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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】発電システム及び発電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20241001BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20241001BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241001BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J3/38 110
H02P9/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023202694
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2024-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年11月21日電気新聞 2023年11月21日号 第1面 一般社団法人日本電気協会
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391017849
【氏名又は名称】山梨県
(73)【特許権者】
【識別番号】511146037
【氏名又は名称】エクセルギー・パワー・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 眞一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊智
(72)【発明者】
【氏名】田村 徹也
(72)【発明者】
【氏名】田中 博樹
(72)【発明者】
【氏名】福水 隆夫
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082679(JP,A)
【文献】特開昭49-047936(JP,A)
【文献】特開2022-002457(JP,A)
【文献】特開2016-034194(JP,A)
【文献】三輪 嘉彦 Yoshihiko Miwa,電力情報制御システムにおける高度化対応技術,日立評論 第78巻 第2号 THE HITACHI HYORON,日立評論社 Hitachi Hyoronsha,第78巻,第57~62頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/32
H02J 3/38
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電機と前記水力発電機に供給する水を貯える貯水槽とを有し、前記水力発電機から電力網に電力を供給可能な複数の水力発電所と、
前記電力網から充電可能であり、充電されている電力を前記電力網に放電可能な電力蓄電装置と、
前記水力発電機及び前記電力蓄電装置を制御する発電制御装置と、を備え、
前記複数の水力発電所は、1つの水の流路を形成するように直列に設けられ、
前記貯水槽には、前記流路の上流側から水が供給され、
前記貯水槽から前記水力発電機に供給された水は、前記水力発電機から前記流路の下流側に排出され、
前記発電制御装置は、
前記貯水槽の水位を維持するように制御し、
前記電力網の電力が不足すると、
前記電力網に電力を放電するように前記電力蓄電装置を制御する放電制御を実行し、前記電力蓄電装置から前記電力網に電力が放電されている期間に、発電電力を増加させるように前記複数の水力発電所のうち少なくとも1つの水力発電所の水力発電機を制御する増電制御を開始し、
前記貯水槽の水位を維持することより優先して前記貯水槽から前記水力発電機に供給される水の流量を増加させることによって、前記増電制御を実行し、
前記電力網の電力が不足したことにより前記放電制御を実行している状態では、
前記複数の水力発電所のうち前記流路の最も下流の最下流水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記電力蓄電装置の充電率が閾値以下となった場合に前記増電制御を開始し、
前記複数の水力発電所のうち前記最下流水力発電所を除く水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記流路の下流側の水力発電所の前記貯水槽の水位が所定値以下となった場合に前記増電制御を開始することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
水力発電機と前記水力発電機に供給する水を貯える貯水槽とを有し、前記水力発電機から電力網に電力を供給可能な複数の水力発電所と、
前記電力網から充電可能であり、充電されている電力を前記電力網に放電可能な電力蓄電装置と、を制御する発電制御装置であって、
前記複数の水力発電所は、1つの水の流路を形成するように直列に設けられ、
前記貯水槽には、前記流路の上流側から水が供給され、
前記貯水槽から前記水力発電機に供給された水は、前記水力発電機から前記流路の下流側に排出され、
前記発電制御装置は、
前記貯水槽の水位を維持するように制御し、
前記電力網の電力が不足すると、
前記電力網に電力を放電するように前記電力蓄電装置を制御する放電制御を実行し、前記電力蓄電装置から前記電力網に電力が放電されている期間に、発電電力を増加させるように前記複数の水力発電所のうち少なくとも1つの水力発電所の水力発電機を制御する増電制御を開始し、
前記貯水槽の水位を維持することより優先して前記貯水槽から前記水力発電機に供給される水の流量を増加させることによって、前記増電制御を実行し、
前記電力網の電力が不足したことにより前記放電制御を実行している状態では、
前記複数の水力発電所のうち前記流路の最も下流の最下流水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記電力蓄電装置の充電率が閾値以下となった場合に前記増電制御を開始し、
前記複数の水力発電所のうち前記最下流水力発電所を除く水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記流路の下流側の水力発電所の前記貯水槽の水位が所定値以下となった場合に前記増電制御を開始することを特徴とする発電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システム及び発電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギー発電機と、蓄電池と、再生可能エネルギー発電可能値を予測する再生可能エネルギー発電予測部と、電力取引情報を受信する電力取引情報受信部と、再生可能エネルギー発電予測部が予測する再生可能エネルギー発電予測量と電力取引情報から電力取引発電と再生可能エネルギー発電と蓄電池充放電の指令値を算出する蓄電池制御算出部と、電力取引発電と再生可能エネルギー発電に従って電力を分配する電力変換器からなる発電システムが特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の発電システムは、再生可能エネルギー発電機として水力発電機を