(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】円盤状基板の製造方法及び円盤状基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20241001BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20241001BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241001BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/28
H01L21/304 622L
G11B5/84 A
(21)【出願番号】P 2024050265
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久志野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】間舘 秀雄
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215342(JP,A)
【文献】特開平4-25374(JP,A)
【文献】特開2007-301676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00-39/06;
H01L 21/304;
G11B 5/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板を収納するキャリアを下定盤と上定盤との間に配置する工程と、
前記下定盤と前記上定盤とで前記円盤状基板を挟持して前記下定盤と前記上定盤との間に処理液を供給しつつ前記円盤状基板を研削処理又は研磨処理する工程と、
前記上定盤と前記円盤状基板との間に、前記円盤状基板を前記上定盤から剥離する第一剥離流体を、第一供給系を用いて供給する工程と、
前記上定盤と前記キャリアとの間に、前記キャリアを前記上定盤から剥離する第二剥離流体を、前記第一供給系から独立する第二供給系を用いて供給する工程と、
を含む、円盤状基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一剥離流体と前記第二剥離流体とのうち少なくとも一方の剥離流体を供給する工程は、
液体を送り込むことによって、前記液体を前記処理液に接触させる処理と、
気体を前記液体に後続して送り込むことによって、前記処理液に接触する状態の前記液体に圧力を加える処理と、
を含む、請求項1に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項3】
上側に円盤状基板を収納するキャリアが載置される下定盤と、
前記下定盤の上側に前記下定盤に対して近接又は離隔可能に配置され、前記円盤状基板に対向する部分に形成された第一ノズル孔と、前記キャリアに対向する部分に形成された第二ノズル孔と、を有する上定盤と、
前記下定盤と前記上定盤との間に処理液を供給する処理液供給部と、
前記円盤状基板を前記上定盤から剥離する第一剥離流体が蓄えられた第一供給源と、前記第一供給源と前記第一ノズル孔との間に接続された第一配管と、を有する第一供給系と、
前記キャリアを前記上定盤から剥離する第二剥離流体が蓄えられた第二供給源と、前記第二供給源と前記第二ノズル孔との間に接続された第二配管と、を有し、前記第一供給系から独立して設けられた第二供給系と、
を備える、円盤状基板の製造装置。
【請求項4】
前記第一供給系によって前記第一剥離流体を前記上定盤と前記円盤状基板との間に供給する処理と、前記第二供給系によって前記第二剥離流体を前記上定盤と前記キャリアとの間に供給する処理と、を実行する制御装置、
を更に備える、請求項3に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第一剥離流体と前記第二剥離流体とのうち少なくとも一方の剥離流体を供給する処理として、
液体を送り込むことによって前記液体を前記処理液に接触させ、前記液体に後続して気体を送り込むことによって、前記処理液に接触する状態の前記液体に圧力を加えるように、前記第一供給系と前記第二供給系とのうち少なくとも一方を制御する、
請求項4に記載の円盤状基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円盤状基板の製造方法及び円盤状基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気記録媒体用の基板として用いられる円盤状基板の製造工程において、円盤状基板の表面の平坦性を向上させるために、研磨装置を用いて円盤状基板の表面を研磨することが知られている。例えば特許文献1に開示された研磨装置では、下定盤と上定盤とが互いに対向して配置されると共に、下定盤と上定盤との間に円盤状基板がキャリアの内側に収納された状態で配置される。
【0003】
特許文献1では、下定盤と上定盤とが円盤状基板に接触した状態で、下定盤と上定盤との間に研磨液を供給しつつ円盤状基板を回転させることによって、円盤状基板の表面が研磨される。しかし、研磨装置では、円盤状基板の研磨後、研磨された円盤状基板とキャリアとが研磨液を介して上定盤に吸着することによって、上定盤が上昇しても円盤状基板が上定盤から剥離されない場合がある。
