(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20241001BHJP
F25D 11/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F25D17/08 309
F25D11/02 K
(21)【出願番号】P 2023578301
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004395
(87)【国際公開番号】W WO2023148919
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】山村 毅
(72)【発明者】
【氏名】西貝 恭輝
(72)【発明者】
【氏名】根本 卓弥
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-294476(JP,A)
【文献】特開昭63-113277(JP,A)
【文献】国際公開第2019/234848(WO,A1)
【文献】実開昭62-173680(JP,U)
【文献】特開昭62-288468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/04 ~ 17/08
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有し、冷蔵温度帯に設定される第1の貯蔵室と、前記第1の貯蔵室より上にあり冷凍温度帯に設定される第2の貯蔵室と、を有する箱体と、
前記箱体の前面側に取付けられ、前記開口を開閉する扉と、
前記第1の貯蔵室と、前記第2の貯蔵室とを上下に区画する仕切り部材と、
前記仕切り部材の下方であって、前記第1の貯蔵室内の最上部に設けられ、マイナス温度帯に設定可能な第3の貯蔵室と、
前記仕切り部材内に設けられたヒータと、
前記ヒータより上で前記ヒータの上面を覆うように、前記仕切り部材
内に設けられ、前記第1の貯蔵室の戻り冷気を冷却器室に戻す第1の戻り風路と、
前記ヒータの左右のいずれか一方に、前記ヒータの左右の側面のいずれか一方に沿って、前記仕切り部材
内に設けられ、前記第3の貯蔵室の戻り冷気を前記冷却器室に戻す第2の戻り風路と、を備え、
前記第1の戻り風路と前記第2の戻り風路が独立した風路を形成し、前記第1の戻り風路と前記第2の戻り風路とが断熱材で仕切られて
おり、
前記ヒータの前記上面の面積は、前記ヒータの前記左右の側面の面積より大きく、
前記仕切り部材を上面視して前記上面と第1の戻り風路とが重なる領域が、前記仕切り部材を側面視して前記左右の側面のいずれか一方と前記第2の戻り風路とが重なる領域よりも大きい、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記第3の貯蔵室は、少なくとも0~3℃の温度帯、あるいは-3℃~0℃の温度帯、あるいは-10~-5℃の温度帯に切り換え可能である、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第1の貯蔵室は、前記第3の貯蔵室の前方に空間を有し、
前記仕切り部材の底面部には、前記扉と前記第3の貯蔵室との間の前記空間に面した第1部位に前記第1の貯蔵室内の冷気を前記第1の戻り風路に導く第1の戻り風路入口が形成され、
前記第3の貯蔵室に面した第2部位に前記第3の貯蔵室内の冷気を前記第2の戻り風路に導く第2の戻り風路入口が形成されている
請求項
1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第3の貯蔵室は、収納容器と、前面に開閉可能な前面扉を備え、
前記前面扉は、前記収納容器の前方で前記仕切り部材の底面部に回転可能に取付けられている、
請求項
1に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第1の貯蔵室は、複数の棚を有し、
前記第3の貯蔵室が、前記複数の棚のうち、最上段の棚と、前記前面扉と、前記箱体の側壁と、前記仕切り部材と、によって形成されている、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記仕切り部材の内部には発泡ウレタンが充填されている、
請求項
1に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記ヒータは直方体状の形状を有
する、
請求項
1に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記仕切り部材は、前記第3の貯蔵室の戻り冷気を前記冷却器室に戻す第3の戻り風路を備え、
前記第1の戻り風路、前記第2の戻り風路及び前記第3の戻り風路がそれぞれ独立した風路を形成し、前記第1の戻り風路、前記第2の戻り風路及び前記第3の戻り風路がそれぞれ、互いに断熱材で仕切られている、
請求項
1に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記ヒータと前記第1の戻り風路との間の断熱材の厚さが、前記ヒータと前記第2の戻り風路との間の断熱材の厚さよりも小さい、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記第1の戻り風路の後部及び前記第2の戻り風路の後部はそれぞれ上方に向かうカーブを有し、前記冷却器室の側面の一部を構成する前記仕切り部材の後面部に形成された、冷蔵室戻り風路出口及び切替室戻り風路出口とそれぞれ接続する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度の切り替えが可能な貯蔵室を有する冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、共働き世帯や独り暮らし世帯の増加等による生活スタイルの変化に伴い、一度に多くの食材を買い込んで冷蔵庫に貯蔵する傾向が強くなっている。それに伴い、冷蔵庫の大容量化や、多様な食材を適した温度で保存できる細かな温度調整が可能な冷蔵庫が望まれている。このような要望に応えるものの一つとして、冷蔵室や冷凍室とは別に、温度帯を切り替え可能な貯蔵室(切替室、温度切替室)を備える冷蔵庫が知られている。
【0003】
冷蔵庫で被冷却物を保存する温度帯として、次の3つの温度帯が知られている。
第1の温度帯は、0℃以上3℃未満の温度帯であり、例えば1℃前後の温度帯である。第1の温度帯の貯蔵室で冷凍された肉や魚などの食品を解凍すると、食品内の凍っていた水分が徐々に解凍されるため、食品の味を大きく損ねることなく解凍できることが知られている。
また、第2の温度帯として、貯蔵室の温度を0度付近に維持し、室内の温度が-3℃前後であるマイナス温度帯に設定することで、食品内の水分の氷結を避けつつ、通常の冷蔵室で保存するよりも保存期間を延長させることを目的とした使用例がある。
さらに、第3の温度帯として、貯蔵室を-7度程度の温度に設定する使い方が提案されている。
このような第1の温度帯、第2の温度帯及び第3の温度帯にユーザが温度帯を設定可能な貯蔵室である切替室が提案されている。切替室で設定できる温度帯の幅が大きいほど、ユーザが、食品に適した温度帯に合わせるために貯蔵室から食品を取り出し、他の温度帯の貯蔵室へ移動させる手間を省くことが出来る。
【0004】
従来の、切替室を備えた冷蔵庫の一例として、上部に冷凍室が設けられ、下部に冷蔵室が設けられた冷蔵庫が開示されている。冷蔵室内の上部に、冷蔵室から壁によって仕切られた貯蔵室が設けられ、冷蔵室の天井に、冷蔵室の冷気を冷気導入路に戻す冷気戻り通路と、貯蔵室の冷気を冷気導入路に戻す通路とが設けられ、冷気戻り通路と通路とが連通する。そして、冷蔵室に流入した冷気は冷気戻り通路を経て冷気導入路に戻る。貯蔵室に流入した冷気は通路及び冷気戻り通路を経て冷気導入路に戻る。これにより貯蔵室内に収納された食品を急速冷却するようにしたものがある。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来の方法では、冷蔵室の冷気を冷気導入路に戻す冷気戻り通路と、貯蔵室の冷気を冷気導入路に戻す通路とが接続しているので、貯蔵室の急速冷却時には、冷気戻り通路を流れる冷気と、通路を流れる冷気とが合流する際に、冷気の急激な温度変化が生じ、合流部で霜が生じやすい。このような霜の発生により、冷気戻り通路又は通路の幅が狭められたり閉鎖されたりすると、庫内の冷気の循環が妨げられ冷蔵庫全体が冷えなくなるという問題があった。
