(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】包装材料、包装体及び包装物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241001BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20241001BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B15/20
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024000334
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2023010918の分割
【原出願日】2022-09-02
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021143861
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021144684
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021144685
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021144686
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021153039
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021192353
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021192356
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021194423
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩川 俊一
(72)【発明者】
【氏名】江島 優希
(72)【発明者】
【氏名】松久 健司
(72)【発明者】
【氏名】武井 遼
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055157(JP,A)
【文献】特開2020-203405(JP,A)
【文献】特開2007-56922(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146644(WO,A1)
【文献】特開2018-062173(JP,A)
【文献】特表2018-500206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、前記基材層と前記シーラント層との間に介在した金属蒸着層を更に備えた
包装材料であり、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上である
包装材料。
【請求項2】
前記金属蒸着層はアルミニウム蒸着層である請求項1に記載の
包装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
包装材料を含んだ包装体。
【請求項4】
スタンディングパウチである請求項3に記載の包装体。
【請求項5】
請求項3に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装体及び包装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋等に使用される包装材料には、用途に応じてさまざまな特性が求められる。必要とされる特性の例を挙げれば、包装材料として必要な耐熱性、透明性、ヒートシール性、強度、ガスバリア性、突き刺し強さ、視認性、製袋適性、印刷適性、輸送適性等々である。このようにさまざまな性能をそれぞれ十分に満たすために、従来は特性の異なる複数の種類の合成樹脂フィルムを複合して用いることが一般的に行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材料が求められている。一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられている。しかしながら、従来の包装材料は、上記したように異種の樹脂材料から構成されており、使用後に樹脂材料ごとに分離することが困難であるため、それぞれの材料としてリサイクルすることは出来なかった。したがって、従来の包装材料を用いて形成された包装体は、折角回収したとしても、燃やして熱として回収利用する以外になく、近年の地球環境保護の立場からは、相容れないものとなっているのが現状である。
【0004】
リサイクル性の観点から、ポリエチレン含有率の高い包装材料や、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とするための技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかしながら、例えば、強度や耐熱性などの面から軽包装の用途に留まるなどの問題があり、包装材料としての用途に応じて求められる様々な特性を満たすための改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2009-241359号公報
【文献】日本国特開2020-196791号公報
【文献】日本国特開2020-55157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、上記基材層と上記シーラント層とはポリエチレンを含み、上記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が35%以上である積層体が提供される。
【0008】
本発明の他の側面によると、上記基材層と上記シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ中間層を更に備えた上記側面に係る積層体が提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、上記中間層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が35%以上である上記側面に係る積層体が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、上記中間層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が35%未満である上記側面に係る積層体が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、上記基材層を間に挟んで上記シーラント層と向き合った最表層としての保護層を更に備えた上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、上記保護層は熱硬化型樹脂を含む上記側面に係る積層体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記基材層は二軸延伸フィルムである上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0014】
或いは、本発明の他の側面によると、前記基材層は一軸延伸フィルムである上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、上記基材層と上記シーラント層との間に介在したガスバリア層を更に備えた上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、上記接着剤層はガスバリア性である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、上記シーラント層が白色である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、上記積層体に占めるポリエチレンの割合は90質量%以上である上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、上記接着剤層として第1接着剤層と第2接着剤層とを含み、上記基材層と上記中間層との間に上記第1接着剤層が介在し、上記中間層と上記シーラント層との間に上記第2接着剤層が介在している上記側面の何れかに係る積層体が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る積層体を含んだ包装体が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、スタンディングパウチである上記側面に係る包装体が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性及び強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第5実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第6実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第7実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第8実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第9実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第10実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第11実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0026】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。従って、或る実施形態において言及している事項は、特に断り書きがない限り、他の実施形態にも適用することができる。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0028】
<1>第1実施形態
<1.1>積層体
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示す積層体10A1は、基材層1と印刷層4と接着剤層3とシーラント層2とをこの順に含んでいる。
【0029】
基材層1とシーラント層2とはポリエチレンを含む。積層体10A1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上であることが好ましい。ここで、積層体におけるポリエチレンの割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の合計量に占めるポリエチレンの合計量の割合を意味する。ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる。
【0030】
<1.2>基材層
基材層1はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層1はポリエチレンからなる。基材層1は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が35%以上である。ここで、基材層1の結晶化度は、後述する測定方法によって得られる値である。
【0031】
本発明に係る積層体10A1においては、基材層1の結晶化度が35%以上であることにより、基材層1の耐熱性が向上する。これにより、積層体10A1を包装材料として用いて製袋機において製袋加工をする際にも、製袋速度を低下させる必要がなく、加工適性に優れている。
【0032】
また、基材層1の結晶化度が35%以上であることで、基材層1の伸びが少なくなり、印刷適性が向上する。
【0033】
基材層1に含まれるポリエチレンは、エチレンのホモポリマーであってもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。ポリエチレンがエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、共重合体に占めるエチレンの割合は、例えば、80mol%以上である。
【0034】
他のモノマーは、例えば、α-オレフィンである。一例によると、α-オレフィンは炭素数が3乃至20の範囲内にある。そのようなα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、又は6-メチル-1-ヘプテンである。
【0035】
ポリエチレンは、エチレンと、酢酸ビニル及びアクリル酸エステルのうちの一方との共重合体であってもよい。
【0036】
基材層1は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0037】
ここで、高密度ポリエチレンは、密度が0.942g/cm3以上であり、中密度ポリエチレンは、密度が0.930g/cm3以上0.942g/cm3未満であり、低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満であり、直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3以上0.930cm3未満であり、超低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3未満である。
なお、密度は、JIS K7112:1999に準拠した方法で得られる値である。
【0038】
基材層1に含まれるポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンとしては、例えば、グリーンポリエチレン(Braskem社製)を使用することができる。
【0039】
或いは、基材層1に含まれるポリエチレンは、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。ここで、メカニカルリサイクルとは、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、その後粉砕したフィルムをアルカリ洗浄してフィルム表面上の汚れ及び異物を除去した後、高温及び減圧下で乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させることでポリエチレンフィルムの除染を行うことである。
或いは、基材層1に含まれるポリエチレンは、ケミカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。
【0040】
基材層1の融点は、100℃乃至140℃の範囲内にあることが好ましく、120℃乃至140℃の範囲内にあることがより好ましい。なお、融点は、JIS K7121-1987に準拠した方法で得られる値である。
【0041】
基材層1は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。基材層1は、延伸フィルムであることが望ましい。基材層1が結晶化度が35%以上であることに加え延伸フィルムである場合、以下の効果がある。すなわち、耐熱性及び強度に特に優れる。また、基材層1の伸びが少なくなり、印刷適性が向上する。なお、本明細書において、用語「フィルム」は厚さの概念を含まない。
【0042】
基材層1が延伸フィルムである場合、基材層1は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。基材層1として一軸延伸フィルムを使用すると、製袋時の耐熱性、即ち、後述するシール性がさらに向上する。基材層1として二軸延伸フィルムを使用すると、積層体10A1を包装材料として使用した包装物品の落下強度が向上する。
【0043】
なお、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかは、以下に説明するように、広角X線回折法によるin-plane測定を行うことにより判別することができる。この測定によって得られるX線回折パターンは、フィルム面に存在している分子鎖の配向度に関する情報を含んでいる。
【0044】
ポリマーフィルムを一軸延伸すると、シシケバブ構造と呼ばれる高次構造が現れる。シシケバブ構造は、伸長鎖晶であるシシ構造と、ラメラ晶であるケバブ構造とからなる。一軸延伸フィルムでは、この高次構造が高い秩序度で配列しており、それ故、一軸延伸フィルムに対する上記の測定によって得られるX線回折パターンは、シャープな回折ピークを含むことになる。即ち、一軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークが現れる。なお、「明瞭な回折ピーク」は、半値幅が10°未満の回折ピークを意味している。
【0045】
これに対し、二軸延伸フィルムの製造では、特定の方向へ延伸し、次いで、先の方向に対して垂直な方向へ延伸する。そのため、最初の延伸によって上記の高次構造を生じるものの、この高次構造は2回目の延伸によって乱される。そのため、二軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、これによって得られるX線回折パターンでは、回折ピークはブロードになっている。即ち、二軸延伸フィルムについて上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークは現れない。
【0046】
以上のように、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとでは、上記の測定によって得られるX線回折パターンが相違する。従って、これに基づいて、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかを判別することができる。
