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特許7563696紫外レーザダイオードの製造方法および紫外レーザダイオード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】紫外レーザダイオードの製造方法および紫外レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/343 20060101AFI20241001BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021065479
(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公開番号】P2021170637
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020072539
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】張 梓懿
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩
(72)【発明者】
【氏名】久志本 真希
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123969(JP,A)
【文献】特開2009-094471(JP,A)
【文献】特開2007-227912(JP,A)
【文献】特開2000-196144(JP,A)
【文献】特開2002-043692(JP,A)
【文献】特表2018-532265(JP,A)
【文献】特開2000-349398(JP,A)
【文献】特開2000-299532(JP,A)
【文献】特開2001-203389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0175324(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2001-0074543(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092165(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0195851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に積層し、窒化物半導体積層体を形成する積層体形成工程と、
前記窒化物半導体積層体の少なくとも一部をエッチングして、前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造を形成し、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比を、1:5以上1:500以下とするメサ構造形成工程と、
前記第1領域上の一部に、第1導電性材料を配置し、400℃以上の熱処理を施す第1電極形成工程と、
前記第2クラッド層上の領域であって、前記側面との距離が5μm以上となる領域に、第2導電性材料を配置する第2電極形成工程と、
を含む、紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記メサ構造形成工程は、
前記側面を、エッチング工程により形成する、
請求項1に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記メサ構造形成工程は、
前記共振器端面を、劈開工程により形成する、
請求項1又は2に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項4】
前記第2電極形成工程は、
前記共振器端面との距離が5μm以下となる領域に、前記第2導電性材料を配置する、
請求項3に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項5】
前記メサ構造形成工程の後に、
前記第2クラッド層上の領域であって、少なくとも、前記側面との距離が5μm未満となる領域に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程をさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項6】
前記基板は、窒化アルミニウム単結晶基板である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項7】
前記発光層は、発光波長が210nm以上360nm以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオードの製造方法。
【請求項8】
基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に備え、
前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造は、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であり、
前記第2クラッド層上の領域であって、前記側面との距離が5μm以上となる領域に設けられる第2電極と、
を備える紫外レーザダイオード。
【請求項9】
前記第2クラッド層は、全体又は一部が第2導電型不純物を有さない、
請求項8に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項10】
前記第2クラッド層は、全体又は一部が組成傾斜層を含む、
請求項8又は9に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項11】
前記基板は、窒化アルミニウム単結晶基板である、
請求項8から10のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項12】
前記発光層は、発光波長が210nm以上360nm以下である、
請求項8から11のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項13】
基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に備え、
前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造は、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であり、
