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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】伸縮配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241001BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 A
H05K3/28 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023572358
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2022040172
(87)【国際公開番号】W WO2023132119
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2022000247
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 遼
(72)【発明者】
【氏名】勝 勇人
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】小幡 孝義
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-039109(JP,A)
【文献】特開2019-165048(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093069(WO,A1)
【文献】特開2007-335851(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012909(WO,A1)
【文献】特開2006-165389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に積層された伸縮可能な第1配線および第2配線と、を備え、
前記第1配線および前記第2配線は、相互に接続され、
前記本体部における剥離強度は、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい、伸縮配線基板。
【請求項2】
前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度、および、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度の少なくとも1つは、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい、請求項1に記載の伸縮配線基板。
【請求項3】
前記本体部は、互いに積層された複数の部材を含み、
前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度、および、隣り合う2つの前記部材の間の剥離強度の少なくとも1つは、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい、請求項1に記載の伸縮配線基板。
【請求項4】
前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度は、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度と異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮配線基板。
【請求項5】
前記本体部は、伸縮性を有する基材を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮配線基板。
【請求項6】
前記本体部は、防水層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮配線基板。
【請求項7】
前記本体部は、伸縮性を有する基材及び防水層を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置され、
前記防水層は、前記基材と前記第1配線および前記第2配線との間に配置される、請求項に記載の伸縮性配線基板。
【請求項8】
硬質部をさらに備える、請求項5に記載の伸縮配線基板。
【請求項9】
前記硬質部は、前記第1配線と前記第2配線とが相互に接続される部分を覆うとともに、前記基材に接触している、請求項8に記載の伸縮配線基板。
【請求項10】
本体部と、
前記本体部に積層された伸縮可能な第1配線および第2配線と、
空隙部と、を備え、
前記第1配線および前記第2配線は、相互に接続され、
前記空隙部は、前記本体部と前記第1配線の間、および、前記本体部と前記第2配線の間の少なくとも1つに位置する、伸縮配線基板。
【請求項11】
前記本体部は、互いに積層された複数の部材を含み、
前記空隙部は、前記本体部と前記第1配線の間、前記本体部と前記第2配線の間、および、隣り合う2つの前記部材の間の少なくとも1つに位置する、請求項10に記載の伸縮配線基板。
【請求項12】
前記本体部は、伸縮性を有する基材を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置される
請求項10または11に記載の伸縮配線基板。
【請求項13】
前記本体部は、防水層を含む、請求項10または11に記載の伸縮配線基板。
【請求項14】
前記本体部は、伸縮性を有する基材及び防水層を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置され、
前記防水層は、前記基材と前記第1配線および前記第2配線との間に配置される、請求項10に記載の伸縮性配線基板。
【請求項15】
硬質部をさらに備える、請求項13に記載の伸縮配線基板。
【請求項16】
硬質部をさらに備え、
前記本体部は、伸縮性を有する基材及び防水層を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置され、
前記硬質部は、前記第1配線と前記第2配線とが相互に接続される部分を覆うとともに、前記基材に接触している、請求項10に記載の伸縮配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伸縮配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮配線基板としては、特開2019-140292号公報(特許文献1)に記載されたものがある。伸縮配線基板は、伸縮基材の第1面に、第1配線と、第2配線とを有し、第1配線と第2配線とは、接続部を介して電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、伸縮配線基板は、生体などの柔軟性や動きのある対象物に取り付けられる場合があり、多方向からの応力が加わり得る。そのため、第1配線と第2配線との接続部が破断し断線する問題がある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、生体などの柔軟性や動きのある対象物に取り付けられた場合であっても、断線を抑制可能な伸縮配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である伸縮配線基板は、
本体部と、
前記本体部に積層された伸縮可能な第1配線および第2配線と、を備え、
前記第1配線および第2配線は、相互に接続され、
前記本体部における剥離強度は、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい。
【0007】
本明細書において、積層とは、第1配線および第2配線が本体部(以下、「応力緩和部」ともいう)上に配置されている場合のみならず、本体部(応力緩和部)が複数の部材を有し、第1配線および第2配線が、かかる複数の部材間に配置されている場合も含む。
【0008】
また、本明細書において、本体部(応力緩和部)における剥離強度とは、本体部(応力緩和部)と第1配線の間の剥離強度、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の剥離強度、本体部(応力緩和部)が複数の部材を有する場合は、上記の2つに加えて隣り合う2つの部材間の剥離強度をも意味する。
【0009】
前記態様によれば、本体部(応力緩和部)における剥離強度は、第1配線と第2配線の間の剥離強度よりも小さい。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、本体部(応力緩和部)と第1配線の間、本体部(応力緩和部)と第2配線の間、および、本体部(応力緩和部)が複数の部材を有する場合は、隣り合う2つの部材間の少なくとも1つが剥離することで応力が解放され、第1配線と第2配線の剥離が抑制される。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0010】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度、および、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度の少なくとも1つは、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい。
【0011】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)と第1配線の間の剥離強度、および、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線と第2配線の間の剥離強度よりも小さい。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、本体部(応力緩和部)と第1配線の間、および、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の少なくとも1つが剥離することで応力が解放され、第1配線と第2配線の剥離が抑制される。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0012】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記本体部は、互いに積層された複数の部材を含み、
