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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/61 20060101AFI20241001BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20241001BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20241001BHJP
   E04F 13/10 20060101ALI20241001BHJP
   E04C 2/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E04B1/61 505Z
E04C2/30 Y
E04F10/08
E04F13/10 C
E04C2/16 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024042395
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】山木戸 勇也
(72)【発明者】
【氏名】上妻 尚史
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088901(JP,A)
【文献】特開2012-188916(JP,A)
【文献】特開2018-194126(JP,A)
【文献】特開2000-129798(JP,A)
【文献】実開平06-044920(JP,U)
【文献】実開平01-170704(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0119926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38- 1/61
E04B 2/82
E04C 2/30
E04F 10/08
E04F 13/08-13/18
F16B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製部材と別の部材との接合構造であって、
前記木製部材は、端面における外周の内側に溝部が形成された、板状の木製部材と、 前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備え、
前記別の部材に接続され、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、
前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、
を備え、
前記板状部は、前記溝部の溝深さに納まる接合面長を含む接合面を有し、
前記木製部材は、前記板状部に添接される添接面を有する接続部材を介して前記別の部材に接続され、
前記接続部材は、前記添接面と直交するフランジ面を有し、
前記フランジ面は、前記別の部材と締結部材で面接合される接合構造。
【請求項2】
前記木製部材の前記端面以外の部位には、孔又は溝が形成されていない、
請求項1に記載の接合構造
【請求項3】
前記溝部の内部以外の部位は屋外に露出される、
請求項1に記載の接合構造
【請求項4】
前記木製部材が、CLT,LVL,集成材,又はこれらの組み合わせで構成されたルーバーである、
請求項1に記載の接合構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材を周辺架構に取り付ける際の端部のディテールの工法として、木製部材に形成された溝にガセットプレート等の金属部材を嵌入し、ドリフトピンやボルト等で木製部材及び金属部材を貫通して締結する工法が用いられることがある。また、木製部材を周辺架構に取り付ける際の端部のディテールの別の工法として、木製部材に形成された孔にめねじタイプのLSB(Lag Screw Bolt)等を挿入し、ガセットプレート等の金属部材をボルト等で木製部材と締結する工法が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2023-533044号公報
【文献】特開2005-139748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した2つの工法では、いずれも、ガセットプレート等の金属部材を取り付けるために、木製部材に孔や溝を形成することが必要である。しかし、このような孔や溝にガセットプレート等を挿入しただけでは、ガセットプレート等の周囲の隙間に紫外線や水といった劣化因子が触れることによって劣化してしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的の一例は、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、木製部材と別の部材との接合構造であって、前記木製部材は、端面における外周の内側に溝部が形成された、板状の木製部材と、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備え、前記別の部材に接続され、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備え、前記板状部は、前記溝部の溝深さに納まる接合面長を含む接合面を有し、前記木製部材は、前記板状部に添接される添接面を有する接続部材を介して前記別の部材に接続され、前記接続部材は、前記添接面と直交するフランジ面を有し、前記フランジ面は、前記別の部材と締結部材で面接合される接合構造である。