【0007】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、被冷却物を保存する、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と、を有し、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路とにおいて、着霜や着霜による閉塞を抑制し、安定した温度制御を行うことができる冷蔵庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る冷蔵庫は、前面に開口を有し、冷蔵温度帯に設定される第1の貯蔵室と、第1の貯蔵室より上にあり冷凍温度帯に設定される第2の貯蔵室と、を有する箱体と、箱体の前面側に取付けられ、開口を開閉する扉と、第1の貯蔵室と、第2の貯蔵室とを上下に区画する仕切り部材と、仕切り部材の下方であって、第1の貯蔵室内の最上部に設けられ、マイナス温度帯に設定可能な第3の貯蔵室と、仕切り部材内に設けられたヒータと、ヒータより上で前記ヒータの上面を覆うように、仕切り部材内に設けられ、第1の貯蔵室の戻り冷気を冷却器室に戻す第1の戻り風路と、前記ヒータの左右のいずれか一方に、前記ヒータの左右の側面のいずれか一方に沿って、仕切り部材内に設けられ、第3の貯蔵室の戻り冷気を冷却器室に戻す第2の戻り風路と、を備え、第1の戻り風路と第2の戻り風路が独立した風路を形成し、第1の戻り風路と第2の戻り風路とが断熱材で仕切られており、ヒータの上面の面積は、ヒータの左右の側面の面積より大きく、仕切り部材を上面視して上面と第1の戻り風路とが重なる領域が、仕切り部材を側面視して左右の側面のいずれか一方と第2の戻り風路とが重なる領域よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る冷蔵庫を使用すると、従来の、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路とが互いに接続する接続部で生じる、冷気の合流による急激な温度変化が抑制されるので、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、における着霜や着霜による閉塞が抑制され、安定した温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の外観を示す正面図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫であり、冷凍室扉及び冷蔵室扉が開かれた状態の内装構成を示す斜視図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の
図1におけるA-A断面図であり、冷凍室吹出し風路、冷蔵室吹出し風路及び切替室吹出し風路を示した図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の
図1におけるA-A断面図であり、冷凍室戻り風路、冷蔵室戻り風路及び切替室戻り風路を示した図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫における箱体の上面図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の
図5におけるB-B断面図である。
【
図7】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の
図5におけるC-C断面図である。
【
図8】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の
図5におけるC-C断面図及びD-D断面図である。
【
図9】本開示の実施の形態2に係る仕切り部材の内部構成の斜視図である。
【
図10】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫における箱体の上面図である。
【
図11】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫のP-P断面図である。
【
図12】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫のQ-Q断面図である。
【
図13】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫であり、冷凍室扉及び冷蔵室扉が開かれた状態の正面図、S-S断面図及びT-T断面図である。
【
図14】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫のY-Y断面図及びV-V断面図である。
【
図15】本開示の実施の形態2に係る仕切り部材の内部構成の斜視図である。
【
図16】本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫が有する積層棚の構成を示す縦断面模式図である。
【
図17】本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫が有する積層棚を概略的に示した上面模式図である。
【
図18】本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫が有する積層棚の構成を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る冷蔵庫について、図面を参照して説明する。本明細書は以下の実施の形態のみに限定されることはなく、本明細書の趣旨を逸脱しない範囲で変形または省略することが可能である。そして、図面は実際の構造を簡略化して表す場合がある。さらに、図面では各構成物の大きさ、構成物同士の位置関係が実際のものとは異なる場合がある。また、参照符号について、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。このことは、明細書の全文において共通することである。
また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「上側」、「下」、「下側」、「左」、「左側」、「右」、「右側」、「前」、「前側」、「手前」、「後」、「後側」、「奥」、「奥行」、「幅」、「内側」、「外側」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものではない。また、上述の方向は、原則として、冷蔵庫を使用可能な状態に設置したときに、貯蔵室の開口が形成される面を前面(正面)として、箱体を前面視したときの、各構成部材の位置関係である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫100の外観を示す概略正面図である。
図2は、本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫100の、冷凍室扉及び冷蔵室扉が開かれた状態の内装構成を示す概略斜視図である。
図3は、本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫100のA-Aにおける概略断面図であり、冷却風路35、冷蔵室吹出し風路37、切替室吹出し風路38及び冷凍室吹出し風路39を示した図である。
図3において、簡潔化の為、各貯蔵室から冷却器室へ流れる戻り冷気を通す風路は省略されている。