前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度、および、隣り合う2つの前記部材の間の剥離強度の少なくとも1つは、前記第1配線と前記第2配線の間の剥離強度よりも小さい。
【0013】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)は、互いに積層された複数の部材を含み、本体部(応力緩和部)と第1配線の間の剥離強度、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の剥離強度、および、隣り合う2つの前記部材の間の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線と第2配線の間の剥離強度よりも小さい。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、本体部(応力緩和部)と第1配線の間、本体部(応力緩和部)と第2配線の間、および、隣り合う2つの部材の間の少なくとも1つが剥離することで応力が解放され、第1配線と第2配線の剥離が抑制される。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0014】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、前記本体部と前記第1配線の間の剥離強度は、前記本体部と前記第2配線の間の剥離強度と異なる。
【0015】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)と第1配線の間の剥離強度と、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の剥離強度とが異なる。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、第1配線および第2配線のうちのいずれか一方と本体部(応力緩和部)とがまず剥離し、他方と本体部(応力緩和部)との接触は保持される。そのため、基材と配線の剥離を最小限に留め、配線の少なくとも一部を本体部(応力緩和部)により保護できる。また、配線の少なくとも一部と本体部(応力緩和部)とが接触を保持することで、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板の信頼性を維持できる。
【0016】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記本体部は、伸縮性を有する基材を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置される。
【0017】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)は、伸縮性を有する基材を含み、第1配線および第2配線は、基材上に配置される。そのため、伸縮配線基板の伸縮性を保ちつつ、第1配線および第2配線の形状を保持できる。
【0018】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、前記本体部は、防水層を含む。
【0019】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)は防水性を有する防水層を含む。そのため、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板の信頼性を保持できる。
【0020】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、前記基材と前記第1配線および前記第2配線との間に配置される。
【0021】
前記実施形態によれば、基材と配線の間に防水性を有する防水層が配置される。そのため、基材側からの湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板の信頼性を保持できる。
【0022】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、硬質部をさらに備える。
【0023】
前記実施形態によれば、伸縮配線基板は、硬質部を備えるため、外力による伸縮配線基板の過度な変形を抑制できる。
【0024】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記硬質部は、前記第1配線と前記第2配線とが相互に接続される部分を覆うとともに、基材に接触している。
【0025】
前記実施形態によれば、硬質部は、第1配線および第2配線が互いに接続される部分を覆うとともに、基材と接触している。そのため、基材や配線の形状の保持が必要な箇所において、基材や配線の過度な変形を抑制しつつ、湿分の侵入を防ぐことができる。
【0026】
また、本開示の一態様である伸縮配線基板は、
本体部と、
前記本体部に積層された伸縮可能な第1配線および第2配線と、
空隙部と、を備え、
前記第1配線および前記第2配線は、相互に接続される。
【0027】
前記態様によれば、伸縮配線基板は、空隙を有する。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、空隙により応力が吸収されるため、第1配線と第2配線の剥離を抑制できる。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0028】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記空隙部は、前記本体部と前記第1配線の間、および、前記本体部と第2配線の間の少なくとも1つに位置する。
【0029】
前記態様によれば、伸縮配線基板における空隙は、本体部(応力緩和部)と第1配線の間、および、本体部(応力緩和部)と第2配線の間の少なくとも1つに位置する。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、第1配線および第2配線の近傍に位置する空隙により応力が吸収されるため、第1配線と第2配線の剥離を抑制できる。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0030】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記本体部は、互いに積層された複数の部材を含み、
前記空隙部は、前記本体部と前記第1配線の間、前記本体部と前記第2配線の間、および、隣り合う2つの前記部材の間の少なくとも1つに位置する。
【0031】
前記態様によれば、本体部(応力緩和部)は、互いに積層された複数の部材を含み、伸縮配線基板における空隙は、本体部(応力緩和部)と第1配線の間、本体部(応力緩和部)と第2配線の間、および、隣り合う2つの部材間の少なくとも1つに位置する。そのため、伸縮配線基板が曲げられた場合、空隙により応力が吸収されるため、第1配線と第1配線の剥離を抑制できる。したがって、第1配線と第2配線の電気的接続を保持できる。
【0032】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記本体部は、伸縮性を有する基材を含み、
前記第1配線および前記第2配線は前記基材上に配置される。
【0033】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)は、伸縮性を有する基材を含み、第1配線および第2配線は、基材上に配置される。そのため、伸縮配線基板の伸縮性を保ちつつ、第1配線および第2配線の形状を保持できる。
【0034】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、前記本体部は、防水層を含む。
【0035】
前記実施形態によれば、本体部(応力緩和部)は防水性を有する防水層を含む。そのため、伸縮配線基板が空隙を含む場合であっても、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板の信頼性を保持できる。
【0036】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、前記基材と前記第1配線および前記第2配線との間に配置される。
【0037】
前記実施形態によれば、基材と配線の間に防水性を有する防水層が配置される。そのため、基材側からの湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板が空隙を含む場合であっても、伸縮配線基板の信頼性を保持できる。
【0038】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、硬質部をさらに備える。
【0039】
前記実施形態によれば、伸縮配線基板は、硬質部を備えるため、外力による伸縮配線基板の過度な変形を抑制できる。
【0040】
好ましくは、伸縮配線基板の一実施形態では、
前記硬質部は、前記第1配線と前記第2配線とが相互に接続される部分を覆うとともに、基材に接触している。
【0041】
前記実施形態によれば、硬質部は、第1配線および第2配線が互いに接続される部分を覆うとともに、基材と接触している。そのため、基材や配線の形状の保持が必要な箇所において、基材や配線の過度な変形を抑制しつつ、伸縮配線基板が空隙を有する場合であっても、湿分の侵入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0042】
本開示の一態様である伸縮配線基板によれば、生体などの柔軟性や動きのある対象物に取り付けられた場合であっても断線を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】伸縮配線基板の平面図である。