適用した場合には、発電する電力を瞬時に増加させることができなくなるため、時間内変動(極短周期成分)および電源脱落等に対応する調整力として応動時間が10秒以内、かつ、継続時間は5分以上の一次調整力として機能できないといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、水力発電機を一次調整力として機能させることができる発電システム及び発電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発電システムは、水力発電機と前記水力発電機に供給する水を貯える貯水槽とを有し、前記水力発電機から電力網に電力を供給可能な複数の水力発電所と、前記電力網から充電可能であり、充電されている電力を前記電力網に放電可能な電力蓄電装置と、前記水力発電機及び前記電力蓄電装置を制御する発電制御装置と、を備え、前記複数の水力発電所は、1つの水の流路を形成するように直列に設けられ、前記貯水槽には、前記流路の上流側から水が供給され、前記貯水槽から前記水力発電機に供給された水は、前記水力発電機から前記流路の下流側に排出され、前記発電制御装置は、前記貯水槽の水位を維持するように制御し、前記電力網の電力が不足すると、前記電力網に電力を放電するように前記電力蓄電装置を制御する放電制御を実行し、前記電力蓄電装置から前記電力網に電力が放電されている期間に、発電電力を増加させるように前記複数の水力発電所のうち少なくとも1つの水力発電所の水力発電機を制御する増電制御を開始し、前記貯水槽の水位を維持することより優先して前記貯水槽から前記水力発電機に供給される水の流量を増加させることによって、前記増電制御を実行し、前記電力網の電力が不足したことにより前記放電制御を実行している状態では、前記複数の水力発電所のうち前記流路の最も下流の最下流水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記電力蓄電装置の充電率が閾値以下となった場合に前記増電制御を開始し、前記複数の水力発電所のうち前記最下流水力発電所を除く水力発電所の前記水力発電機に対しては、前記流路の下流側の水力発電所の前記貯水槽の水位が所定値以下となった場合に前記増電制御を開始する構成を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、水力発電機を一次調整力として機能させることができる発電システム及び発電制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発電システムの概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る水力発電所の概略構成図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る水力発電機のガイドベーンの開度と水力発電機の出力電力との関係を示すグラフである。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る発電制御装置を説明するための概略構成図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る貯水槽の水位の目標値を説明するための概念図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係るアルカリ蓄電池に対する発電制御装置の制御モードを説明するための状態遷移図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る水力発電機に対する発電制御装置の制御モードを説明するための状態遷移図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態に係る発電システムによって出力される調整力を説明するためのタイムチャートである。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る水力発電機に対する発電制御装置の制御モードを説明するための状態遷移図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る発電システムによって出力される調整力を説明するためのタイムチャートである。
図11図11は、本発明の第2の実施の形態に係る発電システムの変形例によって出力される調整力を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1に示すように、発電システム1は、複数の水力発電所2a~2cと、アルカリ蓄電池3と、発電制御装置4とを含んで構成される。なお、図1には、3つの水力発電所2a~2cが示されているが、本発明に係る発電システムが有する水力発電所の数を限定するものではない。
【0011】
各水力発電所2a~2cは、発電した電力を電力網5に供給可能に設けられている。アルカリ蓄電池3は、電力蓄電装置を構成し、例えば、ニッケル水素電池よりなる。アルカリ蓄電池3は、電力網5から充電可能、かつ、充電されている電力を電力網5に放電可能に設けられている。
【0012】
各水力発電所2a~2cは、貯水ダムを持たない流れ込み式の発電所によって構成されている。水力発電所2a~2cは、1つの水の流路6を形成するように直列に設けられている。図1において、河川7から取水堰8を経由して流入した水は、水力発電所2a、水力発電所2b、水力発電所2cを順次経由して、河川7に戻る。
【0013】
図2に示すように、各水力発電所2a~2c(以下、総称して「水力発電所2」ともいう)は、貯水槽10と、水力発電機11とを有する。貯水槽10には、流路6の上流側から水が供給される。貯水槽10は、水力発電機11に供給する水を貯える。
【0014】
貯水槽10は、流路6から供給された水から泥などの不純物を除去する沈殿槽、流路6から供給された水の水圧を安定させる上水槽、上水槽と同一の水面で運用される導水路、または、その他の水を貯める槽もしくは池によって構成される。貯水槽10には、貯水槽10に貯えられた水の水位を検出する水位計21が設けられている。
【0015】
水力発電機11は、水車22と、発電機23とを有する。水車22は、貯水槽10から供給される水の流量に応じた回転力を生成する。発電機23は、水車22によって生成された回転力を電力に変換する。貯水槽10から水力発電機11に供給された水は、水力発電機11から流路6の下流側に排出される。
【0016】
本実施の形態において、水車22は、フランシス水車によって構成される。水車22は、ガイドベーン31と、アクチュエータ32とを有する。アクチュエータ32は、ガイドベーン31を閉状態と開状態との間でガイドベーン31の開度を調整する。
【0017】
ガイドベーン31が開状態の場合には、貯水槽10から水車22に供給される水の流量が最も多くなる。このため、水車22によって生成される回転力が最大になり、発電機23の発電電力が定格電力になる。
【0018】
ガイドベーン31が閉状態の場合には、ガイドベーン31が開状態の場合と比較して、貯水槽10から水車22に供給される水の流量が3%程度になる。これにより、発電機23の発電電力は、発電可能な最小の電力にまで減少する。
【0019】
図3は、ガイドベーン31の開度と水力発電機11の出力電力との関係を示している。開度Aは、開状態の開度に相当する。ガイドベーン31の開度が開度Aの場合、水力発電機11から定格電力が出力される。