図4は、本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫100のA-Aにおける概略断面図であり、冷却風路35、冷蔵室戻り風路41、切替室戻り風路42及び冷凍室戻り風路43を示した図である。
図4において、簡潔化の為、冷却器室から各貯蔵室へ供給される冷気を通す吹出し風路は省略されている。
【0013】
[冷蔵庫100の構成]
図1及び
図2に示すように、実施の形態1の冷蔵庫100は、内部に貯蔵空間7を有する冷蔵庫本体である箱体1を備える。箱体1は、金属製の外箱2と、樹脂製の内箱3と、外箱2と内箱3との間に充填された断熱材4と、から構成される。断熱材4には、発泡断熱材4a(図示せず)及び真空断熱材4b(図示せず)などの外箱2及び内箱3と比較して熱伝導率が低い素材が用いられる。
箱体1は、直方体状の構造体であり、前面部1aに開口6を有し、内部に貯蔵空間7が形成されている。さらに、箱体1の前面部1aを正面から見た場合において、貯蔵空間7の上方に位置する内箱3の部分を上面部8a、貯蔵空間7の下方に位置する内箱3の部分を下面部8b、貯蔵空間7の左方に位置する内箱3の部分を左側面部8c、貯蔵空間7の右方に位置する内箱3の部分を右側面部8d、とそれぞれ称する。
【0014】
箱体1の貯蔵空間7は、食品などの被冷却物を貯蔵する空間である。貯蔵空間7は、1つ又は複数の仕切り部材により、複数の貯蔵室に区画される。本実施の形態の冷蔵庫100では、1つの仕切り部材9により、貯蔵空間7が、第1の貯蔵室である冷蔵室10と、第2の貯蔵室である冷凍室11との2つの貯蔵室とに、上下に区画される。冷凍室11は、冷蔵室10の上にある。
【0015】
箱体1の前面部1aには、冷蔵室10を開閉するための冷蔵室扉14aと、冷凍室11を開閉するための冷凍室扉14bとが設けられている。冷蔵室扉14a及び冷凍室扉14bは、それぞれ、ヒンジ16a及びヒンジ16bを介して箱体1に回転可能に取り付けられている。冷蔵室10及び冷凍室11は、それぞれ片開き式の冷蔵室扉14a及び冷凍室扉14bにより開閉される。なお、冷蔵室扉14a及び冷凍室扉14bの構成はこれに限られず、両開き式の2枚扉が一つの貯蔵室を開閉する構成であってもよい。
【0016】
冷蔵室10は、第1の温度帯である冷蔵温度帯に設定されている。冷蔵温度帯は、例えば3℃以上5℃以下の温度帯である。
図2、
図3及び
図4に示すように、冷蔵室10は、内部に、上下方向の異なる位置で貯蔵空間7を分割する複数の棚15を備える。複数の棚15は、上から順に最上段の棚15a、第1の棚15b、第2の棚15c、第3の棚15d及び最下段の棚15eを備える。第1の棚15b、第2の棚15c及び第3の棚15dは取外しが可能であり、内箱3の左側面部8cの一部により構成される冷蔵室10の左側面部10c及び内箱3の右側面部8dの一部により構成される冷蔵室10の右側面部10dにそれぞれ設けられた支持部17により、それぞれ高さを調節可能である。さらに、第1の棚15b、第2の棚15c及び第3の棚15dは、それぞれが前後に接続した複数の棚で構成され、複数の棚のうち冷蔵室10の手前側の棚を後方にスライドさせ冷蔵室10の奥側の棚と重ねて設置可能であってもよい。また、冷蔵庫100内の複数の棚15の数はこれに限られない。
【0017】
冷凍室11は、第2の温度帯である冷凍温度帯に設定されている。冷凍温度帯は、冷蔵温度帯よりも低い温度帯である。冷凍温度帯は、0℃未満の温度帯であり、例えば-20℃以上-18℃以下の温度帯である。
【0018】
野菜室12は、冷蔵室10よりも設定温度が高い温度帯(例えば、約3~7℃)に設定された貯蔵室である。野菜室12は、食品のうち、特に、野菜を冷蔵するのに適した貯蔵室である。野菜室12は、引出し式の容器18と最下段の棚15eによって冷蔵室10から区画され、冷蔵室10の下方に設けられる。引出し式の容器18は、内箱3の下面部8b上に設置され、箱体1の前後方向(奥行方向)に移動させられるようになっている。
【0019】
切替室13は、冷蔵温度帯から冷凍温度帯までの範囲で室内の温度を設定できる貯蔵室(第3の貯蔵室)である。切替室13では、用途に応じて室内の温度を適した温度帯に設定できる。切替室13は、例えば、肉、魚またはこれらの加工品などの食品を保存するのに適した貯蔵室である。本実施の形態では、切替室13は、主に、第1の温度帯、第2の温度帯及び第3の温度帯の3つの温度帯に温度を設定できる。なお、これに限られず切替室13は、これら3つの温度帯以外の温度帯に温度を設定できてもよい。また、切替室13の温度は、冷蔵庫100のユーザにより自由に設定できる。よって、ユーザが食品等の被冷却物を自身の好む温度帯域で切替室13に保存できるので、冷蔵庫100の利便性を向上させることができる。
図3及び
図4に示すように、切替室13は、冷蔵室10と共通の背面パネル(冷蔵室背面パネル34)により切替室背面部13cが形成される。切替室13は、冷蔵室10に設置された最上段の棚15a、最上段の棚15a上に設置された収納容器20、及び前面扉19により冷蔵室3から区画される。収納容器20は引出し式の収納容器である。冷蔵室10の天井部10a及び切替室13の天井部13aは仕切り部材9により構成される。切替室13の天井部13aは、冷蔵室10の天井部10aより後ろに設けられる。
【0020】
収納容器20は、切替室13に保存する被冷却物を収納する容器である。収納容器20の材質としては、例えば、一般的な冷蔵庫の収納容器と同様に、ポリスチレンが用いられる。ただし、収納容器20の材質はこれに限定されるものではない。収納容器20は、最上段の棚15aと仕切り部材9との間の、内箱3の左側面部8c及び右側面部8dに設けられたガイド(図示せず)に対してスライドされることにより、箱体2の前後方向(奥行方向)に移動される。収納容器20は上面が開口した直方体状の容器であり、収納容器20の前面部20aは収納容器20の左側面部20b及び右側面部20cの後方と比べて高さが低く、下端側20a1よりも上端側20a2が前方に傾斜しており、前面部20aの前面側に把持部21が設けられている。収納容器20をこのような構成とすることで、収納容器20が最上段の棚15a上の奥に納められ、前面扉19により閉じられた状態でユーザが把持部21に指をかけて収納容器20を引き出すと、ヒレ部22が左右の側面部20bにより押し上げられ、前面扉19が手前側に回転する。これにより、前面扉19が前面部20aから離れ、収納容器20が開放されるので、収納容器20への被収納物の出し入れが可能になる。
【0021】
前面扉19は、仕切り部材9の底面部9cに設けられた取付部19aに一端側が回転可能に軸支されている。取付部19aは、前面扉19を仕切り部材9の底面部9cに取付ける機構であり、底面部9cに設けられた位置が、前面扉19を仕切り部材9の底面部9cに取付ける取付位置に相当する。
前面扉19は、収納容器20が最上段の棚15a上の奥に押し入れられた状態では収納容器20の前方に位置し、収納容器20の前面部20aと接触して、切替室13の天井13a、内箱3の左側面部8c、内箱3の右側面部8d及び前面部20aにより形成された切替室13の開口部13bを閉じる。この状態で、ユーザが把持部21に指をかけ収納容器20を前方に引き出すと、前面扉19の裏面に設けられたヒレ部22が収納容器20の側面部20bと接し、前方から後方にかけて高さが上昇する側面部20bにより押し上げられ、前面扉19が前方に回動(箱体1を右から側面視して前面扉19が取付部19aを中心に時計回りに回転)する。このようにして前面扉19は収納容器20を前方に引出し可能とし、前面扉19は、仕切り部材9、収納容器20の前面部20a、内箱3の左側面部8c及び右側面部8dにより形成された切替室13の開口部13bを開く。前面扉19で切替室13の開口部13bを閉じるときは、収納容器20を、前面扉19が切替室13の開口部13bを開くときと逆(後方に押込む向き)に動作させる。以上の動作により、前面扉19は、仕切り部材9(切替室13の天井13a)、収納容器20の前面部20a、内箱3の左側面部8c及び内箱3の右側面部8dにより形成された切替室13の開口部13bを開閉する。