図2図1における部分Aの拡大図であり、伸縮配線基板の第1実施形態を示す平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】伸縮配線基板の第2実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図5】伸縮配線基板の第3実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図6】伸縮配線基板の第4実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図7】伸縮配線基板の第5実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図8】伸縮配線基板の第6実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図9】伸縮配線基板の第7実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図10】伸縮配線基板の第8実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図11】伸縮配線基板の第9実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図12】伸縮配線基板の第9実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図13】伸縮配線基板の第10実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図である。
図14図13のXIV-XIV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示の一態様である伸縮配線基板を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合もある。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、伸縮配線基板の平面図である。図2は、図1における部分Aの拡大図であり、伸縮配線基板の第1実施形態を示す平面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。伸縮配線基板は、例えば、生体に接触させて、生体信号を測定するために用いられる。
【0046】
図1に示すように、伸縮配線基板1は、基材11と、基材11に設けられる第1配線21、第2配線22、第3配線23および第4配線24と、電子部品31とを備える。図1において、第1配線21および第3配線23は、電子部品31に電気的に接続されている。また、第1配線21と第3配線23、第2配線22と第4配線24、第3配線23と第4配線24は、それぞれ、立体的に交差し、複数の配線が立体的に交差する領域には、複数の配線間に絶縁層41が存在している。図2図3には、基材11と第1配線21および第2配線22とを示しており、伸縮配線基板1は、基材11と、基材11に設けられる第1配線21および第2配線22とを備える。基材11は、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)の一例に相当する。
【0047】
基材11は、伸縮性を有する樹脂材料、例えば、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂で形成され、好ましくはウレタン樹脂で形成される。ウレタン樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。スチレン樹脂としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(SBS)が挙げられる。
【0048】
基材11の伸縮率は、50%以上であることが好ましい。前記伸縮率とすることで、伸縮配線基板の生体への追従性が良好になる。基材11のヤング率は、好ましくは100MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。前記ヤング率とすることで、使用者の不快感を抑制できる。基材11の厚さは、例えば0.1~100μmである。
【0049】
基材11は、互いに対向する第1主面111および第2主面112を含む。
【0050】
第1配線21および第2配線22は、導電性材料で形成される。導電性材料には、例えば、銀、銅、ニッケルなどの金属箔を用いてもよく、銀、銅、ニッケルなどの金属粉とエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などのエラストマ系樹脂とからなる混合物を用いてもよい。金属箔の厚さは、好ましくは0.01μm以上10μm以下であり、金属粉の平均粒子径D50は、好ましくは0.01μm以上10μm以下である。金属粉の形状は、球状、扁平状、突起等を有する異形状等であってよい。第1配線21および第2配線22は、伸縮可能であってもよい。第1配線21および第2配線22が伸縮可能であると、生体への追従性が良好になる。
【0051】
第1配線21および第2配線22の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上である。第1配線21および第2配線22の厚さが薄いほど、凹凸が小さくラミネート等が容易である。第1配線21および第2配線22の幅は、好ましくは100μm以上10,000μm以下、より好ましくは200μm以上5,000μm以下である。
【0052】
第1配線21および第2配線22は、第2主面112上に配置され、第2主面112に沿って延在する。第1配線21および第2配線22は、第2主面112に直接接触するようにスクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンスまたは金属箔のエッチングにより形成される。第1配線および第2配線は、図示しない絶縁被覆層で覆われていてもよい。
【0053】
ここで、主面上とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該主面を境界とする基材の外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「主面上」とは主面の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対して「上」には、当該要素と接する直上の位置(on)だけではなく、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置(above)も含む。
また、層上とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該層の主面を境界とする基材の外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「層上」とは層の主面の向きによって定まる相対的な方向である。
【0054】
第1配線21は、第2配線22と接触し、電気的に接続される。第1配線21の一部と第2配線22の一部とは重なっていてもよい。図2、3では、第2配線22の延在方向の一端は、第1配線21の延在方向の一端の上に重なるように配置される。また、図2、3では、第1配線21および第2配線は、直線部から構成されるが、これに限定されず、角部分および曲線部分を有していてもよい。なお、第1配線21と第2配線22とが接触する領域は、上面視で面積が0.03mm以上であることが好ましく、配線の延伸方向における長さが200μm以上であることが好ましい。接触する領域の面積を大きくすることで、接続の信頼性をより高めることができる。
【0055】
基材11と第1配線21の間S1の剥離強度、および、基材11と第2配線22の間S2の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21と第2配線22の間S0の剥離強度よりも小さい。剥離強度は、接触された2つの層を剥離しようとした際の、剥離に対する抵抗力を表し、剥離強度が高いほど、2つの層間が剥離しにくいことを表す。したがって、伸縮配線基板1が曲げられ、第2主面112に直交する方向に応力が加えられた場合、基材11と第1配線21の間S1、および、基材11と第2配線22の間S2の少なくとも1つがまず剥離することで応力が解放され、第1配線21と第2配線22の剥離が抑制される。そのため、第1配線21と第2配線22の電気的接続を保持できる。
【0056】
基材11と第1配線21の間の剥離強度は、JIS K5600-5-6に準拠して測定され得、1以上4以下であることが好ましい。剥離強度の分類が4以下であると、基材11と第1配線21とが剥離することなく、生体の動きに追従できる。また、剥離強度の分類が1以上であると、第2主面112と直交する方向に応力が加えられた場合でも、基材11と第1配線21とがまず剥離することで応力を吸収でき、第1配線21と第2配線22の剥離を抑制できる。したがって、第1配線21と第2配線22の電気的接続を保持できる。
【0057】
第1配線21と第2配線22の間の剥離強度は、0.1N/10mm以上であることが好ましく、0.2N/10mm以上であることがより好ましい。例えば、以下の方法により測定できる。
[第1配線と第2配線の間の剥離強度の測定方法]
樹脂基材上に、第1配線を形成し、第1配線の一部を離型フィルムで被覆する。次いで、第1配線上に、離型フィルムの少なくとも一部を覆うように、第2配線を形成する。離型フィルムを除去し、第1配線および第2配線の幅が10mmとなるように成形して、試験片を作成する。作成した試験片について、剥離速度1mm/sで、180度剥離試験を実施する。
【0058】
基材11と第1配線21の間の剥離強度が、第1配線21と第2配線22の間の剥離強度よりも小さいことは、第1配線21と第2配線22とが接触している領域において、JIS K5600-5-6に規定される剥離試験を実施した場合に、基材11と第1配線21は剥離しているが、第1配線21と第2配線22の接触は維持されていることにより確認できる。
【0059】
基材11と第2配線22の間の剥離強度は、第1配線21と第2配線22の間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112に直交する方向に応力が加えられた場合、まず基材11と第2配線22とが剥離することで応力が解放され、第1配線21と第2配線22の剥離が抑制される。したがって、第1配線21と第2配線22の電気的接続を保持できる。
【0060】
基材11と第2配線22の間の剥離強度は、JIS K5600-5-6に準拠して測定され得、1以上4以下であることが好ましい。剥離強度の分類が4以下であると、基材11と第2配線22とが剥離することなく、生体の動きに追従できる。また、剥離強度の分類が1以上であると、第2主面112と直交する方向に応力が加えられた場合でも、基材11と第2配線22とがまず剥離することで応力を吸収でき、第1配線21と第2配線22の剥離を抑制できる。したがって、第1配線21と第2配線22の電気的接続を保持できる。