【0020】
開度Bは、貯水槽10に供給される水の流量に応じた電力を水力発電機11に発電させる通常発電時の開度に相当する。通常発電時において、ガイドベーン31は、貯水槽10の水位が一定(図5に示す「目標値1」に相当する)になるように発電制御装置4によって制御される。
【0021】
このため、ガイドベーン31の開度が開度Bの場合、貯水槽10に供給される水と同じ流量の水が水力発電機11に供給される。したがって、ガイドベーン31の開度が開度Bの場合、貯水槽10に供給される水の流量に応じた通常発電電力が水力発電機11から出力される。
【0022】
貯水槽10に供給される水の流量は、河川7の流量に依存し、季節や降雨の影響を受ける。このため、開度Bは、一定値ではなく、貯水槽10に供給される水の流量に応じて変動する。
【0023】
開度Cは、発電システム1が調整力を電力網5に供給する調整力供給時の開度に相当する。ガイドベーン31の開度が開度Cの場合、貯水槽10に供給される水に加えて、貯水槽10に貯えられている水が水力発電機11に供給される。
【0024】
したがって、ガイドベーン31の開度が開度Cの場合、貯水槽10に供給される水の流量よりも多い流量の水が水力発電機11に供給される。このため、ガイドベーン31の開度が開度Cの場合、貯水槽10に供給される水の流量に応じた通常発電電力と、貯水槽10に貯えられている水の減少量に応じた調整電力Pmとが加算された調整力供給時電力が水力発電機11から出力される。
【0025】
発電システム1は、アルカリ蓄電池3の放電電力と、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pmとによって、調整力を電力網5に供給する。なお、通常発電電力と調整電力Pmとの和が定格電力になると、開度Cは、開度Aと等しくなる。
【0026】
開度Dは、貯水槽10の水位を回復させる水位回復時の開度に相当する。開度Dは、閉状態の開度に相当する開度Eよりも大きく、かつ、開度Bよりも小さく定められている。ガイドベーン31の開度が開度Dの場合、貯水槽10に供給される水よりも少ない流量の水が水力発電機11に供給される。
【0027】
したがって、通常発電時と水位回復時とにおいて貯水槽10に供給される水の流量が同一であれば、ガイドベーン31の開度が開度Dの場合、水位回復時には、通常発電電力よりも低い水位回復時電力が水力発電機11から出力される。
【0028】
図1において、発電制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータ装置によって構成されている。
【0029】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数等とともに、当該コンピュータユニットを発電制御装置4として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施の形態における発電制御装置4として機能する。
【0030】
図4に示すように、発電制御装置4の入力ポートには、各水力発電所2a~2cの貯水槽10に設けられた水位計21(以下、それぞれ「水位計21a」、「水位計21b」、「水位計21c」ともいう)と、アルカリ蓄電池3の充電率(State Of Charge、以下、「SOC」ともいう)を検出するSOCセンサ41と、電力網5の電源周波数を検出する周波数センサ42とを含む各種センサ類が直接又は通信回線を経由して接続されている。
【0031】
発電制御装置4の出力ポートには、各水力発電所2a~2cの水車22に設けられたアクチュエータ32(以下、それぞれ「アクチュエータ32a」、「アクチュエータ32b」、「アクチュエータ32c」ともいう)と、アルカリ蓄電池3の電力網5側に設けられたインバータ43とを含む各種制御対象類が直接又は通信回線を経由して接続されている。発電制御装置4は、入力ポートに接続された各種センサ類から得られる情報に基づき、出力ポートに接続された各種制御対象類を制御する。
【0032】
図5に示すように、発電制御装置4には、各水力発電所2a~2cの貯水槽10の水位に対して目標値1~3が設定される。目標値1は、通常発電時の目標水位を表す。通常発電時において、発電制御装置4は、各水位計21a~21cによって検出された水位をフィードバック値として、各水力発電所2a~2cの貯水槽10の水位が目標値1を維持するように、ガイドベーン31の開度を制御する。
【0033】
目標値2は、通常発電時の下限水位を表す。したがって、目標値2は、目標値1以下であり、水位回復時における目標水位となる。目標値3は、調整時発電電力を水力発電機11から出力させる調整力供給時の下限水位を表す。したがって、目標値3は、目標値2未満、かつ、水力発電機11に供給する水に空気が混入するエア噛み防止用の下限値以上であり、調整力供給時における目標水位となる。
【0034】
以上のように構成された発電システム1における発電制御装置4の動作について図6図7を参照して説明する。
【0035】
図6に示すように、発電制御装置4は、通常電池モードと、調整力出力モードと、SOC回復モードとの3つの電池制御モードでアルカリ蓄電池3を制御する。平時において、発電制御装置4は、通常電池モードでアルカリ蓄電池3を制御する。
【0036】
<通常電池モード>
通常電池モードにおいて、アルカリ蓄電池3は、アルカリ蓄電池3が過充電にならない程度の所定充電率まで充電されている。通常電池モードにおいて、発電制御装置4は、アルカリ蓄電池3から電力網5に放電すること、及び、電力網5からアルカリ蓄電池3を充電することを禁止するようにインバータ43を制御する。
【0037】
通常電池モードにおいて、電力網5の電力が不足すると、発電制御装置4は、電池制御モードを調整力出力モードに移行させる。発電制御装置4は、周波数センサ42によって検出された周波数が許容範囲外に低下した場合に、電力網5の電力が不足したと判断する。
【0038】
<調整力出力モード>
調整力出力モードにおいて、発電制御装置4は、発電システム1の調整力に相当する電力がアルカリ蓄電池3から電力網5に放電されるように、インバータ43を制御する。このように、調整力出力モードにおいて、発電制御装置4は、電力網5に電力を放電するようにアルカリ蓄電池3を制御する放電制御を実行する。
【0039】
調整力出力モードにおいて、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pmの総和が発電システム1の調整力以上になった場合には、発電制御装置4は、電池制御モードをSOC回復モードに移行させる。
【0040】
<SOC回復モード>
SOC回復モードにおいて、発電制御装置4は、電力網5からアルカリ蓄電池3が充電されるように、インバータ43を制御する。SOC回復モードにおいて、SOCセンサ41によって検出されたSOCが所定充電率以上となった場合には、発電制御装置4は、電池制御モードを通常電池モードに移行させる。所定充電率は、発電システム1の調整力に相当する電力がアルカリ蓄電池3から一定時間(例えば、5分)以上にわたって電力網5に放電できる程度に設定されている。
【0041】
なお、アルカリ蓄電池3は、自己放電によりSOCが低下する場合があるため、通常電池モードにおいて、SOCセンサ41によって検出されたSOCが所定充電率よりも許容範囲を超えて低下した場合には、発電制御装置4は、電池制御モードをSOC回復モードに移行させる。