なお、本実施の形態の前面扉19の構成はこれに限られず、仕切り部材9の底面部9cに沿って、取付部19aが内箱3の左側面部8c及び内箱3の右側面部8dに設けられ、前面扉19が取付部19aに軸支される構成でもよい。また、前面扉19が、最上段の棚15aの上面又は先端部と接し、切替室13の開口部13bを閉じる構成としてもよい。この場合、把持部21は前面扉19の前面側に設けられる。
【0022】
仕切り部材9の底面部9cは、取付部19aより前方の領域である第1部位が冷蔵室10に面し、冷蔵室10の天井部10aを構成する。また、底面部9cの、取付部19aより後方の領域である第2部位が切替室13に面し、切替室13の天井部13aを構成する。
図3及び
図4に示されるように、第3の貯蔵室の前方には、前記扉と前記第3の貯蔵室との間に空間10fが設けられている。
空間10fに面した天井部10aに、第1の戻り風路入口である冷蔵室戻り風路入口41aが形成され、天井部13aに、第2の戻り風路入口である切替室戻り風路入口42aが形成される。
冷蔵室戻り風路入口41aと切替室戻り風路入口42aを取付部19aの前と後ろに配置することで、前面扉19が切替室13の開口部を閉じた状態で切替室13に流入した冷気は、前面扉19により冷蔵室10に流れることが抑制される。そして、切替室13に流入した冷気は、切替室13の天井部13aに形成された切替室戻り風路入口42aより冷却器室へ流出する。そのため、前面扉19により切替室13の温度制御による冷蔵室10の温度帯の変動が抑制される。また、前面扉19により切替室13に収納された被冷却物の臭いが冷蔵室10に移ることが抑制される。
【0023】
切替室13で選択可能な温度帯について説明する。切替室13では、第1の温度帯、第2の温度帯及び第3の温度帯を含む複数の温度帯が選択可能である。
【0024】
第1の温度帯は、0℃以上3℃未満の温度帯であり、例えば1℃前後の温度帯である。切替室4内の温度をこの温度帯に設定することで、切替室13をチルド室として利用することができる。このような切替室13の利用方法は、冷蔵室10の容量が不足する使用者や当日に消費する食品が多い使用者を対象としている。
【0025】
第2の温度帯は、マイナスの温度帯であり、冷蔵室10よりも低温であり、食品が過冷却状態となる温度帯(過冷却温度帯)である。過冷却状態とは、食品の温度が凍結点(凍結温度)以下に達していても、食品の凍結が開始せず、食品が非凍結の状態を保っていることをいう。このような過冷却温度帯は、例えば食品の凍結点以下となる-3℃以上0℃未満の温度帯である。切替室13内の温度をこの温度帯に設定することで、切替室13を、食品を過冷却状態で保存する過冷却保存室として利用することができる。品質を維持したまま食品を保存するためには、食品をできるだけ低温でかつ凍結させずに維持することが望ましく、過冷却保存室によってこのような食品保存を実現できる。切替室13を過冷却保存室として利用することによって、使用者は、肉や魚等の生鮮食品やこれらの加工品等の保存日数の短い食品を冷凍せずに保存することができる。
【0026】
第3の温度帯は、-10℃以上-5℃以下の温度帯であり、例えば-7℃前後の温度帯である。この温度帯では、食品が長時間保存されていても、表面が固くなり過ぎないので、食品を容易に破砕したり破断したりすることが可能である。よって、使用者は、切替室13に保存された食品を即座に使用することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、冷蔵庫100は1つの仕切り部材9により、貯蔵空間7が冷蔵室10と冷凍室11の2つの貯蔵室に区画されるが、本実施の形態はこれに限定されない。冷凍室11が、冷凍温度帯以外の他の温度帯の貯蔵室であってもよい。また、箱体1が、複数の仕切り部材により、冷蔵室、製氷室、切替室、冷凍室及び野菜室の5つの貯蔵室に区画されていてもよい。このような場合では、冷蔵室内に切替室が区画され、冷蔵室及び切替室と、他の貯蔵室とが、一つの仕切り板により区画される。
【0028】
図3に示すように、冷蔵庫100は、箱体1の貯蔵室よりも背面1b側に、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機25と、蒸発器として機能し、空気を冷却する冷却器26と、冷却器26で生成された冷気を移動させる送風機27と、加熱ヒータ28(図示せず)とを備える。圧縮機25は、
図3に示すように、箱体1の背面1b側において冷却器室29より下に設けられた機械室30に配置されている。また、箱体1の上面1cの背面1b側には、制御装置31を収納する凹形状の基板収納部32が形成される。この制御装置31は、例えば、専用のハードウェア、またはメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)で構成されるものである。
【0029】
圧縮機25および冷却器26は、凝縮装置(図示せず)および減圧装置(図示せず)とともに、冷凍サイクル回路を構成する。冷凍サイクル回路では、圧縮機25、凝縮装置、減圧装置および蒸発器(冷却器26)が、この順で冷媒配管によって接続されている。圧縮機25は、冷媒吐出側が凝縮器に接続され、冷媒吸入側が冷却器26に接続されている。冷却器26は、蒸発器として機能し、自身を通過する冷媒と冷却器室29を流れる空気とを熱交換させて冷気を生成する。
加熱ヒータ28(図示せず)は、冷却器26の下方に、冷却器26には接触しない状態で設けられる。加熱ヒータ28は、冷却器26の除霜用に設けられ、冷却器26についた霜を加熱して除去する除霜装置である。冷却器26についた霜は加熱ヒータ28により熱せられ、ドレン水として仕切り部材9に設けられたドレンパイプ開口29bより冷却器室29外に排出される。
【0030】
箱体1は、冷凍室11の背面を形成する冷凍室背面パネル33と箱体1の背面1bとの間に、冷却器室29及び冷凍室吹出し風路39を有する。冷却器室29は、冷蔵庫100の箱体1を前面視して、冷凍室11と少なくとも一部が重なるように、冷凍室11の後方に配置される。冷却器室29の内部に、冷却器26、送風機27及び加熱ヒータ28(図示せず)が設置される。
箱体1は、冷蔵室10及び切替室13の背面を形成する冷蔵室背面パネル34と箱体1の背面1bとの間に、冷蔵室吹出し風路37及び切替室吹出し風路38を有する。
【0031】
さらに、冷蔵庫100は、箱体1の背面1b側に、冷却器室29から各貯蔵室(冷蔵室10、野菜室12及び切替室13)に冷気を流すための冷却風路35を有する。
冷却風路35は、冷蔵室10及び冷凍室11より箱体1の背面1b側に形成されており、冷凍室11の背面を形成する冷凍室背面パネル33により冷凍室11から区画され、冷凍室11と箱体1の背面部36との間に位置する。また、冷却風路35は、冷蔵室10の背面10eを形成する冷蔵室背面パネル34により冷蔵室11から区画され、冷蔵室10と箱体1の背面部36との間に形成される。
冷却風路35は、仕切り部材9の後部(冷却器室29の真下)を上下に貫通する。
図3及び
図4において、仕切り部材9内を通る冷却風路35を破線で示す。仕切り部材9を貫通する冷却風路35は、冷蔵庫100を正面視してA-A線より右側(又は左側)に位置するため破線で示されている。
冷却風路35は、冷却器室29と接続し、冷蔵室吹出し風路37及び切替室吹出し風路38に接続する。
なお、本実施の形態では、冷凍室背面パネル33と冷蔵室背面パネル34とが独立した部材で構成されるが、本実施の形態はこれに限られない。冷凍室背面パネル33及び冷蔵室背面パネル34が一つのパネル部材で構成されていてもよい。この場合、一つのパネル部材と箱体1の背面1bを構成する背面部36との間に冷却器室29が形成され、パネル部材の前方に仕切り部材9が配置される。
【0032】
