
【0053】
本発明の基板においては、多角形が四角形であり、四角形のうちの対向する少なくとも2つの隅に傾斜部が設けられていてもよい。また、基板の製造時において、四角形のうちの対向する少なくとも2つの隅に対してのみレーザー加工が行われてもよい。
この形態について、当該基板を製造する方法も含めて図面を用いて説明する。
【0054】
図4A、
図4B及び
図4Cは、基板の製造方法の実施形態の別の一例を模式的に示す上面図及び断面図である。
図4A、
図4B及び
図4Cは、上面図と、各上面図のK-K線、L-L線、及びM-M線断面図の組み合わせである。
図4B及び
図4Cに示す基板12は同じものであり、断面図を描くための断面線の位置が異なる。
図4D及び
図4Eは、
図4B及び
図4Cに示す基板に電子部品を収納した形態を模式的に示す上面図及び断面図である。
図4D及び
図4Eは、上面図と、各上面図のN-N線、及びO-O線断面図の組み合わせである。
図4D及び
図4Eに示す基板12は同じものであり、断面図を描くための断面線の位置が異なる。
【0055】
図4Aには、レーザー加工前の樹脂基板100を示している。この樹脂基板100は、ルーター加工での加工パターンが
図1C及び
図2Aに示したものとは異なる。
図4Aに示す樹脂基板100では、左上の隅において左上方向により深く削るように加工しており、右下の隅において、右下方向により深く削るように加工している。
図4Aに示す樹脂基板100では、そのK-K線断面図に示すように、貫通キャビティ110の外縁110aの壁面が樹脂基板の厚さ方向に平行である鉛直部112となっている。
【0056】
図4B及び
図4Cには、レーザー加工後の基板12を示している。
図4B及び
図4Cには、貫通キャビティ110の外縁110aの一部に対してレーザー加工を行った部位を点線で囲んだレーザー加工部位121として示している。
レーザー加工部位121は、加工部位が傾斜部122となるようにレーザー加工を行った部位である。
レーザー加工は、貫通キャビティを上面視した形状の四角形のうちの対向する2つの隅である左下及び右上の隅のみに対して行っている。貫通キャビティを上面視した形状の四角形のうちの対向する2つの隅である左上及び右下の隅に対してはレーザー加工を行っていない。
【0057】
傾斜部122は、貫通キャビティ13の上面視形状の四角形(長方形)の対向する2つの隅(左下及び右上)に設けられている。
貫通キャビティ13に電子部品200を収納した際の傾斜部122と電子部品200の位置関係を
図4Eに示している。傾斜部122に沿って電子部品200が収納されるので、電子部品200の位置決めが容易になる。
【0058】
一方、鉛直部112は、貫通キャビティ13の上面視形状の四角形(長方形)の対向する2つの隅(左上及び右下)に設けられている。
この2つの隅については、レーザー加工を行わないため、あらかじめルーター加工において深く削るようにして、電子部品200を収納できるようにしている。
貫通キャビティ13に電子部品200を収納した際の鉛直部112と電子部品200の位置関係を
図4Dに示している。鉛直部112と電子部品200の間には隙間があり、余裕を持って電子部品が収納されている。
【0059】
このように、貫通キャビティを上面視した形状の四角形のうちの対向する少なくとも2つの隅に対してのみレーザー加工を行うことで、レーザー加工の加工時間を短縮することができる。また、2つの隅に対してのみ傾斜部が設けられていても、電子部品の位置決めを容易に行うことができる。
【0060】
本発明の基板に電子部品を収容して、更に必要な配線層を設けることにより、電子部品内蔵基板とすることができる。以下に、本発明の基板の用途例として、電子部品内蔵基板及び電子部品内蔵基板の製造方法の例について説明する。
【0061】
[電子部品内蔵基板]
図5は、電子部品内蔵基板の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示す電子部品内蔵基板300は、これまで説明した基板10の貫通キャビティ13に電子部品200が収納され、貫通キャビティ13の外縁の壁面と電子部品200の間に設けられた封止材30とを有する。
【0062】
図5の上側に示す電子部品200の電極にはビア導体40が接続され、さらに、ビア導体40と接続された、再配線層である第1ビルドアップ層60が設けられている。
第1ビルドアップ層60は、少なくとも1つの絶縁層61と少なくとも1つの配線層62とが交互に積層されている。
【0063】
また、基板10の下側の面である、第1ビルドアップ層60が形成された面とは反対側の面には、第2ビルドアップ層70が設けられている。第2ビルドアップ層70も第1ビルドアップ層60と同様に、少なくとも1つの絶縁層71と少なくとも1つの配線層72とが交互に積層されている。
第1ビルドアップ層60の配線層62と、第2ビルドアップ層70の配線層72はスルーホール80により接続されている。
【0064】
電子部品内蔵基板300において基板10に収納する電子部品200としては、本発明の基板に収納される電子部品として例示した、CPU、メモリ等の半導体部品、コンデンサ(例えば積層セラミックコンデンサ(MLCC))、インダクタ等の受動部品が挙げられる。
