(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20241001BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20241001BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20241001BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241001BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F16H25/24 A
F16H25/22 A
F16H1/28
H02K7/116
H02K7/06 A
(21)【出願番号】P 2024520984
(86)(22)【出願日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2023044566
【審査請求日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2022203377
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 諒
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-187272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0274548(US,A1)
【文献】特開2016-084885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
F16H 1/28
H02K 7/116
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
キャリアを有する遊星歯車機構と、
前記キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記キャリアは、
前記ねじ軸と平行な軸方向の一方を向く第1面と、前記軸方向の他方を向く第2面と、を有するキャリア本体と、
前記第2面の中央部から前記軸方向の他方に突出するボス部と、
前記キャリア本体と前記ボス部とを前記軸方向に貫通する雌スプライン孔と、
を有し、
前記ねじ軸は、
前記雌スプライン孔とスプライン嵌合する雄スプライン部と、
前記雄スプライン部から前記軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、
を有し、
前記ねじ軸本体は、前記雄スプライン部よりも大径に形成され、
前記ねじ軸本体と前記雄スプライン部との境界には、前記軸方向の一方を向く段差面が設けられ、
前記キャリア本体と前記ボス部は、同一材料から形成されて一体化しており、
前記ボス部は、前記軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有し、
前記端面は、前記段差面と当接し
、
前記ナットの内周面には、前記ボールが転動する溝面が形成され、
前記ボス部は、円柱状に形成され、
前記軸方向から視て、前記ボス部の外周面が円形に形成され、
前記ボス部の外径は、前記ナットの内径よりも小さく、
前記ボス部の前記軸方向の他方への突出量は、前記ナットの前記軸方向の一方を向く一端面から前記溝面までの長さよりも小さい
アクチュエータ。
【請求項2】
モータと、
キャリアを有する遊星歯車機構と、
前記キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記キャリアは、
前記ねじ軸と平行な軸方向の一方を向く第1面と、前記軸方向の他方を向く第2面と、を有するキャリア本体と、
前記第2面の中央部から前記軸方向の他方に突出するボス部と、
前記キャリア本体と前記ボス部とを前記軸方向に貫通する雌スプライン孔と、
を有し、
前記ねじ軸は、
前記雌スプライン孔とスプライン嵌合する雄スプライン部と、
前記雄スプライン部から前記軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、
を有し、
前記ねじ軸本体は、前記雄スプライン部よりも大径に形成され、
前記ねじ軸本体と前記雄スプライン部との境界には、前記軸方向の一方を向く段差面が設けられ、
前記キャリア本体と前記ボス部は、同一材料から形成されて一体化しており、
前記ボス部は、前記軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有し、
前記端面は、前記段差面と当接し
、
前記ボス部の外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられ、
前記突起の前記軸方向の一方は、前記キャリア本体と連続し、
前記ナットの前記軸方向の一方を向く端面には、前記キャリアと供回りする突起の軌跡上に進入し、前記突起と接触するストッパが設けられている
アクチュエータ。
【請求項3】
モータと、
キャリアを有する遊星歯車機構と、
前記キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記キャリアは、
前記ねじ軸と平行な軸方向の一方を向く第1面と、前記軸方向の他方を向く第2面と、を有するキャリア本体と、
前記第2面の中央部から前記軸方向の他方に突出するボス部と、
前記キャリア本体と前記ボス部とを前記軸方向に貫通する雌スプライン孔と、