【0061】
基材11と第2配線22の間の剥離強度が、第1配線21と第2配線22の間の剥離強度よりも小さいことは、第1配線21と第2配線22とが接触している領域において、JIS K5600-5-6に規定される剥離試験を実施した場合に、基材11と第2配線22は剥離しているが、第1配線21と第2配線22の接触は維持されていることにより確認できる。
【0062】
基材11と第1配線21の間の剥離強度は、基材11と第2配線22の間の剥離強度と異なることが好ましい。このため、第2主面112に直交する方向に応力が加えられた場合、第1配線21および第2配線22のうちのいずれか一方と基材11とがまず剥離して基材と配線の剥離を最小限に留め、他方と基材11との接触は保持される。そのため、配線の少なくとも一部は、基材11により保護される。また、配線の少なくとも一部と基材11とが接触を保持することで、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1の信頼性を維持できる。
【0063】
例えば、基材11と第2配線22の間の剥離強度は、基材11と第1配線21の間の剥離強度よりも小さい。
【0064】
基材11と第1配線21または第2配線22との間の剥離強度は、基材11上に第1配線21または第2配線22を形成する前に、基材11に紫外線を照射すること、または、第2主面112に接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。
【0065】
本実施形態において、基材11と第1配線21および基材11と第2配線22は、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11と第1配線21の間および基材11と第2配線22の間のいずれかは、互いに剥離していてもよい。この場合、剥離している個所において、基材11と第1配線21の間および基材11と第2配線22の間の少なくとも1つに空隙が存在していてもよい。
【0066】
(第2実施形態)
図4は、伸縮配線基板の第2実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第2実施形態は、第1実施形態とは、さらに、バッファ層を備え、第1配線および第2配線は、バッファ層の上に配置される点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図4に示すように、第2実施形態の伸縮配線基板1Aは、基材11Aの第2主面112A上に積層され、第3主面121および第4主面122を有するバッファ層12を備える。第1配線21Aおよび第2配線22Aは、第4主面122上に配置され、第4主面122に沿って延在する。これにより、バッファ層12により第1配線21Aおよび第2配線22Aを保護できる。基材11Aおよびバッファ層12は、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する複数の部材の一例に相当する。
【0068】
バッファ層12は、樹脂材料、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂またはポリイミド樹脂で形成され、ガラス繊維、紙繊維を含んでいてもよい。
【0069】
バッファ層12は、伸縮可能であってもよい。バッファ層12の伸縮率は、5%~であることが好ましい。これにより、生体に追随しやすくなる。バッファ層12のヤング率は好ましくは100~1000MPaである。これにより、基材11Aとバッファ層12との剥離のしやすさを適度な範囲に調整できる。バッファ層12の厚さは、例えば5~30μmである。
【0070】
バッファ層12は、防水性を有することが好ましい。これにより、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Aの信頼性を維持できる。本明細書中において、バッファ層12が、本体部(応力緩和部)が有する複数の部材に該当するものであって、防水性を有する場合、かかるバッファ層12は、特許請求の範囲に記載される防水層の一例に相当する。
【0071】
バッファ層12は、互いに対向する第3主面121および第4主面122を含む。
【0072】
基材11Aとバッファ層12の間の剥離強度S3、バッファ層12と第1配線21Aの間S4の剥離強度、および、バッファ層12と第2配線21Aの間S5の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Aと第2配線22Aの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122に直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Aとバッファ層12の間S3、バッファ層12と第1配線21Aの間S4、および、バッファ層12と第2配線22Aの間S5の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Aと第2配線22Aの接触は保護され得る。したがって、バッファ層12により第1配線21Aおよび第2配線22Aを保護し、第1配線21Aと第2配線22Aの電気的接続を保持できる。
【0073】
バッファ層12と第2配線22Aの間の剥離強度は、第1配線21Aと第2配線22Aの間の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122に直交する方向に応力が加えられた場合、バッファ層12と第2配線22Aとが剥離することで応力が解放され、第1配線21Aと第2配線22Aの剥離が抑制される。したがって、第1配線21Aと第2配線22Aの電気的接続を保持できる。
【0074】
基材11Aとバッファ層12の間の剥離強度は、JIS K 5600-5-6に準拠して測定され得、1以上4以下であることが好ましい。剥離強度の分類が4以下であると、基材11Aとバッファ層12とが剥離することなく、生体の動きに追従できる。また、剥離強度の分類が1以上であると、第4主面122と直交する方向に応力が加えられた場合でも、基材11Aとバッファ層12とがまず剥離することで応力を吸収でき、第1配線21Aと第2配線Aの剥離を抑制できる。
【0075】
基材11Aとバッファ層12との間の剥離強度は、基材11A上にバッファ層12を形成する前に、基材11Aに紫外線を照射すること、または、第2主面112Aに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。
【0076】
バッファ層12と第1配線21の間の剥離強度は、バッファ層12と第2配線22の間の剥離強度と異なる。このため、伸縮配線基板が曲げられ、第4主面122Aに直交する方向に応力が加えられた場合、第1配線21Aおよび第2配線22Aのうちのいずれか一方とバッファ層12とがまず剥離してバッファ層12と配線の剥離を最小限に留め、他方とバッファ層12との接触は保持される。そのため、配線の少なくとも一部は、バッファ層12により保護される。また、配線の少なくとも一部とバッファ層12とが接触を保持することで、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1の信頼性を維持できる。
【0077】
本実施形態において、基材11Aとバッファ層12およびバッファ層12と第1配線21Aは、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Aとバッファ層12の間およびバッファ層12と第1配線21Aの間のいずれかは、互いに剥離していてもよい。この場合、剥離している個所において、基材11Aとバッファ層12の間およびバッファ層12と第1配線21Aの間のいずれか1つに空隙が存在していてもよい。その他の構成の効果は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0078】
(第3実施形態)
図5は、伸縮配線基板の第3実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第3実施形態は、第1実施形態とは、さらに、第1カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図5に示すように、第3実施形態の伸縮配線基板1Bは、さらに、第2主面112B上に積層される第1カバー層13を備える。第1配線21Bおよび第2配線22Bは、基材11Bと第1カバー層13の間に配置される。これにより、第1配線21Bおよび第2配線22Bを保護できる。基材11Bおよび第1カバー層13は、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0080】
第1カバー層13は、樹脂材料、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂またはポリイミド樹脂で形成される。
【0081】
第1カバー層13は、伸縮可能であってもよい。第1カバー層13の伸縮率は、5%~であることが好ましい。これにより、生体に追随しやすくなる。第1カバー層13のヤング率は、好ましくは10~1000MPaである。これにより、第1配線21Bおよび第2配線22Bを保護しやすくなる。第1カバー層13の厚さは、例えば5~30μmである。
【0082】
第1カバー層13は、防水性を有することが好ましい。これにより、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Bの信頼性を維持できる。
【0083】
第1配線21Bの延在方向に直交する断面において、第1カバー層13は、第1配線21Bの周囲のうち、第1配線21Bと基材11Bとが接していない部分を覆っていることが好ましい。
【0084】
基材11Bと第1配線21Bの間S6の剥離強度、基材11Bと第2配線22Bの間S7の剥離強度、第1配線21Bと第1カバー層13の間S8の剥離強度、および、第2配線22Bと第1カバー層13の間S9の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Bと第2配線22Bの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Bに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Bと第1配線21Bの間S6、基材11Bと第2配線22Bの間S7、第1配線21Bと第1カバー層13の間S8、および、第2配線22Bと第1カバー層13の間S9の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Bと第2配線22Bの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13により第1配線21Bおよび第2配線22Bを保護し、第1配線21Bと第2配線22Bの電気的接続を保持できる。