前記第2クラッド層上の領域であって、前記共振器端面および前記側面との距離が5μm以上となる領域に設けられる第2電極と、
を備える紫外レーザダイオード。
【請求項14】
前記第2クラッド層は、全体又は一部が第2導電型不純物を有さない、
請求項13に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項15】
前記第2クラッド層は、全体又は一部が組成傾斜層を含む、
請求項13又は14に記載の紫外レーザダイオード
【請求項16】
前記基板は、窒化アルミニウム単結晶基板である、
請求項13から15のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオード。
【請求項17】
前記発光層は、発光波長が210nm以上360nm以下である、
請求項13から16のいずれか一項に記載の紫外レーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紫外レーザダイオードの製造方法および紫外レーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、直接遷移の再結合形態を有することから、高い再結合効率および高い光学利得を得ることができる点で、レーザダイオードのための材料として適している。例えば、特許文献1には、組成傾斜層を用いて、キャリアの注入効率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-532265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来技術は、紫外LED(Light Emission Diode)を前提とするものであり、紫外レーザダイオードについては、ほとんど検討されていないのが実情である。特に、紫外レーザダイオードにおける電極の配置に関しては、何ら知られていない。
【0005】
素子抵抗を低減させて、紫外レーザダイオードを低い閾値電流密度にて発振させるために、例えば、可視光のレーザダイオードの技術常識を参酌すると、図6Aおよび図6Bに示すように、第2電極6A,6Bを、メサ構造300A,300Bの第1電極5A,5B側の側面に極力近づけて配置する構成が適切であると考えられる。
【0006】
しかしながら、紫外レーザダイオードに、このような構成を適用しても、所望の低い発振閾値電流密度を得られないのが実情である。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、発振閾値電流密度の低い紫外レーザダイオードの製造方法および紫外レーザダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法は、基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に積層し、窒化物半導体積層体を形成する積層体形成工程と、前記窒化物半導体積層体の少なくとも一部をエッチングして、前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造を形成し、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比を、1:5以上1:500以下とするメサ構造形成工程と、前記第1領域上の一部に、第1導電性材料を配置し、400℃以上の熱処理を施す第1電極形成工程と、前記第2クラッド層上の領域であって、前記側面との距離が5μm以上となる領域に、第2導電性材料を配置する第2電極形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
一実施形態に係る紫外レーザダイオードは、基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に備え、前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造は、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であり、前記第2クラッド層上の領域であって、前記側面との距離が5μm以上となる領域に設けられる第2電極と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、一実施形態に係る紫外レーザダイオードは、基板上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域および前記第1導電型窒化物半導体層の第2領域を有する第1クラッド層と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層と、をこの順に備え、前記第2領域、前記発光層、および前記第2クラッド層を含むメサ構造は、平面視における共振器端面の長さと前記メサ構造の側面の長さとの比が、1:5以上1:500以下であり、前記第2クラッド層上の領域であって、前記共振器端面および前記側面との距離が5μm以上となる領域に設けられる第2電極と、を備えることを特徴とする。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、発振閾値電流密度の低い紫外レーザダイオードの製造方法および紫外レーザダイオードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2A】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図2B】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図2C】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図2D】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図2E】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図3A】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの構成の一例を示す側面図である。
図3B】第1実施形態に係る紫外レーザダイオードの構成の一例を示す平面図である。