を有し、
前記ねじ軸は、
前記雌スプライン孔とスプライン嵌合する雄スプライン部と、
前記雄スプライン部から前記軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、
を有し、
前記ねじ軸本体は、前記雄スプライン部よりも大径に形成され、
前記ねじ軸本体と前記雄スプライン部との境界には、前記軸方向の一方を向く段差面が設けられ、
前記キャリア本体と前記ボス部は、同一材料から形成されて一体化しており、
前記ボス部は、前記軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有し、
前記端面は、前記段差面と当接し
、
前記ボス部の外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられ、
前記突起の前記軸方向の一方は、前記キャリア本体と連続し、
前記突起は、前記ナットの前記軸方向の一方の端部の内周側に進入可能であり、
前記ナットの前記軸方向の一方の端部には、前記ナットの内周面から径方向内側に突出し、前記キャリアと供回りする前記突起の軌跡上に進入し、前記突起と接触するストッパが設けられている
アクチュエータ。
【請求項4】
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受の内輪は、前記キャリアと一体に形成されている
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受の内輪は、前記キャリアと別体に形成されている
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受は、4点接触玉軸受、複列玉軸受、及び複列アンギュラ玉軸受のうちいずれか1つである
請求項1から請求項
3のうちいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1面の中央部には、前記軸方向の他方に窪み、底面に前記雌スプライン孔の開口部が設けられた凹面が設けられている
請求項1から請求項
3のうちいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、モータと、回転運動を直線運動に変換するボールねじ装置と、を備える。ボールねじ装置は、ナットと、ナットを貫通するねじ軸と、ナットとねじ軸の間に配置される複数のボールと、を有する。また、下記特許文献のアクチュエータは、モータの回転運動をねじ軸に伝達する回転部材を有している。回転部材は、ねじ軸の一端部に貫通され、回転部材とねじ軸が連結している。そして、ねじ軸が回転部材と供回りすると、ナットが軸方向に移動する。
【0003】
また、アクチュエータは、回転運動を減速させる遊星歯車機構をさらに備える場合がある。遊星歯車機構は、入力軸と、入力軸に固定されたサンギヤと、ハウジングに固定された内歯車と、サンギヤと内歯車に歯合する複数のプラネタリギヤと、伝達軸を介してプラネタリギヤを回転自在に支持するキャリアと、を備えている。このような遊星歯車機構を利用する場合、ねじ軸の一端部がキャリアを貫通し、ねじ軸とキャリアが連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャリアに対しねじ軸が傾いた状態で組み付けられると、ボールねじ装置の変換効率が低下する。これを回避するため、ねじ軸にキャリアの一側面と対向する段差面を設け、キャリアの一側面を平面出し加工し、段差面をキャリアの一側面に当接させる、といった方法が考えられる。しかしながら、平面出し加工の範囲は、キャリアの一側面の全てとなり、多大な労力を要するとともに、平面出し(平面性)の精度が落ちる。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、平面出し加工の労力を軽減でき、かつ平面出しの精度の向上を図れるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るアクチュエータは、モータと、キャリアを有する遊星歯車機構と、ボールねじ装置と、を備えている。ボールねじ装置は、前記キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有している。前記キャリアは、キャリア本体と、ボス部と、雌スプライン孔と、を有している。キャリア本体は、前記ねじ軸と平行な軸方向の一方を向く第1面と、前記軸方向の他方を向く第2面と、を有している。ボス部は、前記第2面の中央部から前記軸方向の他方に突出している。雌スプライン孔は、前記キャリア本体と前記ボス部とを前記軸方向に貫通している。前記ねじ軸は、前記雌スプライン孔とスプライン嵌合する雄スプライン部と、前記雄スプライン部から前記軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、を有している。前記ねじ軸本体は、前記雄スプライン部よりも大径に形成されている。前記ねじ軸本体と前記雄スプライン部との境界には、前記軸方向の一方を向く段差面が設けられている。前記ボス部は、前記軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有している。前記端面は、前記段差面と当接している。
【0008】
本開示によれば、キャリアに対しねじ軸が傾いて連結する、ということが回避される。また、平面出し加工の範囲は、ボス部の端面に限定される。よって、平面出し加工の労力が低減し、かつ平面出し(平面性)の精度も向上する。