送風機27は、冷却器26で冷却された空気(冷気)を各貯蔵室、すなわち冷蔵室10、冷凍室11、野菜室12及び切替室13へ送風する。送風機27によって冷気が冷却器室26から冷凍室吹出し風路39を介して冷凍室11へ供給される。また、送風機27によって冷気が冷却器室26から冷蔵室吹出し風路37を介して冷蔵室10へ供給される。また、送風機27によって冷気が冷却器室26から切替室吹出し風路38を介して切替室13へ供給される。
【0033】
冷蔵室10は、冷蔵室吹出し風路37の冷気を冷蔵室10に供給する冷蔵室吹出し風路出口37aを、冷蔵室背面パネル34に有する。
冷凍室11は、冷凍室吹出し風路39の冷気を冷凍室11に供給する冷凍室吹出し風路出口39aを、冷凍室背面パネル33に有する。
切替室13は、切替室吹出し風路38の冷気を切替室13に供給する切替室吹出し風路出口38aを、冷蔵室背面パネル34に有する。切替室吹出し風路出口38aは冷蔵室吹出し風路出口37aより上にある。切替室吹出し風路出口38aは最上段の棚15aと仕切り部材9との間に設けられる。
【0034】
冷却器26で冷媒と熱交換されて、冷却された空気(冷気)は、送風機27によって空気の流れが形成される。
図3に示される矢印は、送風機27によって各風路を流れる冷気の流れの向きを示す。冷蔵室10へ向かう冷気は、冷蔵室吹出し風路37より冷蔵室吹出し風路出口37aを介して冷蔵室10に流入する。また、切替室13へ向かう冷気は、切替室吹出し風路38より切替室吹出し風路出口38aを介して切替室13に流入する。また、冷凍室11へ向かう冷気は、冷凍室吹出し風路39より冷凍室吹出し風路出口39aを介して冷凍室11に流入する。
【0035】
冷蔵室吹出し風路37の上流には第一ダンパ40aが設けられている。また、切替室吹出し風路38の上流には第二ダンパ40bが設けられている。第一ダンパ40aは、開度を変化させて、冷蔵室吹出し風路37を通過する冷気の風量を調整する。第二ダンパ40bは、開度を変化させて、切替室吹出し風路38を通過する冷気の風量を調整する。
そして、
図4に示すように、冷蔵室10を通過した冷気は、冷蔵室戻り風路41を通って冷却器室29に流入する。また、切替室13を通過した冷気は、切替室戻り風路42を通って冷却器室29に流入する。また、冷凍室11を通過した冷気は、冷凍室戻り風路43を通って冷却器室29に流入する。冷却器室29に流入した戻り冷気は、冷却器26により冷却されて、再び各貯蔵室に送られる。
【0036】
各貯蔵室の温度は、各貯蔵室に設置された温度センサ(図示せず)によって検出される。制御装置31は、温度センサが検出した温度が、各貯蔵室において設定された温度になるように、冷蔵庫100内の各種機器を制御する。例えば、制御装置31は、冷蔵室吹出し風路37に設置された第一ダンパ40aおよび切替室吹出し風路38に設置された第二ダンパ40bの開度、圧縮機26の出力、加熱ヒータ28の出力及び送風機27の送風量などを制御する。
冷蔵室3の温度調整は、制御装置31が第一ダンパ40aの開度を制御して、冷蔵室3に供給される風量を調整することによって行われる。また、切替室13の温度調整は、制御装置31が第二ダンパ40bの開度を制御して、切替室13に供給される風量を調整することによって、および、後述するヒータ61(第一加熱装置とも称する)の出力調整をすることによって行われる。
【0037】
[仕切り部材9の構成]
図3及び
図4に示すように、仕切り部材9は、冷凍室11と冷蔵室10との間に設けられている壁であり、冷凍室11と切替室13との間に設けられている壁である。仕切り部材9は、冷凍室11と冷蔵室10とを上下に仕切り、冷凍室11と切替室13とを上下に仕切る。仕切り部材9は、射出成形にて製造された外郭部45を備え、外郭部45の内部に断熱材46を備える。断熱材46により、冷蔵室10や切替室13から冷凍室11への熱移動が抑制される。
冷凍室扉14b及び冷蔵室扉14aが閉じられたとき、仕切り部材9の前面部9aは、冷凍室扉14b及び冷蔵室扉14aの裏面に設けられたガスケット(図示せず)と接して冷凍室扉14b及び冷蔵室扉14aを箱体1外部から区画する。また、仕切り部材9の後面部9bは、冷却器室29の側面の一部を構成し、仕切り部材9の後面部9bに、後述する冷蔵室戻り風路出口41b及び切替室戻り風路出口42bが形成されている。
【0038】
仕切り部材9は、外郭部45の内部に、断熱材46を通り、冷蔵室10から流出する冷気(冷蔵室10の戻り冷気)を冷却器室29に送る、第1の戻り風路である冷蔵室戻り風路41を有している。また、仕切り部材9は、外郭部45の内部に、断熱材46を通り、切替室13から流出する冷気(切替室13の戻り冷気)を冷却器室29に送る、第2の戻り風路である切替室戻り風路42を有している。冷蔵室戻り風路41は、冷蔵室3と冷蔵室戻り風路入口41aで接続し、冷却器室3と冷蔵室戻り風路出口41bで接続する。切替室戻り風路42は、切替室13と切替室戻り風路入口42aで接続し、冷却器室29と切替室戻り風路出口42bで接続する。
【0039】
図5は本実施の形態に係る冷蔵庫100の、箱体1の概略上面図である。
図5において、T-Tは、冷蔵室戻り風路41を通る位置で、箱体上面1cを分割する線である。また、Z-Zは、切替室戻り風路42を通る位置で、箱体上面1cを分割する線である。
図6は本実施の形態に係る冷蔵庫100内の構成を示す、T-Tにおける概略断面図である。
図6は、冷蔵室戻り風路41に沿って冷蔵庫100の縦断面を示した図である。
図7は本実施の形態に係る冷蔵庫100内の構成を示す、Z-Zにおける概略断面図である。
図7は、切替室戻り風路42に沿って冷蔵庫100の縦断面を示した図である。
図8(a)は本実施の形態に係る冷蔵庫100内の実施例であり、箱体1の概略断面図であり、U-Uは、冷蔵室戻り風路41及び切替室戻り風路42を通る位置で、仕切り部材9を分割する線である。
図8(b)は本実施の形態に係る冷蔵庫100の実施例であり、U-Uにおける箱体1の概略断面図である。仕切り部材9の後方に、冷却器室29及び冷却風路35が形成されている。冷却風路35は、冷気風路ガイド部53内に設けられている。
【0040】
図6、
図7及び
図8(b)に示されるように、冷蔵室戻り風路41と切替室戻り風路42とは、仕切り部材9内において接続せず、互いに独立している。言い換えると、仕切り部材9内において、切替室戻り風路42は冷蔵室戻り風路41に接続(接続)しない。
図8(b)に示されるように、冷蔵室戻り風路41と切替室戻り風路42は、箱体1を上面視して左右に分かれて仕切り部材9内に配置される。
図8(b)に示されるように、仕切り部材9内に、外郭部45の上部45aと下部45bとを結合するピラー48が複数設けられている。外郭部45内部の、ピラー48、冷蔵室戻り風路41及び切替室戻り風路42の周辺は断熱材46(
図8(b)においては省略している)により充填されている。さらに、第1の仕切壁51a及び第2の仕切壁51bにより冷蔵室戻り風路41及び切替室戻り風路42が形成される。冷蔵室戻り風路41と切替室戻り風路42の間には第1の仕切壁51aが設けられ、冷蔵室戻り風路41及び切替室戻り風路42は第1の仕切壁51aにより互いに仕切られている。冷蔵室戻り風路41及び切替室戻り風路42は、第2の仕切壁51bにより断熱材46から区画される。第1の仕切壁51a及び第2の仕切壁51bは、一例として発泡スチロールにより形成される。なお、本実施の形態はこれに限られず、冷蔵室戻り風路41と切替室戻り風路42は、上下に重なるように仕切り部材9内に配置されていても良い。また、冷蔵室戻り風路41と切替室戻り風路42との間に発泡ウレタンが設けられてもよい。なお、
図8(b)において、29aは冷却器26の除霜により発生したドレン水を収集するためのドレンパイプの開口部である。風路35は発泡スチロールにより形成された風路形成部52により構成される。