【0085】
第1カバー層13と第2配線22Bの間の剥離強度は、第1配線21Bと第2配線22Bの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Bに直交する方向に応力が加えられた場合、第1カバー層13と第2配線22Bとが剥離し、第1配線21Bと第2配線22Bの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13により第1配線21Bおよび第2配線22Bを保護し、第1配線21Bと第2配線22Bの電気的接続を保持できる。
【0086】
第1カバー層13と第1配線21Bの間の剥離強度は、第1カバー層13と第2配線22Bの間の剥離強度と異なる。このため、第2主面112Bに直交する方向に応力が加えられた場合、第1配線21Bおよび第2配線22Bのうちのいずれか一方と第1カバー層13とがまず剥離し、他方と第1カバー層13との接触は保持される。そのため、配線の少なくとも一部は、第1カバー層13により保護される。したがって、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Bの信頼性を維持できる。
【0087】
基材11Bと第1カバー層13の間の剥離強度は、第1配線21Bと第2配線22Bの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Bに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Bと第1カバー層13とがまず剥離して、第1カバー層13と配線の剥離を最小限に留め、第1配線21Bと第2配線22Bの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13により第1配線21Bおよび第2配線22Bを保護し、第1配線21Bと第2配線22Bの電気的接続を保持できる。
【0088】
第1カバー層13と第1配線21Bの間の剥離強度、第1カバー層13と第2配線22Bの間の剥離強度、および、基材11Bと第1カバー層13の間の剥離強度は、いずれも、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。第1カバー層13と第1配線21Bの間の剥離強度および第1カバー層13と第2配線22Bの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。基材11Bと第1カバー層13の間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。
【0089】
第1カバー層13と第1配線21Bの間の剥離強度、第1カバー層13と第2配線22Bの間の剥離強度、および基材11Bと第1カバー層13の間の剥離強度は、基材11B、第1配線21Bおよび第2配線22B上に第1カバー層13を形成する前に、これらに紫外線を照射すること、または、これらに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0090】
本実施形態において、基材11Bと第1配線21Bおよび第1配線21Bと第1カバー層は、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Bと第1配線21Bの間および第1配線21Bと第1カバー層の間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Bと第1配線21Bの間および第1配線21Bと第1カバー層の間の少なくとも1つに、空隙が存在していてもよい。
【0091】
(第4実施形態)
図6は、伸縮配線基板の第4実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第4実施形態は、第2実施形態とは、さらに第1カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図6に示すように、第4実施形態の伸縮配線基板1Cは、さらに、第4主面122C上に積層される第1カバー層13Cを備える。第1配線21Cおよび第2配線22Cは、基材11Cと第1カバー層13Cの間に配置される。これにより、第1配線21Cおよび第2配線22Cを保護できる。基材11C、バッファ層12Cおよび第1カバー層13Cは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0093】
第1カバー層13Cの構成材料、伸縮率、ヤング率、厚さ等の特性、および第1カバー層13Cと第1配線21Cまたは第2配線22Cの間の剥離強度に関する構成は、第3実施形態における構成と同じである。
【0094】
第1配線21Cの延在方向に直交する断面において、第1カバー層13Cは、第1配線21Cの周囲のうち、第1配線21Cとバッファ層12Cとが接していない部分を覆っていることが好ましい。
【0095】
基材11Cとバッファ層12Cの間S10の剥離強度、バッファ層12Cと第1配線21Cの間S11の剥離強度、バッファ層12Cと第2配線22Cの間S12の剥離強度、第1配線21Cと第1カバー層13Cの間S13の剥離強度、および、第2配線22Cと第1カバー層13Cの間S14の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Cと第2配線22Cの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122Cに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Cとバッファ層12Cの間S10、バッファ層12Cと第1配線21Cの間S11、バッファ層12Cと第2配線22Cの間S12、第1配線21Cと第1カバー層13Cの間S13、および、第2配線22Cと第1カバー層13Cの間S14の少なくとも1つが剥離し、第1配線21Cと第2配線22Cの間S0の接触は維持される。したがって、バッファ層12C、第1カバー層13Cにより第1配線21Cおよび第2配線22Cを保護し、第1配線21Cと第2配線22Cの電気的接続を保持できる。
【0096】
バッファ層12Cと第1カバー層13Cの間の剥離強度は、第1配線21Cと第2配線22Cの間の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122Cに直交する方向に応力が加えられた場合、バッファ層12Cと第1カバー層13Cとが剥離し、第1配線21Cと第2配線22Cの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13Cにより第1配線21Cおよび第2配線22Cを保護し、第1配線21Cと第2配線22Cの電気的接続を保持できる。
【0097】
バッファ層12Cと第1カバー層13Cの間の剥離強度は、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。バッファ層12Cと第1カバー層13Cの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。
【0098】
バッファ層12Cと第1カバー層13Cの間の剥離強度は、バッファ層12C上に第1カバー層13Cを形成する前に、バッファ層12Cに紫外線を照射すること、または、バッファ層12Cに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第2実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0099】
本実施形態において、基材11Cとバッファ層12C、バッファ層12Cと第1配線21Cおよび第1配線21Cと第1カバー層13Cは、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Cとバッファ層12Cの間、バッファ層12Cと第1配線21Cの間および第1配線21Cと第1カバー層13Cの間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Cとバッファ層12Cの間、バッファ層12Cと第1配線21Cの間および第1配線21Cと第1カバー層13Cの間の少なくとも1つには空隙が存在していてもよい。
【0100】
(第5実施形態)
図7は、伸縮配線基板の第5実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第5実施形態は、第3実施形態とは、さらに、第2カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第3実施形態と同じ構成であり、第3実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図7に示すように、第5実施形態の伸縮配線基板1Dは、さらに、第2主面112D上に積層される第2カバー層14を備える。第1配線21Dおよび第2配線22Dは、基材11Dと第2カバー層14の間に配置される。これにより、第1配線21Dおよび第2配線22Dをさらに保護できる。基材11Dおよび第2カバー層14は、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0102】
第2カバー層14は、伸縮性を有する樹脂材料、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂で形成され、好ましくはウレタン樹脂で形成される。ウレタン樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。スチレン樹脂としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(SBS)が挙げられる。また、第2カバー層14は、第1カバー層と同様の部材であってもよい。
【0103】