【0009】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記ナットの内周面には、前記ボールが転動する溝面が形成されている。前記ボス部の外径は、前記ナットの内径よりも小さい。前記ボス部の前記軸方向の他方への突出量は、前記ナットの前記軸方向の一方を向く一端面から前記溝面までの長さよりも小さい。
【0010】
前記構成によれば、ボス部をナットの内部に配置することができる。よって、アクチュエータを軸方向に小型化できる。また、ボス部をナットの内部に配置しても、ボス部がボールに接触しない。
【0011】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記ボス部の外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられている。前記ナットの前記軸方向の他方を向く端面には、前記キャリアと供回りする突起の軌跡上に進入し、前記突起と接触するストッパが設けられている。
【0012】
前記構成によれば、ナットがキャリアの方に近づいた場合、ストッパが突起と接触する。これにより、キャリアの回転が規制され、ナットが位置決めされる。
【0013】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記軸受の内輪は、キャリアと一体に形成されている。
【0014】
前記構成によれば、部品点数の削減を図れる。
【0015】
また、前記するアクチュエータにおいて、前記軸受の内輪は、キャリアと別体に形成されていてもよい。
【0016】
前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記軸受は、4点接触玉軸受、複列玉軸受、及び複列アンギュラ玉軸受のうちいずれか1つである。
【0017】
キャリアとねじ軸のスプライン嵌合の軸方向の中心は、ボス部により軸方向の他方にずれている。つまり、スプライン嵌合の軸方向の中心は、キャリアを支持する軸受の軸方向の中心よりも、軸方向の他方にずれている。よって、ねじ軸に作用するラジアル荷重がキャリアに伝達すると、キャリアが傾く可能性がある。一方で、キャリアを支持する軸受は、4点接触玉軸受、複列玉軸受、及び複列アンギュラ玉軸受のうちいずれかであり、モーメント荷重に対する負荷容量が大きい。よって、キャリアが傾くことが抑制される。
【0018】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記第1面の中央部には、前記軸方向の他方に窪み、底面に前記雌スプライン孔の開口部が設けられた凹面が設けられている。
【0019】
前記構成によれば、入力軸やサンギヤがキャリアの第1面に接触し難くなる。
【発明の効果】
【0020】
本開示のアクチュエータによれば、平面出し加工の労力が軽減するとともに、平面出しの精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態のブレーキブースタであって作動前の状態を軸方向に切った断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のナットを軸方向に切った断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のアクチュエータのうちキャリアの近傍を拡大した拡大図である。
【
図4】
図4は、実施形態の加締め部を形成する工程を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例1のアクチュエータにおけるキャリアの凹面の近傍を拡大した拡大図である。
【
図6】
図6は、変形例2のアクチュエータにおけるキャリアの凹面の近傍を拡大した拡大図である。
【
図7】
図7は、変形例3のアクチュエータからナットを外した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例4のアクチュエータからナットを外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
(実施形態)
図1は、実施形態のブレーキブースタであって作動前の状態を軸方向に切った断面図である。実施形態では、本開示のアクチュエータがブレーキシステムのブレーキブースタに適用された例を挙げて説明する。なお、本開示のアクチュエータは、実施形態に示すブレーキブースタ以外に、ブレーキキャリパーなど、その他の装置に適用してもよい。
【0024】
図1に示すように、実施形態のアクチュエータ100は、ハウジング101と、モータ(不図示)と、遊星歯車機構1と、ボールねじ装置50と、ピストン80と、を備えている。以下、ボールねじ装置50のねじ軸51の中心軸Oと平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向において、ピストン80から視て遊星歯車機構1が配置される方向を第1方向X1と称し、第1方向X1の反対方向を第2方向X2と称する。
【0025】
ハウジング101には、シリンダ102が設けられている。シリンダ102は、中心軸Oを中心に円筒状を成す円筒部103と、円筒部103の第2方向X2の開口部を閉塞する閉塞壁104と、を有している。円筒部103の第1方向X1の開口部には、ピストン80が挿入されている。これにより、シリンダ102の内部空間が閉塞されている。シリンダ102の内部空間には図示しない液体が封入される。閉塞壁104には、貫通孔104aが設けられている。ピストン80が第2方向X2に移動すると、液体の液圧が上昇する。そして、上昇した液圧は、貫通孔104aを介してブレーキシステムに伝達される。