また、本発明の他の一態様は、端面における外周の内側に溝部が形成された、板状の木製部材と、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備える板状部材である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、本実施形態の板状部材10の適用例を示す斜視図である。図1Bは、本実施形態の接合構造50の説明図である。
図2図2は、本実施形態の板状部材10の上部における分解斜視図である。
図3図3は、第1比較例の板状部材10Aの下部における分解斜視図である。
図4図4は、第2比較例の板状部材10Bの上部における分解斜視図である。
図5図5は、第1変形例の板状部材10Cの上部における分解斜視図である。
図6図6は、第2変形例の板状部材10Dの下部における分解斜視図である。
図7図7は、本実施形態の接合手順のフロー図である。
図8図8Aは、溝部形成工具70により木製部材11の端面110に溝部111を形成する前の状態を示す説明図である。図8Bは、溝部形成工具70により木製部材11の端面110に溝部111を形成した後の状態を示す説明図である。
図9図9Aは、木製部材11の端面110に形成された溝部111に金属部材12を嵌入する前の状態を示す説明図である。図9Bは、木製部材11の端面110に形成された溝部111に金属部材12を嵌入し、充填材13を充填する様子を示す説明図である。
図10図10Aは、部材90に接合された接続部材14と、木製部材11に接合された金属部材12とを接続する前の状態を示す説明図である。図10Bは、部材90に接合された接続部材14と、木製部材11に接合された金属部材12とを接続した後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
===本実施形態===
図1Aは、本実施形態の板状部材10の適用例を示す斜視図である。図1Bは、本実施形態の接合構造50の説明図である。なお、図1Bでは、図1Aに示される2つの接合構造50のうち、上側に位置する接合構造50の断面部分の一部が示されている。
【0013】
<<方向等の定義>>
まず、図1A及び図1Bを参照しつつ、本実施形態の板状部材10における方向等を定義する。
【0014】
図1A及び図1Bに示されるように、鉛直方向を「上下方向」とし、鉛直上向きの方向を単に「上方向」とし、鉛直下向きの方向を単に「下方向」とする。部材90に取り付けられた板状部材10の木製部材11(後述)において、水平方向のうち、木製部材11の板面に平行な方向を「左右方向」とし、一方の方向を「左方向」とし、他方の方向を「右方向」とする。また、水平方向のうち、木製部材11の板面に垂直な方向を「前後方向」とし、一方の方向を「前方向」とし、他方の方向を「後方向」とする。なお、「後方向」から「前方向」を見たときの右方が、「右方向」であり、「後方向」から「前方向」を見たときの左方が、「左方向」である。
【0015】
図1A及び図1Bでは、板状部材10における方向等の理解を容易にするために、上下方向,左右方向及び前後方向の各々の方向を両矢印付き線分で表している。なお、これらの両矢印付き線分の交点は、座標原点を意味するものではない。
【0016】
上述した方向等の定義については、特記した場合を除き、本明細書の他の実施形態においても共通である。
【0017】
<<概要>>
次に、図1A及び図1Bを再び参照しつつ、本実施形態の板状部材10の概要を説明する。
【0018】
板状部材10は、板状の木製部材11を有する部材である。木製部材11は、部材90(「別の部材」と呼ぶことがある)に接合されている。木製部材11を部材90に接合するために、板状部材10は、金属部材12と、充填材13と、接続部材14とをさらに有し、図1Bに示すように、木製部材11と金属部材12とが充填材13により接合されている。板状部材10のうち、金属部材12と充填材13と接続部材14(図1Bでは不図示)とを「接合構造50」と呼ぶことがある。接合構造50は、木製部材11と部材90(別の部材)とを接合する部材である。言い換えると、木製部材11は、接合構造50により部材90に接合されている。
【0019】
本実施形態の板状部材10が適用される部材90は、図1Aに示されるように、上部部材91と、下部部材92とを有する。本実施形態における部材90は、例えば建築構造物であり、上部部材91は、例えば上層スラブや鉄骨梁であり、下部部材92は、例えば下層スラブである。図1Aに示される板状部材10の適用例は、あくまで一例であって、上述の適用例に限られるものではない。板状部材10は、上層スラブと下層スラブとの間以外の場所に設置されても良い。また、部材90は建築構造物に限られない。
【0020】
本実施形態における木製部材11は、接合構造50によって上部部材91及び下部部材92の間において、上部部材91及び下部部材92の各々と接合されている。具体的には、板状部材10は、2つの接合構造50を有し、木製部材11は、上側に位置する接合構造50によって上部部材91と接合されると共に、下側に位置する接合構造50によって下部部材92と接合されている。
【0021】
<<構成>>
次に、図1A及び図1Bを再び参照しつつ、新たに図2を参照しながら、本実施形態の板状部材10の構成を説明する。
【0022】
図2は、本実施形態の板状部材10の上部における分解斜視図である。
【0023】
上述したように、板状部材10は、木製部材11と、金属部材12と、充填材13と、接続部材14とを有する。