【0042】
図7に示すように、発電制御装置4は、通常水力モードと、調整水力モードと、水位回復モードとの3つの水力制御モードで各水力発電所2a~2cの水力発電機11を個別に制御する。平時において、発電制御装置4は、通常水力モードで水力発電機11を制御する。
【0043】
<通常水力モード>
通常水力モードにおいて、発電制御装置4は、水力発電機11に設けられたガイドベーン31の開度を通常発電時の開度B(図3参照)にするように、アクチュエータ32を制御する。すなわち、通常水力モードにおいて、発電制御装置4は、貯水槽10の水位が目標値1(図5参照)を維持するようにアクチュエータ32を制御する。したがって、通常水力モードでは、通常発電電力が水力発電機11から電力網5に供給される。
【0044】
通常水力モードにおいて、電池制御モードが調整力出力モードであり、かつ、SOCセンサ41によって検出されたSOCが閾値THc以下となった場合には、発電制御装置4は、水力制御モードを調整水力モードに移行させる。閾値THcは、アルカリ蓄電池3の放電電力が低下し始める充電率に設定されている。
【0045】
このように、本実施の形態における発電制御装置4は、同一の移行条件に基づいて、水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させる。すなわち、本実施の形態において、水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードは、通常水力モードから調整水力モードに同時に移行する。
【0046】
<調整水力モード>
調整水力モードにおいて、発電制御装置4は、水力発電機11に設けられたガイドベーン31の開度を調整力供給時の開度C(図3参照)にするように、アクチュエータ32を制御する。すなわち、調整水力モードにおいて、発電制御装置4は、貯水槽10の水位が目標値3(図5参照)になるようにアクチュエータ32を制御する。
【0047】
したがって、調整水力モードでは、水力発電機11に設けられたガイドベーン31の開度が開度C(図3参照)になると、通常発電電力と調整電力Pmとが加算された調整力供給時電力が水力発電機11から電力網5に供給される。このように、調整水力モードでは、発電制御装置4は、通常発電電力から発電電力を増加させるように水力発電機11を制御する増電制御を実行する。
【0048】
調整水力モードにおいて、水位計21によって検出された水位が目標値3(図5参照)以下になった場合には、発電制御装置4は、水力制御モードを水位回復モードに移行させる。
【0049】
<水位回復モード>
水位回復モードにおいて、発電制御装置4は、水力発電機11に設けられたガイドベーン31の開度を水位回復時の開度D(図3参照)にするように、アクチュエータ32を制御する。すなわち、水位回復モードにおいて、発電制御装置4は、貯水槽10の水位が目標値2(図5参照)になるようにアクチュエータ32を制御する。
【0050】
したがって、水位回復モードでは、水力発電機11に設けられたガイドベーン31の開度が開度D(図3参照)になると、水位回復時電力が水力発電機11から電力網5に供給される。水位回復モードにおいて、水位計21によって検出された水位が目標値2(図5参照)以上になった場合には、発電制御装置4は、水力制御モードを通常水力モードに移行させる。
【0051】
以上に説明した発電システム1によって出力される調整力について、図8を参照して説明する。図8は、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pm(以下、「調整電力Pm1」、「調整電力Pm2」、「調整電力Pm3」ともいう)との推移を示している。
【0052】
時刻0において、発電制御装置4によって電力網5の電力が不足したと判断されると、電池制御モードが通常電池モードから調整力出力モードに移行することによって、発電制御装置4によって放電制御が実行される。
【0053】
したがって、時刻0において、アルカリ蓄電池3から電力網5に放電が開始され、時刻t1(図中、0.1秒後)で、アルカリ蓄電池3から電力網5に発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0054】
時刻t2において、SOCセンサ41によって検出されたSOCが閾値THc以下となると、各水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードから調整水力モードに移行する。
【0055】
このため、発電制御装置4によって各水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する増電制御が実行される。したがって、時刻t2において、各水力発電所2a~2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Bから開度C(図3参照)になるように、各アクチュエータ32a~32cが制御され、各水力発電所2a~2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1~Pm3が増加していく。
【0056】
時刻t3(図中、60秒後)において、各水力発電所2a~2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度C(図3参照)になると、各水力発電所2a~2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1~Pm3の総和が発電システム1の調整力になり、電池制御モードが調整力出力モードからSOC回復モードに移行するため、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcが0となる。
【0057】
時刻t4(図中、6分後)において、流路6の最も上流の水力発電所2aの貯水槽10に設けられた水位計21aによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0058】
このため、水力発電所2aの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32aが制御され、水力発電所2aの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1が減少していく。
【0059】
時刻t5(図中、8分後)において、水力発電所2aに対して流路6の下流側の水力発電所2bの貯水槽10に設けられた水位計21bによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0060】
このため、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32bが制御され、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が減少していく。
【0061】
時刻t6(図中、10分後)において、水力発電所2bに対して流路6の下流側の水力発電所2cの貯水槽10に設けられた水位計21cによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0062】