【0026】
遊星歯車機構1は、入力軸2と、サンギヤ3と、リングギヤ4と、複数のプラネタリギヤ5と、複数の伝達軸6と、キャリア7と、軸受8を備えている。
【0027】
入力軸2には、モータで生成されたトルクが伝達される。入力軸2は、中心軸Oと同軸上に配置されている。また、入力軸2は、ねじ軸51に対し、第1方向X1に配置されている。なお、本開示の入力軸2は、モータ(不図示)の出力軸で構成されていてもよい。
【0028】
サンギヤ3は、入力軸2に貫通され、入力軸2に回転不能に固定されている。リングギヤ4は、入力軸2を中心に環状を成す内歯車である。リングギヤ4の外周面は、ハウジング101に嵌合している。
【0029】
プラネタリギヤ5は、サンギヤ3とリングギヤ4の間に配置され、サンギヤ3とリングギヤ4のそれぞれに歯合している。プラネタリギヤ5は、伝達軸6に貫通されている。また、伝達軸6は、キャリア7の中央部から径方向外側に偏心した位置を貫通している。プラネタリギヤ5は、伝達軸6を中心に回転自在にキャリア7に支持されている。
【0030】
キャリア7は、中心軸Oを中心とする円盤状の部品である。キャリア7は、軸受8を介し、回転自在にハウジング101に支持されている。なお、軸受8の外輪8aの第1方向X1の側面は、スペーサ9aを介して、リングギヤ4と当接している。また、リングギヤ4と外輪8aは、ハウジング101に設けられた段差面105と止め輪9bに挟まれている。
【0031】
キャリア7は、入力軸2とねじ軸51との間に配置されている。キャリア7には、雌スプライン孔30が形成されている。この雌スプライン孔30は、キャリア7の中央部を軸方向に貫通している。また、雌スプライン孔30の内周面には、軸方向に延在する内歯が形成されている。
【0032】
ボールねじ装置50は、ねじ軸51と、ナット60と、複数のボール70と、を備えている。ねじ軸51は、雄スプライン部52と、雄スプライン部52から第2方向X2に延在するねじ軸本体53と、を備えている。
【0033】
雄スプライン部52の外周面には、軸方向に延在する外歯が形成されている。雄スプライン部52は、キャリア7の雌スプライン孔30に挿入され、スプライン嵌合している。詳細には、雄スプライン部52の外歯は、雌スプライン孔30の内歯の間に挿入されている。そして、雄スプライン部52の外歯と雌スプライン孔30の内歯とが周方向に互いに当接している。このスプライン嵌合により、キャリア7とねじ軸51とが相対回転不能に連結している。
【0034】
ねじ軸本体53の外周面には、螺旋方向に延在する外周軌道面54が設けられている。ねじ軸本体53は、雄スプライン部52よりも大径となっている。よって、雄スプライン部52とねじ軸本体53との境界には、第1方向X1を向く段差面55が設けられている。段差面55は、中心軸Oを垂線とする平面となっている。そして、段差面55は、キャリア7に対し、第2方向X2から当接している。よって、ねじ軸51は、第1方向X1に移動しないように規制されている。
【0035】
図2は、実施形態のナットを軸方向に切った断面図である。
図2に示すように、ナット60は、ナット本体61と、複数の内周軌道面62及び複数のS字溝面63と、を有している。ナット本体61は、中心軸Oを中心に円筒状を成している。ナット本体61の内径は、L1である。ナット本体61は、第1方向X1を向く第1端面64と、第2方向X2を向く第2端面65と、を有している。第2端面65は、ピストン80(
図1参照)を第2方向X2に押圧する押圧面となっている。
【0036】
内周軌道面62及び複数のS字溝面63は、ナット本体61の内周面61aに設けられた溝面である。内周軌道面62は、ねじ軸51の外周軌道面54(
図1参照)と対向し、螺旋方向に延在している。内周軌道面62は、螺旋方向に一回り(1リード)分、延在している。各内周軌道面62と外周軌道面54との間は、軌道を成している。そして、各軌道に複数のボール70(
図1参照)が配置される。
【0037】
S字溝面63は、鍛造によりナット本体61の内周面61aに成形された溝面である。S字溝面63は、内周軌道面62の螺旋方向の一端と他端とに接続している。これにより、軌道の一端から他端へ移動したボール70は、S字溝面63により軌道の一端に循環する。本実施形態では、内周軌道面62及びS字溝面63は、4つずつ設けられている。なお、4つずつ設けられた内周軌道面62及びS字溝面63のうち、最も第1方向X1に配置されているものを第1内周軌道面62a及び第1S字溝面63aと称する。
【0038】
ナット60の第1端面64から溝面(複数の内周軌道面62及び複数のS字溝面63)までの距離はL2である。本実施形態では、第1内周軌道面62aよりも第1S字溝面63aの方が第1方向X1寄りに配置されている。よって、本実施形態では、第1端面64から第1S字溝面63aまでの距離がL2となっている。
【0039】
また、特に図示しないが、ナット60には、ナット本体61の外周面から径方向外側に突出する回り止め部が設けられている。この回り止め部は、ハウジング101に設けられた軸方向に延びるガイド溝に挿入されている。これにより、ナット60は、中心軸Oを中心に回転不能に、かつ軸方向に移動可能にハウジング101に支持されている。
【0040】
図1に示すように、ピストン80は、中心軸Oを中心に円盤状を成す押圧部81と、押圧部81から第1方向X1に延びる円筒状の円筒部82と、ナット60の外周面に嵌合する嵌合部83と、を有している。