図8(b)の破線で示されるように、仕切り部材9は冷蔵室戻り風路出口41b及び切替室戻り風路出口42bを、U-U面より上方に有する。冷蔵室戻り風路41の後部及び切替室戻り風路42の後部はそれぞれ上方に向かうカーブを有し、冷蔵室戻り風路出口41b及び切替室戻り風路出口42bとそれぞれ接続する。このような構造とすることで、冷蔵室戻り風路出口41b及び切替室戻り風路出口42bから冷却器室29に流出する冷気が、冷却器26に向かう上向きの速度成分を持つので、戻り冷気を冷却器26に沿って流しやすくなり、冷却器26内の冷媒と熱交換がしやすくなる。なお、
図8(b)において、冷蔵室戻り風路41は、冷蔵室戻り風路入口41a側よりも冷蔵室戻り風路出口41b側の方が流路断面積が狭く、冷蔵室戻り風路入口41aよりも冷蔵室戻り風路出口41bを流れる冷気の流速を大きくしている。
【0041】
冷蔵室戻り風路入口41aは、冷蔵室10の天井部10aを形成する仕切り部材9の外郭底面部49(仕切り部材9の底面部9cに相当)に形成される。切替室戻り風路入口42aは、切替室13の天井部13aを形成する仕切り部材9の外郭底面部49に形成される。仕切り部材9の外郭底面部49には前面扉19の取付部19aが取付けられ、取付部19aより前の領域が冷蔵室10の天井部10aに相当し、取付部19aより後ろの領域が切替室13の天井部13aに相当する。
【0042】
冷蔵室戻り風路入口41aを冷蔵室10の床面部10b(内箱3の下面部8bに相当)に設けた場合、冷蔵室10の前側に戻り風路入口があると、肉汁等の食品汁および食品カスなどがこぼれて、それによって冷蔵室戻り風路41が詰まってしまう可能性がある。このような理由で、従来の冷蔵庫では、貯蔵室の戻り風路入口を貯蔵室の床面に設ける場合、貯蔵室の戻り風路入口は基本的に貯蔵室の奥側に設けていた。本実施の形態では、冷蔵室戻り風路入口41aは、冷蔵室10の天井部10aに形成されているので、床面部10bに設ける場合よりも、食品により冷蔵室戻り風路41が詰まる現象を抑制できる。このため、冷蔵室戻り風路入口41a及び切替室戻り風路入口42aを、冷蔵室10及び切替室13のそれぞれ前側に配置することができる。
【0043】
本実施の形態では、冷蔵室戻り風路入口41aから冷却器室29に至る冷蔵室戻り風路41と、切替室戻り風路入口42aから冷却器室29に至る切替室戻り風路42とが、仕切り部材9内において接続せず、互いに独立した風路を形成している。このような構造では、従来の冷蔵庫で採用されていた、冷蔵室戻り風路と切替室戻り風路とが互いに接続する構成において、冷蔵室戻り風路を流れる冷気が切替室戻り風路を流れる冷気と合流する際に生じる、冷気の急激な温度変化が生じないので、接続部付近における霜の発生や、霜による風路の閉塞を抑制することができる。また、冷蔵室戻り風路41と、切替室戻り風路42とが接続せず、互いに独立しているので、切替室13に収納された肉や魚のにおいが切替室戻り風路42及び冷蔵室戻り風路41を経由して冷蔵室10に広がることが抑制される。
【0044】
また、冷蔵室戻り風路入口41aと切替室戻り風路入口42aとの間に前面扉19を設けているため、前面扉19により切替室13の開口部13bが閉じられた状態では、切替室13に供給された冷気が冷蔵室10内に漏れ出るのが抑制される。よって、切替室13を通過した冷気が冷蔵室戻り風路入口41a付近まで到達することによる冷蔵室戻り風路入口41a付近の温度変化を抑制することができる。このことにより、冷蔵室の戻り風路入り口付近での着霜が抑制される。
【0045】
実施の形態2.
以下、本開示の実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。実施の形態2では、仕切り部材9内に第一加熱装置が設けられている点が実施の形態1と異なる。また、実施の形態2では、仕切り部材内に、1本の切替室戻り風路に代えて、2本の切替室戻り風路が設けられている点が実施の形態1と異なる。
【0046】
図9は、本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫101における、仕切り部材55の外郭部56の内部の構成を示した概略斜視図である。なお、
図9において、仕切り部材55の内部の風路を示すため、外郭部56及び断熱材57は省略して示されている。外郭部56の形状および冷蔵庫101における取付位置は、実施の形態1の仕切り部材9の外郭部45と同様である。また、断熱材57の材質は実施の形態1の断熱材46と同様である。
図10は、本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫101の概略上面図である。
図11は、本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫101の、
図10のP-Pにおける概略断面図である。線P-Pは、冷蔵庫101を上面視したときに、冷蔵室戻り風路入口58aから冷蔵室戻り風路出口58bまで、冷蔵室戻り風路58内を通る線である。
図12は、本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫101の、
図10のQ-Qにおける概略断面図である。線Q-Qは、冷蔵庫101を上面視したときに、第1の切替室戻り風路入口59aから第1の切替室戻り風路出口59bまで、第1の切替室戻り風路59内を通る線である。
図13(a)は、本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫101の、概略前面図である。
図13(b)は、
図13(a)のS-Sにおける仕切り部材の断面図である。線S-Sは、冷蔵庫101を前面視して、第一加熱装置の前方投影面と重なる水平線である。
図13(c)は、
図13(a)のT-Tにおける仕切り部材の断面図である。線T-Tは、冷蔵庫101を前面視して、第一加熱装置より上における冷蔵室戻り風路59の前方投影面と重なる水平線である。
【0047】
図9及び
図11に示すように、冷蔵庫101では、仕切り部材55の外郭部56の内部に、第一加熱装置であるヒータ61が設けられている。ヒータ61は、断熱材だけで冷気戻り風路の着霜を抑制できない場合に使用される。ヒータ61は直方体状であり、金属製の板状の部材の内部に、ニクロム線などの電熱線を蛇行させるように内部に埋め込み、制御装置31等により発熱を制御される。ヒータ61は、上面61aと下面61bが他の面より大きく、外郭部56の底部56aの上面に沿って、外郭部56の内側に設置される。ヒータ61は、箱体1を上面視して、切替室13の天井部13aと重なる位置に設けられる。
また、
図9、
図11及び
図12に示すように、仕切り部材55は、外郭部56の内部に、断熱材57を通り、冷蔵室10から流出する冷気(冷蔵室10の戻り冷気)を冷却器室29に送る、第1の戻り風路である冷蔵室戻り風路58を有している。また、仕切り部材55は、外郭部56の内部に、断熱材46を通り、切替室13から流出する冷気(切替室13の戻り冷気)を冷却器室29に送る、第2の戻り風路である第1の切替室戻り風路59と、第3の戻り風路である第2の切替室戻り風路60とを有している。実施の形態2では、冷蔵室戻り風路58と、第1の切替室戻り風路59と、第2の切替室戻り風路60が、仕切り部材9内において接続せず、独立して風路を形成する。後述する
図14(b)に示されるように、第1の断熱材65aにより、第1の切替室戻り風路59と、冷蔵室戻り風路58及びヒータ61とが区画される。第2の断熱材65bにより、第2の切替室戻り風路59と、冷蔵室戻り風路58及びヒータ61とが区画される。第3の断熱材65cにより、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60と、外郭部56内の空間とが区画される。外郭部56内の空間には、断熱材である発泡ウレタンにより充填される。また、図示していないが、冷蔵室戻り風路58とヒータ61との間にも、第4の断熱材65dが設けられ、冷蔵室戻り風路58とヒータ61とが区画される。第1の断熱材65a、第2の断熱材65b、第3の断熱材65c及び第4の断熱材65dは連続して形成されていてもよい。第1の断熱材65a、第2の断熱材65b、第3の断熱材65c及び第4の断熱材65dは一例として発泡スチロールで形成される。