このため、水力発電所2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32cが制御され、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が減少していく。
【0063】
水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2aの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2bの貯水槽10に供給される水の流量が増加する。
【0064】
このため、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行した後に、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0065】
また、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2aの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2cの貯水槽10に供給される水の流量が増加する。
【0066】
さらに、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2bの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2cの貯水槽10に供給される水の流量が増加する。
【0067】
このため、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行した後に、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0068】
このように、時刻t1から時刻t2の期間には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcによって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t2から時刻t3の期間には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pm1~Pm3との総和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t3から時刻t4の期間には、水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pm1~Pm3の総和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0069】
<作用効果>
以上のように、本実施の形態に係る発電システム1は、応動時間10秒以内かつ継続時間5分以上の一次調整力を電力網5に供給することができるため、水力発電機11を一次調整力として機能させることができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、立ち上がり特性が良好なアルカリ蓄電池3によって電力蓄電装置を構成し、電力網5の電力が不足するとアルカリ蓄電池3に充電した電力を電力網5に放電させる放電制御を開始するため、電力網5の電力不足時の応答性を高くすることができる。
【0071】
本実施の形態に係る発電システム1は、アルカリ蓄電池3が大電流を瞬時に放電することができるため、電力網5の電力が不足したときに、ブラックアウトなどの電力網5の電力不足を瞬時に解消することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、アルカリ蓄電池3から電力網5に電力が放電されている期間に水力発電所2a~2cに対する増電制御を開始するため、アルカリ蓄電池3が蓄電した電力を消費するよりも前に、水力発電所2a~2cの水力発電機11から電力網5に電力が供給される。このため、本実施の形態に係る発電システム1は、連続的に安定した電力を電力網5に供給することができ、電力網5の電力不足を解消することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、増電制御によって水力発電所2a~2cの水力発電機11による発電電力を同時に増加させているため、電力網5に大きな電力を供給することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、各水力発電所2a~2cに貯水槽10が設けられ、貯水槽10に貯えられた水を用いて水力発電機11の発電電力を増加させるため、各水力発電所2a~2cが貯水ダムを持たない流れ込み式の発電所であっても、電力網5の電力が不足したときに、電力網5に電力を供給することができる。
【0075】
<変形例>
なお、本実施の形態では、水車22は、フランシス水車によって構成される例について説明した。これに対し、水車22は、貯水槽10から水車22に供給される水の流量を調整することができるものであれば、フランシス水車以外の水車によって構成されてもよい。例えば、水車22は、カプラン水車のような他の反動水車によって構成されてもよく、ペルトン水車のような衝動水車によって構成されてもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pm1~Pm3との総和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給する例について説明した。
【0077】
これに対し、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2a~2cの水力発電機11のうち1つの水力発電機11(例えば、水力発電所2aの水力発電機11)によって、発電システム1の調整力を出力できる場合には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、この1つの水力発電機11の調整電力Pmとの総和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2a~2cの水力発電機11のうち2つの水力発電機11(例えば、水力発電所2a、2bの水力発電機11)によって、発電システム1の調整力を出力できる場合には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、この2つの水力発電機11の調整電力Pmとの総和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、図6を参照して説明したように、発電制御装置4は、調整力出力モードにおいて、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pmの総和が発電システム1の調整力になった場合に、電池制御モードをSOC回復モードに移行させる例について説明した。
【0080】
これに対し、発電制御装置4は、調整力出力モードにおいて、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pmの総和が発電システム1の調整力になった場合には、アルカリ蓄電池3から電力網5に放電することを禁止するようにインバータ43を制御し、一定時間(例えば、5時間)経過後に、電池制御モードをSOC回復モードに移行させるようにしてもよい。