【0065】
【0066】
図6Aには貫通キャビティを形成する前の樹脂基板100を示している。
図6Bに示すように、樹脂基板100に対して、本発明の基板の製造方法の手順により貫通キャビティ13を設けて本発明の基板10を得る。基板10を得る工程におけるレーザー加工工程の際に、スルーホール用貫通穴180を設ける。
【0067】
図6Cに示すように、支持基板210の上に基板10を載置し、さらに貫通キャビティ13内に電子部品200を収納する。
【0068】
図6Dに示すように、封止材30となる樹脂を貫通キャビティ13内及びスルーホール用貫通穴180に充填する。また、支持基板210と反対側の面においても封止材30と同じ材料の樹脂層を設けて、貫通キャビティ13内で電子部品200を封止(固定)する。この樹脂層は第2ビルドアップ層の絶縁層71となる。
【0069】
図6Eに示すように、上下反転して支持基板210を剥離し、電子部品200の電極203が形成された面に絶縁層61を設けて、フォトリソグラフィによりビア穴41を形成する。
【0070】
図6Fに示すように、スルーホール用貫通穴180内に充填された封止材30に対して再度レーザー加工により穴をあけてスルーホール用貫通穴180を貫通させる。
【0071】
図6Gに示すように、めっき及びエッチングを行って、配線層62、配線層72及びスルーホール80を形成する。この過程で第1ビルドアップ層60及び第2ビルドアップ層70が形成される。
【0072】
図6Hに示すように、第1ビルドアップ層60の表面にソルダーレジスト層63を、第2ビルドアップ層70の表面にソルダーレジスト層73をそれぞれ形成する。
【0073】
図6Iに示すように、最表面に電極パッド64及び電極パッド74を設ける。
上記工程により、電子部品内蔵基板300が製造される。
本発明の基板を用いると、電子部品の収納時に貫通キャビティ内への電子部品の位置決めを容易に行うことができ、電子部品内蔵基板を効率よく製造することができる。
【0074】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0075】
<1>
樹脂基板にルーター加工で貫通キャビティを形成する工程と、
前記樹脂基板の一方の主面から前記貫通キャビティの外縁のうちの一部にレーザー光を照射するレーザー加工工程を含む、基板の製造方法。
【0076】
<2>
前記ルーター加工に使用するドリルビット径が、φ100μm以上、φ200μm以下である、<1>に記載の基板の製造方法。
【0077】
<3>
前記レーザー加工に使用するレーザーがUVレーザーである<1>又は<2>に記載の基板の製造方法。
【0078】
<4>
樹脂基板に貫通キャビティが設けられており、前記貫通キャビティの外縁には、壁面が樹脂基板の厚さ方向に対して傾斜している傾斜部と、壁面が前記厚さ方向に平行な面である鉛直部とを有する基板。
【0079】
<5>
前記貫通キャビティを上面視した形状が多角形であり、前記多角形の隅のうちの少なくとも1つに前記傾斜部が設けられている<4>に記載の基板。
【0080】
<6>
前記多角形の辺の一部に前記傾斜部が設けられている<5>に記載の基板。
【0081】
<7>
前記多角形が四角形であり、前記四角形のうちの対向する少なくとも2つの隅に前記傾斜部が設けられている<5>又は<6>に記載の基板。
【0082】
<8>
前記多角形が四角形であり、前記四角形の4つの隅に前記傾斜部が設けられている<5>~<7>のいずれか1つに記載の基板。
【0083】
<9>
前記多角形の隅のみに前記傾斜部が設けられている<5>~<8>のいずれか1つに記載の基板。
【0084】
<10>
前記多角形の隅に前記傾斜部が設けられている部分において、前記多角形の隅の曲率半径が30μm以下である、<5>~<8>のいずれか1つに記載の基板。
【0085】
<11>
前記傾斜部を前記厚さ方向に沿って切断した断面形状において前記傾斜部の底辺の長さが10μm以下である、<4>~<10>のいずれか1つに記載の基板。
【0086】
<12>
前記樹脂基板は樹脂層を有し、前記樹脂層は樹脂材料とガラスクロスからなる<4>~<11>のいずれか1つに記載の基板。
【0087】
<13>
前記樹脂材料はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、又はアラミド樹脂である<12>に記載の基板。
【符号の説明】
【0088】
10、11、12 基板
13 貫通キャビティ(レーザー加工後)
13a 貫通キャビティの外縁
30 封止材
40 ビア導体
41 ビア穴
60 第1ビルドアップ層
61 絶縁層
62 配線層
63 ソルダーレジスト層
64 電極パッド
70 第2ビルドアップ層
71 絶縁層
72 配線層
73 ソルダーレジスト層
74 電極パッド
80 スルーホール
100 樹脂基板
101 樹脂層
102 銅箔
110 貫通キャビティ(ルーター加工後)
110a 貫通キャビティの外縁
112 鉛直部
120、121 レーザー加工部位
122 傾斜部
180 スルーホール用貫通穴
200 電子部品
201 電子部品の上面
202 電子部品の底面
203 電子部品の電極
210 支持基板
300 電子部品内蔵基板