図4A】第2実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図4B】第2実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図4C】第2実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図4D】第2実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図4E】第2実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法の一例を示す図である。
図5】実施例に用いられる紫外レーザダイオードの構成の一例を示す模式図である。
図6A】従来に係る紫外レーザダイオードの構成の一例を示す図である。
図6B】従来に係る紫外レーザダイオードの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。
【0015】
また、以下、説明の便宜上、「上」とは、図面に描かれた第2電極側を意味するものとし、「下」とは、図面に描かれた基板側を意味するものとする。ただし、「上」、「下」とは、便宜的に定められたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0016】
また、「メサ構造」とは、ある面を基準としたときに、該面から連続し且つ高い位置に配置される構造を意味する。したがって、本明細書において、「メサ構造」とは、第1領域の上面を基準としたときに、該上面から連続し且つ高い位置に配置される、第2領域、発光層、および第2クラッド層を含む構造を意味するものとする。
【0017】
また、本明細書において、「メサ構造の側面」とは、メサ構造における共振器端面以外の端面を意味するものとする。また、「メサ構造の一方の側面」とは、メサ構造における共振器端面以外の端面のうち、第1電極が形成されている側の側面を意味するものとし、「メサ構造の他方の側面」とは、メサ構造における共振器端面以外の端面のうち、第1電極が形成されていない側の側面を意味するものとする。
【0018】
[第1実施形態]
<紫外レーザダイオードの製造方法>
図1、および図2A乃至図2Eを参照して、第1実施形態に係る紫外レーザダイオード100の製造方法の一例について説明する。
【0019】
紫外レーザダイオード100の製造方法は、基板10上に、第1導電型窒化物半導体層の第1領域21および第1導電型窒化物半導体層の第2領域22を有する第1クラッド層20と、1つ以上の量子井戸層を有する発光層30と、第2導電型窒化物半導体層を有する第2クラッド層40と、をこの順に積層し、窒化物半導体積層体200を形成する積層体形成工程(ステップS101)と、窒化物半導体積層体200の少なくとも一部をエッチングして、第2領域22、発光層30、および第2クラッド層40を含むメサ構造300を形成し、平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300の側面302の長さWとの比を、1:5以上1:500以下とするメサ構造形成工程(ステップS102)と、第1領域21上の一部に、第1導電性材料を配置し、400℃以上の熱処理を施す第1電極形成工程(ステップS103)と、第2クラッド層40上の領域であって、メサ構造300の側面302との距離が5μm以上となる領域に、第2導電性材料を配置する第2電極形成工程(ステップS104)と、を含む。
【0020】
以下、各工程の詳細を順次説明する。
【0021】
〔窒化物半導体積層体の形成工程:ステップS101〕
まず、図2Aに示すように、基板10上に、第1クラッド層20と、発光層30と、第2クラッド層40と、をこの順に積層し、窒化物半導体積層体200を形成する。第1クラッド層20は、第1導電型窒化物半導体層の第1領域21および第1導電型窒化物半導体層の第2領域22を有している。発光層30は、1つ以上の量子井戸層を有している。第2クラッド層40は、第2導電型窒化物半導体層を有している。
【0022】
窒化物半導体積層体200の厚みは、2μm程度以下であることが好ましく、1.5μm程度以下であることがより好ましい。
【0023】
第1クラッド層20、発光層30、および第2クラッド層40は、窒化物半導体で形成されることが好ましく、例えば、AlGaN、GaN、InGaN、BN、BAlN、BAlGaN、InAlGaNなどで形成されることが好ましい。
【0024】
第1クラッド層20は、第1導電型窒化物半導体で形成されることが好ましい。第2クラッド層40は、第2導電型窒化物半導体で形成されることが好ましい。第1導電型および第2導電型とは、一方がn型導電性を有するものであり、他方がp型導電性を有するものであることを意味する。例えば、第1導電型は、n型導電性を有する。例えば、第2導電型は、p型導電性を有する。
【0025】
発光層30は、その発光波長が特に限定されるものではないが、210nm以上360nm以下であることが好ましい。
【0026】
窒化物半導体積層体200における各層の膜厚および構造は、当該分野で公知のものを採用することができる。なお、窒化物半導体積層体200は、基板10上に形成されたものであってもよい。
【0027】
〔メサ構造の形成工程:ステップS102〕
次に、図2Bに示すように、窒化物半導体積層体200の少なくとも一部をエッチングして、第2領域22、発光層30、および第2クラッド層40を含むメサ構造300を形成する。
【0028】
メサ構造300は、平面視における共振器端面301の長さWが、平面視におけるメサ構造300の側面302の長さWより短いことが好ましい。メサ構造300は、平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300の側面302の長さWとの比が、1:5以上1:500以下であることが好ましい。例えば、図2Bにおいて、平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300の側面302の長さWとの比は、1:8となっている。平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300の側面302の長さWとの比を、当該範囲とすることで、共振方向において、広い領域で効率の良い電流注入が可能な紫外レーザダイオード100を実現できる。また、電流の狭窄効果により、発振閾値電流密度に到達させるための駆動電流を低減させることができるため、抵抗発熱を低減させ、素子寿命を向上させた紫外レーザダイオード100を実現できる。
【0029】
共振器端面301は、エッチング工程、あるいは、その他の工程により形成されてよい。メサ構造300の側面302は、エッチング工程により形成されることが好ましい。メサ構造300において、少なくとも側面302がエッチング工程により形成されることで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0030】