【0024】
<木製部材11>
木製部材11は、木により形成された板状の部材である。本実施形態における木製部材11は、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)で構成されたルーバーである。但し、木製部材11は、CLT以外で構成されていても良く、例えば、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)や集成材で構成されていても良い。木製部材11は、CLT,LVL,集成材等の組み合わせで構成されていても良い。また、木製部材11は、ルーバー以外であっても良く、例えば、間仕切りや他の部材であっても良い。
【0025】
木製部材11は、端面110における外周の内側に溝部111が形成されている。溝部111は、端面110から凹んだ凹部である。本実施形態における溝部111の開口は、図2に示すように、端面110における外周の内側に位置している。なお、図2では、木製部材11の上側の端面110において溝部111が形成されていることが示されているが、図1に示すように、木製部材11の下側の端面110においても溝部111が形成されている。
【0026】
溝部111には、後述する金属部材12の板状部120が嵌入され、さらに板状部120との隙間に充填材13が充填される。ここで、本実施形態では、木製部材11の端面110以外(例えば、側面113)には、孔又は溝が形成されていない。また、本実施形態では、溝部111の内部以外の部位(例えば、側面113)は屋外に露出される。但し、端面110以外の部位(例えば、側面113)も含めて木製部材11全体が屋内に配置されていても良い。
【0027】
<金属部材12>
金属部材12は、金属で形成された板状部120を有する部材である。本実施形態における金属部材12は、図2に示すように、金属部材12全体が板状部120で構成されている。但し、金属部材12は、板状部120の他に凸部、別の板状部等を有していても良い。
【0028】
図2では、上側に位置する接合構造50の金属部材12のみが示されているが、図1に示すように、板状部材10は、下側に位置する接合構造50においても金属部材12を有している。以下、上側に位置する接合構造50の金属部材12についての詳細な説明は、下側に位置する接合構造50の金属部材12についても同様である。
【0029】
板状部120は、接合面121を有する。接合面121は、図2に示すように、溝部111の溝深さに納まる接合面長Lを有する面である。言い換えると、接合面121は、板状部120のうち、溝部111に嵌入される部位である。そして、後述するように、接合面121と溝部111の内面との隙間に充填材13が充填される。
【0030】
板状部120の接合面121上部には、孔122が形成されている。孔122は、締結部材15が貫通する孔である。締結部材15は、孔122を貫通し、金属部材12の板状部120と、接続部材14の添接部140(後述)とを締結する。締結部材15は、例えばボルトである。
【0031】
<充填材13>
充填材13は、木製部材11の溝部111と、金属部材12の接合面121との隙間に充填される部材である。充填材13は、木製部材11の溝部111と、金属部材12の接合面121との隙間に充填されることによって、木製部材11と金属部材12とを接合する。充填材13は、樹脂等の接着剤であっても良いし、モルタルであっても良い。
【0032】
なお、図2では、充填材13は不図示である。上述したように、図2では、上側に位置する接合構造50のみが示されているが、図1に示すように、板状部材10は、下側に位置する接合構造50も有している。このため、上述した充填材13についての説明は、上側に位置する接合構造50と下側に位置する接合構造50とで共通である。
【0033】
<接続部材14>
接続部材14は、金属部材12と部材90とを接続するための部材である。接続部材14は、例えば金属により形成される。図2では、上側に位置する接合構造50の接続部材14のみが示されているが、図1に示すように、板状部材10は、下側に位置する接合構造50においても接続部材14を有している。以下、上側に位置する接合構造50の接続部材14についての詳細な説明は、下側に位置する接合構造50の接続部材14についても同様である。
【0034】
接続部材14は、添接部140と、フランジ部141とを有する。添接部140は、金属部材12の板状部120に添接される添接面142を有する部位である。添接部140には、孔144が形成されている。孔144は、上述した締結部材15が貫通する孔である。締結部材15は、孔144を貫通し、金属部材12の板状部120と、接続部材14の添接部140とを締結する。フランジ部141は、部材90と面接合されるフランジ面143を有する部位である。フランジ面143が部材90と面接合されることにより、接続部材14は、部材90と不図示のアンカーボルト等の締結部材で接合される。フランジ部141には、アンカーボルトが挿入されるアンカーボルト用孔146が形成されている。但し、接合される部材90が例えば鉄骨梁である場合には、アンカーボルト用孔146が形成されず、代わりに溶接用部材が形成されていても良い。そして、接続部材14は、部材90と溶接により接合されても良い。ここで、フランジ面143は、添接面142と直交する。
【0035】
上述したように、木製部材11と金属部材12とは、充填材13を介して接合されている。さらに、金属部材12は、接続部材14と締結され、接続部材14は部材90と接合される。これにより、木製部材11は、接合構造50(金属部材12,充填材13及び接続部材14)を介して部材90に接合されることによって取り付けられる。