なお、実施の形態2ではヒータ61と各戻り風路との間に、断熱材が配置されているが、これに限られず、ヒータ61からの各戻り風路への入熱効率を向上させるため、ヒータ61と各戻り風路との間に断熱材を設けず、ヒータ61と冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60とを直接接する構成としてもよい。
【0048】
図9を用いて、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60について説明する。仕切り部材55の外郭部56の底部56aにおいて取付部19aより前方、すなわち冷蔵室10の天井部10aにおいて、直方体状のヒータ61の前面61cより前に、冷蔵室戻り風路入口58aが設けられる。そして、前面61cより前に、冷蔵室戻り風路入口58aと連続して上方に延伸させた、前方冷蔵室戻り風路58cを設ける。そして、前方冷蔵室戻り風路58cと連続し、ヒータ61の上面61aより上方で、上面61aに沿って、後方に延伸する中央冷蔵室戻り風路58dを設ける。そして、中央冷蔵室戻り風路58dは、仕切り部材55の後方で、外郭部56の冷却器室29に面する後面56bに形成された冷蔵室戻り風路出口58bと連続する。前方冷蔵室戻り風路58a及び中央冷蔵室戻り風路58bにより、冷蔵室戻り風路58が構成される。
【0049】
さらに、
図9に示すように、仕切り部材55の外郭部56の底部56aにおいて取付部19aより後方、すなわち切替室13の天井部13aにおいて、直方体状のヒータ61の右側面61dより右に、第1の切替室戻り風路入口59aが設けられる。そして、第1の切替室戻り風路入口59aと連続し、ヒータ61の右側面61dより右に、右側面61cに沿って、後方に延伸する第1の切替室戻り風路59が設けられる。そして、第1の切替室戻り風路59は、仕切り部材55の後方で、外郭部56の冷却器室29に面する後面56bに形成された第1の切替室戻り風路出口59bと連続する。
【0050】
同様に、
図9に示すように、仕切り部材55の外郭部56の底部56aにおいて取付部19aより後方、すなわち切替室13の天井部13aにおいて、直方体状のヒータ61の左側面61eより左に、第2の切替室戻り風路入口60aが設けられる。そして、第2の切替室戻り風路入口60aと連続し、ヒータ61の左側面61eより左に、左側面61eに沿って、後方に延伸する第2の切替室戻り風路60を設ける。そして、第2の切替室戻り風路60は、仕切り部材55の後方で、外郭部56の冷却器室29に面する後面56bに形成された第2の切替室戻り風路出口60bと連続する。
【0051】
図13(b)及び
図13(c)に示されるように、中央冷蔵室戻り風路58dの左右の幅は、ヒータ61の上面61aの左右幅以上である。
【0052】
このように、直方体状のヒータ61の4面(上面61a、前面61c、右側面61d及び左側面61e(図示せず))に沿って、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60を配する。
図9、
図13(b)及び
図13(c)に示される構成では、ヒータ61の左右のいずれか一方に、ヒータ61の右側面61d及び左側面61eのいずれか一方に沿って、2つの切替室戻り風路のいずれかが仕切り部材9内に備えられる。そして、ヒータ61より上でヒータ61の上面61aを覆うように、冷蔵室戻り風路58が仕切り部材9内に備えられる。このように、切替室戻り風路をヒータ61の左右に一つずつ設けることで、ヒータ61の側面から放出される熱を効率よく切替室13からの戻り冷気に与えることができる。
仕切り部材9を上面視して、ヒータ61の上面61aと冷蔵室戻り風路58とが重なる領域S1(
図14に示す)が、仕切り部材9を側面視してヒータ61の左右の側面のいずれか一方と第2の戻り風路とが重なる領域S2(
図12に示される、第1の切替室戻り風路59の断面とヒータ61(破線で示される)とが重なる領域)よりも大きい。
このような構成とすることで、ヒータ61の前記4面から放出される熱を効率よく冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60を流れる冷気に伝えることができ、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60内の着霜や凍結を抑制することができる。
また、ヒータ61と冷蔵室戻り風路58とが上下方向で重なる面積は、ヒータ61と第1の切替室戻り風路59又は第2の切替室戻り風路60が左右方向で重なる面積よりも大きい。このような構成とすることで、ヒータ61により、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60を流れる冷気よりも、冷蔵室戻り風路58を流れる冷気に、より大きな熱量を与えることができる。このような構成とすることで、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60を通る冷気よりも温度が高く、より水蒸気を多く含みうる冷蔵室戻り風路58を通る冷気について、ヒータ61により、着霜や凍結を抑制することができる。
【0053】
実施の形態2の実施の一例を
図14(a)及び
図14(b)に示す。
図14(a)は、
図10のY-Yにおける冷蔵庫101の概略断面図である。
図14(b)は
図14(a)のV-Vにおける仕切り部材の概略断面図である。線V-Vは、冷蔵庫101を前面視して、ヒータ61より上で冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60と重なる水平線である。
図14(b)に示されるように、冷蔵室戻り風路入口58aが第1の切替室戻り風路入口59a及び第2の切替室戻り風路入口60aの前方に設けられる。
【0054】
さらに、ヒータ61の残り一面である下面61bから放出される熱は、切替室13内の冷気を温めるのに使用され、切替室13の温度帯の切り替えや、温度帯内での温度制御に伴う、昇温制御に使用される。ヒータ61を仕切り部材55内に設けることで、ダンパ40bの開閉による温度制御のみを行う場合と比べて、切替室13内の空気をより素早く昇温することができる。
【0055】
実施の形態2に係る冷蔵庫101は、冷蔵室10と冷凍室とを仕切る、仕切り部材9の内部に、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59、第2の切替室戻り風路60及び第一加熱装置を有する。このような構成とすることで、第一加熱装置により、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路61及び第2の切替室戻り風路62を流れる冷気を加熱することで、着霜や凍結を抑制することができる。また、切替室13を間接的に加熱することができる。食品保存のために切替室13の昇温が必要な場合に、切替室13内の空気をヒータ61により加熱でき。以上のことから、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60の着霜や凍結による閉塞で、冷蔵庫101の貯蔵室が冷えにくくなる現象を抑制することができる。
【0056】
また、実施の形態2に係る冷蔵庫101は、冷蔵室10と冷凍室11とを仕切る、仕切り部材9の内部に冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59、第2の切替室戻り風路60及び第一加熱装置を有する。このような構成では、第一加熱装置により、戻り風路内の戻り冷気を加熱するとともに切替室13を間接的に加熱することができる。よって、食品に直接暖気を吹き付けることがないため、食品損傷を抑制するとともにダクト内に霜付きが起こった場合に加熱・融解することを可能とする。
【0057】