【0004】
これを解決するために、特許文献1では、上定盤と円盤状基板との間、及び、上定盤とキャリアとの間のそれぞれに対して、剥離流体としての剥離ガスを、上定盤に設けられたノズル孔を介して外部から供給させて、円盤状基板を上定盤から剥離させている。特許文献1では、剥離ガスの供給によって、研磨液を、上定盤と円盤状基板との間、及び、上定盤とキャリアとの間から排出することが開示されている。円盤状基板とキャリアとが上定盤から剥離された後、円盤状基板は、研磨装置から、次の工程を実施するための装置に移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、通常、円盤状基板の周囲に位置するキャリアの厚みは、円盤状基板の厚みより薄い。このため、円盤状基板を収納したキャリアが下定盤の上に配置されると、円盤状基板の高さは、キャリアの高さより高くなる。すなわち、下定盤と上定盤との間では、キャリアの上側の部分におけるキャリアの単位面積あたりの空間体積の方が、円盤状基板の上側の部分における円盤状基板の単位面積あたりの空間体積より大きい。
【0007】
特許文献1では、円盤状基板の上側に供給される剥離流体としての剥離ガスの供給系と、キャリアの上側に供給される剥離流体としての剥離ガスの供給系とについて、それぞれの供給源が共通であると共に、共通の供給源から延びる1つの共通の配管が供給路の一部として使用される。特許文献1では、円盤状基板の側の剥離ガスの供給系とキャリアの側の剥離ガスの供給系として、1つの供給系が共通して用いられる。
【0008】
このため、剥離流体が円盤状基板の上側に供給されると、単位面積あたりの空間体積の大きいキャリアの上側に剥離流体は逸れ易い。換言すると、剥離流体が、円盤状基板の上側よりも圧力損失の小さいキャリアの上側に流れてしまう。結果、円盤状基板の上側に供給される剥離流体の圧力が低下する。このため、円盤状基板の上側の部分に溜まった研磨液が十分に排出されず、結果、円盤状基板が上定盤から剥離されない場合がある。
【0009】
本開示は、上記した問題に着目して為されたものであって、研磨後の円盤状基板を上定盤から剥離し易い、円盤状基板の製造方法及び円盤状基板の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
<1>
円盤状基板を収納するキャリアを下定盤と上定盤との間に配置する工程と、前記下定盤と前記上定盤とで前記円盤状基板を挟持して前記下定盤と前記上定盤との間に処理液を供給しつつ前記円盤状基板を研削処理又は研磨処理する工程と、前記上定盤と前記円盤状基板との間に、前記円盤状基板を前記上定盤から剥離する第一剥離流体を、第一供給系を用いて供給する工程と、前記上定盤と前記キャリアとの間に、前記キャリアを前記上定盤から剥離する第二剥離流体を、前記第一供給系から独立する第二供給系を用いて供給する工程と、を含む、円盤状基板の製造方法。
【0011】
<2>
前記第一剥離流体と前記第二剥離流体とのうち少なくとも一方の剥離流体を供給する工程は、液体を送り込むことによって、前記液体を前記処理液に接触させる処理と、気体を前記液体に後続して送り込むことによって、前記処理液に接触する状態の前記液体に圧力を加える処理と、を含む、<1>に記載の前記円盤状基板の製造方法。
【0012】
<3>
上側に円盤状基板を収納するキャリアが載置される下定盤と、前記下定盤の上側に前記下定盤に対して近接又は離隔可能に配置され、前記円盤状基板に対向する部分に形成された第一ノズル孔と、前記キャリアに対向する部分に形成された第二ノズル孔と、を有する上定盤と、前記下定盤と前記上定盤との間に処理液を供給する処理液供給部と、前記円盤状基板を前記上定盤から剥離する第一剥離流体が蓄えられた第一供給源と、前記第一供給源と前記第一ノズル孔との間に接続された第一配管と、を有する第一供給系と、前記キャリアを前記上定盤から剥離する第二剥離流体が蓄えられた第二供給源と、前記第二供給源と前記第二ノズル孔との間に接続された第二配管と、を有し、前記第一供給系から独立して設けられた第二供給系と、を備える、円盤状基板の製造装置。
【0013】
<4>
前記第一供給系によって前記第一剥離流体を前記上定盤と前記円盤状基板との間に供給する処理と、前記第二供給系によって前記第二剥離流体を前記上定盤と前記キャリアとの間に供給する処理と、を実行する制御装置、を更に備える、<3>に記載の円盤状基板の製造装置。
【0014】
<5>
前記制御装置は、前記第一剥離流体と前記第二剥離流体とのうち少なくとも一方の剥離流体を供給する処理として、液体を送り込むことによって前記液体を前記処理液に接触させ、前記液体に後続して気体を送り込むことによって、前記処理液に接触する状態の前記液体に圧力を加えるように、前記第一供給系と前記第二供給系とのうち少なくとも一方を制御する、<3>又は<4>に記載の円盤状基板の製造装置。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、研磨後の円盤状基板を上定盤から剥離し易い、円盤状基板の製造方法及び円盤状基板の製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る円盤状基板の製造装置を説明する平面図である。