【0036】
なお、板状部材10は、接続部材14を有さなくても良い。この場合、金属部材12が部材90と面接合されるフランジ部を有しており、金属部材12が接続部材14を介さず部材90と接合されていても良い。しかし、本実施形態のように、接合構造50が木製部材11側の(木製部材11に接合される)金属部材12と、部材90側の(部材90に接合される)接続部材14とが分離されていることにより、木製部材11を部材90に容易に取り付けることができる。この点の詳細については、後述する。
【0037】
<<比較例>>
図3は、第1比較例の板状部材10Aの下部における分解斜視図である。
【0038】
上述した本実施形態の板状部材10では、木製部材11の端面110における外周の内側に溝部111が形成されていた。これに対し、第1比較例の板状部材10Aでは、木製部材11Aの側面113に孔112Aが形成されている。孔112Aは、締結部材15Aが貫通する孔である。また、上述した本実施形態の板状部材10では、木製部材11と金属部材12とは、木製部材11の溝部111に充填された充填材13を介して接合されていた。これに対し、第1比較例の板状部材10Aでは、締結部材15Aは、孔112Aを貫通し、金属部材12Aを木製部材11Aに直接締結する。金属部材12Aの底部には、アンカーボルト用孔124が形成されており、不図示の部材90とアンカーボルト等の締結部材で接合される。
【0039】
ここで、第1比較例の板状部材10Aでは、金属部材12Aに形成された孔122Aは、締結部材15Aの直径より大きくせざるを得ない。このため、締結部材15Aにより木製部材11Aと金属部材12Aとを締結したとしても、ガタが生じる可能性がある。つまり、板状部材10Aの初期剛性が低くなってしまうことがある。
【0040】
板状部材10Aが屋外に露出される場合は、金属部材12Aを取り付けるために木製部材11Aの側面113に形成された孔112Aの周囲に水等の劣化因子が触れることになるので、孔112Aの周囲が劣化してしまうことがある。具体的には、締結部材15Aが貫通する孔122Aを介して侵入する水分による、孔112Aの周囲の劣化や、孔112Aを起点とした割れが生じることがある。また、板状部材10Aが屋外に露出される場合は、木製部材11Aの耐候性を向上させる処理(耐候性処理)や塗装(耐候性塗装)を行うことがある。このとき、締結部材15Aと木製部材11Aの擦れにより耐候性処理や耐候性塗装が劣化してしまうことがある。
【0041】
図4は、第2比較例の板状部材10Bの上部における分解斜視図である。
【0042】
上述した本実施形態の板状部材10では、木製部材11の端面110における外周の内側に溝部111が形成されていた。これに対し、第2比較例の板状部材10Bでは、木製部材11Bの側面113に孔112Bが形成されている。孔112Bは、締結部材15Bが貫通する孔である。さらに、第2比較例の板状部材10Bでは、木製部材11Bの端面110だけでなく、側面113にも亘って溝部111Bが形成されている。溝部111Bは、金属部材12Bの板状部120Bが嵌入される溝である。また、上述した本実施形態の板状部材10では、木製部材11と金属部材12とは、木製部材11の溝部111に充填された充填材13を介して接合されていた。これに対し、第2比較例の板状部材10Bでは、締結部材15Bは、孔112Bを貫通し、金属部材12Bを木製部材11Bに直接締結する。
【0043】
ここで、第2比較例の板状部材10Bでも、金属部材12Bに形成された孔122Bは、締結部材15Bの直径より大きくせざるを得ない。このため、締結部材15Bにより木製部材11Bと金属部材12Bとを締結したとしても、ガタが生じる可能性がある。つまり、板状部材10Bの初期剛性が低くなってしまうことがある。また、締結部材15Bの長手方向の荷重に対して、木製部材11Bにこじり力が生じ、局部めり込みが生じる可能性が高くなる。これにより、木製部材11Bの割れが生じることがある。また、締結部材15Aの長手方向の荷重に対して、木製部材11Aにこじり力が生じ、局部めり込みが生じる可能性が高くなる。これにより、木製部材11Aの割れが生じることがある。
【0044】
板状部材10Bが屋外に露出される場合は、金属部材12Bを取り付けるために木製部材11Bの側面113に形成された孔112Bや溝部111Bの周囲に紫外線や水といった劣化因子が触れることになるので、孔112Bや溝部111Bの周囲が劣化してしまうことがある。具体的には、締結部材15Bが貫通する孔122Bや溝部111Bを介して侵入する水分による、孔112Bや溝部111Bの周囲の劣化や、孔112Bや溝部111Bを起点とした割れが生じることがある。また、板状部材10Bが屋外に露出される場合は、木製部材11Bの耐候性を向上させる処理(耐候性処理)や塗装(耐候性塗装)を行うことがある。このとき、締結部材15Bの擦れにより耐候性処理や耐候性塗装が劣化してしまうことがある。
【0045】
上述した第1比較例の板状部材10Aや第2比較例の板状部材10Bに対して、本実施形態の板状部材10では、木製部材11と金属部材12とが充填材13を介して接合されている。木製部材11の端面110に形成された溝部111は、充填材13が充填されており、その他の木製部材11の表面(例えば、側面113)には孔や溝が形成されていない。したがって、本実施形態の板状部材10では、金属部材12を取り付けるために木製部材11に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の板状部材10では、締結部材15は、金属で形成された金属部材12と接続部材14とを締結するので、ガタが生じる可能性も抑制することができる。さらに、本実施形態の板状部材10では、充填材13が接着剤の場合は、接着剤の接着力により板状部120の引張方向も応力伝達できるため、木製部材11Aにこじり力を抑制することができ、溝部111の局部めり込みも抑制することができる。