なお、実施の形態2において、ヒータ61は、アルミ板や銅板などの熱伝導性に優れる直方体状の金属板に電熱線が内部に埋め込まれたものであるが、本実施の形態はこれに限定されない。ヒータ61として、直方体状の金属板に代えて、伝熱線が取り付けられた金属製のシートを適用してもよい。
【0058】
本実施の形態では、ヒータ61と冷蔵室戻り風路58とが上下方向で重なる面積を、ヒータ61と第1の切替室戻り風路59とが左右方向で重なる面積及びヒータ61と第2の切替室戻り風路60とが左右方向で重なる面積よりも大きくすることで、冷蔵室戻り風路58、第1の切替室戻り風路59及び第2の切替室戻り風路60の着霜や凍結による閉塞を抑制する構成について記載した。このほかの構成として、ヒータ61と冷蔵室戻り風路58との間に設けられた断熱材の厚さ、ヒータ61と第1の切替室戻り風路59との間に設けられた断熱材の厚さ、及びヒータ61と第2の切替室戻り風路60との間に設けられた断熱材の厚さを異ならせることで、各風路に対するヒータ61からの熱移動を異なるようにしてもよい。
すなわち、ヒータ61と冷蔵室戻り風路58との間の断熱材の厚さをtR、ヒータ61と第1の切替室戻り風路59との間の断熱材の厚さをtSとし、tRをtSよりも小さくする。ヒータ61から各風路への熱移動は、ヒータ61の、各風路と対抗する面の面積と、ヒータ61の、各風路と対抗する面の、各風路との間の断熱材の厚さtの逆数の積により求められる。よって、ヒータ61の、各風路と対抗する面と、各風路の間の断熱材の厚さt(tR、tS)を、tRをtSよりも小さくすることで、ヒータ61からの熱伝導により、第1の切替室戻り風路59よりも大きい熱を冷蔵室戻り風路58に与えることが出来る。なお、第2の切替室戻り風路60と冷蔵室戻り風路58においても同様のことがいえる。
【0059】
また、本実施の形態において、冷蔵室戻り風路58は、前方冷蔵室戻り風路58a及び中央冷蔵室戻り風路58bにより構成されるとしたが、本実施の形態はこれに限定されない。
図15のように、冷蔵室戻り風路58が、中央冷蔵室戻り風路58bと接続し、ヒータ61の後面57fに沿って下方に延伸し、冷蔵室戻り風路出口58bと連続する後方冷蔵室戻り風路58eを備えていてもよい。このような構造では、冷蔵室戻り風路58が後方冷蔵室戻り風路58eを備えない構成と比べて、ヒータ61が冷蔵室戻り風路58に与える熱量が大きく、効率よく冷蔵室戻り風路58にヒータ61からの熱を与えることができる。
【0060】
実施の形態3.
以下、本開示の実施の形態3について説明するが、実施の形態1及び2と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1及び2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫103では、最上段の棚15aを積層棚210で構成する。
【0061】
図16は、本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫103が有する、積層棚210の構成を示す縦方向の断面模式図である。
図17は、本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫103が有する、積層棚210の構成を示す上面模式図である。
図18は、本開示の実施の形態3に係る冷蔵庫103が有する、積層棚210の構成を示す縦方向の断面模式図である。
【0062】
以下、
図16~
図18を用いて、本実施の形態3に係る積層棚210の構成について説明する。
実施の形態3に係る冷蔵庫103では、切替室13の底面に最上段の棚15aとして、積層棚210が設けられている。
図16に示すように、積層棚210は、例えばガラス、樹脂などからなる複数枚の板状の棚部材220が隙間を介して積層されて構成されている。また、隣接する棚部材220間には空気が封入されており、この空気は、積層棚210における熱の変動においても対流などを抑え、静止状態が維持される働きをしている。そのため、積層棚210は、高い断熱性能を有する。以下、隣接する棚部材220間の空気が封入されている部分を静止空気層230とする。
【0063】
図16及び
図17に示すように、棚部材220の外周には、積層棚21を冷蔵庫100内へ組み付けるための樹脂フレーム240が取り付けられている。なお、積層棚210は、複数の棚部材220を、隙間を介して積層した後、その外周をゴムまたはシリコン部材で被って封止し、シール性を確保することで、静止空気層230に外部からの空気が流れ込まないような構成となっている。ここで、静止空気層230に封入する空気の除湿を行い、水分含有量を少なくした空気を静止空気層23に封入するようにしてもよい。なお、静止空気層230に外部空気が流れ込まない密閉性があれば、棚部材220の外周をゴムまたはシリコン部材で被って封止することなしに、棚部材22に直接、樹脂フレーム240を取り付ける構造としてもよい。
【0064】
図18に示すように、実施の形態3に係る積層棚200は、棚部材220間の静止空気層230に、平面視して格子状となるようなリブ部材260が設けられている。特に限定するものではないが、本実施の形態3に係るリブ部材260は、安定性を確保するため、縦断面が逆U字となる形状であるものとする。そして、リブ部材260の中には、線ヒータ250(第二加熱装置とも称する)が格納されている。線ヒータ250は、ヒータ61と同様に、切替室13内の食品を加熱して温度を上昇させる温度調節用の加熱装置となる。このように、リブ部材260の中に線ヒータ250を格納することで、積層棚210内でのヒータ発熱密度を上昇させ昇温性能を向上させることができる。
【0065】
線ヒータ250は、直径φが2~3mm程度であるものとする。そして、リブ部材260全体の厚みは5~7mm程度が望ましい。また、
図18では、最上段の静止空気層230におけるリブ部材260にのみ線ヒータ25が設けられているが、線ヒータ250を設ける静止空気層230は、1層だけでなくてもよい。
【0066】
このように、積層棚210に線ヒータ250を組み込むことにより、ヒータ61のアシスト能力として切替室13の食品へ昇温における熱量供給が可能となるとともに、積層棚210の内部において、棚部材220が結露するのを防止することができる。
【0067】
実施の形態1~3では、制御装置31が、切替室13の温度調整を、第一ダンパ40a、ヒータ61、および、線ヒータ250を制御することによって行うものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置31は、第一ダンパ40aを制御せず、線ヒータ250のみを制御することで、切替室13の温度調整を行ってもよい。
【0068】
なお、棚部材220間の各隙間に空気が封入されていなくてもよい。例えば、棚部材220間の間隔を保持し、耐久性を維持するスペーサ(図示せず)が棚部材220間の各隙間または一部の隙間に設けられていてもよい。また、隣接する棚部材220間に空気を封入する代わりに、透明な他の気体を封入してもよい。
【0069】
また、切替室13の下面である積層棚210内の加熱装置が、線ヒータ250である例について説明したが、これに限定されるものではない。リブ部材260内部であれば、例えば、熱交換器、ペルチェ素子などを加熱装置として用いてもよい。
【0070】
なお、各実施の形態を、適宜、組み合わせたり、変形や省略したりすることも、実施の形態で示された技術的思想の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示に係る冷蔵庫では、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路とが断熱材により仕切られており、互いに独立した風路を形成しているので、冷蔵温度帯に設定される貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、マイナス温度帯に設定可能な貯蔵室と冷却器室とを接続する冷気戻り風路と、における着霜や着霜による閉塞が抑制され、安定した温度制御を行う冷蔵庫を提供できる。