【0047】
フィルムは、キャスト法、インフレーション法など、公知の製法にて製造することができる。また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造のポリエチレンフィルムを基材層1として用いることも可能である。延伸フィルムは、例えば、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜して得られたフィルムを延伸することにより得られる。基材層1は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0048】
基材層1のヘイズは、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法で得られる値である。
【0049】
基材層1の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましい。基材層1の厚さは、例えば、10μm乃至50μmの範囲内であり、又は、15μm乃至50μmの範囲内であり、又は、12μm乃至35μmの範囲内である。基材層1が薄すぎると、積層体10A1の強度が小さくなりやすい。また、基材層1が厚すぎると、積層体10A1の加工適性が低下しやすい。
【0050】
基材層1は、表面処理されていることが好ましい。この処理によると、基材層1と基材層1に隣接する層との密着性を向上させることができる。
【0051】
表面処理の方法は特に限定されない。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0052】
基材層1は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂などが挙げられる。
【0053】
基材層1に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、基材層1は、ポリエチレンからなる。他の例によると、基材層1はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0054】
基材層1は、着色されていてもよく、例えば、白色であってよい。
【0055】
基材層1は、上述したとおり、結晶化度が35%以上である。印刷層4は、基材層1の内面側に配置されているが、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。この観点から、基材層1の結晶化度は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。結晶化度は、一例によると、50%乃至75%の範囲内にある。また、結晶化度が35%以上であるポリエチレン含有層は、以下に説明するように、突き刺し強度にも優れる。この観点から、基材層1の結晶化度は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0056】
ポリエチレンは結晶性高分子であるため結晶部と非晶部を併せ持っている。結晶化度が高いポリエチレンは、結晶部分の比率が高い。この結晶部分は樹脂の粘弾性挙動における弾性部分を支配するため、結晶化度が高いとフィルムの剛性が向上する。
【0057】
この粘弾性挙動の影響で、結晶化度の高いフィルムにおいては、樹脂の塑性変形に伴う歪も大きくなる。その結果、フィルムに加わった瞬間衝撃にて発生した歪に対して樹脂の変形を抑制する効果が得られ、破壊が起きにくくなる。このため、ポリエチレンを含み結晶化度が35%以上の基材1を備えた積層体10A1は、瞬間衝撃に対する耐性に優れ、積層体10A1を包装材料として使用した包装物品は、落下による破損(破袋)を生じ難い。すなわち、破袋耐性に優れる。
【0058】
基材層1の結晶化度は、基材層1に使用するポリエチレンフィルムの延伸度合いや、フィルム製造時又は製造後の熱履歴を制御することなどで調整することができる。例えば、製膜後に徐冷すると結晶化度は高まり、急冷すると結晶化度は下がる。また、結晶核剤などの添加物を配合することで結晶化度を向上させることも可能である。
【0059】
<結晶化度の測定方法>
基材層1の結晶化度は、平行ビーム法を用いたX線回折法によって測定する。以下に結晶化度の測定方法の一例について説明する。
【0060】
先ず、基材層1のX線回折パターンを、リガク社製の広角X線回折装置を使用し、アウト・オブ・プレーン(Out-of-plane)測定で、回折角度10°~30°の範囲を2θ/θスキャンさせることで得る。X線は特性X線CuKαを用い、多層膜ミラーによりX線を平行化してX線を基材層1へ入射させ、受光ユニットには平板コリメータを取り付けたシンチレーション検出器を用いる。
【0061】
得られたX線回折パターンより、結晶成分のピーク面積と非晶成分のハローパターン面積とを求め、それら面積の合計に占める結晶成分のピーク面積の割合を結晶化度として算出する。
基材層1が複数の層を有する場合は、基材層1の最表面の何れか一方の結晶化度を測定する。
【0062】
基材層1がポリエチレンフィルムの場合、回折角度10°~30°の範囲でスキャンを行うと、(110)面と(200)面に対応する2つのシャープな結晶成分のピークとブロードな非晶成分のハローパターンとが観測される。これらを分離解析し、結晶成分のピークの面積と非晶成分のハローパターンの面積を算出すると、下記式(1)より結晶化度が求められる。
【0063】
結晶化度=結晶成分のピーク面積/(結晶成分のピーク面積+非晶成分のハローパターン面積)…(1)
平行ビーム法以外のX線回折法として集中法が知られているが、集中法では、樹脂フィルム等の表面に凹凸を有する試料の場合、測定面の位置ずれによるピークの広がり等の測定結果への影響が生じやすい。これに対し、平行ビーム法では、表面に凹凸を有する試料の場合であっても、測定面の位置ずれが測定結果へ及ぼす影響が小さい。
【0064】
一方で、基材層1は1軸延伸ないし2軸延伸であることが好ましいが、上述の通り、これらの判別法としては、X線回折法によるin-plane法を用いることが可能である。このin-plane法は、X線入射角度θ、及び、回折されたX線が検出器にて検知される角度2θを、それぞれ、上記のout-of-plane法において特定の結晶面に対応した回折ピーク、例えば、ポリエチレンフィルムの(110)面に対応した回折ピークが検出されたときの角度θ及び角度2θへ固定し、この状態で、測定対象であるフィルムを面内方向にスキャンすることで回折パターンを得るというものである。
【0065】
機械方向(MD)に一軸延伸された一軸延伸フィルムに対してin-plane測定を行うと、MD方向を0°と定義した場合、(110)面に対応したシャープな回折ピークを角度2θが約±90°の位置に有する回折パターンを得ることができる。一方で、二軸延伸されたフィルムの場合は、一軸延伸により得られた高次構造が2回目の延伸により乱され、異方性が低下しているため、この(110)面に対応したシャープな回折ピークを有している回折パターンは得られない。従って、in-plane測定は、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとを互いから区別する方法の一つとして挙げることができる。
【0066】
<1.3>シーラント層
シーラント層2は、基材層1と向き合っている。シーラント層2はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層2はポリエチレンからなる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。シーラント層2は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超密度ポリエチレン(VLDPE)であり、より好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0067】
ポリエチレンは、環境負荷の観点から、バイオマス由来のポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンであることが好ましい。
【0068】
シーラント層2は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。
シーラント層2に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、シーラント層2は、ポリエチレンからなる。他の例によると、シーラント層2はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0069】
シーラント層2は、透明であってもよく、不透明であってもよい。後者の場合、シーラント層2は白色であることが好ましい。シーラント層2が透明である積層体10A1は、これを包装体に使用した時に、内容物を視認し易い。シーラント層2が不透明である積層体10A1は、これを包装体に使用した時に、印刷層4が表示する画像の視認を内容物が妨げることがない。特に、白色のシーラント層2は、印刷層4が表示する画像の視認性を向上させる。
【0070】
シーラント層2の厚さは、製造する包装袋の形状や、収容される内容物の質量等を考慮して適宜設定できるが、例えば30~150μmとすることができる。
【0071】
シーラント層2は、例えば、未延伸のポリエチレン樹脂フィルム、又はポリエチレンの溶融押出により形成される層である。
【0072】
<1.4>印刷層
印刷層4は、基材層1のシーラント層2と向き合った面に、即ち、基材層1の裏面に設けられている。なお、印刷層4が設けられる位置は限定されない。すなわち、印刷層4は、基材層1の表面に設けられてもよいし、基材層1とシーラント層2との間であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、積層体10A1が後述する中間層を更に含んでいる場合には、印刷層4は、中間層の何れかの面に設けてもよい。また、積層体10A1は、複数の印刷層を含んでいてもよい。印刷層4は、省略してもよい。
【0073】
印刷層4に用いる印刷インキとしては、ポリエチレンに対する付着性を有するものであれば、特に限定されない。印刷層4は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、及び塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダ樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤等の添加剤が添加されているインキにより構成される。印刷インキとしては、バイオマス由来のインキを用いることが好ましい。印刷方式としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、及びシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、及びグラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。また、遮光性インキも好ましく使用することができる。例えば、白色、黒色、銀インキ、セピア等が挙げられる。
【0074】
<1.5>接着剤層
接着剤層3は、印刷層4が設けられた基材層1とシーラント層2とを貼り合わせている。接着剤層3は、少なくとも1種類の接着剤を含む。接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよく、非硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型接着剤であってもよく、溶剤型接着剤であってもよい。
【0075】
接着剤としては、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミン系接着剤等のエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤などが挙げられる。バイオマス成分を含む接着剤も好ましく用いることができる。接着剤は、好ましくは、ガスバリア性を有するポリアミン系接着剤、又はウレタン系接着剤である。ガスバリア性接着剤の具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」及びDIC社製の「Paslim」が挙げられる。
【0076】
接着剤層3は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。このような接着剤層3は、積層体10A1の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を更に改善することができる。
【0077】
接着剤層3の厚さは、0.1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、1乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0078】
接着剤層3は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、シーラント層2の上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。
【0079】
<1.6>効果
上述した積層体10A1は、耐熱性及びリサイクル性に優れている。これについて、以下に説明する。
【0080】
包装袋の製造には、一般に、積層体のシーラント層同士を接触させ、それらが接触した部分を治具で挟んで圧力及び熱を加えることにより、上記接触部を熱溶着(ヒートシール)させる工程がある。ヒートシール機の治具は高温になっており、治具に直接接触する基材層の表面は高温に曝される。その結果、耐熱性が劣るポリエチレンを基材層に使用した場合、基材層の表面が熱に冒されて治具に付着するなどの不具合が生じる場合がある。そのため、ポリエチレンを基材層に使用した従来の積層体は、製袋温度の適正条件が狭く、生産性が悪いことが課題となっていた。
【0081】
本発明者らは、種々のポリエチレンについて上記の結晶化度を測定した結果、基材層1の結晶化度が35%以上であると、基材層1が優れた耐熱性を示し、それ故、積層体10A1も優れた耐熱性を示すことを見出し、特には良好なヒートシール適性を達成することを見出した。積層体10A1では、基材層1として、一般に耐熱性が乏しいと言われているポリエチレンを用いている。しかしながら、基材層1の結晶化度を35%以上とすることにより、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を生じることなく、更にはシール部の収縮による外観不良を生じることもなく、包装体を製造することができる。
【0082】
このように優れた耐熱性を有する積層体10A1は、基材層1の結晶化度を指標とするものであるため、積層体10A1の表面特性を簡易に測定し、把握することができ、包装材料としての品質を容易に安定化できる。
【0083】
更に、積層体10A1は、ポリエチレンを主成分とする基材層1及びシートヒール層を備えるため、ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることが容易である。従って、積層体10A1はリサイクル性にも優れている。
【0084】
<1.7>変形例
積層体10A1には、様々な変形が可能である。
図2は、
図1に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。
図2に示す積層体10A2は、基材層1と印刷層4との間に介在した無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10A1と同様である。無機化合物層5は、無機化合物、例えば、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物からなる薄膜であり、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア層として機能する。
【0085】
<無機化合物層>
無機化合物層5は、塗工によって形成したものであってもよく、無機化合物を蒸着したものであってもよい。
【0086】
無機化合物層5に含有される無機化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。無機化合物層5は、例えば、金属酸化物からなる蒸着膜であることが好ましい。透明性及びバリア性の観点から、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。さらに、コストを考慮すると、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素から選択される。さらに、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、金属酸化物として酸化ケイ素を用いることがより好ましい。無機化合物層5を金属酸化物からなる蒸着膜とすることにより、積層体10A2のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0087】
金属酸化物からなる蒸着膜は、透明性を有するため、金属からなる蒸着膜と比べて、積層体からなる包装材料を手にする使用者に、金属箔が使用されているとの誤認を生じさせにくいという利点がある。
【0088】
酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0089】
酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0090】
無機化合物層5は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0092】
<アンカーコート層>