【0047】
<<変形例>>
図5は、第1変形例の板状部材10Cの上部における分解斜視図である。
【0048】
上述した本実施形態の板状部材10では、木製部材11の溝部111が形成される端面110は、平らな面で構成されていた。しかし、図5に示す第1変形例の板状部材10Cの木製部材11Cのように、端面110には、凹部111が形成されており、溝部111の開口は、凹部111に位置していても良い。この場合であっても、溝部111の開口は、端面110における外周の内側に位置している。第1変形例の板状部材10Cでも、金属部材12を取り付けるために木製部材11Cに形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0049】
図6は、第2変形例の板状部材10Dの下部における分解斜視図である。
【0050】
上述した本実施形態の板状部材10では、金属部材12の板状部120と、接続部材14の添接部140とが、孔122を貫通した締結部材15により締結されていた。第2変形例の板状部材10Dは、本実施形態の金属部材12と異なる金属部材12Dや、本実施形態の接続部材14と異なる接続部材14Dを有していても良い。
【0051】
金属部材12Dは、図6に示すように、孔122とは別に凸部123を有している。また、接続部材14Dには、図6に示すように、切欠き部145が形成されている。第2変形例の板状部材10Dでは、凸部123を切欠き部145に嵌入させることで容易に位置決めを行うことができ、金属部材12Dの板状部120Dを、接続部材14Dの添接部140Dに容易に添接させることができる。なお、第2変形例の板状部材10Dでも、金属部材12Dを取り付けるために木製部材11Dに形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0052】
<<接合手順>>
図7は、本実施形態の接合手順のフロー図である。
【0053】
まず、板状部材10の木製部材11の端面110における外周の内側に溝部111を形成する(S001、溝部形成ステップ)。
【0054】
図8Aは、溝部形成工具70により木製部材11の端面110に溝部111を形成する前の状態を示す説明図である。図8Bは、溝部形成工具70により木製部材11の端面110に溝部111を形成した後の状態を示す説明図である。
【0055】
本実施形態の接合手順では、木製部材11の端面110に溝部111を形成する際、図8Aに示すチェーンソー等の溝部形成工具70を使用しても良い。これにより、容易に木製部材11の端面110に溝部111を形成することができる。
【0056】
次に、木製部材11の溝部111に金属部材12の板状部120を嵌入させる(S002、金属部材嵌入ステップ)。そして、溝部111と金属部材12の板状部120(具体的には、接合面121)との隙間に充填材13を充填させる(S003、充填ステップ)。
【0057】
図9Aは、木製部材11の端面110に形成された溝部111に金属部材12を嵌入する前の状態を示す説明図である。図9Bは、木製部材11の端面110に形成された溝部111に金属部材12を嵌入し、充填材13を充填する様子を示す説明図である。
【0058】
本実施形態の接合手順では、図9Aに示すように、金属部材12は、溝部111に水平方向に嵌入されるように配置されている。そして、図9Bに示すように、充填材13は、水平方向に充填される。この場合、充填材充填用のホース等で溝部111の奥まで充填材13を送るための経路を設け、溝部111の奥から一様に充填材13が広がるように充填する。これにより、溝部111に充填材13をまんべんなく充填させることができる。但し、充填性を確認することができれば、充填材13は、水平方向に充填されなくても良い。
【0059】
最後に、金属部材12と部材90とを接続させる(S004、接続ステップ)。なお、接続ステップは、本実施形態では、予め、上述した溝部形成ステップ(S001)と上述した金属部材嵌入ステップ(S002)と上述した充填ステップ(S003)とを行った後に行う。
【0060】
図10Aは、部材90に接合された接続部材14と、木製部材11に接合された金属部材12とを接続する前の状態を示す説明図である。図10Bは、部材90に接合された接続部材14と、木製部材11に接合された金属部材12とを接続した後の状態を示す説明図である。
【0061】
本実施形態の板状部材10では、木製部材11側の(木製部材11に接合される)金属部材12と、部材90側の(部材90に接合される)接続部材14とが分離されている。これにより、図10Aに示すように、予め、金属部材12を木製部材11に接合させておき、接続部材14をアンカーボルト147により部材90に接合させておくことができる。そして、図10Bに示すように、金属部材12が接合された木製部材11を後側に移動させて、部材90に接合された接続部材14と接続させることができる。つまり、木製部材11を部材90に容易に取り付けることができる。なお、金属部材12の板状部120を接続部材14の添接部140に添わせたまま、左側また右側(図10の紙面に垂直な方向)に移動させることによって、金属部材12と接続部材14と接続させても良い。