【0081】
また、発電制御装置4は、調整力出力モードにおいて、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pmの総和が発電システム1の調整力になった場合には、アルカリ蓄電池3から電力網5に放電することを禁止するようにインバータ43を制御し、電力網5の電力が過剰になったと判断した場合に、電池制御モードをSOC回復モードに移行させるようにしてもよい。この場合、発電制御装置4は、周波数センサ42によって検出された周波数が許容範囲外に上昇した場合に、電力網5の電力が過剰になったと判断する。
【0082】
また、発電制御装置4は、電力網5の電力が過剰になったと判断した場合には、各水力発電所2a~2cの貯水槽10に対する目標値1(図5参照)を高くすることによって、各水力発電所2a~2cから電力網5に供給する電力を減少させるようにしてもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、図7を参照して説明したように、通常水力モードにおいて、電池制御モードが調整力出力モードであり、かつ、SOCセンサ41によって検出されたSOCが閾値THc以下となった場合に、発電制御装置4は、各水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる例について説明した。
【0084】
これに対し、発電制御装置4は、電池制御モードが調整力出力モードである期間であれば、水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させる移行条件を変えてもよい。
【0085】
例えば、発電制御装置4は、電池制御モードが調整力出力モードになってから一定時間(例えば、1分)経過した場合に、水力発電所2a~2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態では、水力発電所2a~2cが1つの水の流路6を形成するように直列に設けられている例について説明した。これに対し、本実施の形態における水力発電所2a~2cは、互いに別の流路を形成するように並列に設けられていてもよい。
【0087】
例えば、図1において、河川7から取水堰8を経由して流入した水は、水力発電所2aを経由して、河川7に戻り、河川7から第1の他の取水堰を経由して流入した水は、水力発電所2bを経由して、河川7に戻り、河川7から第2の他の取水堰を経由して流入した水は、水力発電所2cを経由して、河川7に戻るようにしてもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、貯水ダムを持たない流れ込み式の発電所によって各水力発電所2a~2cを構成した例について説明したが、各水力発電所2a~2cをダム式の発電所によって構成してもよい。各水力発電所2a~2cをダム式の発電所によって構成する場合には、貯水槽10は、ダム湖によって構成される。
【0089】
[第2の実施の形態]
以下に説明する本発明の第2の実施の形態については、本発明の第1の実施の形態との相違点について説明する。
【0090】
本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態と比較して、図7を参照して説明した水力制御モードの状態遷移に対して、水力発電所2a~2cのうち流路6の最も下流の最下流水力発電所である水力発電所2cを除く各水力発電所2a、2bの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させる移行条件が異なる。
【0091】
なお、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させる移行条件は、本発明の第1の実施の形態について図7を参照して説明した通りである。
【0092】
図9に示すように、本実施の形態における発電制御装置4は、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードであるときに、水力発電所2bに対して流路6の下流側の水力発電所2cの貯水槽10に設けられた水位計21aによって検出された水位が目標値3(図5参照、本発明における「所定値」に相当する)以下になった場合には、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる。
【0093】
また、本実施の形態における発電制御装置4は、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードであるときに、水力発電所2aに対して流路6の下流側の水力発電所2bの貯水槽10に設けられた水位計21bによって検出された水位が目標値3(図5参照、本発明における「所定値」に相当する)以下になった場合には、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる。
【0094】
以上に説明した発電システム1によって出力される調整力について、図10を参照して説明する。図10は、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の調整電力Pm1~Pm3との推移を示している。
【0095】
時刻0において、発電制御装置4によって電力網5の電力が不足したと判断されると、電池制御モードが通常電池モードから調整力出力モードに移行することによって、発電制御装置4によって放電制御が実行される。
【0096】
したがって、時刻0において、アルカリ蓄電池3から電力網5に放電が開始され、時刻t11(図中、0.1秒後)で、アルカリ蓄電池3から電力網5に発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0097】
時刻t12において、SOCセンサ41によって検出されたSOCが閾値THc以下となると、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードから調整水力モードに移行する。
【0098】
このため、発電制御装置4によって水力発電所2cの水力発電機11に対する増電制御が実行される。したがって、時刻t12において、水力発電所2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Bから開度C(図3参照)になるように、アクチュエータ32cが制御され、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が増加していく。
【0099】
時刻t13において、水力発電所2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度C(図3参照)になると、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が発電システム1の調整力になり、電池制御モードが調整力出力モードからSOC回復モードに移行するため、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcが0となる。
【0100】