積層体10A2は、第2実施形態においても説明するように、図示しないアンカーコート層を更に含んでいてよい。アンカーコート層は、基材層1の無機化合物層5が形成される側の面に、公知のアンカーコート剤を用いて形成することができる。これにより、金属酸化物からなる無機化合物層5の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、アンカーコート剤はポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0093】
<被覆層>
また、積層体10A2は、第2実施形態においても説明するように、無機化合物層5と印刷層4との間に、図示しない被覆層を更に含んでいてもよい。無機化合物層5と被覆層との組み合わせも、ガスバリア層として機能し得る。以下において、無機化合物層5をガスバリア層という場合もあれば、無機化合物層5と被覆層との組み合わせをガスバリア層という場合もある。
【0094】
積層体10A2も、耐熱性に優れている。また、上記の無機化合物層5は実質的に透明であるから、無機化合物層5を基材層1と印刷層4との間に設けても、表面側から印刷層4が表示する画像を視認することができる。そして、積層体10A2もリサイクル性に優れている。
【0095】
また、積層体10A1及び10A2には、遮光性を付与するために、基材層1とシーラント層2との間に金属蒸着層を設けてもよい。積層体が後述する中間層を更に含んでいる場合は、中間層の何れかの面に金属蒸着層を設けてもよい。金属蒸着層としてはアルミニウム蒸着層を挙げることができる。
【0096】
また、シーラント層2が不透明であってもよいことを既に述べたが、基材層1も不透明であってもよい。例えば、基材層1は白色であってもよい。積層体が後述する中間層を更に含んでいる場合は、中間層は不透明であってもよい。例えば、中間層は白色であってもよい。
【0097】
<2>第2実施形態
<2.1>積層体
図3は、本発明の第2実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図3に示す積層体10Bは、保護層6と基材層1とガスバリア層5と印刷層4と接着剤層3とシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Bが含んでいるガスバリア層5は、無機化合物層、又は無機化合物層と被覆層からなる。積層体10Bは、基材層1の表面に設けられた保護層6と、基材層1と印刷層4との間に介在したガスバリア層5とを更に含んでいること以外は、積層体10A1と同様である。積層体10Bが備える基材層1、印刷層4、接着剤層3及びシーラント層2としては、第1実施形態において説明したものを使用することができる。
【0098】
<2.2>保護層
積層体10Bは、最表層として保護層6を備える。
保護層6は、熱硬化型樹脂を含む。熱硬化型樹脂は、耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例としてポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及び水溶性高分子等が挙げられる。保護層6は、熱硬化型樹脂を1種含むものであってもいし、2種以上を含むものであってもよい。
【0099】
保護層6は、一形態において、水溶性高分子を含むことが好ましく、さらに有機金属化合物を含む有機無機複合層であることが好ましい。
【0100】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。保護層6は、一形態において、後述するガスバリア層5としての被覆層が含有し得るポリビニルアルコール系水酸基含有高分子を含むことが好ましい。
【0101】
保護層6は、有機金属化合物として、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いはその加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含有することが好ましい。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるものが挙げられる。
【0102】
また、保護層6は、有機金属化合物として更に、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0103】
保護層6は、一形態において、後述するガスバリア層5としての被覆層を形成するための塗布液を用いて形成することができる。また、積層体10Bがガスバリア層5として無機化合物層と被覆層とを含む場合、保護層6は、その被覆層を形成するために用いる塗布液と同じ塗布液を用いて形成された層であってよい。
【0104】
保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。積層体10Bは、耐熱性に優れる保護層6を最表層に備えることにより、耐熱性に劣るポリエチレン樹脂を基材としながらも、ヒートシール性及び生産性が確保される。
【0105】
保護層6の厚さは、0.3μm乃至3μmの範囲内にあることが好ましい。保護層6が薄すぎると、高い耐熱性を達成しにくい傾向にある。保護層6が厚すぎると、積層体10Bの製造過程において樹脂硬化膜を十分に乾燥させることが難しくなりやすい。
【0106】
<2.3>ガスバリア層
ガスバリア層5は、例えば、積層体10Bの酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる。
ガスバリア層5は、無機化合物層、又は無機化合物層と被覆層からなる。ガスバリア層5が無機化合物層と被覆層からなる場合、基材層1の側から無機化合物層及び被覆層の順に積層されることが好ましい。ガスバリア層5は、塗工によって形成したものであってもよく、無機化合物を蒸着したものであってもよい。無機化合物層については、実施形態1の変形例において説明した無機化合物層と同様である。
【0107】
被覆層は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0108】
被覆層は、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いは金属アルコキシドの加水分解物の反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む有機無機複合層であってよい。この有機無機複合層は、更に、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含んでいてよい。
【0109】
有機無機複合層に含まれる金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0110】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から40質量%以上であってよく、50質量%以上であってよく、65質量%以上であってよい。また、上記塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、70質量%以下であってよい。
【0111】
有機無機複合層に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000~180000である。
【0112】
有機無機複合層に含まれるポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0113】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。また、上記塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよい。
【0114】
有機無機複合層に使用されるシランカップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
シランカップリング剤としては、有機官能基としてエポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
有機官能基を有するシランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層の酸素バリア性と、隣接する層との密着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物がエポキシ基を有し、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)である場合、エポキシ基とPVAの水酸基との相互作用により、酸素バリア性と、隣接する層との密着性を更に向上することができる。
【0117】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、シランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。また、上記塗液におけるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以下であってよく、12質量%以下であってよい。
【0118】
被覆層の厚さは、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。ガスバリア性被覆層の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0119】
ガスバリア層5には、上述した表面処理が施されていることが好ましい。これにより、ガスバリア層5と隣接する層との密着性を向上させることができる。
なお、ガスバリア層5の材料としてはナノコンポジットを使用してもよい。
【0120】
積層体10Bでは、印刷層4がガスバリア層5と接着剤層3との間に介在しているが、保護層6とシーラント層2との間の何れの位置に設けられてもよい。基材層1は、透明であるため、例えば印刷層4が基材層1とシーラント層2との間の何れの位置に含まれる場合でも、保護層6側から積層体10Bを観察した場合に、印刷層4が表示するパターンを鮮明に見ることができる。
【0121】
<アンカーコート層>
積層体10Bは、基材層1の主面のうち、ガスバリア層5と対向する主面に、図示しないアンカーコート層を更に含んでいてもよい。これにより、ガスバリア層5の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、アンカーコート剤はポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0122】
積層体10Bに占めるポリエチレンの割合は、例えば、90質量%以上である。これにより、積層体10Bは、リサイクル性の高いモノマテリアルとして構成される。
【0123】
<2.4>効果
積層体10Bは、積層体10A1と同様、ポリエチレンを含み結晶化度が上記範囲にある基材層1を備えている。それ故、積層体10Bは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0124】
また、積層体10Bは、最表層に保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10Bは、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10Bについて上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下やシール部の収縮による外観不良を更に生じ難くなる。
【0125】
また、上述したガスバリア層5、すなわち、無機化合物層及び被覆層は実質的に透明であるから、ガスバリア層5を基材層1と印刷層4との間に設けても、表面側から印刷層4が表示する画像を視認することができる。
即ち、積層体10Bは、耐熱性及びリサイクル性に優れている。
【0126】
<3>第3実施形態
<3.1>積層体
図4は、本発明の第3実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図4に示す積層体10Cは、保護層6と基材層1と無機化合物層5と被覆層7と印刷層4と接着剤層3とシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Cは、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。積層体10Cは、ガスバリア層5として基材層1の側から無機化合物層と被覆層を含む、上述した第2実施形態に係る積層体10Bと同様の層構成を有している。積層体10Cが備える保護層6、基材層1、無機化合物層5、被覆層7、印刷層4、接着剤層3及びシーラント層2は、第2実施形態において説明したものを使用することができる。積層体10Cにおいて、無機化合物層5と被覆層7と印刷層4は省略することができる。
【0127】
<アンカーコート層>
積層体10Cは、第2実施形態に係る積層体10Bと同様に、基材層1の主面のうち、無機化合物層5と対向する主面に、図示しないアンカーコート層を更に含んでいてもよい。これにより、無機化合物層5の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、アンカーコート剤はポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0128】
<3.3>効果
積層体10Cは、積層体10Bと同様の層構成を有するため、積層体10Bと同様の効果を奏する。
【0129】
<4>第4実施形態
<4.1>積層体
図5は、本発明の第4実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図5に示す積層体10Dは、基材層1と第1接着剤層3Aとガスバリア層5と中間層8と印刷層4と第2接着剤層3Bとシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Dは、以下の事項を除き、積層体10Bと同様である。即ち、積層体10Dは、中間層8を更に含んでいる。また、積層体10Dは、接着剤層3の代わりに第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを含んでいる。積層体10Dが備える基材層1、印刷層4及びシーラント層2としては、第1実施形態において説明したものを使用することができる。
【0130】
<4.2>ガスバリア層
ガスバリア層5は、例えば、積層体10Dの酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる。ガスバリア層5は、例えば、金属層、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの2以上の組み合わせである。電子レンジによるマイクロ波加熱が想定される場合、ガスバリア層5は、無機酸化物層、樹脂含有層、又は、それらの組み合わせであることが好ましい。
【0131】
ガスバリア層5は、塗工によって形成したものであってもよく、溶融成形によって形成したものであってもよく、無機酸化物を蒸着したものであってもよい。或いは、ガスバリア層5は、アルミニウム箔などの金属箔であってもよく、アルミニウムなどの金属を蒸着したものであってもよい。
【0132】
無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化ホウ素、又は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化イットリウムなどの金属酸化物を使用できる。
【0133】
樹脂含有層は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0134】
樹脂含有層を溶融成形によって形成する場合、例えば、Tダイやインフレーションなどの押出成形技術を利用することができる。溶融成形では、例えば、上記樹脂又は上記樹脂と添加剤との混合物を加熱溶融し、Tダイやインフレーション等により、ガスバリア層5として使用するフィルムやシートを得る。そして、このフィルム又はシートを中間層8と貼り合わせる。
【0135】
ガスバリア層5の厚さは、例えば、無機酸化物層であれば、1nm乃至200nmの範囲内にあることが好ましい。厚さが1nm以上であれば、優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性が得られる。厚さが200nm以下であれば、製造コストを低く抑えられるとともに、折り曲げや引っ張りなどの外力による亀裂が生じにくく、バリア性の劣化を抑えられる。また例えば、樹脂含有層であれば、0.1μm乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、0.2μm乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。厚さが0.2μm以上であれば、優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性が得られる。厚さが10μm以下であれば、製造コストを低く抑えることができる。
【0136】
ガスバリア層5には、上述した表面処理が施されていることが好ましい。これにより、ガスバリア層5と隣接する層との密着性を向上させることができる。
なお、ガスバリア層5の材料としてはナノコンポジットを使用してもよい。
【0137】
<4.3>中間層
中間層8は、ポリエチレンを含む。ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。
【0138】
中間層8に含まれるポリエチレンは、基材層1に含まれるポリエチレンと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、中間層8は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。
【0139】
中間層8に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、中間層8は、ポリエチレンからなる。他の例によると、中間層8はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0140】