【0041】
押圧部81は、シリンダ102内の液体を第2方向X2に押圧する部位である。押圧部81は、シリンダ102の内部に配置され、シリンダ102の閉塞壁104と対向している。円筒部82及び嵌合部83の外径は、シリンダ102の内径よりも僅かに小さい。よって、ピストン80の外周面とシリンダ102の内周面との間に、微小の隙間(不図示)が設けられている。よって、ピストン80は、シリンダ102の内周面を摺動しながら軸方向に移動可能に支持されている。
【0042】
円筒部82の内径は、嵌合部83の内径よりも小さい。よって、円筒部82の内周面と嵌合部83の内周面との境界には、第1方向X1を向く当接面84が設けられている。当接面84は、ナット60の第2端面65と当接している。よって、ナット60が第2方向X2に移動すると、当接面84が押圧され、ピストン80が第2方向X2に移動する。
【0043】
また、押圧部81には、シリンダ102内の液体の液圧が作用している。つまり、ピストン80は、常時、第1方向X1に押圧されている。よって、当接面84と第2端面65は、常時当接している。ピストン80とシリンダ102との間には、2つのシール部材108が設けられている。これにより、シリンダ102内の液体がピストン80とシリンダ102との間の微小の隙間を通過して第1方向X1に漏出する、ということが回避される。
【0044】
上記したアクチュエータ100によれば、モータが駆動すると、入力軸2及びサンギヤ3が中心軸Oを中心に回転する。そして、プラネタリギヤ5は、伝達軸6を中心に回転(自転)しながら、中心軸Oを中心に回転(公転)する。これにより、キャリア7及びねじ軸51が中心軸Oを中心に回転する。なお、ねじ軸51の回転速度は、入力軸2の回転速度よりも減速している。そして、ねじ軸51の回転によりナット60が第2方向X2に移動すると、第2端面65が当接面84を押圧し、ピストン80が第2方向X2に移動する。これにより、シリンダ102内の液圧が上昇する。一方で、ナット60が第1方向X1に移動すると、ピストン80も第1方向X1に移動する。この結果、シリンダ102内の液圧が下降する。つぎに、実施形態のキャリア7の詳細を説明する。
【0045】
図3は、
図1のアクチュエータのうちキャリアの近傍を拡大した拡大図である。
図3に示すように、キャリア7は、キャリア本体10と、ボス部20と、雌スプライン孔30と、を有している。キャリア本体10は、中心軸Oを中心に円盤状を成している。キャリア本体10は、第1方向X1を向く第1面11と、第2方向を向く第2面12と、外周面13と、を有している。
【0046】
第1面11の中央には、第2方向X2に窪む凹面40が設けられている。凹面40は、中心軸Oを中心に円形状を成す底面41と、中心軸Oを中心に円筒状を成す内周面42と、を有している。つまり、凹面40の内部空間43は、円柱状の空間となっている。また、内周面42の内径は、雄スプライン部52の外径(雌スプライン孔30の内径)よりも大きい。
【0047】
キャリア7の外周部は、軸受8の内輪を構成している。このため、キャリア7の外周面13には、外周転動溝13aが形成されている。キャリア7の径方向外側には、軸受8が配置されている。軸受8は、ハウジング101に嵌合する外輪8aと、外輪8aとキャリア7との間に配置された複数のボール8bと、を備えている。
【0048】
外輪8aの内周面には、内周転動溝8cが形成されている。外周転動溝13a及び内周転動溝8cは、ゴシックアーク形状となっている。複数のボール8bは、外周転動溝13a及び内周転動溝8cのそれぞれに2点ずつ接触している。よって、外輪8aとキャリア7の外周部は、4点接触玉軸受を構成している。以上から、軸受8は、キャリア7に入力されたモーメント荷重に対する負荷容量が大きい。
【0049】
ボス部20は、キャリア本体10の第2面12の中央部から第2方向X2に突出している。ボス部20は、中心軸Oを中心に円柱状を成している。ボス部20は、第2方向X2を向く端面21を有している。この端面21は、平面出し加工が行われている。よって、端面21は、高い平面性を有し、かつ中心軸Oを垂線とする平面となっている。そして、この端面21にねじ軸51の段差面55が当接している。なお、平面出し加工の方法は、端面21(キャリア7)を中心軸Oと直交する方向に移動させながら、端面21を第2方向X2から切削する方法が挙げられるが、本開示はこれに限定されない。
【0050】
ボス部20の外径L3は、ナット60の内径L1(
図2参照)よりも小さい。これにより、ナット60の内部にボス部20を配置することができる(
図2の破線で示すボス部20を参照)。つまり、アクチュエータ100の起動時、ナット60(ピストン80)の初期位置を第1方向X1寄りとすることができる。この結果、シリンダ102の軸方向の短縮化を図ることができる。なお、ボス部20の外径L3は、凹面40の内周面42の内径よりも大きい。
【0051】
また、ボス部20の第2方向X2への突出量L4は、ナット60の第1端面64から溝面(第1S字溝面63a)までの長さL2よりも小さい。これにより、
図2に示すように、ナット60の内部にボス部20が進入させ、キャリア7の第2面12をナット60の第1端面64に当接した場合であっても、ボス部20はボール70と接触しない。
【0052】
雌スプライン孔30は、中心軸Oを中心にキャリア本体10及びボス部20を貫通している。よって、凹面40の底面41とボス部20の端面21には、雌スプライン孔30の開口部である、第1開口部31と第2開口部32とが設けられている。