【
図3】本実施形態に係る円盤状基板の製造方法を説明する断面図である(その1)。
【
図4】本実施形態に係る円盤状基板の製造方法を説明する断面図である(その2)。
【
図5】比較例に係る円盤状基板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本開示の実施形態を説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0018】
以下の図面の記載において、同様の部分には、同様の符号が付されている。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置と各部材の厚みの比率は、現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みと寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係と比率とが異なる部分が含まれている。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0019】
以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値が、それぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
本開示において、成分が含まれる場合、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0021】
<円盤状基板の製造装置>
まず、本実施形態に係る円盤状基板の製造装置10を、
図1~
図2を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、円盤状基板の製造装置10は、下定盤12と、上定盤14と、研磨液供給部30と、第一供給系41と、第二供給系42と、を備える。
【0022】
本実施形態では、円盤状基板の製造装置10は、研磨装置である。本開示では、円盤状基板の製造装置10は、円盤状基板を製造するために必要な1つ以上の他の装置を含んで構成されてよい。
【0023】
具体的には、研磨装置の前段において円盤状基板50を研削する研削装置、未加工又は加工済の円盤状基板50の一括移送装置、未加工又は加工済の円盤状基板50を待機させる待機装置等が含まれてよい。また、これらとは独立して、又はこれらを組み合わせて、未加工又は加工済の円盤状基板を収容する収容ラック、円盤状基板50を洗浄する洗浄装置、円盤状基板50を乾燥する乾燥装置等が含まれてよい。
【0024】
(円盤状基板)
円盤状基板50は、キャリア52の収納孔52Aの内側に収納される。本実施形態の円盤状基板50は、例えば、アルミニウム基板又はアルミニウム合金基板であるが、本開示では、これに限定されず、ガラス基板等を採用してもよい。以降、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板及びガラス基板を総称して「基板」ともいう。また、アルミニウム基板及びアルミニウム合金基板を総称して「アルミニウム基板」ともいう。アルミニウム基板の表面には、めっき層が形成されていてもよい。この場合、研磨対象表面は、めっき層とすることができる。アルミニウム基板は、加工性に優れると共に製造コストを抑制できる点で有利である。
【0025】
一方、ガラス基板の表面には、ガラス強化層が形成され得る。この場合、研磨対象表面は、ガラス強化層とすることができる。ガラス強化層の形成は、ガラス基板において必須ではない。本開示は、ガラス強化層が形成されない無垢のガラス基板の表面を研磨する場合にも適用できる。ガラス基板は、アルミニウム基板に比べ、強度、表面の平坦性、耐熱性などに優れるため、円盤状基板の小型化と高密度化とを図り易い。
【0026】
図1に示すように、本実施形態では、1つのキャリア52に収納される円盤状基板50の個数が3つである場合が例示されているが、本開示では、これに限定されず、収納される円盤状基板の個数は、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。同様に、本実施形態では、下定盤12に載置されるキャリア52の個数が4つである場合が例示されたが、本開示では、これに限定されず、載置されるキャリアの個数は、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。
【0027】
本実施形態の円盤状基板50は、磁気記録媒体用であるが、本開示では、これに限定されない。本開示の円盤状基板は、例えば光ディスク用のような他の情報記録用ディスクであってもよい。
【0028】
研磨装置において円盤状基板50は、キャリア52を介して、円盤状基板50の軸を中心として自ら回転、すなわち、自転すると共に、太陽歯車16の軸を中心として太陽歯車16の周囲を回転、すなわち、公転する。
【0029】
(下定盤)
図2に示すように、下定盤12は、円盤状の下ベース12Aと、
図2中の下ベース12Aの上に設けられた円盤状の下研磨パッド12Bとを有する。下研磨パッド12Bとしては、研磨布等、公知の研磨素材を採用できる。なお、本開示において、用語「下定盤」は、下研磨パッドを含む総称として用いられる場合がある。