中間層8は、35%以上の結晶化度を有している。中間層8は、40%以上の結晶化度を有していることが好ましく、50%以上の結晶化度を有していることがより好ましい。中間層8の結晶化度は、一例によると、50%乃至75%の範囲内にある。
【0141】
結晶化度が35%以上の中間層8は、積層体10Dの強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10Dは、強度、特には突き刺し強度に優れている。ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10Dは、ピンホールを発生し難い。この観点から、結晶化度が35%以上の中間層8は、延伸フィルムであることが好ましく、基材層1及び中間層8の双方が延伸フィルムであることがより好ましい。この場合、中間層8を構成する延伸フィルムは、基材層1を構成する延伸フィルムと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0142】
中間層8の融点は、100℃乃至140℃の範囲内にあることが好ましく、120℃乃至140℃の範囲内にあることがより好ましい。
【0143】
中間層8の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、15μm乃至50μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0144】
中間層8は、着色されていてもよく、例えば、白色であってよい。
【0145】
中間層8としては、キャスト法、インフレーション法など、公知の製法にて製造することができる。また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造のポリエチレンフィルムを中間層8として用いることも可能である。延伸フィルムは、例えば、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜して得られたフィルムを延伸することにより得られる。
【0146】
なお、この実施形態において、結晶化度が35%未満の中間層を用いても良い。結晶化度が35%未満の中間層を用いることで積層体10Dの強度、特には落下強度を向上させることができる。結晶化度が35%未満の中間層としては無延伸フィルムであることが好ましい。
【0147】
<4.4>接着剤層
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを形成するための接着剤は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bを形成するための接着剤は、少なくとも1種類の接着剤を含む。
【0148】
接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよく、非硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型接着剤であってもよく、溶剤型接着剤であってもよい。
【0149】
接着剤としては、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミン系接着剤等のエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤などが挙げられる。バイオマス成分を含む接着剤も好ましく用いることができる。接着剤は、好ましくは、ガスバリア性を有するポリアミン系接着剤、又はウレタン系接着剤である。
【0150】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bは、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。このような第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bは、積層体10Dの酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れる。
【0151】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bの厚さは、各々、0.1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、1乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0152】
第1接着剤層3A及び第2接着剤層3Bは、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、基材層1の上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。
【0153】
なお、
図5では、積層体10Dは、第1の接着剤層3Aと中間層8との間にガスバリア層5を含んでいるが、積層体10Dは、中間層8と第2の接着剤層3Bとの間にガスバリア層5を含んでいてもよい。
【0154】
また、
図5では、印刷層4は、中間層8と第2の接着剤層3Bとの間に設けられているが、印刷層4は、基材層1とシーラント層2との間の何れに位置に設けてもよい。印刷層4は、第1の接着剤層3Aと基材層1との間に設けられていることが好ましい。この場合、基材層1側から積層体10Bを観察した場合に、印刷層4が表示するパターンが鮮明に見えやすい。
【0155】
また、基材層1の主面のうち、第1の接着剤層3Aと対向する面にはアンカーコート層を形成してもよい。また、ガスバリア層5及び印刷層4は省略してもよい。
【0156】
積層体10Dに占めるポリエチレンの割合は、例えば、90質量%以上である。これにより、積層体10Dは、リサイクル性の高いモノマテリアルとして構成される。
【0157】
<4.5>効果
上述した積層体10Dは、積層体10A1と同様、ポリエチレンを含み結晶化度が上記範囲にある基材層1を備えている。それ故、積層体10Dは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0158】
また、積層体10Dは、結晶化度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10Dの強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10Dは、強度、特には突き刺し強度に優れている。
【0159】
そして、積層体10Dは、基材層1、中間層8及びシーラント層2は何れもポリエチレンを含んでいるため、この積層体はリサイクル性に優れている。
【0160】
また、上述したとおり、ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10Dは、ピンホールを発生し難い。
【0161】
ここで、積層体10Dの「突き刺し強さ」は、JIS Z1707:2019「食品包装用プラスチックフィルム通則」に規定される方法において、積層体10Dに対して基材層1側から突き刺した場合によって得られる値である。具体的には、直径が1mmであり、先端部が半円形の針を、積層体10Dに対して基材層1側から50mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大力を測定する。この測定を複数回行い、最大力の算術平均を突き刺し強さとして得る。
【0162】
<5>第5実施形態
<5.1>積層体
図6は、本発明の第5実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図6に示す積層体10Eは、保護層6と基材層1と印刷層4と第1接着剤層3Aと中間層8とガスバリア層5と第2接着剤層3Bとシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Eは、以下の事項を除き、積層体10Dと同様である。即ち、積層体10Eは、保護層6を更に含んでいる。積層体10Eでは、無機化合物層5は、第2接着剤層3Bと中間層8との間に介在している。積層体10Eでは、印刷層4は、基材層1と第1接着剤層3Aとの間に介在している。積層体10Eが備える基材層1、印刷層4、第1接着剤層3A、中間層8、第2接着剤層3B及びシーラント層2としては、第4実施形態において説明したものを使用することができる。
【0163】
<5.2>保護層
保護層6は、熱硬化型樹脂を含む。熱硬化型樹脂は、耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例としてポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及び水溶性高分子等が挙げられる。保護層6は、熱硬化型樹脂を1種含むものであってもいし、2種以上を含むものであってもよい。
【0164】
保護層6は、一形態において、水溶性高分子と有機金属化合物を含む有機無機複合層であることが好ましい。
【0165】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。保護層6は、一形態において、後述するガスバリア層5としての被覆層が含有し得るポリビニルアルコール系水酸基含有高分子を含むことが好ましい。
【0166】
保護層6は、有機金属化合物として、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いはその加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含有することが好ましい。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるものが挙げられる。
【0167】
また、保護層6は、有機金属化合物として更に、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0168】
保護層6は、一形態において、後述するガスバリア層5としての被覆層を形成するための塗布液を用いて形成することができる。また、積層体10Eがガスバリア層5として無機化合物層と被覆層とを含む場合、保護層6は、その被覆層を形成するために用いる塗布液と同じ塗布液を用いて形成された層であってよい。
【0169】
積層体10Eは、耐熱性に優れる保護層6を最表層に備えることにより、耐熱性に劣るポリエチレン樹脂を基材としながらも、ヒートシール性及び生産性が確保される。
【0170】
保護層6の厚さは、0.3μm乃至3μmの範囲内にあることが好ましい。保護層6が薄すぎると、高い耐熱性を達成しにくい傾向にある。保護層6が厚すぎると、積層体10Eの製造過程において樹脂硬化膜を十分に乾燥させることが難しくなりやすい。
【0171】
<5.3>ガスバリア層
ガスバリア層5は、例えば、積層体10Eの酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる。
ガスバリア層5は、無機化合物層又は無機化合物層と被覆層からなる。ガスバリア層5が無機化合物層と被覆層からなる場合、中間層8の側から無機化合物層及び被覆層の順に積層されることが好ましい。
【0172】
ガスバリア層5は、塗工によって形成したものであってもよく、無機化合物を蒸着したものであってもよい。
【0173】
無機化合物層に含有される無機化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。無機化合物層は、例えば、金属酸化物からなる蒸着膜であることが好ましい。透明性及びバリア性の観点から、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。さらに、コストを考慮すると、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素から選択される。さらに、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、金属酸化物として酸化ケイ素を用いることがより好ましい。ガスバリア層5に含まれる無機化合物層を金属酸化物からなる蒸着膜とすることにより、積層体10Eのリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0174】
金属酸化物からなる蒸着膜は、透明性を有するため、金属からなる蒸着膜と比べて、積層体からなる包装材料を手にする使用者に、金属箔が使用されているとの誤認を生じさせにくいという利点がある。
【0175】
酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0176】
酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0177】
無機化合物層は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0178】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0179】
被覆層は、例えば、塗工で形成することができる。この場合、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0180】
被覆層は、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いは金属アルコキシドの加水分解物の反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む有機無機複合層であってよい。この有機無機複合層は、更に、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含んでいてよい。
【0181】
有機無機複合層に含まれる金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0182】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から40質量%以上であってよく、50質量%以上であってよく、65質量%以上であってよい。また、上記塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、70質量%以下であってよい。
【0183】
有機無機複合層に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000~180000である。
【0184】
有機無機複合層に含まれるポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0185】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。また、上記塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよい。
【0186】
有機無機複合層に使用されるシランカップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0187】
シランカップリング剤としては、有機官能基としてエポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0188】
有機官能基を有するシランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、有機無機複合層の酸素バリア性と、隣接する層との密着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物がエポキシ基を有し、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)である場合、エポキシ基とPVAの水酸基との相互作用により、酸素バリア性と、隣接する層との密着性を更に向上することができる。
【0189】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、シランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。また、上記塗液におけるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以下であってよく、12質量%以下であってよい。
【0190】
ガスバリア層5には、上述した表面処理が施されていることが好ましい。これにより、ガスバリア層5と隣接する層との密着性を向上させることができる。
なお、ガスバリア層5の材料としてはナノコンポジットを使用してもよい。
【0191】
被覆層の厚さは、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。ガスバリア性被覆層の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0192】
<アンカーコート層>
積層体10Eは、中間層8のガスバリア層5が形成される側の面に図示しないアンカーコート層を更に備えていてよい。あるいは、積層体10Eは、基材層1の主面のうち、第1の接着剤層3Aと対向する面に図示しないアンカーコート層を更に備えていてよい。アンカーコート層は、公知のアンカーコート剤を用いて形成することができる。これにより、金属酸化物からなる無機化合物層の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、アンカーコート剤はポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0193】
なお、
図6に示される積層体10Eは、基材層1と第1の接着剤層3Aとの間に印刷層4を含んでいるが、印刷層4は、保護層6とシーラント層2との間の何れの位置に含まれていてもよい。積層体10Eに含まれる基材層1と中間層8は透明であるため、印刷層4が何れの位置に含まれる場合でも、保護層6側から積層体10Eを観察した場合に、印刷層4が表示するパターンを鮮明に見ることができる。一例によれば、印刷層4は中間層8と保護層6との間に含まれることが、印刷層4が表示するパターンがより鮮明に見えやすく好ましい。