【0062】
==まとめ==
本明細書によれば、以下の態様の板状部材が提供される。
【0063】
(態様1)
態様1は、端面における外周の内側に溝部が形成された、板状の木製部材と、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備える板状部材である。
【0064】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0065】
(態様2)
態様2では、前記木製部材の前記端面以外の部位には、孔又は溝が形成されていない。
【0066】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0067】
(態様3)
態様3では、前記溝部の内部以外の部位は屋外に露出される。
【0068】
上述の態様によれば、このような場合であっても、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0069】
(態様4)
態様4では、前記木製部材が、CLT,LVL,集成材,又はこれらの組み合わせで構成されたルーバーである。
【0070】
上述の態様によれば、このような場合であっても、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0071】
また、本明細書によれば、以下の態様の接合構造が提供される。
【0072】
(態様5)
態様5は、態様1に記載の木製部材と別の部材との接合構造であって、前記別の部材に接続され、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備える接合構造である。
【0073】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0074】
(態様6)
態様6では、前記板状部は、前記溝部の溝深さに納まる接合面長を含む接合面を有し、前記木製部材は、前記板状部に添接される添接面を有する接続部材を介して前記別の部材に接続される。
【0075】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0076】
(態様7)
態様7では、前記接続部材は、前記添接面と直交するフランジ面を有し、前記フランジ面は、前記別の部材と面接合される。
【0077】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0078】
また、本明細書によれば、以下の態様の接合方法が提供される。
【0079】
(態様8)
態様8は、板状部材と別の部材との接合方法であって、前記板状部材の端面における外周の内側に溝部を形成する溝部形成ステップと、前記溝部に金属部材を嵌入させる金属部材嵌入ステップと、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填材を充填させる充填ステップと、を有する接合方法である。
【0080】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0081】
(態様9)
態様9では、前記金属部材と前記別の部材とを接続させる接続ステップと、を有する。
【0082】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0083】
(態様10)
態様10では、予め、前記溝部形成ステップと前記金属部材嵌入ステップと前記充填ステップとを行った後、前記接続ステップを行う。
【0084】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0085】
(態様11)
態様11では、前記金属部材嵌入ステップにおいて、前記金属部材は、前記溝部に水平方向に嵌入されるように配置され、前記充填ステップにおいて、前記充填材は、前記水平方向に充填される。
【0086】
上述の態様によれば、金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制することができる。
【0087】
==その他==
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
10,10A,10B,10C,10D 板状部材
11,11A,11B,11C,11D 木製部材
12,12A,12B,12D 金属部材
13 充填材
14,14D 接続部材
15,15A,15B 締結部材
50 接合構造
70 溝部形成工具
90 部材
91 上部部材
92 下部部材
110 端面
110C,110D 凹部
111,111B 溝部
112A,112B 孔
113 側面
120,120A,120B,120D 板状部
121 接合面
122,122A,122B 孔
123 凸部
124 アンカーボルト用孔
140,140D 添接部
141 フランジ部
142 添接面
143 フランジ面
144 孔
145 切欠き部
146 アンカーボルト用孔
147 アンカーボルト
【要約】
【課題】金属部材を取り付けるために木製部材に形成された孔や溝の周囲が劣化することを抑制する。
【解決手段】端面における外周の内側に溝部が形成された、板状の木製部材と、前記溝部に嵌入される板状部を有する金属部材と、前記溝部と前記金属部材との隙間に充填される充填材と、を備える板状部材である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10