第2カバー層14は、難伸縮性であることが好ましく、第2カバー層14の伸縮率は、100%以下であることが好ましい。これにより、第1配線21Dおよび第2配線22Dを適度に固定できる。第2カバー層14のヤング率は、100MPa以上であり、10000MPa以下であることが好ましい。これにより、第1配線21Dおよび第2配線22Dをさらに保護できる。第2カバー層14の厚さは、例えば10~50μmである。
【0104】
第2カバー層14は、防水性を有することが好ましい。これにより、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Dの信頼性を維持できる。
【0105】
第1配線21Dの延在方向に直交する断面において、第2カバー層14は、第1配線21Dの周囲のうち、第1配線21Dと基材11Dとが接していない部分を覆っていることが好ましい。
【0106】
基材11Dと第1配線21Dの間S15の剥離強度、基材11Dと第2配線22Dの間S16の剥離強度、第1配線21Dと第2カバー層14の間S17の剥離強度、および、第2配線22Dと第2カバー層14の間S18の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Dと第2配線22Dの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面12Dに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Dと第1配線21Dの間S15、基材11Dと第2配線22Dの間S16、第1配線21Dと第2カバー層14の間S17、および、第2配線22Dと第2カバー層14の間S18の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Dと第2配線22Dの剥離が抑制される。したがって、第2カバー層14により第1配線21Dおよび第2配線22Dを保護し、第1配線21Dと第2配線22Dの電気的接続を保持できる。
【0107】
基材11Dと第1配線21Dまたは第2配線22Dの間の剥離強度は、基材11Dと第1カバー層14の間の剥離強度よりも小さいことが好ましい。これにより、第2主面112Dに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Dと第1配線21Dまたは第2配線22Dが剥離し、基材11Dと第1カバー層14の接触が維持され、第1配線21Dおよび第2配線22Dを保護できる。
【0108】
第2カバー層14と第2配線22D間の剥離強度は、第1配線21Dと第2配線22Dの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Dに直交する方向に応力が加えられた場合、第2カバー層14と第2配線22Dとが剥離し、第1配線21Dと第2配線22Dの剥離が抑制される。したがって、第2カバー層14により第1配線21Dおよび第2配線22Dを保護し、第1配線21Dと第2配線22Dの電気的接続を保持できる。
【0109】
第2カバー層14と第1配線21Dの間の剥離強度は、第2カバー層14と第2配線22Dの間の剥離強度と異なる。このため、第2主面112Dに直交する方向に応力が加えられた場合、第1配線21Dおよび第2配線22Dのうちの少なくとも1つと第2カバー層14とがまず剥離して、第2カバー層14と配線の剥離を最小限に留め、他方と第2カバー層14との接触は保持される。そのため、配線の少なくとも一部は、第2カバー層14により保護される。したがって、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Dの信頼性を維持できる。
【0110】
基材11Dと第2カバー層14の間の剥離強度は、第1配線21Dと第2配線22Dの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Dに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Dと第2カバー層14とが剥離し、第1配線21Dと第2配線22Dの剥離が抑制される。したがって、第2カバー層14により第1配線21Dおよび第2配線22Dを保護し、第1配線21Dと第2配線22Dの電気的接続を保持できる。
【0111】
第2カバー層14と第1配線21Dの間の剥離強度、第2カバー層14と第2配線22Dの間の剥離強度、および、基材11Dと第1カバー層14の間の剥離強度は、いずれも、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。第2カバー層14と第1配線21Dの間の剥離強度および第2カバー層14と第2配線22Dの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。基材11Dと第2カバー層14の間の剥離強度は、4以上4以下であることが好ましい。
【0112】
第2カバー層14と第1配線21Dの間の剥離強度、第2カバー層14と第2配線22Dの間の剥離強度、および基材11Dと第2カバー層14の間の剥離強度は、基材11D、第1配線21Dおよび第2配線22D上に第2カバー層14を形成する前に、これらに紫外線を照射すること、または、これらに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0113】
本実施形態において、基材11Dと第1配線21Dおよび第1配線21Dと第2カバー層14は、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Dと第1配線21Dの間および第1配線21Dと第2カバー層14の間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Dと第1配線21Dの間および第1配線21Dと第2カバー層14の間のいずれかには空隙が存在していてもよい。
【0114】
(第6実施形態)
図8は、伸縮配線基板の第6実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第6実施形態は、第2実施形態とは、さらに第2カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0115】
図8に示すように、第6実施形態の伸縮配線基板1Eは、さらに、第4主面122E上に積層される第2カバー層14Eを備える。第1配線21Eおよび第2配線22Eは、基材11Eと第2カバー層14Eの間に配置される。これにより、第1配線21Eおよび第2配線22Eを保護できる。基材11E、バッファ層12E、第2カバー層14Eは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0116】
第2カバー層14Eの構成材料、伸縮率、ヤング率、厚さ等の特性、および第2カバー層14Eと第1配線21Eまたは第2配線22Eの間の剥離強度に関する構成は、第5実施形態における構成と同じである。
【0117】
第1配線21Eの延在方向に直交する断面において、第2カバー層14Eは、第1配線21Eの周囲のうち、第1配線21Eとバッファ層12Eとが接していない部分を覆っていることが好ましい。
【0118】
基材11Eとバッファ層12Eの間S19の剥離強度、バッファ層12Eと第1配線21Eの間S20の剥離強度、バッファ層12Eと第2配線22Eの間S21の剥離強度、第1配線21Eと第2カバー層14Eの間S22の剥離強度、および、第2配線22Eと第2カバー層14Eの間S23の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Eと第2配線22Eの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122Eに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Eとバッファ層12Eの間S19、バッファ層12Eと第1配線21Eの間S20、バッファ層12Eと第2配線22Eの間S21、第1配線21Eと第2カバー層14Eの間S22、および、第2配線22Eと第2カバー層14Eの間S23の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Eと第2配線22Eの剥離が抑制される。したがって、バッファ層12E、び第2カバー層14Eにより第1配線21Eおよび第2配線22Eを保護するとともに、電子部品等、基材や配線の形状の保持が必要な箇所において、基材は配線の過度な変形を抑制できる。
【0119】
バッファ層12Eと第2カバー層14Eの間の剥離強度は、第1配線21Eと第2配線22Eの間の剥離強度よりも小さい。このため、第4主面122Eに直交する方向に応力が加えられた場合、バッファ層12Eと第2カバー層14Eとが剥離し、第1配線21Eと第2配線22Eの剥離が抑制される。したがって、第2カバー層14Eにより第1配線21Eおよび第2配線22Eを保護し、第1配線21Eと第2配線22Eの電気的接続を保持できる。
【0120】
バッファ層12Eと第1配線21Eまたは第2配線22Eの間の剥離強度は、バッファ層12Eと第1カバー層14Eの間の剥離強度よりも小さいことが好ましい。これにより、第4主面122Eに直交する方向に応力が加えられた場合、バッファ層12Eと第1配線21Eまたは第2配線22Eが剥離し、バッファ層12Eと第1カバー層14Eの接触が維持され、第1配線21Eおよび第2配線22Eを保護できる。
【0121】
バッファ層12Eと第2カバー層14Eの間の剥離強度は、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。バッファ層12Eと第2カバー層14Eの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。
【0122】
バッファ層12Eと第2カバー層14Eの間の剥離強度は、バッファ層12E上に第2カバー層14Eを形成する前に、バッファ層12Eに紫外線を照射すること、または、バッファ層12Eに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第2実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0123】