【0194】
また、
図6では、積層体10Eは、中間層8のシーラント層2に対向する面上にガスバリア層5を含んでいるが、積層体10Eは、中間層8の基材層1に対向する面上にガスバリア層5を含んでいてもよい。
【0195】
積層体10Eに占めるポリエチレンの割合は、例えば、90質量%以上である。これにより、積層体10Eは、リサイクル性の高いモノマテリアルとして構成される。
【0196】
<5.4>効果
上述した積層体10Eは、積層体10A1と同様、結晶化度が上記範囲にあるポリエチレン含有層を基材層1として備えている。それ故、積層体10Eは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0197】
また、積層体10Eは、保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10Eは、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10Eについて上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0198】
また、積層体10Eは、結晶化度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10Eの強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10Eは、強度、特には突き刺し強度に優れている。
【0199】
そして、積層体10Eは、基材層1、中間層8及びシーラント層2は何れもポリエチレンを含んでいるため、この積層体はリサイクル性に優れている。
【0200】
また、ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10Eは、ピンホールを発生し難い。
【0201】
また、積層体10Eにおいて、基材層1及び中間層8は透明であることから、例えば、印刷層4が基材層1及びシーラント層2の間の何れの位置に含まれる場合でも、保護層6側から印刷層4を観察した場合に、印刷層4が表示するパターンが鮮明に見える。また、上述した積層体10Eを含んだ包装物品においては、内容物の視認性が高い。
【0202】
<6>第6実施形態
<6.1>積層体
図7は、本発明の第6実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図7に示す積層体10Fは、保護層6と基材層1と印刷層4と第1接着剤層3Aと中間層8とガスバリア層5と第2接着剤層3Bとシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Fは、中間層8の結晶化度が35%未満であること以外は、積層体10Eと同様である。積層体10Fが備える上記層の中で、中間層8以外の層、すなわち、保護層6、基材層1、印刷層4、第1接着剤層3A、ガスバリア層5、第2接着剤層3B及びシーラント層2としては、第5実施形態において説明したものを使用することができる。
【0203】
<6.2>中間層
中間層8は、ポリエチレンを含む。ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。中間層8は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0204】
中間層8に含まれるポリエチレンは、基材層1に含まれるポリエチレンと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、中間層8は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。
【0205】
中間層8に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、中間層8は、ポリエチレンからなる。他の例によると、中間層8はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0206】
中間層8の結晶化度は35%未満である。中間層8の結晶化度は、30%以下であることが好ましい。中間層8の結晶化度は、15%以上であることが好ましい。
【0207】
結晶化度が35%未満の中間層8は、積層体10Fの強度、特には落下強度を高めることができる。このような中間層8としては無延伸フィルムであることが好ましい。落下強度の観点からは、中間層8が結晶化度が35%未満の無延伸フィルムであり、基材層1が結晶化度が35%以上の延伸フィルムであることが好ましい。
【0208】
なお、この実施形態において、結晶化度が35%以上の中間層を用いても良い。結晶化度が35%以上の中間層を用いた場合、積層体10の強度、特には突き刺し強度を向上させることができる。結晶化度が35%以上の中間層としては延伸フィルムであることが好ましい。
【0209】
中間層8の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、15μm乃至50μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0210】
中間層8としては、上述したキャスト法、インフレーション法など、公知の製法にて製造することができ、また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造のポリエチレンフィルムを基材層1として用いることも可能である。
【0211】
<アンカーコート層>
積層体10Fは、中間層8のガスバリア層5が形成される側の面に図示しないアンカーコート層を更に備えていてよい。あるいは、積層体10Fは、基材層1の主面のうち、第1の接着剤層3Aと対向する面に図示しないアンカーコート層を更に備えていてよい。アンカーコート層としては、第5実施形態において説明したものを使用することができる。
【0212】
なお、
図7では、積層体10Fは、中間層8と第2の接着剤層3Bとの間にガスバリア層5を含んでいるが、積層体10Fは、第1の接着剤層3Aと中間層8との間にガスバリア層5を含んでいてもよい。
【0213】
また、
図7では、印刷層4は、基材層1と第1の接着剤層3Aとの間に設けられているが、印刷層4は、保護層6と第1の接着剤層3Aとの間に設けられていることが好ましい。この場合、保護層6側から積層体10Fを観察した場合に、印刷層4が表示するパターンが鮮明に見えやすい。
【0214】
また、積層体10Fにおいて、印刷層4及びガスバリア層5は省略してもよい。
【0215】
積層体10Fに占めるポリエチレンの割合は、例えば、90質量%以上である。これにより、積層体10Fは、リサイクル性の高いモノマテリアルとして構成される。
【0216】
<6.3>効果
上述した積層体10Fは、基材層1の結晶化度が上記範囲内にある。それ故、積層体10Fは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0217】
また、積層体10Fは、保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10Fは、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10Fについて上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0218】
また、積層体10Fは、結晶化度が上記範囲にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10Fの強度、特には落下強度を高める。即ち、積層体10Fでは、包装体において使用した場合に、基材層1の内側に位置する中間層8は、基材層1と比較して軟らかい。この構造は、積層体10Fを包装材料として使用した包装物品を落下させた場合に生じる衝撃を吸収するのに適している。それ故、積層体10Fを包装材料として使用した包装物品は、落下による破損(破袋)を生じ難い。従って、積層体10Fは、強度、特には落下強度に優れている。
【0219】
そして、積層体10Fは、基材層1、中間層8及びシーラント層2が何れもポリエチレンを含んでいるため、リサイクル性に優れている。
【0220】
<7>第7実施形態
<7.1>積層体
図8は、本発明の第7実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図8に示す積層体10Gは、保護層6と基材層1と印刷層4と第1接着剤層3Aと中間層8と無機化合物層5と被覆層7と第2接着剤層3Bとシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Gは、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。積層体10Gは、第5実施形態に係る第積層体10Eが備えるガスバリア層5が無機化合物層と被覆層からなる形態である場合と同様である。積層体10Gが備える保護層6、基材層1、印刷層4、第1接着剤層3A、中間層8、無機化合物層5、被覆層7、第2接着剤層3B及びシーラント層2としては、第5実施形態において説明したものを使用することができる。
【0221】
<7.2>効果
積層体10Gは、積層体10A1と同様、結晶化度が上記範囲にあるポリエチレン含有層を基材層1として備えている。それ故、積層体10Gは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0222】
また、積層体10Gは、保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10Gは、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10Gについて上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0223】
また、積層体10Gは、結晶化度が上記範囲内にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10Gの強度、特には突き刺し強度を高める。それ故、積層体10Gは、強度、特には突き刺し強度に優れている。
【0224】
そして、積層体10Gは、基材層1、中間層8及びシーラント層2は何れもポリエチレンを含み、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。この積層体はリサイクル性に優れている。
【0225】
また、ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10Gは、ピンホールを発生し難い。
【0226】
また、積層体10Gにおいて、基材層1及び中間層8は透明であることから、例えば、印刷層4が基材層1及びシーラント層2の間の何れの位置に含まれる場合でも、保護層6側から印刷層4を観察した場合に、印刷層4が表示するパターンが鮮明に見える。また、上述した積層体10Gを含んだ包装物品においては、内容物の視認性が高い。
【0227】
<8>第8実施形態
<8.1>積層体
図9は、本発明の第8実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図9に示す積層体10Hは、保護層6と基材層1と印刷層4と第1接着剤層3Aと中間層8と無機化合物層5と被覆層7と第2接着剤層3Bとシーラント層2とをこの順序で備える。積層体10Hは、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。積層体10Hは、第6実施形態に係る第積層体10Fが備えるガスバリア層5が無機化合物層と被覆層からなる形態である場合と同様である。積層体10Hが備える保護層6、基材層1、印刷層4、第1接着剤層3A、中間層8、無機化合物層5、被覆層7、第2接着剤層3B及びシーラント層2としては、第6実施形態において説明したものを使用することができる。
【0228】
<8.2>効果
積層体10Hは、基材層1の結晶化度が上記範囲内にある。それ故、積層体10Hは、積層体10A1と同様に、耐熱性に優れている。
【0229】
また、積層体10Hは、保護層6を含んでいる。上記の通り、保護層6は、積層体の表面におけるヒートシール時の熱ダメージを軽減する。それ故、積層体10Hは、更に優れた耐熱性、特には、より良好なヒートシール適性を達成し得る。従って、積層体10Hについて上述した構成を採用すると、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を更に生じ難くなる。
【0230】
また、積層体10Hは、結晶化度が上記範囲にある中間層8を含んでいる。この中間層8は、積層体10Hの強度、特には落下強度を高める。即ち、積層体10Hでは、包装体において使用した場合に、基材層1の内側に位置する中間層8は、基材層1と比較して軟らかい。この構造は、積層体10Hを包装材料として使用した包装物品を落下させた場合に生じる衝撃を吸収するのに適している。それ故、積層体10Hを包装材料として使用した包装物品は、落下による破損(破袋)を生じ難い。従って、積層体10Hは、強度、特には落下強度に優れている。
【0231】
そして、積層体10Hは、ポリエチレンの割合が90質量%以上である。それ故,積層体10Hは、リサイクル性にも優れている。
【0232】
印刷層4は、基材層1の表面に設けてもよく、中間層8の表面に設けてもよく、中間層8の裏面に設けてもよい。何れの場合であっても、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。なお、印刷層4は、省略してもよい。
【0233】
<9>第9実施形態
図10は、本発明の第9実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0234】
図10に示す包装物品100Aは、包装体110Aと、これに収容された内容物とを含んでいる。
【0235】
包装体110Aは、平パウチである。包装体110Aは、一対の本体フィルムを含んでいる。本体フィルムの各々は、第1乃至第8実施形態において説明した積層体の何れかであるか、又は、これから切り出したものである。本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合うように重ね合わされており、周縁部が互いにヒートシールされている。包装体110Aには、そのヒートシール部に、易開封構造としてノッチが設けられている。
【0236】
内容物は、液体、固体及びそれらの混合物の何れであってもよい。内容物は、例えば、食品又は薬剤である。
【0237】
<10>第10実施形態
図11は、本発明の第10実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0238】
図11に示す包装物品100Bは、包装体110Bと、これに収容された内容物とを含んでいる。内容物は、例えば、包装物品100Aについて説明したものと同様である。
【0239】
包装体110Bは、スタンディングパウチである。包装体110Bは、一対の本体フィルムと底フィルムとを含んでいる。これらフィルムの各々は、第1乃至第8実施形態において説明した積層体の何れかであるか、又は、これから切り出したものである。
【0240】
一対の本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合うように重ね合わされており、一端及びその近傍の領域を除いて、周縁部が互いにヒートシールされている。底フィルムは、シーラント層側から見て山折りになるように二つ折りされており、上記一端の位置で、山折り部が本体フィルムの他端を向くように一対の本体フィルムによって挟まれている。底フィルムは、その中央部を除いた部分が、一対の本体フィルムにヒートシールされている。また、底フィルムは、包装体110Bの底部両脇の位置で外面同士が接着されている。
【0241】
包装体110Bには、本体フィルム同士がヒートシールされた部分に、易開封構造としてノッチが設けられている。易開封構造は、包装物品100Bを開封した場合に、その上方の角部を口部として利用できるように設けられていてもよい。或いは、包装物品100Bは、第11実施形態において説明する口部材及び蓋体を更に含んでいてもよい。
【0242】
<11>第11実施形態
図12は、本発明の第11実施形態に係る包装物品を概略的に示す図である。
【0243】
図12に示す包装物品100Cは、包装体110Cと、これに収容された内容物とを含んでいる。内容物は、例えば、包装物品100Aについて説明したものと同様である。
【0244】
包装体110Cは、ガゼット型パウチである。包装体110Cは、容器本体110C1と、口部材110C2と、蓋体110C3とを含んでいる。
【0245】
容器本体110C1は、一対の本体フィルムと、一対の側フィルムとを含んでいる。
【0246】
一対の本体フィルムは、それらのシーラント層が向き合い、一端で口部材110C2の一部を挟むように重ね合わされている。これら本体フィルムの周縁部は、上記の一端で、口部材110C2へヒートシールされるとともに、その近傍で互いにヒートシールされている。また、これら本体フィルムの周縁部は、反対側の端で、両脇の領域を除いて互いにヒートシールされている。
【0247】
側フィルムの各々は、シーラント層側から見て山折りになるように二つ折りされている。これら側フィルムは、一対の本体フィルムの両脇で、山折り部が互いに向き合うようにこれら本体フィルムによって挟まれている。側フィルムの各々は、その周縁部の一部が本体フィルムの一方へヒートシールされ、周縁部の残りの部分が本体フィルムの他方へヒートシールされている。また、側フィルムの各々は、包装体110Cの上部及び下部の各々の位置で外面同士が接着されている。
なお、容器本体110C1は、底フィルムを更に含んでいてもよい。
【0248】