エッチング工程としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩素系ガスによる反応性イオンエッチング、集束イオンビームエッチング、中性子粒子ビームエッチング、などのドライエッチング工程、ミリング工程が挙げられる。また、アルカリ溶液など、基板10及び窒化物半導体積層体200に対して侵食性のある溶液への浸漬によるウェットエッチング工程も挙げられる。さらには、前記ドライエッチング工程、ミリング工程と前記ウェットエッチングを組み合わせた工程も挙げられる。
【0031】
〔第1電極の形成工程:ステップS103〕
次に、図2Cに示すように、第1領域21上の一部に、第1導電性材料を配置し、400℃以上の熱処理を施すことで、第1電極50を形成する。熱処理の温度を、少なくとも400℃以上とすることで、第1電極50の合金化が為され、コンタクト抵抗を低減させることができる。第1電極50は、図2Dに示す以外の位置にさらに複数追加して配置されても良い。例えば、平面視にてメサ構造300の左右にそれぞれ配置されても良い。
【0032】
第1電極50の膜厚は、10nm以上400nm以下であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0033】
第1領域21上の一部に、第1導電性材料を配置する方法は、特に限定されるものではない。例えば、フォトリソグラフィー法により、所定領域にのみ、第1導電性材料が配置されるように、パターニングおよびリフトオフを行ってもよい。例えば、第1領域21上に、第1導電性材料からなる導電膜を成膜した後に、所定領域にパターニングを行い、その後に、導電膜のエッチングあるいはミリングを行ってもよい。
【0034】
熱処理工程としては、例えば、窒素雰囲気中のラピットサーマルプロセスなどが挙げられる。熱処理の温度は、400℃以上950℃以下であることが好ましく、800℃以上900℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、30秒以上20分以下であることが好ましく、1分以上5分以下であることがより好ましい。熱処理の温度および熱処理の時間を当該範囲とすることで、第1電極50を適切に合金化することができる。なお、熱処理の温度とは、環境温度を意味する。
【0035】
〔第2電極の形成工程:ステップS104〕
次に、図2Dおよび図2Eに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm以上、およびメサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に、第2導電性材料を配置し、第2電極60を形成する。
【0036】
第2電極60の膜厚は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0037】
第2導電性材料は、図2Dに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm以上、およびメサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる全ての領域に配置されてよい。例えば、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm、およびメサ構造300の側面302との距離D,Dが5μmとなる全ての領域に配置されてよい。
【0038】
また、第2導電性材料は、図2Eに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm以上、およびメサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる一部の領域に配置されてよい。例えば、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm、メサ構造300の一方の側面302との距離Dが5μm、メサ構造300の他方の側面302との距離Dが15μmとなる領域に配置されてよい。
【0039】
さらに、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離D,Dが5μm以上、およびメサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域において、ドット形状あるいはストライプ形状に配置されてよい。
【0040】
第2導電性材料が、メサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に配置され、メサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm未満となる領域に配置されないことで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0041】
特に、第2導電性材料が、メサ構造300の側面302との距離D,Dが15μm以上となる領域に配置され、メサ構造300の側面302との距離D,Dが15μm未満となる領域に配置されないことで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度の低下効果を安定化させることができる。
【0042】
第2クラッド層40上の領域に、第2導電性材料を配置する方法は、特に限定されるものではない。例えば、フォトリソグラフィー法により、所定領域にのみ、第2導電性材料が配置されるように、パターニングおよびリフトオフを行ってもよい。例えば、第2クラッド層40上に、第2導電性材料からなる導電膜を成膜した後に、所定領域にパターニングを行い、その後に、導電膜のエッチングを行ってもよい。なお、第2導電性材料が、第2クラッド層40上の領域に配置されるとは、必ずしも、第2導電性材料が、第2クラッド層40の上面と直接接して配置されることのみを意味するものではなく、第2導電性材料が、p-GaNからなるコンタクト層などを介して、第2クラッド層40上に配置されることも意味するものとする。
【0043】
ここで、図2Dおよび図2Eに示すような本実施形態に係る紫外レーザダイオード100と、図6Aおよび図6Bに示すような従来に係る紫外レーザダイオード100A,100Bと、を比較する。紫外レーザダイオード100は、第2電極60が、第2クラッド層40上の領域であって、メサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に設けられている。一方、紫外レーザダイオード100Aは、第2電極6Aが、第2クラッド層4A上の全ての領域に設けられている。このような電極配置構造は、窒化物半導体積層体の全体に電力を満遍なく供給できる点で好ましいと考えられる。また、紫外レーザダイオード100Bは、第2電極6Bが、第2クラッド層4B上の領域であって、メサ構造の側面302Bとの距離が5μm未満となる領域に設けられている。このような電極配置構造は、第1電極5Bと第2電極6Bとを極力近づけられる点で好ましいと考えられる。