本実施形態において、基材11Eとバッファ層12E、バッファ層12Eと第1配線21Eおよび第1配線21Eと第2カバー層14は、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Eとバッファ層12Eの間、バッファ層12Eと第1配線21Eの間および第1配線21Eと第2カバー層14の間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Eと第1配線バッファ層12Eの間、バッファ層12Eと第1配線21Eの間および第1配線21Eと第2カバー層14の間の少なくとも1つに空隙が存在していてもよい。
【0124】
(第7実施形態)
図9は、伸縮配線基板の第7実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第7実施形態は、第3実施形態とは、さらに第2カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第3実施形態と同じ構成であり、第3実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0125】
図9に示すように、第7実施形態の伸縮配線基板1Fは、さらに、第2主面112F上に積層される第1カバー層13Fおよび第2カバー層14Fを備え、第2カバー層14Fは、第1カバー層13F上に積層されている。このため、基材11Fや配線の形状の保持が必要な箇所において、基材11Fや配線の過度な変形を抑制できる。さらに、変形が生じた場合でも、柔軟な第1カバー層13Fにより変形を吸収でき、第1配線21Fと第2配線22Fを保護できる。基材11F、第1カバー層13Fおよび第2カバー層14Fは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0126】
第2カバー層14Fの構成材料、伸縮率、ヤング率、厚さ等の特性に関する構成は、第5実施形態における構成と同じである。
【0127】
本実施形態において、第2主面112F上には、第1カバー層13Fに被覆されていない部分が存在していてもよく、基材11Fと第2カバー層14Fとが接触している部分が存在していてもよい。
【0128】
基材11Fと第1配線21Fの間S24の剥離強度、基材11Fと第2配線22Fの間S25の剥離強度、第1配線21Fと第1カバー層13Fの間S26の剥離強度、第2配線22Fと第1カバー層13Fの間S27の剥離強度、および、第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間S28の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Fと第2配線22Fの間S0の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Fに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Fと第1配線21Fの間S24、基材11Fと第2配線22Fの間S25、第1配線と第1カバー層の間S26、第2配線と第1カバー層の間S27、および、第1カバー層と第2カバー層の間S28の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Fと第2配線22Fの接触は保持され得る。したがって、第1カバー層13Fおよび第2カバー層14Fにより第1配線21Fおよび第2配線22Fを保護するとともに、基材や配線の形状の保持が必要な箇所において、基材や配線の過度な変形を抑制できる。さらに、変形が生じた場合でも、柔軟な第1カバー層13Fにより変形を吸収でき、第1配線21Fと第2配線22Fを保護できる。
【0129】
第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の剥離強度は、第1配線21Fと第2配線22Fの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Fに直交する方向に応力が加えられた場合、第1カバー層13Fと第2カバー層14Fが剥離し、第1配線21Fと第2配線22Fの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13Fおよび第2カバー層14Fにより第1配線21Fおよび第2配線22Fを保護し、第1配線21Fと第2配線22Fの電気的接続を保持できる。
【0130】
第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の剥離強度は、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。
【0131】
第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の剥離強度は、第1カバー層13F上に第2カバー層14Fを形成する前に、第1カバー層13Fに紫外線を照射すること、または、第1カバー層13Fに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第3実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0132】
本実施形態において、基材11Fと第1配線21F、第1配線21Fと第1カバー層13Fおよび第1カバー層13Fと第2カバー層14Fは、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Fと第1配線21Fの間、第1配線21Fと第1カバー層13Fの間および第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Fと第1配線21Fの間、第1配線21Fと第1カバー層13Fの間および第1カバー層13Fと第2カバー層14Fの間の少なくとも1つには、空隙が存在していてもよい。
【0133】
(第8実施形態)
図10は、伸縮配線基板の第8実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第8実施形態は、第4実施形態とは、さらに第2カバー層を備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第4実施形態と同じ構成であり、第4実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0134】
図10に示すように、第8実施形態の伸縮配線基板1Gは、さらに、第2主面112G上に積層される第1カバー層13Gおよび第2カバー層14Gを備え、第2カバー層14Gは、第1カバー層13G上に積層されている。このため、基材11Gや配線の形状の保持が必要な箇所において、基材11Gや配線の過度な変形を抑制できる。さらに、変形が生じた場合でも、柔軟な第1カバー層13Gにより変形を吸収でき、第1配線21Gと第2配線22Gを保護できる。基材11G、バッファ層12G、第1カバー層13Gおよび第2カバー層14Gは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。
【0135】
第2カバー層14Gの構成材料、伸縮率、ヤング率、厚さ等の特性は、第5実施形態における構成と同じである。
【0136】
本実施形態において、第2主面112Gには、第1カバー層13Gに被覆されていない領域が存在していてもよく、基材11Gと第2カバー層14Gとが直接接触している領域があってもよい。
【0137】
基材11Gとバッファ層12Gの間S29の剥離強度、バッファ層12Gと第1配線21Gの間S30の剥離強度、バッファ層12Gと第2配線22Gの間S31の剥離強度、第1配線21Gと第1カバー層13Gの間S32の剥離強度、第2配線22Gと第1カバー層13Gの間S33の剥離強度、および、第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間S34の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Gと第2配線22Gの間S0の剥離強度よりも小さい。そのため、第4主面122Gに直交する方向に応力が加えられた場合、基材11Gとバッファ層12Gの間S29、バッファ層12Gと第1配線21Gの間S30、バッファ層12Gと第2配線22Gの間S31、第1配線21Gと第1カバー層13Gの間S32、第2配線22Gと第1カバー層13Gの間S33、および、第1カバー層と第2カバー層の間S34の少なくとも1つがまず剥離し、第1配線21Gと第2配線22Gの接触は保持され得る。したがって、バッファ層12G、第1カバー層13G、第2カバー層14Gにより第1配線21Gおよび第2配線22Gを保護するとともに、基材や配線の形状の保持が必要な箇所において、基材や配線の過度な変形を抑制できる。さらに、変形が生じた場合でも、柔軟な第1カバー層13Gにより変形を吸収でき、第1配線21Gと第2配線22Gを保護できる。
【0138】
第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の剥離強度は、第1配線21Gと第2配線22Gの間の剥離強度よりも小さい。このため、第2主面112Gに直交する方向に応力が加えられた場合、第1カバー層13Gと第2カバー層14Gが剥離し、第1配線21Gと第2配線22Gの剥離が抑制される。したがって、第1カバー層13Gおよび第2カバー層14Gにより第1配線21Gおよび第2配線22Gを保護し、第1配線21Gと第2配線22Gの電気的接続を保持できる。
【0139】
第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の剥離強度は、JIS K 500-5-6に準拠して測定され得る。第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の剥離強度は、0以上4以下であることが好ましい。
【0140】
第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の剥離強度は、第1カバー層13G上に第2カバー層14Gを形成する前に、第1カバー層13Gに紫外線を照射すること、または、第1カバー層13Gに接触して備えられる離型剤層を形成することにより調整できる。その他の構成の効果は、第4実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0141】