【0053】
ねじ軸51の第1方向X1の端部は、第1開口部31から凹面40の内部空間43に入り込んでいる。また、ねじ軸51の第1方向X1の端部のうち内部空間43に配置されている部分は、加締め部56を構成している。この加締め部56は、雌スプライン孔30の内径よりも大きく、第1方向X1から底面41に当接している。このため、雌スプライン孔30からねじ軸51が抜けないように規制されている。
【0054】
図4は、実施形態の加締め部を形成する工程を示す図である。加締め部56の形成方法に関し、
図4に示すように、加締め部56を形成する前の雄スプライン部52は、軸方向の長さが雌スプライン孔30よりも長い。よって、雄スプライン部52の第1方向X1の端部52aは、第1開口部31から内部空間43に入り込んでいる。
【0055】
加締め部56の形成には、治具200を使用する。この治具200の先端面には、凹部201が形成されている。凹部201は、軸方向から視て円形状に形成された窪みである。凹部201の内周面は、治具200の先端面に近づくにつれて拡径するテーパ面202となっている。また、加締め作業は、治具200を凹面40の内部空間43に挿入する。そして、凹部201に雄スプライン部52の第1方向X1の端部52aを挿入する。そして、凹部201のテーパ面202を雄スプライン部52の外歯に当接させる。続いて、治具200を第2方向X2に押圧する。これにより、雄スプライン部52の外歯が押し潰され(加締めされ)、加締め部56が形成される。
【0056】
次に実施形態の効果を説明する。実施形態によれば、平面出し加工を行う範囲は、キャリア7の第2面12よりも狭小なボス部20の端面21である。よって、平面出し加工を行う範囲(面積)が小さく、平面出し加工の労力が軽減される。また、平面出しの精度が向上する。よって、ねじ軸51が端面21に対して直交した状態で連結される。以上から、キャリア7に対しねじ軸51が傾いて連結する、ということが抑制される。
【0057】
また、ねじ軸51の加締め部56が凹面40の内部空間43に収容されている。このため、加締め部56が入力軸2やサンギヤ3と接触することが回避される。
【0058】
また、
図3に示すように、雌スプライン孔30における軸方向の中心M1は、キャリア7の軸方向の中心M2よりも第2方向X2に配置されている。このため、ねじ軸51にラジアル荷重が作用すると、キャリア7が傾く可能性がある。仮にキャリア7が傾くと伝達軸6も傾き、プラネタリギヤ5の回転が円滑とならない。一方、本実施形態の軸受8は、4点接触玉軸受を構成し、キャリア7に入力されたモーメント荷重に対する負荷容量が大きい。よって、キャリア7は傾き難く、プラネタリギヤ5の円滑な回転が確保される。
【0059】
以上、実施形態のアクチュエータ100は、モータと、キャリア7を有する遊星歯車機構1と、ボールねじ装置50と、を備えている。ボールねじ装置50は、キャリア7と連結するねじ軸51、ナット60、及び複数のボール70を有している。キャリア7は、キャリア本体10と、ボス部20と、雌スプライン孔30と、を有している。キャリア本体10は、ねじ軸51と平行な軸方向の一方(第1方向X1)を向く第1面11と、軸方向の他方(第2方向X2)を向く第2面12と、を有している。ボス部20は、第2面12の中央部から軸方向の他方に突出している。雌スプライン孔30は、キャリア本体10とボス部20とを軸方向に貫通している。ねじ軸51は、雌スプライン孔30とスプライン嵌合する雄スプライン部52と、雄スプライン部52から軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面54が設けられたねじ軸本体53と、を有している。ねじ軸本体53は、雄スプライン部52よりも大径に形成されている。ねじ軸本体53と雄スプライン部52との境界には、軸方向の一方を向く段差面55が設けられている。ボス部20は、軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面21を有している。端面21は、段差面55と当接している。
【0060】
実施形態によれば、平面出し加工を行う範囲(面積)を小さくでき、平面出し加工の労力が軽減される。また、平面出しの精度が向上する。
【0061】
また、実施形態において、ナット60の内周面61aには、ボール70が転動する溝面が形成されている。ボス部20の外径L3は、ナット60の内径L1よりも小さい。ボス部20の軸方向の他方への突出量L4は、ナット60の軸方向の一方を向く一端面(第1端面64)から溝面までの長さL2よりも小さい。
【0062】
実施形態によれば、アクチュエータ100(シリンダ102)を軸方向に小型化できる。また、ボス部20がナット60の内周側に進入しても、ボス部20がボール70に接触しない。
【0063】
また、実施形態において、軸受8の内輪は、キャリア7と一体に形成されている。
【0064】
実施形態によれば、軸受8の内輪が不要となり、部品点数の削減を図れる。
【0065】
また、実施形態において、第1面11の中央部には、軸方向の他方に窪み、底面41に雌スプライン孔30の開口部(第1開口部31)が設けられた凹面40が設けられている。
【0066】
実施形態によれば、加締め部56が入力軸2やサンギヤ3と接触することが回避される。
【0067】