【0044】
詳細な測定結果([実施例]参照)は後述するが、図2Dおよび図2Eに示すような電極配置構造を有する紫外レーザダイオード100は、図6Aおよび図6Bに示すような電極配置構造を有する紫外レーザダイオード100A,100Bと比較して、発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0045】
その理由は定かではないが、紫外レーザダイオードにおいて、メサ構造の側面との距離が5μm程度の領域における発光層は、結晶性が悪い。このため、紫外レーザダイオード100A,100Bでは、発光層3A,3Bの結晶性が悪い領域に流れた電流が、実質的に内部損失となり、発振閾値電流密度が増大してしまうと推察される。
【0046】
あるいは、紫外レーザダイオードにおいて、メサ構造の側面との距離が5μm程度の領域における発光層を含む複数の層は、メサ構造の側面にエッチングによるダメージが加わることで、結晶性が悪化する。このため、紫外レーザダイオード100A,100Bでは、結晶性が悪化した領域に供給された電力が、実質的に内部損失となり、発振閾値電流密度が増大してしまうと推察される。
【0047】
なお、紫外レーザダイオード100は、紫外レーザダイオード100Aと比較して、平面視における第2電極の面積が小さく、紫外レーザダイオード100Bと比較して、平面視における第2電極の面積が大きい。したがって、紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度は、第2電極の面積と、直接的に関係しないと推察される。
【0048】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、本実施形態に係る紫外レーザダイオード100を製造することができる。本実施形態に係る紫外レーザダイオード100は、第2電極60が、第2クラッド層40上の領域であって、メサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に設けられている。これにより、従来に係る紫外レーザダイオード100A,100Bと比較して、発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0049】
<紫外レーザダイオード>
図3Aおよび図3Bを参照して、第1実施形態に係る紫外レーザダイオード100の構成の一例について説明する。
【0050】
以下、各構成の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の形状、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0051】
〔基板〕
基板10は、特に限定されるものではなく、その上に、窒化物半導体積層体200(図2A参照)を積層することが可能であればよい。基板10としては、例えば、窒化アルミニウム単結晶基板、サファイア基板、サファイア基板上に窒化アルミニウムが成膜された複合基板などを用いることができる。基板10として、特に、窒化アルミニウム単結晶基板を用いることで、高品質な窒化物半導体積層体200を形成することができる。
【0052】
〔第1クラッド層〕
第1クラッド層20は、基板10上に設けられている。第1クラッド層20は、第1導電型窒化物半導体層の第1領域21および第1導電型窒化物半導体層の第2領域22を有している。第1領域21および第2領域22は、同一の材料で形成されることが好ましい。第1領域21および第2領域22は、例えば、Al0.7Ga0.3Nで形成されることが好ましい。
【0053】
第1クラッド層20は、不純物によりドーピングされていてもよい。不純物としては、例えば、Si、Ge、C、Oなどが挙げられる。不純物としては、これらの不純物の何れか1つが選択されてもよいし、これらの不純物の複数が選択されてもよい。不純物の濃度は、特に限定されるものではないが、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下であることが好ましく、5×1018cm-3以上5×1019cm-3以下であることがより好ましい。
【0054】
〔発光層〕
発光層30は、第1クラッド層20上に設けられている。発光層30は、その発光波長が、210nm以上360nm以下であることが好ましい。
【0055】
発光層30は、1つ以上の量子井戸層を有している。量子井戸層は、所望する発光波長により、その材料が、適宜選択されてよい。量子井戸層に用いられる材料としては、紫外領域の発光波長を得る目的である場合、例えば、AlGa1-xN(0≦x≦0.8)などが挙げられる。
【0056】
発光層30は、量子井戸層の上方若しくは下方、又は、その双方が、量子井戸層と異なる材料で形成された層により挟まれた構造を有している。このような層としては、例えば、10nm以上200nm以下のAlGa1-xN(0.5≦x<0.7)層などが挙げられる。
【0057】
発光層30は、一部が、不純物によりドーピングされていてもよい。不純物としては、例えば、Si、Cなどが挙げられる。なお、発光層30は、意図的に、不純物がドーピングされていない構造であってもよい。
【0058】
〔第2クラッド層〕
第2クラッド層40は、発光層30上に設けられている。第2クラッド層40は、第2導電型窒化物半導体層を有している。第2クラッド層40は、全体または一部が、例えば、Mg、B、Be、Si、Liなどの第2導電型不純物を有さないことが好ましい。第2クラッド層40が第2導電型不純物を有さないことで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0059】
第2クラッド層40は、全体または一部が、組成傾斜層を含むことが好ましい。組成傾斜層とは、基板10の上面に対して垂直方向に、材料となる混晶の組成を連続的に変化させた層を意味する。第2クラッド層40が組成傾斜層を含むことで、紫外レーザダイオード100における電流の注入効率を向上させることができる。
【0060】