本実施形態において、基材11Gとバッファ層12G、バッファ層12Gと第1配線21G、第1配線と第1カバー層13G、第1カバー層13Gと第2カバー層14Gは、それぞれ互いに接触しているが、これに限定されず、基材11Gとバッファ層12Gの間、バッファ層12Gと第1配線21Gの間、第1配線21Gと第1カバー層13Gの間および第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の少なくとも1つは、互いに剥離していてもよい。この場合、基材11Gとバッファ層12Gの間、バッファ層12Gと第1配線21Gの間、第1配線21Gと第1カバー層13Gの間および第1カバー層13Gと第2カバー層14Gの間の少なくとも1つに、空隙が存在していてもよい。
【0142】
本実施形態では、第1カバー層13G上に第2カバー層14Gが配置されているが、これに限定されず、第2カバー層14G上に第1カバー層13Gが配置されていてもよい。この場合、基材11Gとバッファ層12Gの間の剥離強度、バッファ層12Gと第1配線21Gの間の剥離強度、第1配線21Gと第2カバー層14Gの間の剥離強度および第2カバー層14Gと第1カバー層13Gの間の剥離強度の少なくとも1つは、第1配線21Gと第2配線22Gの間の剥離強度よりも小さい。
【0143】
(第9実施形態)
図11は、伸縮配線基板の第9実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。第9実施形態は、第1実施形態とは、基材と第2配線の間に空隙を有する点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0144】
図11に示すように、第9実施形態の伸縮配線基板1Hは、基材11Hと第2配線22Hの間に空隙51を有する。これにより、第2主面112Hに直交する方向に応力が加えられた場合、空隙51により応力が吸収されるため、第1配線21Hと第2配線22Hの剥離を抑制できる。したがって、第1配線21Hと第2配線22Hの電気的接続を保持できる。基材11Hは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)の一例に相当する。
【0145】
本実施形態では、基材11Hと第2配線22Hの間S2に空隙51を有するが、これに限定されず、基材11Hと第1配線21Hの間S1に空隙51を有していてもよい。また、第1実施形態から第8実施形態において、図3図10に示す界面S1~S43のうち、任意の位置に空隙51を有していてよい。例えば、図12に示すように、第8実施形態において、バッファ層12Gと第2配線22Gの間S39の位置に空隙51を有していてもよい。この場合であっても、伸縮配線基板1Hが曲げられ、第4主面122Gに直交する方向に応力が加えられた場合、空隙51により応力が吸収されるため、第1配線21Hと第2配線22Hの剥離を抑制できる。したがって、第1配線21Hと第2配線22Hの電気的接続を保持できる。また、この場合、基材11H、バッファ層12H、第1カバー層13Hおよび第2カバー層15Hは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)が有する部材の一例に相当する。その他の構成の効果は、第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0146】
第9実施形態では、基材と第1配線または第2配線の間に空隙を有するが、これに限定されず、基材とバッファ層の間、バッファ層と第1配線もしくは第2配線との間、第1配線もしくは第2配線と第1カバー層との間、第1配線もしくは第2配線と第2カバー層との間、または、第1カバー層と第2カバー層との間に空隙を有していてもよい。
【0147】
(第10実施形態)
図13は、伸縮配線基板の第10実施形態を示すとともに、一部分を拡大した断面図であり、具体的には図3に対応する。図14は、図13のXIV-XIV断面図である。第10実施形態は、第1実施形態とは、さらに硬質部を有する点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第5実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0148】
図13図14に示すように、第10実施形態の伸縮配線基板1Iは、基材11Iと、基材11Iの第2主面112I上に配置される第1配線21Iおよび第2配線22Iとを備え、さらに、硬質部15を備える。硬質部15は、第1配線21Iと第2配線22Iが互いに接触している部分を覆い、基材11Iと接触している。これにより、第1配線21Iおよび第2配線22Iの端縁が硬質部15に覆われることとなり、第1配線21Iおよび第2配線22Iへの水分の侵入を抑制することができる。基材11Iは、特許請求の範囲に記載される本体部(応力緩和部)の一例に相当する。
【0149】
上記の効果について具体的に説明する。前述したように、本体部(応力緩和部)を設けることで第1配線21と第2配線22との接続部の剥離を抑制し、第1配線21と第2配線22との接続の信頼性を向上させることができる。一方で本体部(応力緩和部)に剥離した部分があると、その部分から水分が侵入し、イオンマイグレーションが発生する虞があった。
【0150】
図13図14に示すように伸縮性配線の端縁を覆うように硬質部を設けることで、本体部(応力緩和部)の一部が剥離した場合でも水分の侵入を抑制することができる。
【0151】
硬質部15の構成材料は特に限定されないが、伸縮可能な基材1Iのヤング率より高いヤング率を有する材料であることが好ましい。硬質部15が、伸縮基材1Iよりも高いヤング率を有することで、より確実に第1配線21I及び第2配線22Iへの水分の侵入を抑制することができる。伸縮性基材1Iより高いヤング率を有する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂等のエラストマー系樹脂等が挙げられる。
【0152】
硬質部15は、難伸縮性であることが好ましく、硬質部15の伸縮率は、100%以下であることが好ましい。これにより、第1配線21Dおよび第2配線22Dを適度に固定できる。硬質部15のヤング率は、100MPa以上であり、10,000MPa以下であることが好ましい。これにより、水分の侵入をさらに抑制できる。硬質部15の厚さは、例えば10~50μmである。
【0153】
硬質部15は、防水性を有することが好ましい。これにより、湿分の侵入を防ぐことができ、伸縮配線基板1Iの信頼性を維持できる。
【0154】
硬質部15は、第1配線21Iと第2配線22Iとが相互に接続されている部分を覆うとともに、基材11Iと接触している。これにより、硬質部15は、第1配線21Iと第2配線22Iとが接触している部分を保護するとともに、硬質部15の内部に位置する第1配線21Iと第2配線22Iが外部に露出しないため、第1配線21Iおよび第2配線22Iへの水分の侵入を防ぐことができる。
【0155】
本実施形態は、第1実施形態に対応するが、これに限定されず、第2実施形態から第8実施形態の構成と組み合わせてよい。例えば、第2実施形態において、さらに硬質部15を有し、硬質部が第1配線および第2配線が互いに接触している部分を覆うとともに、基材と接触していてよい。この場合、バッファ層の端部、第1配線および第2配線の端縁がいずれも硬質部に覆われることとなる。そのため、第1配線および第2配線への水分の侵入を抑制できる。同様に、第10実施形態において、さらに硬質部を有し、硬質部が第1配線および第2配線が互いに接触している部分を覆うとともに、基材と接触していてよい。この場合、バッファ層の端部、第1配線および第2配線の端縁、第1カバー層および第2カバー層の端部が、いずれも硬質部に覆われることとなる。そのため、第1配線および第2配線への水分の侵入を抑制できる。その他の構成の効果は、第5実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0156】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第10実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0157】
前記実施形態では、バッファ層が防水性を有するが、これに限定されず、基材、第1カバー層、第2カバー層および硬質部の少なくとも1つが防水性を有していてもよい。いずれの場合においても、防水性を有する基材、バッファ層、第1カバー層、第2カバー層または硬質部が、特許請求の範囲に記載される防水層の一例に相当する。
【0158】
前記実施形態では、基材、バッファ層、第1カバー層、第2カバー層および硬質部の層数は、それぞれ1であるが、これに限定されず、その総数の増減は、自由である。この場合、隣り合う2つの層(基材、バッファ層、第1カバー層、第2カバー層、第1配線、第2配線のいずれか)の組合せのうち、少なくとも1つの組合せにおける剥離強度は、第1配線と第2配線の間の剥離強度よりも小さければよい。
【0159】
また、本体部(応力緩和部)に含まれる各層は本発明に必須の構成ではない。具体的には本体部(応力緩和部)が基材と硬質部のみによって構成されていてもよいし、基材と第2カバー層のみによって構成されていてもよい。そのほかの組合せについても同様である。
【符号の説明】
【0160】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I 伸縮配線基板
11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G、11H、11I 基材
111、111A、111B、111C、111D、111E、111F、111G、111H、111I 第1主面
112、112A、112B、112C、112D、112E、112F、112G、112H、112I 第2主面
12、12C、12E、12G バッファ層
121、121C、121E、121G 第3主面
122、122C、122E、122G 第4主面
13、13C、13F、13G 第1カバー層
14、14E、14F、14G、14I 第2カバー層
15 硬質部
21、21A、21B、21C、21D、21E、21F、21G、21H、21I 第1配線
22、22A、22B、22C、22D、22E、22F、22G、22H、22I 第2配線
23 第3配線
24 第4配線
31 電子部品
41 絶縁層
51 空隙
S31~S34 界面
図1
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図3
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