下定盤12の下研磨パッド12Bの上側には、円盤状基板50を収納するキャリア52が載置される。
図1に示すように、下定盤12の中央には、4つのキャリア52の周縁の歯車と噛み合う1つの太陽歯車16が配置される。下定盤12の周囲には、4つのキャリア52の周縁の歯車と噛み合う1つの外歯歯車18が配置される。
図2に示すように、下定盤12と外歯歯車18との間には、研磨液60を排出する排出路Dが形成される。
(上定盤)
図2に示すように、上定盤14は、円盤状の上ベース14Aと、
図2中の上ベース14Aの下に設けられた円盤状の上研磨パッド14Bとを有する。上研磨パッド14Bとしては、下研磨パッド12Bと同様に、研磨布等、公知の研磨素材を採用できる。なお、本開示において、用語「上定盤」は、上研磨パッドを含む総称として用いられる場合がある。
上定盤14は、下定盤12の上側に下定盤12に対向した状態で配置される。本実施形態では下定盤12と上定盤14とはいずれも、油圧駆動装置、電動駆動装置等に接続されることによって昇降自在に設けられる。このため、上定盤14は、下定盤12に対して近接又は離隔可能である。本開示では、下定盤12と上定盤14とのうち少なくとも一方が昇降自在であることによって、上定盤14が下定盤12に対して近接又は離隔可能に配置されてもよい。
【0030】
上定盤14は、第一ノズル孔21と、第二ノズル孔22と、を有する。第一ノズル孔21は、円盤状基板50に対向する部分に、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通して形成される。第二ノズル孔22は、キャリア52に対向する部分に、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通して形成される。
本実施形態では、
図1中には、1つの円盤状基板50に対向する部分に2つの第一ノズル孔21が形成されると共に、キャリア52に対向する部分に6つの第二ノズル孔22が形成される状態が例示されているが、本開示では、これに限定されない。本開示では、第一ノズル孔21と第二ノズル孔22とのそれぞれの個数は、適宜変更できる。
本実施形態では、
図1中の2-2線から分かるように、2つの第一ノズル孔21と2つの第二ノズル孔22とが平面視で1つの直線上に配置される状態が例示されているが、本開示では、これに限定されない。第一ノズル孔21と第二ノズル孔22との配置パターンは、適宜変更できる。
【0031】
(研磨液供給部)
研磨液供給部30は、研磨液60が蓄えられた研磨液槽30Aと、研磨液槽30Aと上定盤14との間に接続された研磨液用配管30Bと、を有する。研磨液供給部30は、下定盤12と上定盤14との間に研磨液60を供給する。具体的には例えば、研磨液60は、
図2中の上定盤14の上ベース14Aの上面上に滴下されると共に、上面側から上定盤14の下側に向かって表面上を移動することによって、下定盤12と上定盤14との間に供給され得る。研磨液60が流れるための経路として、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通する貫通孔が形成されてもよい。本実施形態の研磨液60は、本開示の処理液に対応する。本実施形態の研磨液供給部30は、本開示の処理液供給部に対応する。
【0032】
(第一供給系)
図2に示すように、第一供給系41は、第一供給源41Aと、第一配管41Bと、を有する。第一供給源41Aには、円盤状基板50を上定盤14から剥離する第一剥離流体(
図4中の第一剥離流体71参照)が蓄えられる。第一配管41Bは、第一供給源41Aと第一ノズル孔21との間に接続される。第一供給源41Aは、第一剥離流体を貯蔵可能なタンクのような貯蔵装置を含む。第一剥離流体が、それぞれの供給開始タイミングが互いに異なる複数の種類の剥離流体の組み合わせである場合、それぞれの剥離流体は、互いに混合することなく選択的に使用可能であるように貯蔵装置に貯蔵される。
(第二供給系)
第二供給系42は、第二供給源42Aと、第二配管42Bと、を有する。第二供給源42Aには、キャリア52を上定盤14から剥離する第二剥離流体(
図4中の第二剥離流体72参照)が蓄えられる。第二配管42Bは、第二供給源42Aと第二ノズル孔22との間に接続される。第二供給源42Aの他の構成は、第一供給源41Aと同様であるため、重複説明を省略する。第二供給系42は、第一供給系41から独立して設けられる。
【0033】
(剥離流体)
第一剥離流体又は第二剥離流体としては、例えば純水のような公知の液体、空気のような公知の気体を適宜採用できる。本実施形態では、第一剥離流体の種類と第二剥離流体の種類とは共通であるが、本開示では、これに限定されず、第一剥離流体の種類と第二剥離流体の種類とは、互いに異なってもよい。
【0034】
(供給系の独立配置)
本実施形態の第一供給系41と第二供給系42とは、互いに独立する供給系である。具体的には、第一供給系41の第一供給源41Aと第二供給系42の第二供給源42Aとは、互いに異なる別々の供給源である。第一供給系41の第一配管41Bと第二供給系42の第二配管42Bとは、互いに接続されない。
【0035】