組成傾斜層は、例えば、AlGaN層で構成され、発光層30と第2クラッド層40との界面Xから遠ざかる方向に向かって、Al組成が1.0から連続的に減少していく層であってよい。第2クラッド層40が、このような組成傾斜層を含むことで、光閉じ込めおよび発光層30へのキャリア注入、および電子のブロック層としての役割を果たすことから、紫外レーザダイオード100の発振閾値電流密度を低くする効果が期待される。
【0061】
上述した第2領域22、発光層30、および第2クラッド層40により、メサ構造300が形成される。メサ構造300は、側面の一部が、紫外レーザダイオード100の共振器端面301となっている。
【0062】
〔第1電極〕
第1電極50は、第1領域21上に設けられている。第1電極50は、第1クラッド層20と電気的に接続される第1導電性材料で形成されることが好ましい。第1導電性材料としては、例えば、Mo、Nb、Zr、Ti、Al、W、Ni、Au、V、Inの何れかを含む合金などが挙げられる。第1導電性材料として、特に、V、Ti、Al、Ni、Auの何れかを含む合金を用いることで、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0063】
〔第2電極〕
第2電極60は、第2クラッド層40上に設けられている。第2電極60は、第2クラッド層40と電気的に接続される第2導電性材料で形成されることが好ましい。第2導電性材料としては、例えば、Ti、Pt、Ni、Pd、Au、Pt、Co、Cu、Ni、Ta、Ruの何れか又は何れかを含む合金などが挙げられる。第2導電性材料として、特に、Ti、Pt、Ni、Au、Pdの何れかを含む合金を用いることで、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0064】
本実施形態に係る紫外レーザダイオード100は、第2電極60が、第2クラッド層40上の領域であって、メサ構造300の側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に設けられている。これにより、従来に係る紫外レーザダイオード100A,100Bと比較して、発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0065】
[第2実施形態]
<紫外レーザダイオードの製造方法>
図4A乃至図4Eを参照して、第2実施形態に係る紫外レーザダイオード100Xの製造方法の一例について説明する。
【0066】
第2実施形態に係る紫外レーザダイオード100Xの製造方法が、第1実施形態に係る紫外レーザダイオード100の製造方法と異なる点は、第1実施形態に係る紫外レーザダイオード100の製造方法が、共振器端面301およびメサ構造300の側面302をエッチング工程により形成するのに対して、第2実施形態に係る紫外レーザダイオード100Xの製造方法は、共振器端面301を劈開工程により形成し、メサ構造300Xの側面302をエッチング工程により形成する点である。その他の工程は、同様であるため、重複した説明を省略する。
【0067】
〔窒化物半導体積層体の形成工程:ステップS101〕
まず、図4Aに示すように、基板10上に、第1クラッド層20と、発光層30と、第2クラッド層40と、をこの順に積層し、窒化物半導体積層体200を形成する。第1クラッド層20は、第1導電型窒化物半導体層の第1領域21および第1導電型窒化物半導体層の第2領域22を有している。発光層30は、1つ以上の量子井戸層を有している。第2クラッド層40は、第2導電型窒化物半導体層を有している。
【0068】
〔メサ構造の形成工程:ステップS102〕
次に、図4Bに示すように、窒化物半導体積層体200の少なくとも一部をエッチングあるいは劈開し、第2領域22、発光層30、および第2クラッド層40を含むメサ構造300Xを形成する。
【0069】
メサ構造300Xは、平面視における共振器端面301の長さWが、平面視におけるメサ構造300Xの側面302の長さWより短いことが好ましい。メサ構造300Xは、平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300Xの側面302の長さWとの比が、1:5以上1:500以下であることが好ましい。平面視における共振器端面301の長さWとメサ構造300Xの側面302の長さWとの比を、当該範囲とすることで、共振方向において、広い領域で効率の良い電流注入が可能な紫外レーザダイオード100Xを実現できる。また、電流の狭窄効果により、発振閾値電流密度に到達させるための駆動電流を低減させることができるため、抵抗発熱を低減させ、素子寿命を向上させた紫外レーザダイオード100Xを実現できる。
【0070】
共振器端面301は、劈開工程により形成されることが好ましい。劈開工程とは、適切な各種工程により、ウエハの自然劈開面を露出させて切断する工程を意味する。劈開工程は、例えば、ウエハ表面又はウエハ裏面に、レーザ照射により変質層を形成する工程、あるいは、物理的接触により傷をつけて劈開面が形成される切掛を設けるスクライブ工程と、ウエハに応力を負荷して設けられた切掛を起点に劈開面を広げて露出させるブレーキング工程と、を含む。共振器端面301が劈開工程により形成されることで、紫外レーザダイオード100Xにおける発光効率を向上させることができる。
【0071】
メサ構造300Xの側面302は、エッチング工程により形成されることが好ましい。メサ構造300Xにおいて、少なくとも側面302がエッチング工程により形成されることで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100Xの発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0072】
窒化物半導体積層体200に対して、エッチング工程あるいは劈開工程を施す順序は、エッチング工程が先で、劈開工程が後であることが好ましい。これにより、紫外レーザダイオード100Xにおける発光効率を向上させることができる。
【0073】
〔第1電極の形成工程:ステップS103〕
次に、図4Cに示すように、第1領域21上の一部に、第1導電性材料を配置し、400℃以上の熱処理を施すことで、第1電極50を形成する。熱処理の温度を、少なくとも400℃以上とすることで、第1電極50の合金化が為され、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0074】
〔第2電極の形成工程:ステップS104〕
次に、図4Dおよび図4Eに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が5μm以下、およびメサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に、第2導電性材料を配置し、第2電極60Xを形成する。
【0075】