口部材110C2は、上記の通り、本体フィルムに挟まれるとともに、それらがヒートシールされた部分を含んでいる。口部材110C2は、容器本体110C1から外側へ突き出た口部を更に含んでいる。口部は、略円筒形状を有しており、側壁外面に雄ねじが設けられている。蓋体110C3は、有底円筒形状を有している。蓋体110C3は、側壁内面に雌ねじが設けられており、口部材110C2の口部と螺合している。
【実施例】
【0249】
以下に、本発明に関連して行った試験の結果を記載する。
(1)試験A
(1.1)積層体の製造
(1.1.1)例1A
図2に示す積層体10A2を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0250】
次に、基材層の一方の面に、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を形成した。その後、無機化合物層上に印刷層を形成した。
【0251】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0252】
(1.1.2)例2A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けなかったこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0253】
(1.1.3)例3A
図2に示す積層体10A2を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0254】
(1.1.4)例4A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が71.8%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0255】
(1.1.5)例5A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0256】
(1.1.6)例6A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが20μmであり、結晶化度が54.1%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0257】
(1.1.7)例7A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、結晶化度が55.9%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0258】
(1.1.8)例8A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0259】
(1.1.9)例9A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが120μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0260】
(1.1.10)例10A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けず、且つ、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0261】
(1.1.11)例11A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けず、且つ、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ウレタン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0262】
(1.1.12)比較例1A
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが32μmであり、結晶化度が14.8%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
【0263】
(1.1.13)比較例2A
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が20.6%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
【0264】
(1.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0265】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、及びガスバリア性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、及びガスバリア性の評価方法を以下に記載する。
【0266】
(1.2.1)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、先ず、下面シール温度を100℃に設定するとともに、上面シール温度を120℃に設定して、0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察した。シール面が溶融しておらず且つ試料上面も溶融していなかった場合には、シール面及び試料上面の少なくとも一方が溶融するまで、下面シール温度を100℃に固定したまま、上面シール温度を10℃ずつ高めて、上記と同様の加圧及び観察を行った。そして、下記基準により、シール性を評価した。
A:試料上面に溶融がなく、外観上問題がなかった。
B:試料上面が溶融しており、外観上問題があった。
【0267】
(1.2.2)耐熱性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りした。次に、ヒートシールテスターの下面シール温度を30℃に設定するとともに、上面シール温度を170℃に設定して、二つ折りした試料へ0.2MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域がヒートシールバーに付着しているか観察し、下記基準により耐熱性を評価した。
A:試料上面がヒートシールバーへ付着しなかった。
B:試料上面がヒートシールバーへ付着した。
【0268】
(1.2.3)視認性の評価方法
印刷層が表示するパターンを基材層側から目視により観察し、下記基準により視認性を評価した。
A:印刷層が表示するパターンを鮮明に確認できた。
B:印刷層が表示するパターンがぼやけて不鮮明であった。
【0269】
(1.2.4)ガスバリア性の評価方法
積層体をボイル処理し、その後、30℃、相対湿度70%における酸素透過速度(Oxygen Transmission Rate、OTR)を測定した。この測定は、JIS K-7126、B法に準拠して行った。そして、酸素透過速度を下記基準へ参照して、ガスバリア性を評価した。
A:OTRが10cc/m2・day・atm未満であった。
B:OTRが10cc/m2・day・atm以上であった。
【0270】
(1.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表1-1及び表1-2に纏める。
【0271】
【0272】
【0273】
表1-1及び表1-2に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が良好であった。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0274】
(2)試験B
(2.1)積層体の製造
(2.1.1)例1B
図3に示す積層体10Bを、以下の方法により製造した。なお、本例では、基材層1とガスバリア層5との間にアンカーコート層を更に設け、ガスバリア層5として無機化合物層と被覆層を設けた。
【0275】
まず、アンカーコート剤、保護層及び被覆層形成用塗布液を以下の方法により調製した。本例では、保護層及び被覆層を、同じ塗布液を用いて形成した。
【0276】
(アンカーコート剤の調製)
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0277】
(保護層及び被覆層形成用塗布液の調製)
下記のA液、B液及びC液を、それぞれ70/20/10の質量比で混合することで、有機無機混合物を含む保護層及び被覆層形成用塗布液(以下、単に「塗布液」ともいう。)を調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0278】
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であり、密度が0.94g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0279】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、上掲で調製した塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、有機無機混合物からなり、厚さが0.5μm(乾燥状態)の保護層を形成した。
【0280】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0281】
次いで、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。続いて、無機化合物層へ上掲で調製した塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0282】
その後、被覆層上に水性フレキソインキをパターン印刷し、印刷層を形成した。
【0283】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0284】
(2.1.2)例2B
図3に示す積層体10Bを、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、ヘイズが5.9%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。このポリエチレンフィルムは2軸延伸フィルムであり、片面コロナ処理が施されている。
【0285】
(2.1.3)例3B
図3に示す積層体10Bを、保護層を設けなかったこと以外は、例2Bと同様の方法により製造した。
【0286】
(2.1.4)例4B
図3に示す積層体10Bを、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、ウレタン系樹脂からなる厚さが0.5μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0287】
(2.1.5)例5B
図3に示す積層体10Bを、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、ウレタン系樹脂からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0288】
(2.1.6)例6B
図3に示す積層体10Bを、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0289】
(2.1.7)例7B
図3に示す積層体10Bを、ポリアミドイミド樹脂を塗布して厚さが0.5μmの保護層を形成する代わりに、アクリル樹脂からなる厚さが1μmの保護層を形成したこと以外は、例1Bと同様の方法により製造した。
【0290】
(2.1.8)比較例1B
図3に示す積層体10Bを、以下を除き、例1Bと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.5%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理されている。
【0291】
(2.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0292】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、視認性及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0293】
(2.2.1)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、二つ折りした試料へ、140℃及び0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、試料の表面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察して、下記基準により、シール性を評価した。
A:試料表面に溶融がなく、外観上問題がなかった。
B:試料表面が溶融しており、外観上問題があった。
【0294】
(2.2.2)耐熱性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りした。次に、ヒートシールテスターの下面シール温度を30℃に設定するとともに、上面シール温度を170℃に設定して、二つ折りした試料へ0.2MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域がヒートシールバーに付着しているか観察し、下記基準により耐熱性を評価した。
A:試料上面がヒートシールバーへ付着しなかった。
B:試料上面がヒートシールバーへ付着した。
また、保護層を有している積層体については、上面シール温度を190℃に設定したこと以外は、上記と同様の方法で耐熱性を更に評価した。
【0295】
(2.2.3)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0296】
(2.2.4)リサイクル性の評価方法
積層体の全質量に占めるポリエチレンの割合を算出した。この割合を、以下の基準へ参照して、リサイクル性を評価した。ここで評価Aは、モノマテリアルとしてリサイクル性に優れることを意味する。
A:ポリエチレンの割合が90質量%以上であった。
B:ポリエチレンの割合が90質量%未満であった。
【0297】
(2.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表2に纏める。
【0298】
【0299】
表2に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもリサイクル適性を有しつつ、耐熱性及び視認性が良好であった。そして、基材層の結晶化度が35%以上であり且つ保護層を有している積層体は、シール性にも優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を有していない積層体は、シール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0300】
(3)試験C
(3.1)積層体の製造
(3.1.1)例1C
図4に示す積層体10Cを、以下の方法により製造した。なお、本例では、基材層1と無機化合物層5との間にアンカーコート層を更に設けた。
【0301】
まず、アンカーコート剤及び被覆層形成用塗布液を、例1Bと同様の方法により調製した。また、保護層形成用塗布液として、ポリアミドイミド樹脂の有機溶剤溶液(不揮発成分濃度5質量%)を調製した。
【0302】
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であり、密度が0.950g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0303】
次に、基材層の一方のコロナ処理面に、上掲で調製したポリアミドイミドを含む塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.5μmの保護層を形成した。
【0304】
次に、基材層の他方のコロナ処理面に、グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0305】
次いで、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるように形成した。続いて、無機化合物層へ上掲で調製した被覆層形成用塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0306】
その後、被覆層上に、水性フレキソインキを使用してフレキソ印刷法により画像を形成することにより、印刷層を形成した。
【0307】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0308】
(3.1.2)例2C
図4に示す積層体10Cを、保護層の厚さを0.5μmから1μmに変更し、更に、被覆層を設けなかったこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。
【0309】
(3.1.3)例3C
図4に示す積層体10Cを、保護層の厚さを0.5μmから3μmに変更したこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。
【0310】
(3.1.4)例4C
図4に示す積層体10Cを、保護層を設けなかったこと以外は、例1Cと同様の方法により製造した。
【0311】
(3.1.5)比較例1C
図4に示す積層体10Cを、以下を除き、例1Cと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.6%であり、ヘイズが21.5%であるポリエチレンフィルムを使用した。
【0312】
(3.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0313】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、視認性及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0314】