ここで、それぞれの供給系が互いに独立であるとは、それぞれの供給路が接続されていないことと、それぞれの供給源が互いに異なることと、の両方を含む。換言すると、複数の剥離流体の供給系におけるそれぞれの供給系が互いに非独立である、とは、それぞれの剥離流体の供給源が共通であることと、それぞれの剥離流体の供給路が接続されていることと、のうち少なくとも一方を含む。
【0036】
(制御装置)
本実施形態では、
図2に示すように、研磨工程に含まれる1つ以上の処理を研磨装置に実行させる制御装置44が、第一供給系41と第二供給系42とに接続される。本開示では、研磨工程に含まれる1つ以上の処理は、例えばプログラムの形で制御装置44に対して提供され得る。
【0037】
本実施形態では、1つの制御装置44が第一供給系41と第二供給系42との両方に接続される場合が例示されたが、本開示では、制御装置の個数は、1つ以上任意に設定でき、例えば、第一供給系41と第二供給系42とのそれぞれに応じて制御装置が1つずつ接続されてもよい。円盤状基板の製造装置10に設けられる制御装置の個数に関わらず、第一供給系41と第二供給系42とは、互いに独立して構成され得る。
【0038】
<円盤状基板の製造方法>
次に、本実施形態に係る円盤状基板の製造装置10を用いた円盤状基板の製造方法を、
図3~
図4を参照しつつ説明する。本実施形態に係る円盤状基板の製造方法は、
(A)円盤状基板50を収納するキャリア52を下定盤12と上定盤14との間に配置する工程と、
(B)下定盤12と上定盤14とで円盤状基板50を挟持して、下定盤12と上定盤14との間に研磨液60を供給しつつ円盤状基板50を研磨処理する工程と、
(C)上定盤14と円盤状基板50との間に、円盤状基板50を上定盤14から剥離する第一剥離流体を、第一供給系41を用いて供給する工程と、
(D)上定盤14とキャリア52との間に、キャリア52を上定盤14から剥離する第二剥離流体を、第一供給系41から独立する第二供給系42を用いて供給する工程と、
を含む。
本実施形態では、円盤状基板の製造方法を実施するためのプログラムを用いて制御装置44が操作されることによって、(A)~(D)の工程を含む円盤状基板の製造方法を実施する場合が例示的に説明される。本開示では、円盤状基板の製造装置10の操作者が制御装置44を操作することによって円盤状基板の製造方法が実行されてもよい。
【0039】
本実施形態では、円盤状基板の製造方法は、研磨工程における円盤状基板50の上定盤14からの剥離処理を含む。本開示では、円盤状基板の製造方法は、円盤状基板の種類に応じて、円盤状基板50を製造するために必要な通常公知の1つ以上の他の処理を含んで構成されてよい。
【0040】
例えばアルミニウム基板の場合、円盤状基板の製造方法は、以下の工程を含む。
ブランク基板用意工程:アルミニウム合金鋳塊を圧延することによって、厚さ2mm以下程度のアルミニウム合金板材が得られる。得られたアルミニウム合金板材を円盤状に打ち抜くことによって、所望の寸法のアルミニウム合金基板が用意される。
切削工程:用意されたアルミニウム合金基板に対して、内外径の面取り加工及び両主面の切削加工が施される。
研削工程:切削加工後のアルミニウム合金基板の表面粗さ、うねり等を下げるために、アルミニウム合金基板の両主面に砥石による研削加工が施される。
めっき工程:研削加工が施された基板に対して、表面硬さの付与と表面欠陥の抑制を目的として、アルミニウム合金基板の表面に無電解ニッケルめっき(NiP)等のめっきが施される。
研磨工程:めっき被膜が形成されたアルミニウム合金基板の両主面に対して、研磨加工が施される。
【0041】
ガラス基板の場合、円盤状基板の製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
ブランク基板用意工程:一対の主表面を有する板状の磁気記録媒体用ガラス基板の素材となるガラスブランクがプレス成形により作製される。作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成することによって、ガラスブランクを円環状に形成する。次に、形状加工を行うことによって、面取り面を有するガラス基板が得られる。形状加工が施されたガラス基板の内外周端面に対して研削工程及び研磨工程が行われる。
研削工程:端面研磨後のガラス基板の主表面に、固定砥粒による研削が施される。
研磨工程:研削工程後のガラス基板の主表面に対して、所定の研磨剤による研磨が行われる。研磨工程の間に、ガラス基板に対して化学強化処理を行ってもよい。
【0042】
以下に、本実施形態に係る研磨工程の詳細について説明する。
[研磨工程]
研磨工程では、下定盤12と上定盤14とが円盤状基板50に接触した状態で、下定盤12と上定盤14との間に研磨液60を供給しつつ円盤状基板50を回転させることによって、円盤状基板50の表面が、下定盤12と上定盤14とによって研磨される。
アルミニウム基板を研磨する際の研磨液は、通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、酸化アルミニウム、コロイダルシリカ等を含むスラリーが挙げられる。ガラス基板を研磨する際の研磨液は、通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、酸化セリウム、ジルコニア、コロイダルシリカ等を含むスラリーが挙げられる。
【0043】
ここで、