時刻t14(図中、10分後)において、水力発電所2cの貯水槽10に設けられた水位計21cによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行し、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードから調整水力モードに移行する。
【0101】
このため、水力発電所2cの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32cが制御され、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が減少していく。
【0102】
一方で、時刻t14において、発電制御装置4によって水力発電所2bの水力発電機11に対する増電制御が実行される。したがって、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Bから開度C(図3参照)になるように、アクチュエータ32bが制御され、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が増加していく。
【0103】
時刻t15において、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度D(図3参照)になると、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が0となり、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度C(図3参照)になると、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が発電システム1の調整力になる。
【0104】
時刻t16(図中、20分後)において、水力発電所2bの貯水槽10に設けられた水位計21bによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行し、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードが通常水力モードから調整水力モードに移行する。
【0105】
このため、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32bが制御され、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が減少していく。
【0106】
一方で、時刻t16において、発電制御装置4によって水力発電所2cの水力発電機11に対する増電制御が実行される。したがって、水力発電所2aの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Bから開度C(図3参照)になるように、アクチュエータ32aが制御され、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1が増加していく。
【0107】
時刻t17において、水力発電所2bの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度D(図3参照)になると、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が0となり、水力発電所2aの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度C(図3参照)になると、水力発電所2aの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1が発電システム1の調整力になる。
【0108】
時刻t18(図中、30分後)において、水力発電所2aの貯水槽10に設けられた水位計21aによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行する。
【0109】
このため、水力発電所2aの水力発電機11のガイドベーン31の開度が開度Cから開度D(図3参照)になるように、アクチュエータ32cが制御され、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が減少していく。
【0110】
このように、時刻t11から時刻t12の期間には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcによって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t12から時刻t13の期間には、アルカリ蓄電池3の放電電力Pcと、水力発電所2cの水力発電機11の調整電力Pm3との和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t13から時刻t14の期間には、水力発電所2cの水力発電機11の調整電力Pm3によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0111】
また、時刻t14から時刻t15の期間には、水力発電所2c、2bの水力発電機11の調整電力Pm3、Pm2の和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t15から時刻t16の期間には、水力発電所2bの水力発電機11の調整電力Pm2によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0112】
また、時刻t16から時刻t17の期間には、水力発電所2b、2aの水力発電機11の調整電力Pm2、Pm1の和によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。また、時刻t17から時刻t18の期間には、水力発電所2aの水力発電機11の調整電力Pm1によって発電システム1の調整力が電力網5に供給される。
【0113】
<作用効果>
以上のように、本実施の形態に係る発電システム1は、応動時間10秒以内かつ継続時間5分以上の一次調整力を電力網5に供給することができるため、水力発電所2aの水力発電機11を一次調整力として機能させることができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、各水力発電所2a~2cの水力発電機11の水力制御モードを調整水力モードに順次移行させることにより、継続時間を長くすることができる。
【0115】
したがって、本実施の形態に係る発電システム1は、応動時間5分以内かつ継続時間30分以上の二次調整力を電力網5に供給することができるため、水力発電所2a~2cの水力発電機11を二次調整力として機能させることができる。
【0116】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2bの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2cの貯水槽10の水位を早期に回復することができる。
【0117】
さらに、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2aの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2bの貯水槽10の水位を早期に回復することができる。