(3.2.1)シール性の評価方法
シール性は、(1.2.1)において説明した方法により評価した。
【0315】
(3.2.2)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.2)において説明した方法により評価した。
【0316】
(3.2.3)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0317】
(3.2.3)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
【0318】
(3.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表3に纏める。
【0319】
【0320】
表3に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもリサイクル適性を有しつつ、耐熱性及び視認性が良好であった。そして、基材層の結晶化度が35%以上であり且つ保護層を有している積層体は、シール性にも優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を有していない積層体は、シール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0321】
(4)試験D
(4.1)積層体の製造
(4.1.1)例1D
図5に示す積層体10Dを、以下の方法により製造した。
先ず、基材層及び中間層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であり、密度が0.94g/cm
3であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0322】
次に、中間層上に、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが50nmとなるように形成した。
【0323】
基材層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第1接着剤層を形成した。第1接着剤層を間に挟んで基材層と無機化合物層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせた。次いで、中間層の無機化合物層を形成した面の裏面に、印刷層を形成した。
【0324】
次に、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を準備し、シーラント層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第2接着剤層を形成した。第2接着剤層を間に挟んでシーラント層と印刷層とが向き合うように基材層とシーラント層とを貼り合わせた。
以上のようにして、積層体を作成した。
(4.1.2)例2D
図5に示す積層体10Dを、第1接着剤層及び第2接着剤層に用いる接着剤として、ウレタン系接着剤の代わりにガスバリア性のポリアミン系接着剤を使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。
【0325】
(4.1.3)例3D
図5に示す積層体10Dを、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が71.8%であり、ヘイズが4.1%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。このポリエチレンフィルムは、縦一軸延伸フィルムであり、片面コロナ処理が施されている。
【0326】
(4.1.4)例4D
図5に示す積層体10Dを、以下を除き、例1Dと同様の方法により製造した。すなわち、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、ヘイズが5.9であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、2軸延伸フィルムであり、片面コロナ処理が施されている。更に、中間層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が71.8%であり、ヘイズが4.1であり、密度が0.95g/cm
3である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、縦一軸延伸フィルムであり、片面コロナ処理が施されている。
【0327】
(4.1.5)例5D
図5に示す積層体10Dを、中間層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が14.8%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0328】
(4.1.6)例6D
図5に示す積層体10Dを、ガスバリア層を設けなかったこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。
【0329】
(4.1.7)比較例1D
図5に示す積層体10Dを、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が14.8%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0330】
(4.1.8)比較例2D
図5に示す積層体10Dを、基材層及び中間層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が14.8%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Dと同様の方法により製造した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0331】
(4.1.9)比較例3D
図5に示す積層体10Dを、以下を除き、例1Dと同様の方法により製造した。すなわち、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が14.8%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。更に、ガスバリア層を設けなかった。
【0332】
(4.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0333】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度及びガスバリア性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度及びガスバリア性の評価方法を以下に記載する。
【0334】
(4.2.1)シール性の評価方法
シール性は、(2.2.1)において説明した方法により評価した。
【0335】
(4.2.2)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(1.2.2)において説明した方法により評価した。
【0336】
(4.2.3)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0337】
(4.2.4)突き刺し強度の評価方法
半径が0.5mmであり、先端部が半球形の針を、積層体に対して基材層側から50mm/分の速度で押し当て、針が貫通するまでの最大力を測定する。この測定を複数回行い、最大力の算術平均を突き刺し強度として得た。
【0338】
(4.2.5)ガスバリア性の評価方法
ガスバリア性は、(1.2.4)において説明した方法により評価した。
【0339】
(4.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表4-1及び表4-2に纏める。
【0340】
【0341】
【0342】
表4-1及び表4-2に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもシール性及び耐熱性が良好であった。また、基材層及び中間層の結晶化度が35%以上である積層体は、視認性及び突き刺し強度にも優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満である積層体は、シール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【0343】
(5)試験E
(5.1)積層体の製造
(5.1.1)例1E
図6に示す積層体10Eを、以下の方法により製造した。なお、本例では、中間層8とガスバリア層5との間にアンカーコート層を更に設け、ガスバリア層5として無機化合物層と被覆層を設けた。
【0344】
まず、アンカーコート剤、被覆層形成用塗布液、及び、保護層形成用塗布液を、例1Bと同様の方法により調製した。本例では、例1Bと同様、保護層及び被覆層を、同じ塗布液を用いて形成した。
【0345】
基材層及び中間層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であり、密度が0.94g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0346】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、上掲で調製した保護層形成用塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、有機無機混合物からなり、厚さが0.5μmの保護層を形成した。
【0347】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。次いで、基材層のコロナ処理を施した面に、水性フレキソインキをパターン印刷し、印刷層を形成した。
【0348】
中間層の一方の面にコロナ処理を施した。続いて、中間層のコロナ処理を施した面に、グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0349】
次いで、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるようにアンカーコート層上に形成した。続いて、無機化合物層へ上掲で調製した被覆層形成用塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0350】
次に、中間層の無機化合物層が形成された面とは反対側の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第1接着剤層を形成した。第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせた。
【0351】
次に、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を準備した。シーラント層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第2接着剤層を形成した。第2接着剤層を間に挟んでシーラント層と被覆層とが向き合うように基材層とシーラント層とを貼り合わせた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0352】
(5.1.2)例2E
図6に示す積層体10Eを、以下を除き、例1Eと同様の方法により製造した。すなわち、基材層及び中間層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、ヘイズが5.9%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0353】
(5.1.3)例3E
図6に示す積層体10Eを、以下を除き、例2Eと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、中間層として、結晶化度が55.9%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.5%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0354】
(5.1.4)比較例1E
図6に示す積層体10Eを、以下を除き、例1Eと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層及び中間層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.5%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0355】
(5.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0356】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度、及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度、及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0357】
(5.2.1)シール性の評価方法
シール性(耐熱性)は、(2.2.1)において説明した方法により評価した。
【0358】
(5.2.2)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.2)において説明した方法により評価した。
【0359】
(5.2.3)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0360】
(5.2.4)突き刺し強度の評価方法
突き刺し強度は、(4.2.4)において説明した方法により評価した。
【0361】
(5.2.5)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
【0362】
(5.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表5に纏める。
【0363】
【0364】
表5に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れも耐熱性、視認性及び突き刺し強度が良好であった。また、基材層及び中間層の結晶化度が35%以上であり、且つ、保護層を備える積層体は、シール性にも優れ、また、突き刺し強度が更に向上した。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備えていない積層体は、シール性、耐熱性、視認性及び突き刺し強度が不十分であった。
【0365】
(6)試験F
(6.1)積層体の製造
(6.1.1)例1F
図7に示す積層体10Fを、以下の方法により製造した。なお、本例では、中間層8とガスバリア層5との間にアンカーコート層を更に設け、ガスバリア層5として無機化合物層と被覆層を設けた。
【0366】
まず、アンカーコート剤、被覆層形成用塗布液、及び、保護層形成用塗布液を、例1Bと同様の方法により調製した。本例では、例1Bと同様、保護層及び被覆層を、同じ塗布液を用いて形成した。
【0367】
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、密度が0.950g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0368】
次に、基材層の一方の面に、コロナ処理を施した。続いて、基材層のコロナ処理を施した面に、上掲で調製した保護層形成用塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、有機無機混合物からなり、厚さが0.5μmの保護層を形成した。
【0369】
次に、基材層の他方の面に、コロナ処理を施した。次いで、基材層のコロナ処理を施した面に、水性フレキソインキをパターン印刷し、印刷層を形成した。
【0370】
次に、中間層として、厚さが25μmであり、結晶化度が27.5%であり、密度が0.950g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0371】
グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0372】
次いで、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるようにアンカーコート層上に形成した。続いて、無機化合物層へ上掲で調製した被覆層形成用塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0373】
次に、中間層の無機化合物層が形成された面とは反対側の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第1接着剤層を形成した。第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせた。
【0374】
次に、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を準備した。シーラント層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第2接着剤層を形成した。第2接着剤層を間に挟んでシーラント層と被覆層とが向き合うように基材層とシーラント層とを貼り合わせた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0375】
(6.1.2)例2F
図7に示す積層体10Fを、以下を除き、例1Fと同様の方法により製造した。すなわち、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、ヘイズが21.5%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0376】