図3に示すように、円盤状基板50の研磨後、研磨された円盤状基板50とキャリア52とが研磨液60を介して上定盤14に吸着することによって、上定盤14が上昇しても円盤状基板50が上定盤14から剥離されない場合がある。このため、上定盤14と円盤状基板50との間に対して、第一供給系41によって第一剥離流体71が、上定盤14に設けられた第一ノズル孔21を介して外部から、第二供給系42とは独立して供給される。また、上定盤14とキャリア52との間に対して、第二供給系42によって第二剥離流体72が、上定盤14に設けられた第二ノズル孔22を介して外部から、第一供給系41とは独立して供給される。
【0044】
本開示では、「供給」は、目的の場所に結果として到達することを意味する。例えば第一剥離流体71の供給とは、第一剥離流体71が上定盤14と円盤状基板50との間に到達することを意味する。第二剥離流体72の供給とは、第二剥離流体72が上定盤14とキャリア52との間に到達することを意味する。
【0045】
第一剥離流体71を供給するために第一供給系41が第一剥離流体71への駆動力の付与を開始するタイミングは、上定盤14の上昇開始前であってもよいし、上昇開始後であってもよい。第一剥離流体71への駆動力の付与を停止するタイミングは、上定盤14が予め設定された高さまで到達する上昇完了前であってもよいし、上昇完了後であってもよい。
【0046】
第二剥離流体72を供給するために第二供給系42が第二剥離流体72への駆動力の付与を開始するタイミングは、上定盤14の上昇開始前であってもよいし、上昇開始後であってもよい。第二剥離流体72への駆動力の付与を停止するタイミングは、上定盤14が所定の高さまで到達する上昇完了前であってもよいし、上昇完了後であってもよい。本開示では、上定盤14を上昇させる処理を伴うことなく、第一剥離流体71と第二剥離流体72との供給が実施されることも除外されない。
【0047】
(2相の剥離流体の組み合わせ)
本実施形態では、第一剥離流体71と第二剥離流体72とのそれぞれが、最初に送り込まれる液体と、液体に後続して送り込まれる気体との両方を含む。本開示では、第一剥離流体71と第二剥離流体72との両方が、最初に送り込まれる液体と、液体に後続して送り込まれる気体との両方を含む必要はなく、第一剥離流体71と第二剥離流体72とのうち少なくとも一方の剥離流体が、最初に送り込まれる液体と、液体に後続して送り込まれる気体との両方を含めばよい。
本開示では「最初に送り込まれる液体」とは、研磨液60に接触する状態の液体と、液体に圧力を加える気体との2相の剥離流体の組み合わせにおいて、液体に圧力を加える気体が送り込まれるタイミングよりも先に送り込まれる液体を意味する。このため、「最初に送り込まれる液体」とは、ある研磨処理において、処理開始後に最初に送り込まれる液体に限定されない。例えばある研磨処理の処理開始後、1回以上の剥離流体の送り込みが実施された後、研磨液60に接触させるための液体の送り込みと当該液体に後続し液体に圧力を加える気体の送り込みとが行われる場合であっても、当該送り込まれる液体は、本開示の「最初に送り込まれる液体」である。
【0048】
第一剥離流体71を供給する工程は、液体を送り込むことによって、液体を研磨液60に接触させる処理と、気体を液体に後続して送り込むことによって、研磨液60に接触する状態の液体に圧力を加える処理と、を含む。すなわち、第一剥離流体71を構成する2相の流体は、液体、気体、の順に2段階で供給される。
同様に、第二剥離流体72として、液体と気体との2相の流体が組み合わせて用いられる。また、第二剥離流体72を供給する工程は、液体を送り込むことによって、液体を研磨液60に接触させる処理と、気体を液体に後続して送り込むことによって、研磨液60に接触する状態の液体に圧力を加える処理と、を含む。第二剥離流体72を構成する2相の流体も、液体、気体、の順に2段階で供給される。
本開示では、第一剥離流体71と第二剥離流体72とのうち少なくとも一方の剥離流体を供給する工程は、液体を送り込むことによって、液体を研磨液60に接触させる処理と、気体を液体に後続して送り込むことによって、研磨液60に接触する状態の液体に圧力を加える処理と、を含めばよい。
【0049】
本実施形態の液体は、前後の処理の内容及び使用される処理液のリサイクル等に応じて適宜選択でき、純水、クーラント等を挙げることができる。本実施形態の気体は、例えば空気であるが、本開示ではこれに限定されず、他の気体を適宜採用できる。
【0050】
制御装置44が用いられる場合、制御装置44は、第一供給系41によって第一剥離流体71を上定盤14と円盤状基板50との間に供給する処理と、第二供給系42によって第二剥離流体72を上定盤14とキャリア52との間に供給する処理と、を実行する。また、液体を送り込むことによって、液体を研磨液60に接触させる処理と、気体を液体に後続して送り込むことによって、研磨液60に接触する状態の液体に圧力を加える処理と、が実行されるように、制御装置44は、第一供給系41と第二供給系42とのうち少なくとも一方を制御する。
【0051】
本実施形態では、円盤状基板50とキャリア52とを上定盤14から剥離する場合、第一剥離流体71と第二剥離流体72とは、時差を抑えて、それぞれ対応する第一ノズル孔21又は第二ノズル孔22に到達する。本開示では、第一剥離流体71の第一ノズル孔21への到達タイミングと第二剥離流体72の第二ノズル孔22への到達タイミングとの間に時間的な隔たりが形成されることは除外されない。