第2導電性材料は、図4Dに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が5μm以下、およびメサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる全ての領域に配置されてよい。例えば、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が0μm、およびメサ構造300Xの側面302との第2電極60Xと距離D,Dが5μmとなる全ての領域に配置されてよい。
【0076】
また、第2導電性材料は、図4Eに示すように、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が5μm以下、およびメサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる一部の領域に配置されてよい。例えば、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が0μm、メサ構造300Xの一方の側面302との距離Dが5μm、メサ構造300Xの他方の側面302との距離Dが15μmとなる領域に配置されてよい。
【0077】
さらに、第2導電性材料は、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が5μm以下、およびメサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域において、ドット形状あるいはストライプ形状に配置されてよい。
【0078】
第2導電性材料が、共振器端面301との距離が5μm以下となる領域に配置されることで、紫外レーザダイオード100Xにおける発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0079】
第2導電性材料が、メサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に配置され、メサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm未満となる領域に配置されないことで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100Xの発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0080】
特に、第2導電性材料が、メサ構造300Xの側面302との距離D,Dが15μm以上となる領域に配置され、メサ構造300Xの側面302との距離D,Dが15μm未満となる領域に配置されないことで、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、紫外レーザダイオード100Xの発振閾値電流密度の低下効果を安定化させることができる。
【0081】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、本実施形態に係る紫外レーザダイオード100Xを製造することができる。本実施形態に係る紫外レーザダイオード100Xは、第2電極60Xが、第2クラッド層40上の領域であって、共振器端面301との距離が5μm以下、およびメサ構造300Xの側面302との距離D,Dが5μm以上となる領域に設けられている。これにより、従来に係る紫外レーザダイオード100A,100Bと比較して、発振閾値電流密度を低くすることができる。
【0082】
[実施例]
<発振閾値電流密度の比較>
本実施形態に係る紫外レーザダイオードおよび従来に係る紫外レーザダイオードを用いて、それぞれの発振閾値電流密度を測定し、測定結果を比較した。
【0083】
〔実施例1〕
実施例1として、AlN基板上面に、1×1019cm-3のSiによりドーピングされたAl0.7Ga0.3Nからなる第1導電型窒化物半導体層(第1クラッド層)と、Al0.63Ga0.37Nからなる層により挟まれた9nmの発光層と、全体に渡って不純物を意図的にドーピングしていない、AlN基板上面に向かってAl組成を1.0から0.7まで連続的に減少させた第2導電型窒化物半導体層(第2クラッド層)と、、AlN基板上面に向かってAl組成を0.7から0.3まで連続的に減少させた層とGaN層からなるコンタクト層と、をこの順序で堆積させた窒化物半導体積層体について、エッチングにより第1クラッド層の一部を露出させ、共振器端面の法線方向に対して垂直な方向、すなわち<11-20>方向の長さWが40μm、共振器端面の法線方向、すなわち<1-100>方向の長さWが400μm以上である長方形のメサ構造を形成した。次に、露出した第1導電型窒化物半導体層の第1領域上に、Au、Al、Ni、Vを含む第1電極を形成した。第1電極は、800°C以上の熱処理が施された。さらに、メサ構造の一方の側面から、5μm以上10μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した(図5参照)。さらに、劈開によりメサ構造を400μmの長さに分断し、2つの共振器端面を含む共振器、すなわち、平面視における共振器端面の長さとメサ構造の側面の長さとの比が1:10のメサ構造を有する共振器を含む紫外レーザダイオードを作製した。実施例1に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度16kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0084】
〔実施例2〕
実施例2として、メサ構造の一方の側面から、10μm以上15μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例1と同様の紫外レーザダイオードを作製した。実施例2に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度14kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0085】
〔実施例3〕
実施例3として、メサ構造の一方の側面から、15μm以上20μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例1と同様の紫外レーザダイオードを作製した。実施例3に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度12kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0086】
〔比較例1〕