以上、実施形態について説明したが、本開示は実施形態で示した例に限定されない。例えば、実施形態の軸受8は、4点接触玉軸受となっているが、本開示は、複列玉軸受又は複列アンギュラ玉軸受であってもよい。複列玉軸受又は複列アンギュラ玉軸受であれば、キャリア7に入力されたモーメント荷重に対する負荷容量が大きいからでる。また、本開示は、モーメント荷重に対する負荷容量が大きい軸受に限定されず、深溝玉軸受であってもよい。また、実施形態の軸受8の内輪は、キャリア7と一体に形成されているが、本開示は、キャリア7と別体の内輪であってもよい。
【0068】
また、実施形態では、加締め部56によって、ねじ軸51が雌スプライン孔30から抜けることを規制しているが、本開示は、加締め部56に代えて止め輪を用いてもよい。若しくは、雌スプライン孔30の内歯又は雄スプライン部52の外歯に締め代を設け、雄スプライン部52が雌スプライン孔30から抜け難くなるようにしてもよい。なお、内歯又は外歯に対する締め代としては、歯同士の間にある隙間に肉部(塑性変形部)を設けたり、歯から径方向に突出する肉部(塑性変形部)を設けたりする例が挙げられるが、本開示はこれらに限定されない。
【0069】
また、実施形態では、ボス部20をナット60の内部に配置できるようになっているが、ボス部20をナット60の内部に配置しなくてもよい。また、ボス部20をナット60の内部に配置しない場合、ボス部20の外径L3はナット60の内径L1よりも大きくてもよい。
【0070】
また、実施形態では、キャリア7に凹面40が形成されているが、本開示は、凹面40が形成されていないキャリア7であってもよい。なお、凹面40が形成されていない場合、ねじ軸51の抜け止めを図る加締め部56や止め輪は、キャリア7の第1面11に引っ掛かる(当接する)ように設ける。
【0071】
また、実施形態では、凹面40の内部空間43に加締め部56のみを配置しているが、本開示は、他の部品を配置してもよい。以下、凹面40の内部空間43に他の部品を配置した変形例1と変形例2を説明する。
【0072】
図5は、変形例1のアクチュエータにおけるキャリアの凹面の近傍を拡大した拡大図である。変形例1のアクチュエータ100Aの入力軸2Aは、サンギヤ3を貫通している。入力軸2Aの先端部2a(第2方向X2の端部)は、サンギヤ3の第2方向X2の端面3aから第2方向X2に突出している。また、入力軸2Aの先端部2aは、第1面11よりも第2方向X2に突出している。そして、入力軸2Aの先端部2aは、凹面40の内部空間43に配置されている。入力軸2Aの外径は、凹面40の内周面42の内径よりも小さい。よって、入力軸2Aの先端部2aは、内周面42と接触することなく回転する。
【0073】
この変形例1によれば、入力軸2Aの先端部2aを内部空間43に配置しているため、サンギヤ3の端面3aとキャリア7の第1面11との距離L5が小さくなる。つまり、アクチュエータ100Aを軸方向に小型化することができる。なお、変形例1では、入力軸2Aの先端部2aを内部空間43に配置しているが、サンギヤ3の抜け止めを図る止め輪等の部品が入力軸2Aの先端部2aに取り付けられている場合、入力軸2Aの先端部2aと止め輪等の部品を併せて内部空間43に配置してもよいし、止め輪等の部品のみを内部空間43に配置してもよい。
【0074】
図6は、変形例2のアクチュエータにおけるキャリアの凹面の近傍を拡大した拡大図である。変形例2のアクチュエータ100Bのサンギヤ3Bは、プラネタリギヤ5よりも歯幅方向(軸方向)の長さが大きい。このサンギヤ3Bによれば、入力軸2B及びサンギヤ3Bの組み付け位置が軸方向にずれても、サンギヤ3Bは、プラネタリギヤ5の歯の歯幅方向(軸方向)の全領域と接触する。
【0075】
また、変形例2において、入力軸2Bの先端部2aと、サンギヤ3Bの第2方向X2の端部3bは、第1面11よりも第2方向X2に突出している。そして、入力軸2Bの先端部2aと、サンギヤ3Bの第2方向X2の端部3bと、が内部空間43に配置されている。サンギヤ3Bの外径は、凹面40の内周面42の内径よりも小さい。よって、サンギヤ3Bの第2方向X2の端部3bは、内周面42と接触することなく回転する。この変形例2によれば、凹面40が形成されていない場合よりも、サンギヤ3Bを第2方向X2に配置することができ、アクチュエータ100bの軸方向の小型化を図ることができる。
【0076】
また、実施形態のボス部20は、円柱状に形成されているが、本開示は、三角柱、四角柱などの多角柱であってもよい。また、本開示は、ボス部20に他の機能を持たせるように変形してもよい。以下、ボス部を変形した変形例3、変形例4について説明する。
【0077】
図7は、変形例3のアクチュエータからナットを外した状態を示す図である。変形例3のアクチュエータ100Cのボス部20Cの外周面には、径方向外側に突出する突起23が設けられている。なお、突起23は、キャリア本体10の第2面12にも連続している。突起23は、モータの駆動時、キャリア7と供回する。つまり、突起23は、中心軸Oを中心に周方向に移動する。
【0078】
突起23は、ナット60Cの第1端面64と対向している。このナット60Cの第1端面64には、第1方向X1に突出するストッパ67が設けられている。ナット60Cが第1方向X1へ移動した場合、ストッパ67は、中心軸Oを中心に周方向に移動する突起23の軌跡上に進入し、突起23と接触する。これにより、キャリア7及びねじ軸51の回転が停止し、ナット60がさらに第1方向X1へ移動することが規制される。
【0079】
この変形例3によれば、アクチュエータ100Cの起動時、ナット60の初期位置が位置決めされる。また、変形例3によれば、突起23がストッパ67に接触するため、ボス部20Cがナット60の内部に進入しない。