【0118】
<変形例>
なお、本発明の第1の実施の形態と同様に、発電制御装置4は、電池制御モードが調整力出力モードである期間であれば、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させる移行条件を変えてもよい。
【0119】
例えば、発電制御装置4は、電池制御モードが調整力出力モードになってから一定時間(例えば、1分)経過した場合に、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを通常水力モードから調整水力モードに移行させるようにしてもよい。
【0120】
本実施の形態において、発電制御装置4は、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モード、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モード、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに順次移行させる例について説明した。
【0121】
前述したように、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2bの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2cの貯水槽10の水位を早期に回復することができる。
【0122】
また、本実施の形態に係る発電システム1は、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードである期間には、水力発電所2aの貯水槽10に貯えられた水が流路6の下流側に放出されるため、水力発電所2bの貯水槽10の水位を早期に回復することができる。
【0123】
したがって、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行したときには、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行することができる。
【0124】
同様に、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードが調整水力モードから水位回復モードに移行したときには、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行することができる。
【0125】
したがって、図9に示したように、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モード、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モード、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに順次移行させた後に、発電制御装置4は、さらに、図11に示すように、各水力発電所2c、2bの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに順次移行させるようにしてもよい。
【0126】
図11において、時刻t18(図中、30分後)において、水力発電所2aの貯水槽10に設けられた水位計21aによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、発電制御装置4は、水力発電所2aの水力発電機11に対する水力制御モードを水位回復モードに移行させ、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる。
【0127】
これにより、時刻t19において、水力発電所2aの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm1が0となり、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が発電システム1の調整力になる。
【0128】
時刻t20(図中、40分後)において、水力発電所2cの貯水槽10に設けられた水位計21cによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、発電制御装置4は、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを水位回復モードに移行させ、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる。
【0129】
これにより、時刻t21において、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が0となり、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が発電システム1の調整力になる。
【0130】
時刻t22(図中、50分後)において、水力発電所2bの貯水槽10に設けられた水位計21bによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、発電制御装置4は、水力発電所2bの水力発電機11に対する水力制御モードを水位回復モードに移行させ、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを調整水力モードに移行させる。
【0131】
これにより、時刻t23において、水力発電所2bの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm2が0となり、水力発電所2cの水力発電機11から電力網5に供給される調整電力Pm3が発電システム1の調整力になる。
【0132】
時刻t24(図中、60分後)において、水力発電所2cの貯水槽10に設けられた水位計21cによって検出された水位が目標値3(図5参照)になると、発電制御装置4は、水力発電所2cの水力発電機11に対する水力制御モードを水位回復モードに移行させる。
【0133】
以上のように構成することにより、本実施の形態に係る発電システム1は、継続時間を更に長くすることができる。
【0134】
以上、本発明の実施の形態について開示したが、本発明の範囲を逸脱することなく本発明の実施の形態に変更を加えられ得ることは明白である。本発明の実施の形態は、このような変更が加えられた等価物が特許請求の範囲に記載された発明に含まれることを前提として開示されている。
【符号の説明】
【0135】
1 発電システム
2、2a、2b、2c 水力発電所
3 アルカリ蓄電池(電力蓄電装置)
4 発電制御装置
5 電力網
6 流路
10 貯水槽
11 水力発電機
【要約】
【課題】水力発電機を一次調整力として機能させることができる発電システム及び発電制御装置を提供すること。
【解決手段】発電制御装置4は、電力網5の電力が不足すると、電力網5に電力を放電するようにアルカリ蓄電池3を制御する放電制御を実行し、アルカリ蓄電池3から電力網5に電力が放電されている期間に、発電電力を増加させるように少なくとも水力発電所2cの水力発電機を制御する増電制御を開始する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11