【0052】
図4に示すように、第一剥離流体71と第二剥離流体72とが互いに独立して供給されることによって、研磨された円盤状基板50とキャリア52とを上定盤14に吸着させる研磨液60が、下定盤12と外歯歯車18との間の排出路Dを通って排出される。これにより、円盤状基板50とキャリア52との両方が、上定盤14から剥離される。その後、円盤状基板50が、不図示の一括移送装置によってキャリア52の内側から取り出されると共に、後工程へ移送される。
【0053】
本開示では、研磨処理は、複数回実施してもよい。研磨処理が複数回実施される場合、それぞれの研磨処理で用いられる研磨液60の種類を互いに異ならせてもよい。また、例えば、複数回の研磨処理の間に、円盤状基板50の耐衝撃性能を向上させるため、円盤状基板50に対する化学強化処理が含まれてもよい。そして、移送された円盤状基板50に対して、洗浄、磁性膜の成膜、冷却等の所定の工程が実施されることによって、所望の仕様を有する磁気記録媒体を製造できる。
【0054】
(比較例)
図5には、比較例に係る円盤状基板の製造装置10Zが示されている。なお、製造装置10Zにおいて本実施形態に係る円盤状基板の製造装置10と同様の部材については同一符号を付して、説明を省略する。
製造装置10Zは、共通供給源43Aと共通配管43Bを備え、円盤状基板50に対向する第一ノズル孔21及びキャリア52に対向する第二ノズル孔22にそれぞれ剥離流体73の供給を行う共通供給系43を備えている。このように、製造装置10Zでは、円盤状基板50の側の剥離ガスの供給系とキャリア52の側の剥離ガスの供給系とが1つの供給系で共通して用いられており、互いに独立していない。
このため、比較例では、円盤状基板50の研磨後、円盤状基板50が上定盤14から剥離されない場合に剥離流体が供給されても、円盤状基板50の上側に供給される剥離流体が、単位面積あたりの空間体積の大きいキャリア52の上側に逸れ易い。結果、円盤状基板50の上側に供給される剥離流体の圧力が低下する。このため、円盤状基板50の上側の部分に溜まった研磨液60が十分に排出されず、結果、円盤状基板50が上定盤14から剥離されない場合がある。
【0055】
これに対して、本実施形態では、上定盤14とキャリア52との間に、キャリア52を剥離する第二剥離流体72が、円盤状基板50を剥離する第一剥離流体71を供給する第一供給系41から独立する第二供給系42を用いて供給される。このため、円盤状基板50を剥離する剥離流体がキャリア52の上側の部分の側に逸れること、すなわち、第一剥離流体71が、円盤状基板50の上側よりも圧力損失の小さいキャリア52の上側に流れることを抑制できる。これにより、上定盤14と円盤状基板50との間に溜まった研磨液60を排出するための剥離流体を、圧力の低下を抑制しつつ供給できる。このため、本実施形態では、円盤状基板50を上定盤14から剥離し易い。
また、本実施形態では、第一剥離流体71と第二剥離流体72とが互いに独立して供給されるので、上定盤14を上昇させる際、第一剥離流体71が第一ノズル孔21を経由して第一配管41B及び第一供給源41Aの側へ逆流することを比較例に比べて抑制し易い。同様に、第二剥離流体72が第二ノズル孔22を経由して第二配管42B及び第二供給源42Aの側へ逆流することを比較例に比べて抑制し易い。
【0056】
加えて、本実施形態では、円盤状基板の製造装置10単独で円盤状基板50を剥離することが可能である。このため、本実施形態は、人力を用いることなく自動化された製造ラインにおいて、特に有効である。
【0057】
また、本実施形態では、第一剥離流体71と第二剥離流体72とのうち少なくとも一方の剥離流体は、液体と気体との両方を含むので、液体によって円盤状基板50の表面周囲の研磨液60の乾燥を抑制することができる。このため、乾燥した研磨液60が、表面に付着して表面の平坦性が低下することを回避することができる。ただし、この本実施形態の効果はこの理由に限定されない。また、本開示は、本実施形態に限定されず、本実施形態の効果を損なわない範囲で、第一剥離流体及び第二剥離流体が共に液体、又は、共に気体であってもよい。
【0058】
加えて、本実施形態では、液体と共に研磨液60の排出が、更に促進される。この理由は、液体が供給された後、研磨液60に接触した液体に、更に、気体によって圧力が加えられるためと考えることができる。
【0059】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述と図面とは、本開示を限定するものであると理解すべきではない。
【0060】
例えば、本実施形態では、キャリア52を、外歯歯車18と太陽歯車16とを用いて自転及び公転させることで、複数の円盤状基板50を一括して研磨加工する場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、例えば複数の円盤状基板を上側に向かって突出した状態に保持しつつ、上側から研磨盤を円盤状基板の表面に接触させてもよい。そして、上側の研磨盤を回転させることによって、複数の円盤状基板の一括研磨が実施されてもよい。円盤状基板を回転させることなく、研磨盤が自転及び公転してもよい。