比較例1として、メサ構造の一方の側面から、3μm以上8μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例1と同様の紫外レーザダイオードを作製した。比較例1に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度40kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0087】
〔実施例4〕
実施例4として、第2クラッド層において、第2クラッド層の膜厚に対して基板上面に近い方から、0%以上15.5%未満の深さ領域において意図的に不純物を混入させず、第2クラッド層の膜厚に対して基板上面に近い方から、15.5%以上100%以下の範囲において1×1019cm-3の濃度のMgを意図的に混入した。それ以外は、実施例1と同様の紫外レーザダイオードを作製した。実施例4に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度17kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0088】
〔実施例5〕
実施例5として、メサ構造の一方の側面から、10μm以上15μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例4と同様の紫外レーザダイオードを作製した。実施例5に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度16kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0089】
〔実施例6〕
実施例6として、メサ構造の一方の側面から、15μm以上20μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例4と同様の紫外レーザダイオードを作製した。実施例6に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度13kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0090】
〔比較例2〕
比較例2として、メサ構造の一方の側面から、3μm以上8μm以下の領域全体(幅5μm)に亘ってAu、Niを含む第2導電性材料を配置し、450°C以上の熱処理を施して第2電極を形成した。第2電極を形成する位置が異なる以外は、実施例4と同様の紫外レーザダイオードを作製した。比較例2に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度を測定したところ、閾値電流密度41kA/cmでレーザ発振が観測された(表1参照)。
【0091】
〔測定結果〕
以上の実施例1~実施例6、比較例1、および比較例2に係る紫外レーザダイオードの発振閾値電流密度の測定結果を、表1にまとめた。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から、実施例1~実施例6に係る紫外レーザダイオードは、比較例1および比較例2に係る紫外レーザダイオードと比較して、格段に低い発振閾値電流密度でレーザ発振することが理解される。
【0094】
すなわち、第2クラッド層上の領域であって、エッチングにより形成されたメサ構造の側面との距離が5μm以上となる領域(例えば、5μm以上10μm以下の領域、10μm以上15μm以下の領域、15μm以上20μm以下の領域)に第2電極を備え、5μm未満となる領域に第2電極を備えない紫外レーザダイオードは、エッチングにより形成されたメサ構造の側面との距離が5μm未満となる領域(例えば、3μm以上8μm以下の領域)に第2電極を備える紫外レーザダイオードと比較して、格段に低い発振閾値電流密度でレーザ発振することが理解される。
【0095】
したがって、本実施形態に係る紫外レーザダイオードは、従来に係る紫外レーザダイオードと比較して、格段に低い発振閾値電流密度でレーザ発振可能であることが示唆される。
【0096】
また、表1から、実施例1~実施例3に係る紫外レーザダイオードは、実施例4~実施例6に係る紫外レーザダイオードと比較して、全体的に低い発振閾値電流密度でレーザ発振することが理解される。
【0097】
したがって、第2クラッド層の全体が第2導電型不純物を有さない紫外レーザダイオードは、第2クラッド層の一部に第2導電型不純物がドーピングされた紫外レーザダイオードと比較して、低い発振閾値電流密度でレーザ発振可能であることが示唆される。
【0098】
<変形例>
本実施形態において、窒化物半導体積層体を積層する際における「この順」とは、少なくともこの順で各層(例えば、第1クラッド層、発光層、第2クラッド層)が積層されたものであれば特に制限されず、各層の間あるいは各層の上下に、さらに別の層を有していてもよい。
【0099】
本実施形態に係る紫外レーザダイオードの製造方法は、メサ構造形成工程の後に、第2クラッド層40上の領域であって、少なくとも、メサ構造300の側面との距離が5μm未満となる領域に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程をさらに含んでいてもよい。これにより、紫外レーザダイオード100,100Xの電流駆動時において、第1導電性材料と第2導電性材料との間の漏れ電流を抑制することができる。
【0100】
<その他の変形例>
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0101】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態により制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態のフローチャートに記載の複数の工程を1つに組み合わせたり、あるいは1つの工程を分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 基板
20 第1クラッド層
21 第1領域
22 第2領域
30 発光層
40 第2クラッド層
50 第1電極
60 第2電極
60X 第2電極
100 紫外レーザダイオード
100X 紫外レーザダイオード
100A 紫外レーザダイオード
100B 紫外レーザダイオード
200 窒化物半導体積層体
300 メサ構造
300X メサ構造
300A メサ構造
300B メサ構造
301 共振器端面
302 メサ構造の側面
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B