【0080】
図8は、変形例4のアクチュエータからナットを外した状態を示す図である。変形例4のアクチュエータ100Dは、ストッパ67の外周部に環状壁部(ナット本体61の一部)68が設けられている点で変形例3と相違する。この環状壁部68の内周面にストッパ67が連続している。この変形例4によれば、変形例3と同様に、アクチュエータ100Dの起動時におけるナット60の初期位置が位置決めされる。また、ストッパ67は、環状壁部68と連続し、剛性が向上している。なお、本開示は、環状壁部68の外周側にさらにフランジを設け、剛性をさらに向上させてもよい。
【0081】
そのほか、実施形態のボールねじ装置50では、ボール70を循環させる循環部としてS字溝面63を挙げているが、本開示は、コマ、デフレクタ(エンドデフレクタ、ミドルデフレクタ)、チューブなどを用いてもよい。
【0082】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
モータと、
キャリアを有する遊星歯車機構と、
前記キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記キャリアは、
前記ねじ軸と平行な軸方向の一方を向く第1面と、前記軸方向の他方を向く第2面と、を有するキャリア本体と、
前記第2面の中央部から前記軸方向の他方に突出するボス部と、
前記キャリア本体と前記ボス部とを前記軸方向に貫通する雌スプライン孔と、
を有し、
前記ねじ軸は、
前記雌スプライン孔とスプライン嵌合する雄スプライン部と、
前記雄スプライン部から前記軸方向の他方に延在し、かつ外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、
を有し、
前記ねじ軸本体は、前記雄スプライン部よりも大径に形成され、
前記ねじ軸本体と前記雄スプライン部との境界には、前記軸方向の一方を向く段差面が設けられ、
前記ボス部は、前記軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有し、
前記端面は、前記段差面と当接している
アクチュエータ。
(2)
前記ナットの内周面には、前記ボールが転動する溝面が形成され、
前記ボス部の外径は、前記ナットの内径よりも小さく、
前記ボス部の前記軸方向の他方への突出量は、前記ナットの前記軸方向の一方を向く一端面から前記溝面までの長さよりも小さい
(1)に記載のアクチュエータ。
(3)
前記ボス部の外周面には、径方向外側に突出する突起が設けられ、
前記ナットの前記軸方向の他方を向く端面には、前記キャリアと供回りする突起の軌跡上に進入し、前記突起と接触するストッパが設けられている
(1)又は(2)に記載のアクチュエータ。
(4)
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受の内輪は、前記キャリアと一体に形成されている
(1)から(3)のうちいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(5)
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受の内輪は、前記キャリアと別体に形成されている
(1)から(3)のうちいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(6)
前記遊星歯車機構は、前記キャリアを回転自在に支持する軸受を有し、
前記軸受は、4点接触玉軸受、複列玉軸受、及び複列アンギュラ玉軸受のうちいずれか1つである
(1)から(5)のうちいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(7)
前記第1面の中央部には、前記軸方向の他方に窪み、底面に前記雌スプライン孔の開口部が設けられた凹面が設けられている
(1)から(6)のうちいずれか1つに記載のアクチュエータ。
【符号の説明】
【0083】
1 遊星歯車機構
2、2A、2B 入力軸
3、3B サンギヤ
7 キャリア
8 軸受
10 キャリア本体
11 第1面
12 第2面
20、20C ボス部
21 端面
23 突起
30 雌スプライン孔
31 第1開口部
32 第2開口部
40 凹面
41 底面
42 内周面
43 内部空間
50 ボールねじ装置
51 ねじ軸
52 雄スプライン部
53 ねじ軸本体
54 外周軌道面
55 段差面
56 加締め部
60 ナット
61 ナット本体
62 内周軌道面
63 S字溝面
67 ストッパ
70 ボール
80 ピストン
100、100A、100B、100C、100D アクチュエータ
101 ハウジング
102 シリンダ
【要約】
アクチュエータは、モータと、キャリアを有する遊星歯車機構と、キャリアと連結するねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置を備える。キャリアは、軸方向の一方を向く第1面と、軸方向の他方を向く第2面と、を有するキャリア本体と、第2面の中央部から軸方向の他方に突出するボス部と、キャリア本体とボス部とを軸方向に貫通する雌スプライン孔と、を有している。ねじ軸は、雄スプライン部と、外周面に外周軌道面が設けられたねじ軸本体と、を有する。ねじ軸本体は、雄スプライン部よりも大径に形成される。ねじ軸本体と雄スプライン部との境界には、軸方向の一方を向く段差面が設けられる。ボス部は、軸方向の他方を向き、平面出し加工がされた端面を有する。端面は、段差面と当接している。