【0061】
(研削装置)
本実施形態では、円盤状基板の製造装置10は研磨装置として説明されたが、本開示ではこれに限定されず、製造装置10は研削装置であってもよい。本実施形態では円盤状基板の製造方法として、製造装置10として研磨装置を用いた、研磨処理済の円盤状基板の製造方法が例示されたが、本開示では円盤状基板の製造方法は、製造装置として研削装置を用いた、研削処理済の円盤状基板の製造方法であってもよい。
【0062】
円盤状基板の製造装置が研削装置である場合には、
図2中の製造装置10の下定盤12における下研磨パッド12B及び上定盤14における上研磨パッド14Bには、それぞれ砥石が適用される。このとき、用語「上定盤」及び用語「下定盤」は、それぞれ砥石を含む総称として用いられる場合がある。
また、研削装置における研削処理では、研磨液60の代わりに、処理液として例えばクーラントを供給して研削処理が実施される。このため、本実施形態における研磨液槽30A、研磨液用配管30B等は、それぞれクーラント槽、クーラント用配管等に、それぞれ適宜読み替えられる。なお、研削処理における処理液はクーラントに限られず、上定盤及び下定盤の間に供給される液体であれば他の液体であってもよい。
【0063】
製造装置が研削装置である場合には、上述した本実施形態と同様に、上定盤とキャリアとの間に、キャリアを剥離する第二剥離流体が、円盤状基板を剥離する第一剥離流体を供給する第一供給系から独立する第二供給系を用いて供給される。このため、円盤状基板を剥離する剥離流体がキャリアの上側の部分の側に逸れることを抑制できる。これにより、上定盤と円盤状基板との間に溜まった処理液を排出するための剥離流体を、圧力の低下を抑制しつつ供給できる。このため、上述した本実施形態と同様に、円盤状基板を上定盤から剥離し易いなどの利点を有する。
また、製造装置が研削装置である場合には、上述した本実施形態と同様に、第一剥離流体と第二剥離流体とが互いに独立して供給されるので、上定盤を上昇させる際、第一剥離流体が第一ノズル孔を経由して第一配管及び第一供給源の側へ逆流することを抑制し易い。同様に、第二剥離流体が第二ノズル孔を経由して第二配管及び第二供給源の側へ逆流することを抑制し易い。
【0064】
(製造方法)
本開示の研削処理済の円盤状基板の製造方法は、本実施形態の研磨処理済の円盤状基板の製造方法における(A)(C)(D)の各工程と同様の工程と、本実施形態の円盤状基板の製造方法の(B)に対応する工程と、を含み、具体的には、研削装置における以下の工程:
(A1)円盤状基板を収納するキャリアを下定盤と上定盤との間に配置する工程と、
(B1)下定盤と上定盤とで円盤状基板を挟持して、下定盤と上定盤との間に処理液を供給しつつ円盤状基板50を研削処理する工程と、
(C1)上定盤と円盤状基板との間に、円盤状基板を上定盤から剥離する第一剥離流体を、第一供給系を用いて供給する工程と、
(D1)上定盤とキャリアとの間に、キャリアを上定盤から剥離する第二剥離流体を、第一供給系から独立する第二供給系を用いて供給する工程と、
を含むものであってもよい。
【0065】
本実施形態の研磨処理済の円盤状基板の製造方法は、研削装置における処理工程として、上述の研削処理済みの円盤状基板の製造方法における(A1)(B1)(C1)(D1)の各工程と、研磨装置における処理工程として、研磨装置における各工程として、本実施形態における(A)(B)(C)(D)の各工程と、を含むものであってもよい。
これにより、研削処理済みの円盤状基板の製造方法による利点と、研磨処理済みの円盤状基板の製造方法による利点の双方を経時的に得ながら効率よく、研削及び研磨処理済みの円盤状基板を得ることができる。
【0066】
本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によって定められるものである。
【符号の説明】
【0067】
10,10Z 円盤状基板の製造装置 12 下定盤
12A 下ベース 12B 下研磨パッド
14 上定盤 14A 上ベース
14B 上研磨パッド 16 太陽歯車
18 外歯歯車 21 第一ノズル孔
22 第二ノズル孔 30 研磨液供給部
30A 研磨液槽 30B 研磨液用配管
41 第一供給系 41A 第一供給源
41B 第一配管 42 第二供給系
42A 第二供給源 42B 第二配管
43 共通供給系 43A 共通供給源
43B 共通配管 44 制御装置
50 円盤状基板 52 キャリア
52A 収納孔 60 研磨液
71 第一剥離流体 72 第二剥離流体
73 剥離流体 D 排出路
G 隙間
【要約】
【課題】研磨後の円盤状基板を上定盤から剥離し易い、円盤状基板の製造方法及び円盤状基板の製造装置を提供する。
【解決手段】円盤状基板の製造方法は、円盤状基板50を収納するキャリア52を下定盤12と上定盤14との間に配置する工程と、下定盤12と上定盤14とで円盤状基板50を挟持して下定盤12と上定盤14との間に処理液を供給しつつ円盤状基板50を研磨処理する工程と、上定盤14と円盤状基板50との間に、円盤状基板50を上定盤14から剥離する第一剥離流体を、第一供給系41を用いて供給する工程と、上定盤14とキャリア52との間に、キャリア52を上定盤14から剥離する第二剥離流体を、第一供給系から独立する第二供給系42を用いて供給する工程と、を含む。
【選択図】
図2