(6.1.3)例3F
図7に示す積層体10Fを、以下を除き、例1Fと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層として結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムと、中間層として結晶化度が27.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、各々、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0377】
(6.1.4)比較例1F
図7に示す積層体10Fを、以下を除き、例1Fと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層として、結晶化度が58.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.5%であり、密度が0.950g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。更に、中間層として、結晶化度が27.5%である上掲のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であり、密度が0.95g/cm
3であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、片面コロナ処理が施されている。
【0378】
(6.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0379】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、落下強度、及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、落下強度、及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0380】
(6.2.1)シール性の評価方法
シール性は、(2.2.1)において説明した方法により評価した。
【0381】
(6.2.2)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.2)において説明した方法により評価した。
【0382】
(6.2.3)落下強度の評価方法
積層体を所定の大きさに切り出し、周縁部をヒートシールすることにより、袋を10個作製した。これら袋には、内容物を入れるための開口部を設けた。袋の寸法は100mm×150mmとした。次に、各袋に水道水を200mL充填し、開口部をヒートシールして包装物品を得た。次に、各包装物品を5℃で1日保管し、その後、1.5mの高さから50回落下させた。50回以内に袋が破れた包装物品の数と包装物品の総数(10個)との比を、落下強度として求めた。
【0383】
(6.2.4)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
【0384】
(6.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表6に纏める。
【0385】
【0386】
表6に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもリサイクル適性を有しつつ耐熱性が良好であった。また、基材層の結晶化度が35%以上であり、中間層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備える積層体は、シール性及び落下強度においても優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備えていない積層体は、シール性、耐熱性及び落下強度が不十分であった。
【0387】
(7)試験G
(7.1)積層体の製造
(7.1.1)例1G
図8に示す積層体10Gを、以下の方法により製造した。なお、本例では、中間層8と無機化合物層5との間にアンカーコート層を更に設けた。
【0388】
まず、アンカーコート層形成用塗布液、及び、被覆層形成用塗布液を、例1Bと同様の方法により調製した。
また、保護層形成用塗布液として、ポリアミドイミド樹脂の有機溶剤溶液(不揮発成分濃度5質量%)を調製した。
【0389】
基材層及び中間層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であり、密度が0.950g/cm3であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、3層構造(HDPE/MDPE/HDPE)であり、両面コロナ処理が施されている。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0390】
次に、基材層のコロナ処理が施された一方の面に、上掲で調製した保護層形成用塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.5μmの保護層を形成した。続いて、基材層のコロナ処理が施された他方の面に、水性フレキソインキをパターン印刷し、印刷層を形成した。
【0391】
次に、中間層のコロナ処理が施された一方の面に、グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0392】
次いで、無機化合物層として、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、透明な酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるようにアンカーコート層上に形成した。蒸着膜のO/Si比は、蒸着に使用する材料の種類を調整することなどにより1.8とした。
【0393】
続いて、無機化合物層へ上掲で調製した被覆層形成用塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0394】
次に、中間層の無機化合物層が形成された面とは反対側の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第1接着剤層を形成した。第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせた。
【0395】
次に、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を準備した。シーラント層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第2接着剤層を形成した。第2接着剤層を間に挟んでシーラント層と被覆層とが向き合うように基材層とシーラント層とを貼り合わせた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0396】
(7.1.2)例2G
図8に示す積層体10Gを、保護層の厚さを0.5μmから1μmに変更したこと以外は、例1Gと同様の方法により製造した。
(7.1.3)例3G
図8に示す積層体10Gを、保護層の厚さを0.5μmから3μmに変更したこと以外は、例1Gと同様の方法により製造した。
(7.1.4)例4G
図8に示す積層体10Gを、以下を除き、例1Gと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、中間層として、上掲の結晶化度が58.5%のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.6%であり、ヘイズが21.5%であるポリエチレンフィルムを使用した。
(7.1.5)比較例1G
図8に示す積層体10Gを、以下を除き、例1Gと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層及び中間層として、上掲の結晶化度が58.5%のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.6%であるポリエチレンフィルムを使用した。
【0397】
(7.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0398】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度、及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、突き刺し強度、及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0399】
(7.2.1)シール性の評価方法
シール性は、(1.2.1)において説明した方法により評価した。
【0400】
(7.2.2)耐熱性の評価方法
耐熱性は、(2.2.2)において説明した方法により評価した。
【0401】
(7.2.3)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.3)において説明した方法により評価した。
【0402】
(7.2.4)突き刺し強度の評価方法
突き刺し強度は、(4.2.4)において説明した方法により評価した。
【0403】
(7.2.5)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
(7.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表7に纏める。
【0404】
【0405】
表7に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもリサイクル適性を有しつつ、耐熱性及び視認性が良好であった。また、基材層及び中間層の結晶化度が35%以上であり、保護層を備える積層体は、シール性及び突き刺し強度においても優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備えていない積層体は、シール性、耐熱性、視認性及び突き刺し強度が不十分であった。
【0406】
(8)試験G
(8.1)積層体の製造
(8.1.1)例1H
図9に示す積層体10Hを、以下の方法により製造した。なお、本例では、中間層8と無機化合物層5との間にアンカーコート層を更に設けた。
【0407】
まず、アンカーコート層形成用塗布液、及び、被覆層形成用塗布液を、例1Bと同様の方法により調製した。
また、保護層形成用塗布液として、ポリアミドイミド樹脂の有機溶剤溶液(不揮発成分濃度5質量%)を調製した。
【0408】
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0409】
次に、基材層のコロナ処理が施された一方の面に、上掲で調製した保護層形成用塗布液をグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.5μmの保護層を形成した。続いて、基材層のコロナ処理が施された他方の面に、水性フレキソインキをパターン印刷し、印刷層を形成した。
【0410】
中間層として、厚さが25μmであり、結晶化度が27.6%であり、ヘイズが21.5%であるポリエチレンフィルムを準備した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。次に、中間層のコロナ処理が施された一方の面に、グラビアコート法により上述したアンカーコート剤を塗布して、厚さが0.1μm(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0411】
次いで、無機化合物層として、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、透明な酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を厚さが40nmとなるようにアンカーコート層上に形成した。蒸着膜のO/Si比は、蒸着に使用する材料の種類を調整することなどにより1.8とした。
【0412】
続いて、無機化合物層へ上掲で調製した被覆層形成用塗布液を塗布して、有機無機混合物からなり、厚さが0.3μm(乾燥状態)の被覆層を形成した。
【0413】
次に、中間層の無機化合物層が形成された面とは反対側の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第1接着剤層を形成した。第1接着剤層を間に挟んで印刷層と中間層とが向き合うように基材層と中間層とを貼り合わせた。
【0414】
次に、シーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を準備した。シーラント層上にドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して第2接着剤層を形成した。第2接着剤層を間に挟んでシーラント層と被覆層とが向き合うように基材層とシーラント層とを貼り合わせた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0415】
(8.1.2)例2H
図9に示す積層体10Hを、保護層の厚さを0.5μmから1μmに変更し、更に、被覆層を設けなかったこと以外は、例1Hと同様の方法により製造した。
【0416】
(8.1.3)例3H
図9に示す積層体10Hを、保護層の厚さを0.5μmから3μmに変更しこと以外は、例1Hと同様の方法により製造した。
【0417】
(8.1.4)例4H
図9に示す積層体10Hを、以下を除き、例1Hと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、中間層として、上掲の結晶化度が27.6%のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。
【0418】
(8.1.5)比較例1H
図9に示す積層体10Hを、以下を除き、例1Hと同様の方法により製造した。すなわち、保護層を設けなかった。更に、基材層として、上掲の結晶化度が58.5%のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が27.6%であり、ヘイズが21.5%のポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。更に、中間層として、上掲の結晶化度が27.6%のポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であり、ヘイズが1.6%であるポリエチレンフィルムを使用した。このポリエチレンフィルムは、両面コロナ処理が施されている。
【0419】
(8.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層及び中間層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0420】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、落下強度、及びリサイクル性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、落下強度、及びリサイクル性の評価方法を以下に記載する。
【0421】
(8.2.1)シール性の評価方法
シール性は、(1.2.1)において説明した方法により評価した。
【0422】
(8.2.2)視認性の評価方法
視認性は、(1.2.2)において説明した方法により評価した。
【0423】
(8.2.3)落下強度の評価方法
落下強度は、(6.2.3)において説明した方法により評価した。
【0424】
(8.2.4)リサイクル性の評価方法
リサイクル性は、(2.2.4)において説明した方法により評価した。
(8.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表8に纏める。
【0425】
【0426】
表8に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもリサイクル適性を有しつつ耐熱性及び視認性が良好であった。また、基材層の結晶化度が35%以上であり、中間層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備えた積層体は、シール性及び落下強度においても優れていた。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満であり、保護層を備えていない積層体は、シール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。
【符号の説明】
【0427】
1…基材層、2…シーラント層、3…接着剤層、3A…第1接着剤層、3B…第2接着剤層、4…印刷層、5…ガスバリア層(無機化合物層)、6…保護層、7…被覆層、8…中間層、10A1…積層体、10A2…積層体、10B…積層体、10C…積層体、10D…積層体、10E…積層体、10F…積層体、10G…積層体、10H…積層体、100A…包装物品、100B…包装物品、100C…包装物品、110A…包装体、110B…包装体、110C…包装体、110C1…容器本体、110C2…口部材、110C3…蓋体。
[付記]
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、前記基材層と前記シーラント層との間に介在した金属蒸着層を更に備えた積層体であり、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上である積層体。
[2]
前記金属蒸着層はアルミニウム蒸着層である付記[1]に記載の積層体。
[3]
付記[1]又は[2]に記載の積層体を含んだ包装体。
[4]
スタンディングパウチである付記[3]に記載の包装体。
[5]
付記[3]に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。